作家でごはん!鍛練場
若竹多留衣

質問

 「はぁーあ、何で夏休みに学校に行かなきゃいけないんだよぉ」
今日は登校日だ。俺は手提げ鞄を片手に持って真夏の通学路を歩いていた。
「あちぃーなぁ」
太陽の強い光による熱とアスファルトから来る熱気、うるさ過ぎる蝉の声にイライラとしていた時、前から男が1人駆けてくる。男は制服を着ている。見た感じ高校生だろうか。俺は特に気にする事なくすれ違おうとした時、高校生に声をかけられた。
「ちょっと君」
俺は不意に声をかけられて驚きつつも振り返る。
「は、はい」
高校生はびしょ濡れだ。ここまで来る時走っていたから多分、汗だろう。
「あのさ、君。この辺でさ、あの。食パンをね、咥えて走ってる女子高校生見なかった?」
「え?」
俺はあまりに突拍子も無い事を聞かれてキョトンとしてしまった。高校生は俺の反応を見て慌てた様に口を開く。
「あ、いや。コイツ何言ってるんだろうって思うのも無理は無いよ。急にこんな事聞かれたらそうなるよね。でも、本当に見なかった? 食パン咥えて走ってる女子高生」
「え、いやぁ。見てないです」
俺は正直に答えた。ここで嘘をついてもしょうがない。高校生は俺の答えに不満だったらしく
「本当に?」
と聞いてくる。何だろうか。この高校生は俺の事を疑っているのだろうか。
「見てないです」
俺はもう一度答える。すると高校生は
「本当の本当に?」
と聞いてくる。なんなんだ。さっきから見てないと言ってるじゃ無いか。俺は少し苛立ちを覚えたが今度も
「見てないです」
と答えた。すると高校生は
「本当の本当の本当に?」
と聞いてくる。高校生のその返に元々怒りっぽく、既にイライラしていた俺は頭にきて怒鳴る。
「だから、見てねぇつってんだろ! しつけぇんだよ!!」
俺が怒鳴りつけると高校生は顔も声色も何一つ変えず
「本当の本当の本当の本当に?」
と聞いてくる。
「だから見てねぇってーー」
「本当の本当の本当の本当の本当に?」
高校生は俺の言葉を遮って聞いてくる。
「いや、だからさっきからーー」
「本当の本当の本当の本当の本当の本当に?」
眉一つ動かさず聞いてくる高校生に俺は恐怖を感じた。
「いや、だからーーー」
「本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当に?」
俺は恐怖のあまり一目散に逃げ出した。そして、あれは通学路の途中にある公園に逃げ込んだ。後ろを見て高校生が居ない事を確認すると、その場で息を整える。全力疾走でここまできた為に息が絶え絶えだ。膝に両手を突く。
「はぁ、はぁ、はぁ。何、何なんだよ。見てねぇって、言ってんじゃ、ねぇかよ」
そう言った途端、急に影が出来る。自分の足下を見ていた俺は視線を少し動かす。すると靴が見えた。そして、もう少し動かすと制服が見える。その制服はあの高校生が着ていた制服だった。体中に一気に力が入る。ま、まさか……そんな。
「本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当に?」
俺は恐怖のあまり腰が抜ける。高校生はさっきと全く同じ様に立っている。俺は何とか逃げようと後退りをするが高校生は一歩一歩近づいて来る。
「見た、見たんだ!」
俺はこの恐怖から逃れようと咄嗟に嘘を吐いた。高校生はその言葉を聞いた途端、満面の笑みになって
「本当かいっ、教えてくれないかなっ!」
と聞いてくる。
「さ、さっきの所をき、北に走ってった」
俺はその代わり様に一瞬呆気に取られたが必死になって嘘を吐く。高校生は
「そうか、ありがとう!」
と嬉々として言うと駆けていった。俺はその後ろ姿が見えなくなっても、その場から動くことが出来なかった。

質問

執筆の狙い

作者 若竹多留衣
p176094.amixcom.jp

ホラーを書いてみたつもりなのですが、どうなのでしょうか。

コメント

夜の雨
ai201169.d.west.v6connect.net

「質問」読みました。

なかなかいい感じですね、ホラーになっていました。

つまり常識の範囲を超えたことをしてくる人間の理不尽さがホラーになっていると思いますが。
ふつうなら一度相手の質問に返答をすれば、それで終わりですが。
相手の高校生風の男は、主人公を疑っているのか、何度も同じ質問をしてくる。
だから主人公の高校生もストレスを感じるのかもしれないのですが、「御作の読み手」もストレスを感じる。
それで読み手は、主人公と同じ目線になる。
このあたりが作者さんのねらい目ではないかと思いますが。
ショートショート的なホラーで、これはこれで完成していると思います。

この作品を膨らましたら短編になると思います。

御作のラストの後に主人公が「食パンをくわえている女子高生」を見かけるとか。
そしてその女子高生と関わっていく。
もちろんやばいことになっていくという展開です。

「食パンをくわえている女子高生」 ← これは、御作のラストの直後でもよいし、学校についてからでもよいし、帰宅した主人公が自宅でテレビを観ていてドラマの中に出てきてもよい。もちろんスマホの画面でもよい。
ちなみに「帰宅した主人公が自宅でテレビを観ていてドラマの中に出てきてもよい。」この場合は、謎の高校生風の男がどうして「食パンをくわえている女子高生」を追いかけていたのかがドラマの展開でわかる。ホラー仕立てにすればよい。ドラマのラストにテレビの中から主人公に「食パンをくわえている女子高生」見かけませんでしたか? と、尋ねさせても面白いのでは。
ドラマの中に主人公が出てきても面白いのではありませんかね。

それでは頑張ってください。


お疲れさまでした。

狐塚
133.106.48.132

質問、読ませていただきました。
文章がうまく、オリジナリティがあると思いました。高校生の容姿や表情等をもう少し描写すると、読者の頭の中に映像として浮かび上がり、余計に怖さが増してくると思うのですが、いかがでしょうか?

偏差値45
KD111239160109.au-net.ne.jp

>「本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当に?」

実際、これ程くどいわけではなく、
>「本当の本当の本当に?」
>「本当の本当の本当の本当に?」

この程度は、質問を受けたことがあるのかもしれませんね。
もちろん、内容は異なるのでしょうけど。

ふざけている。あるいは、からかわれている。おちょくられている。
そんな感じに受け取りますね。
そう解釈すると、ホラーという雰囲気でないですね。

若竹多留衣
p176094.amixcom.jp

夜の雨さん、ありがとうございます!
ホラーになっていた様でほっとしました。
どうやら私には作品を膨らませるのが苦手な様でして……
出来る様に努力していきたいです。

若竹多留衣
p176094.amixcom.jp

狐塚さん、ありがとうございます!
確かに、そこら辺をちゃんと描写すれば良かったですね。

若竹多留衣
p176094.amixcom.jp

偏差値45さん、ありがとうございます!
解釈の仕様によってはホラーにならないですか。
確実にホラーと感じるモノを書ける様になりたいですね。

通りすがり
119-173-139-201.rev.home.ne.jp

おはようございます

吾妻ひでお「インド人が来る」を思い出して、
検索したら、pixivにあがっていました。
ネットはすごい。長く記憶され、愛される作品と
作者もすごい、とつくづく思いました。
これは、筒井康隆のパロディで、さらに
ガンダムのララァだとわかると、さらに面白いという
多重パロディ、引用なんですよね。

冒頭をコピペさせていただきました。ご容赦を。

 「はぁーあ、何で夏休みに学校に行かなきゃいけないんだよぉ」
今日は登校日だ。俺は手提げ鞄を片手に持って真夏の通学路を歩いていた。
「あちぃーなぁ」


一つのセリフの中に、事情は基本一つでいいと思います。
「はぁーあ、夏休みなのに白けるなぁ」
「学校なんざ行きたくないよぉ」
そのうえ、今日は、格段に暑い。

という感じに、バラしつつ、性格、状況を出していくのは
いかがかなと。

太陽の強い光による熱とアスファルトから来る熱気、
うるさ過ぎる蝉の声にイライラとしていた時、

もっとシンプルに五感に響くほうがいいかなと。
純文学寄りだなと感じました。
(アイス、食いてー)でも、十分、夏の暑さ、
休み中に登校するうざさは出せるかな、と。

前から男が1人駆けてくる。男は制服を着ている。
見た感じ高校生だろうか。
俺は特に気にする事なく

↑ 男、制服、高校生か? と
十分、気にしているのでは?(突っ込み入れて、スミマセン)

高校生に声をかけられた。

そいつ、その子、彼、でよろしいかな、と。

ホラー、恐怖、怖いって何だろうと改めて
考える機会をいただきました。
ありがとうございます。

「なんで自分がこんな目に」
いきなりGが出るのも、深夜の悲鳴も
世界はホラーてんこもりですね。

不条理で、姫野カオルコ「人呼んでミツコ」を
思い出しました。閉館間際の図書館のところ、
面白いです。

若竹多留衣
p176094.amixcom.jp

通りすがりさん、ありがとうございます!
ご指摘を頂けて嬉しいです。それにツッコミも入れて頂けてとても嬉しいですね。
何処が悪いか分かりますしね。

通りすがり
119-173-139-201.rev.home.ne.jp

こちらこそ、ありがとうございます。

みなさまの新規投稿のペースに驚きつつ、
8面から7面へとさかのぼる方法をとり、
楽しく拝読しています。
新作でも、こちらのリライト再投稿でも、
また楽しみです。
最新投稿が、最古の201作目になって、
お別れするまで3か月くらいあるようなので、
別のを書こうか、推敲しようかと決めるのに
ほどよい冷却期間だなと思いました。

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