作家でごはん!鍛練場
コウ

最後の冬

純さんへ

「もう、俺に関わるな。これ以上つきまとうなら、電話番号もアドレスも変える」
純さん。何でそんなこと言うんよ。千晶のこと、そんなに嫌いなんか? 話すだけでも、だめなんか? 悲しなって、どうしてええんかわからんようになって、この手紙書くこと思いつくまでは、ずいぶん悩んだんやで。
 それにしても手紙って、いざ書こう思うたらけっこう難しいもんやなあ。言いたいことはいっぱいあるんやけど、何から書き始めたらええんか、さっぱりわからんわ。そんでも千晶にはこれしか思いつかんかったし、返事がなかったら連絡を取れるのも最後になるかもしれんのやろ? 千晶、どんなに時間がかかっても最後まで仕上げるから、ヘタやっても辛抱して読んでな。
 純さんがいっつも言うように、千晶はバカや。中学で勉強についていけんなったから、高校にも行ってない。そやから、ろくに言葉も知らんし、むつかしい漢字もよう書かん。絶対に、笑わんとってな。この手紙も、お店の帰りに買うた小学生用の国語辞典を引きながら書いてるんよ。
 純さんは、初めて千晶のお店に来た日のこと、覚えてるか? 考えてみたら、この話は今まで何べんもしたなあ。その度にバカの一つ覚えやって、うっとうしがられたわ。けど純さんもほんまは怒ってたんやのうて、照れ臭かっただけなんやろ。うちには、わざと不機嫌な顔を作っとったように見えたで。そやから、もう一回だけこの話をさせてな。
 部屋に入ってきた純さんは、千晶を見るなり「ブサイクやなあ」って、言うたんやで。うちかて、家に鏡ぐらい持ってるわ。自分が美人やないことくらいは、知ってる。そんでも、面と向かって言うことやないやろ。あのときは、ほんま腹が立ったわ。
 それにそのあと、うちの私生活のことを根ほり葉ほり聞いたやんか。あんな店ではルール違反なんやで。そやから、最初は純さんのことを嫌な客やと思うた。千晶、口も利かんと服を脱ぎ始めたやんか。あれ、ほんまに怒っとたんやで。もう、早うすること済まして帰って欲しかったわ。
 そんな純さんがフトンの中に入ったら、急に無口になったんよな。赤ちゃんみたいに、ずっと千晶の大きゅうもないおっぱいにしゃぶりついて、離さんかった。嘘みたいにおとなしゅうなって、ちょっとおどろいたわ。
 やっと終わって、これで帰ってくれるんかと思うたら、今度はうちの太腿の間に足を入れてきたよな。あれ、ほんまにびっくりしたで。純さんには言わんかったけど、うちもお母ちゃんの足の間に足をつっ込んで寝るんが、大好きやったんよ。すごく懐かしゅうに感じて、純さんのお母ちゃんになった気分やったわ。
 なんや胸が熱うなってきて、そのままにしといたら、今度は何思うたか、純さんから自分のことを話し始めたんよな。詩を書いてること、お父さんもお母さんも死んでおらんこと、千晶と同じで海の近くで育ったことなんかもいっぱい話してくれた。うちな、話聞いとったらだんだん純さんのことが愛しゅうに思えてきたんよ。このまま別れたら、もう二度と会えんような気がしてもうちょっと話したかった。
 延長料金を気にする純さんにお金はいらん言うて、仕事の終わる時間まで引き止めたんは千晶やったな。それから帰りに二人でラーメン食べて、アパートまで送ってもろうたんが、いっしょに住み始めるきっかけやった。
 うち、話も面白うないし、トロいやろ。それにいつまで経っても訛りが抜けんかったから、店長にも怒られ通しやった。きっと、緊張してしまうんやろな。東京弁で話そうとしたら、途端に言葉が出んようになるんよ。そんなこともあってお店でも浮いとったし、こっちには誰も友だちがおらんかった。
 そやから、それからの毎日がほんまに幸せやったわ。
 千晶の仕事、楽そうに見えるかもしれんけど、結構しんどいんやで。くたくたになって帰って来て、パン屋さんの角を曲がったら部屋の明かりが見えるやろ。そこで純さんが原稿を書きながら待っててくれる。そう思っただけで、体中がポッカポッカになったわ。
 そのころの純さんは日雇いで工事現場へ行ったり、安いお金しか貰えんアルバイトを長い時間やっとって大変そうやった。ほんまはごっつ疲れてるはずやのに、それでも毎日真剣な顔して、夜中まで詩を書いとったな。
 机に向かっている時の純さん、ほんまカッコ良かったで。なんや知らんけどオーラみたいなものが出とって、話しかけることもできんかったわ。純さんが書く文章はやたらと漢字が多いし、中身もむつかし過ぎて、うちにはぜんぜんわからんかった。
 それでも千晶は、純さんの書いた原稿を見るのが大好きやったんで。時々うちが後ろからこっそり覗いとったん、知らんかったやろ。隙間をあけて、白い紙の上に並らんでる丸っこくてきれいな字。それ、眺めとったら、ちっちゃい時に見た海のことを思い出すんよ。
 純さんも子どものころは、海の近くに住んでたんよな。そしたらきっと、見たことあるやろ? 冬のちょっとだけ風がある朝、高い所から見たら波がキラキラ光ってきれいやったよなあ。夕べの星が落ちたんやないかと思うくらいやったわ。
 うちには、純さんの書いた原稿もそんな感じに見えたわ。千晶、自慢やないけど、昔から勘だけはよかったんよ。一目見た時に、すごい作品やってわかったで。そんな作品を世の中で一番に見てる思うたら、うちまで偉うなった気分やった。
 こんだけ頭が良うて努力している人が、どうして詩人になれんのやろ。うちには、それがふしぎでならんかった。きっと、忙しすぎるんや。そう思うた千晶が、純さんに頼み込んで、仕事辞めてもらうたんよな。
 けど、うちな。後悔してる。
 それからの純さんは、変わったわ。自分では、気が付かんかったんか? 昼間っから酒を飲みだして、パチンコや競馬場にもしょっちゅう行くようになったやろ。お金使いも荒うなったし、同人誌の会合や言うて朝まで帰って来んことが何度もあったわ。
 暫くしたら、机に向かうことさえもなくなったやんか。
 出会うたころの純さんは「必ず賞取って、詩集を出す」って、言うとったやろ。そのギラギラした目が、うちには眩しかったわ。この人やったら絶対にやりとげる思うたし、そんな純さんが頼もしかった。それやのに、いつの間にかうちが詩のことを話すだけで怒りだして、すぐに手が出るようになってしもうた。
 別に遊ぶことを、どうこう言うてるんやないんやで。感動させる詩を作るためには、いろんなことを経験した方がいいって言うてたやろ。
 殴られても蹴られても、きっとうちが悪いんやから仕方ないわ。純さんが早う賞が取れるような詩人になってくれるんやったら、千晶はなんぼでもがまんできる。
 それにお金なんか千晶が持っとっても、下らんものに使うだけや。純さんが引け目を感じる必要は何もないし、遠慮することなんかない。堂々と、使うたらええんよ。
 ただ、うちは純さんに詩を書いて欲しかった。色々とうるさいこと言うたかもしれんけど、どうしても詩人になるのだけは、諦めて欲しゅうなかったんや。
 千晶はアホやから、一生掛かっても詩なんか書けん。将来の夢なんか、これまで一回も考えたこともなかったわ。そやから、純さんを応援することで、うちも一しょに詩人を目ざしてるつもりになっとったんやろな。考えてみたら、純さんにとっては迷惑な話やなあ。
 ちょうどそんな頃やった。今の作家さんはパソコンで原稿を書いてるって、お客さんが教えてくれたんよ。うち、これや思うた。パソコン使こうたら何がええんかなんて、千晶にはわからん。けどそれがあったら、また純さんが詩を書いてくれるやないかって、そんな気がしたんよ。
 ほんまやったらそのお客さんにお礼を言わんといかんところやったのに、うちも失礼よなあ。追い立てるようにして帰ってもろうて、大急ぎで店長の所に早退けと前借りのお願いに行った。
 あの店長の話が長いんは、前も言うたやろ。千晶、これまでも前借りが多かったから散々嫌味を言われたんやけど、もうそれどころやなかったわ。お説教を聞かされてる間も店の閉まる時間が気になって、時計ばっかり見とった。
 やっと大っきな電器屋さんに着いたときには、もうシャッター閉まりかけてたわ。
 千晶、よっぽどあせっとったんやろうなあ。店の中に飛び込むなり、「ここで一番高いパソコンください」って、大声で叫んでしもうたんよ。そしたら片付けしとった店員さんが、皆振り返って千晶の方見るんで。メチャクチャはずかしゅうなってうつむいとったら、今度はみんなが一斉に笑い始めたわ。もう最悪やろ。
 なんとか頼み込んで、パソコン売ってるコーナーへ案内してもろうたんやけど、うちに選べるわけがないやんか。しゃあないから、一番目立つところに置いてあった最新モデルって書いてあるノート型のにしたわ。ついでに気利かせて、印刷するやつも付けてもろうた。
 あれな、上級者が使うやつなんやて。店員さんが、文字書くためだけに使うのはもったいないって言うとったわ。そんなん、いらんお世話よなあ。うちは純さんに一番の詩人になって欲しかったから、一番ええのやないといかんかったんや。
 重いから配送してくれるって言われたけど、早う純さんに見せとうて断ったわ。あれ持って帰るの、大変やったんやで。
 アパートが見えたときは、もう胸がドキドキしてたまらんかった。きっと純さんは、どんな顔するやろ。そんなことを考えたら、うでが痛とうなっとったことも忘れて、気がついたら走り出しとったわ。
 やのに、なんやの。純さんは、それを見るなり怒り出したやんか。
「余計なことはするな。ボタンひとつで何度でも書き直せるパソコンなんかに、俺の魂が込められるか。金があるのなら、ムダな買い物なんかせず、俺に回せ」
 純さんはどなり散らして、千晶のお腹を思いっきり蹴ったやろ。あのときの純さんは、ほんまに怖かったで。拳が白うなるほど握りしめて肩が震わせてる姿が、うちには泣いているように見えた。あんなに悲しそうに怒る純さんを、初めて見たわ。
 それからは、どんなに話し掛けてもじっと考え込んだままで、ひと言も口利いてくれんかったなあ。うちはアホやから、何がそんなに気に入らんかったんかがわからんかったんよ。ただオロオロして、純さんに謝るくらいしかできんかった。
 それでも夜中にお腹が痛うなった言うたら、純さんは顔青うして心配してくれたんよな。ガマンできる言うたのに、おんぶして病院へ連れて行ってくれたやろ。ほんまにびっくりしたで。
 あの時千晶、純さんの背中でずっと泣いとったやろ。あれって、痛うて泣いとったんやないんで。うれしゅうて、泣いとったんや。あんまり背中が優しゅうて、暖かこうて、ずっとしがみつて離れとうなかったんよ。千晶な、まだ病院に着きませんようにって、こっそりお祈りしてしもうたわ。
 そういえばあのパソコン、一週間も経たんうちになくなったなあ。友達に貸した言うてたけど、あれウソやろ。本の間に、リサイクルショップのレシートが挟まってたで。なんで、そんなウソつくんよ。お金がいるんやったら、言うたらええやんか。これまでやって、何とかしてきたやろう。
 それから少しすると、純さんは行き先も言わんでアパートから出て行ってしもうた。やっぱり、あのパソコンのことが原因やったんか?
 ごめんな。千晶、文字に魂を込めるなんて考えもつかんかったし、純さんが喜んでくれると信じとったんよ。もう余計なことせんから、許してや。
 あれから、探しまわったんやで。電話にも出んし、だれかの聞こう思うても純さんは友達の誰とも会わせてくれんかったやろ。どこ探してええんか、見当もつかんかった。それでも時間を作っては、近所のパチンコ屋や居酒屋なんかにも行ってみたんよ。
 部屋で見つけたライターのジャン荘で見つけたときには、足がふるえたわ。それやのに純さんはうちをチラッと見ただけで、後は知らん顔してゲームを続けてた。部屋の隅でずっと待っとったら、新しい住所を書いた紙切れを渡して追い返したやんか。それも犬っころにするみたいに、シッシッって手で合図して。
 そら何度も電話して、うっとうしかったかもしれん。それでも他に方法がなかったんやから、しゃあないやんか。純さんに会えたら、千晶は土下座でも何でもして謝るつもりやったんで。許してくれるまで、何度でも謝るつもりやったんやで。
 ごめん。なんや、グチばっかりになってしもうたわ。こんなことばっかり書いとったら、読む気もせんようになるわなあ。けど、これだけは言わせて。
 なんやかんや言うても、純さんのことが世界中で一番好きなんよ。頭が良うて男前の純さんが自慢やった。うちみたいな女を彼女にしてくれたことを、感謝してたんで。
 夜は純さんの足を、太ももに挟んで寝てたやろ。そうやって抱き合っているときが、一番幸せやった。うちの大好きなやさしい純さんになって、いろんな話ができたもんな。
 純さんに抱かれたら、体がフニャフニャになるんよ。当たり前やけど、店とは全然違う。たとえがおかしいかもしれんけど、干しシイタケをお湯で戻したら、また生き返ったみたいにツヤツヤになるやろ。うちもそのシイタケになったみたいに軟らかく、膨らんで行くんが自分でもわかるんよ。「千晶の太ももは、もちもちして気持ちいい」って、いっつも言うてくれてたやんか。あれ、きっとそのせいやと思うわ。
 千晶、もうこれ以上は純さんに嫌われとうない。そやから、これが最後のお願いにする。返事がなかったら、絶対に付きまとうたりはせんつもりや。それだけは約束するから、もう一回だけチャンスをください。
 これからは、一日一回しか電話せんように我慢する。約束する。千晶に悪いところがあるんやったら全部直すから、何でも言うこと聞くから、戻って来てや。せめて、「もう電話をかけてくるな」なんて言わんといて、な。
 ジャマになるんやったら仕方ないけど、千晶は、純さんがおらんかったら、生きて行けそうもないんよ。ずっとずっと待ってるから、連絡ください。

十月十八日
千晶


千晶へ

 あまりの頭の悪さに話しているといらいらするし、お前の顔を見るのもうんざりする。本当は返事など書きたくもなかったが、餞別のつもりで俺の本音を教えてやる。千晶は、一から十まで話しても半分しか理解できなかった。そんな知性も教養の欠片もないお前を、友人に会わせられるわけがないだろう。もしも千晶が俺の女だなんて知れたら、恥ずかしくて道も歩けない。出会った時から嫌いだったし、軽蔑していた。要するにお前は、俺と釣り合ってなかったってことだ。もうこれで、俺の気持ちは分かっただろう。
 いつまでも、俺に纏わりつくな。お前は単なる金づるとしか見て田舎ったし、からかってみるのも面白いと思っただけだ。それなのに何を勘違いしたのか、あれこれとお節介を焼く。しまいには、詩のことにまで口を出してきた。手紙さえまともに書けないお前に、文学や詩の何が分かる。俺の苦悩や葛藤が理解できるのか? 折角湧きかけていた創作意欲は、お前のおかげで萎えていった。すべては千晶のせいだ。
 しかたがないから、一つだけ忠告しておいてやろう。千晶は、どうしようもない馬鹿で器量も悪い。あの泣く前に見せるあの歪んだアヒル口は、散々笑わせてくれた。お前に取り柄があるとするなら、その脳天気な笑顔だけだぞ。それを忘れず、いつも笑って生きろ。そんなお前でもいいと言う物好きな男が現れたら、すぐに迷わず寄り掛かれ。くれぐれも言っておく。選り好みなんかするんじゃないぞ。お前には、選ぶ権利や資格などない。それから、今の仕事はもう辞めろ。愛嬌も色気もない千晶には、向かない仕事だ。工場での単純な作業くらいなら、何とかできるだろう。寒がりの千晶は、故郷でも帰って地道に暮らすのがお似合いだ。
 ていねいに説明してやったつもりだが、きっと理解できないだろうな。まあ、いい。俺はお前と別れたおかげでまた創作意欲も湧いてきたし、やっと賞を狙えそうな構想が浮かんだ。世の中に、無意味なものなど存在しない。冬の寒さにも、もしかしたらお前にだって生きる価値があるのかもしれない。それをもう少し突き詰めれば、良い作品が書けそうな気がする。俺は近々、静かなところで執筆に入るつもりだ。出来上がった原稿を送るから、机の中に残してある名簿を見て、同人誌の仲間に渡してくれ。これは、千晶へのの命令だからな。それが済んだら、俺のことはすっぱりと忘れろ。もうお前と頼を戻す気など一切ないし、係わるつもりもない。
 ルビは、振らないことにした。色々と考えてみたが、もうどうでも良くなった。お前がこの手紙を読めなければそれはそれで良いし、読みたければ辞書でも引いて勝手に調べろ。俺にとって、お前と暮らした一年半は無駄な時間だったし、消し去りたい過去でしかない。お前が、俺のことを覚えている。そう考えただけでも、反吐が出る。分かったか、俺はこんな男だ。これ以上書いてもお前の悪口ばかりになりそうなので止めるが、悔しければ俺を見返してみろ。これが、千晶に残す最後の言葉だ。

純一


純さんへ

 こんな手紙書いても、もう読めんのやなあ。それでも他に話す相手もおらんし、やっぱり純さんに聞いて欲しいから書いてみるな。 
 純さんが死んでから、もうひと月がたったんやな。なんや、あっと言う間やったわ。
 えらいやろ、千晶。お葬式の準備や借りとったアパートの片付け、ややこしい手続き、ぜんぶひとりでやったんやで。純さんも生きとったら、「ようかんばったなあ」ってほめてくれたやろかなあ。
 市役所で手続きしとったら、窓口の人から内妻の方ですかって、聞かれたわ。それって、結婚してないお嫁さんのことやってな。うちって、純さんのお嫁さんやったんやろうか。なんやテレくそうて、顔が熱うなってしもうたわ。
 長野の警察から電話がかかってきたときは、ほんまびっくりしたで。いきなり、北アルプスの山小屋で純さんが凍死したって言われても、何のことかわからんわ。うち、電話口で何度も聞き直してしもうた。
 電話してきた人、ひどいんやで。泣き出した千晶に、すぐにでも遺体を引き取りに来てくれ言うんよ。純さんの気持ちは手紙読んで知っとったから、うちも最初は断ったわ。そしたら、何言うたと思う? 「薄情や、来れんのやったら身内の人に連絡してくれ」やって。そんなことを言われても、親せきの人の連絡先なんかだれも知らん。千晶が行くしかないやろ。
 長野って初めて行ったけど、寒いところやったわ。どの山もまっ白で、降ってる雪の粒も、今まで見たことないくらい大きかった。純さんが死んだ山、警察署からも見えるんやなあ。千晶が見たい言うたら、わざわざ屋上まで上がって教えてくれたで。見わたす限りに黒と白だけの高い山がつながっとって、吸い込まれそうでおそろしかったわ。
 あんなところへ一人で行ける純さんは、やっぱりすごい人やったんな。
 それにしても、静かな所やったら他にもあるやろ。どうしてもっとあったかい所へ行かんかったんよ。装備もひん弱やし、冬山をなめてるって、警察の人が怒っとったで。寝袋も冬用やなかったし、食べるもんやってお酒と軽食しか持ってなかったらしいやんか。何をそんなにあせっとったんよ。
 あと持っとったんは、小銭が入ったお財布と千晶が出した手紙くらいやったってな。帰りの電車賃、どうするつもりやったんよ。カッコつけてる場合やないやろ。お金なかったら、千晶に言うたらええやん。どうせ、捨てるつもりの女やんか。いつものように、お店から前借りさせたらええんよ。
 やっぱり、そんなことも頼みとうないほど、千晶のことがきらいやったんか? うっとうしゅうて、顔も見とうなかったんか? いっぱいお金使うて準備しとったら、寒い思いもせんですんだし、死ぬこともなかったやんで。賞取れるような詩も、書けてたかもしれんやないの。
 一番大事な原稿用紙も、忘れとったんやな。紙袋のうらになぐり書きしとった詩が、かわいそうやったわ。あれ、いつもより短かったけど完成してないんやろ。いっつも千晶のことをバカにするわりには、純さんもトロいとこあるんやな。
 お葬式な、気合い入れとったのに、拍子抜けしてしもうたわ。純さんはりっぱな人やし、付き合いもたくさんあると思うてた。そやから絶対にハジかかすわけにはいかん思うて、準備したんやで。また店から借金してせっかく大っきい会場を借りたのに、見送りにはたった三人しか来てくれんかった。
 同人誌の名簿見て、千晶が直接連絡しただけでも七人おったんよ。その人たちにも、知り合いに伝えて欲しいって言うとったのに、どうしたんやろな。うち、はらが立って、来てくれた人に聞いてみたわ。けど、三人とも首を振るだけで、お焼香すませたら逃げるように帰ってもうた。
 純さんから頼まれとったあの詩は、友だちに渡さんかったで。なんや、渡せるふんい気やなかったわ。それにあんな紙になぐり書きしとったし、下書きやったら純さんの値打ちを下げるかもしれんやろ。
 段取り悪うて、ごめんな。純さんも、最後に会いたかった人がおったんやろう? 大事な友だち、どこにかくしてたんよ。なんで、連絡先だけでも残しといてくれんかったんよ。会わせてあげたかったけど、どうしようもなかったやないか。
 それも、うちが悪いんよな。ブスでトロいだけやのうて、あんな仕事してるから友だちに紹介できんかったんやろ。純さんに申しわけのうて、自分が情けないわ。
 千晶やって、この仕事はやめようとは思うたんやで。けど純さんには、うちのわがままで仕事やめてもろうたやんか。どんなに考えても、こんなバカが二人分の生活費をかせごう思うたら、他にないやろ。仕方ないやんか。
 うちかて、どんな仕事でもできるかしこい女に生まれてきたかった。純さんが友だちに自慢しとうなるくらい、きれいに生まれたかったわ。
 何度も言うけど、純さんには詩を書いて欲しかった。どうしても、夢をかなえて欲しかった。そのためやったらどんなことでもするって、決めてたんよ。
 そうそう、今日のお葬式。気のせいやろか、お坊さんのお経、短かった気がするわ。お焼香する人も居らんなったら、声も小そうなってすぐに終わってしもうた。気がついたら、アホみたいに広い部屋の中に純さんと二人きりになっとったわ。
 そしたらあんまり静かで、千晶もさびしゅうて、もうどうでもようなって、思いっきり大声で泣いたった。きっと、ひどいアヒル口になってたんやろな。純さんは、お腹抱えて笑うたやろう。
 もう、ええか。正直に言うわ。
 千晶な、やっと純さんの友だちに会える思うて、心の中ではお葬式を楽しみにしてたんよ。きっとみんなが涙流して悲しんでくれる。千晶を彼女やと思うて、りっぱなお葬式やったってほめてくれる。そんなこと想像してたら、前の日はなかなかねむれんかった。それでも早起きして、化粧も念入れてやったんやで。
 それやのにあんまり泣いたもんやから、鼻水と涙でぐちゃぐちゃになってしもうた。後で鏡見たら目のまわりまっ黒で、見えたもんじゃなかったわ。まあ、純さんの友だちにそんなみっともない顔を見せんですんだだけでも、良かったんかもしれんな。
 そうそう、やっと納骨の段取りもついたで。来週には、近所のお寺さんがあずかってくれるって。お墓はよう建てんから、他の人と一しょのところになるけど許してな。そのかわり、いっぱい会いに行くつもりやで。
 納骨のときにこの手紙入れるつもりやから、書けるんもあと一〇日くらいやわ。純さんとはまだ話したいことがいっぱいあるんやけど、しゃあないなあ。それまでは、できるだけ書き足していくつもりやから、ガマンしてつきおうてな。
 千晶、純さんのことが忘れられるかなあ。今のところ、ぜんぜん自信ないわ。

十二月十四日


 純さん、このアパートに帰って来てくれたことがあったんか? となりのおばちゃんが、見かけたって言うとったで。深夜の清掃のパートが終わって朝方帰ってきたら、前の街灯の下で、ボーッと立っとったそうやないの。
 気の毒やったわ、おばちゃん。声もよう掛けんし部屋にも入りづろうなって、コンビニで時間つぶしとったらしいで。そんなに暗い顔して、何を考えとったんよ。半時間くらいして帰ってきた時にも、まだそこに立っとったんやってな。おばちゃんに気がついたら、あわてて走って行ったらしいやんか。
 寒いのに、なんで部屋へ入って来てくれんかったんよ。台所の電気、ついとったやろ。純さんが出て行ってからは、いつでも帰って来てもええように、カギも閉めんで待っとったんやで。
 もしかしたらあの手紙って、純さんがその時に自分で届けてくれたんか? 今、気になって封筒見てみたら、切手のところに郵便局のハンコが押してなかったわ。
 どうしてやの。わざわざ持って来てくれたんやったら、なんで千晶に会うてくれんかったんよ。手紙に、あんなきついことを書いたからか? 
 そら、あれを読むのはつらかったで。けど純さんはうちがかわいそうや思うて、直接言えんかったんやろ? 千晶が返事欲しいって書いたんやから、そんなこと気にすることなかったよ。
 口は悪うても、だれよりもやさしい気持ちを持ってることは、千晶が一番知ってる。本音を聞いてあきらめもついたし、感謝せんといかんくらいや。そやから手紙は、今もずっとまくら元に置いてねてるんよ。
 そのせいやろうな。夕べ純さんが夢に出てきたわ。出会うて最初の夏やったから、もうだいぶ前のことになるんやな。一ぺんだけうちを、祭りに連れて行ってくれたことがあったやんか。その時の夢やったわ。
 花火が上がったからやろか、すごい人出でやったなあ。入り口は歩くのにも前の人がじゃまで、足を半歩分ずつしか出せんかった。千晶の田舎にも夏まつりはあったけど、あんな大っきいのは初めてやったわ。道の両側に夜店が出てて、それが見えんなるくらい遠くまで続いてるんやもん。千晶があんまりはしゃぎ過ぎて、純さんに怒られたんよな。
 あの日純さんは、方向オンチの千晶がまいごにならんように言うて、初めて手をつないでくれた。大きゅうて、柔らかい手やったわ。うち、恥ずかしゅうて、最初のうちはずっと足元だけ見て歩いとった。
 そやから、今でも目にうかぶんよ。純さんがはいとった茶色のローファーと、うちの黄色いサンダル。それがブランコみたいに、かわりばんこで行ったり来たりしとったわ。足の長さがちがうからやろな。千晶は一生けんめい純さんに合わそうとしたんやけど、少し歩いたらまたバラバラになってしもうた。
 その夢、おかしいんやで。純さんの手が、ふわふわの綿がしになってしまうんよ。千晶が心細うなって強くにぎったらにぎるほど、どんどん小そうなって、最後は溶けてなくなってしもうたわ。そしたら、二人の間に知らん人がどんどん割り込んで来てな。心細うなった千晶が大声で名前を呼んでるのに、純さんはうちを見つけてくれんのよ。そのうちにどんどん遠くに行って、人ごみの中に消えてしもうた。
 夢でも、さみしいことがあったら泣くことがあるんやな。目がさめたら、目の周りがカピカピになって、まぶたがすぐには開かんかったわ。
 そういえば、夜店で千晶に買うてくれた光る指輪、覚えてるか? うちの顔も見んと前を向いたまま、「バイト代が出たから、何でも好きな物を買え」って、ボソッと言うたんで。千晶、お客さん以外の男の人から物もろうたことなかったから、まい上がってしもうたわ。
 何でもええって言われても、すぐにはよう決めんかった。純さんにせかされながら、何軒も夜店を回ったんよな。やっとあの指輪に決めのに、「小学生じゃないんだから、別のものにしろ」って、また怒られたわ。
 純さんて、詩書いてる割りに鈍感なんよなあ。女心がわからんか? たとえオモチャやっても、千晶はやっぱり指輪を買うて欲しかったんよ。そやから意地になって「これやないと、嫌や」言うてダダこねたら、やっと苦笑い笑しながら買うてくれた。
うれしかった。おわんの形したちっちゃいプラスチックの中に、赤、青、緑の光がピカピカしとって、本物の宝石よりもずっときれいやったわ。小さすぎて薬指には入らんかったけど、あれ、千晶の宝物になったんやで。次の日には宝石箱まで買うて来て、大事にしもうたはずやのに忘れとったわ。
 たしか引き出しに入れたことを思い出して探してみたら、奥の方から出てきたで。電池が切れてるんやろうな。もう光らんなっとったけど、あのころを思い出してなつかしかったわ。あの指輪、今度電気屋さんに寄って直してもらうな。

十二月十六日
 

 報告、報告。千晶な、大発見したで。
 純さんからの手紙、読み返すのが怖うて、ずっと封筒に入れっぱなしやった。けど、純さんがわざわざ自分で届けてくれたんやろう? うち、もう一回勇気を出して、読んでみることにしたんよ。今日は久しぶりの休みやったから、それを一日中ながめとった。
 あれ、読むのに苦労したんやで。千晶には、読めん漢字や意味わからん言葉が多すぎるわ。一つずつ国語辞典引いて、それを手紙のあいてる所に赤ペンで書き込んどったら、一日かかってしもうたわ。
 そんなこと思い出しながらボーッとながめとったら、さっき気がついたんよ。うち、もしかしたら天才かもしれんわ。こんなこと純さんの前で言うたら、また「バカか」ってツッコミが入るんやろうな。けど、ほんまにものすごいこと見つけたんで。
 段落って言うんか? 一つ下げて書いてある頭の文字を並べていったら、『あ、い、し、て、ル』になるやんか。これって、偶然やろか? そんなわけないよなあ。純さんのことやから、素直には書けんかったんやろう。きっとそうや。千晶を甘う見過ぎたなあ。頭は悪いけど勘だけはええって、前から言うとったやろ。
 怒っても、あかんて。かってに天国に行った純さんが、悪いんやからな。もう違うって言えんのやから、千晶はあの手紙をラブレターやと思うことにしたで。
 ラブレターなんか、うちはこれまで書いたことも、もろうたこともなかったんよ。そやからもううれしゅうて、うれしゅうて、手紙にいっぱいキスマーク付けたったわ。
 けどな、何度も何度も読み返しとったら、胸が苦しゅうなって涙が出てきたんよ。どうしてやって聞かれても、よう答えん。何か変な感じがするんよな。
 ウソやろ、純さん。もしかしたら山へ行ったのって、死ぬつもりやったんか? あれラブレターやのうて、遺書いうやつやったんか? ほんとは、もう詩なんか書きとうなかったんか? そやから千晶が詩のこと言うの、重荷やったんか? 純さんが死んだのも全部、うちのせいなんか? 
 ねえ純さん、早う違うって言うてや。お前の勘違いや言うて、怒ってや。
 あの手紙、『愛してる』やったやんか。『愛してる』って、今も続いてるってことなんやろう? 愛してるって、相手のことを思いやるってことなんやろう? そしたら、どうして千晶を泣かすようなことばっかりするんよ。
 うちは、純さんのためやったら何でもしてあげたかった。よろこぶ顔が、いっつも見たかったんよ。こんな何の役にも立たん女でも、だれかに頼られていると思うたら、それだけで幸せやった。
 そやから、千晶は今でも胸張って、純さんを愛しているって言える。
 純さんは、そう思わんかったんやろ? そしたら『愛してる』なんて、ウソやんか。なんでそんな、ウソをつくんよ? どうして『愛してた』って、終わったことにしてくれんかったんよ。
 もう、なんでも言うたるわ。純さんは、いつから千晶みたいなアホにウソつかんといかんほど、情けない男になったんよ。そんな弱虫になったんや。純さんのことなんか、大嫌いや。見そこのうたわ。悔しかったら、ユウレイにでもなって出てきてみい。ユウレイの純さんなんか、何も怖うなんかないで。もう千晶をなぐることもできんし、髪を引っ張り回すこともできんのやで。悔ししかったら、なんか言い返してみいや。
 ああ、すっきりした。
 ふしぎなんよな。うち、今になってやっと純さんとも、素直に話せるようになった気がするんよ。手紙やからかもしれんけど、出会うた時からもう一回やり直せたら、もっと仲良うできたやろうになあ。
 詩くらい、書けんでもええやんか。生き取ったら、もっとええことがあるかもしれんやんか。また、書けるようになるかもしれんやんか。うちのことバカ、バカ言うけど、純さんこそもっとバカやわ。ほんまのアホや。そんな純さんのこと考えとったら、よけいに悲しゅうて、はがゆうて、どんだけ泣いたかわからんわ。
 無理なんはわかってるけど、やっぱり純さんに帰って来てほしいわ。

十二月十九日


 夕べのニュースで、今年初めての雪になるかもしれんて言うとったけど、当たったわ。朝起きてカーテン開けたら、窓の外の景色が変わっとった。お店から帰るときには気がつかんかったから、朝方に降ったんやろな。向かいにある工場の屋根も道路もまっ白で、長野に行ったときのことを思い出してしもうた。
 そうそう、さっき買い物についでに、電気屋さんにも寄ってきたで。けどあの指輪、もう光らすことはできんのやって。直して欲しいて言うたのに、お店の人、新しゅう買うたほうが安いって言うんよ。うち、頭きてな。なんぼお金かかってもええから直してくれって言うたった。そしたら使い捨てのオモチャやから、電池を替えられるようになってないんやって。
 人もオモチャも、いっしょなんやな。千晶の大事なものは、全部簡単にこわれてしまうんよな。そんなこと考えとったら、悲しゅうなってまた泣いてしもうたわ。千晶は、純さんを天国に連れて行った冬がきらいや。寒うて暗うて、凍らせてねむらせて、うちの心を悲しゅうさせる冬が大きらいや。なんで、こんな季節があるんやろうな。
 帰り道はいつのまにか北風が強うなっとって、顔が痛いくらいやったわ。道の横に並んでるツルッパゲの木も、服を脱がされたみたいで寒そうやった。ふるえながら、ヒューヒューって泣いとったで。きっと来年もその次の年も、おんなじことをくり返すんやろな。
 それに比べたら、人って幸せやわ。涙が、枯れるって言うやろ。あれって、ほんまなんやな。うち、もう涙も出んようになってしもうた。きっと神さんが、千晶みたいな泣き虫のためにそうしてくれたんやわ。
 今思い出したけど、純さんが最後に書きかけとったんも冬の詩やったなあ。
   
 霜夜を凌ぐ草根は
 暗い地中でひたすら咲き誇るときを夢見る
 仄かな土の温もりだけを頼りに
 息を潜めて再生のときを待つ
 潔癖で峻厳な冬は
 一片の妥協も許さない
 善も悪も一口で飲み込み
 その鋭い牙は容赦なく肉を切り裂き
 生への執着を呼び覚まし者たちにその覚悟を問う
 そして艶やかな新芽を膨らませた者だけが
 やがて天へと向けた一本の矢を伸ばす
 そこで彼らは出会うだろう
 終わりと始まりを結ぶ糸が切れぬようにと
 大地を優しく包み抱くまばゆいほど白く冷たい冬の華に

 あの手紙に書いとったやんか。「世の中に意味のないものはない。それを見つけて、詩にしたい」って。純さんには、冬の意味がわかってたんやろ? あの詩には、それが書いてあるんやろ? こんな千晶にやって、役目があるんやろ? 書き写してみたら何かがわかるんやないかって思うたけど、やっぱり千晶には無理やったわ。
 手紙を読んだ時は、田舎に帰ろうと思うた。もう純さんと会えんのやったら、ここに居ってもしょうないもんな。田舎には、まだお母ちゃんも居るし、少ないけど友だちも何人か残ってる。正直、千晶もさみしゅうて、お母ちゃんの太ももに足入れて寝たいとも思うたわ。
 けど千晶な、やっぱり田舎には帰らんことにした。一ぺんだけ、純さんの命令に逆ろうてみようと思うんよ。そうせんと、きっと純さんのことが忘れられん気がするんや。
 千晶のことが心配で帰れ言うたんやったら、だいじょうぶやで。近ごろお店でも明るうなったって言われるんよ。うち、前より強なった気がする。 
 春までがんばって働いて借金返したら、もっと北の方へ行ってみる。行ったこともない海ぞいの町に住んで、そこで冬の意味を探してみるわ。
 そこでいっぱい笑うて、千晶を大事にしてくれる人、見つけるつもりや。千晶がなんぼあいそ振りまいても、彼氏なんかできんかもしれん。けどな、うちにはちょっとの間だけでも、純さんが居った。それだけで、がんばれそうな気がするんよ。
 ごめんな。いっぱい会いに行くって約束したのに、お墓まいりに行けるんもそんなに長うないと思うわ。もしも千晶が本物のお嫁さんになれたら、ぜったい相手の人連れて会いに来る。その時は、怒ったらあかんで。ようやったって、ほめてな。
 それとな、千晶にも生まれて初めて夢ができたんで。うち、純さんが残していった詩が読めるようになりたい。そやから、夜間の高校にも通おうと思うてるんよ。
 見といてな。こんな寒いだけの冬は、今年で最後にするわ。千晶は純さんが悔しがるくらい、幸せになってみせるからな。
 明日は、とうとう納骨や。この手紙も入れるから、ゆっくり読んでな。純さん、今までありがとう。おやすみ。
 
十二月二十三日
千晶

                     了

最後の冬

執筆の狙い

作者 コウ
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書簡形式で書いた随分前ものを、書き直しました。
おそらく、賛否両論があると思います。
よろしくお願いします。

コメント

南の風
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読ませていただきました。
書簡形式の小説はいいですよね。憧れます。画面で読んでもとても読みやすくてよかったです。冬の詩もよかったです。

ただ私が感じた点は、文章が同じリズムで書いてあることですね。書簡形式にしても、遅い文章と速い文章を書き分けるとよかったかも。つまり前半と中盤(純さんが凍死した辺りから)の文章に変化をつけてみたらどうでしょう。

素敵な作品でした。有難うございました。

コウ
p3004-ipngnfx01kouchinwc.kochi.ocn.ne.jp

南の風さん

読んでいただいたことを感謝します。

>書簡形式にしても、遅い文章と速い文章を書き分けるとよかったかも。
これはそうかもしれませんね。
これからの参考にします。

ありがとうございました。

青井水脈
om126236128174.32.openmobile.ne.jp

読ませていただきました。書簡形式、それも大半が千晶の手紙ですが、特に引っ掛かるところがなく、情景が自然に浮かびました。そういえば近年、長い手紙のやりとりはほとんどしていないので新鮮でもありました。

>段落って言うんか? 一つ下げて書いてある頭の文字を並べていったら、『あ、い、し、て、ル』になるやんか。

まさかの縦読みですね。確かに純だったら、「仕方がないから」「丁寧に説明〜」と漢字で書きそうなので。なるほど。

上松 煌
135.80.105.175.ap.yournet.ne.jp

コウさん、こんばんは

 拝見しました。
だけど、ごめん。
冒頭の「十月十八日 千晶」の手紙部分で挫折しました。
あなたがこうした形で愛されたいという願望をお持ちのことはわかりましたが、どう考えても現実味がなく、後ろ向きな弱い男のカッコつけ夢物語(ファンタジー)という印象がぬぐえないのです。

 内容はモロ、古い昔の昭和の恨歌ですよね。
この感覚はもう、現代人の心象には響かない気がします(つまり、時代遅れ)。
ま、100歩譲って、60、70代のお爺さんなら理解するかも????……。

 と、いうのは、かなり以前、ネットで、
♪着てはもらえぬセーターを
 寒さこらえて編んでます
 女心の未練でしょうか
 あなた恋しい北の宿♪
という、恨歌歌手のフレーズがとりあげられていて、
「イマドキ、こんな女いるかよぉwwww」
と、かなり揶揄され、罵倒されていたのを知っているからです。
あなたの作品も同様の轍を踏んでいる。


 この物語を生きたもの(現実的なもの)にするには、現代として出なく、昭和の時代であることを強調し、その時代色をふんだんに織り込む。
千晶の心情には「うそっ」と首をかしげながらも、同情できる部分もなくはないのですから、古い昔の昭和の話なら、「ああ、貧しい山奥の子がポッと東京に出てきて風俗なんかやってたら自己肯定感がゼロになって、詩なんか書いている男というだけで東大院生に巡り合ったみたいに憧れるかも」
となるかも?
そうなれば立派なお涙ちょうだいものになる可能性があります。
いかがでしょう?

それから、この詩は全くよくないですね。

コウ
p3004-ipngnfx01kouchinwc.kochi.ocn.ne.jp

青井水脈さん

読んでいただき、ありがとうございます。
ちょっと変わったものもあって良いのだろうと、投稿しました。
情景が自然に浮かんだとのこと、素直に嬉しいです。

コウ
p3004-ipngnfx01kouchinwc.kochi.ocn.ne.jp

上松 煌さん

感想をありがとうございます。
まあ、こんな感想も来るだろうと予想していました。


>後ろ向きな弱い男のカッコつけ夢物語(ファンタジー)

ありがとうございます。そのような男を描きたいと思っていました。


>現代人の心象には響かない気がします(つまり、時代遅れ)。

2人の関係は特殊なものですが、この共依存は昭和でも平成でも令和にもあります。
この話には、時代を特定するものを極力排除しています。
私は別に、現代を切り取る必要もないと思っていますので昭和の話として読んでいただいても良いと思っています。パソコン、SMSなどは昭和の2G時代からありますから。

提案は私の意図から外れますが、参考にさせていただきます。

ラピス
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最初は時代が昭和だよなあ、と古さを感じました。もし設定がそうなら、当時のニュースなど時代背景を少し入れるといいかも知れません。

素朴な女性の温かさが伝わり、読後感はじんわり感動しました。コウさんの実力ですね。

コウ
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ラピスさん

感想をありがとうございます。
意識的に時代を特定しませんでしたが、よくなかったかもしれませんね。
少しでも、心に響いたら書いた甲斐がありました。

飼い猫ちゃりりん
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コウ様

人間を描写するときは、その人間が何を言ったか、何を書いたか、ではなく、どのような行動をしたか、を描くことが絶対的に必要になります。

千晶がなぜ純さんを好きになったのか、最後まで腑に落ちませんでした。

千晶は、店での純さんの話が魅力的だったから好きになったのですか?
千晶は、純さんが詩人だから好きになったのですか?
だとしたら、ちょっと薄っぺらすぎる女だと思います。
風俗の女性が薄っぺらいとは思いません。この千晶という女がペラいのです。だからぞんざいに扱われていたのかな。

純さんは千晶のために、どんな犠牲を払ったのですか?

コウ
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飼い猫ちゃりりんさん

感想をありがとうございます。

>人間を描写するときは、その人間が何を言ったか、何を書いたか、ではなく、どのような行動をしたか、を描くことが絶対的に必要になります。
>千晶がなぜ純さんを好きになったのか、最後まで腑に落ちませんでした。

私がおかしいのかな。異性が惹き合うときに、必ずしも明確な行動など必要ないと思っています。
それはある意味本能でもあり、一目惚れもあるし、孤独感から受け入れてくれる身近な人である場合もあるでしょう。人は、それを愛や恋だと誤解して、別れたり離婚を繰り返す。

私は共依存の関係として二人を描こうとしました。お互いにさみしかったのでしょう。肌を合わせて、感覚的に同類と感じたのではないでしょうか。

二人がこの先付き合っても、いつか別れる気がします。

>ちょっと薄っぺらすぎる女だと思います。

そうかもしれませね。薄っぺらい女にも心はあります。彼女なりに純さん惹かれ、成長したのでしょう。

飼い猫ちゃりりん
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作者であるコウ様が納得しているなら、これ以上何も申し上げることはございません。

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