作家でごはん!鍛練場
中小路昌宏

北の国の女

北の国のおんな 

登場人物
ニールス 漁師 マリオンの夫 炭鉱夫になるためイングランドへ行く
マリオン ニールスの妻 四十歳 男勝り、食欲、性欲ともに旺盛で自己主張が強い女
ペター  漁師 ニールスと共にイングランドへ行く
クルト  漁師 ペターの長男 イングランドへ同行
ユノラフ 漁師 ぺターの次男 イングランドへ同行
キルステン ペターの妻 五十一歳
アルフ  漁師 イングランドへ同行
シセル  アルフの妻 長身の美人、三十八歳、知性的だが、性には貪欲
ロアール 村の長老格 五十八歳
フルダ  未亡人 四十五歳 ロアールの世話を受ける
レネ   未婚 三十一歳 ロアールの世話を受ける
マグヌス 漁師 ヤスヒロという日本人を弟子にする
ヤスヒロ マグヌスの息子の友達、二十六歳 マグヌスに弟子入りする


 「なあ、マリオン、俺、来月からイングランドへ行く事にしたからな」
 「えっ、また何で?」
 「ペターのやつがイングランドの炭鉱へ行けばいい金になると言ってたから、俺も二~三年、一緒に付き合うことにしたんだ」
 「そんなに長く?」
 「じゃぁその間あたしはどうしたらいいんだよ。三年も男無しで暮らせって言うのかね」
 「そうか?なら俺と一緒に来るか」
 「やだよ。みんなと別れたくはないよ」
 ・・・・・・・・・・・
 ニールスと妻マリオンの住む村は北ヨーロッパA国の最北端からほど近い、二十八所帯五十人ほどが住むスカーシヴァグという小さな漁村だ。漁業の他にこれと言って産業は無い。冬には海が凍結するので漁の出来るのも四月から十一月までの七~八か月間だけだ。冬の間、若い者はオスロやロンドン辺りまで職を求めて出稼ぎに行くが、仕事にありつけるかどうか行って見ないと分からない。四十歳過ぎる頃になると誰もそんなところへは行かず、冬の間は村に閉じこもってポーカーなどして退屈をしのいでいた。
 「なら、村の男のうち誰かに抱いてもらえよ。俺はかまわんから」
 「誰に頼めっていうのよ。誰も自分の旦那をあたしんとこへなんか、回してくれないわよ」
 「ロアールはどうだ」
 「やだよ、あんな爺さん、もう六十んなるわよ。だいいち、火曜日にはフルダのとこへ行ってるし、金曜日はレネのところだよ」
 ロアールは五十八歳、村では長老格の男だ、十年ほど前に女房を亡くし、一人暮らしをしていた。フルダというのは四十五歳だが、二年前に旦那と一人息子を海で亡くして以来ロアールが面倒を見ていた。そしてレネは痩せてギスギスしていたので三十歳を過ぎても男が出来ず、これもロアールが世話をしていた。小さな村で、白夜のため夏は夜も明るいので誰と誰の仲がよいのか村の人全員が知っていた。
 「そうか、わかった。俺がだれかいいやつ見つけてきてやるから待ってろ」
 男たちは毎週土曜日の夜には集まってポーカーをする。村の決め事も大体そういう場で決まることが多い。
 イングランドへ行くのはニールスとペターのほかクルト、ユノラフ、アルフであった。クルトとユノラフはペターの息子、アルフはニールスと同じく妻シセルを置いて行くので彼女のことも考えてやらねばならない。
 二
 二十八所帯のうち漁に出るのは十九所帯、あとはロアールのように年老いて働けなくなった男や、旦那を亡くした女所帯だった。漁の成果は船に乗れなくなった家にも一定の分け前が貰える。村全体が大家族として、助け合って生きてきた。
 漁で傷んだ網の手入れは女たちの仕事だ。網に入った獲物を狙ってサメが食い破るので網の手入れはしょっちゅうしなければならない。網の手入れが女たちの仕事場であり、集会の場でもあった。そのほか、年老いて寝たきりになった老人の世話もまた、交代で女たちがしていた。
 十九所帯のうち三所帯、五人の働き手の男たちがイングランドへ行ってしまうので、女たちはその留守の間の心配をしていた。
マリオンが言った。
 「ねえ、あんたたち、旦那が行っちまったら魚は少なくなるし、夜はひとりで寝ないと駄目だし、あたいらはどうなるんだよ」
と言っても誰も自分の旦那を貸そうとは言ってくれない。みんな
 「こまったねえ」というばかりだ。気休めかも知れないが、
 「土曜日の夜には男たちが集まるし、なんか考えてくれるんでねえかの」
というペターの妻キルステンの話で、その場を収めるしかなかった。
一方、土曜日の夜集まった男たちの席でも、ポーカーには手が付かず、五人の男たちが去った後の女たち、とくにマリオンやアルフの妻シセルなどは女ざかりでもあり、誰か男を当てがってやらねばならないのではないかという話になったが、イングランドへ行かない男たちも、本人を前にしては、自分がその男の妻の相手をしてやろうなどとは言えなかった。だいいち、そんなことをすれば、自分が女房からとっちめられることになる。
女房のいないロアールが
「俺はいいが、すでに二人の面倒を見てるし、こんな爺さんではマリオンもシセルも嫌がるだろうしな」
と言ったが誰も否定も肯定も出来ない。しかし、そのときクルトが、
「マリオンにはマグヌスのところにいるヤスヒロはどうかね」
というと、みんなはハッとなった。ヤスヒロというのはマグヌス宅にいる日本人だ。彼は、マグヌスの息子がロンドンの大学に行っていた時に友達になった学生だが、卒業後息子がロンドンで就職してしまった後に入れ違いにやって来て、漁を手伝わせてくれと言って、住み込んで働いているのであった。
「ヤスヒロ? アッ、あの中国人か?」
「いや、やつは日本人だ。そうか、彼がどういうか分からないが、俺が話してみるか、ニールス、お前はどう思う?」
「うん、マリオンさえよければ俺はかまわない」
という事になって、マグヌスが聞いてみる事になった。しかしまだキルステンとシセルの相手がいない。キルステンはクルトとユノラフの母である。年も五十を回ったところなので、もう男無しではいられないという歳でもなかろう、だが、シセルについては本人の希望を聞いてから対応することになった。

マグヌスからの突然の話にヤスヒロはびっくりした。
性にはおおらかな村だとは聞いていたが、こんな形で女を世話してくれることになるとは思ってもいなかった。マリオンは四十歳という、彼より十四歳も年上だが、色白の豊満な女で、自分がその女を抱くことになろうとは夢にも思わなかった。しかも旦那のニールスも承知だという。
スカーシヴァグという村は確かに性には開放的だが、道徳的に乱れているという訳ではない。夫に黙って妻が他の男と寝たり、妻の了解を得ずに夫が他の女、特に人妻と寝たりする事は無い。だが、何年も家を空ける男が、留守中の妻の世話を誰かに頼むことは、むしろその男の責任のようなものであった。
翌週、ニールスがイングランドへ向かう前の最後の土曜日、ポーカーへ出かけた後の九時ごろ、ヤスヒロはそっとニールスの家のドアをノックした。鍵はかかっていない。スカーシヴァグの村には鍵の取り付けられた家は一軒もない。百年ほど前に、村に人が住み始めた時から、泥棒に入られたという話は聞いたことがないそうだ。
ドアを開けて「こんばんは」と、そっと声をかけた。
「いらっしゃい。こっちよ」と。奥の灯りの付いた部屋から返事があった。
部屋に入ると、女はすでにベッドに入っている。
「そこで服を脱いで、ソファーにかけてこっちへいらっしゃいな」
ヤスヒロには女の経験が無いわけではない。日本にも、ロンドンにも彼女はいた。だが、こんな豊満な肉体を持った、しかも十四歳も年上の女は初めてだ。
服を脱いだ。来る前にシャワーを浴びて下着も着替えてきた。
「早くパンツも脱いで、こっちへいらっしゃい」
もじもじ、どきどきしながらパンツを脱ぐと、もう彼女に見られているというだけで、前がいきり立ってきた。すぐに布団をまくると、一糸まとわぬ白い豊満な肉体がこれ見よとばかりに横たわっていた。
電気を消しても外は白夜だ。カーテンは閉まっているが部屋の中は明るい。外から覗かれはしないかと心配したが、彼女は全く気にした様子はない。
《そうか、この村には人の部屋を覗くような趣味の悪い者はいないのか》
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
余りにもあけっぴろげなマリオンにヤスヒロは驚いていた。
《そうか、こんなにおおらかな、堂々とセックスをする女がいるとは、これもバイキングの子孫だからなのか・・・・・》

マリオンはすっかり満足した。日本人か中国人か知らないが男と女のすることはみんな一緒だ。十分に自分を満足させてくれた。ニールスも若いときは元気だったのに、今はいつも一回戦で終わりだ。ヤッスヒラ?いや、ヤッスヒレだったか、どっちでもいいが、何度でもオッケイだった。いろいろと体位も変え、久しぶりに、二人とも汗だくになって堪能した。ヤッスの帰った後シャワーを浴びて火照った体を洗い流したらさっぱりした。
マリオンは食欲も性欲も旺盛な自己主張の強い女だ。ニールスが漁に行ったあと、自分が留守を守って子育てをし、台所仕事もして、漁網の修理もしてきた。夫よりも自分の方がよく働いてきたつもりだ。
ニールスが長い間留守にするなら、その間、少なくとも男だけは不自由のないようにしてくれるのは当然だ。≫
だから、ヤッスを手配してくれて満足だった。さすがニールスは、ちゃんと自分のことを分かってくれている。
明後日はイングランドに向けて出発する日だ。
《明日の晩は寝かせるものか。朝まで攻めて攻めて、攻めまくってやるから覚悟しろ》≫
その夜十二時を過ぎて帰って来たニールスはマリオンがぐっすり眠っているのを見て安心した。ちょっぴり、やきもちの気持ちもあるが、マリオンが喜んでいるならそれで良い。どうやらこれで安心して旅に出られる。自分は自分で、イングランドで女に出会えるだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・
家に帰ってから、ヤスヒロは改めて今日あった事を思い返していた。
事が終わった後、マリオンは言った。
「来週から、週二回は必ず来るのよ。メシは用意しておくから準備運動をして七時には家に入るように。十一時までには返してやるから」
「何曜日にするかは身体の都合もあるのでその週によって変わるけど、来週は金曜日でいいな」
まるでスポーツの練習の日でも決めるように約束させられた。
《《なんという女だ。自分が女を征服したと思っていたのに、ただ、性処理の道具として利用されただけだ。女の主導で何度も体位を変え、これでもか、これでもかと、貪りつくされた。日本から流れてきたニュースでは、オリンピックの森会長が性差別発言で会長を辞退させられたとか、ここでは性差別どころでなく、逆差別といってもいいくらいだ。こんな女もいることを知ったらどう思うだろうか
ここはヨーロッパ最北端の僻地の村だ。こんな村に、こんな野獣のような女がいたとは》

翌々日の月曜日、ヤスヒロが港で出港の準備をしているとポンと肩を叩かれた。ニールスだった。
「よぉ、マリオンをよろしくな」
とだけ言って離れていった。どんな思いで言ったのか?イングランドへ出稼ぎに行かなければ暮らしは楽にならない。マリオンを一人で残していくからには留守中寂しくないようにとの思いで、この日本から来た若い男に、マリオンの相手を頼まなければならないことは分かっていた。
だが、・・・・
・・・・・・・・・・何があったのか誰もが承知していた筈だが誰も何も言わない。いつもと同じの慌ただしい出漁風景だった。まもなく漁のシーズンも終わりになる。
・・・・・・・・・・・・・・
スカーシヴァグの村にはいつも二百キロほど離れたソルタという町から仲買業者が魚の買い付けに来ていた。ソルタは人口一万七千人ほどで、この付近では一番大きな町だ。オスロと結ぶ空港もあり、警察や病院やスーパーマーケットもあり、中学と高校もある、ひととおりの都市機能を備えた町だ。中学生になるマリオンの息子もこの町で寄宿舎生活をしている。
ヤスヒロはソルタからの買い付け業者が来るたびに思っていた。業者の来るのを待つだけの商売では相手に言い値で叩かれるばかりでさっぱりうま味が無い。こちらから出向いて行って商売をする方が利益も大きく膨らむ筈ではないだろうか?
そこでマグヌスに提案した。
「おやじさん。一度、ソルタまで売りに行ってはどうだろうか」
ソルタまで車で三時間、雪の積もった今ならトナカイの橇で四~五時間かかるかもしれないが、朝早く出れば日帰りで帰って来られる距離だ。
マグヌスはウーンと言ってその時は即答を避けたが、その週のポーカーの席で仲間に提案していた。
「そうだな、若いもんの意見も聞いた方がいいかも知れんな」
という意見もあって、今年最後の漁の終わった後に橇三台に積めるだけ積んで行って見る事になった。雪の積もった今なら冷蔵設備も必要無い。
今日が最後だとすると明日がソルタへ行く日である。
昼過ぎに風が出てきた。沖合には黒い雲が見えるので一斉に網を上げて引き返してきた。その日の夜から時化の予想となり、船が出せないと分かったので、港についてすぐ、翌日のソルタ行きが決まった。
その日漁に出た九隻の船の荷を三台の橇に積んで翌朝五時に出発することになった。積み込めなかった残りは女たちが各戸に分配する。その指揮をとるのはマリオンとキルステンだ。
ヤスヒロはこの村での自分の役割が次第に大きくなってきたことを感じていた。明日のソルタ行きにはもちろん、ヤスヒロも同行する。日本の実家は八百屋をやっていたので商売の経験も少しはある。漁師よりは駆け引きにも慣れている。

スカーシヴァグと比べるとソルタは大都会だった。男たちがこの町へ来るのは年に一~二回、中には五年ぶりという者もいた。しばらく見ないうちにマックやスタバの店も出来ていた。
初めてなので、どこへ売り込みに行ったらいいのか分からなかった。市場ではもう、競りは終わっている時間だ。だいいち、よそ者の自分たちがいきなり行っても競りに参加出来るかどうか分からない。とりあえずヤスヒロの提案でレストランやスーパーマーケットなど手当たり次第に当たってみることにした。値段は今まで買い付けに来ていた業者の付け値の二、五倍ぐらいと思っていたのだが、レストランへ行ったら
「えっ、そんなに安いのか?それはありがたい。ではこの鯖を十匹とこの鰤を五匹、それから・・・・」
男たちは拍子抜けしていた。鯖だけでも五百匹はある。十匹や二十匹ずつ売っていたのではいつまで経っても捌ききれない。
 《それはそうだ。一軒のレストランでそんなに捌けるわけはない》≫》》
と、だんだん状況が分かって来た。レストランの場合は、量は少ないが値段はもう少し高くてもいいのではないか、また量を捌くためには少し安くしてでもスーパーマーケットへ売り込みに行った方がいいのではないか?そして出来るだけ多くの店へ回るため、昼からは地域別に分けて三台別々に行こうかと、昼食に入ったマックの店で決めた。ヤスヒロとマグヌスはスーパーマーケットへ売り込みに行く事にした。値段は少し安くしてでも量を捌かなければならない。
そうして入った最初のスーパーでは、これまで行ったレストランでの売り上げの十倍ぐらいの注文があった。鯖だけでも百匹。夕方にこれを店頭の特設台に並べて売るそうだ。あと、まだ少し売れ残っていたが、
≪確か少し小さいスーパーが途中にあったはずだ。そして八百屋さんでも扱ってくれるかもしれない≫
と思って数軒回って三時にはほぼ売り切れたので、待ち合わせ場所に決めたスタバの店に入った。
四時には全部の橇が集結した。総売り上げは十五万クローネあまりとなった。日本円で約二百万円、上々の売上げだった。いままでの買い付けに来た業者だったら五万クローネにもなったかどうかだ。帰ってからこれをどう分配するかはロアール爺さんの役目だ。ニールス、ペター、マグヌスなど、船主の配当は一万二千クローネ以上になるかも知れない。現金収入の少ない村の人たちにとっては一日でこれだけの売上げになったのは有難かった。

スカーシヴァグの長い冬がやって来た。海が凍り付くまで、天気の良い日は漁に出られる。だがそれもあとしばらくだけだ。
男たちは何もすることがない。若いものの中にはオスロ辺りまで出稼ぎに行くものもいるがほとんどの男たちは暇を持て余していた。今年は五人がイングランドへ行ってしまったからポーカーの仲間も十二人だけになった。マグヌスは時々参加するがヤスヒロはめったに顔を出さない。
毎週土曜日、集まるのはポーカーのためだけではない。いろいろなことが話題になる。大体は女の話か、漁のことや商売の話だ。
ソルタへの最初の出張販売は大成功だった。来年はもっと回数を増やそう。そして売値は自分たちで決めるべきだ。買い付けに来る業者の言いなりにはならないでおこう、などという事が話し合われた。
ヤスヒロのおかげで魚も高く売れるようになったし、マリオンも喜んでいる。スカーシヴァグにとって、来年はいい年になりそうだ。
「ところでマリオンは喜んでいるがシセルはどうなっているのだ。男は決まらないのか」
と誰かが聞いた。
シセルはまだ三十八歳だ。男無しではいられないだろう。だが、ここに集まった男たちはみんな女房に尻尾を握られている。シセルから求められれば亭主を貸し出してもよいという女もいるかもしれない。だがシセルからはそんなことは言いださないだろう。
男たちにはどうすることも出来なかった。
暇なのは女たちも同様だった。網の手入れも終わってしまった。あとは時々食べ物を持ち寄っておしゃべりをするぐらいだ。
マリオンが聞いた。
「シセル、あんた、男はどうするのかね? 好きな男は誰なんだ」
シセルは答えられない。自分からそんなことは言えない。女ならそれが普通だ。
しびれを切らしたマリオンが言った。
「しょうがないな。ヤスヒロを貸してやろうか?奴ならだれも文句は言わないだろう」
という事で週一回はヤスヒロに、シセルのところへ通わせることにした。
こうして、ヤスヒロ自身も知らないうちにシセルの愛人にさせられていた。

種馬じゃぁあるまいし・・・・と思ったがシセルもいい女だ。背が高く、すらっとした美人で、マリオンのように開けっ広げではなく知的な雰囲気の女だった。週一回だけなら体の方も何とか耐えられそうだ。
シセルにも男が必要だとはわかっていたが、自分にその役目が回ってくるとは思っていなかった。もし自分が行くとしてもマグヌスか誰か、男から言われるのなら解るが、こんなことをマリオンから、しかも命令調で言われるとは意外だった。
トントンと扉をたたくと普段と同じ顔つきで玄関まで出てきた。これからセックスをしようという雰囲気ではない。
台所に行くとソーセージやチーズの盛り合わせを始め、精の付きそうな料理が並んでいた。マリオンのところと一緒だ。マリオンに聞いたのか、酒の強くないヤスヒロのために赤ワインが一杯だけ用意してあった。
食事が終わるとシャワーを浴びてきたら? といわれてベッドルームに入ったら、バスタブが置いてあった。
この村に来てからはどこへ行ってもシャワーだけで、バスタブに浸かったことはない。
「バスタブを使ってもいいだろうか」
と聞くと
「どうぞ」
といったので蛇口を緩めると猛烈な勢いでお湯が出てきた。服を脱ぐ暇もないほど早く、お湯が満たされてしまったので一旦閉めてから服を脱いで、久しぶりにゆっくり浸かることが出来た。日本人はやっぱり風呂がいい。
それからのシセルは、やはり北の国の女だった。台所を片付けて部屋に入ると一瞬にしてメスの獣に変身した。風呂から出てきたヤスヒロを捕まえると、あとはマリオンと一緒、いや、マリオン以上に男に飢えていたのでガツガツと攻めてきた。
マリオンだけが特別ではなかったようだ。この村の女はこれが普通のようだった。やはり、セックスはスポーツの一種と考えているようだ。長い、暗い、寒い冬を乗り切るためにはこういうことが必要なのだという事をヤスヒロも少しずつ理解して来た。
ひととおりの儀式が終わるとシセルが聞いてきた。
「わたしどう?あんたからは変態に見える?」
やはり、日本人からはどう見られているのかを気にしているようだった。
「いや、すごくよかったよ」
それ以上、適当な言葉が見当たらなかったが、それだけでシセルは安心した様子だった。

村の広報誌にソルタの町の広告が載っている。その中にクリスマスまでの約二十日間だけの、雑貨屋のアルバイトの募集広告があった。住み込み食事付きで日当が八百クローネ、仕事はクリスマスツリーの飾り付け用品の販売だった。
ソルタの町の情報が得られると思ったのでマリオンとシセルに話して、そこへ行く事に決めた。春になって魚の売り込みに行くためにはソルタの町の情報を掴んでおくことが必要だと説いたら条件付きでしぶしぶ同意してくれたのである。
その条件とは、週に一回は帰って来ること、そしてマリオンとは二回、シセルとは一回寝ること、だった。
クリスマスまでの間、店はかきいれ時だ。定休日は無い。だがアルバイトは土日以外なら週一回だけ休めることになっていた。そこで、毎週火曜日に、七時の閉店と同時に橇に乗り十二時頃にマリオン宅に着いて一回目のセックス、翌日昼頃まで休んでからシセル宅に行き、セックスのあと夕方までを過ごす。そしてまたマリオン宅に戻り、二回目の義務を果たした後、仮眠をとって夜中の三時前に出発して八時の開店までには店に戻る、という強行軍だった。強い風が吹き、すごく冷え込む日もあったが、トナカイは平気で、到着が遅れることは無かった。
セックスというのも、楽しんでするのはいいが、二十七時間で三回の義務となるとさすがに疲れる。しかし、三週間だけの辛抱だ。帰るたびに二人へのお土産も忘れなかった。どうにかクリスマスイヴの日まで乗り切れそうだ。
ソルタの教会に最近赴任してきた牧師の奥さんがこの町ただ一人の日本人だと知った。春子というその人もヤスヒロの事を聞いて、教会のクリスマスツリーの飾りつけを買いに来た。久しぶりに、お互い日本語での会話を楽しむことが出来た。
春になったら魚の訪問販売にやってくるので宣伝をよろしくという事と、売り込み先について、どこかいいところがあったら紹介してくださいと頼んでおいた。こうして少しずつソルタでの知り合いを増やしておくことが春からの商売に大きく役立つはずだ。
世界中にコロナが広がっている。A国も例外ではない。しかしスカーシヴァグもソルタも感染者は出ていない。ソルタの町長は徹底した感染防止策を取っていた。空港へ到着する客全員の滞在先を把握して、二週間は、毎日、健康状態を報告させていた。

年が変わった。ソルタでのアルバイトが終わり。再び、静かな長い冬の日々が続いていた。
週三回はマリオンとシセルのところへ通う事がヤスヒロの大切な仕事だと、村の人全員が理解していた。マグヌス宅には二人の女の子がいて、生徒数たった三人だけの村の分校に通っていた。その女の子たちでさえ、今日はマリオンの日、今日はシセルの日と、ヤスヒロが出かけていくのを知っていた。たぶん、何をしに行くかも、そしてそれが大切な仕事であるということも知っているのであろう。
男たちは相変わらず土曜の夜だけ集まって、ポーカーに興じていた。女たちは週に一度か二度、おしゃべりを楽しむために集まっていた。
イングランドへ行った男たちはすっかり仕事にも慣れて張り切って働いているという便りがあった。しかし炭鉱には、ときたま、といっても数十年に一度ぐらいだが、落盤事故もある。無事に勤めを終え、早く帰って来るのをみんな祈っていた。ヤスヒロと寝ていてもそれは夫への裏切りではなく、マリオンもシセルも、夫への愛が揺らぐことは無かった。
・・・・・・・・・・・・・・・
ヤスヒロは時々ソルタへ行って町を歩き回ったり春子の教会を訪ねたりしていた。春からの本格的な出張販売を成功させるためには、町の情報をしっかり把握しておくことが必要だと思ったからである。
彼には漠然とした計画があった。それは一日も早くスカーシヴァグの村を豊かにして、イングランドまで出稼ぎに行かなくても、男たちが村で暮らせるようにしようという事であった。彼らは、何も好んで、辛い危険な仕事を選んだのではない。一年のうち半年近くが凍り付くこの村では十分な稼ぎが得られないからであった。留守の間、自分の女房の相手を他人に任せるというのも、もちろん苦しい決断であったはずだ。
昨年秋に初めて三台の橇を連ねてソルタへ出張販売に行ったのは大成功だった。しかしそれが今後も続くかどうかは分からなかった。これまで村へ買い付けに来ていた業者は当然、対抗策を考えるだろう。ソルタの町の人もよそ者に対する警戒心を強めるかもしれない。そういう中にあっても何とかこの仕事を定着させなければならないと思っていた。
十一
昨年は橇を使ったが、雪が解けたら車で行かなければならない。それも冷蔵車が必要だ。買うとなれば、積載量四トンの車で一台五十万クローネぐらいはする筈だ。
とりあえず冷蔵車はレンタカー会社で借りなければならないので、春子の旦那である神父さんに紹介してもらった会社で交渉して見た。
借りるのはまだ大分先の話だ。四月中旬ぐらいからだと分かると、なかなか相手は乗って来ない。のらりくらりと逃げようとしたがヤスヒロが詰め寄って催促したら一日一万クローネでどうかと言われた。無茶だ。それでは利益の大半は消えてしまう。
三日後、ロアール爺さんも連れて行って交渉を続けた。一週間で四万クローネと言ったが、まだ高い。交渉を重ねて、一か月八万クローネで決着した。先払いと言われたが、そんな金は無い。手付金として四月初めに三万、あとは漁が始まってから二万五千、次の週に残り二万五千と決めた。
その三万クローネでさえ村には無い。男たちを集めてひとり五千とか、三千とか出して貰う約束が出来たので翌日また行って、ロアールの名義で契約書にサインしてきた。
ヤスヒロとしては、その一か月の間は分配金を少なくしてでも資金を貯めて、何とか新車購入のメドを付けたいところだった。
そうこうしているうちに四月になった。ヤスヒロは男たちから資金を集めるとロアールと共にソルタのレンタカー会社を訪ねた。資金は二万三千クローネほどにしかならなかったので、ヤスヒロもなけなしの貯金をはたいて残り七千クローネを出した。
氷が解け始めた。様子を見るため十日には試験的に船を出した。大丈夫だろうという事になって十二日に一斉に女たちに見送られて出港して行った。ヤスヒロもマグヌスの船に乗って久しぶりの漁を楽しんだ。十五日には車を取りに行かなければならないが、ヤスヒロが船を降りられないので、ロアールにはマリオンとフルダが同行することになった。フルダというのはロアールが面倒を見ている後家の女だ。
ソルタの町ではいずれ販売拠点を設けて商売をするつもりだ。そういう時には女たちに頑張ってもらわなくてはならない。だから今のうちに少しずつ慣れておいてもらった方がいい。いつも漁は男だけの仕事で、漁網の修理をさせられるだけだったマリオンは張り切って出かけて行った。
十二
本格的に漁が始まった。十五日に車を取りに行くと、翌日の十六日には早速、前日水揚げした魚を満載にして夜明け前に出発した。初めはヤスヒロが前もって根回しをして見込みがあると思ったレストランとスーパー数軒を回った。その次は昨年十一月に初めて訪問したレストランに行き、最後に町一番の大きなスーパーで残った全量を買い取ってもらった。値段は大幅に下げたが、売れ残って腐らせてしまうよりはいい。
スカーシヴァグの住民は男も女も魚には詳しいが商売には全くの素人ばかりだ。ヤスヒロは子供の時から店が遊び場のようなものだったので、知らぬ間に商売の感覚が身についていた。売れないと分かったら数を買って貰う条件で値下げをしたり、サバを十匹買った人には売れにくいタラをオマケにするなどして売れ残らないように考えて売り捌いた。女たちにはレストランで店の主人に魚の捌き方を教えるように言ったら、喜ばれて、新メニューに加えようかと言って買ってくれた店もある。
漁は順調な時も不漁のときもある。海が時化て出られない時もある。水揚げが少ないときは無理をして安くしなくても売れ残ることはなかった。訪問販売は一喜一憂しながらも、ほぼ期待通りの成績を上げていた。初めのうちは必ずヤスヒロが同行したが、そのうちロアールと女たちだけに任せることも出来るようになった。
マリオンとシセルとのヤスヒロの関係も以前と変わらず続いていた。外見上は愛人のようだが彼らにとっては、それは一緒にスポーツを楽しむ仲間のような関係だった。
ヤスヒロは言った。
「マリオン、うまくいけば、今年秋ぐらいにはニールスたちに帰って来て貰ってもいいのではないかな」
「えっ、なんで?帰って来るのはまだ二年先だよ」
「いや、旦那さんが君を置いてイングランドまで行ったのは、この村での稼ぎが少ないからだろ。この村で、漁だけで楽に暮らして行けるのなら、わざわざ厳しい炭鉱の仕事などに行かなくてもいいんじゃないかな」
「あんた、あたしが嫌いになったの? そりゃー、あたしはちょっと、しつこいかも知れないけど、あんただって楽しんでるんだろ」
「まぁ、それはそうだが・・・いや、そういう問題ではなくて、今のまま順調に魚が売れれば村全体が豊かになって、出稼ぎになんか行かなくても良くなるんじゃないかという話だよ」
「あっ、そうなんだ」
十三
ヤスヒロは続けた。
「俺も君が好きだよ。でも君はやはりニールスの女房だ。こんな関係は早く終わらせなければいけないだろ。俺は旦那の代用品だよ。君だって早く旦那を取り戻したいだろ。だいいち、旦那だって、向こうではきっと、イギリスの女と寝ているぞ。分かっているだろうけど」
「そうか、でもソルタでの商売はこれから先もうまく行くのかね」
「いや、それはまだ始まったばかりだから分からないが、うまく行けば来月には冷蔵車が一台買えるかもしれない。そうすれば商売もやりやすくなる」
「そしてその次はソルタで直売所を設けたいのだが、それも、どのくらいの資金がいるか分からない。だが、直売所が出来れば店先で魚を捌いて売ることも出来るだろう。そうすれば利益もグンと増える」
「あんた、いいヤツだね。でもニールスやアルフが帰って来たら、あんたはお払い箱だよ。それでもいいのかね?」
「いいも何も、今の状態が、そもそも間違っていると思うんだ。村の経済が良くなって、ニールス達が帰って来たら俺は日本へ帰るよ」
「えっ、今なんて言った?日本へ帰るって?それは駄目だよ。あんたが居なくなったら、寂しいじゃないか」
「でもね、俺がいては目障りだよ。ニールスだってアルフだって、俺の顔なんか見たくないだろうし、俺だって、いまさら毎晩一人で寝るなんてまっぴらだよ」
ヤスヒロには東京に彼女がいた。だが、ロンドンにいた時に、その彼女が彼の親友と結婚したと聞かされた。そこで、そんな二人のいる日本へ帰る気がしなくなって、このスカーシヴァグにやって来たのだった。だが、今はそういう気持ちも消えて、日本で仕事を見つけようという気持ちになっていた。仕事が見つからなければ八百屋の店を手伝ってもいい。
・・・・・・・・・・・・・
そして五月には予定通り冷蔵車を買って、すぐに神父さんの紹介で空き倉庫を借りることも出来た。内装を少し変えて六月には直売所がオープンの予定だ。
このころになると、村として法人格を持たなければならないという事が分かって来た。いまはロアール爺さんの名義で何でも契約しているが、爺さんが死んでしまったら車も直売所も所有者が曖昧なままで、爺さん名義の銀行預金も引き出せなくなる。
十四
次は神父さんに税理士を紹介してもらった。神父と春子には世話になりっぱなしだ。
スカーシヴァグ漁業協同組合という法人を、初めて設立登記をした。今まで無かったのが不思議なくらいである。今までは村全体が大家族のような雰囲気で、みんなで助け合って暮らしてきた。
船はすべて漁師の持ち物なので、獲れた魚は全量漁協が買い上げることになった。そして売上金の中から、マリオンなど販売員の給料やその他諸経費を支払った残りが漁協の収入となる。
六月に直売所が出来て女たち数人が交代で店番をするようになった。皆、魚の扱いには慣れたものばかりなので、店先で捌いておしゃべりをしながら料理法を教えると、面白いほどよく売れた。冷蔵車は荷物を降ろすと帰っていき、スーパーやレストランなどへはその直売所から軽自動車で配達をするようにした。
ヨーロッパの人たちは一般に魚より肉を好む。だがこうして直売所で宣伝すれば、徐々に魚を食べる人も増えて来るであろう。
こうしてヤスヒロの思い描いた販売戦略は少しずつ実を結びつつあった。冷蔵室を作るとか、配送車をもう一台増やすとか、まだまだ、やらなければならないことは色々あったが、もうちょっとでニールス達の帰国の条件が揃うことになりそうだ。
そんなある日、直売所にスーツ姿の男たちが三人やって来た。オスロから来た商社マンである。用件は鯖を大量に買い付けたいという事であった。スカーシヴァグでの鯖の水揚げはせいぜい一日千匹だ。それ以上獲っても捌ききれない。しかし、彼らの希望は将来的には年間五万トンだという。A国は鯖が良く獲れる。日本へも大量に輸出されている。
女たちではとても話にならない。翌日ヤスヒロを呼んで話を聞いてもらうことになった。
電話で話を聞いたヤスヒロはロアールやマグヌスと話し合い、取り敢えず話を聞こうという事になって、その日は漁を休みにして三人でやって来た。
今までの漁獲量は多くて一日千匹、約一トン余りだ。年間五万トンなんて獲れるわけがない。だが、男たちは、最初は五百トンでも千トンでも良い。六百トン積みの冷凍船を港に着けておくから、毎日獲れた分だけそこに詰め込んでくれれば良い。満タンになったらそのまま東京やシンガポールへ直行するという話だった。価格はトン当たり六千クローネ、六百トンなら三百六十万クローネとなる。日本円なら四千七百万円になる。悪くないと一瞬思った。だが、どうやって漁獲量を増やすかだ。マグヌスには咄嗟にはその方法が思い浮かばなかった。
十五
すぐには返事が出来ない。じっくり検討して、試しに鯖だけを獲った場合に一隻の船が一日にどれだけ獲れるのか試してから返事をすることになった。
男たちは慌てなかった。とりあえず、冷凍船を回すから百トンでも二百トンでも積み込んでもらえばいい。そして漁獲量を増やす努力をしてほしい、と言った。
男たちの名刺には【A国漁業開発振興株式会社】と、肩書きが付いていた。
≪これは国策事業なのだ。今は一日数トンしか取れないかも知れないが他の漁港でも初めはそうだった・・・・・≫ 男たちは言った。
≪見込みが付いたら大型船を買うと良い。そしてそれに最新型の漁群探知機を備え付ければ一日に数百トン、年間五万トンは夢ではなくなる・・・・・≫
もちろんそれには大きな資金が必要だが、審査が通れば国が二分の一を補助してくれるそうだ。そして残り二分の一も国からの低利融資で、漁獲量に応じて三十年ぐらいかけて返済すればいい、という好条件だった。
ヤスヒロたちは知らなかったのだが、この村の経済発展を指導しているのが日本人の青年だという事を国策会社の方では把握していて、スカーシヴァグに目を付けてきたのであった。
・・・・・・・・・・・・・
ヤスヒロはこれで、どうしてもニールス達を呼び戻さなければいけないと思った。ソルタの直売所で安定収入の道は開けた。その上で鯖を村の主な収益源に育てられればスカーシヴァグは大きな発展を遂げることが出来る。それにはニールスやペターやアルフなど村の主力メンバーの力がどうしても必要だ。大型船を購入するかどうかの判断にはこの三人が加わってもらわねばならない。
村の男たちを集めてヤスヒロが説明した。名も無い貧村だったスカーシヴァグはこの数カ月の間に、この地方では最も急速に発展している村として注目されるようになってきた。しかしもう、自分の役割は終わった。自分は日本へ帰るが、これからは村の人たちだけでやって貰わなければならない。どうかニールス達を呼び戻して皆で村の発展に努めて欲しいと訴えた。
男たちの中には
「せめてもう一年、村に残って俺たちを手伝ってくれないか」
という者もいたが、それではいつまでも頼られるばかりで、かえって村の自立を妨げることになる、と思ったので考えを変える気はないことを伝えた。
女たちはもっと、ヤスヒロとの別れを深刻にとらえていた。それはそうだ。村の経済の発展に尽くしてくれただけでなく、一年もの間、マリオンやシセルがヤスヒロのお陰で、夫の留守の間、寂しい思いをすることも無く、生き生きと、のびのびと暮らしてきたことを、みんな自分の事のように喜んでいた。村が発展するのは良いが、ヤスヒロとの別れは辛かった。ヤスヒロのいないスカーシヴァグがどんなに寂しいか、想像するのも辛かった。
十六
ニールス達の帰国は一年目の契約終了となる十一月十五日と決まった。その後十八日にニールス達の歓迎会を兼ねて、ヤスヒロの送別会がソルタの町に新しく出来たホテルを借り切って行われることになった。
十二日がマリオンとの最後の夜となった。
初めての夜と同じようにマリオンは燃えた。野獣のように燃えた。もう、今日が最後だと思うとやりきれなく、最後にはさめざめと泣いた。マリオンにこんな一面があることをヤスヒロは初めて知った。ニールスのいない間、弱みを見せまいとしてわざと強がっていたのだとわかった。
最後にはしっかりと抱き合った。いつまでも離れたくはなかったが、やがて別れの時が来た。
その翌日はシセルとの最後の夜だった。
シセルもまた、いつも以上に激情に身を任せて飽きることが無かった。だが、終わった後は丁寧に頭を下げて、
「この一年、本当に有難うございました」
と、涙がこぼれるのを拭おうともせず、シセルらしい別れの形をとった。
 ・・・・・・・・・・・
十八日の歓送迎会場は多くの人で溢れていた。それはニールス達の歓迎会でもあったが、ヤスヒロの送別会を兼ねるという事で多くの人が集まったのであろう。
スカーシヴァグの住人のうち、寝たきり老人やその世話をする人たちを除くほとんどの人たちが来ていた。
ソルタの町からも、牧師夫妻はもちろん、直売所の現地スタッフたちやスーパーなど、ビジネスの関係者、町長に警察署長までが来て、口々にヤスヒロの功績を称えた。彼らの中には日本という国を、はじめ中国の一部のように思っていた者もいるが、日本というのは、鯖を大量に買ってくれるアジアの大国だという事を今は誰でもが知っていた。
その二日後、いよいよヤスヒロの出発日だ。ソルタからオスロ経由でフランクフルトへ飛び、そこからルフトハンザ航空で成田へ帰る。
コロナ禍にあってチケットが取れるかどうかを心配していたが、事情を知った漁業開発振興会社の社員が、彼は国の輸出拡大に貢献してくれた人だと政府へ伝えてくれたので、政府役人用に確保してあった座席を分けてもらうことになって、即座に解決した。
 ・・・・・・・・・・・
ヤスヒロは高校卒業後ロンドンの大学に四年間通い、その後四年間はヨーロッパ各国で旅行ガイドなどをして暮らし、そして最後にスカーシヴァグへやって来て一年半を過ごした。途中数回の旅行ガイドとしての帰国はあったが、高校卒業後九年半ぶり、二十七歳になってからの帰国だ。
最後のスカーシヴァグでの一年半は、彼にとっては決して忘れられない日々となった。
 スカーシヴァグという極北の村は何もかもが日本と違っていた。夏には太陽が沈まない白夜の日があり、冬には太陽が地平線の果てに沈んだままの、夜だけの日が二か月以上続く。娯楽施設の無いこの村で、暗い、寒い、長い夜を過ごす為には男女の睦みあいが欠かせないものだと言っても日本人には理解できないであろう。
・・・・・・・・・・・
 前々日の歓送迎会では多くの人が集まったが、狭いローカル空港が混雑するのを避けるため、この日の出発時にはマグヌスとロアール、そしてマリオンとシセルなど数人だけの見送りとなった。
もう決して再びこの地を訪れることはないだろう。
 離陸して、眼下の白い雪原を見下ろすと、スカーシヴァグで出合った人たちの顔が一人ひとり、走馬灯のように浮かんできた。ロアールやマグヌス、そのほかの武骨だが心やさしき男たち、そしてマグヌスの可愛い子供たち、そして勿論、マリオンとシセル。彼女たちと過ごした濃密な夜のことは、あれは本当にあった事なのだろうか?もしかしたら自分は夢を見ていただけなのだろうかと、思えてくるのだった。    

追記
これは小説です。作り話です。A国というのを、どこかの国をイメージしている読者もいるかもしれませんが、A国も、スカーシヴァグという村も、そこに住む人々も、架空のものです。
人名はすべてファーストネームだけで統一しました。聴きなれない名前ばかりなので、出来るだけ分かり易くと、思ったからです。

北の国の女

執筆の狙い

作者 中小路昌宏
124-241-080-209.pool.fctv.ne.jp

東京オリンピックの時、森会長が女性差別発言で辞任させられました。
その時、女ってそんなに弱いものだろうか?強い女もいるのではないか?
そう考えて、強い女を書いて見ようと思って書いたのがこの小説です。

コメント

京王J
sp49-98-158-186.msd.spmode.ne.jp

読みました。

時代背景が???でした。

炭鉱夫になるためにイングランドに行くってことは、少なくとも現代ではないという解釈で良いですか?
(あるいは現代のヨーロッパでも、イングランドへ炭鉱夫の出稼ぎ?に行くことはあるのでょうか?)

しかし一方で、大学へ行く話や、日本人のヤスヒロが北欧で漁師に弟子入り?しているから、現代ぽっくも感じられます。 
そもそもどうしてヤスヒロは、ロンドンの大学?(ロンドン大学?)に留学までしているにも関わらず、北欧で漁師の弟子入り?をしているのでしょうか??
(このお話の核心ではありませんか……)
それに、何の漁をしているのか判然としませんでした。

作者様の書き方があまりに洗練されすぎていて、頭の悪いわたしには読み取れなかったのだと思います。

また、A国と記載していますが、クローネが通貨なら、ノルウェーが舞台という解釈で良いですか?
なぜわざわざA国と記載したのでしょう??
全体的に、わざわざA国を設定しなくても、日本の漁村を舞台にすれば話がスッキリして、読みやすいと思ってしまいます。

技術的には、この短さでキャラクターが多すぎると思います。もっと絞ったほうが読者は物語の世界へ入りやすくなります。

あと、推測ですけど、もしかして作者様は、白人女性と日本人男性がセックスするお話を書きたかったのではありませんか?
(違っていたらすみません)
そうだとすれば、もっと自分の欲望に忠実になって、セックスの部分を掘り下げて書けばよかったと思います。

とはいえ、素晴らしい作品でした。

中小路昌宏
124-241-080-207.pool.fctv.ne.jp

京王Jさま
ご講評有難うございました。ご指摘頂いた疑問点にお答えさせて頂きます。

時代背景が???でした。
炭鉱夫になるためにイングランドに行くってことは、少なくとも現代ではないという解釈で良いですか?
こたえ↓
第四章の終わりごろに、東京オリンピックの森元会長名が出ています。またコロナ流行の話も2回は出ているのですが、お気づきになりませんでしたか?
・・・・
そもそもどうしてヤスヒロは、ロンドンの大学?(ロンドン大学?)に留学までしているにも関わらず、北欧で漁師の弟子入り?をしているのでしょうか??
(このお話の核心ではありませんか……)
こたえ↓
第十三章の後半に
(ヤスヒロには東京に彼女がいた。だが、ロンドンにいた時に、その彼女が彼の親友と結婚したと聞かされた。そこで、そんな二人のいる日本へ帰る気がしなくなって、このスカーシヴァグにやって来たのだった)という記述があります。この説明では不十分ですか?
・・・・・
それに、何の漁をしているのか判然としませんでした。
こたえ↓
全国どこにでもスーパーへ行けばA国産の鯖が大量に並んでいます。鯖が中心ですが、ソルタへ売り込みに行った時に、タラやその他の魚も積んで行ったとわかる記述にしたつもりですが・・・・
・・・・・
また、A国と記載していますが、クローネが通貨なら、ノルウェーが舞台という解釈で良いですか?
なぜわざわざA国と記載したのでしょう??
こたえ↓
特定の国名を書けば、その国の人が読んだ場合に不快感を持たれる可能性があると思ったからです。
・・・・・
全体的に、わざわざA国を設定しなくても、日本の漁村を舞台に・・・
こたえ↓
冬には太陽が沈まない極北の地であるから、日本人には理解できない性風習が根付いている・・・という設定にしたつもりです。もちろんこれは物語を面白くしようとして書いたわけで、事実に基づいたものではありません。
・・・・・
技術的には、この短さでキャラクターが多すぎると思います。もっと絞ったほうが読者は物語の世界へ入りやすくなります。
こたえ↓
主要人物はマリオン、シセル、マグヌス、ロアール、そしてヤスヒロの5人です。あとはちょい役ばかりですが、物語の進行上、省いても差し支えないと思われる人物があるとすれば、それは誰と誰ですか?
キャラクターが多すぎるのではなく、カタカナ文字ばかりなので読みづらかったのではないかと思います。
・・・・・
あと、推測ですけど、もしかして作者様は、白人女性と日本人男性がセックスするお話を書きたかったのではありませんか?
こたえ↓
ポルノ小説を書こうと思ったわけではありません。森元会長の女性差別発言を受けて、女が弱いと決めつけるのは如何なものか? 強い女もいる筈だという事を書こうと思ったのです。でも最後にはマリオンも、旦那の留守の間、弱みを見せまいとして強がっていただけだとわかったと、そういう一面も見せたつもりですが、私の筆力が足りなくて上手く表現できなかったようですね。

京王J
sp1-79-82-231.msb.spmode.ne.jp

中小路 様

お返事ありがとうございます。

あらら……記載自体はあったのですね。
わたしは目が悪いため気づきかず、ずっと違和感を持ったまま読んでしまいました。

大変失礼しました。

京王J
sp110-163-10-230.msb.spmode.ne.jp

すみません。連投になりますが……

森喜朗元総理の一連の問題発言は「女は弱い」という趣旨の発言ではないと思われますが……

彼の「女性の話は長い」や「わきまえない女はうるさくてかなわん」という発言は、「女は感情的になりすぎまる」とか、そういう趣旨の発言だと解する人が多いと思います。
発言の状況も勘案するとなおからそうです。
(もちろん、発言は問題だと私も思います。)

それとも、彼がどこかで「女は弱い」という発言の趣旨をしたのですか?

それに、「強い女もいるはずだ」という作者様の発言及びこの作品の表現の仕方が、実はかえって、「女性差別」だと感じる人がいる可能性があります。
失礼ながら、そこら辺がわからないところが、作者様も森喜朗的な無自覚の差別意識があるではないかと、思わないわけにはいきません。

違ってたらすみませんが、作者様は森喜朗と年齢が近いのではありませんか?

いろいろ言ってしまいましたが、素晴らしい作品なのでご活躍を期待しております。

中小路昌宏
124-241-080-089.pool.fctv.ne.jp

 京王Jさま

 たしかに女は弱い、と言ったわけでは無いですね。でも女を下に見ている、という事ですから、‟強い女”を書こうと思ったのですが、意図が上手く伝わらなかったのでしょうか?

 ただ、これは性差別に関する評論ではなく、娯楽小説ですから、あまり真剣に論ずる必要は無いと私は思うのですが、如何でしょうか?

 実はもう一つ、全く別の作品もあります。続けては投稿出来ないそうですから2週間後にそれを投稿させて頂きます。

 そちらの方も、強い女性の社会を描いたものなので、もしかしたら、ふざけるな!!と、またお叱りを受けるかもしれませんが、しばらくお待ちください。

ドリーム
softbank126077101161.bbtec.net

拝読させていただきました。

ヨーロッパを舞台にするとは御立派、文章をかくにしても考え方思想習慣が違いますから
大変だったと思います。
私にはそんな発想は思いつきません。

登場人物は13人ですか、これをどう繋げて行くか大変だったでしょう。
読む方もその関係を冒頭の登場人物を照らし合わせて読みました。

また主人公は日本人は居るけど脇役、漁師が殆どだけど商売上手
これは商売の知識がないとこう描けません。
読んで楽しめる作品ではないでしょうか。
お疲れ様でした。

中小路昌宏
124-241-080-159.pool.fctv.ne.jp

有難うございます。

まだまだ未熟者の私ですが、お世辞でも誉めていただければ励みになります。
次作でも頑張りますのでよろしくお願いします。

浮離
KD111239129014.au-net.ne.jp

森何某の言い分については作品そのものにはたぶんどうでもいいことのはずなので置いておくとして、狙いにある

>強い女を書いてみよう

についてその作為を一読者としておつきあいさせて頂いてつもりではいます。
その結果どう感じさせられたのかと言えば、“なんだかな“なんて言い方はアレなんですけど、真面目に書かれていることは伝わってくる気がする分、その作為に照らすと案外ピントがズレたものになっていやしないか? というのが一読者としての感想ではあったわけなんです。

クチの悪い言い方をしてしまえば、安直な見立てで“女性蔑視“的表現とも受け止められかねない、なんてケチを期待したがるらしいなんだかなあみたいな読者もいるみたいなんですけど個人的にはそれは案外つまんない話で、もっと基本的な意味において単純にその解釈なり意図が結論なり見立てありきに終始してなにも動きがないだけ、みたいな気がしてしまうとかそんな感じなんだと思うんですね。

“強い女“が本当にこのお話の主題であるなら、その扱われ方はなんだかアレです、“ちゃんとエサくれといてやんないと機嫌悪くて唾ばっか飛ばしやがって手に負えねえからな“なんて、個人的には気の荒いラクダかなんかに手を焼くお話してるみたいなんてひどいこと思ったりなんかして、ヤラせとけばとりあえずなんとかなるっしょ、って女の性欲をただの肉体の欲求然としか付き合わない感じがうわずみに出張りすぎていて、書き手としてはそのつもりはなかったものとしても案外“女“っていう材料の処理が事実それ一辺倒であるらしいことは“女“を書くというテーマ以前にむしろ随分と偏った男側の都合目線ばかりに終始して見えなくもないという印象において、そこにまつわる部分のお話には個人的には興味や共感は思いつきづらかった気がしています。

概ねの印象に預けるならこのお話の軸となるのは日本人ヤスヒロだとは思うんですけど、そんなヤスヒロの異国の地における獅子奮迅の活躍は筋書きとしては立派なんですけど、立派にお話の筋を負ってくれるだけでお話の面白みという意味で立派に勤めてくれたものかといえば案外そうでもなさそうな印象を個人的には受けていて、ヤスヒロが動く場面はヤスヒロではなくことごとく書き手の筋書きのためのコマがうろうろしている感触が何かと強い気がしてつまり、本当に“筋書き“そのままそれ以上でも以下でもないものに終始している気がするんですね。
単純に、“へえ、そうなんですか“という案外そのままを受け止めるより他に目的のない動きになっている気がするんですお話として。
各章の短さというのも結局はその証左みたいな気が個人的にはしていて、書きながら書き手は案外それぞれの場面に預けるディテールなどにはあまり目的を見出してはいないものらしい、というのが読み手なりに期待したがるはずの“物語“的な躍動を与えられ損ねた気にさせられる部分のような気がするわけなんです。

スカーシヴァグという村での出来事、ヤスヒロっていう一人の日本人が村に残した功績的な、その足跡みたいなお話ということなら筋書きにもっとその村に暮らす人間的な側面や交流を書き足せばいいことなんだろうとは思うんですけど、こと“強い女“となると、不足して感じさせられる視点なり作為というものはまた別のことになる気がするんですね。


ヤスヒロの種馬的タイトスケジュールみたいな場面なんかもあるんですけど、平たい言い方をしてしまえば“強い女を書きたい“というテーマにあって、頑張るのはヤスヒロですか? ってことなんですけど、伝わりますかね。

“強さ“って、何なんですかね。

この作品の有り様を否定したい言い方をしているわけではないので勘違いしないで欲しいんですけど、誤解を恐れずに言ってしまえば、この作品の女たちの“強さ“っていうのは自分の旦那や恋人の不在の間も別の竿に差し替えてでも旺盛な性欲を飼い殺してやりまくりながら立てて貫く操、っていう常識的にはメス以上女未満みたいなわりとヘンな感じであることは確かなはずで、それをこのA国に暮らす人々の例えば“民族性“っていう一言ばかりを着せてふんぞり返らせるばかりでは“強さ“という意味において案外物語的な面白みでも精神性でも、個人的にはやっぱりデリカシーという部分も見過ごせない気はしてしまうんですけど要するに、わりと淡白な見立てらしくあまり物語としての強度なり共感みたいなものは感じさせられにくい気がしてしまったわけなんです。


マリオンとシセル、でしたか。ヤスヒロの担当。

ものすごくベタなことを言ってしまえば、セックスを蔑ろにしない民族性ありきでも全然構わない上で、“女の強さ“なりをテーマにしたならたぶん、例えばマリオンはいつも真心のこもった料理でヤスヒロをもてなして、「こんな時くらいゆっくりおやすみなさいよ」って、超タイトスケジュールで逼迫した面持ちのヤスヒロと交わることは内密に拒否してなおその関係性こそを印象深いものにしてくれるとか、はたまたシセルはヤスヒロの過去の恋愛における感傷について、深い共感と共に立ち直るきっかけを与えてくれるような都度の会話とかシセル自身の恋愛観なり夫婦観のようなものを民族性に委ねて縛られるものばかりでもないことを彼女自身として、やっぱりその関係性なり出会いの価値をより深いものにしてくれるだとか、場面を連れる軸はヤスヒロでも、そこに色をつける存在としての“強い女“というものはたぶん、肉体的な白状を“たくましさ“とかやっぱり“強さ“の如く蓋を開けたら所詮動物的十把一絡げ、なんて言い方はひどいかもしれないんですけどたぶんここに書かれていることはそちらにはよほど近いはずなので、あくまでも“物語“という強度なり奥行きなり色彩なりなんでもいいんですけど、より豊かな“読書“という体験を求めるなら、読者としては案外やりたいのは山々でもいつまでもそれを民族性とかしきたりとか、それがあってそればかりでもない部分のそれぞれのエピソードがあってこその多岐にわたるキャラクター設定という目的なり根拠のはずではないのかなあ、というのが正直な感想だったりはするわけなんです。

女は性別であって、個人のことではない。
とはいえ、“女は強い“

っていうあくまでも一読者としての“物語観“のようなことであって見立ての話なので、結構思い入れの強い書き手さんみたいなのでここまで読まれるまでもなく大層気を悪くされていることとは思うんですけど、あくまでも一個人としてのただの感想であって他意はないです。

中小路昌宏
124-241-080-233.pool.fctv.ne.jp

 浮離さま

 ご丁寧な読後感ありがとうございます。

 実際にはあり得ない話を、想像力を膨らませて書いているだけなので、読む人にはめいめい自分の価値観に基づいて評価して頂くことになると思います。
 一人一人の価値観は違っているので、すべての読者に共感してもらうことは不可能だと思います。ですから浮離さまのご意見もそういう一人の感想として受け止めさせていただきました。

 
 ただし文章が上手いか下手かというのは別の話であって、まだまだ未熟であるという事は自覚しています。

 しかし、ではもう書く事を辞めるかというと、そんなつもりはありません。また次もお叱りを受けるかもしれませんが、2週間後に、もう一つ、強い女をテーマにした作品を投稿させて頂く予定です。

京王J
p1165143-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp

なんというか……

俺が「強い女」だと思うものを書くのだ、とおっしゃって、なおかつ、「一人一人の価値観が違うので」とおっしゃっるなら、普通の読者は「そっか。なら私たちに言えることは何もないね」と、すごすごと引き下がるしかありませんね。

また、上の方が、

>>クチの悪い言い方をしてしまえば、安直な見立てで“女性蔑視“的表現とも受け止められかねない、なんてケチを期待したがるらしいなんだかなあみたいな読者もいるみたいなんですけど個人的にはそれは案外つまんない話で、

無益な深読みをしない限り、この作品の「女性蔑視的表現」は普通の読者から単に反感を買うだけで、「損」しかないと思います……
特にこの作品は「女性蔑視的表現」という批判に対して防衛もできていないですし。

人から共感されなくても何でもあっても、俺が強い女だと思うものを書くのだ、で別にいいんじゃないと思います。何はともあれ、そこを貫く姿はお見事です。

あんどこいぢ
59-171-36-222.rev.home.ne.jp

どうも済みません。

これはヴァイキングの話なのではないですか?

ヴァイキングの社会は略奪経済ではなく、ちゃんと農耕もやっていた。実は動物の角をはやしたヘルメットなどかぶっていなかった。
というような話と一緒に、男たちが航海に出ているあいだ女たちが村の生活を回していかなければならなかったので、女たちが案外強く、そして民主的だった、などという話をするひとたちが多く、私個人は、そうした非西欧主流社会を妙に持ちあげるひとたちのやり方は性急過ぎるように感じているのですが、強い女性像を提示する方法としては、その辺から話を引っぱてくる気持ちがあったということなら、むしろ定石を踏んでいるのではないか? などと感じました。

日本人の登場についても文化人類学のフィールドワーク的視点なのかな? などと感じました。

そう解釈してくるとその意図はあまり達成できていないなとも感じたのですが、とはいえ私は、文化人類学とか民俗学とかのことはあまり信用していない人間なので、作者様には逆に、あえてスベるといった方向で、突っ走って頂きたいな、などとも感じています。
田山花袋の『重右衛門の最期』などが確かそのようにも解釈できる作品で、私は同じ作者の『蒲団』などよりよっぽどすごい作品だと思っているのですが……。

失礼しました。

中小路昌宏
124-241-080-200.pool.fctv.ne.jp

 あんどこいぢ様

 ご講評ありがとうございます。

 作家でごはんに投稿させて頂いたのは初めてですが、色々な方からいろいろな視点に基づき、ご意見を頂き、ああ、そういう見方もあったのかと、少々混乱しております。 
 
 私はただ、大衆娯楽小説を書いたつもりなので、難しいことは考えず、面白いかどうか?、筋書きに不自然なところが無いかどうか?・・・という様な事だけを考えながら書いただけなのです。

 ところが、この内容に不快感を持たれた方もいらっしゃるようなので、投稿先を間違えたのかな、と、今は思い始めたところです。

 ほかにも幾つか書き溜めたものがありますので、そのうちの一つを次回投稿させて頂きたいと思っています。しかし、批判を恐れて、意にそぐわぬ修正をしてまでそれをするつもりはありませんので、たぶん次回も、お叱りを受けることになろうかと思っています。

浮離
KD111239125118.au-net.ne.jp

>実際にはあり得ない話を、想像力を膨らませて書いているだけ

>一人一人の価値観は違っているので、すべての読者に共感してもらうことは不可能だと思います


っていう返信を受けて改めて狙いにあるこの作品の創作の動機を考えると、まさにうっかりとしか言いようのない誤解があったらしいことに気付きました。

森何某の差別発言問題という体での辞任劇について、世間一般の概ねの感想は森何某の迂闊な女性蔑視発言を非難するものであったはずらしいんですけど、つまり書き手さんはまったく反対の立場で動機を受けた、ということだったんですね。

読み手としてそこのところから取り違えていましたし、ともなれば確かに上に引用させていただいた言い分も腑に落ちますし、森何某が“辞任させられた“というなるほど微妙な解釈の幅を改めて観察させられる言い回しにこそ腑に落ちた気がしたわけなんです。


>その時、女ってそんなに弱いものだろうか?強い女もいるのではないか?

またしても口の悪い言い方をしてしまうとつまり、

“女っていう生き物をセンシティブに扱いすぎだろう。所詮女だって同じ人間、そこまで気遣うほうがむしろおかしくないか? 所詮やりたいだけの魂胆は男も女も変わらないだろう。そんなもんだろう所詮“

なんて、この作品を書き手の返信や狙いなどからも鑑みて改めて適正(もちろん個人的にはそうは思わないんですけど)に受け止めようとするなら確かに、マリオンもシセルも所詮ヤリマンのメス風情であってこそ作品の意図たらしめるらしいことはよく理解できました。

他の方への返信に

>私はただ、大衆娯楽小説を書いたつもりなので、難しいことは考えず、面白いかどうか?、筋書きに不自然なところが無いかどうか?・・・という様な事だけを考えながら書いただけなのです。

とあるのもなるほど、言質的にははっきりと森何某的なごく個人的な大らかさにまったく疑いを持たない姿勢とよく似たものを感じさせられます。
誤解があったようなら謝るんですけど、それ以外の理解があるならぜひお聞きしたいところではあります。


端的にはつまり、書き手自信が考えるところの“女の強さ“というものをどう考えられた上でのキャラクターないし物語そのものの背景的な軸をちゃんとお答えいただけたなら何かとわかりやすい気はするなあ、というただの個人的見解だったりします。

ご自身のお考えに揺るぎないものをお持ちであることは別段否定しないですし、何しろあたしこそが誰よりも自分の考えを譲らない手に負えないクソ馬鹿風情の筆頭を自負するものなので余計な気遣いはいらないですし、先の返信にいただいた次作に関してはたぶん読まないですから安心して投稿されてほしいです。


ただ一点、

>少々混乱しております

といった横道みたいなお話は結構ですので、“女の強さ“あるいは“強い女を書いてみよう“というご自身の中で考え付かれた“強さ“というものについて、端的にもお聞きできたなら的外れな長文感想について少しは素直に詫びる気にもなれそうなものだ、なんて言い方ばかりはクセのごとく感じ悪くてすみません。

かなりタチの悪いフェミニストが言ってることなので、神経質に考えてもらわなくても大丈夫です。

ただ単純に、個人的には“強さ“というテーマについて所詮“蔑視的“表現と受け止めさせられても仕方ない印象を受けたといういってしまえばそれだけの、というかむしろ案外一番の問題点であるはずの指摘について、文章と巧劣か未熟か何かのようなことにすり替えて許容のふりを仕込まれても、単純に馬鹿にされているだけみたいで失礼な気がしたんですね。

これは、ただの個人感情です。
気に食わなくても大丈夫です。

とはいえ、随分損してないですか? っていうただのまともな考えをお伝えしたかっただけなのかもしれないんですけど、それも考え次第ということは森何某的思考の書き手さんとしてはまったく理解に苦しむところかとは思います一先ず、失礼に感じさせられたことはただのあたしの事情ということで別に構わないことにします。


繰り返すとただ一点、“強い女“についてのお考えなりその作為を率直にお聞きできたならありがたいなあ、ということです。


気が向いたなら、ということでももちろん結構です。
そもそもの創作の意図を狙いを読んだ上にも誤解していたことは謝ります。

すみませんでした。

ラピス
sp49-104-13-147.msf.spmode.ne.jp

全て架空の話ですか、、、。
凄くリアルな想像力。読み耽ってしまいました。
間違って妊娠したらどうすんだろ、とか、ちょこちょこ考えつつも、ある種の国造りシュミレーションゲーム、サクセスストーリーにわくわく。
性に自由で、目から鱗でした。

中小路昌宏
124-241-080-005.pool.fctv.ne.jp

 ラピスさん、お読みいただきありがとうございます。

 こちらの方々は真面目な人が多く、さまざまな角度から、それぞれ違った見方でコメントを頂いていますが、小説というのは読む人に楽しんでいただくことが第一だと私は思っています。

 そういう意味で、褒めていただいたと理解してもよろしいのでしょうか?

 妊娠については、最初の原稿ではコンドームの事など書いてあったのですが、物語の本質には関係ないと思って、省きました。

 実は続編として、日本へ帰ってから、マリオンの妊娠が発覚して大騒動になるという話を書いたらどうかと、友達のアマチュア作家から言われましたが、なかなか難しくて、まだ具体的な構想がまとまっていません。
 よかったらラピスさん書いてみませんか?

浮離
KD111239120076.au-net.ne.jp

なるほど。
言明を避けて居直れるなりの作為ということなんでしょうか。
 
>こちらの方々は真面目な人が多く

>小説というのは読む人に楽しんでいただくことが第一だと私は思っています


なるほど。
不真面目に思われようがセックスをただの肉欲然として処理の如く楽しめるのが"強い女"であって、"小説"という楽しみの提供の姿勢である、と。


理解も共感も、百歩譲ってそれをたとえば"エンタメ"として了承するなりにもただ単純にその表現に足るモノとは個人的には思えなかったというつまり

>さまざまな角度から、それぞれ違った見方でコメントを頂いていますが

的な扱いにすぎない、一感想にすぎないわけなんですけど、それに対する態度は平静と良識を装いながらその実案外拗ねて傲慢な所詮それほど堂々としたものでもないらしいことにこそ一読者としては尚のこと批判的な印象を思いつかされざるを得ない、といった感じにさせられざるを得なかったりはしてしまいますよね。
言い方回りくどいですかすみません。


>実は続編として、日本へ帰ってから、マリオンの妊娠が発覚して大騒動になるという話を書いたらどうかと、友達のアマチュア作家から言われました

なんて、"強い女"として巻き起こるらしい積極的不慮の妊娠を"続編"なるエンタメとして"大騒動"と名付けてそそのかして憚らないという周囲の感性も似たものか同じ穴のなんとかかよくわからないですけどユニークなつもりなのではありましょうし、そんなユニークなつもりをなるべくならささやかに楽しむにとどめて欲しい気はなんだかしてしまうよなあ、というのはもちろんそれに足る表現と感性と配慮と良識並びに極めて冷静かつバランスの取れた客観と品性を常に意識に置かれた上でのことに限られるはずでこそあるわけなのでやっぱり、次作は安心して投稿されて下さいあたしは真面目すぎるので読者として明らかにふさわしくないことを先んじて自覚してこうした感じの悪い佇まいを晒すことにならないように気配や環境への配慮に努めたいと思います。

繰り返し長々とすみませんでした。
書き手らしい然るべき創作活動を楽しんで下さい。

京王J
p1165143-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp

再訪です笑。

>>それに対する態度は平静と良識を装いながらその実案外拗ねて傲慢な所詮それほど堂々としたものでもないらしいことにこそ一読者としては尚のこと批判的な印象を思いつかされざるを得ない

私も作者様が「拗ねて」いるのは、強く感じますね。
けっこうスネ夫くんだと思います笑
「批判的な印象」の感想をつけられて、激しく動揺されていると推測できます。

浮離様=でしょ様と初めて意見が一致してなんだか嬉しいです笑

関係ないコメントで失礼しました。
作者様は気にせず、2週間後、堂々と投稿してください笑

ラピス
sp49-104-13-147.msf.spmode.ne.jp

小説内においては、どのような価値観で描かれようと自由だと私は思いますケドね。。。

浮離
KD111239120076.au-net.ne.jp

もちろんあたしもそう思います、って言いたいのは山々なんですけど、たぶんそうでもない言ってはならないことなんてこの世には社会的に抹殺されても致し方ないらしく扱われがちな地雷的仕掛けとあえて言ってしまうんですけど要するに面倒な言い掛かりのつけようはいくらでもあるはずで、つまりあたしはそんな面倒に解答するただの迷惑異常者ということにもなり得ようものなんですけどそれは置いといて、なんて言えてしまえそうな率直さにおいて疑問に感じているだけのつもりなんですよね。

"価値観"と名付ければ固有らしく許容すべき何がしらしく扱いやすくなりそうな気がすることはそれでいいんですけど、ただ単純に、片っ端から女をヤリマンに仕立てて尚且つ多様なキャラクターを配置したことをあくまでも意図的な境目として配置したらしいことを書き手本人が指摘を打ち返す意図で弁明されていたように思うんですけど、個人的にはそのキャクターを必要とする意図でも数でもなんでもいいです、その上で"楽しんでいただく"というつまりは楽しんでいただけるものと信じて疑わないその価値観こそがまったく共感し難いというか単純にあたしには到底あり得ない価値観ですか、そういう摩訶不思議な思考に感じさせられたので要するに、これってまさに後学ですから参考までにお訊きしておきたいんです、ということなんですよね信じてくれなくてもいいです。

単純に個人的にはその精神構造がまったく想像できないですし、そんなものが聞くだけでも聞くことができれば要するに、今後の創作の一つのネタになったりもするじゃないですかキャラ造形とかそんな感じでもなんでも。

わからないから、訊いたんです。

頭ごなしではもうわけないから、あたしは例えばマリオンとシセルにそれぞれのエピソードなり役割を与えるような価値は考えられないですか? 何のためのキャラ設定、配達なんですか? 同じことをするだけのためにどうして二人必要でヤスヒロの疲弊ばかりがフォーカスされるんですか? "強い女を書いてみよう"という狙いはどうなったんですか? という違和感についてその改善案というのもおこがましいながら例を示してまでお聞きしたいとお伝えしたんですね。

何しろ、書かれている有り様に狙いに足る根拠をまるきり感じさせられなかったから、ということです。

その上で、

>私はただ、大衆娯楽小説を書いたつもりなので、難しいことは考えず、面白いかどうか?、筋書きに不自然なところが無いかどうか?・・・という様な事だけを考えながら書いただけなのです。

というどなたかへの返信なり、あたしへの

>実際にはあり得ない話を、想像力を膨らませて書いているだけなので

という返信を受けて、何をそんなに不愉快に感じさせられたのかと言ってしまえばつまり、"だけ"というその言い草に尽きるんですね。
その上での文章的な巧拙云々なら認めるだのという話の晒し方にものすごく卑怯な態度やマナーを安く見積もる舐めた魂胆を見透かさずにはいられなくさせられるわけで、書き筋のみならず態度まで森何某と寸分違わない素性を憚る気もないことが不思議すぎてぜんぜんわからなかったわけなんです。

"価値観"なんてそんな便利に受け応えられそうにないただの不明さと違和感をとてもではないですけど誤魔化す気にはなれなかったということなんですね。

何言ってるのかわからないですかね、長いから伝わらないのはこのサイトの程度でしかないからあまり気遣うつもりはないです。
わからないだって、平等にあって然るべきってことなんじゃないですかね。

あれ? なんかおかしくないかな?


そうなんですよ、だからこの書き手も答えないんでしょうし、仕方ないからこっちの猟犬のみでも伝えたくなるし伝えるより他にない気にさせられてしまうんでしょうかね。

まったくどこもかしこもイヤな感じだけのサイトに成り果ててしまったモノですよね。

え? あたしのせいですか?


そうかもしれないですよね確かにそんな気はしますよ何しろあたしは誤解されやすいし誤解させやすくもあるので要するに、伝わんないって面倒なことだよなあ、って責任感じて色々励んでますよ相変わらずにしか見えなかろうとも。


そういうことです。

"だけ"と言ったらダメとかじゃなくて、そこに透けるものがあるでしょ? ってやっぱり相変わらずのこと言ってしまうんですけど許してください。


相変わらずなことですみませんでした。

浮離
KD111239120076.au-net.ne.jp

不明すぎるので訂正します


× そんな面倒に解答する
○ そんな面倒に加担する

× 意図的な境目
○ 意図的な作為

× もうわけない
○ もうしわけない

× 配達なんですか?
○ 配置なんですか?

× 話の晒し方
○ 話の逸らし方

× こっちの猟犬
○こっちの了見



個人的には最後のやつが面白いと思いました。


すみませんでしたー。

ラピス
sp49-104-13-147.msf.spmode.ne.jp

ああ、執筆の狙いがね。。。本文にそぐわないですね。強い女とは、違和感あります。あっけらかんとしてるけど。

強さとは何だろう。
拘らないから強いのか。
男なしではいられないなら、弱くもとれますな。

皆が協力しあって村が発展していくさまは、とても面白かったですが。


作者さん。
独占欲のある私には、この世界は描けないです。。。

京王J
sp1-72-7-34.msc.spmode.ne.jp

>> その上で"楽しんでいただく"というつまりは楽しんでいただけるものと信じて疑わないその価値観こそがまったく共感し難いというか

うんうん。
作者様の「楽しんでいただけるものと信じて疑わないその価値観」は、違和感を感じる方が確実にいると思います。特に女性読者は、違和感を感じる方が多いはずです。

しかし、作者様は「楽しんでいただける」=「この作品は面白いに違いない」と本気で考えて書いたのですから、「作者様はそういう人間」だとして、割り切って行くしかないです。一読者からすれば。

この作品が世の中から共感(=面白い)をもって迎えられることは100%あり得ないのですから、怒るだけ無駄かと思います。作者様には失礼ですけどね。

>>文章的な巧拙云々なら認めるだのという話の晒し方にものすごく卑怯な態度やマナーを安く見積もる舐めた魂胆を見透かさずにはいられなくさせられる

「単純に個人的にはその精神構造がまったく想像できない」と言っていますが、作者様のようなワナビはよくいますよ。
客観的には「上手くない」のに、自作擁護=自己正当化するために、「ものすごく卑怯な態度やマナーを安く見積もる舐めた魂胆」でディフェンスするのです。

ダメな人の行動パターンはみんな同じですから、浮離様もいい加減気づきましょう。純粋でかわいいですけど笑
(作者様はダメな人ではありませんよ!)

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

テクニカルサポート

3,000字以内