作家でごはん!鍛練場
けんじ

胡椒門

【中央広場にて】

「そこにいるのはユフィー王女なのですかーー!!」
始まった争い事で広場の衛兵が近付いてきました。

少年がムチで叩かれる寸前でした。

ユフィ―は街の衛兵から悲鳴に似た介入の声をかけられたのです。

ムチでその少年を叩こうとしていた大男と母親は驚いています。

それを見ていた側近の護衛兵ゲタウリは、とうとう剣を鞘から勢いよく抜き出しました。

「なんてことを!! ゲタウリ!!!」

大男は一瞬たじろきましたがその後、

「ははは、なんだその剣は......そんなもんじゃ俺はムチは止めねえし、この女に対する怒りも収まらねぇよ」

何年もの間使わなかったゲタウリのその剣は錆びていました。

護衛兵は果敢にも大男に向かっていきましたが王女の「来ないで!! 私がこの場は静めます!!」
大男はなおもユフィ―をムチで叩きます。

何度も何度も叩くうちにそれが心地よくなっていき、止められなくなりました。

大男は言いました。

「俺は大人たちが子供たちを性の対象にある者として見始めたことに喜びや怒りを感じて興味が湧きこの職業に就いたんだな。子供たちの味を知っているのは俺たち闇商人だけじゃないかもしれないな、と思ってな。俺には俺のやり方やプライドがあるんだ。子供たちが大人の欲に埋もれたとしても、いつか結婚させてやりてぇんだ。誰でもいいけどな......良い人がいればな」

ユフィ―は恐怖に足が震え始めたので、子供をほうっておき逃げようとも思いましたが、それを聞いて......この場にケチを付けよう、と悪巧みを考え、その場に立ちすくみました。

そこでユフィ―はこの数日間で一本筋の通り始めた考え方、自分の人生で絶対的だと思った発想をバカヤロウと言う気持ちを込めて発言しようと思いました。

それならば罵声を浴びせたとしても、なにか勝てる気がしたし、それに行動を起こすことでこの情況も変わる......深傷を負うならハッキリと気持ちを交わす方がスッキリして良いだろうなとも思ったのです。

やはり発言すると言うことは心が洗われるし、ストレスの発散にもなるから納得できる気もしました。おまけで成長のきっかけが掴めれば都合が良いな、とも思えました。王宮の教養はどこか納得しそうになる考え方で、善良な方々が備えるべきプライドなのかな?  と以前から思いもしたし、大男が抱いている思い。それは何か考えさせられるな、と感じながらも人間らしいな、と捉えられたし。歪んだ思いだけれど下手な言い方では説得できないな、趣向を凝らし考えなきゃいけない、と思えたから。同じ感覚ではないと思えてはいる。けれど、今の自分の発想と重なるところもあるなとも思った。それゆえに嬉しさより歪みすぎていると感じた事で、今そのわきあがってきた気持ちに私自身としても懐かしさを抱き、生じた気持ちがある。だから今の子供っぽい自分である立場からしか話せない罵倒を優越感に浸る暇を与えてくれた神様がいるならば感謝しながらも、それにいましめを大男に掲げたいと願った。生きていく上で、良いズルさ、悪いズルさ、は、自分にもあるけれど、貴族で育った私だから、なおさらの事だけど、確固たる示しが必要だと思う。より良い方向へ行こうと思い続けている私たちの国だからなおさら思う。その歪んだ気持ちを正すように自分のその場での淀んだ気持ちをみんなと共に即興で砕きながら、心にゆとりを維持しつつ、発言の中で大男に伝えたい。自分でも話ながら納得出来るように、ある意味では感情を真っ直ぐに伝えたり、思考を温めたり反転もさせながら。

「私は思います。大人の志しを抱きながら、子供の自由な気持ちを持ったり捨てたりしながら、軽やかに、しなやかに生きていることこそが本当の安心であり本当の幸せ。性とともに生活することが私にだってある。だって知ってしまったから。老い、若さ、男女といった価値が色々目まぐるしくもあり、そういった側面が大事であることが人間としてふさわしい死生観であるといった事を知ってしまったから。あなたの言うような事は大変な子供や大人を育ててしまうだろうと思う。あなたの発言を机上の空論のみで終わらせるために大人といった価値があるんだ。それは大変だし、だけど面倒くさい事だけど大事なことは習慣で身に付けさせるべきよ。大事なことは面白いことだし、大事なことだからこそ遣り甲斐があり面白いことだけど......大人らしい大人が言うような話は面倒くさいけれどもっと大事。人類の歴史上いくらでも人々は群れを成しながらそういった常識を持ちながら生きているんだと思う」

闇商人はいきり立ち始めもしましたが、その高飛車な態度に関心して

「茶番劇だな?!......だが、くだらねえが聴いてやるよ!!」

とユフィーの話に興味を抱き、聞くことを続けます。

「爽快な南国のサンゴ礁や熱帯魚や海藻の様に美は見世物として色鮮やかさを枯らしてはいけないけれど、海のそれらの立場がもし今ここにいる大人ならば、考えることのほとんど無い浅瀬の海藻と言った私の様なゆらゆらとただ食べられることだけに存在している立場は何なんでしょう? そうであるならばこの広場で、子供たちを大事な存在として、私もあなたと同じ気持ちではないだろうけれど同じようにあなたの一部の考え方を認められるのでしょうか? なるはずなのでしょうか? それはあなたに束縛された子供たちの自由になりたい気持ちをたてに、私がその立て役者になっているのですから、そこにはそれなりの主張があっても良いはずです。私なりにその浅瀬の海の海藻と同様な自分の存在感からくる印象を自の言葉や発言で敢えて自然界への生け贄の食事になってでも言うべきならば......私が王女だとしても、無理矢理にまでも心を感情を気持ちを失くした立場にならなかった暖かい海の魚介類である心の大人たちは羨ましいです。例え、私のような自然界の食事になってしまう......そこは食されることの意味が無言に繋がっていくことをいつか、私たちは知るし、私たちは人といった存在であることで、いつかは立場上、想像の中で退化の心を繰り返し海の雄大な栄養と私たちはなる。それに耐えられる気持ちが来るまで、肉体の死が来るまで、心も大海のような浅瀬の岸辺でも架空の海藻や大人達のような魚介類がまだ子供っぽいことを知ることになるし、それで何かに追われる身であっても、いつかは考えることで悪い流れに囚われてしまう心であっても、それはいつかは考えることで良い流れを捉えたりする自分になりたい。死の美徳があったとする身でも、例えこの場にいる大人たち魚介類や、私のような海藻であっても、自分以上の立場の者たちに、その存在や、感情の流れを喰われ消化されたとしても......私はもう怒ったり笑うことが出来なくなっても」

闇商人は理解に苦しんでいる表情を浮かべています。

「海は広い世界では身を隠すことと身をさらけ出すといった世界の中、海洋漁船の探知機といった小さな離島の発明器で魚たちをさらけ出し、理論攻めして食されてしまうのを分かっているのに護るのが私たち海藻の役目。あたかも人間に捕獲されそれら肉体を食され眠りについた魚たちを、自然界の力である私たち海藻は、その自然界の掟である食物連鎖のみ、を私たち海藻も食される身でありながらが見ていたことが私たちの日常でした。この日の出る国等を司る神たちが陸と雲の上にいるなら、人々は珍しい神たちのしもべとして、諸外国からの領域を犯した漁業の船を監視する役目の監視員としてたやすく食べることの許されない存在なのかな? と、例にだせば分かってくれますか? そう神に思わせることが私たち海藻の役目。人間を捕らえる自然界の策士家の神に私たちはなっているのだと思えます。こともあろうに海藻の立場での私たちがです。その様に私たちの子供たちである人間にはそう私たちが見えているし、私たちは今この場にいるし、今考え思いながらみんなでこの場で集まっている。
この私等は国外やこの国の子供を取り返したいと思えたのはつい先ほどのこと。だからこの場でハッキリと言うべきなら、あなた方の心といったものは今、闇商人と子供のことを考えると、王女の私のこの広場でやっていることに偉業の足音は微塵も感じないのです。
だって子供たちは生きることに必死で自分の巣から旅立っていない。それを先導できない私たち。それなのに私などは傷を負っても暴言しかはけなかった。
あなたたちは魂が抜け出たように精気のない人のような......優しさが行動に現れない人々。子供を天使として尊きものと見なす事は大事だと思うし、それが成立する世界は天使が暴言を発することで物事を破壊しかねない世界になるからでしょう? あなたたちはそれをさせないように力でその子供たちを推し測って......だからこそ今一時私たちは喋らないことの意味を大事にして、海藻の立場になり、闇商人の未来と現在には見守ることの意味を尊重することが鉄壁の守りとしてあれば良いと思う......その立場がどの国にもあれば良いと思います」

「............」

「私の様な王女の立場なら、仮にも一般市民へ、へりくだったところで一般社会を見れば、それは海からでた時間を経て、海に囲まれた海洋の島社会という建設的なものを生み出し、私たち海藻等の魚介類の様な立場の動かないで発言しなかった獲物の身心に、生命を見たのは陸地の海女さんであるし、その存在を飛行機や漁船のものたちは見たのだろうから、自然を偉大だと恐れることも大きな意味がある。サンゴ礁の産卵に依存した子供にも大人にも大きな意味があるでしょう。海や漁船に憧れる様な川で遊ぶ子供の立場に、自然の中でも目をつぶる大人がいたりするのも分かるでしょう。不馴れな奴隷や貴族や一般人等のこの国の階層問題の一件には発言を許されなかった私の様な発想の幼い子供である大人の海藻は世界を探せば幾らでもいる。広い海から出航した世界に多人数の立派な考えの成人として認められるような忍耐強い口の固い大人がいたりもするでしょう。そんなものたちの場合は発言をうろたえずに言える事は今まで許されなかった。その水槽の様な箱庭から外側にいたはずのあなたたちは、檻の様な城の宮の住人たちとして発言をすることが幾らか許されたとしたらどうでしょうか? そう言った海藻の子供たちには、必要なだけの言葉を選び出せる様になっていった先駆者がいたからじゃないでしょうか? それは私たちの上にも下にもいる様な仕事に就いた人々の、口の固い成人した本当の立派な大人たちが魚介類として発言しないコツを、人生の回想から得て学んだからだし、それによってここにいる様な子供の様な立場の人間に対する解釈には、談義を絞った後の思案に神や海藻といった大人としての柔軟な姿勢と寛容さを得たからでしょう」

「ふん、なるほどな! ならば、子供に何でも任せろと言いたいわけだな?!」

「......主体性を多弁だとはき違えた子供達は雄弁にこだわりすぎるし、達者な振る舞いの無口な子供みたいな人間としての魚介類の可愛らしさが分からない。可愛らしさの価値が分からなくなってしまう様な社会は子供だけでなく、これから大人になる成人にも悪影響を与えるだろう。だけれどそれと対比して自然と遊んできた子供の心や体を守るのは、今では閉ざされている様な日常感を守る健康を害さない眠った貝殻の様な口と行動や所作を身に付けた心構えを家に持ち帰らない、喋ることのない、大人の義務のマナーと姿がこれからの世界なんだと思うわ!」

「ふん、オレの親父と同じ様なこと言いやがるな......」

 「大人の心に負けないために子供の価値があるんだ! だけど、それを高みだと知る事を一歩ずれた事だと知り大人の呟きや子供の呟きに意味を見いだしたいと私は思う。それが自分なりのルールを作る事になる! だから憲法を守る警察や日常感を作り出す世界観が大事なんだと思うわ!」


「......チッ」


「変化と変化しない者たちの立場が必要なんだ!  だからあなたに忠告したい! 悪いと思うことなら、しばらく頭を冷やして考えてからまた想い煩い......子の立場になりなさいよ!! 親子の生活を分かりたくないだろうけれど......少しでも分かってあげて!!」

ユフィ―は痛みに必死で耐えながら欲のある世界に生まれたことを尊び、自分の今からする方法が仏壇に酒を納めるような方法だから現代の価値とは違うのは分かっている。けれどしっくりこないことだと世間的には言われてる。そうなんだけれど、それが今の状況なら致し方無いだろうと思い行動に移そうとしています。

「......」

やはりいざとなったらあの方法に出るしかないのかと。この場を鎮めるためなら仕方がないのかとも思いました。

ゲタウリは大男に立ち向かいましたが、鞭とは反対の手で顔面をわしづかみされ、それを振り払うことに必死です。手で大男の指をはがそうとしますが力の差に屈しました。

「ひゃはははははは、最高だぜ!!」大男はから笑いをしています。

ところがそこに――鋭い弩音がしました――

男の声がします。

「王女、あなたはすごい……。ただの世間知らずじゃなくなったようだーね……」

そのすぐ後に、大男が己の片方のブーツを両手で持ち、悲鳴をあげました。

ブーツには小さな穴とそこから青色の煙が出ています。どうやら何かが当たったようです。

濡れたマントに身を包み仮面をかぶって、背が低く、細身の人物が立っていました。顔は仮面の上に更に緑のローブを羽織り男か女かさえもよく分かりません。

「ふぅ……濡れちまったんで火薬が完全にしけっちまったかと思ったが、どうやら大丈夫だったね」

その者は先ほどの噴水に落ちてくしゃみをしていたマントの人物です。

その者はユフィ―達のところに近づいてきます。そして大男の前に立ち尽くします。

大男はとろんとした目をさせながらも、その者の正体の怪しさに恐怖します。

しかし、マントの人物は大男に手を差し伸べて、こともあろうに「降参です……」と言いました。そしてその人物はふところから、分厚い札束を取り出しました。

大男は札束を手に取ると馬車の扉を開け、子供たちを解放し、馬手に「速くこの場から立ち退いてくれ!!」と言いその場を一目散に去りました。

あたりが静まり返ります。

(4)

市場は先ほどの騒ぎがウソの様に静かです。

「助かった、感謝するぞ……」ゲタウリは言いました。

「火薬がしけってるせいか麻酔の効果が甘かったが、奴を退散させる事が出来たようだ。私の腕力じゃあんな奴に太刀打ちできない……。……何とか札束で、危機を回避できたから良かった……」ホメタスといわれた者は言いました。

ユフィ―は「あ、ありがとう、助けてくれて……でも」ユフィ―は力弱げに「力や……お金で解決するなんていいのかしら……ホメタス」と言いました。

しかしホメタスはゆっくりとした口調で、自分に言い聞かせるように、

「力は使うもの、お金も使うものじゃないのですか? 王女」

それを聞いたユフィ―は、《信じられない……》というような顔をしました。


「そうさ! お金だよ!! あんた達のせいで私のもらう予定だったお金はどうなるんだい?! 私達夫婦を餓死させる気かい?! 金品があるなら私にくれてもらいたいもんだね」

ユフィ―は困りました。俗世では、それ一つあれば、一生生活に困らないほどの高価なものです。

これがあれば! ……このユフィ―にはそれは歯がゆくて仕方ありませんでした。自分の命、人の命、それがこのたった一つの小さな道具にかかっているなんて……と。

「さあ、どうするんだい? え?」母親に選択を迫られました。

ユフィ―は「指輪ならありますが、それはいざと言う時のために持っていたもので……」

母親は「今、私らがいざという時なんじゃないかい? 私らは金に困ってるんだよ!」

ユフィ―は身袋からためらいながらも、ゆっくりとサファイアの指輪を取り出します。

「こいつは上等だねえ~、ありがとよ」母親はユフィ―から指輪をはぎ取ります。

「無礼な!」ゲタウリは言います。

~~~~~~~~~~~~~~~~

ホメタスは仮面を取ると姿形が変わっていきました。

ユフィ―はうずくまって、うつろな目で、ぼう然と、その顔立ちを見て驚嘆しました。

「お母さん!!」

先程までホメタスの姿形をしていたはずの母親はユフィーの方をたたき城に連れて帰るように促す会話が繰り返されました。

「ほら、行くよ、ユフィー!」と言いながら。

その場にはユフィ―たちと助けられた少年少女達、そして物珍しく見ている市場の人だかりが大勢になりました。

バッツとその母親はその場から一目散にだんまりを決め込んで立ち去りました。

ゲタウリは言いました「金品でどれほどの家族の絆が築けるのか……」と、そして続けざまに「しかし……ホメタス殿だと先程まで思っていたものがミレーユ女王様だとは……」と言いました。

それを聞いたホメタスは方針を切り替え、静かに夕方の湿った暖かい空気に体をゆだね魔法の解ける草なぎの仮面を解けてくのを見ながら、月の光に温かさを感じ世界に応えを見い出したくなり、ゆっくりと民衆に大きな声でこう言いました。

「あなたたち民衆は間違っていない!!……私たちはこの子が幸せになれるように願いましょう……!!」

そういったホメタスの声は女性の声でした。

不意に、今にも泣きそうな顔をして、ユフィー王女は大好きな人の声だと改めて気付きました。

「......」

その無言には色々な想いが重なっていました。

そう、ユフィ―には王族たるゆえん、『両親の教えを守り正しく生きる』という小さな頃からの、宮廷の教養からつちかった想い、心の骨格ともなっている信念があったのです。

ですから、今のユフィ―には、子供の身を金品で譲ってもらおうとも考えたし思ってもいたことによって、自分がいたずらな悪人のようにも感じています。
図らずも身をていしてまで、子供の命を救ってしまったそのことの重大さに、命の尊さも実感し始めました。

《私って命をもてあそぶ薄情なひとでなしではないのかしら?》

――ところが

なぜなのか、切なげにミレーユ女王は眺めていました。

一部始終を見ていたミレーユは手を組み、今はいるかわからない神になんとなく祈ります。意図することもなく、暖かな気持ちになり、しばらくそうしていました。


その後、ゆっくり、ゆっくりと、しだいに心が巡り始めました。そして……


そして『……なにかこの娘は……今抱いてしまった、私の想いとは違った人物なのではないか?』と疑問がわきました。
ミレーユは頷くとにこりと微笑み
だから、ユフィ―は目をつぶり、
《私も……お母様も......。心はいずれも、毒をもう計れないの……まだ。そうじゃないのかな?私自身も理想として見いだしている。毒を治す事を見いだしている。きっといつかは信じられるはず……疑いやすい私だとしても》
と再び強く心に念じました。

――そして

「お母様……」

確かめるように、ユフィ―は心に思い巡っている疑問を……正直に母に話します。

「力は使うもの、お金も使うものって……いったい? 私はそんなこと経験したことがあまりないし……認めたくないわ」

ミレーユはユフィ―に一礼をした後、
「それは私も悩んでいるところなんですけれどね……」と言った後、眉間にしわを寄せ、

「私は力やお金は人を助けるために使うのならばいたし方ないと思っていますよ。そう、どんな力やお金であれ、使い道を間違えれば世界の大事を巻き起こすからね。……先ほどのようにそれが今まで人を助けるために使う時代のものであってもね……」

ユフィ―は両手を広げ、説得するように、
「違う! 私はそういう物で『人を助ける』ことじゃなくって……石や、紙や鉄だったり、所詮は『ただの道具』なのに、『人が助かってしまうこと』が……。そういうこと! そこが何よりも怖いのよ!」

「……そうなのね」

しばらくミレーユは空を見つめていました。
ユフィ―は無言のミレーユに、自分の疑問に対する思いが変なのかなと思い始めてしまい、
「何か答えてほしい……私は間違っているの?」と、ミレーユに問いました。

「そうおっしゃらないで……道具も大切に思いましょう……。それに人間も道具もすべて、元は自然界から生まれた尊いものに変わりはないのですから……。すべてが大切なんです。……いや、道徳的な話だし、すべてを認める事は自分も無理、納得できない。無理をしているのは重々わかっている、他人からみれば私が無謀だという事も」

「……。……すべてが大切。……そういう考え方もあるのね。私はそういった意味でそのような枠があるならばその枠をはみ出ないくらいが丁度いいと思うけれど……だけど」

その後、ミレーユは悩んだ顔をして。

「しかし……今回、奴隷商を銃で傷つけてしまったのは……。あれしか方法が思いつかなかった私は、自分のまだこれで世がいいと思えてしまう心の炎が宿っている。それは今もなお世界や社会への変動が悪い形であるから。寄りどころのない自分に宿った悪心の炎に対してだ……守りを一歩、凍るような時代にもう一歩、人情の温かい灯りをともせたら……」

ミレーユはしわの寄った顔を……悲しみなのか、ゆがませていました。しかし直後に意を決した表情になりこう言いました。

「人間は本来、大人の価値と子供の価値を右往左往して立ち止まってはならない。それは人生の途中経過だからです。だから他人の気持ちに揺さぶられない気持ちが大事。負けようともくじけない意識でいることが大事です」

ユフィ―はその顔を見ていると、若い侍女から聞いた、ホメタスの優しい心を感じられた話や、想い描いていた、城での人々の相談にのるような、人情味豊かなホメタスのそのようすが、頭に浮かび、そうすると、それが本来のミレーユお母様だったのかなと、心が自然と穏やかになっていきました。

それから、ユフィ―はしばらく考え込みました。

――そして
『結局……人を傷つけようとも、いまの世の中で止まれない女性なんだわ、何て可哀想で頼もしい、夢をいつまでも持ち続けていられる様なお母様なのね......ちょっと現実を見ていないけどね』と思う気になりました。

その時は、そう思うことが、この国の生み出した【死の美徳の正しさ】を心で証明するのであれば、ミレーユは否定できない。

その言葉は発言し信じるだけでなく、その言葉の文字を意味として心に残しつつ、その気持ちは含みと思いながらも、ふいになにか【全ては手に入らない】そう思うことにした。
【全て】という言葉に不思議な言葉の屈折を心に感じた様に。そう思うことが誰しもあるのかもしれない。
それは人生や世界に対しての始まりの動機が敗けるばかりではなく、勝つばかりではなく、言葉や数字の閃きのエネルギーが拡散することはない。そのエネルギーはそこに収まりつつも、色々なそれらの価値を見据えた、紙の光沢の価値の整理された意味を知るすべはない。だから、余韻の屈折としてそれらを残し、文字、数字としてそのモノのみのエネルギーとして、そこに収まること。それがお金というものなんだ。そしてそれが心の安定に繋がる事なんだ。といったことを劇の様に知った。

そう思えたのはミレーユと話した言葉を信じたいといった想いからでした。マゼンダ様が言った通り人から学ぶといったことはとても大事な事だとユフィーには思えました。

ユフィ―は、ミレーユの行いと思い、それぞれの善し悪しに、心の中で、なんとか妥協点を見つけたようです。

「さあ王女、城へ帰りましょう、傷の手当てをしなくては。侍女の者たちには傷のことは元よりミレーユ女王のことも国王に言うなと言っておきます、心配なさらぬよう」

空が夕焼けから夜空の色に変化してきた帰り道。

ユフィ―は、今日の事を思い巡らせていると、不意に、ミレーユの『すべてが大切』という言葉が頭に浮かび、ポカン……と。しばらくそうしてぼんやりしていると、最近、常に思っていた疑問の答えに、手探りで自分の納得いく考えを、つむぎ始めました。

《ミレーユはすべてが大切と言っていた。すべてとはなんだろう……。お金や力? いや、違うわ。すべてが大切と言っていたのは……。そう、心の中で留まるくらいの全てのものを愛する優しさだ。お金や力が全てなんて考え方……誰だって一度は頭をよぎることではあるかもしれないけれど、人間はそんなに欲張りじゃない、皆が皆そう思惑通りには行かないことはわかっているのだと思う。人握りの存在になっても大きな価値の上で平等の価値を捨てた力に何があるっていうのかな......。人の心条を操作することは無い方が良い。大切なのは皆に平等な......だけれど、他の誰とも似ていない私の私になれれば......皆に誤解されない自分に慣れれば良いんだ。人から嫌われるということを認めてしまうのは周りがぎこちなくなるけれど、それも立場によって私にも必要だろうけれど、それを認めるということは、多彩な価値を認める反面、素朴な情緒や素朴な優しさからくる愛情が大事な世界が本当に幸せなんだと思えることを否定することだと一旦認めなくてはいけないのかな。みんな日々の生活で、そこにある何かしらの愛情をそれぞれ自分なりに考えながら、本当は欲しいもの、心の中にほんの少しでも良いから優しさを求めて全てのものを認めるくらいの目標が大事なんだ。その土壌や心の気配りが愛情という形から外に漏れないくらいの優しさが。それが大事なんだ。それを人生の全てとして目標として生きていく生き方。それを求めたいと思っているのが人生の中での余りのでない答えですもの。……あの時、奴隷商が求めていたもの。理由なんて分かりたくないけど、分かってしまう事が怖い。だってあそこから分かる事は、何でもおぼろげに暴発し錯乱した優しさを霧や煙りとして渦にまいてしまうように……本当は奴隷商は愛に欲情していた。それを性欲として変えなくては欲求が満たされないくらいの愛と欲。その似て非なるものを自分の領域無いに納められないで世間にまき散らしている発言や行動だもの。それをごっちゃに混ぜて広言する切羽詰まった人としての志の低いものが奴隷商。世の中を自分の物にしたい強欲のためにそうなった気はするけれど......その子供達が余っていることに気を配る優しさは求めているけれど、子供たちや大人も含めて愛情を相手に中に無いものとして認めてしまうような容赦の無い現実。それを知っているはずなのに愛情が何なのか分からないことよりも1人の人物に恐怖と興味で歪んだ世界が出来てしまっていると思い込みすぎ誤解を得として見てしまった精神の世界が蔓延していることを認められなかった民衆達だったもの……。その子の親は民衆の気持ちなど考えず、これからの自分達の生活を私腹を肥やしながら気にしていた……。みんな本当に傲慢だわ……。私は父親を見て、そうなりたくないと思ったから、ずっと学んできた心の中の『死の美徳の正しさ』を求めているのだもの。お母様を……ううん。人々を悲しませたくないから……みんなと平等に接するため。死ぬために。……でも…...城の外に出てみて...…人によって欲しがるものがさまざまにあって、死の美徳以上に喪失感を抱いてしまった。ものやお金で生きること、それ自体が目まぐるしい程のことだとも分かってしまった。結局、人々の求めるもの。それに一つ一つあわせて行ったら、いつかはすべてが大切なものになって行くのかな? 私には分からないけれど、一生をかけて分かるものだろうし、分かりたいもの》

自分なりの答えが見つかったことによってユフィ―は、
《求める人や物事の善し悪しは確かにあるけれど、ミレーユ女王はたとえこの世に何があっても、すべての人を認めようとしているのかしら? だから、すべての事を認めようと、あのように、すべてが大切なんて……とても大きな建前を言ったのかもしれないわね》

ユフィ―は自分の考えに納得したようです。

「王女、穏やかな表情をされておいでですが何を考えておられで?」

「ミレーユの言葉をちょっとね……」

「『すべてが大切』……ですかな?」

「ええ……私は世の中のもの、すべてが大切なんて大それたことまでは思えないけれど……少なくともこれから、自分の国のすべての人々、自分の立場として、国民を大切にしていかなくては、それだけはしなくてはいけないな、と思って」

「王族としての自覚が出てこられたご様子で。私としては一歩引く姿勢が大事だと思いますが……ミレーユ様に感謝しなくてはなりませんな」

「ええ、ホメタス、もといミレーユ王女。城の外、あの人と外で会話したのは初めてだった。外で会えてよかった。想像とは違ったけれど、弱い面もあるけれど……あの方は決して自分の価値に泥を被せない......そんな気概を感じました」

ユフィ―は照れ臭そうに無口になりました。

「どうしたのですかな?」

「……ええ。今は、いい人だとわかったし。 ……結局、探してたマゼンダ先生から出されていた、今回の課題。『王女の在り方』も見つけられた気がする」

「うむ。素晴らしい」

「……すべてが大切。そうね。人間として……とても壮大で美しい考え方だわ」

「そうですか、ミレーユ女王も粋なことを言いますな!」

「ええ」

ユフィ―は立ち止まり目を閉じ。

《マゼンダ先生になんて言おう……》と思いました。

――翌日

「マゼンダ先生!」


ユフィ―は渡り廊下でマゼンダを呼び止めました。





「どうしたのです? プリンセス・ユフィ―?」





「はい! あの……数日前に話していたことですが」



「……ええ!」



「王女の在り方について、私なりの答えを見つけました!」



「ああ……! 素晴らしいわ! プリンセス・ユフィ―!」



「はい!」



マゼンダは真剣な顔に笑みを見せて、



「では聞きます! ……それは?」



ユフィ―はにっこり笑って、しだいにしっかりとした顔と口調で話し出します。



「それは......王女はまだ子供の意見しか言えない。だから私は大人にならなければならない」


「はい」


「それは……天使としてでは無く大人の心で生きること。身近な人も道具なども全てじゃないにしても、時として一つ一つ、なるがまま、なすがまま、ありのままに、大切なことは本当に大切に……長い間一つでも、一人でも大事にしていけたら……そうしたら私はみんなに受け入れられる日が来る気がする。みんなに神様が幸せの場所の準備を提供してくれる。天使としての私の気概が自分自身の下にも上にもいるような大人の心になる。そんなとても壮大だけれど美しい魂が王女の心を作って行くのかな……と思いました」


「ええ! それならば国や人々に対して……。……というより個人に対しては?」


「……自分からも他の方々をその人その人、個々の人達が持っている神様から与えられた資質、もしくは努力する殿方や側近達を、輝かせられる人、そんな人に憧れるけれど......そのような者になりたいな、と思うけれど、なれないな、と思うけれど。......でも私は私自身を何よりも大切にしたいし、殿方、……じゃなくて、私は以前のままなら心は少女っぽくても今でなら母乳の出そうな立派な胸だからね。 夫が帰ってきても、自分やいずれ産まれてくる赤子を大切にしたいの。……だから私としましては、その様な境遇は違っても同じような心境の者達が心持ち密かに輝きを増すことに何か子供たちに期待したいなと、思いました。……まだまだ沢山大事なことがあると思うけれど……たとえ世の中が未知数であったとしても、何よりも自分が折れても世界が平和であれば、自分も個人として、世界も世界として平和ならば良いと思える人でありたい。子供に向き合える時間があったとしても、私は逃げないで自分の時間を捨てないで、自分の色を色褪せないで、自分の仕事を忘れないで、色々な方たちに平等の価値を築いてもらえるような、古風だけれどこの国の一人一人に縦社会の重要性とそこに曖昧ながらも横社会の重要性の大切さを、それに気付いてもらえる居場所を提供できたらいいなと思います。……怖いけれど……です!!」


【その後、マゼンダは微笑みを浮かべ。そこに細やかでありながら可能性に満ちた言葉を足しました。それは、『だれかを輝かせたり助けたりするのは自分に足りないところがあるから。そこに、これから何かしらの世界にワールドパークといった土地が出来たとしても、そこには絶対君臨者がいても、その人は完璧な人ではない。決して全てまで受け入れる必要は無いのです。国のワールドパークという中の数多のテーマパークのテーマを全てまでを受け入れないって大切な事よ。人に対しての優しさが多少足りなくても、多少足りてても、その時、その時、人が日常に足を踏み入れて、全くの別の白人、黒人、黄色人種に冷ややかさや、温かさを感じられる世界に入っても、皆で創っていく天国、地獄、現世の世界だと思える。国から塩が出る自信のなさがここでの立場の辛かった彼等や彼女等の一番温かな生活ができる風土なんだ。そんな土地柄のテーマタウンがあっても良いんだ。……そう思いたい國創り。担当の国や地域や、その中には國からの劇場があっても沢山の喜劇、観劇で、満たされる、領域があっても良いんだ。笑いの中にもほのぼのとした空気を感じて、あ、笑ってくれたんだ、今日は笑ってくれたんだ、泣いたんだ、泣いてくれたんだ、泣いてもいいんだと思える、思える環境にいれることが大切なんだ』と思えることが大事なのよ】

ユフィ―はそこにマゼンダに対しておだてることなく自分が自分らしくいるためにはどうすればいいのですか?と問いました。

『私みたいな頭でっかちが言うのも難だけど、人に、理屈っぽく考えないで満たされる感情や、人を見た目や発言や頭の良さや雰囲気で判断し過ぎない。適度に程ほどに察して居られるだけの空気感の心があっても良いんだ。そんな、世界や社会への恩恵として生み出される社会が本当の幸せな社会なんだ、と思える人であってね。意地っ張りなところもあるし、文句の多いユフィ―だけど、いつかは嫉妬から悔しくて悲しくて切なくても良いけれど、いつからか妬みを哀れみや恨みを見ない気持ちになれるユフィ―であってね』

その答えにユフィ―が温かい涙を流したことを皆さんにお伝えしておきましょう。出された課題に自分なりの考えで応えたユフィ―。次の課題もきっと乗り越えられるとマゼンダ先生は信じつつ、ユフィ―の王女としての勉強の日々は続いていくと思われます。

「次の課題は……そうね! 簡単なことにも感じられる『疑問てどっから始り疑問てどこから信用に変わるの?』なんてどうかしら?」

「せ、先生、わ、私、それはまだ……」

「フフフ」

「干支がもう一度戻ってこないと無理かもしれない月日が必要ですよぉ……私疑い深いんだからぁー」

そう言って二人で空を眺めると月が白銀色に輝いていました。月って明るいところでも暗いところでも見えるんだ、と月の白さに、その荘厳さに、昼間に月が見えるってとても素晴らしいことだわ。たとえ遠出しなくても身近なところに運命を変えてくれる、宇宙や自分の運命が宿っているのね、と思いました。そんなユフィ―の気質が表れてしまうから......。私は恥ずかしくなりました。

ps.いつもへ捧ぐ優しい言葉


全てまでは、観れない、見えない、語れない。

やれない事を大事に。
できる事を少しずつのばす。

自分が行動したものは自分が全て。
そう思うことで自分に納得できる。

赤ちゃんが出来たら母子手帳はつけましょう。

男女の営みも愛あってのものだね。

『道徳心の地方よりの男女の心を込めて』

胡椒門

執筆の狙い

作者 けんじ
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起承転結をつけてみました!

物語としてまとまってるかお聞きしたいです!

コメント

青井水脈
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「胡椒門」読ませていただきました。
今回はのっけからユフィー王女のピンチで始まり、物語としてまとまっているというか、何かしら出来事やアクションがあったので面白く読みました。

>《ミレーユはすべてが大切と言っていた。すべてとはなんだろう……。

考えさせられますね、それから次の課題も。少しずつユフィーの成長が見られるので、それが物語の軸かと。

>「私の様な王女の立場なら、仮にも一般市民へ、へりくだったところで一般社会を見れば、それは海からでた時間を経て、海に囲まれた海洋の島社会という建設的なものを生み出し、私たち海藻等の魚介類の様な立場の動かないで発言しなかった獲物の身心に、生命を見たのは陸地の海女さんであるし、その存在を飛行機や漁船のものたちは見たのだろうから、自然を偉大だと恐れることも大きな意味がある。

こちらは、「私の様な王女の立場なら、」から「大きな意味がある。」まで一行が長いですね。いや、これはセリフとして覚えようと思ったらひと苦労かと(笑)

けんじ
M106072173098.v4.enabler.ne.jp

青井水脈さん

読んでいただきありがとうございました!


長い台詞なんか面白いので書いちゃいます(笑)

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