作家でごはん!鍛練場
跳ね鳥

巨人と小人

空の色のある夢幻。野球の試合の最中にふと空を見上げると、その青色は無限に続いているように見えて、手を伸ばしても果てない。
 龍多にとって日々のトレーニングは自分との戦いだったし、本番の試合は命がけの戦争だけれども、そんな毎日にふと気が付いてみれば、奈落の底のような死を夢見ていた。
 美夢と巡り会えなかった龍多の人生は考えられないけれども、美夢は根深いところで闇に蝕まれている人間だ。死のような暗い闇の方からムスクのような甘ったるい香りが流れてきて、気が付くとそこに惹かれて魅せられているような、そんな物狂おしい恋に落ちていた。
 龍多の心臓の鼓動の夏が燃え、それは束の間の猛暑の憂鬱な暑い午後のように、青春の真っただ中にあった。龍多の汗かいた心臓は美夢の凍りついたような眼差しに恋こがれて憧れていた。涼と熱が対照的で光と影のようだから、合わないというのは分かっている。
『それでも僕に一目振り向いてみてはくれないか。』

 美夢は知的なエリートで、すれ違うといつも夢のような良い香水の香りがする、お金持ちのお嬢様だった。ベルガモットの爽やかな明鏡止水の香水のヴェルセンスは美夢の雰囲気に似合っていた。とても冷たい雪のような頬の色に、水色のシフォンのワンピースがよく似合う人だなという印象が物思いの初めだったかもしれない。海外に長く住んでいたという情報や、宗教がらみの良くない噂話が美夢をミステリアスに見せていた。何でも心の世界の達観を得るために、数百万円のお金を積んで、海外で何百時間ものセミナーに参加するという、悪質なカルト教団に家族ぐるみで騙されているらしく、大金持ちの家ではあるけれども、新興宗教で結婚も自由にできないという不幸な人なのだという。
 とても華奢で小柄なのに、瞳に揺るぎない力があり、その目を見ると、一瞬で青空のただ中に投げ出されて虚空を漂うような不思議な気持ちになる。龍多は図体が大きくて、日焼けしていて、美夢にはたぶん見向きされないような野性的な身体をしていて、並んでみるとあんまり似合わないような気がしてしまう。

 けれども、球団のパーティーの会食で偶然美夢と席が近くで、勇気を出して話してみると、美夢はとても利発で、噂話に聞いていたカルト教団がらみの不幸など微塵も感じさせない気高さと話術の才で僕を魅了した。世界一の良い女だと思った。美夢以上の女はいないと確信した。勇気を出して龍多は一つ美夢にもじもじしながら尋ねてみた。
「美夢さんはご結婚はなされていますか?」
彼女は淀みなく、
「結婚はまだしていないし相手もいないけれども、時期とタイミングが来たら、人に決められた人と結ばれて結婚すると思う。」とシンプルに話した。
「それじゃあ僕とお付き合いしませんか?」
龍多は言った。
「はい?」美夢は目が点になった。口元には笑みが浮かんでいるがとまどっているようだった。
「好きなんです!」龍多は頑張った。
 深入りして聞く勇気がなかったから予想なのだけれども、それは美夢の宗教の問題でその宗教の組織が決めて婚姻が執り行われるという意味であったらしい。龍多はそのことについてあまり深く考えずに、このかわいい人とお付き合いしたいという思い一つで粘った。
「そうですね。龍多さん、でしたよね。私で良ければ、今度どこかでお会いして話しましょうか?」美夢は龍多におずおずと提案した。
「ありがとう! 嬉しいです。」龍多の心は舞い上がった。
 そのパーティは華やかで、ラビットズの球団関係者以外に芸能人も来ていたけれども、僕は美夢の神秘的な装いの前で時が止まったようで、その後同じテーブルの別の誰かが彼女とワインの銘柄の話をしている傍らで、美夢の口づける青みがかったワインレッドの液体を眺めるふりをしながら、美夢の顔をじっくりと見ていた。
「先程のシャルドネワインの澄んだ味わいと比較すると、こちらのフルボディには重みがありますね。」彼女が鈴の鳴る音で話していた。
 美味しかったオードブルのシュリンプも、ピッツァのトマトソースと照り焼きチキンの味わいも良く噛みしめないままに、ただ美夢の博識と心地良い声に聞き入っていた。ソーダ色のシフォンのワンピースと白い肌は本当にか弱く見えて、淡く消えてしまいそうに儚く見えた。


「メロンパンの世界樹」

 龍多は美夢に三島の鰻を御馳走しようと誘った。美夢はOKして、球団のパーティーから1か月後、龍多と美夢は初めてデートした。
 龍多と美夢は、お昼ご飯に鰻の立派な重箱を食べた。鰻丼は、香ばしくカリっとしつつも、身はあくまでふっくらと焼き上げられて、風味絶佳だ。たれの奥深く後引く美味しさと、豪華な鰻の大胆な盛り付けは圧倒的だった。照り輝く鰻の色艶はまさにゴージャス。老舗の風情ある店内は、親しみがあり、やはり静岡のお茶は美味しく、茶色は緑で大切に振舞われる印象だった。
 三島は水が良いので鰻も美味いのだ。食後に龍多と美夢は近くの一風変わった公園に寄った。三島の公園にはブックツリーなるインスタレーションアートがあり、アルパカが飼育されており、メリーゴーランドがあり、謎な公園だった。水の流れが綺麗で、せせらぎは透明で美しかった。この美しい水で鰻は健やかに育つのだろうと、龍多は思った。
 美夢はブックツリーのところで、綱に吊り下げられた果実のような本を眺めながら
「世界樹みたいね。」と言った。
龍多は「世界樹?」と聞き返した。
「世界樹は林檎とか桃とかバナナとか青い宇宙苺とかマンゴスチンの心の世界での大きな木のことよ。世界樹は人間が誰しも死に際に通っていく。心の木の事なの。カバラのセフィロトの木なのだけれども、その世界樹に実る果実によって、人の死に際は違うわ。人生で最後に食べたものによって、死の直前に立ち現れる走馬灯のような世界は違うの。その数十秒の死に際の物語は、世界樹を人が心で通る時に見られる神話なのよ。」
「美味しそうな果物の木だね。死に際なら、僕は好物のピンクのメロンパンが食べたい。いちご味のジャムを入れたホイップクリームとカスタードクリームが挟まった、ピンクのメロンパン。メロンパンの世界樹ならどんな死に際なの?」
 美夢は珍しいものを見るような目で龍多に言った。
「そうね。世界樹には確かに銀のメロンパンの木があって、銀のメロンパンは旅のメロンパンだから、銀のメロンパンの世界樹を選ぶと、あらゆる世界樹の物語に繋がって、世界樹を旅するような死に際になる。明鏡止水の真珠の実の一番優しい世界樹も通して貰えるの。だからメロンパンだと死に際の神話は長いのよ。銀のメロンパンの木なら、あらゆる色のメロンパンは実るのだと思う。だから、あなたの好きなイチゴジャムクリームサンドのピンクのメロンパンも世界樹として選べると思うわ。メロンパンは死に際の神話が長いものになるから豊かかもしれない。」
龍多は美夢に言った。「メロンパンで死に際が長いなら、死ぬ前に沢山の友だちに会えていいのかもしれないね。美夢は死に際に最後に何を食べて、どんな世界樹を通って天国に行きたいの? 教えて。」
 美夢はブックツリーの本をめくりながら、龍多にその植物図鑑を見せた。
「私は花が好きだから、花のような実のマンゴスチンを選びたいと思うわ。マンゴスチンの死に際は、一番好きな人から、逆さ言葉で責められて、最後この世で一番愛した人一緒にいられる実なのよ。だから、花のような白いマンゴスチンの世界樹を選びたいわ。」
 龍多は美夢から植物図鑑を受け取って、その桜のような咲き誇る白い花を見た。春の桜吹雪の下で死んでいきたい日本人の美学のようなものを龍多は思い出した。
「きれいだね。最後にお花の実を選ぶのは、美夢らしくて素敵だと思うよ。」龍多は言った。
「ありがとう。あなたも最後にピンクのメロンパンを心で食べることを思い出せればいいわね。いちごジャムのホイップクリームとカスタードクリーム、たっぷりと挟んでね。」
 美夢はブックツリーにたわわに実る。本の実を見上げて、何かを思い出すような目をした。そしておもむろに龍多の近くに来て瞳を見つめて話した。底知れない美夢の瞳に龍多は引き込まれていった。
「カバラのセフィロトの木の実は、全部心の世界で鮮やかに幻視して教えを受けるものなの。私がセフィロトの木にパスを入れて描いたカバラの実は、天使のりんご、みつりんご、青いちご、バナナフィッシュ、エジプトのトトの桃、七色の賢者の石のザクロ、イチジク、マンゴスチン、真珠の林檎よ。メロンとライチは作りたかったけれどもまだ作れていない。一つ実を作ると幻影の中で実のパレードが起きて、次々と実がラッシュで現れて、全部実を心の中で食べていき、砂糖袋や、蜜ぶくろや果実に入っている虫だらけになったりするの。それが果実の宗教的な食の教えになるのね。食の大罪や、生きているうちに甘い果実を食べられる人生の喜びや、死んで飢える前に限界まで食べられるだけ食べたほうが人間は幸せだというメッセージがあるの。果物を食べる甘さの喜びが明鏡止水なのね。天使のりんごは黄緑色の甘酸っぱいりんごて、幸福になれる。みつりんごは赤い蜜入り林檎で何よりも美味しい。そうした味の幻を心の中で受け取ると、いつか季節が回って果物を現実に口にできる教えがあるの。青いちごは複雑な花のようなセフィロトの木の絵を描くけれども、宇宙のような青のキイチゴの絵が見えて、食べると爆発したり、膨らんだり、不思議な七変化をするわ。バナナフィッシュはいろいろな色と味のある不思議な黄色の魚で黄緑色の尾のマスカットバナナフィッシュを世界中の海に投げて水に返したり、赤や黒のバナナを教えられたり、バナナフィッシュを食べすぎてバナナ穴に詰まったりするイリュージョンがあったわ。サリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」ファンには嬉しい実ね。エジプトのトトの桃には宇宙色の卵のような桃の種が入っていて、宇宙色の卵は何でも3つの願いを聞いて叶えてくれるの。青い星の卵のラッシュの時には、桃の木の上のユダヤ教の集合的無意識の神様の教えもあったわ。七色の賢者の石のザクロは、赤、青、緑、太陽、月の賢者の石が、ザクロのガーネットのような実として出てきて、宝石の美しい夢を見たわ。ザクロは虫を体内から出す果実なので賢者の石として描かれるのね。イチジクはユダヤ教の旧約聖書の原典に描かれる女性的な実で、イチジクは両親の死の木から現れる恐ろしい実りなのよ。自分のカバラのせいで親が果物に吸い取られて死ぬという幻はとても恐ろしいもの。マンゴスチンは七つの大罪の怠惰の果実で、南国フルーツのドリアンやナツメヤシやライチのように七つの大罪の象徴になっている。マンゴスチンは万年筆のインクに使えたりする7色の実で、マンゴスチンを食べると死に際の最後の夢を見ることができるの。最後に大切な人と一緒に生きられる果実なのよ。真珠の林檎は好きな人との愛を確かめるための実で、結婚している男女は同じセフィロトの木からゴールデンアップルができるわ。男女の愛の結合から、木の実が生えてきて一本の世界樹になるの。真珠の林檎は白い真珠の種が、愛する人への夜の密やかな夢想のオナニーの数だけ相手の所に飛んで行って愛を伝えるのよ。」
「え、えぇー。オナニー?」
龍多は照れた。美夢も照れて笑って話題を変えた。龍多は真珠の林檎を満足して気に入った。
「刑務所の死刑囚について調べてみたことがあるの。死を待つ人の最後の部屋をあなたは知っている?」
「知らないよ。怖いよ。」
「最後の部屋には果物や生菓子が置かれていて、3つの祭壇がそれぞれキリスト教、仏教、神道を表していて、ひとつ死刑囚は宗教を選べるの。その部屋で人は人生最後の食事をして死にゆく。」
「怖いよ。」
「最後の食事はそれぞれ死に際に通り抜ける世界樹のメタファーになっていて、りんごを選ぶとサタンりんごだから、死に際に地獄の心理を見るのよ。だから、世界樹の意図を知っていて最後の食べ物をよくよく選ばないといけない。」美夢は話した。閻魔に舌を抜かれて何も食べられなくなってから、最後に口にしたい食べ物を食べて喉に詰まらせるの。それが最後の食事。抜かれた舌がザクロになるから、それを食べた後に好きなものを口にするのよ。」
「間違って選んだら辛いね。死刑囚はほんとにその後首を吊られて死んでしまうものね。メロンパンはあるのかな?」
 美夢は微笑んだ。「あなたは死刑になるような人じゃないから、善人だから気にしなくていいのよ。最後の部屋の生菓子にメロンパンはないと思う。でも心の目で全ての食べものを見たら、マンゴスチンの代わりの明鏡止水の青い生菓子くらいはあるかもね。」
 龍多は悲しそうな顔をして、美夢の頭を撫でた。美夢は私も死刑囚にはならないと思うけれどねと言って、ちょっと寂しげに微笑んだ。
「まだ死んじゃだめだよ。」
「そうね。まだお互い若いから、二人とも三十代半ばなんだから、まだ生きられると思うわ。新選組とかキリストは30歳くらいで死んでいるかもしれないけれども。」
「うん。死に際の世界樹はもっと後の人生に取っておこう。」
 龍多は美夢の頭を繰り返しなでなでと撫でた。美夢は眩しそうに龍多を見つめて、ちょっと照れていた。

「呪と祝」

 野球の試合は玉が語る。じっとボールだけを見つめている。白いボールの玉の動きがストーリーラインとなり、生き生きと動き出すのだ。バッターと投手の晴れ舞台が巨人で、外野手たちは小さい小人だ。TV画面の注目はバッターや投手の巨人たちだけに向いて、その他大勢の身軽に走り回る小人には向かない。龍多の所属するプロ野球チームのラビットズでも、いつも注目されている人気のあるポジションが、絵柄的には巨人になる。星の軍団、球界のスター集団ラビットズは1軍はテレビスターだが、2軍のファームの龍多はテレビやニュースには映らない。ホームランでかっとばす勝ち試合は爽快でスカッとするけれど、龍多みたいな投手だって大切だ。龍多はひたすらにキャッチャーミットの穴だけを見つめている。キャッチャーミットの穴に入ったままボールが返ってこないことを投手は求めて投げ続ける。絶対に相手のバットで打ち返されてはならない。龍多が求めているのは穴のところに行って、そのまま帰ってこないこと。

美夢と出会った球団パーティーのあった時期はちょうど龍多のいるラビットズの二軍のファームは、野球のトレーニングキャンプのシーズンで、龍多も早朝のベースランニングから、午後の個別練習まで一回一回のメニューをハードにこなした。週末にちょっと息が抜けて、一軍のラビットズの野球試合の録画を見て勉強したり、美夢と月1くらいでどこかに行ってデートをしていたりしていた。
 日々の体幹トレーニングやスクワットで筋肉痛だったり、個人的にダンベルでウェイトトレーニングしたりする週末のオフの日だったけれども、日々息を切らせて走り込みをしている汗だくの龍多の日々、野球選手の汗臭さから考えると、たまに美夢と会って過ごせる休日は夢のように楽しくて、癒される時間だった。そんな時龍多は、日頃の疲れも忘れて美夢に甘えてはしゃいでしまう。
 その月の週末は、美夢と一回だけデートができた。美夢は一般企業の会社員で平日はいつも仕事で忙しく、龍多もトレーニングがあるので、会えるのは2人の都合が合う土曜日か日曜日だった。その週は美夢と一緒に国立新美術館の点描作家の美術展に来ていた。美夢と出会う以前なら、ラビットズの寮の部屋に立てかけてある小さい釣り竿一本持って、海釣りに出かけているような、何でもない日だったけれども、美夢と出会ってからオフの日に輝きがあって、龍多の人生に光が灯ったような気がした。

 国立新美術館のガラス張りの現代的な透明な光に溢れる建築物の中は、有名な点描作家の大回顧展とあって、、長蛇の列が出来ていた。龍多と美夢は、国立新美術館の外の、樹木の植えられた並びに、観客の列を作って並びながら話をしていた。人々は皆長蛇の列に並びながらも、きれいな並木のスペースを眺めたりしながら、涼しい顔で気ままに過ごしているように見えた。
「三国志の諸葛孔明が、お饅頭を作った最初の人なんだって! 知ってた?」
「知らなかったわ。でももしかして饅頭が、頭っていう話し?」
「それだよ! 人の頭に見立ててお肉を入れたお饅頭を作って、諸葛孔明は川化けをなだめて犠牲者を出さなかったんだ。」
「川化けって龍人かしら?」
「そうだよ。川の神様が荒れたのを、諸葛孔明が饅頭でなだめたんだ。」
「その頃はお饅頭は餡じゃなく肉なのよね。お饅頭は日本に来て、肉が食べられないお坊さんが食べられるように、あんこにされたの。本来は諸葛孔明の饅頭のように肉だったのだと思う。」美夢が言った。
「肉をあんこにしてしまったんだね。でもどっちも美味しいね。」
「びわんもちというお饅頭があって、酒饅頭の仲間なのだけれども、お饅頭の外側と中身が呪と祝の関係にあると言われているわ。」
「怖いのと楽しいの?」龍多は尋ねた。
「そうだけれども、象形文字を見ると祝いのしめすへんが生贄の台で、呪いの口辺は唇だから、本来は呪いが祝いで祝いが呪いの意味であるとも考えられるの。」美夢が言う。
「「へぇ、祝いと呪いは反対の意味なのに、元々はそれが逆の意味だったんだ。」龍多は考えた。
「そう。それで酒饅頭は中身のあんこを呪って祝いにしてあり、あんを肉にしてあり、外側を祝って呪いにしてあり、お酒で死なせているの。中身を活かして外側を死なせて作ってある構造なのよ。」
「祝いが呪いで呪いが祝いなんだね。」龍多は納得した。
 美夢は龍多の目を見て嬉しそうに言った。
「秋の紫いもの季節が来たら龍多に作ってあげたい肉まんを思いついたの。美味しいわよ。」
「どんなの?」
「牛肉を丸めたものにチェダーチーズを切ってペタペタと張り付けて、そのチーズ玉を紫芋と砂糖と小麦粉とあずきあん大さじ1入れた生地で包むの。生地はアガペシロップとはちみつと黒蜜を混ぜたネクターで煉って、肉まんと同じように蒸し器でふかして作るのよ。紫芋チーズ肉まん、今年龍多に食べて欲しいわ。」
「わぁ、美味しそう。その肉まん食べたいよ。」
「紫芋の季節まで待っていてね。味は不思議ととろけたチェダーチーズと牛肉がビックマックみたいでゴージャスで美味しいのよ。」
「うん。」
 行列が動いて、展覧会の会場に入れるようになった。チケットを見せる受付にもまた人が並んでいる。
「もうちょっとで会場ね。」
「うん、楽しみだよ。」
 木立から木漏れ日が揺れて、光と影が2人の足元に点描を描いていた。会場に入ると、圧倒的なスケールで大画面の点描作品が並んだ。原色の輝く絵画作品は、龍多の目を喜ばせた。絵画は散りゆく桜の死の想念や慈しみ深いマドンナリリーの優しさを想起させ、血の花と同時に、愛しい女の死にゆく儚さを見るものに伝えてきた。点描作家の美術展は色鮮やかな点描画で、生命力が満ち溢れていた。大画面を前に立った美夢の姿は色鮮やかな点描の水玉に溶けていき、生命のダイナミズムを全身で感じ取っているかのようだった。
 蜜の甘さが豊かな水源の在りかを伝え、飲み水がはちみつのように甘い、命のアムリタであることが、絵の前に立って一瞬脳裏に閃いた。オーストラリアの国家の本物のアカシアのような黄色の点描の可憐さがそう思わせたのかもしれない。
 桜の花のような点描のイメージは春の雪のようであり、そのピンクは人間の血液を吸ったほんのりと上気した人肌の温もりのようであり、儚くも、歴史上何度でも蘇ってきた桜の花の運命のようだった。束の間の春の日に喜ばしい歓喜の色彩の中で、二人は人生で目にする一期一会の花の美として目に焼き付けた。点描の中に息づく生きた花があり、またその花の命の死も同時にあった。

「明鏡止水」

 日々の野球の試合の時間は魔法の時間で、時が伸びたり、縮んだりする。あっという間だと思う時があれば、濃密な永遠がその試合の中にあったりもする。そんな時龍多は満ち足りた。ラビットズのファームの選手も日々の試合に明け暮れている。球場の入り口でファンにハイタッチしたりする仕事やヒーローインタビューが回ってくることもある。ファームにはバーベキュー大会もあるが、日々の雑用もあるのだ。
ラビットズというチーム名はもちろん兎のラビットだ。兎は足が速く、野球選手の盗塁の全力ダッシュをイメージしている。あとジャンプしてボールをキャッチするスーパープレーも兎のジャンプ力だ。滑り込みセーフで点を取りに行く脚力は兎の素早さなのだ。一発カッコよく決めるホームランの見事な一点では、野球ボールは球場の天の星として輝く。野球のウサギの内なるパワーはその魔術的なボール扱いだ。魔法がなければボールは完璧な軌道でミットに収まり放たれない。ラビットズは星のウサギたちの輝くスター軍団なのだ。
その週の試合ではハプニングもあり、龍多が速い球を投げたら、バッターのバットが一本折れてしまった。バッターのバットが割れた木片が飛び散った時、龍多はぎょっとして、怪我や故障を心配した。球はバットより強し。結局龍多もバッターも無事だったが肝が冷える出来事だった。
毎日汗だくになって試合に明け暮れて、スーパープレーで滑り込んだりして、龍多のユニフォームはいつも泥々だ。汗臭いユニフォームを立体ジェルボールで洗う時、その毎日の洗濯を奥さんがやってくれたらなと妄想する。汗臭いユニフォームを洗ってくれる美夢の姿を思い描いて龍多はにんまりした。早く美夢と結婚して幸せな家庭を築きたいのだ。その月の週末デートは龍多と美夢はカフェに行って話しをした。
庶民的な喫茶店デートだ。龍多は美夢と会える日をとても楽しみにしていた。
カフェに行く道のりで小さな花をいくつか見つけた。梅の白い小さい木の花や、一輪のたんぽぽや、咲き残った椿か山茶花の赤い花や、黄色い小さな点のような野草が見つかった。ちっぽけな春の訪れはこうした散歩に出ないと見つからないものだったと思う。空の色も池の水の色も、透明感があってきれいな晴れの日だった。色即是空空即是色の如く雲一つない快晴の澄み切った空の色は、ほのかに紫がかっていて、どこまでも遠く高かった。
老舗のカフェの入り口の古びた木の扉には、レトロな色硝子で、赤や青の花の模様が描かれているステンドグラスがあった。中に入ると、白いエプロンをした紺のスカートのクラシカルなウェイトレスの女性が奥の席へと2人を案内した。赤金色の革の座席は木の仕切りで隣のボックスと分けられており、銀のミルク入れを白い陶器の花のようなティーカップで珈琲を出してくれる。
「きれいなウェイトレスさんだね。」
龍多がウェイトレスさんに鼻の下を伸ばしていると美夢はやきもきしてしまった。でも本当に綺麗な白い肌のこじんまりとした顔の造りの美女だった。ウェイトレスさんのヘッドドレスは、まるで中世の屋敷のメイドさんのようで、美夢でも彼女に憧れを抱いた。
「私は、ベルギーチョコレートケーキも注文するわ。龍多はいいの?」
「じゃあ僕のクラブハウスサンドも頼むよ!」
 龍多ははしゃいだ。
 運ばれてきたベルギーチョコレートケーキは濃密な濃いチョコレートのみっしりととろける充実して風味で、ナッツのアクセントがとても美味しかった。とろりとしたチョコレートソースは甘くもほろ苦くて、病みつきになりそうな味だ。舌の上の体温でチョコがどろりと溶けて、味覚に浸透して侵してくる。舌が全部チョコレート色に染まる。
美夢は龍多に話しかける。
「最近、明鏡止水のお経を始めてみたの。もう作って一か月くらいになるわ。1回一五分くらいかかるのだけれども、心を守れていいのよ。おまじないみたい。」
「その明鏡止水ってどうやるの?」龍多は尋ねた。
 運ばれてきたクラブハウスサンドを龍多は大胆にかぶりついて食べた。茶色でかりりと焼けたサンドイッチに、ベーコンとレタスとトマトが挟まっていて、ベーコンの塩気が舌に美味しかった。龍多は夢中でむしゃむしゃと食べた。その様子を楽しそうに眺めながら、美夢は明鏡止水のお経について説明した。
「明鏡止水のお経は、般若心経の組み換えで作るの。般若心経はとても有名なお経なので、たぶん龍多もお経らしいお経として、ドラマとかで聞いたことがあると思うわ。元々の般若心経は怖い印象のあるお経なのよね。」
「般若心経は、ドラマでコンビニ店長の人がよんでいたから知っているよ!」
「そう、それ!」
「般若波羅蜜多時。でしょ。」
「そのお経を、全部で五個くらいある般若の部分を受けにして、やっぱり五個くらいある三文字のお経、舎利子とか一切顛とかの龍にあたる経文を攻めにして、受けと攻めにそれぞれの言葉を代入して読むと、明鏡止水の守りのお経になったり、電撃の攻撃のお経になったりするの。龍虎攻めで明鏡止水の心を守るお経が作れて、虎龍受けで攻撃のお経が作れるわ。攻撃のお経は虎龍のお経といって、作ると心が苦しくなるから、一つだけお経を作って、そのお経を愛用してお経を育てて使うの。でんでんりゅう。」
「面白いね。明鏡止水のお経もやっぱり、一つだけ作って育ててずっと使うのかな?」
 美夢はティーカップから上品に濃い珈琲を飲んだ。珈琲はミルクを入れて美しいブラウンのコーヒーカラーをしている。液体はまだ熱く、飲むと頭が落ち着いた。
「明鏡止水のお経は八連のお経なの。だから全部読むのに一回一五分はかかるのよ。」
「長くて大変なんだね。八個のお経を繋げて読むんだね。」龍多は言う。
「心経簡林のお経の表記の、文字違いを探して明鏡止水のお経の手がかりを探すのだけれども、お経のつなぎ目も心経簡林のどこかにあるわ。インターネット画像検索で今は探せるのよ。」
「へぇ。」
明鏡止水は氷のお経なの。あらゆるものを凍らせて、あらゆるものが砕け散って、それらがみんな光に照らされてジャムになって、ジャムが強くなっていくと鋼のようになる。そして、鋼の氷は時間が経つと溶け、美しい青い氷になって流れ出す。だから善の光の八連のお経と呼ばれているわ。」美夢は言った。
「美夢は心の世界のことを丁寧に語れるんだね。それだけ心の世界が美しく夢みたいなのは、お経で宗教かもしれないけれども、心が豊かなことですごいね。
「ありがとう。優しいのね。」
「とりあえず明鏡止水は光のお経なんだね。心を守るから善のお経なのかな。お経の組み換えはパズルみたいで大変そうだけれども、一旦作れたら一生役に立つだろうね。」龍多はうなずいた。
「野球も目には見えない心の世界で色んな心の戦いとか葛藤があるけれども、野球選手は宗教家じゃないから、心の中の技については何も語らないんだ。そういう目には見えない技みたいなものは野球の世界にもあって、球場の応援ソングの、ムードとテンションみたいに語られないけど確かにあるんだ。だから美夢の話もそういうフィールドのものだと思うよ。」
「そうなのね。野球も精神の戦いなのね。気迫とかオーラとかフローとか。まぁ宗教というのはお経でも何でも、心の世界のあれこれを全部表に出して語って世界を言葉で変えるところに起源があるのだけれども、野球の小技と精神戦みたいに目に見えない世界は日常生活では語らないのが現代日本ね。宗教とか文学とか芸術の世界は心を表現するもので非日常なのだけれども。」
「なるほど。」龍多は相槌を打った。
「もし明渠止水のお経を自分なりに作るのであれば、受けと攻めだけではなく、お経の繋ぎ目を見つけたり、無限の目から酒饅頭を出したり、馨香味触法と無受想行識を無限の目に従って入れ替えたりするお経研究が必要になるの。お経のパーツ読解は経文研究で長いわ。あと始めの魔訶を取ったり、ムーケーガイを無くしたり、明鏡止水のお経を完成させるまでには、色々な試行錯誤があったわ。本当にパズルみたいね。」美夢が言う。
「そうなんだね。大変だね。よく頑張ったね。」
「お経は読み方が重要で、シンムーケーガイとかのお経の繋ぎ目の読み方は、漢字辞典を調べて読み方を調べないと出てこない。でもその読み方調べにも罠があって、香港のお経スポットの心経簡林の字体に沿ってやたらめったら読み方を変えると、お経で首を切られてしまうのよ。雁滑のお経は危なくて、鳥と蛇が死神として首を切りに来てしまう。あと宇宙の容のお経は、一か所に人々の心を集めて、明鏡止水ではない雑念の混沌になってしまう。だからお経の組み換えはやり過ぎず適切なところで止めるのよ。」
「塩梅を見るんだね。」龍多は言った。
「そうなの。それに明鏡止水のお経を使うのは毎日ではなくて時々でいいのよ。分厚く張ったお経の氷は溶かして水にしないといけないわ。青い透明なとうみつの湯にね。」
 珈琲を飲みながら二人はチューリップのようなすりガラスのランプシェードに照らされて、少し暖色の灯りに照らされて、とても寛いでいるように見えた。

「星、石、花」

 熱い野球の試合というのは、大接戦で、一点差の奪い返しだったり、2ランホームランや一気に3点が入って大逆転の挽回をしたり、客席に一気に応援グッズの花が咲き、球場がクライマックスの頂点に達しフィーバーするあの感動と興奮の体感である。スーパープレーの連続できっちり抑えて投げ切る投手もかっこいいし、ここぞという求められる局面で、クールにホームランを決めて、ベースにダッシュで滑り込んで点を取るバッターも最高だ。
 ラビットズのファンの手作り応援タオルに選手の面白い愛のある似顔絵がプリントされ翻り、やはり手作りの応援パラソルが綺麗な透明な水色で天に向かって一斉に突き上げられるのを見ると、やっぱり野球っていいなと思う。
 ドラマチックな野球の試合のエピソードにはストーリーラインがあり、白熱した点の取り合いのはらはらする手に汗握る試合には、試合の書き手がいるかのようだ。延長試合に突入した時の耐久戦は精神力が勝負だし、試合の中を生きるには持久力とスタミナが命綱だ。
 龍多がピッチャーとしてマウンドに立って投げる時間は、ステージの上に立ち注目を浴びる巨人化した自分のスポットライトの当たる舞台だ。龍多が白い野球ボールを握りしめて、キャッチャーミットの穴を真剣に見据えて、一球入魂のピッチングを繰り広げる。堅実に力強く踏み込んで、キャッチャーミットまでの幅広く長い空間を、高速の玉のピッチングで、確実に届かせ玉を響かせる。踏みしめたマウンドで土ぼこりが舞い、球場に来てくれた観客が固唾を飲んで、ピッチャーとしての龍多の投球を目で追っているのが伝わってくる。野球の試合はその後ベンチで試合を見守る時間も、全力で野球の試合の中を生き、視線を使って球を追い共に戦うエネルギーが必要だ。ベンチにいる時の龍多はどの観客よりも近い距離で、バッターボックスを見つめられるので、玉がバットに当たる時の、衝撃と感情の動きの戦いの生々しい体感がある。ピッチングでかいた汗をぬぐい、青いスポーツドリンクを飲みながら試合を見守る龍多の目はまだ戦っていて、チーム全員で試合の空気を作るのだ。ラビットズがバッターの側の回が回ってきて、龍多はこの回で点を取れないと今回の試合で勝てないと焦り、必死でバッターが何とか打ってくれることを祈り、バッターの気持ちでラビットズのために戦う。龍多の心の中では、龍多がバットを握りしめ、マウンドのピッチャーの剛速球を素早く目で捉え、青空に向かってバットで球を捉え高々と打ち上げる。でも現実には中々点が入ってくれない。ベンチでじりじりする。でも運よくあたりが出て味方のバッターが球を高く打ち上げる。当たりが爽快だ。でもエラーであり、ちょっと玉が右に逸れている。飛距離のある良い当たりなのにもったいない。もっと飛ばせ!
 回が回って、チアガールの応援のターンになった。応援歌も歌い球場に華が咲く。ラビットズには、女の子アイドルのチアダンスグループがついている。ラビットガールズと言う彼女たち応援アイドルは、ラビットズの球場の華だ。ラビットガールズはチアガールから始まっているアイドルで、球場でのチアリーディングや応援歌の歌唱・ダンス以外にも、大手音楽レーベルから沢山オリジナルラビットズソングを沢山リリースしている。龍多はラビットズガールズの曲をスマートフォンの音楽配信アプリで、連続自動再生して聴くのが好きだ。ラビットズガールズの曲は、ちょっとダンスミュージックっぽいけれども、今どきでハイセンスで、テレビで見るようなグループアイドルの曲みたいにきらきらしていてカッコよくて、カラオケでも歌える今どきのメロディーだ。ラビットズガールズには野球のうさ耳を刺激するある種の音域があり、球場の応援ラッパのように特殊なジャンルの耳の良い音楽だ。ラビットズガールズの最新の音楽動画は、「ドライ」というセクシーで過激な曲で、野球選手にはちょっと刺激が強い。「ドライ」のミュージックビデオでは赤いメタリックの、ボディラインが際立つぴちぴちの衣装で、激しいアダルトなダンスが見られる。ラビットズガールズのダンスは良いし、透明感のある声は星の声だ。龍多は「ドライ」の洋楽のような曲調の、リズミカルで踊れるような感じが気に入って何度もYoutubeの「ドライ」の動画を観たし、「ドライ」のちょっとエスニックでビビットな世界観も好きだ。龍多の推しのラビットズガールはMAFUという囲い目のぱっちりとした煌めく目の娘だ。MAFUは肌が剥き卵のようで、産毛立つように新品の美肌をしていてかわいい。MAFUは二回ブリーチをかけた感じの手入れされた金髪の娘で、ディオールのテラコッタ色のルージュの唇がぷっくりとかわいい。下まつげが長く、眼差しが蠱惑的だ。MAFUたちは日頃ラビットズのユニフォームを着て、短いスカートを身に着け、球場の緑の芝生の上で、白いユニフォームとスカート姿の彼女たちは踊る。緑のグラウンドの上を爽やかに駆けて、ラビットズガールズはラビットズのテーマソングの応援歌を歌う。龍多はファームの選手で二軍だから、MAFUと握手できないけれども、龍多の妄想の中では「ラビットズの一軍ならMAFUたちとお茶したり、楽しく会話したりできるんじゃないかな。うらやましいね!」
 龍多がトレーニングをしていて、悔し涙が流れそうな時には、ラビットズガールズの「ドライ」の歌詞を思い出す。「Stand up! キモチ上がれ。Stand up! 声の枯れるまで 歌い続けて。チャンスは掴めるから 風に乗って 走り続けて。」ラビットズガールズのポジティブな音楽は、心が折れそうな時に龍多に音楽の力をくれる。坂の下に転がって壁にぶち当たってダメになりそうな時に、MAFUたちのかっこいい音楽は、龍多に再起の力と翼を授けてくれるのだ。MAFUのへそ出しルックまた見たい。きらきら光る夢のようなラビットズガールズのチアリーディングパフォーマンスは、いつも野球の試合中見るだけで元気になれる、魔法のダンスだ。

 その月は龍多と美夢は前衛ダンスのイベントとレストランに食事に行った。照明を落とした広いホールのダンサーにスポットライトが当てられ、前衛音楽に合わせて女性ダンサーが身体表現で、空間を使った伸びやかな緊張感あるダンスを踊り、時空間は涼やかに凍り、時はダンス表現で伸びたり縮んだりした。その日のデートは、高価なシャンパンと窯焼きピザが美味しい店で、生ハム原木から、高度な技術で美しく薄く皿に生ハムを削いでもらって、美味しく食べた。生ハムとメロンとクリームチーズのお洒落な料理も出てきて、シャンパンと一緒に楽しんだ。シャンパングラスの水晶のような輝きに、氷の人工結晶のような光沢のある微細な泡がぷつぷつと弾け、はちみつの黄金色のシャンパンの薔薇の花のような芳香が鼻孔をくすぐる。見事に美しい神秘的でもある細身のグラスに口を付ける美夢は優雅で、白人のように白い肌をしている。日本人だけれどもお化粧のパウダーでで外国人よりも白く見えている。龍多の心の恋の炎はそういう美しいものに自然と燃えるのだ。移ろいゆく宝石細工のようなレストランの情景の印象は、まぶしいほどで、奇跡のように光るような夜だ。美夢はその日の会話では星と石と花のことを話した。
 「前にお経の明鏡止水について話したけれども、星、石、花の明鏡止水もあって、惑星の運行を並べ替える、7つの清めのお香の意図があるの。死に際の心理が取れて楽になれるわ。」美夢は肉のピザを食べながら言った。こんがりと焼けたチーズは程よく伸びている。
「惑星の運行って何?」龍多は尋ねる。
「曜日よ。月火水木金土日の。曜日を組み替えたり惑星を増やしたりして整えて、お経みたいに明鏡止水の順番を並べると心を守れるのよ。」
「うん。スケジュール帳とか、日月火水木金土に並んでいるよね。」龍多は考えた。龍多もこんがりチーズピザを美味しそうに食べている。御馳走系では龍多はピザが一番好きだ。お祝いの味なのだ。
「そうね。ただ私の惑星の明鏡止水の順は、インドのスパイスを参考にして、対応する惑星を反対にして並べるものなの。惑星の順には燃えて爆発するホンホンの順番と、凍って明鏡止水になるコンコンの順があるのよ。太陽と月は普段は明鏡止水ではないので除いて、代わりに天王星と海王星を入れるの。」
「日曜日と月曜日、お休みで体力あって良い曜日なのに。」龍多が首をかしげる。
「月火水木金土日天海を対応する惑星の逆のもので組み換えて、太陽と月を外して並べると、水火土金木海天となり、凍った明鏡止水になるのよ。」美夢が説明する。
「対応するって何?」龍多が尋ねる。龍多はまたちょっとシャンパングラスの液体に口を付けた。舌の上で微細な泡が弾ける。
「水星と火星が反対の性質で対応し、木星と太陽が対応し、金星と土星が対応し、海王星と天王星が対応する、五行説の自然の力、エネルギーの力関係みたいなものなの。冥王星も明鏡止水ではないので7つの清めのお香の七曜星には入れないわ。惑星の明鏡止水の性質は、」水星は心を守り死に際を取る、火星はヒステリーの性器の痙攣の精神異常を抑える、土星は敵を攪乱して心を守る、金星は運が良くなり幸せになれる、木星は全身を蘇生し身体を守り身体の心を守る、海王星は心の中の存在全てを砕いて無音にする、天王星は産み直しで年齢を若返らせる、みたいな心を守る種類と性質があるわ。」
「でもなんで惑星を使うの? 星は一杯あるのに。」龍多が質問する。龍多は野球のお守りのチェーンを首にかけている。ちょっとお高いシルバーなのだ。
「88星座を細かく見ていくと、それぞれの惑星の明鏡止水を象徴する星があって、それを探すのが宝探しになるの。だから基本の明鏡止水の性質の干支は惑星の水晶球にあるのよ。紫水晶、ローズクォーツ、水晶みたいに惑星を石に例えるの。」美夢もグラスに口をつける。
「一等星や、高山植物やマントルの石は、性質が分かれば明鏡止水の惑星の順に並べ替えて心を守ることができるわ。火星にあたる88星座はエリダヌス座のアケルナルがあって、小惑星イトカワに似た白くて横に潰れた感じの星なの。アケルナルの傍にはラーンという黒い太陽みたいな天体もあり、黒の星と白の星のつがいなのよ。」美夢は続けた。
「ずいぶんマニアックな星だね。他の星はどんなの。」龍多は聞く。
「アルゴー座には水星のミアプラキドゥスとアヴィオールがあり、ミアプラキドゥスはかわいい竜骨の龍なのよ。恐竜の化石ね。大熊座には火星のアルカイドとアルコルがあり、軍人マーズの戦争の星よ。子熊座と大熊座のポラリスとミザールは土星でこちらは戦争と平和の平和の星で、新興宗教的意味合いがあるの。少女座と牡牛座のスピカ、アルデバランは金星で、お料理の上手い母と父みたいな神話作家の星。少女座というのは、トレミーの星座名で、一般的には乙女座のスピカね。獅子座のレグルス、デネボラは木星で、鷲と鷹でうなぎとなまずのお料理を教えてくれる。双子座のカストル、ポルックスは海王星で、死んで天に昇って星になったカストルとポルックス兄弟は、金平糖とラムネとしてつがいの双子の星の象徴なのよ。鳥座、鷲座のデネブ、アルタイルは天王星で、七夕の神話の織姫と彦星のベガとアルタイルではなくて、白鳥と鷲の鳥のつがいにしてあるのね。高山植物の明鏡止水やマントルの石の明鏡止水と関連付けると、もっと星の理解が植物のメタファーなどで深まるわ。」美夢が星の話をする。
「すごいね。もの知りだね。ありがとう。星空を観たくなったよ。」龍多がびっくりして言う。
「どういたしまして。今度一緒に星を観に行きましょうか。」
「うん! 行こう!」龍多と美夢はその後は野球と会社の仕事の話をした。


「セフィロトの実」

 龍多は自分の所属しているラビットズの球団のユニフォームが全チームで一番格好良いと思っている。マウンドを踏みしめる黒のスパイクはグラウンドを走り込んだ土ぼこりにまみれている。上は黒いユニフォームで、シャープなラインがくっきりとナンバーをふちどっている。
 龍多の背番号は22番で、大学時代の野球のドラフト会議で選ばれた選手だ。下のズボンは白で、細いラインの入った、黒と白の対比の際立つデザインだ。ぴったりとした黒のシャツの上のユニフォームは龍多にジャストサイズで、龍多の背番号の22番が輝かしく背中に光っていてよく似合っている。チームのロゴマークは胸元で誇り高く主張し、ちょっとアッシュに自分で染めた短い髪をすっぽり収めた、黒のメッシュのキャップはりりしく、キューモなどの協賛企業の広告も付けている。龍多の手の赤い革のグローブは、よく手に馴染んだ長年の相棒だ。
 日々負けられない試合が目の前にある。龍多のまゆげが吊り上がり、振りかぶって投げた。すっぽりとキャッチャーミットに白い投球が収まる。その一球一球の永遠のの繰り返しが続く。応援のメロディが場内に独特な抑揚を持って響く。初心忘るべからず。一球一球に思いと、願いと努力と血の滲んだ練習時間を込めて、プロ根性で力の限りに投げる。白いボールの動きに誘われ、風にはばたき、あの大好きな空の青さと一体になるようにして、彼方のキャッチャーミットに届ける情熱の一球。
 それでも、野球の試合に勝てない、負ける日も少なからずある。野球の試合に負けた時には深い悲しみがある。ミスプレーの一つ一つの責任が全部自分一人の肩の上に重くのしかかり、潰れそうになってしまう。奈落の底のような絶望感が打ち寄せてくる。そんな日には本当に辛くて嫌になってしまう。試合に出してもらえず練習の日々も多い。そんな落ち込みやすい龍多の傷つきやすい心にとって、時々週末に会える美夢の存在は救いだった。ラビットズの会社の本体が保険の営業の会社なので、実は龍多は、日頃のトレーニングの中で、営業マンの心理で脳内の電撃を浴び、生命保険の死を看取る死に際の心理の中、営業魂で目をぐりぐりさせながら、心の地獄を味わいつつ、ラビットズを続けている。実は今シーズン、膝の骨の手術をしたが、ラビットズの1軍のTV放送の試合に三回出場できて出世した。TVに映る時、緊張しすぎて、保険の営業マンに憎まれた時の死に際の表情で、投球して完封した。
 オフの日に美夢と、球場近くのシティホテルに格安で行く時間が龍多は好きだ。美夢の裸体に興奮し、龍多の趣味で着物を着せてコスプレをさせてはだけさせて抱く。芍薬と牡丹と百合の瑠璃色の着物は美夢の白い肌をよく映えさせて、龍多が美夢の着物をはだけさせて胸をまさぐると、美夢は子宮を痙攣させ、身をよじらせてくねくねと果てる。龍多のちんこが勃起し、赤くほてった性器から熱い液体がほとばしる時、美夢の中に精液を放出して孕ませたくなる。瑠璃色の着物の内側は赤色で、美夢の赤く火照った肌がエクスタシーでびくびくとうねり果てる姿を龍多は、美夢がぐったりと吸い付くくらいに抱きしめる。

 世界中に星空の物語があり、太陽と月だったり惑星だったり十二星座だったりと、それぞれの明鏡止水の星の物語があり、国によってそれらの星が心を守ったり、心を病ませて破壊したりして、国ごとにその星の宗教は違っている。ロシア正教やウクライナ正教など、正教だけでも、十二星座のように、星の神話と魔術の効果が同じ星でも国ごとにその魔術的効果がすれ違う。日本の明鏡止水と中国の明鏡止水の星が時に逆さまの精神錯乱の死に際の星ように、国ごとに明鏡止水の星が曜日ごとにずれていて、世界中の心は月の満ち欠けのように曜日ごとに順番に明るくなったり暗くなったりを繰り返す。死に際のいけにえの星では水星で干支玉が崩れて猛烈に眠くなり、天王星で限界まで子宮が痙攣し絶頂し、火星で霊症が出て、ホラー怪奇現象が出る。月食や日食のように、カレンダーのように国ごと人ごとに順番に星の神話と宗教で心を守ったり、心が辛い日もそれは他の国では心が明鏡止水で満月だから、それを受け止める。同じお経でも星と同じく国が違えば効果が火と水のように違う。
惑星の岩石組成に七色あって、月の満ち欠けやクレーターも無数にあるように、惑星の色彩は無限の可能性と魔力を持つ。カバラのセフィロトの木の世界も、そうした七色の果実の魔術的ないろどりと彩色の世界である。
 カバラのセフィロトの木には長い物語がある。丸いセフィラという色付きの円を木のような形に、パスと呼ばれる線で繋げたセフィロトの木という魔術は、上向きの地上のセフィロトの木だけではなく、地下茎の逆さの木も入れると、組み合わせであらゆる木の実が心の世界で実って、それを食べられる美味しい魔法だ。
 死に際の人間の心理と言うのは絶望で、惑星の明鏡止水の逆の、7つの大罪の罪業の罪の中で、例えば色欲の罪の天王星の地獄心理の中で現実を見失う。死に際に駆け抜ける世界樹の物語も、人生の中で自分に贈られた善意のメッセージや感想が、死に際に反転して、苦しみの惑星の大罪となり、逆さ言葉で心の地獄を味わう。カバラのセフィロトの木は、その死に際のテイストを選べる、絶望の中の救いのような、最後に心の中で食べる食べ物である。
 カバラのセフィロトの木の実には、サリンジャーの小説で有名なバナナフィッシュや、願いを叶える宇宙卵の種の入ったエジプトのトトの桃や、青い宇宙苺の食べると7変化するネプチューンストロベリー、好きな人との真実の相性が分かる真珠の林檎など、夢のような木の実を沢山生み出すことが出来る。
 セフィロトの木を通して見えた心の世界は豊かであり、セフィロトの木の魔術を通して、人間の心の世界は確かに存在するし、心の世界はみな生きた人の思いで出来ていることが分かる。人間の心の世界は魔術的な手法を使えば、意識的に変わるし、セフィロトの木の世界樹は人間の死に際の残酷な物語を与えてくれる、人間の心の世界にとって、重要なものであることが分かる。世界樹の旅は死に際の数十秒に最後に口にした木の実の世界樹の中を心の中で、通っていくことによって、死にゆく時の心の世界を作って与えてくれる大切なものであり、そうした人間の心の世界と密接に関わる魔術がカバラのセフィロトの木なのである。生前のカバラは楽しく、死に際にはそれが反転して、7つの大罪の地獄の逆さ言葉になりいけにえの地獄心理へと変わる怖いものでもある。地獄心理というと、巨人と小人の阿弥陀如来の罪業が、全身をお経で繰り返し守る、地球の明鏡止水で出るし、電撃の攻撃のお経を沢山使うと出る、薬師如来の罪業は、日頃自分に言葉をかけている百人が人形遣いに見え、自分は操り人形になったように思える土星タイプの心の地獄で、そうしたお経の罪業の世界での惑星の干支の心の苦しみは、死に際さらに苛烈になる。
 セフィロトの木を紙に描くことは、絵を描く感覚で、芸術に触れる意識の魔術である。
 セフィロトの木に色を塗ったり、パスの名前を慎重に記号や英語で間違わずに入れていったりと、実際に手を動かして書きながら、心の世界でも描いていく行為は、まさに現実と心の世界を繋げてリンクさせていく感覚のある魔術であり、絵を描くことで、心の世界で鮮やかな物語を持った美味しい果実を味わうことができる印象的な体験であり、人生において、生きている間、セフィロトの木はやって損しない、描画である。セフィロトの木は特別な絵であり、描く価値があると思う。
 セフィロトの木の果実は、虫食いやすく、カバラの虫は時に地獄のような体験をさせるが、虫たちもまた個性があってユニークな存在である。彼らと会うのもまた人生だし、自分が虫になってしまった時は果実の種の中に精液を放てば、奇跡が起きて、また新たな世界樹がこの世に育つことになる。果実の食べ過ぎて蜜袋になるのも、砂糖袋になるのも、太ったバナナ穴に詰まるのも、奇妙な体験だけれども、セフィロトの木はやって損しない、壮大な美味しい夢を与えてくれる。
 セフィロトの果実は、混ぜ合わせると賢者の石にもなる。太陽の王様ドリアンと月の女王ライチで赤の石が出来る。マドンナリリーの青いソーダ―の青の石や、オリーブオイルのバター肉の緑の石、月の白い石など、賢者の石にもそれぞれの味わいと意図があり、美しい世界だ。
 そんな話しを美夢と龍多は、羽生の水族館で、食欲旺盛な池の魚たちに餌をやりながら話していた。美夢のカバラ体験は面白いのだけれども、池の巨大な錦鯉や、獰猛なテラピアたちに餌を放りながら、食べる魔術であるカバラのセフィロトの木の話を聞くのは龍多にとって面白かった。バクバクと池の魚が餌に群がるのを見ながら、龍多は美夢の話しに出てくる果物を片っ端から食べたいと思う、よだれが出そうだった。
「この魚大きいね。」
「錦鯉のかなり大きな子ね。」
「さっきのテラピアの池のやつらは僕まで食べたがって怖かったけど、こっちの鯉たちも負けず劣らず飢えていて、がっついてきて楽しいな。」
「餌を投げた片っ端から食べていくのが面白いわよね。」
「僕もそのカバラのセフィロトの実ってやつを食べてみたいよ。さっそくフルーツをスーパーで買ってきてこの魚たちみたくバクバク食べたい気分だよ。」
「バナナフィッシュみたいね。あなたは何の実が食べたいの?」
「南国の果物が特に美味しそうだったな。ドリアン、ライチ、マンゴスチン、ナツメヤシ、あとは不老不死のアムリタの出るすももとか、シャガールの描いたライム。銀の船のメロンパンとか、みんな夢があるよね。パイナップルとスイカもマンゴーも、釈迦頭も美味しそうだな。」
「その不老不死のアムリタ料理のレシピであるのよね。メロン、いちごの果汁、黒みつ、はちみつ、アガベシロップ、デルモンテのトマトジュース、モッツァレラチーズ、おいしい牛乳、フィリピンバナナ、グレナデンシロップ、からざを取った卵の卵白。バナナを潰してシェイクを作って、みつ系を入れて、ネクターなどの残り材料を入れて煮込んで、出来たらバナナなどをこして、シェイカーに入れて振って飲むの。残ったバナナは最後に食べると美味しいわ。アムリタのレシピはそんな感じ。」美夢は言った。
「美味しそうだね。」
 二人は池の鯉に向かって、また有料の餌カップの中の餌を手に取ると、池の魚の口に向かって投げた。すかさずパクパク口を蠢かす黒い鯉のひげのある口の中に餌は吸い込まれていった。
「南国のフルーツには、七つの大罪が象徴されているのよ。ライチ女王になって誘惑するライチが色欲の大罪みたいに、その木の実を食べて現れる心の物語がそれぞれ七つの大罪にあたっているのよ。ライチの実はナツメヤシのパチュンの種で受精しないと満足しないから、エロティックな色欲のイメージがあるの。」美夢が言った。
「ドリアンなんてめったに食べられないけれども、ドリアンは?」龍多は尋ねる。
「ドリアンは食べるとゴーレムになって大切なものを全て破壊してしまうから危険よ。でも王様に。ドリアンは三十種類くらいあって、エジプトのパスならエジプトのゴーレムのドリアンも出るわ。」
「ふーん。ドリアン怖いんだね。」
「木の実作りは重い大罪になることもあるから作る実は注意深く選ばないといけないの。」
「そううえば美夢はドリアンをセフィロトの木で作ったの?」
「いいえ私はドリアンもライチもナツメヤシも罪業となる七つの大罪が怖くてやらなかったわ。アルゴー船の夜空に輝くセフィロトの実だれども、カノープスのメロンの実みたいに、現実世界では手をいくら伸ばしても届かないそんな禁断の果実もあるの。南国のフルーツで私が唯一やったのはマンゴスチンよ。マンゴスチンが好きなの。小説家の死に際の実だから。」美夢が言う。
「死に際の実って、死ぬ前の走馬灯の悪夢みたいなやつかな?」龍多が尋ねた。
 美夢は最後の餌を錦鯉の赤い魚に投げた。目当ての鯉が餌の争奪戦に勝って、美夢から餌をもらって食べた。池の淀んだ緑色の中、鯉たちは艶めかしく美しく鱗を滑らせてふくふくとしていた。
「マンゴスチンは、死に際の楽園が見える実で、花を咲かせることが出来る実なの。ドリアンのゴーレムが荒れた時には、マンゴスチンを作るとマンゴスチン女王が止めてくれるから、ドリアンにはマンゴスチンが必要になるのよ。」
「死に際の夢がマンゴスチンで見れるの?」
「白のマンゴスチンは食べると死に際の幸せな物語が与えられる。好きな人と一緒にいられる物語。青のマンゴスチンは、青空の夢、緑のマンゴスチンならスーホーの白い馬みたいな草原が見られる。マンゴスチンは色彩によって与えてくれる物語が違うの。あと、マンゴスチンは物語を書くインクになるから。小説家が愛する実なのよ。」
「それはいいね。自分が書いた小説の、反転した怖い死に際の裏読みが集まるのかな。」
 龍多も水族館の庭での餌やりをとても楽しいんだ。食欲旺盛。」
「今度、たっぷりフルーツを入れたフルーツポンチでも作りましょうか。スイカを丸ごと使って、マドンナリリーの青の三ツ矢サイダーを注いだ。」
「賛成! さっそく食べたいよ。」
 龍多と美夢は、たくさん食べる鯉たちの群れ泳ぐ池を見つめて、自分たちもお腹いっぱい食べた気になっていた。

「日本酒とチーズ」

 野球はクールでタフな男の世界だけれども野球選手にだって日常があり、たまの休日や夜寝る前の時間には、好きな女の人とメールだってする。プライベートの時間には、龍多は彼女の美夢と繋がっていたいのだ。
 美夢とメールする時の龍多はつい甘えてしまう。美夢の側では母性本能を刺激されて、かわいいとか守ってあげたいと思うけれども龍多のキャラクターや性格には幼いやんちゃな子どもみたいなかわいらしさが実はあって、三十歳を過ぎてグラウンドを全力疾走している野球選手の龍多だけれども、タフガイに見えた甘えられる相手には甘えたい寂しがりやなところがある人間なのだ。
「美夢、元気。」
「元気だよ、今会社から帰ったところ。これから料理作るの。」
「何作るの。」
「レンコンと大根の煮物よ。桜色のスープで、漬物みたいな味で、桜大根みたいな見た目。ローリエとアガベシロップとモンスターエナジーとローズマリーとグレナデンシロップを入れた白ワインでレンコンと大根を煮込むの。モンスターエナジーは高麗人参が入っているものを選ぶのよ。」
「甘い煮物なのかな。」
「そう、会社で人間関係に疲れちゃったから甘いもので人間関係に疲れちゃったから甘いもので気分をリセットしたいのよ。」
「今日疲れた?」
「けっこうしんどかった。割とぎりぎり職場の同僚が色目を使ってきてストレスフル。」
「僕が美夢を守るよ。安心してね。」
「ありがとう癒されるわ。」
 そんなラインメッセージを夜になると龍多と美夢は交わした。その週の週末は、美夢と龍多で日本語の美味しい日本料理店に飲みに行った。
 研ぎ澄まされた味覚を総動員しないと、日本酒の利き酒は難しいと思っていた。舌先のかすかな震えと痺れ。花のような甘さと、辛口のお酒。大吟醸の旨味。信じられない程澄み切った液体が美味しく、目の覚めるようを感動を味わう。清水のようでいて、人の手が作った芸術がこの一杯の盃には宿っていて、その水面は張り詰めていて、やはり研ぎ澄まされた感覚なしには、聞き取れない繊細なニュアンスがある。
「これはまた美味しいお酒ですね。世界にまた二つとない代物なんじゃないでしょうか?」
「ねぇ、酔ってるでしょう? かわいいんだから。ウフフ。」美夢も酔っている。
「この黒龍というお酒は、甘いが華やかで透明な清流の岩清水みたいで、頭の中にこんこんと沸いてくる清らかな泉の迸りが浮かんでくるよ。なめらかな水の味わいがこんなに感動的に舌に美味しいなんて信じられない。僕は料理酒の菊正宗と月桂冠とかが好きだけれども、なんかこのお酒は特別な感じがする。」
「私の方の獺祭も良いわよ。大吟醸って美味しいのね。お米の甘いを最大減引き出してこんな芸術的な一杯に仕上げていて。獺祭ってカワウソの祭りと書くわよ。お魚の料理に合わせてといいのかしら。この白身のお刺身が生きる感じがするわ。」
「こっちのきゅうりに味噌を塗って食べるのも美味しい。上質な味噌だよ。」龍多が食べるの。
「きゅうりと味噌に日本酒というのもお酒落ね。味噌の味をじっくり味わい吟味できるから。」
「味噌って、発酵食品だよね。チーズみたいに。」龍多が首をかしげながら尋ねた。
「カビで発酵させるチーズと酵母菌で発酵させる味噌では、発酵の種類はあるけれども、同じ発酵食品ではあるわね。」
「僕ね。チーズが昔から好きなんで。」龍多は美夢の目を黒目をとろんとさせて見つめた。
「チーズ? どんな感じのチーズが好きなの? 赤ワインに合うチェダーチーズとか?」
 美夢も酔ってやはり目をとろんとさせている。
「蘇なんだ。僕は古代チーズの蘇が好きで、宮廷チーズの蘇の味を追い求めて長いんだ。」
「美夢は頬を赤くして笑顔になった。
「面白いわね。蘇って、バターみたいなチーズよね。蘇って、バターみたいなチーズよね。たしか。醍醐味だよ。あのね。チーズの蘇は、実はバターやマーガリンを混ぜ込んだ、ショートブレットに近い味だと思うんだ。」
「ショートブレッオってカロリーメイトのチーズ味や、ソイジョイみたいなお菓子よね?」
美夢が意外そうにする。
「そう。実は古代チーズ味の蘇は、カロリーメイトのチーズ味みたいにイメージなんだ。僕の中では。で、実際にお鍋で蘇を作るんだよ。長い時間煮込んで。」龍多は目をきらきらさせて美夢に力説する。
「大変そうだけれどもロマンがあって楽しそうね。カロリーメイト、もしかして好き?」
 美夢はちょっといたずらっぽく聞いた。
「好きだよ! 大学時代に頑張って活躍して、ドラフト会議で選ばれて入団してファームの二軍で野球に明け暮れるまで、お昼はずっとカロリーメイトかソイジョイでお金を節約していたよ。でもカロリーメイトは蘇だからいいんだ。」龍多は思い出を語る
「まぁ、食べざかりなのに大変。朝ごはんと夜ごはんはちゃんと食べた?」
「もちろんだよ。じゃないとへろへろになるよ。野球の試合本番の日は仲間とごはん行ったけれども。大学の近くの中華とかマクドナルドとか。」
「かわいいエピソードであなたのそういうところ好きよ。」
「あのね。宮廷料理のチーズは、必ず薬料理の白のチーズのバターと毒料理の黒のカビのチーズのチーズを混ぜて宮廷料理のチーズの宝玉輪にするんだ。そういうおまじないも読み解いて古代チーズの蘇を生み出すのがロマンなんだ。だからチーズが好き!」龍多は熱く語る。
 美夢は日本酒の獺祭のグラスをちびりと飲むと、隣の八海山のグラスを手に取る、考え深げに飲み比べた。美夢的には獺祭や黒龍の味が美味しく好きだったが、八海山にはどこか親しみやすい懐かしいような味がした。
「あなた今日酔ってて言っていることのテンションおかしいわよ?」
「でも、美夢に言われたくはないよ? いつも君そんなこと言うもの。」
「チーズなら、冷凍庫で凍らせた作るマジカルミルキーとチーズのお菓子があるわよ。私はチーズ丸シリーズと呼んでいるけれども。」美夢はまつげをふせて八海山の味にうっとりとしながら言った。
「チーズを凍らせて作るお菓子? 気になる。 どんなのかな?」龍多も八海山を口にした。
「そうね。チーズケーキアイスみたいな感じの味になるわね。パルムのアイスみたいな。チーズは凍らせてイメージを作れるものなの。そこから思いついたお料理よ。モッツァレラチーズにすりりんごと黒蜜を混ぜて、その記事で粒あんに黒蜜を混ぜた餡をひと匙分包んで、ラップで丸くしてくるくると縛って、輪ゴムで止めるの。冷蔵庫に入れて凍らせて食べるアイスなのだけれども、美味しいわよ。数時間で出来て、十個くらいその日のうちに食べちゃうわよ。」美夢は頬杖えをついて思い出しながら言う。
「美味しそう。今度作って!」
「いいわよ。そのりんごチーズ丸がベースで仲間にあんずジャムのチーズ丸、メロンチーズ丸があるの。カッテージチーズやクリームチーズやモッツァレラチーズを使うわ。」
「全部やわらかいチーズなんだね。チーズなんだね。チーズには本当に目がないんだ。嬉しいな。」龍多は目立ちは、優しそうな目も含めてお酒でちょっと赤らんでいた。
「チーズを心の中で凍らせて使うと、色々なイメージの絵が描けるの。その技から思いついた宮廷料理のチーズ料理が、そのりんごチーズ丸なのよ。心の世界のチーズはふじ林檎と黒蜜ととても相性が良くて、チーズの絵を描く人が凍って砕け散らないように守ってくれるものが、林檎と果実を使ったチーズ料理なのよ。」美夢は龍多って結構格好良い顔だわねと思いながら話していた。
「へぇ、食べてみたい。」
 
龍多と美夢は、日本酒の飲み比べて、かなり酔っ払いながら、ここのお料理屋は高いなと思っていた。夜は更けていき、心地良い酔いが2人の気持ちを日頃の疲れから開放していった。夜風が酔って熱い頬に気持ち良かった。二人は帰り道に甘い口づけをしてから抱き合った。星々は龍多と美夢に微笑んでいた。スピカ、ポラリス、デネブ、アルタイル、カストル、ポルックス、ラス・アルハゲ、アケルナル・ラーン、カノープス、アスピディスケ。明鏡止水の星たちが夜空から降り注ぐ。甘やかな夜だった。
「ラブホだけど行く?」龍多が誘った。
「うん、行く。」美夢が甘えた声で応えた。
 日本酒を飲んだ店のビルから、十分程歩いたところにあるラブホテルは、入ってみるとまだ部屋に空室があり、パネルが点灯して、カジュアルだが清楚感のある部屋が見えた。パネルのボタンを押すと、窓口のおばさんが鍵を渡してくれて、黄緑色のプラスチックキューブのタグが付いた鍵を龍多は受け取った。モザイクタイルで装飾されたラブホテルのエントランスは一種独特の美しさのある空間になっており、小さなエレベーターで部屋に上がっていくと、それなりに整った居心地の良い空間とインテリアが用意されていた。アントニガウディのグエル公園がモチーフのラブホテルの部屋は、繊細なモザイクタイルの微妙な色合いの色彩の壁が個性的で、美夢も別にこの部屋ならいかがわしくなくていいじゃないと思った。ちょっと角が鋭くて危ない家具の鋭角は気になるけれども、黒い木で統一されたイスやテーブルは頭を角にぶつけさえしなければ大丈夫だとは思う。龍多はそう思いつつ、レインボーバスなどの風呂などをそわそわと覗いて、ようやく美夢の待っているソファーに座って。美夢と龍多はしばらくキスをしてから、持ち込んだペットボトルとおつまみをテーブルの上に並べてバスルームにお湯を張りに行って。美夢の目から見て、二人で一緒に入れるバスルームの広さだったので、龍多を誘って、二人で風呂に入ることにした。龍多が美夢の体を抱き寄せてまさぐって、背中のブラジャーのホックを外した。二人で服を脱がせながら、龍多が美夢の下着は高価なシルク製の上質のものであることに気付く。すべらかなシルクの下着は薄桃色で美夢のなめらかなお尻を龍多の手から隠していた。龍多は遠慮なく脱がした。脱がしてそのお尻を、すべすべとなでまわす。
 龍多と美夢がすっかり全裸になると、抱き合ってまた探るように口付けをする。龍多が美夢の水晶のような瞳を見つめ、唇の感触を味わうと、そのまま二人でバスルームに入り、身体を洗い流した。美夢の両方の白いたわわな乳房は、龍多の手に触れるとひきしまって、乳首の鋭敏ところが感じて赤い二つの吸い口のようになって美味しそうに見えた。龍多が美夢の胸をもみしだくと水っぽくぷるぷると弾んでその感触が気持ち良かった。
 二人で一緒にバスタブに浸かると、レインボーバスの光が二人の体を色彩で照らして、水色が青色の光、黄色の光、赤色の光、白色の光に微妙に変化していく様子はきれいだった。湯の中の美夢の肌の色が赤や緑や青に変化していく様子もきれいだった。二人が湯の中でたっぷりとたわむれた後、交互に洗い場で髪と身体を洗い、泡を洗い流した。タオルで身体を洗い、泡を洗い流した。タオルで身体をふいて、キングサイズのベットに行く。
 龍多は美夢をベットの上に押し倒して。龍多の分厚い胸板と筋肉質の固い引き締まった腹筋の下のペニスは美夢を求めて大きい勃起していた。龍多のペニスはそそり立った、美夢の白く輝く滑らかな肌に押し当てられていた。美夢は龍多の熱い唇をむさぼって、ピンク色の甘やかな舌をさし入れて、龍多がその舌の動きに応えて吸った。龍多は美夢のたわわで豊かな乳房にむしゃぶりつくと、その乳首の先端を舌でねぶってまさぐった。
 龍多が美夢の腰をがっちりとホールドして腰を振って繰り返し突くと、四つん這いになって美夢はあえいで、高い声で鳴いた。美夢のメロンの実のような乳房がぷるぷると揺れた、龍多がしっかりと掴んでいる美夢のやわらかな玉のような尻も、龍多のピストン運動に合わせてリズミカルにせん動した。美夢のあんあんと鳴く甘く声を聞いて龍多は興奮てペニスのみなぎりを高めていった。
 美夢のヴァギナの温かな泉の中で龍多が射精すると、脈打っていた龍多のペニスも固さをやわらげて、美夢の中から出てきた。セックスが終わった後の龍多の髪を美夢はいとおしげになでて、
「とても良かったわよ。」
 と言ってひたいに口づけして。龍多は柔らかい美夢の体をまたぎゅっと抱きしめると、
「離さないよ美夢」
 と言って、もう一度優しい口づけをした。熱い夜は冷めやらず続いていった。
 「美夢が僕の運命の人なんだね。他の男のものではなく、君は僕のものだよ。」
 龍多が、強引に美夢を押し倒し、みなぎった固いペニスをヴァギナの中に入れた。美夢のおまんこは限界まで、濡れて、愛液でぬるぬるとして熱く、龍多がペニスを入れると、柔軟にペニスを温かく包み込み、龍多のペニスを奥まで飲み込んで、子宮口を押し広げて痙攣しながらエクスタシーで絶頂した。美夢の夢のように透き通る儚げな美女の白雪の美貌を龍多は、湿った汗のほてりを意識しながら、龍多の固い鍛え抜かれた筋肉で束縛して、体重の重みを与えた。龍多が美夢の中で強引にペニスを出し入れしていると、美夢がきゃんきゃんと喘ぎはじめた。龍多の大きな手が、美夢の関節の骨をまさぐり、骨をあたりをなぞり、背骨の溝をなぞった。龍多が果てた時、美夢はひくひくと身体全体を脈打たせていた。

「シャガール」

一日、二日、三日、四日、五日、六日、七日、一心不乱に命の限り野球に明け暮れる。
 優しい風が龍多に触れていく。野球は風になって走り、さっそうと羽ばたいて、風を切って投げる。
カーブ、ストレート、スクリュー、スライダー。コウライウグイスみたいにこの青空を自由に羽ばたいていく。空になって晴れて澄む勝利の日も、雨が降って悲しむ負けの日も、野球は空だ。野球という空間にいることが嬉しい。野球は見ているだけでも気分が楽しく、生きた時間が充実している。勝つと飛び上がる程に嬉しく気持ちが良い。
 配球はまずストレート。次の球種はスライダー。上にふわりとカーブを描くスクリュー。
 野球の美しさは、ボールの白の美しさや、シンプルなユニフォームの色彩とグラウンドと草地の緑の対比のくっきりとした美しさだ。その世界の中で選手が全力で活躍していく。野球のフィールドでは人間が生き生きとして、一人一人の何気ない仕草や表情が意図を持って生きてくる。一瞬の静寂の後に勝負を挑んで投げる。三十六歳で全力疾走し、みなぎる闘気が全身を覆い、入魂の一球を投げる。無事キャッチャーミットに球が収まれば、また次がある。試合に勝てれば喜びがじわじわと沸き上がり、心が明るくなる。バッターが滑り込みで一塁に手を伸ばしてアウトになり、滑り込んで土に塗れて盗塁する。土を蹴ってグラウンドを踏みしめた、振りかぶって投げる。泥だらけのユニフォームで8回の裏の得点にドキドキする。龍多の日にはそんな集積で出来ている。
 その週は龍多はとある選手からプライベートの悩みを打ち明けられた。龍多とその選手とはレグルスとデネボラのように近くにいて、似ているやつだった。奥さんがお産で一週間苦しんで、やっと産まれたと思ったら死産、新しい命は生まれるとすぐに苦しみの世界に行ってしまい。生きた赤子に会えなくて死んで地獄に行こうと思ったとその仲間の選手は龍多に話した。産めなかった奥さんを思うと、聞いた龍多も心が苦しかった。死んだ赤子のちっぽけなちんちんを見て、その選手はこの子を大人になるまで育ててあげたかったと泣いたらしい。生まれてこない苦しみは、子どもを産むお祝いの影にひっそりとやはりあって、その悲しみはまさに地獄だったのだ。
龍多と美夢は、老舗のホテルの高級ギャラリーでシャガールの展示を前に一緒に見た事があり。その展示がとても良かったため、遠方の美術館でやっているダフニスとクロエがテーマのシャガール展を見に行くことにした。龍多が運転し、美夢が助手席に乗って、スマホのプレイリストからチルアウトを流しながら美術館へと向かった。
  以前に見たホテルのギャラリーでのシャガール展では、小さいけれども重厚なシャガールの絵画作品が、珠玉の名品揃いで彩り豊かに並んでいて、その画面から匂い立つ夢幻と、色彩に溢れた心地よい画面が目にじわりと広がった。シャガール作品の空気感は青の透明な夜の風と、赤の生きる喜びの花が対比され生き生きと画面に満ちている。
 そんな以前の展示を車内で語りつつ思い出しながら、龍多の車は、白く平べったい、光が多く差し込む地方土地の美術館に到着した。
「ねぇ、私は昔ドイツ語の勉強を大学でしていたのだけれども、大学にドイツ語名のサークルが二つだけあったの。文芸部のレーゼンツァイヘン(栞の意味)と美術部のアッフェルシュトゥルーデル(りんごうずまき)というサークルで、ドイツ語学科の人たちがメインで作ったサークルだった。私はそこに掛け持ちで所属していたの。」美夢が語り出す。
「へぇ、文芸部と美術部に掛け持ちしていたんだ。アッフェルシュトゥルーデルって、ドイツのケーキみたいなお菓子だよね。美術部の名前のセンス面白いね。」龍多は相槌を打った。
「アッフェルシュトゥルーデルは、その美術部に昔いた部長が、カバラのセフィロトの木の木の実を描く人で、ぐるぐるうずまきのりんごの実とか、無限同心円の目が回るようなバナナとか、白黒の刺激的フルーツの絵をずっと描いていて、それが美術部の展示のメインだったの。それで美術部の展示のメインだったの。それで代表作のりんごうずまきでアッフェルシュトゥルーデルと名付けたらしいわ。」美夢は説明する。
「栞という文芸部はかっこいいしよく似合っているね。文芸部のレーゼンツァイヘンはどんなサークルだったの?」龍多は尋ねる。
「そうね。私が入部したきっかけは、文芸部の冊子に先輩が書いていた短編で、人間の脳のザイラスとズルカスという脳みそのうねうねに神話を書く神話作家の話しで、秘密結社に入っている神話作家集団が人々を操り人形にする神話を人間の脳みそに書いている。という物語を読んだからなの。神話作家というのは十年間原稿用紙で護符を温めて、6回推敲して原稿用紙に繰り返し物語を書き直しては護符を打ち、小説は発表されないけれども、その護符が神話として世の中に出るのよね。最短で、締め切りに間に合わせて最低限の推敲で世に出す小説ももちろん多いけれども、発表せずに推敲して温める作品が1つくらい手元にあってもいいじゃない。とても魅力的な設定で、神話作家の秘密結社名のレーゼンツァイヘンが部活の名前だから、このサークルも神秘的な神話作家集団かなと期待して入部したのよ。」美夢は答えた。
「えへへ。それって洗脳みたい。入部してみてどうだった。」
「いや、みんな案外まともで、純文学ばかり読む人たちだった。作風も真面目に文学していたわ。洗脳魔みたいに、概念と概念を交換する。コンピューターエンジニアタイプの人たちではなく、文学徒集団だった。」
「そうなんだ、面白いね。」龍多は美夢の学生時代の話が聞けて楽しかった。
「私がその文芸部と美術部にいた時代に感じたのは、物語には必ず色鮮やかな視覚想起力の心の絵があるし、絵画作品には必ずストーリーや物語のような思いの固まり、言葉が宿っていると感じていたの。シャガールの絵を見ていると、そうした小説が絵であり、絵が小説であることに悩み向き合った学生時代を思い出すわ。だって、シャガールの絵にはやっぱり物語があるもの。」美夢は言って。
「確かにシャガールの絵を見ていると、夢を見ているみたいで、その夢が動き出すような気分になるね。夢の物語が目の前で生きているみたいだ。」龍多も思い出しながら話す。
「私も大学時代に美術部のアッフェルシュトゥルーデルで絵を描く時に、心の中の夢を描こうとした事がある。夜の夢を見る前の暗闇にリアルに思い描いた夢想の世界はいつも心の真実で、そのイメージを絵にしたくなってくる。」
「美夢はどんな絵を描いたの?」龍多が問う。
「そうね。夜に夢を見る前のまぶたを閉じた奥にある砂嵐の世界に、緑色の生命力の浮遊する原型が漂っていて、そのグリーンの浮遊する原型が漂っていて、そのグリーンの点描が発光しながら、黄緑色の三日月藻のような切れ目になっていくような、心象イメージの抽象画を描いたわ。部屋を作って、壁面全体を点描で埋めて、心の宇宙空間を描いた。」美夢は答える。
「シャガールの夢想とはちょっと違って、具象ではなく抽象絵画なんだね。でも奥深いところではそういう心の小宇宙がないと、シャガールのような夢のような夢のような絵は描けないなと思うよ。シャガールは具体的な人とかを描くけれども、デフォルメをしていてその形がユニークなんだ。でシャガールの絵は誰が見てもシャガールだと分かる。」
「そうね。シャガールは心の中でモチーフを自分なりに変換して描くことが出来た心で捉えた再解釈して形を描くことが出来て、それを色や形にすることが上手かったのだと思う。子どもの絵とは違うけれども、子どものように素直に。」
「そうだね。デフォルメは子どもがとても得意としているね。天才的に。シャガールの絵はリアルでほないけれども、絶対にこうだという
表現力があるから、確信を持って色と形にしてある。だから見ていてシャガールの夢の中に見る人が飛び込んでいくんだ。」龍多はうなずいた。
「そうね。夢というのは、主観で見ていて、現実ではない脳内の世界だから、シャガールもまた絵を通して、現実ではない脳内の世界を見せてくれたのかもしれないわね。」
 龍多と美夢はチケットを買って、ダフニスとクロエの展覧会場に入った。チケットを見せる時に龍多はふと思いついて美夢に聞いてみた。
「そういえば美夢は一番好きな画家は誰なの? 美術部で絵を描いていたなら、憧れの画家がいるんじゃないの?」
 美夢は少し考えて一番を厳選しているようだった。
「そうね。一番はドイツのカスパル・ダーヴィト・フリードリヒかな。フリードリヒの描く夕焼けが好きでね。その日の光は希望に見えて、永遠を思わすの。黄昏時の太陽も、夜空の月も、目で見える永遠だなと思うのよね。それをフリードリヒの絵は伝えてくれる。月っていうものはほとんど永遠に存在するものだから。」
「永遠の太陽と永遠の月か。いいね。やっぱりドイツの画家が好きなんだね。そういえば今回の展示のシャガールってどこの国だっけ?」龍多が尋ねる。
「シャガールはロシア出身のフランスの画家よ。ユダヤ人だからナチスによってアメリカに亡命した時代もあるの。」美夢は答えた。
「第二次世界大戦のナチスドイスだね。ドイツは戦争の時代があった。アウシュビッツなどで負の歴史も背負っている孤独な木なんだ。」
「フリードリヒの作品『孤独な木』はオークの木と言われ、ドイツの国そのものを象徴しているのよね。」
「シャガールがユダヤ人。ユダヤ教ならカバラだね。カバラのセフィロトの木とかの。」
「うん。リトグラフの絵の人物が手に持っているライムのようね果実はもしかしたらセフィロトの実のカバラのフルーツかもね。」美夢が言う。
「ライムってすだちみたいなグリーンの実だよね。シャガールのダフニスとクロエの展示に出てくるかな。」龍多がきく。
「どこかに愛の象徴の酒まんじゅうの実りとして、すだちっぽいライムが出てくると思うわよ。」
 白く光に溢れた展覧会場には、シャガールのリトグラフの版画作品が、ダフニスとクロエの物語の順に沿って充実して展示されていた。二十色で刷られたと言われる色鮮やかで色彩豊かな絵画作品は、美夢と龍多の目を喜ばせた。古代ギリシャを舞台にしたダフニスとクロエの牧歌的な恋愛物語は純粋で、恋に効く薬であると言われた、裸で一緒に寝るという意味がわからないような、純真なダフニスとクロエが描かれる。幸せに暮らしていたダフニスとクロエだったが、クロエが海賊に誘惑されて二人は引き裂かれてしまう。最後はハッピーエンドだが、艱難辛苦の末、愛を円熟させた成長した二人の男女の姿が描かれる。
「この二人の愛の成就は美しいわね。」
「この愛し合う二人の上を浮遊している緑色の神様みたいなのは誰かな。」
「そうね。人間っていうのは、好きな人の中に、また別の大切な人がいて、心の世界では誰かひとりの目を通して、全世界が一緒に自分を見ていて神様も自分を愛してくれている。みたいな体験があるわね。」美夢が言って。
「人の目を通じて神様が見てるの?」
「そんな感じ。大きな龍が全てを見通しているみたいに。」
「緑の色の天国に二人が浮遊しているけれども、シャガールの絵って、みんな空に舞い上がっちゃうよね。嬉しいのかな。」龍多が言う。
「そうね。色とりどりの花が咲き乱れる緑色の天国には、確かに幸福な二人の愛の理想郷があるように見えるわね。きっと嬉しいのね。ライム色の美しい夢のようだわ。」
「ダフニスとクロエって本当に愛の物語だなぁ。」
 シャガールの版画の鮮やかな色彩は、空気の手触りあるような軽やかなタッチで、濃密な愛の世界を見るものに伝えてくれる。龍多と美夢は、ダフニスとクロエを見ながら、自分たちの心の世界での恋愛について考えた。彼らに自分たちの恋を投影すると、愛の実りが愛おしく思えてくるのだ。グリーンのライムの実りのように、龍多と美夢の愛も永久に続くかのような幻が見えた。

「ハーブ園」

 野球だけにある楽しみがあると龍多は思う。野球に使う道具の整理もそのうちの一つだ。
 若手の頃から使っている龍多の朱色のグラブは、中にふわふわのついた皮グローブで、皮のクロスでぬい止められ、バナナのふさのようにずっしりとしている。龍多は投手なので、よくボールを握る角度を考え球を見つめている時間がある。野球は頭を使うゲームだ。手のひらの中のボールの皮の光沢ある質感と赤い糸のぬい目は植物的にUカーブを描く。白いボールはつややかで握ると皮の感触がする。ちょうど手のひらの中に収まる球の感触は長年なじんだものだ。龍多は目を閉じて優勝旗の金刺繍を夢見る。優勝トロフィーの輝きを夢見る。優勝トロフィーの輝きを夢見て日々走っていく。大物選手の多いスター軍団である一軍に比べ、ファームにはそれほどの資金力はない。ただ、ファーム戦はかなり熱い。
輝きのある白いユニフォーム。スパイクの靴。アクセントの効いたチームロゴ。背番号の22番が日差しに光って輝いている。
 実は木製のバットに球の当たるカキンといういう音も好きだったりする。バッターはバットを日本刀に見立てて、ピッチャーを真剣で切るようにして居合いのようにバッティングをしている。キャッチャーマスクは剣道の面のようなデザインだし、バットは日本刀だと思っている。龍多のつやのあるスパイクは履きなれて、共に走り抜けた練習の日々を語ってすり減っている。個性ありの色合いの朱のグローブはいつだって相棒だ。
 末広がりの香水の香りは馨香味触法であり、楽園の香りがするという。女性を美しく見せる香りはトップノート、ミドルノート、ラストノートと調香を見ていくと、植物由来のアロマテラピーに基づいて、錬金術のように調香されて生み出されており、一つ一つの香水が、錬金術の賢者の石のような香りの芸術作品になっている。北斗七星の星の輝きを思わせるグレープフルーツホワイトとローズゼラニウムとクラリセージに、真珠の組み合わせのユーカリグロブルスとレモングラスの気持ちの良い香りのハーモニー。そんな香りの芸術に魅せられて、美夢は誕生日祝いにハーブ園に、龍多の車で連れてきてもらった。龍多のブルーシルバーの車体は、青空の下、高速道路をひた走った。
「こんな天気の良い春の日に、ハーブ園に来られるのは幸せだわ。ありがとう。」美夢はベルガモットとヒメノカリスとサンダルウッドの香水を、赤青緑の三色の賢者の石の輝きを合わせた月の光のように身にまとっていた。美夢はちょうど使い切ってしまった薔薇の精油もハーブ園で見つけようと思っていた。
「どういたしまして。ハーブ料理が楽しみだよ。」龍多はにこにことした。
「エッセンシャルオイルの蒸留も見られるみたいで楽しみ。」
 ハーブ園に到着すると、まず2人はお昼時を過ぎていたので、レストランへと向かった。その日のランチタイムのメインディッシュはラム肉で、赤と黄のベリートマトとローズマリー、アップルミント、レーズンで煮込まれたラム肉は、その後にんにくとはちみつと黒みつで味付けされてバターソテーされていた。ガーリックのラムソテーされていた。ガーリックのラムソテーがメインで、焼き立てのハーブパンとポタージュスープが付いていた。
「うわぁ、美味しい!」
「このラム肉柔らかいわね。」
 レストランは、明るく大きな窓からは、ハーブ園の庭の緑が見渡せた。磨き上げられた木の床には光が弾け、温もりのある木のテーブルの上には、硝子の小瓶に、ラベンダーのポプリが飾られていた。
「このパン、パリッとしていた良い香りね。素晴らしい誕生日だわ。
「お誕生日おめでとう。美夢。そういえば誕生日プレゼントがあるんだ。」
 龍多はごそごそとかばんを探って、プレゼントを取り出した。出雲の勾玉のネックレスだった。瑪瑙の艶のある石の勾玉は、こじんまりとして、ナチュラルに身に付けられる。赤い石のお守りのようなデザインだった。
「美夢が前に東京スカイツリーで見ていて気に入っていた出雲の勾玉だよ! お誕生日おめでとう!」
「どうもありがとう、嬉しいわ。」
 美夢は勾玉を身に着けた。彼女はこの勾玉でどんな干支を組むか迷っていたが、八十八星座の干支の勾玉でいいかなと思った。太陽と月の勾玉。
「美夢が前にその勾玉屋を見た時に、勾玉と鏡と剣の話しをしていたから。印象に残っていたんだよ。」
 美夢は赤の勾玉の瑪瑙の石の色の色彩を光に透かして見ていた。美しい。赤の裏側に明鏡止水の青の水の色が透けて見える。
「たしかその時に話したのは、十種神宝と三種の神器の話ね。」
「そうそう、三種の神器。勾玉は八尺瓊勾玉で、鏡が八咫鏡。剣が天叢雲剣。その深紅の赤瑪瑙。やっぱり美夢のイメージにぴったりだよ。」
「ありがとう。嬉しい。」
 美夢はにっこりと微笑んで龍多にお礼を言った。美夢のアイシャドウはうっすらと花が咲いたようなローズピンクで、口紅のミステリアスなつややかなバラ色と調和していた。彼女の肌は雪のように白くて、春の季節の雪女のように儚げに見えた。そのまま光の中に溶けていくように、彼女の美しさはハーブ園の陽光に滲んだ。
「三種の神器は心の世界で干支を組んで種類と性質を変える事が出来るの。だから、こうした勾玉などを手に入れたら、干支を組まないといけないの。身近な鏡や包丁にもみんな干支があるけれども。」
「そうなんだな。三種の神器は、十種神宝から作るって前に言っていたっけ?」龍多がたずねる。
「そうよ。十種神宝は家系によって数種が違うから、友だちの十種神宝と自分のを一つ交換して組み合わせて使うの。みんな心の中で耳に耳飾りをつけているけれども、それが十種神宝ね。真実の鏡で赤い真珠の沖津鏡。鏡が耳たぶに付いて見える邉都鏡。鏡が耳たぶに付いて見える邊都鏡。干支が組める刀の草薙剣である八塚都鏡。干支が組める刀の草薙剣である八握鏡。干支が組める刀の草薙剣である八握剣。真珠の生玉。ブラックホールのような黒の玉の死反玉。鈴ころころの足玉。どんぐりのような道反玉。宮廷料理人の家柄の十二の意図の剣が車輪になった蛇比禮。十字架が斜めのクロスの蜂比禮。物部氏の何でも入る筒の望遠鏡の品物比禮。色々種類があって、組み合わせると三種神器や天地の鉾や死神の鎌になるわ。」
「僕のはなんだっけ。」
「八握剣で日本刀使いの家柄。私は蛇比禮で宮廷料理人系よ。」
「料理が上手いんだね。いいね。」
「三種の神器で使う十二の意図。意図組みの干支の種類は何でもよくて、十二の干支の物語の干支でもいいし、十二星座、八十八星座でもいいし、十二使徒やとうみつの干支、山海経などなんでも使えるわ。元々の三種の神器の干支は古事記の干支になっているから、ベーシックな三種の神器が良ければ古事記の干支で組むのよ。」
「そんなんだ。そのあげた勾玉の干支はどうするの?」
「赤の勾玉の蛇玉だから。八十八星座の干支を組んで、明鏡止水の青の勾玉にしてお守りにしようと思うわ。出雲
の勾玉は蛇玉だから。」美夢が言う。
「そうなんだ。気に入ってくれた?」龍多がはにかみながら聞いた。
「もちろん。どうもありがとう。」美夢は微笑みながら応えた。
 レストランでの食事は美味しく、和やかに進んだ。デザートのイチゴプリンは、生クリーム入りのイチゴムースで、口の中で甘く弾けた。
「このローズマリーティー、美味しいハーブティーね。後でハーブ園のショップで買おうかしら。」
「僕もこの味好きだよ。本物のローズマリーの植木鉢でもいいんじゃないかな。生ハーブを煮込むお茶は美味しいよ。」
「そうね。帰り車だけど植木鉢買っていいの?」
「うん、いいよ。後部座席の足元に置けば大丈夫だよ。」
「ありがとう。じゃあお言葉に甘えて、乾燥ハーブじゃなくて、生きているローズマリーを買うわ。」
「一緒に探そう。」
「ありがとう、嬉しい。」
 ハーブ園の天気はよく、青空が澄み切っていて、空気が清々しい。広大な植物公園はなだらかな丘のようになっていて、一つ一つのハーブに案内プレートが付いていて、ハーブの名前が散歩しながら分かった。龍多と美夢はのんびりとグリーンの香る丘を散歩した。
「イマジネーション。」
 ベベベベベテンテンテンベベベベベテンテンテン、龍多が登場しマウンドに登った。登場BGMは和風の琵琶の音楽だ。その週は、ライバルのバッターである今木との直接対決があった。今木の黄金バットから空振りを奪うために、龍多は持ち球の中から得意とする球を選んで繰り出した。今木の打ち損じや空振りを狙うためにはやはり変化球かとも思うが、ここぞとばかりに速い球でストライクゾーン低めの直球勝負を挑んだりもする。ボールへのスピンからのキレのある直球。握りを工夫したり、人差し指と中指の間にボールを挟んでフォークボールを投げて、ボールの軌道が縦に落ちていくのを狙ったりする。速い球が動く球として、バッターの手前で少し動くのを狙っていく。野球の山場は期待と希望に満ちていた。今木がバットを構えた。龍多は呼吸を整えて投球フォームに入り、投げるタイミングを見極める。龍多は勝負球はストレートの直球で軌道が真っ直ぐのスピードの速い球を投げた。ストライク。今木は空振りをした。

巨人と小人

執筆の狙い

作者 跳ね鳥
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数か月前に投稿した作品にGW加筆しました。

コメント

ライシ
203.78.230.250

長いね(笑)
長すぎて途中までしか読んでない(笑)

跳ね鳥
p1986237-omed01.tokyo.ocn.ne.jp

コメントありがとうございます。お読み下さり嬉しいです。この先二倍くらいは分量あって、原稿用紙に手書きの状態ですが、打ち込みいつ終わるか分からないです。短編を書く合間に進める感じです。

yume
203.78.230.250

まだ読み切ってませんけど、美夢さんの話多過ぎませんか?
確認なんですけど、恋小説ですか?これ。
好きなキャラばっかり活躍させてしまうのは私も癖(違ったらすみません)なので気を付ければ、
大丈夫だと思います。
(なんか堂々と指図しちゃってごめんなさい。)

490
sp49-98-159-28.msd.spmode.ne.jp

>バッターの手前で少し動くのを狙っていく。野球の山場は期待と希望に満ちていた。今木がバットを構えた。龍多は呼吸を整えて投球フォームに入り、投げるタイミングを見極める。龍多は勝負球はストレートの直球で軌道が真っ直ぐのスピードの速い球を投げた。ストライク。今木は空振りをした。

めっちゃ好きですwww

跳ね鳥
softbank221110128250.bbtec.net

yume 様

お返事遅れてすみません。ご意見ありがとうございます。

美夢の話しは、確かに長いかもしれません。彼女の毎回の話題には、毎回ひとつテーマがあって、宗教研究して調べたものを美夢の話題の中にまとめて書いています。

ありがとうございました。

跳ね鳥
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490様

ご感想ありがとうございます。お読み下さり嬉しいです。

昨年のオリックスは素晴らしかったです。この小説の野球選手のモデルの村西選手は、現在二軍のファームから、一軍のテレビ放送の試合に三回出場する実力選手に成長し、ファンとしては嬉しいです。この小説は、オリックスの試合を見ながらノートを取って、試合の感動を込めて書きました。

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

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