作家でごはん!鍛練場
平良 リョウジ

Vol.1【鏡の中のワコ】

 洗面所の鏡を見てみると、映っている彼女はいつも通り僕の横に立ち、こちらを興味津々に見つめては不規則に歩き回っていた。
 僕はそれを無視して歯を磨き、ガラガラとうがいをする。チクチクと喉に痛みが走った。
何だか最近熱は無いものの、喉が痛い日がずっと続いているし、フラフラと倦怠感も感じる。しかし、熱を出しても家で面倒を見てくれる人間なんていないし、僕は皆勤賞こそが評価の全てだと思っている人間なので発熱さえなければ学校には行くようにはしていた。我が家はいわゆる父子家庭だ。
 僕は鏡の中にいる彼女をチラッと見る。
冷静に考えてみればこんな状態に慣れてしまっている自分は異常と言えるのだろう。家の洗面所の鏡に死んだはずの幼馴染の少女がはっきりと映っており、覗く度に僕を好奇心溢れる表情で見つめてくるのだから。
 一般論から考えると、おそらく彼女は幽霊なのかもしれない。
 僕はこの家に父親と弟(それもとても生意気な)の三人で暮らしている。彼女が現れるようになってから半年以上が経ったものの、僕以外の家族には見えていないようだったし、何度か訪れた来客達も同様だった。
 ちなみに幽霊となった彼女が何を考えているのかは全く分からない。僕は何度か試しに話かけてみたのだが、僕の言葉に彼女が何らかのリアクションをしたことが一度もなかった。
機嫌が悪くなり、僕が彼女に向かって汚い言葉や切り裂くような悪口を含めた罵声を浴びせてしまった時もあった。その時も彼女は動揺一つ見せず、鏡の中でうろうろ歩き回っては興味津々に僕を見つめていた。まるで何も考えておらず、何も聞こえていないかのように。
罵声を出し切り、疲れ果てた僕はそんな変化の無い彼女を見つめている内に、息苦しくなるほどに泣いていた。よっぽど自分が情けなく感じたのだろう。
 それを偶然見ていた父親と弟はきっと僕が思春期真っ盛りの悩める熱血少年に見え、同情していたに違いない。恥ずかしい話に聞こえるかもしれないが、僕はそこまで気にしてはいない。
 僕は鏡の前で堂々と制服に着替えて身だしなみを整えると、「行ってきます」と僕をキョトンとした顔で見つめる彼女に一声かけ、玄関で自転車に跨ると学校へ出発した。
熱はないものの、倦怠感で体がフラフラしているので力を抜いただけでも自転車ごと転倒してしまいそうだった。

 正直言って僕はワコが何者だったのかはあまり覚えていない。
苗字も漢字で書いた名前も、親がどんな顔をしていたのかも、どんな家に住んでいたのかも覚えていない。
 覚えているのは少し変わった性格、そして異常なほどの昆虫好きであったということだけだ。
 公園や教室など彼女は場所を選ばずに、いつも様々な虫を捕まえては僕に向かって投げつけていた。
僕はそういった虫達の、人間とはかけ離れた外見がこの世で一番苦手だった。叫び声を上げ、その場で啜り泣きをするかトイレに逃げ込むか、どちらかの行動を取るのがよくあるパターンだった。
 ワコはそんな僕を見ると腹を抱えて笑っていたが、その度に彼女は担任の教師を始めとした周囲の大人達に長時間叱られ、僕と仲直りをする誓いをさせられていた。これは当時ほぼ毎日の話である。
そんなワコが死んだのは僕が小学4年生の時だった。彼女は僕の家に来て隠れん坊をして遊んでいた最中に何者かによって腹部を刃物で刺されて殺されていた。その時の僕は隠れん坊でまだかまだかと隠れていたので、彼女の死にしばらく気付くことができないでいたのだ。彼女を救えなかった罪悪感は今でも呪いのように僕の胸の内で蠢いている。
 6年が経った今でも犯人はまだ見つかっていない。警察の調べによると犯人は僕とワコだけが家にいた時、偶然玄関の鍵が空いていたので家の中に侵入。金品を探していた時に(実際、家の家具が酷く荒らされた形跡があったのだという)、隠れた僕を探していたワコと鉢合わせになり、揉み合った拍子に彼女の腹にナイフを突き刺して逃亡。との見解を示した。
 僕の母親は刑事だった。
「絶対に犯人を捕まえるから元気出して」と毎日啜り泣きをしていた僕を何度も励ましてくれた。そしてお気に入りのオーバーオールが少しでもほつれてしまった時も嫌な顔一つせずに裁縫道具で直してくれた。
 僕はそんな母親が容姿も含めて誰よりも格好良かったし、太陽のような存在だった。しかし、母親はその事件の捜査を真剣に進めている内に、顔が少しずつ窶(やつ)れていくのが僕と当時6歳の弟にはよく分かった。母親には病弱という唯一と言ってもいいほどの欠点があったのである。だから僕が小さい時も一緒に追いかけっ子をすることができなかった。それほどの病弱さで、おそらく何日も寝ずに無理をしながらワコが殺された事件の捜査を続けていたのだろう。やがて彼女は体だけではなく、心も壊れていき、一ヶ月後に自らの手に手錠をかけて首を吊った。
 その時からか、父親は酒に溺れて僕と弟に対しても心を閉ざすようになり、弟は母親を失った悲しみで周りの人間への態度が冷たくなった。
 太陽が失われた世界で一人残された僕は、第二の故郷を求める宇宙人のように、明るい居場所を模索し続ける日々を送るのであった。一人の親友に救われても尚、それは続くこととなった。

「おーい、そこの自転車を漕いでいる人」
 長身で白装束の人物が、僕を呼び止める。それもかなり怪しい服装をしていたので周辺では登校中の女子生徒達が気味悪がり、通報するかしないかの話題でもちきりだった。
 倦怠感を我慢し、やっとのことで学校の正門前に辿り着いたところだというのに。
 「は?誰だよ」と、周りから誤解をされたくなかった僕はその人物を威圧する。
 「そう怪しがるなよ。健太郎」
 長身で白装束の人物は僕に向かってそう言うと、馴れ馴れしく近づいてくる。「お前、毎日幽霊を見ているだろ?」
 図星な指摘をされた僕は自転車に跨ったまま硬直すると、ゆっくりフードを上げたその人物の顔を見た。
 「え?お前、悠人なの?」
 と、僕はそれに驚き、かつての小学校時代の親友の肩を叩いた。相変わらずのそばかすと濃い眉毛ですぐに分かる。「ところで悠人。何?その変な格好……」
 「気にするな。あれから数年間、色々とあったのさ」
 「そんなことを言われたら物凄く気になるじゃないか……」
周りはそんな僕達のやり取りを何らかのサプライズだと解釈したらしく、彼を不審人物として見なくなった。
怪しげな服装で現れたかつての親友悠人であるが、彼とは昔、僕とワコが仲違いしてしまった時に何度も仲裁に入ってくれたし、母親を失った僕を何度も遊びに誘ってくれたかけがえのない存在だった。小学校卒業まではずっと同じクラスだったのだが、それ以降彼がどこでどうしていたのかは分からない。今回が4年ぶりの再会である。
 「でもまぁ、健太郎が俺をすぐに分かってくれて嬉しいよ」と、悠人は服装に似合わないにこにこした二枚目の表情で軽く会釈すると、すぐに真剣な表情へと切り替える。
 「もう一度聞くぞ。健太郎ってさ、毎日幽霊を見ているだろ?」
 「え?悠人にそんなのが分かるの?」
 彼の服装と質問にカルトチックな胡散臭いものを感じたが、図星であることには変わりはないため、僕は正直に答える。「うん。君の言う通り、僕は毎日幽霊を見ているよ。それもワコの幽霊をね」
 「そうか」と、意外にも驚きの表情を全く見せずに頷く悠人。「幽霊と言ったって虫と同じように色々な種類がいる。ワコの幽霊の特徴を俺に詳しく教えてくれないか?」
 僕は少し考える。一応幽霊について彼は何か知っている様子を見せている。ここで詳しく話した方が黙っているよりも得策だろう。
僕は腕時計に目をやり、ホームルームの開始まであと二九分もあることを確認した。焦る必要はない。
僕はワコの幽霊の特徴を何一つ残さず、一枚の織物を織っていくように丁寧に説明していった。
ワコの幽霊を見るようになったのは高校に入学した半年ほど前だということ。
洗面所の鏡を覗くと必ず笑顔で僕を見つめてくること。
僕以外の人間には見えない可能性が高いということ。
ただ何も喋らず不規則に鏡の中を歩き回ったり、こちらを興味津々に見つめてくるだけで、何を考えているのか分かりかねないということ。
そして何故か小学4年生ではなく成長した高校生の姿をしており、自分と同じ学校の制服まで着ていることなどを順序よく話していった。
悠人はそんな僕の証言を、表情を変えずに聞いている(昔から彼はそういう奴である)。きっと聞き手が常に表情を動かしていては、話し手がそれに合わせて内容をすり減らしてしまうことをよく理解しているのだろう。
 僕が一通り話し終えると、「放課後、俺にもワコの幽霊に合わせてくれないか?」と真剣な顔で僕に頼む悠人。「きっと霊感の強い俺になら見える可能性がある」
確かに、悠人の白装束という奇妙な服装と的中した指摘からして、きっと何か霊的な仕事をやっており、それなりの信頼はあるのだろう。しかし、小学校時代、運動や勉強、何をやらせても優等生で多くの男子女子双方から絶大な人気を誇っていた彼がそういう類の仕事をやっていることを想像すると、なんとも言えない違和感は否めなかった。
「……分かったよ、悠人。でも、どうしてそんなにワコの幽霊に会いたがっているんだい?—————もしかして、ワコが死んだあの事件について何か知っているんじゃないのか?そもそも、悠人はワコの幽霊を見て何をするつもりなの?」
 僕は言葉を強め、彼に詰め寄った。6年前、第一発見者の僕の目の前にて、周囲を真っ赤に染めながら倒れていたワコが急に脳裏に蘇る。
 悠人は少しの間目線を逸らしていたが、何かを決心したように再び僕の顔を見つめた。「健太郎。今、沢山の複雑なことが起きていて詳しいことは話せない。でも、俺を信じてくれ。それは勿論お前のためにも、ワコのためにもな。……話は一旦ここまで。今日の五時に健太郎の家の前に集合でいいかな?」
 「構わない。授業が終わって家に帰るまで十分間に合う時間だよ」
 僕は悠人とある程度の打ち合わせを終えると、すぐに解散した。僕が知る限り、悠人は嘘を一度も言ったことがない人間である。しかし、それは共に過ごしていた小学校までの話であり、その後の時間を過ごした彼のことは何も知らない。
 僕は、いつ沈むのか分からないボロ船に乗った気分で正門をくぐった。
 
 「服装は変でも、相変わらず悠人は時間ぴったりだね」
 歩きでやってきた白装束のままの悠人と家の前で合流した僕は、早速彼を家へと招き入れた。
 父親は会社で仕事の真最中、弟はピアノのレッスンに行っている時間帯だった。
 「お邪魔します」
 悠人は玄関で一言そう言うと、早速リビングの洗面場まで辿り着く。
 「あっ、いた。これがワコの幽霊だよ」
 僕はワコが映っている洗面所の鏡を恐る恐る指差した。いざ物事が確信に迫ったという快感が全身に溢れると脚が小刻みに震えるようである。
 「どれどれ」
 悠人は何の抵抗もなく彼女が映った鏡の鏡面を触る。
 「どう?やっぱりワコの幽霊を感じる?」
 僕がそう尋ねると、悠人が触っている鏡面は水の波紋のようなものを波打たせ、中から出てきた真っ赤な生物が悠人の手に捕らえられた。その生物は必死にもがきながら悠人の手に噛み付いている。鏡からワコの姿は消えていた。
 蛸と山椒魚が合体したような異様な姿のそれを見た僕は声にならない悲鳴を上げ、倒れ込むように部屋のソファへ逃げ込む。虫ですら嫌いな僕にとってそれは絶望的なインパクトだった。「おい、何だよ?それ」
 「怪物……つまりお化けだよ」
 「は?」
 「こいつはワコの幻影をお前に見せることと引き換えに、お前の寿命を数日ずつ吸い取っていたんだ」
悠人は今日の日付を簡潔に述べるように答えると、ポケットから古いお札を取り出す。「最近、体調が悪いと感じたことがあっただろ?」
 「うん……凄くあったよ。まさかそいつのせいだったなんて。……で、何?そのお札は」
「こいつで大体の怪物は殺せるんだ」と、彼は気味悪がる様子を全く見せず、自分の手に噛み付いている真っ赤な生物にそれを貼り付けた。
 真っ赤な生物から、女性の叫び声のような断末魔が数秒間部屋中に響き渡り、やがて何事もなかったかのように静まり返る。真っ赤な生物は影も形も無く、消えていた。
 「もう大丈夫だ。健太郎。噛まれた手も綺麗だ」
 悠人は、ソファにて恐怖で息を荒くしていた僕の肩にそっと手を置いて深呼吸を促す。「今の怪物は人の後悔や後ろめたい気持ちを好むんだ。健太郎、何か溜め込んでいることがあれば、この場で全て吐き出してしまえ。嫌な気持ちをこれから怪物どもに利用されないためにも」
 僕は目の前で起きたことに漠然としながら、ゆっくりと動き出した古い機関車のようにがたつきつつ、そっと口を開く。
 「僕は……ワコが帰ってきて……くれたんだと思って……いた」
 「ああ、普通はそう思うよな」
 「……でも……それが……怪物だったなんてあんまりじゃないか。酷すぎる……」と、僕はクッションを抱き抱え、目と鼻から熱いものが湧き出る感覚に浸っていた。
 「ああ、全くその通りだ。健太郎」
 「僕はワコに……会いたい。すぐにでも。いつも僕に虫をぶつけていじってきた変な女だったけど……それでも僕は……ワコと……ワコと……」
 僕は溜まっていたものを言葉に吐き出そうとするが、嗚咽が邪魔をしてうまく話せない。だがこの時、鏡の中に映っていたワコの幻影と何者なのか忘れてしまった少女に対して抱いていた感情の正体をやっと理解できた気がしたのだ。
 悠人は僕の背中を摩りながら言う。
 「もし、これから本物のワコに会えると言ったら?」
 「え?」
 僕は、頬に垂れる数滴の滴を手で拭い、顔を悠人へ向けた。涙で目が曇っているため、彼がどんな表情をしているのかよく分からない。
 「悠人、僕がワコに会えるって……どうやって?」
 「霊界まで行くのさ」
 「は?霊界?」
 次の瞬間、僕の首筋に勢いよく硬いものがぶつけられた。

 ざばざばと永遠に響き渡る無数の波の音が常に耳を刺激していた。
 僕は海面から射す日の光を見つめながら海の中を漂っている。これは夢だ。いつも僕が眠った時に見て、いつも忘れる夢だ。
 やがて深い場所から大きな鯨が泳いできた。種類は分からなければ性別も分からないし、それが大人なのか子供なのか、僕には判別できなかった。
 鯨は僕と遊びたがっているみたいだった。
 僕は鯨がどうしても追いかけっこをして遊びたいのだと直感で知ると、泳いで逃げていく鯨を追いかけた。夢の中なので、僕は勢いよく泳ぎのスピードを速めて鯨に追い付く。鯨は嬉しそうに僕に捕まえられ、今度は僕にじゃれついてくる。かなりの巨体だったので僕からすればじゃれつかれている気はしなかったが、不思議と心地よさを感じた。
 ……突然、僕の周りを大量の泡が覆い始め、僕を包み込んでいく。
 鯨は悲しそうに僕を見つめていた。
 そうか。今回は早くに目を覚ます時間が来てしまったみたいだ。でも、きっとまた会える。だから悲しまないで……。

 鈍い車輪の音が響く中、僕は列車の中で目を覚ます。
 「おはよう」
 僕の隣に座っていた悠人はそう言った。
 自分達以外誰も乗っていない車内を僕は見渡した。座席も手摺(す)りも車内案内表示装置もどれも真新しいものに見える。窓の向こうの景色には薄暗い壁が広がっている。おそらく地下鉄なのだろう。
 「なんだ……僕はてっきり悠人に殺されたのかと思ったよ。これは何線?」
 「何線でもない。唯一霊界に繋がる秘密の列車だよ」
 「やっぱり僕は殺されたんだ。ということは母さんとも感動の再会か」
「それについて、健太郎に謝りたいことがある」と、思い詰めたように口を開く悠人。「霊的なパワーを持たない健太郎をこの場所に入れるには一旦気を失わせるしか方法がなかったんだ。出る分にはその必要はないのだけどね」
 「そういうことなら僕は構わないよ。それに、悠人はあの怪物だって退治してくれたんだ。僕は今の悠人を信じることにしたよ」
電車が【蛇雪(へびゆき)】という駅に停車し、ドアが開く。
「で、悠人。これから行く霊界ってどんな場所なの?」
「それぞれの駅に一つずつ広がっているイメージの世界だね。物理法則がめちゃくちゃな場所だから正確に認識することができないぞ」
「じゃあ、この【蛇雪】っていう駅も霊界に繋がっているの?」
「ああ。でも、この【蛇雪】にはワコはいない。一つの駅につき、住める幽霊は一人までと決まっているんだ。俺達はワコが住んでいる【烏火(からすび)】まで向かわなければならないんだ」
誰も乗車しないままドアは閉まり、列車は発車する。
悠人は何か言い忘れているのを思い出すと、それについて話し始めた。「そうだ。健太郎のお母さんのことだけどさ……霊界に住み続けることを嫌がってすぐに生まれ変わる道を選んだってよ」
「え?……じゃあ、母さんは何に生まれ変わったの?」
「シロナガスクジラ。今でも元気にやっているらしい」
「へ?」
悠人の意外すぎる回答に僕は喜べばいいのか絶句すればいいのか分からなくなった。
「えっと……鯨って確か頭がいいんだよね?……その……生まれ変わった母さんは僕が分かるかな?」
「広い地球上で仮に会えたとしてもお前が分からないはずだ。記憶がリセットされているわけだから、癖や性格が同じだけのただの鯨。しかし、ごく稀に赤子の状態で生前の記憶を受け継いでいることがある。—————でもそのほとんどは成長に伴って記憶の維持ができないな。ま、期待しないことだな」
「なるほど……素直に諦めるよ」
沢山の楽しい思い出を残してこの世を去り、最後に悲しい思い出を残したあの母さんが、今では僕のことなんかすっかり忘れて、地球上の海のどこかで呑気にオキアミを食べているのだ。
電車が【蜘蛛天(くもてん)】という駅に停車し、ドアが開く。
母さんの生まれ変わりの話のインパクトが強く、複雑な気持ちになった僕は話を切り替えた。
 「こうやって話すのは久しぶりだね。昔、よく裏山で遊んだのは覚えている?」
 「あぁ、覚えているぞ。健太郎がよくバッタにビビっていたあの場所だろ?」
 「あぁ、そんなこともあったような気がするな」
 「それで思い出したけど、健太郎はカブトムシですら苦手だったよな」
 「うん。虫は全て苦手なんだ」
 「夏休みの夜にカブトムシやクワガタを捕まえに行こうって誘っても来てくれなかった件に関しては寂しかったぞ?」
 「ごめん。あれからカブトムシだけは好きになろうとする努力はしたけど、どうも難しくてね……」
 「まあ、仕方がないさ。誰にだって苦手なものはある。俺も蛙だけはどうしても好きになれなかったな」
 「そうだったんだ」
誰も乗車しないままドアは閉まり、列車は発車する。
ふと僕は、悠人とその友人達の仲間に入れてもらい、町の裏山で泥警やサッカーをして遊んだことや、バッタやトンボが体にぶつかた拍子に驚いて悲鳴を上げてしまい、悠人とその友人達に面白がってもらったことなどを思い出した。あれから時間が経って高校生になってしまったけど、また同じように遊びたいな。
 「健太郎、次の駅で降りるぞ」
 「え?」
 悠人は車内案内表示装置に表示された【烏火】という次の駅名を指差す。「あそで降りれば、健太郎はワコに会える」
 「つまり、本物のワコの幽霊がいるってことだよね?」
「その通りだ」
しばらくして電車はゆっくりとブレーキの音を上げながら烏火に到着し、僕と悠人は黄色いタイルの地下鉄の様なホームに降りる。やはり誰もいないようだった。
「ここから先は健太郎一人で行け。その方が健太郎にとってもワコにとっても良さそうだからな。あと、これを」
悠人は僕にカードを2枚手渡した。真っ黒で何も書かれていないプラスチックの硬いカードだった。
「えっと、このカードは?」
「それは現実世界に戻るためのパス。霊界に行くにはチケットも金も何もいらないけど、帰りはパスがないと帰れない。絶対に失くすなよ」
 何故悠人がそんなパスを2枚も渡してくれたのかを僕は何となく理解すると、そっと頷く。「ありがとう。じゃあ、僕はワコに会いに行ってくるよ」
 「あぁ、ワコのいる霊界は駅の出口を出たら広がっている。健闘を祈るぞ」
 「うん」
僕は出口へと続く長い通路の中を走って行った。
『健闘を祈る』悠人が言ったその言葉の意味を後に理解した僕は、とある一つの選択を迫られることになる。

僕はワコがいる霊界へ出るまでに驚いたことがある。
ホームから出口にかけて改札らしきものが一切見当たらない。悠人が言った通り、霊界に行く分には本当に何も払う必要がないみたいだった。
 僕は出口の向こうに広がっていた大海原のような草原を見渡した。涼しい風も吹いており、まるで4月の景色である。そう言えば霊界について悠人が『物理法則が無茶苦茶な場所』だと言っていた。となるとここの季節が現実の季節と大きく異なる理由がよく分かる。
向こうを見てみると、二階建てのレンガでできた家がポツンと建っていた。きっとワコはあの中にいるのだろう。
僕は草原を掻き分けながら辿り着くと、レンガの家の開き戸の扉を開けようとする。しかし、頑丈な鍵がかかっているかのように扉は1ミリたりともびくともしない。
ここは霊界なので、僕の中の何かが足りないからワコに会うことが出来ないのだろうか、という勝手な想像をする僕。
 「もういいかい?」
 と、突然扉の向こうから子供の声が聞こえてきた。
 「もういいよ」と返事をする別の子供の声。
 何か核心に迫れるかもしれない気がした僕は落ち葉に食らい付くイワナのように必死に扉を叩いた。どんなに拳が痛くなろうが構わない。どんなに血が流れたってこの頑固な扉を絶対に開けてやる。
 何度も本気で扉を叩き続け、やっと五ミリほどの隙間が開く。
 隙間を覗いてみると、小さな少年が洗面所で蹲(うずくま)っている光景が見えた。
 僕は息を呑む。
 少年がいるあの場所。少年が履いている修復された形跡のあるオーバーオール。やはりそうだ。間違いない。彼は—————。
 「おい僕……いや、健太郎!」
 僕は反射的にかつての自分に向かって叫んだ。声が聞こえにくいのか反応は全く無い。
 六年前のワコが死んだあの日、ワコと一緒に僕の家で隠れん坊をした。隠れる側を選んだ僕はあの洗面所の鏡の前でどこに隠れようか悩み、最終的に適当に蹲るという不器用な隠れ方をした。この間に僕を探していたワコは何者かによって殺されたのである。
ここで過去の自分にワコの危機を知らせることができれば、運命を変えられる。そう思い、僕は扉を叩いては、ひたすら叫び続けたものの、どこか感じる違和感。僕は隙間から見える景色に目を凝らす。
 ん?待てよ?
 僕は何度も、何度も強く扉に突進してみる。やがて少しずつ見えてきた景色を形作る無数のドットのようなものと、それを一括りに四角く囲んでいる枠線。
 「何年経っても悪戯好きは変わらないよな」
 「あ、ばれちゃった?」と、扉を開けるワコ。服装こそは違うものの、薄い眉毛にやや大きい目、整った鼻とセミロングヘアが特徴の顔、そしてほっそりとした背格好は鏡に現れた幻影そのものである。その後ろには事件当日の僕が映し出された巨大なテレビが置いてあった。
 僕はワコに迎え入れられながら訝しげに過去の僕が映し出されたテレビを見る。「これは?」
 「あぁ、これね」
ワコはテレビをリビングへ力強く移動させた。「これは、私が健太郎とやった人生最後の隠れん坊の映像。この日に私は殺されたの」
「ふぅん」
ワコとソファへ腰を下ろした僕は、テレビで流れている映像をしばらく視聴することにした。
 画面がかつての僕からかつてのワコに切り替わる。どうやら隠れん坊で隠れている僕を探し始めているらしい。箪笥の中や物置きの中など家の家具あちこちを覗いている。手にはフェイスタオルで包まれた何かを持っていた。
 「この次のシーンで私は殺される」
 「……そうなんだ……」と、僕は頭の中で女の子にかけてあげる丁度いい言葉を必死に探し続けるが、女性との接点が少ない僕にそんな台詞なんて思い付かなかった。勘違いして欲しくはないのだが、この時の僕が彼女にかけようとしたのは慰めの言葉ではない。
 次の瞬間、僕がよく知っている女性が画面の端から出てきて、ワコと鉢合わせになる。
 ここでワコはリモコンでテレビの電源を切った。
 僕はそっとワコを見る。
 「……もしかして……次の瞬間で?……」
 「殺された。……ポテチあるけど食べる?」
 「よくこの雰囲気でポテチを勧められるね」
 「そう?」
 ワコはそう言うと、ソファの下からポテトチップスの袋を取り出す。見たことがない会社のポテトチップスだった。
 僕はポテトチップスの袋を開けようとするが、扉を素手で何度も叩いたさっきの痛みで指がうまく機能しない。見てみると小指から人差し指にかけて内出血で真っ青になっていた。とりあえず、これをつまむのは後だ。
 僕はふと見ると、ワコがいつの間にか無表情になっていたことに気が付いた。
 「えっと……あの先のシーンは見せてくれないの?」
 「私は、もう健太郎に辛い想いをしてほしくはないの。だから見せない」
 「『だから見せない』?」
 僕は顔をしかめた。
 かつてならここでワコの見え透いた嘘に悠人が的確なツッコミを入れていた。でも、彼がいない今、僕はどんな痛みすらも覚悟して漬物石から一歩全身しなければならない。
 「ワコ、君は嘘をついているよ」
 僕がきっぱりとそう言った瞬間、豪華なリビングは一瞬で無数の絵が飾られた不気味な部屋に変わり、僕とワコの物理的な距離は大幅に伸びて行った。
 ワコは怯えるように僕を見て、逃げていくがすぐに突き当たりにぶつかり、逃げ場を失う。周囲の絵に描かれている顔全てがワコを嘲笑っていた。
 「ワコ、どうして逃げるの?」
 「お願いだから来ないで……」
 ワコが子猫のように怯えた様子を見せると、無数の蛾が僕の全身を覆い尽くした。
 正直言って世界中にミサイルの雨が降り注ぐような絶望感が僕の脳内に響き渡る。でも、僕はちゃんと彼女と話をしなければならない。きっとこの蛾は本物じゃなくてワコが僕を脅すために使っている偽物なのだろう。
 僕にはそれが事実か妄想かはどうでもよく、本当にそうだと自分に認識させる必要があった。そうと決まればなるべく平常心を保とうと努力しながら、全身に苔のように張り付いた蛾達を振り払っていく。服に残った鱗粉も丁寧に落としていった。
 ワコは幼馴染が元来の虫嫌いを克服した瞬間を目撃すると更に怯え、背後にある黒く塗り潰された絵の中に飛び込んで行く。
 僕は迷わず彼女を追った。

 「最後の隠れん坊のあの日、ワコは包丁を手に持って、僕を殺そうとしていたよね?フェイスタオルに包んでいたのがバレバレだった。……何で殺そうとしたんだよ?」
 「じゃあ、健太郎はどうして休日にパンケーキを食べるの?」
 急に突拍子もない質問をされ、僕は少し言葉に迷う。「えーっと……美味しいから?」
 「それと同じ。私も殺したかったから健太郎を殺そうとした。ずっと前から抱いていた欲求だった」
 「でも、僕の母さんに見つかってしまった」
 「あの時は本当に焦った。私は包丁で抵抗してみたけど、大人の怪力には勝てなかった」
 「僕にとって……本当に衝撃の事実だ。どおりであの事件の後、母さんは情緒不安定になって……首を吊ったわけだ。そうか、あの人は刑事である前に……僕の母親だったんだ。息子を守るためなら誰でも殺してしまうほどの愛を持った僕の母親だったんだ。そして刑事としての知識を悪用して証拠隠滅ができた。でも、それと同時に……あの人は正義感溢れる一人の刑事でもあった。だからワコを殺した罪悪感で自分の手に手錠をかけて……首を吊ったんだ……」
 「意外と対応が冷静だね。てっきり私は健太郎に殴られるかと思った」
「母さんがシロナガスクジラに生まれ変わって今も元気でやっているって聞いてから、何だか凄く複雑な心境なんだよ。勿論君が母さんを殺したも同然だから、僕は怒っていることには変わりないよ。……冷静になって考えてみればさ、自分の息子を守るためなら危険な子供は殺す。それが親だから。……では、ワコがいつも僕に向かって虫を投げつけて虐めていたのは、僕を殺そうとしたのと同じ理由なのかい?」
 「そうだよ」
 「はっきり言って異常だ」
 「……みんな……私をそう言うんだ。健太郎も私を異常者扱いするなら帰ってよ」
 「帰らないよ。ちなみに僕はこう見えてワコの本音を聞きたいと昔から望んでいたんだ。まさかそれが叶ったのが、君が死んでからだとはね。でも、僕にはまだまだ疑問があるんだよね」
 僕はワコの抵抗を振り切って彼女の腕を掴んでよく見てみる。
 「随分と古い痣だね。それもいっぱいある」
 「触るな!」
 ワコは初めて声を荒げて僕の手を振り払った。
 「『殺したかったから殺そうとした』だって?格好付けやがって。ワコ、君はどこまでも嘘を吐き続けて何を守ろうとしているんだよ?」
 「は?こんな私に真剣に寄り添ってくるとか本当に気持ち悪いんですけど。どこまでお人好しなの?」
 「どこまでもね。あの頃だって何度君に虐められても毎日遊びに誘っていただろ?さて、君がそこまで壊れてしまったきっかけを僕に聞かせてくれるかい?勿論、それ以外の沢山のことも教えてほしいんだ。何故なら小さい頃からずっと抱いてきた疑問だったからね。でも、その前に—————」
 ワコは家での幻影が見せたキョトンとした顔で、僕が少し言葉に迷っているのを見る。
 「……ワコ。その前に……僕は君に謝りたいことが沢山ある。聞いてくれるかい?」
 彼女は虚をつかれたような顔をするのを見た僕は一旦深呼吸をした。いざ謝る選択を取るとなれば本当に勇気がいる。それは切り立った崖から飛び降りる勇気にも等しいかもしれない。半端な気持ちならずっとここで黙り続けることだってできてしまいそうだ。
 僕は喉に詰まった異物を吐き出すように思い切って話し始める。
 「まず、ワコが思っているほど僕はいい人じゃないんだ。……僕がしばらくの間、怪物に鏡に映ったワコの幻影を見せられていたのは知っている?」
 ワコは頷く。
 「その時僕は本当に最低な男だったんだ。ワコの幻影が鏡の中でただ歩き回っては興味津々に見つめてくることをいいことに、機嫌が悪い時は何度も汚い罵声を浴びせて八つ当たりをしちゃっていた。少しでも嫌なことがあれば毎日のようにね。本当に自分勝手だった。……ごめん」
 彼女は瞬きせず僕を見つめている。
「それに、もっと酷いこともやっていたんだ。あの……その……鏡に映されていたワコは間近で見ることができた数少ない女の子だった……だから、何度もワコの幻影を見てシコっていたよ。そして幻影が映っている鏡に向けて体液を出なくなるまで飛ばしていた。少なくともほぼ毎日それをやっていたかもしれない。僕は本当に気色悪い最低な男だった……ごめん」
 ワコは少女としての顔を酷くしかめた。僕がある程度覚悟していたことだ。
 もう一度深呼吸をし、僕は次の謝罪を話し始める。
 「それと……家の中だけじゃない。学校では友人達が小学校時代の思い出話をして盛り上がっていることが毎日のようにある。僕はワコの幻影が見えるようになった頃を皮切りに……何度もワコの人柄を異常者としてネタにしちゃっていたんだ。どうしてそんなことをやっていたのか自分でも分からなかったけど、今なら分かる。その時の僕は話を盛り上げたかったんじゃない……出来るだけ多くの人達に僕の怒りを共感させてワコへの悪口を言って欲しかっただけだったって……。そうなれば人生で一番嫌いだった人が鏡に映っていても辛くならないと思っていたんだ……ごめんなさい……」
 いつの間にか、我が子を慰める母親のような目でワコは僕を見つめていた。こんな表情の彼女を見るのは生まれて初めてだったし、ワコではなく少し似ているだけの別人なのではないかとすら感じていた。きっと彼女は歪んだ感情で溢れていて、身体中に訳ありの痕があって、世の中の全てを恨んでいるだけの、一人の女の子だったのかもしれない。
 僕はいつの間にか(涙は流していないものの)ほんのわずかな嗚咽を繰り返していた。
 「ごめん。ワコ。僕は君に虐められて当然の人間だったんだ。もう何をぶつけたって—————」
 「何でそこまで謝るの?」
 「え?」
 今度は僕がキョトンとした顔でワコを見つめた。
「今健太郎が謝ったことは、私じゃなくて幻影に向けてやったことでしょ?」
 「でも、僕はその幻影を本物のワコだと思ってそれらをやってしまっていた。多分、本物のワコの霊が鏡に現れても結果は同じだったよ」
 「……そう。でも、そこまでさせちゃったのは私のせいでしょ?」
 「それは……全部含めて僕の性格だよ」
 急に映画のシーンが切り替わったように僕とワコの間で沈黙が続いた。それもかなり長く。
 やがてワコはゆっくりと口を開く。「それは自分に対して厳しすぎなんじゃない?……」
「……悠人が言っていたよ。鏡に潜んでいた怪物は人間の後悔や後ろめたい気持ちを好むんだってさ。そう考えれば僕が怪物に幻影を見せられたのは当然の話なんだ。本当なら……僕は鏡に映った君の幻影を、君が生きている内にちゃんと話ができなかったことへの罰として受け入れるべきだったと思う。だから……僕がやってしまったことは全部含めて僕自身の性格なんだ」
 「……そうなの?健太郎」
「うん。別に複雑に考える必要はないんだ。それ以上でもそれ以下でもない、ただそれだけのことだと思う」
「謝りたかった理由は本当にそれだけ?」
再び僕とワコの間で沈黙が続いた。それももっと長く、もっと重く、もっと静寂に。
ワコの言う通り、僕はまだ全ての理由を言い終わっていない。ここでしか言えない。言うことの恐怖も常に纏わりついている。しかし、ここで言わなかったら一生後悔する。
「ワコの言う通り、謝りたかったのはそれだけじゃないよ……」
僕は腹を括り、喉を震わせながらもう一つの理由を話し始めた。
「僕が謝りたかったもう一つの理由は—————」
途中で言葉が詰まってしまったため、もう一度繰り返してから言った。「僕の母さんが自殺したことから始まったんだ……」
僕がそれを話し始めた瞬間、暗い部屋は夕日が沈む芒(すすき)の丘と化した。
一体何の話が始まるのか分かるはずもないワコは周囲の景色を見渡し、首を傾げ、怪訝そうな顔をする。
「……母さんが死んだあの日から、よく迎えに行っていた芒の丘で僕は何度も帰りを待っていたんだ。……しばらくして母さんが本当に帰ってこなくなったのだと知ると、僕は閉鎖的になった家の中にいるのが嫌になり、人との関わりに飢えていったんだ。そして悠人という昔ながらの親友に支えられ、以前のような一人ではない楽しい日常を取り戻すことができた。でも、何かが足りないと感じる違和感……。悠人とその友人達と公園で遊んだ帰り道、悠人達は迎えに来た母親や姉と仲良く話をして帰宅していった。それを見て、違和感の正体はすぐに分かった。誰も迎えに来ない僕には無償で自分を受け入れてくれる女性がいないということにね」
夕陽が沈み、月明かりが芒の原っぱを明るく照らす。
僕は話を続けた。
「次に……僕は自分を無償で受け入れてくれる女性に飢えていった。でも、それは簡単な話じゃない。他人の家の母親は大人として僕に優しくしてくれたけど、あくまで僕は他人の家の子。無償で受け入れてくれるわけがなかった。……中学に上がり、それなりに話せる女子の友達も何人かできるようになった。でも、僕が求めているのはそういう女性じゃなかった。諦めきれず、無償で受け入れてくれる女性を求めた僕は先輩の女子に告白して断られると、また別の先輩の女子に告白する繰り返しを何度もすることにした。でも、それが繰り返される度に周囲からの目線は冷たくなっていった。そして僕は気付いたんだ。この世界で僕を無償で受け入れてくれて、甘えられる女性なんて、もうどこにもいないのだということに。僕はそんな人など夢物語だったのだと諦めて、高校への受験勉強に専念するようになった」
「受験は辛かった?」
「うん、まあね。でも、それ以上に辛かったのが、中学生活の残りの何もない時間だったよ。そして、それが終わった4月1日の朝、成長した姿の君が洗面所の鏡に現れた」
「……」
「幽霊とかを見たことがなかった僕は最初、恐怖で震えたよ。最初の数日間は怖くて洗面所に近づけなかったほどにね。でも、ワコの姿が何もしてこないのを知ると、今まで溜め込んでいた鬱憤を罵声にしてぶつけてみたり、性処理の吐口にしたり……。それをほぼ毎日やるほど、僕は君の姿に依存していったんだ」
「それは何故?」
「何をやっても無反応だったワコの姿に、僕が今まで求めてきた理想があったからさ。無償で僕を受け入れてくれる女性としてね。……そして僕は何度もワコの姿にストレスをぶつけて甘えたよ。そうやって甘えていくうちに、僕は成長した君の姿が一人の女性としてとても魅力があるということに気が付いたんだ」
「……え?今何て?」
周囲の景色が芒の丘から暗い部屋に変わると、僕は目の前の少女を見る。
「ワコ……僕は君のことが好きになってしまった。だから、僕は君の幻影にしたことを謝ったんだ。皮肉なことだということは分かっているよ。でも、ここではっきりと言うべきだと思った」
それを言い終え、僕は体が少し軽くなったのを感じる。緊張感も程よく消えていた。
大きな目でワコは僕をじっと見つめる。
「健太郎は—————」
少し言葉に迷っている素振りを見せてからワコは言った。
「—————私と同じだったんだね」
何もない数秒間が経過する。
 彼女のその言葉が、僕の心臓の鼓動を喉の奥まで突き上げさせた。「え?」と、思わず声に出してしまうほどに。
 「健太郎は病気で死んだパパによく似ていたの。だから私は無抵抗なあなたに甘えたくて沢山酷いことをしちゃったんだ……。何だか、健太郎は凄く変わったね。昔の健太郎ならとっくに話し合うのを諦めて逃げていたはずなのに」
 「そりゃそうさ。無抵抗のままじゃ誰も助けられないよ。僕は悠人に憧れてあれから6年も現実で時間を過ごしたんだ。変われるチャンスなんて日常に腐るほどあったよ。それと……ワコのお父さんは霊界にはいないの?」
 「とっくの昔に生まれ変わって、今はアフリカのサバンナで象として生きているんだって。あまり覚えていないけど、不思議と夢の中では一緒にいてくれている気がするの。……健太郎はもし、私が象に生まれ変わったパパと再会できたとしたら、パパは私が分かると思う?」
 「分かるに決まっているじゃないか。象は頭がいいし、何より君の父親なのだから……」
 「そう……」ワコは再び言葉に迷う様子を見せる。「……健太郎。私はあなたに話したいことを小説にしてみたの。読んでみてくれる?」
 「小説か。是非とも読んでみたい。でも、その前に僕から一つお願いがあるんだ」
 「何?」
 「ワコ、長い間僕は無償で自分を受け入れてくれる女性を求めているうちに、君が何者なのかがほとんど思い出せなくなっちゃったんだ。まずは……僕に苗字と名前を教えていただけませんか?」
 「鏡(かがみ)和子(わこ)。それが私の名前」
 数十ページにも及ぶ小説が彼女の両手の掌の上に魔法のように現れた。原稿用紙の最初の一行目には【鏡の中の和子】という題名が書かれてある。
 「これにはどういう意味が?」と、僕は題名の意味を尋ねた。
 「……自分の中の本当の自分」
 「うん。とても素敵な題名だ」
 僕は彼女が書き上げた小説をある程度まで読んでいく。やはり小学4年の時に死んでしまったせいでそれ以降の学びはしていないらしい。誤字脱字や話の矛盾点が多く見られた。「どれどれ、せっかくだから一緒に最高の小説に仕上げようよ。これは君にとっても僕にとっても、かけがえのない生きた証になるはずだから」
 「うん……そうだよね」
 僕は彼女と二人で話し合いながら小説の靄(もや)のかかった内容をはっきりとさせていく。
やがて明確になった小説の冒頭。薄暗い汚れた部屋で赤ん坊が産声を上げて登場し、一人の少女の物語は始まった。
 
 僕と和子がレンガの家から出るとそこには悠人が立っていた。「お帰りなさい。随分と長かったな」
「ただいま」
 和子は罰が悪そうに悠人にそう言った。
 悠人は笑顔を見せ、遠くに聳える駅の出入り口を指差した。「俺が渡した黒いパスさえ持っていれば、二人とも無事に現実世界に出ることができる。二人で先に行っててくれよ」
 「悠人は僕達と一緒に行かないの?」
 「あぁ、俺はここでまだやらなきゃいけないことがあるんだ」
 和子は少し寂しそうな顔をする。「そっか……。じゃ、先に行っているね」
 「悠人、僕達はいつでも君を待っているよ」
 僕と和子は手を取り合い、【烏火】駅のホームへと向かった。

 男は机の上に置いてある名刺をちらりと見る。『沢渡(さわたり)悠人 霊界協会 調査部 怪物駆除課』
 「沢渡悠人。去年交通事故で死に、ここにやって来て、飛び級で専門家になった天才か。しかも受肉して現実世界を行き来する権利も持っている」
真っ黒な制服と制帽の位置ずれを直しながら男はそう言うと、葉巻を取り出して吸い始める。
 「俺は二人に幸せになってもらいたいのです」
 悠人のその答えに男は頭を抱えた。「そのために代償として優秀な君を失うのは我々としては痛いのだけどねぇ」
 「でしょうね。でも、こうなる運命だったと俺は思います」
 「そうか。長い死神生の中で君みたいに肝が据わっている霊は初めてだよ」
 「どうせ俺は死んでいるんですし、生まれ変わる気もなかったので別に平気です。とっとと俺を消して、彼女を受肉させて下さい」
 死神は苦虫を噛み潰したような顔をした。
 「うーん……君がそこまで言うのなら、望み通りそうしてあげよう。ただし、それは私の質問に答えてからだね」
 「質問とは何です?」
 「君が仕事という名目で、向井(むかい)健太郎という少年を怪物から助けたのは和子からの指示だよね?」
 「はい。和子は健太郎を怪物から救い出して、そのついでに二人で話がしたいと言っていました。しかしそれは建前で、死んだ後もずっと健太郎を自分の手で殺したがっていたのがバレバレでしたよ。毒入りのポテトチップスまで用意していましたし。彼女の愛と甘えは本当に歪んでいるものでした」
 「でも、君は昔からの健太郎の味方。どうして和子の指示に従ったのかな?」
 死神の質問に悠人は答えた。
「俺は賭けてみたかったんです。和子の企みを逆手に取り、彼女と話をしたがっている成長した健太郎を連れてくることで、二人が分かり合う道に進めるんじゃないかって。本当に危険な賭けでしたよ」 
「確かに、危険な賭けだ。でも、不思議だね。君はどうして健太郎に和子の企みを伝えなかったのかな?」
「考えてみて下さいよ。『和子は君のことを殺そうとしているよ』って健太郎に言ってしまったら、きっと行きたがらなくなると思ったので、そのことは敢えて教えませんでした。あと、これは信じてもらえるかは分かりませんが……」
 「とりあえず、言ってみなよ」
 「流石の俺でも危険過ぎる賭けだと思い、健太郎を和子の元へ連れていくべきかどうかが最後まで分かりませんでした。……途方もなく迷っていた夜、夢の中で若い象と鯨の子供が現れました。健太郎と和子を救えるのは君しかいない。だからよろしく頼むって。不思議とそう言われた気がしたのです。俺はこれをただの夢だとは思えませんでした」
 「君がそこまで言うってことは、本当にただの夢じゃなかったみたいだね。で、その夢についてはどう考えている?」
「はっきり言って分かりません。ただ言えるのは、この世でもあの世でも説明できない不思議なことは起こり得るということです。そして、結果として二人の間に恋が実りました」
 「全く、本当によくやるよ……。よし分かった。じゃあ、君を消して、和子を受肉できるようにしておくね」
 「お願いします」
 死神は悠人を暗い部屋へ連れて行った。「最後に言い残すことがあれば今の内に言っておきな。意外とすぐに消えちゃうから」
 「はい。……ごめんな健太郎、和子。最後の最後に俺はお前達に沢山嘘をついてしまった。でも、長年解決できずにいた二人の関係をここで綺麗にすることができたんだ。俺はそれだけでも満足さ。健太郎のお母さんと和子のお父さんは二人が仲直りをする今日この日のために、ずっと見守っていてくれたんだよ……」
 残酷にも最後の台詞を言う前に悠人はテレビの電源をプツリと切られるが如く、あっさりと消されてしまった。
 「さようなら—————」
 その言葉が誰に向けられたものなのか、生も死も知らない死神に分かるはずもなかった。

水平線が果てしなく広がるこの景色をいつぶりに見ただろうか。ざばざばと永遠に響き渡る無数の波の音は人工物だらけの町には無い絶対的な大自然を感じさせる。波打ち際には海藻だけではなく、無色透明な海月が波で打ち上げられては引き戻されていた。僕はそんな海月達を見つめながら日傘の下で水着に着替えている和子を待っていた。
 あの日、悠人と別れた僕達は本当に大変な月日を過ごすことになった。
とにかく、一度死んで除籍されている和子を僕は守っていかなければならないのだ。クラスメイトの女子に和子をしばらく君の家に泊めさせて欲しいと土下座をしてまで頼み込んだり、そっけない父親に自立して友人とシェアハウスをしたいから親権者及び保証人として承諾してほしいとこれまでで一番深く頭を下げたり、今以上に稼げるバイト先を探したりなど、緊張感や体重が幾つあっても足らない毎日を過ごした。中でも一番苦労したのは和子を守っていくために一緒に暮らす部屋探しである。僕は血眼で数日間かけて必死にネットで高校生がシェアハウスできる部屋を探し続けた。和子の意見を聞きながら何時間かけて検索したのだが、部屋はよくても家賃が高い、家賃が安くても部屋は微妙に狭いなど、自分が求めている条件を満たしたいい部屋がなかなか見つからない。帯に短し襷に長しとはこのことだろう。迷走が続いた数日後の夜中の2時になってやっといい物件を見つけられた時は本当に歓喜し、倒れ込むように寝たものである。
僕と和子が二人で苦労を重ねて生活し始めてから半年以上が経った。育った環境により愛情表現が上手ではない和子も、最初こそは沢山トラブルを起こして大変だったが、少しずつ人との関わり、誰かを愛するということを知っていってくれた。
和子と一緒に生活を始めた最初の日。彼女は泣きながら僕に黙っていたことを正直に話してくれた。悠人に僕を連れて来させたのは、自分の手で僕を殺すことで甘えたい欲求を満たすためであったということ。そして、あの時僕を霊界へ案内してくれた悠人は幽霊であり、霊界の仕事のためにこの世とあの世を行き来していたということだった。今までの自分の過ちを悔い改め、涙を流して謝罪する彼女の背中を僕は父親のように摩った。勿論、あまりにもの衝撃で僕は胸が押し潰されそうになったが、それ以上に彼女に寄り添いたかったのだ。しばらくして彼女が落ち着いたのを確認すると、いつになれば悠人に会えるのかを僕は尋ねた。しかし、それについては彼女にもよく分からないらしかった。半年以上が経った今でも悠人からの連絡はない。心配と不安が僕達の中に残った。
「健太郎、お待たせ」
黒い水着のワンピースに着替え終わった和子は僕の肩をポンと叩く。あれから長く伸びた髪が潮風でなびいてとても綺麗だった。
「和子はこれから先、どうしたい?」
と、僕は尋ねる。
「決まっているでしょ?」
と、彼女は迷わず答えた。「せっかく来たんだし、まずは思いっきり海に入っちゃうんだよ。嫌なこととか悲しいこととか全部忘れてさ。じゃなかったら一度きりの人生、ちっとも前に進めないよ」
「うん、そうだ……僕達は死んで生まれ変わったら結局全部忘れちゃうんだった。だから一度きりの人生なんだね」
誰かが読んでいるこの世界で、この広い宇宙のちっぽけな地球で、雲一つない青空の下、自由となった少年と少女は冷たい海の中へ駆け込んで行った。

Vol.1【鏡の中のワコ】

執筆の狙い

作者 平良 リョウジ
110-133-38-77.rev.home.ne.jp

初めて掲載する作品は処女作です!
私は長編を書くことこそが全てだと思っていましたが、やがてそれが自分のやり方ではないことに気付き、短編を熱心に書くようになりました。
失敗と学びの多い処女作ですが、楽しんで読んで頂ければと思います。

※一部に性的な表現があることをご了承下さい。

コメント

田毎の月。
n219100086103.nct9.ne.jp

画面開けて、さーーーっとそのまま読んでしまいましたが・・


「悠人」が出て来て、くだんの鏡を検証して、怪物つかみ出して、
怪しい列車に乗って冥界? へゆく。
そのあたりまでは、牽引力があったんです。

お母さんが「刑事のくせに病弱」設定で、『?? 続けられるの?? 異動にならんの??』って思ったけど。
そんで、『父親はどうしてんの??』とも。


お母さんは死んで、クジラに生まれ変わってる。
そのあたりはちょっと(結構?)いいんだけど、
主人公『父親不在・母親死亡後、どうやって暮らしてきたのか?』が大いに疑問だった。

そんで、「引っ張って来た、ワコの死の真相」で結構落胆(期待はずれ、ガッカリ)した直後、

【男ワナビ18番の、くだらん性バナシ】になって、げんなりだわー。
(そこまでついて行った読者を愚弄する)

性的エピに走った直後から、文章と物語がめたくたに崩れる。
うだうだ、うじゃうじゃ、退屈かつわけわからんアサッテの方向にゆき・・

見てるのが忍耐の限界になって、やめた。



ワコの死の真相と、主人公母の自殺の動機は、もっと別の形の方がいい・・と、個人的には思った。
(そこに至るまでに、ワタシの脳内でもシミュレートされてた訳で、そっちの真相の方が深い……と思う)


読み手としては、主人公のくだらんエロエピなんぞよりは、「悠人、とその異能力」について、しっかり掘り下げ、いちおう説明づけて欲しいかな。



まとめ。

前半〜冥界? にゆくまで・・ が、出来がいいのに、
途中で壊滅的になり、後半がメタクタ。すべてを台無しにしている。

田毎の月。
n219100086103.nct9.ne.jp

最大の残念は、

【鏡の中のワコ】にも、【幼少期の思い出の中のワコ】にも、

魅力がないこと。。



好かん。

好感度0。なのに、そんな女でエロ妄想って、、、主人公、精神的に貧しすぎる。。



幼少期は意地悪でも、「ツンデレ」だとか、「主人公のことを思って、その態度になってた」だとか、

やりようはいくらもあるので。。

田毎の月。
n219100086103.nct9.ne.jp

もういっぺん後半がーーっとスクロールして、「悠人の正体」をかいつまんで確認。

したら、、、



悠人が「死神とつるんでて、魔物駆除担当で、冥界と現世往還できる」はいいとして、

悠人がおのれの命差し出して、ワコを生き返らせるぅ??!!



気に食わん。納得できん。

そんな顛末に、納得できる読者、おるん??(いないと思うよ??)


【一度完全に死んで、肉体は6年も前に火葬されてる】だろ??

『鋼の錬金術師』でも無理で、禁忌犯してタイヘンなことになったじゃん??

(『呪術廻戦』でも『鬼滅』でも無理だろう……)



おのれの命と職分放り出してまで、クソ女を助ける理由が、悠人に見当たらない。

蘇った身勝手バカ女・ワコと、主人公がきゃっきゃうふふと男女交際??

ナイわー。さぶいぼ立つわーー。



>誰かが読んでいるこの世界で、この広い宇宙のちっぽけな地球で、雲一つない青空の下、自由となった少年と少女は冷たい海の中へ駆け込んで行った。

ってよりかは、


〔この広い宇宙のちっぽけな地球で、雲一つない青空の下——彼女の手には包丁が握られ、鋼がきらめいていた。〕

なのかなー・・ と。



悠人は殺さない方がいい。

「とうに死亡しているクソ女」とは、等価交換にならん。


悠人殺して、クソ女ときゃっきゃうふふラストに持ってってしまうと、たださえ魅力に乏しい主人公が、「掛け値無しのクズ」になる。

平良 リョウジ
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皆さん、ボロクソなコメントガチでありがとうございます!
こういった本当のことを言ってもらうことで、未熟な私は前に進めることができるのです。
皆さんが私の小説を、わざわざ時間をかけてまで真剣に読み、長文のご感想を書いてくださったと考えると、かなりグッとくるものを感じます。
現在、2作目の短編を書いているので、次回更新も本当のことを書きまくってほしいです!

ペットポトル君
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平良リョウジさん

楽しく読ませていただきました。
ありがとうございました。

まだ深く読ませていただけていないので
また改めてコメントにお邪魔するかもです。

参考になるか分かりませんが、現段階の感想を素人の私なりにさせていただきます!

前半は、情景描写と説明描写の量がちょうどいいな〜と感じました。ちゃんと状況が分かるし、主人公がどんなことを感じているのかも伝わる文章だなと感じました。

前半と比べてしまうとですが、逆に後半は、少し台詞が少なくて私は物足りないと感じました。
実際は話は進んでいますが、それによりなんとな〜く、お話が停滞しているように感じてしまったんです。

台詞が少ないというより、台詞の量に対して説明描写などが少し多すぎるかなと思いました。

ただ、それでも全然最後まで楽しめました。作者さまは演出もお上手で文体も綺麗です。それに実際そういう作品も多いので、一概に欠点とは言えないと思います。

あくまで一素人の意見だ、くらいの認識でお願いします!

それから、もし当サイトを使うのが初めてであれば、ここは結構ノーガードでぶつかりあう場所らしいです。正直、貶したくてここに来る人もいます。作者さまの作品がとても魅力的で可能性を感じるものだからこそ、この作品がこのサイトにあって大丈夫なのだろうか…とすごく勝手ながら心配です…お気をつけて…

執筆頑張ってください!

平良 リョウジ
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ペットボトル君

当サイトを使うのが初めての私への丁寧なアドバイスありがとうございます!
ペットボトル君的におススメの投稿サイトや、もっといい公開方法などがあれば教えて欲しいです。

金木犀
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 面白かったです。

 亡くなったヤンデレヒロインと主人公の話でしたね。


 この短いストーリーの中で二転三転する展開。よく考えられていて面白いと思いました。
 いやこんなヒロインと結ばれて果たして幸せになれるのか甚だ疑問ではあったんですが……w

 ストーリーとしては新鮮だったし、とても新人賞受けする作品のように思えますね。

>ワコはそう言うと、ソファの下からポテトチップスの袋を取り出す。見たことがない会社のポテトチップスだった。
 僕はポテトチップスの袋を開けようとするが、扉を素手で何度も叩いたさっきの痛みで指がうまく機能しない。

→あのとき食べてたら死んじゃってたのかよ……ヤンデレ怖い……。

 あ、一応フォローしておきますか。

 月さんはねえ、きっとプロの作品にもこんなふうに突っ込みながら読書するタイプの人だと思いますよ。
 他の感想を読めばわかるけど、月さんが最後まで読むってあんまないですから。
 つまり、月さんも面白かったんだと思います。
 面白かったから、読んだし、読んだから「なんで悠人殺すんだよ!?」って喚いているわけです。本当にこの作品を読まなきゃこんな感想は出てこないと思いますよ。

 僕も、上記のように主人公をためらいなく殺すキャラという印象が強く、好感度としては終始低かったです。
 また悠人がなんで死ななければいけないのか、そこらへんの納得感もやはり薄かったと思います。
 月さんは文章が独特だから誤解されやすいですが、こうした大事なところをピシッと指摘するのが上手い方なのだと思います。

 まあ、鵜呑みにしすぎても勿論いけません。
 上記の点は、この作品の短所ではありますが、この作品の長所である、二転三転するストーリーを面白いと感じる人は絶対います。それは忘れないでいただきたい。読者は短所ではなく長所に惹かれて読みます。二転三転するストーリーを書いて結果キャラがクソだと評価されたとしても、読ませちゃえば作者の勝ちとも言えます。面白く感じなければキャラなんてものは目に入らないですから。それに、ヤンデレヒロインが好きな人なら絶対好きだしねこの作品。自信をもっていただきたい。


 で、まあこのサイトの使い方ですが、ペットポトル君さんもおっしゃっているように、なろうや、カクヨム、新人賞に応募したうえで、利用されるのが望ましいと私も考えます。
 いくらここで評価されようが、たとえ面白いと言われようが、つまらないと言われようが、実質的な被害も益も作者様にはないからです。


 一種のコミュニケーションツールとして使うのが望ましいかと。
 評価されたら書籍化される場所に投稿して、そこから着実に評価を獲得していった方が、絶対作者様の得になると思いますよ。

 ではではこんなところで。
 執筆お疲れさまでした。

ドリーム
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拝読させていただきました。

>初めて掲載する作品は処女作です!

これがですか? 大したののです。
私なんか10年以上書いてますが、まったく上達しません。
内容的にはかなり込み入って複雑な部分もありますが内容は濃いではないでしょうか。
これからも視野を広げて頑張って下さい。

尚、私HNを クリックすると別のサイトに飛びます
お探しのページは見つかりませんでしたと出ますが
右上のワークスペースをクリックすると出ます。

平良 リョウジ
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ありがとうございます!
ちなみに、カクヨムでも公開始めました👍
もっと他にも挑戦してみます!

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