嘘とライオン
『世界から嘘が消える』
僕が開発した商品の謳い文句がこれだ。
見た目はなんの変哲もない手のひらサイズのライオン像である。
しかし、この像の前で嘘をつくと、像に内蔵されたセンサーが声や体温の変化に反応して、ライオン像が本物のライオンに化けてしまう。
嘘をついたら最後。嘘つきはライオンに食べられてしまうという奇抜な商品なのだ。
人間は他人の本心が気になる生き物である。僕の狙い通り、このライオン像は飛ぶように売れた。誰もがカバンの中にこの像をしのばせるようになり、僕のカバンの中は大金で溢れた。
そして、この世界から嘘がなくなったのである。
でも、実はこの世界にたったひとつだけ残った嘘がある。このライオン像は嘘になど反応しないのである。ただのプラスチックのライオン像で、本物のライオンに化けることなど決してない。
「この世界のすべての嘘が消えたんだから、僕の嘘は罪にならないだろ?」
僕はライオン像に語りかけた。
嘘の塊でできたライオン像は、この世から嘘を消し去る崇高な存在として、堂々と佇んでいた。
執筆の狙い
450文字の超ショートショートです。
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