作家でごはん!鍛練場

恋文 ~君に綴る想い~

2022.04.25

『こぼれ桜』


「話したいことは山ほどあるんだが、何から話してよいものか」

『いいのよ』

「なかなかことばに出来なくてね」

『ふふっ、あいにきてくれただけでうれしいわ』

「毎日でも、来たいんだよ」

『わかってる、ありがとう』

はらはらと舞う 君の欠片たちが
ぼくの指からすり抜けるようにおちていく

「本当はもう、君を繋ぎとめる言葉が見つからないんだ」

『いいの、わたしではあなたをみたせないもの』

貌《ぼう》を無くしてしまいそうなそれを
ぼくは美しいなと想う


君を前に言葉が出ないのは
君に届かないと分かっているから……


『わたしたちこれからどうなるのかな』
散りゆく桜のように君は笑った


枕に埋もれた君の横顔は
なにかを期待しているようでもあり
なにかに絶望しているようでもあったけれど

あのあと
ぼくをいたく惑わせたんだ


・・・


2022.05.11

『灯火』


蝋燭やら

火垂るやら

線香花火やら

ともすれば
消え入りそうな灯りに

魅了されるのはなぜなの



そんなことは決まってる

永遠なんてないからさ



あなたとの時間が

こんなにも

切なくて 儚いのも?



似ているようでそれは

ちょっと違うかな


世界のすべてはね

「もの」ではなく

「できごと」で出来ているんだ


君と過ごす「今」という

正確な時間なんてのは

実際 あてにはならないのさ


故に


愛おしいんだよ


・・・


2022.05.25

『胡蝶』


「さっきは、ごめん」
その一言が言えなかったばかりに、もう二週間も話していない。君が隣に居ることに慣れすぎてしまったのか、もう、駄目なのかな?

窓際からひらひらと舞い込んだ一頭の胡蝶が、あの日からずっと、夢と現の境を揺蕩っているようです。

どちらが……なんてことは、さほど重要ではないことに、君もきっと気づいているのでしょうね。

肝要なのはそこに、片割れが居るかどうか。
そして……
紡いだ言の葉が、ぼくと君を繋いでくれたことのよろこび。


どんな花が咲いたとしても、眺めるのは君とがいい。

たとえ散ったとしても、君とまた重ねていけばいい。


・・・


2022.06.05

『stella maris』


君がぼくを導いてくれる
それはまるで
旅する者の案内人 聖母《ステラマリス》

ものかきという
暗やみでの航海のなか道標《みちしるべ》となり
いつも いつも
一筋之光明《インスピレーション》をあたえてくれるんだ

君のことばに刻が流れ
そのしぐさに舞を見る

君のひとみに絆されて
そのえがおに安堵する


君のこどうに海神《うみ》を感じ

君のなみだに宇宙《そら》を懐《おも》う


だからおそれはしない
ぼくはぼくだけの言葉《ことのは》で綴りつづける

これからも 君を


・・・


2022.06.11

『叶わぬ賭け』


そんな問いを投げたのは、君との絆を増やしたかったぼくの心細さのせいなのでしょうね。

もうこうやって、部屋の窓から外を眺めるのは何回目になるだろうか。
眼下には断崖を打つ白の波紋が、紺碧のカンバスに無双の線を描いては、また消える。

……どうかしてるな……

三杯目の紅茶に手を伸ばしながら、自身の不甲斐なさに頭を掻いた。
ノートパソコンには書きかけの小説。
虚しくカーソルが点灯を繰り返している。

……今日は、書けず終いか……

知らずとまた汀《みぎわ》に目を移すのは、君からの便《メール》りを待つ儚さからでしょうか。
あの日君に投げた問いの答えは、今頃ボトルメッセージのように、波の上を揺蕩っているのでしょうか。

……それとも……

蒼穹に目をやると、いつのまにやら番いの鴎が、睦まじくランデヴーを楽しんでいた。




あぁ、分かっているさ……

叶わぬ賭けでもあるまい。


・・・


2022.06.14

『小夜曲』


来たっ……

鼓膜には、潮騒の代わりに鐘の音が響いた。

脳裏に浮かぶのは、
波にあずけたボトルメッセージを拾う君の細い指先。そして……
寄せる波に濡れた紺青《プルシアンブルー》のハイヒール。


ねぇ君。君は何がほしい?

そう尋ねたのはさ……


蒼空《そら》と碧海《うみ》。
視える景色は違っても、そこには確かに繋がる言葉がある。
瞼をとじたぼくは、それに応えるように文字を並べた。

君と過ごした時間。
これから過ごすであろう時間を。


・・・


2022.06.21

『下弦の幻影』


諦められずに手を伸ばして
すり抜けたものに想いを馳せる

元々無かったものなら気にならないのに、あったはずのものを忘れてしまうことは難しい。そして、一度落としてしまうと、いくら捜しても見つからなかったりする。そのうち何を捜していたかも見失って、何かが足りないという想いだけが手の中に残る。そうなってしまうと、曖昧な願いは曖昧なまま、叶うことなく宙《そら》に吸い込まれ消えていく。結果、ありもしない偶像に手を伸ばし、届かないことに安堵する。

欲しくても手を伸ばすのを諦めた苦しさと
一度手にしたものを諦めようとする苦しさ

ぼくを弱気にさせるのは
逢えない日々がながいからか
それとも
今夜の片割れ月がやけに
もの悲しくみえたからなのか

地球《ほし》に隠れた断片を辿るかのように
指先で弓《きゅう》を描く……



求めていないフリをしながらぼくは

誰よりもそれを
欲していたのかもしれない


・・・


2022.06.23

『言の葉』


揺蕩う君は嫋やかに強か……


全てが伝わる言葉はつまらない?

君が隠した言葉の意味は、永遠に謎なのかも知れないけれど、ぼくが言葉に隠した意味は、君にちゃんと届いてる……
と思ってる。

言葉には温度や色がある。
君にはかけひきなしのぼくの言葉が、何色に見えているのだろうか。


空に向けて放り投げた言葉達は

水溜りの中の澱んだ雲を割って

鳥の通りみちをつくったけれど

なぜだかぼくは

足元にできた浅い空をバシャリと踏みつけた



・・・


2022.06.25

『玉響』


降ってきたか……
風に煽られた水滴で窓を打つ音が、ぼくを揺り起こした。
そのおかげで、寝坊しなくてすんだのだけどね。

さて、手荷物は少ない方がいいだろう。

財布にスマートフォン。充電器。

ハンカチ、ポケットティッシュ。
ポーチの中に……
日焼け止めは今日はいいか。

傘と鞄を手に車の運転席に乗り込む。

それにしても、君と逢う前にはいつも胸が軋む。

恋しさのせいなのだろうか。
いや、不安も半分なんだろうな。

自分の臆病さを隠すようにRay-Banをかける。
こいつは昔からの常套手段なのだが……
君には内緒にしておこう。



フロントガラスを打つ雫

アスファルトを擦る輪の軋み

逸るエンジン音に拍動のリズム……



君の笑顔に逢えるまであと少し。

君と時間を重ねるまであと少し。


・・・


2022.06.26

『紫陽花』


彩とりどりのあじさいが、突然の夕立に小さな花弁を寄せ合わせ、じっと佇む姿に、どこか儚げな健気さを感じたものだから、思わずぼくは、隣に座る君の肩に腕をまわした。

紫陽花が君のようでね

すんなり君は身をまかせ、肩にちょこんと頬を乗せた。

求めるものなんてなにもないの

あっけらかんと君は笑う。
その無垢な笑顔に、ぼくもただ、笑うことしか出来なかった。

信じなくてもいいのよ
勝手に時間が証明するから……

日に焼けて、褪せて不鮮明だった君の記憶の輪郭が、すっと浮かび上がったような気がした。

There is nothing either good or bad
but thinking makes it so.

わがままにはなりたくないと思いながらさ
わがままでいたいなんて矛盾を抱えているの

昔語りを終え、自嘲めいた笑みを浮かべながら君は呟いた。


誰かの世界では我儘なのかもしれない。
でも……

「ぼくの世界では、そうではない」

君がまた笑う。


苦手な夏を好きになることはないだろうけれど、夏の中にも君の影を感じることが出来たらいいと想った。

あの、
紫陽花のように。


・・・


2022.06.29

『朔月』


漆黒のヴェールに呑み込まれそうな朔の夜
君の言葉を思い出した。

……求めるものなんて なにもないの……

あの時君は笑っていたけどさ、ぼくはその心魂を、見極められずにいるんだよ。

……わがままにはなりたくないと思いながら
わがままでいたい矛盾……

届いた言葉《こえ》が妙に胸に刺さる。

年齢を重ねる度に何かに没頭する時間は減っていく。そうやって少なからず、何かを諦めながら時間を過ごすことが当たり前になると、望みは知らずと小さくなってしまうのか……
いや、そうではない。

君のあの笑顔には……


念《おも》う新月、裏を返せば朔、失意の暗闇。
誰かが笑い誰かが泣く、そんな夜がまたやって来る 。
月のない夜はやけに星が近い。
一筋の流れ星を合図に、満天の星々が歌い出した。

流れた星は、誰の涙か……



夏が苦手だというのには、理由《わけ》があるんだ。

君には未だ、話せていないがね。


・・・


2022.07.02

『三日月』


メールの着信音に揺り起こされた。

海風《オンショア》が運ぶ、ほんのり湿り気のある潮のかほりに絆されて、知らぬ間に眠ってしまったんだな。
そうだ、書きかけの一文に迷っていたんだっけ。ここの情景描写が少しばかり重いと。
窓越しの三日月のように、削《そ》げる言葉はないものかと。

まあそれはいい、今はいい。
兎にも角くにも君からの便りに心が逸る。


『素敵な言葉が嬉しくて、いつも楽しみにしているんですよ』

なんと…………
にやけてしまった。


「脳裏になぜだかね、あの弓《きゅう》を背もたれに、のんびりと、天の川に釣糸を垂れるぼくの姿が浮かぶんだ。目深に帽子をかぶって」

『それではまるで、スナフキンね』

「ああ、君にほめられて嬉しくてさ。彼のように……」

『孤高の詩人。憧れ』

「分不相応なのは承知の上だがね」

『あらあなたの詩、わたしは好きよ』

「ありがとう……」


『ふふっ、……ところでさぁ……』

「なに?」

『もうすぐ七夕よね』

「あぁ、そうだが」


『あのね、それでスナフキンはさぁ、釣り上げた魚にね……何をあげるのかしら』


・・・


2022.07.07

『星に願いを』


七夕に、お願いごとはあるの?

いたってシンプルなものだがね



どんより間延びした
あの厚い雲の彼方に
広くて深い川がある

その見えぬ川がたった今
鮮やかに瞬いた気がした


『お願いごとはしましたか?
・・叶いますように✨』


今夜をともに過ごせぬ憂いが
特異点に呑み込まれゆく刹那

ぼくの言葉は
超光速粒子《タキオン》となり放たれた。




「ずっと君の笑顔が見られますように」


・・・


2022.07.12

『鈍色』


この数日どんな景色を見たんだったかなと考えても、窓から覗いた太陽の隠れた空くらいしか探し出せない。

今日も窓を開けると、水分を摂りすぎた風がたぷんたぷんと気だるそうに、微かな潮の匂いを届けてくれたのだけれど、あいにく今は何も言葉にする気分じゃなくてね……

と、声にする代わりに窓を閉めた。

何もかもが濡れているかのような景色が拡がっているのに、ぼくが発する言葉はたぶん、ギスギスと渇ききっているのだろうな。

言葉を放ったその先に君がいたのなら、知らずと傷つけてしまったかも。


声を可視化して、空の下に差し出したなら、

雨に打たれて多少は言葉も潤うのかな。

そんな言葉を君に投げることができたなら、

きっと君は、返してくれるのだろうね。


そう想うことで
なんとか均衡が保てた気がした


今のぼくの

にびいろのこころの


・・・


2022.07.16

『夜想曲』


なかなか連絡出来なくて
すみません💦
仕事で色々とありまして
落ち込んでましたが
メールの詩に救われています✨


そんな気がしてたんだ

昨晩見た夢に出てきた君が
なんだか少し寂しそうでね

「あなたは誰? 何処からきたの?」

夢の中の君は何も答えられず
アリスのように不安げで……


そのあとなんだか寝付けなくてさ
で ギターを弾いていたんだよ

そしたらね
一曲できたのさ

ギターで弾いたNOCTURNE
君のメールに送っておくよ

もしも気に入ってくれたなら
君が君だけの言葉で
歌詞を乗せるといい


そしていつか眠れぬ夜に

ぼくの耳もとで

優しく唄ってくれたなら


・・・


2022.07.21

『Lightning』


「心を開いていればいつか稲妻に打たれる」

むかし観た映画の台詞よ。
ブラピが出ていたものだけど、
タイトルなんだったかしら。
人間の女性と恋に落ちる、死神の話……

憧れながらもね、
諦めていた言葉だったんだ。


ふふっ……あなたの何処が好きかって?

其処が好き、此処が……なんてさ、ことばでは、上手く表現できないよ。



微睡みのなか
目を閉じたまま

ぼくの腕を引き寄せ顔を埋《うず》めると

微笑みながら君は呟いた。




「こうしているだけで幸せ」……では

不十分かしら?


・・・

※つづきは現在執筆中

恋文 ~君に綴る想い~

執筆の狙い

作者
fj168.net112140023.thn.ne.jp

詩のような、散文のような……
日記ですかね(笑)

全てフィクションです。二人の設定については、皆様のご想像におまかせします。

《妄想テーマ曲》

イングヴェイ・マルムスティーン

「nacht musik」
https://youtu.be/pGdOtGxyt3g

コメント

偏差値45
KD111239160248.au-net.ne.jp

頭が悪いので、よく分かりませんでしたね。

冒頭で挫折。

>『こぼれ桜』
「話したいことは山ほどあるんだが、何から話してよいものか」
『いいのよ』
「なかなかことばに出来なくてね」

冒頭一行目、これは呼びかけなのだろうか? という問題。

『』誰の台詞?
「」誰の台詞?

という問題。

>散りゆく桜のように君は笑った

ということは……、散りゆく桜ではない?
そもそも桜ではないかもしれない。分からない。

特に冒頭は読者を悩ませないことが重要だと思います。
とはいえ、悩みたい人もいるのでしょうけどね。

莉音
218-228-138-173f1.osk3.eonet.ne.jp

読ませていただきました。

『こぼれ桜』
これがいつどのタイミングでそう思ったか(?)というのが分かりませんでした。
私も伝え方が曖昧ですが、誰が、いつ、何があったから、こぼれ桜だと思ったのかが私には全くわかりませんでした。

勿論それで伝わる方もいらっしゃるかもしれませんがね。

文章全体はしっかりしていると思いますが、最初が引っかかったせいで、全体を上手く消化できませんでした……

sp49-98-137-85.msd.spmode.ne.jp

偏差値様、莉音様

感想ありがとうございます。
読み方や感じ方は人それぞれです。
これは小説ではないので、男女の設定は自由で構いません。
例えば、デリヘルなどの風俗嬢と、その娘に恋した客で、そいつの妄想世界。
或いは、オタク男の夢の世界など……
読み手に楽しんでいただければ良いのです。その中で感じてくれるものがあったなら幸いです。

青井水脈
om126166205165.28.openmobile.ne.jp

読ませていただきました。
文章がしっかりというのか、変わらずセリフにどこか光るものを感じさせせますね。

>例えば、デリヘルなどの風俗嬢と、その娘に恋した客で、そいつの妄想世界。 或いは、オタク男の夢の世界など……

そうなんですか?(笑)いや、「叶わぬ賭け」を前に読んだときは(今回は「小夜曲」と分けられていますね)ギリシャとかエーゲ海の風景をイメージしたんですよ。そのときも、会えそうで会えない、みたいな距離感と思っていましたが。
それとリンク先の動画、初めて聴きますが、いいですね。普段インストゥルメンタルはあまり聴きませんが、イメージを掻き立てられて。ありがとうございました。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

青井水脈様
いつもありがとうございます。

デリヘル嬢の掌で転がされている妄想作家……という設定が、一番しっくり来ますかね(笑)
実のところこの設定で書いています。
と言うのは、最終的にミステリー(サスペンス)に仕上げるつもりでおりますので。タイトルは『下弦の幻影』とする予定です。
いつか、何処かのサイトに投稿しておきますよ。その時はまた、よろしくお願い申し上げます(^o^)

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