作家でごはん!鍛練場
りょういちんこZ

出会い系で優良物件に出会ったけど、ナマでヤッたのをお母さんに

「なんで? もう会えないってどういうこと?」

「あの後、オカンに電話したんです。初めての女の子にナマでやろうとしてくる男はやめなさいと言われました。すごい怒られました。友達にも電話したんですけど、そんな人は絶対にやめてって。そもそも私が悪いって言われました。出会い系で初めて会った男をその日に部屋に入れるなんて考えられないって言われました。私も悪かったなって反省してるんです」

「俺はすっかり悪者だな」

「なんでナマでやろうとしたんですか? いつもそうしてるからですよね?」

「あの、いや、なんていうか、男性用ピルみたいなもんがあって、それ飲んでたからいいかなって思って」

「そんなのあるんですか?」

「うん(ナイ)」

「そうだったんですか」

「初めに言うべきだったね。そうすれば誤解されずに済んだね」

「はい。それなら、その時に言って欲しかったです」

「わかってくれてよかった……」

「あの後、私すごい不安になって、すぐおかんに電話したんです」

「うん」

「そしたら本当に凄い怒られて……。『そんなことさせるために青森から上京させたわけじゃない! 今すぐ帰ってきなさい!』って言われて……」

「えっ、帰んの!?」

「……たぶん」

「マジで!? マジでそれで青森に帰んの!? っていうか、お母さんに色々話し過ぎじゃない……!? ナマでどうとか……」

「怖かったから」

「はぁ……(普通は友達にだけ話すもんだと思うけど)」

「『まずはすぐに病院に行きなさい!』って言われて」

「うん(まるで悪性ウイルス扱いだな)」

「検査は陰性だったんですけど……」

「よかった」

「しまるこさんに私の気持ちが分かりますか? 仕事を休んで婦人科に予約をいれて性病検査する女の子の気持ちが。何度も病院の周りをぐるぐるまわって、やっとの思いで受付に足を運んだ気持ちが」

「いや……、だからなんていうか、誤解させて悪かったよ。男性用ピル飲んでたから平気だと思っててさ。俺はそれでいいやって納得してたけど、松子ちゃんには何も言ってなかったから不安だったよね。松子ちゃんからすると急にナマで突っ込まれた気分だもんね」

「次の女の子にはちゃんと言ってあげてくださいね」

「はあ……(次か)」

「次っていうかさ、俺は松子ちゃんに会えて本当に良かったと思ってるんだ。あの日は本当に楽しくて、また会いたくて、言葉悪いかもしれないけど、誤解……、だったんだから、もう会わないとか嫌だな」

「でも、私の方はもう無理っていうか。身体がゾッとして気持ち悪くなっちゃったっていうか」

「はぁ……(言いやがる)」



 松子(マツコ)は23歳。大手薬局の新人正社員(クリエイトということにしておこう)、家賃6万円、駐車場代1万円のアパートで一人暮らしをしている女の子だ。就職を期に青森から上京してきた。70万で買った中古車で通勤している。

 松子はチョロそうな子というか、なんでもハイハイいうことを聞く子で、そして物をよく買う子だった。研修で商品の知識を仕入れる度に何でも欲しくなってしまうようで、月に3万も4万もクリエイトで買い物していた。部屋の中には無数の化粧品やサプリメントで乱雑していた。

 入社式を終えたばかりの新人一年目で、毎日勉強に明け暮れていた。なんとクリエイトの新人研修は毎週テストがあるらしい。そして、そのテストに受からないと売り場に立たせてもらえないらしい。試験範囲は厚い本数冊分で、下手な大学の試験より大変そうだった。仕事が終わって帰宅しても、テストの為の勉強をしていた。松子ちゃんの細かな字と蛍光マーカーでギッシリになった勉強ノートが数冊床に転がっていた。

 松子ちゃんとは出会い系のアプリで会ったのだが、会ってみて、この子はおとなしい地味な子だとすぐにわかった。非常にギャグセンスに乏しく、ゆっくり時間をかけて、頭をフル回転させて常識的なことしか言わない。おそらく一番仲のいい友達との間でも、下ネタを口にしたことはないと思われた。

 目が金魚みたいに腫れぼったくて唇は厚く、鼻がだんご鼻で小さかったが、顔は悪くなかった。峯岸に似ていた。「峯岸に似てるね」と言ったら、すごいショックを受けていた。峯岸に似てるというのは悪口になるらしい。 今の俺だったら間違ってもそんなことは言わないが、当時は鈍感だった。しかし、そんな紛らわしいアイドルの存在を許している社会がいちばん悪いに違いない、と思い直すことにした。とにかく、松子は決してブスではなかった。

 花火の帰り、彼女のアパートに泊まった。ふだんは朝の9時から22時30分までが仕事で、家に着くのは23時らしい。そして夕食を食べて風呂に入って洗濯をすると1時になり、1時から3時まで勉強する。3時から寝る前の30分だけYouTubeでホラーゲームの実況動画を見るらしく、『青鬼』がお気に入りらしい。YouTubeのホラーゲームはやたらと再生数が多いけど、どうやら正体はこういう女の子達が見るからなんだろう。彼女達は怖い怖いと言いながらもホラーが好きだ。これは男にはあまり見られない。ドキドキしてギャーと叫びたい好奇心のようなものは、女の方が多分に持っている。これは女性特有の性的欲求の顕現ではないかと俺は仮定している。そして3時30分から7時30分までが就寝時間。7時30分にはシャワーを浴びて、朝ご飯とお弁当作りを始めるらしい。

 部屋に上がったはいいが、女の喜ばし方をよく知らない俺は何を思ったか、「煮卵を一緒に作ろう」と言った。当時俺は煮卵にハマっていて、5分きっかり茹でることによって、半熟で美味しいトロトロの煮玉子になることを知り、それを限られた人間だけが知る叡智だと思い込んでいた。当時は毎晩かならず家で煮卵を5個作っていた。

 黙って二人で煮卵を作った。彼女はおとなしくて口数は少ないけど、無言になると話題をくれた。おとなしい子特有の人の目を見続けられないところがあり、笑う時も全力で笑い切ることができなくて、完全に笑い切ったら誰かに怒られるのを心配しているような笑い方だったけど、そういうところも含めて良い子に思えた。こういう子が出会い系をやるのか。こういう子だからやるのか。こういう子もやっぱり恋をしたいんだなぁと思った。
 
 グツグツと煮える卵を見つめながら彼女は言った。

「私、本当に気が弱くて、こんな性格だから一度も彼氏できたことなかったんですよ」

「うん」

「仕事でもミスばっかりなんです。毎週のテストはいい点取れるんですけど、店が混雑してるとき何を優先したらいいかわからなくて、とんちんかんなことばかりしてしまうんです。その度にパートのおばさん達にため息つかれて。正社員はパートのおばさん達をまとめなきゃいけないのに、私、いつもおばさん達にビクビクしちゃうんです。同期の子達は上手くできてるんですけどね」

「うん」

「正社員がやることといえば、専門的な商品知識を覚えることなんですけど、タンパク質がどうとか、この薬にはビタミンが何パーセント入ってるとか、そうやって知識を積み込むんですけど、一向に仕事ができるようにならないっていうか」

「うん」

「ぜんぶ、私の気が弱いから舐められちゃうんだと思うんです」

「…………。気がおとなしい女というのは決していないらしい。気がおとなしい男はいるけど、気がおとなしい女はいないらしい。まあこれは俺の持論ではないんだけどね。ある女性タレントが言ってた。誰だったっけかなぁ? 忘れたけど。『私は難しい人生訓のようなものは何一つ知らなくて中卒で頭も悪いけど、ひとつだけはっきりと確信をもって言えることがあります。気の弱い女は絶対にいません。どんなにおとなしそうに見える女でも、本当に気が弱い女というのはいません。すべての女は間違いなく気が強いです。私は同じ女で、たくさんの女を見てきたからわかります』」

「へー」

「うちの姉ちゃんもそう。外では借りてきた猫のように大人しくていつもプルプル震えてるけど、家では俺に当たりが強いしね。ヒステリックって言ってもいいくらいだよ。女の兄弟を持つとよくわかる。全ての女の中には必ずヒステリックが刻印されている。どんなに大人しい厚い皮を被った子でも、ヒステリック性が眠っている。男には全く一欠片もない奴がいるけどね」

「へー」

 俺は彼女がまったく希望していなかったアドバイスを長々と語り終えた。

「私はそうならないように気をつけなくっちゃ……」と、松子ちゃんは小さな声で呟いた。

 腹の底から大人しい貞淑な女になるには、日常の瞬間瞬間の勝負を勝ち続けなければいけなくなる。僕が僕であるために勝ち続けなければいけない……尾崎豊の歌詞のようなものだ。彼女は仕事はダメでも、あるいは自分のイメージしている理想の女性像からはそう外れていない自負があるように思えた。小さな呟きはその覚悟が顔を出したものだろう。4LDKの2500万ぐらいの家で黙々と家事をこなし、旦那が帰ってくると手を止めて玄関に迎えに行きそうな、そんな奥さんになりそうだった。そうなりたいと考えているようだった。

「じゃあ、気が弱くて彼氏ができなかったんじゃなかったなら、なんでできなかったのかなぁ……?」

「環境とタイミングだよ。現に今、松子ちゃんは初めて会った男を部屋に泊めている。今までの帳尻を合わすように、運命がバランスを取ろうとしているんだ」

「…………」

 また、言わなきゃいいことを言ってしまった。「峯岸」「ヒステリック」「初めて会った男を部屋に泊めている」この少ない時間で3つだ。案の定、松子ちゃんは黙ってしまった。



 脱出系のホラーゲームを一緒に見ていたのだが、実際にやってみようということになった。ネット上に転がっている適当なブラウザ型の脱出ゲームだ。23時だっただろうか、丁度いい頃合だった。

 脱出ゲームは難しかった。20分ぐらい同じところで詰まっていると、なんで俺達はこんなことをわざわざやっているのかわからなくなった。なんでわざわざ自分から閉じ込められてるんだろう? こういうとき、つまらなそうな顔をする女は少なくない。心が擦れた女ほど忍耐力がなく、この手の緻密なゲームはすぐに投げ出してしまう。そもそも初めからやる気を起こさない。セックスの方が自然だという顔をする。それに対し松子ちゃんは猫のように真面目だった。いつまでも画面に釘付けだった。途中目薬を差して目をシパシパさせていた。よくわからない初対面の男と場をシラケさせないためには、目の前の遊びに本気になるというのが彼女の処世術なのだろう。

 部屋に夜で二人きり。深夜一時に差し掛かった。背もたれにしていたのはベッドだった。このベッドがさっきからずっと存在を主張している。にも関わらず一生懸命二人で脱出を図っているのは、運動会のしおり作りをやっていなければ気を保てない芋臭い中学生カップルと同じ理由だったように思われる。俺はこの状況こそ脱出したかった。



 松子の服を脱がして見ると、少年みたいな身体をしていた。豆鉄砲みたいな乳首がついてるだけで驚いた。あれしろこれしろと命令すると何でもやってくれた。フェラしてと言ったら30分もやってくれた。もういいよと言わなければ一晩中やってくれただろう。しかし、ただ口に含んでいるだけだった。乳首も舐めてと言ったらルンバのように舐めてくれた。しかし甘噛みしたり舌でこね回すといったことを言われなければできず、気が利かないところもルンバそっくりだった。

 こんな下手な女は初めてだった。舌を絡ませたり吸引したりとか、そういうことをするのはハレンチだと思っているのか? 初めてだからやり方がわからなかったのか? おそらくどちらもだろう。今後、経験を重ねていっても絶対に上手くならない気がした。

 この一件でいろいろわかった気がする。基本的に仕事ができず、ボサっと突っ立ってる人間はセックスも下手だと見て間違いない。彼女は仕事ができないと言ったけど、気が利かないのだ。乳首を舐めろと言われれば口に含むだけ。「舌先で転がして」とか「もっと吸引して」とか、イチイチ俺は下品な言葉で口を汚さなくてはならないのか?

 処女だから仕方ないと思うかもしれないが、では、女子力やコミュニケーション力が高い女の子を想像してみてほしい。齋藤飛鳥にしようか? 堀未央奈でもいい。彼女達が初めてセックスするとしたら(彼女たちが処女かどうかは置いておいて)、ドギマギして鈍くさくなるだろう。だけど、憂いの瞳で相手を見つめたり、艶っぽい動きをしたり、耳の中に舌を入れられたら「ヒャッ!」と反応してみたりするだろう。

 次は衛藤美彩を想像してほしい(乃木坂ばかりで申し訳ない)。彼女は最近グループを抜けて交際発表をして、今頃はヤリまくっているに違いないが、彼女がグループ卒業まで処女だったとしたら(そんなことはあり得るかあり得ないかは置いておいて……!)、さいきん女の子も卒業したということになる。美彩ちゃんはどうだったろうか? 乳首を口に含んだまま止まってしまっただろうか? お姉さんキャラでコミュニケーション力が抜群の彼女は、たとえ初めてだとしてもそんなことは起こり得ない。彼のために一生懸命になったはずだ。相手がナマで挿れようとしてきたら、アリだったら何も言わずに受け入れ、ナシだったらNO! とはっきり言ったに違いない。衛藤美彩ちゃんだったら、ね。

 処女だったので挿入は難儀した。かなり狭かった。「?」 途中で壁があってそこから進めなかった。俺がデカすぎたわけでも彼女が狭すぎたわけでもなく、ちんこをチョイと入れるとそこから先は進めず、撤退を余儀なくされた(べつに盗塁をしようとしているわけでもないのだが)。そんなことを何度も何度も繰り返し、このまま永遠に奥までたどり着けないんじゃないか? と不安になりながらも、チョコチョコと、俺はハンチング帽みたいに先っぽだけを出し入れし続けた。

 ちゃんとはまらないから、3回に1回はすっぽ抜けた。明らかにおかしい空気が流れた。それは処女の松子でもわかったらしい。3回に1回はスッポ抜けていた。俺は難しい顔をして松子のまんこをモゾモゾ弄っていたので、松子からすると、人の性器で何をコソコソしているの? 何を脱出ゲームやってるの? という不快があっただろう。

 今日はとてもいい子に出会えた。出会い系はクソばかりで、自分から質問系のメッセージを送ってきたり、一緒に花火大会に行きませんか? と言ってくる女などいやしない。この子は貴重だ。真面目でいい子だ。この子とならちゃんと恋愛ができそうだ。多少セックスが下手でも構わない。そのうち慣れてくるはず、そう、慣れてくるはずっ……! だが、これはどうだ? 先っぽしか挿入できないセックスはどうなんだ? これはセックスと言えるのか? これから付き合ってデートしてホテル行っていい雰囲気になって、キスしてベッドに押し倒して、先っぽだけのセックスをしていくのか? 先っぽだけ挿れてすぐスッポ抜けて、また挿れてスッポ抜けて、ということを繰り返すのか? しかし、そんな性生活だったとしても、彼女は受け入れてくれそうだった。結婚生活を60年間続けても、一切この件に触れなさそうだった。

 勃起パワーがMAXの時に押し込んでみたら、奥まで突き抜けていった。大きさよりも固さが大事だなと思った。詮無いことをいえば、一度バイブを奥まで突っ込んで膜を破壊してからだったら手っ取り早かったかもしれないと思った。処女とやるときは一旦バイブを突っ込んでからの方がいいのか? まぁ、後になってわかることだが、このとき本当にバイブで膜を破壊した方が、彼女にとって良かったのだ。

 行為は一時間ほど及んだが、彼女は一度も喘ぐことはなく終始無反応だった。脱出ゲームの時はすごく気を使って頑張ってくれたのに、セックスの時は本当に淡白だった。



「フルーツグラノーラ食べますか?」「今度家の近くの○○寺を散歩しませんか?」

 セックスが終わると、息を吹き返したように彼女は饒舌になった。フルーツグラノーラとか寺とかが、彼女が生息できる領域らしい。そして風呂に向かっていった。俺は暇を持て余したので、俺も風呂に向かった。彼女はボディソープで身体を洗っていた。俺は彼女の手からスポンジを奪って身体を洗ってやった。まんこの中にスポンジを突っ込んで洗ってやったら、このときいちばん驚いた顔をされた。カップルってこういうことまでするの? セックスの後ってこういうことをするものなの? と、セックスよりも、男の手で自分の性器の中をスポンジとボディソープでもって洗浄されることの方が、ずっと衝撃的だったらしい。

 交代と言わんばかりに、今度は彼女がスポンジを持って俺の身体を洗った。肩、胸、腹……ときて、ちんぽに差し掛かった時、彼女はスポンジを下げて素手でちんぽを握った。ちんぽはスポンジじゃなくて素手で掴んで洗うというセオリーをわかっていることに驚いた。俺が無言のオーラを発していたからだろうか? 彼女はしばらく素手でちんこを洗っていた。

 そのあとはボディソープを潤滑油代わりにして、壁に手をつけさせて立ちバックをした。やはり場面が「エロ」になると彼女の時間は停止する。またさっきみたいに先っぽまでしか入らなかったらどうしようかと思ったけど、うまくできてよかった。急に現れて急に挿れてきて、3回に1回スッポ抜けてたら、そんなカッコ悪いことはない。しかし、やはり終始反応はなく、俺もただ腰を振り続けるだけで、お通夜みたいな雰囲気だった。

 午前8時頃になり、松子ちゃんは会社に行くことになった。彼女は頼んでもいないのにクリエイトの制服を着て、「じゃーん♪」とクルッと回って見せてくれた。こういうところもあるんだなぁと思って、この日いちばん新鮮に感じた。そしてフルーツグラノラを作ってくれたので、二人で食べた。

「駅まで送りますね」と言って、彼女が車のキーを持ち出して家を出ようとした瞬間、「もっかいフェラしてくんない?」と俺は言った。彼女の顔に一瞬重たい荷物がのしかかったように見えたが、彼女はすぐに「いいですよ」と言った。



 俺は自宅に帰る電車の中でLINEをした。「今日はありがとう。楽しかった。急に泊めてくれてありがとう。お仕事頑張ってね。また泊まりいきたい」と送ったら、すぐに返事が来た。

「私も楽しかったです。また泊まり来てください(笑)」と返ってきた。

 この「(笑)」はなんだろう? 恥じらいか。「泊まりに来てください」と言うことに対する恥じらいか。(笑)をつけるだけで大分緩くなるもんな。(笑)のバランス感覚が気に入った。(笑)がパーフェクトだと思った。 

 このLINEで俺の中の何かが弾けた。これだッ! と思った。俺はこれを求めていた! 味気のない仕事の毎日、ジジイとババアのマッサージの毎日の中で、つかの間の癒し、土日いや、金曜の夜だけでもいい。週に一回だけ、ジジイとババアの加齢臭に塗れたこの身体に聖水を振りかけてもらえる機会を得た! と思えた。

「また泊まり来てください(笑)」か。やったな、やりやがったな、今回はどうでもいいような女じゃない。真面目で家庭的な女の子だ。出会い系は男も女も俺も含めて変人しかいないと思ってたけど、こういうこともあるじゃねえか! やった! やったぞ! うっほほーい! 俺は嬉しくて堪らなくなって、今乗ってる電車の乗客を全員、電車ごと、ジャーマン・スープレックスしたい衝動に駆られた。



「オカンと電話したら、初めての女の子にナマでするような男はやめなさいと言われたので、もう会えません」

 仕事中、一通のLINEが届いた。俺はこのLINEを見て気が気じゃなくなった。いつも適当にマッサージをしていたが、この日はもう頭が狂ってしまって、ずっとベッドを揉んでいた。

「…………」

(しかし「ナマ」ってまた凄いな。先日まで処女だった女の子なら、「コンドームをつけずに」とか、あるいは「避妊具」と表現するだろうに、それだけ表現が雑になるくらい、俺の事なんてどうでもよくなったのか?)

 俺は家に帰ってすぐ松子に電話をかけた。

「なんで? もう会えないってどういうこと?」

「あの後、オカンに電話したんです。初めての女の子にナマでやろうとしてくる男はやめなさいと言われました。すごい怒られました。友達にも電話したんですけど、そんな人は絶対にやめてって。そもそも私が悪いって言われました。出会い系で初めて会った男をその日に部屋に入れるなんて考えられないって言われました。私も悪かったなって反省してるんです」

「俺はすっかり悪者だな」

「なんでナマでやろうとしたんですか? いつもそうしてるからですよね?」

「……」

 電話からは、たった一度の初体験をこんな男に捧げてしまったという絶望感がありありと伝わってきた。23年間、ひとしお大事に守ってきたものだ。 自殺しかねないテンションの低さを感じた。4LDKの2500万の家で皿を運んでいる彼女が崩れ落ちる音も聞こえた。

『また泊まりに来てください(笑)』ってLINEくれたじゃねーか。そのLINEを送った時はまだ俺に気があったってことだろ? 母親との電話で俺への熱が冷めたんだろう。いや、それともこれから会社に行くって時にフェラを強要したのがまずかったか? あの時重たい間が一瞬あった。

 松子は自分から母親に電話をかけたのか? だとしたら、母親に電話する前から心配があったということだ。出会い系の男を部屋に入れてナマでやってしまったことを電話する前から悩んでいた。『また泊まりに来てください(笑)』って送っといて、腹では俺と関係を続けるか懐疑的だったってわけだ。
 
 あのなぁ、お母さんにしろ、友達にしろ、こんな話を聞かされたら誰だって、そんな男はやめろっていうに決まってんだろ(俺だってそういう!)。マッチングアプリ、出会い系、ペアーズ、タップル、そのワードを口にした途端、行き着く結論は自動的に決まるんだよ。ちゃんと俺の良いところは言ったのか? ただ事実をありのままに話したら、俺の悪いところしか伝わんねぇじゃねーか。俺のいいところもちゃんと言ったのかよ? しかし、俺のいいところって何だ?(笑)

 つーか、青森の女ってのは、みんな母親のことオカンって言うのか? なんでわざわざ、『男はつらいよ』だか、『菊次郎の夏』だか、そういうタンクトップで白飯かっこんでるイメージを自分に作るかねぇ?

 勝手に悪党にされてイヤな気分だぜ。よく悪い男に引っかかったとかいうソレじゃねえか。アレのソレじゃねーか。俺がどんなに優しい人間か知ってるか? 職場に新人のおっさんが一人で浮いてても、俺だけはまともに話してやってんだぜ? 二十歳の介護士の女がおっさんに「体温計取ってきて」と言ったとき、俺はその介護士の女に言ってやったんだ。

「高田さん、年上の人にその話し方はよくない。仕事では高田さんの方が先輩かもしれないけど、年配の人には年配の人への話し方があるはずだ。古屋さん(おっさん)が若いスタッフのように機敏に働けなかったとしても例外にならない。スタッフ全員が古屋さんにタメ口を聞いたとしても高田さんもタメ口を聞いていいわけじゃない」

 おっさんは結局辞めてしまったけど、俺だけはずっと最後まで敬語つかってやったんだぜ? 松子、お前にできるか? お母さん、お前もだ、できるか? あんた達はすっかり俺を出会い系の悪性腫瘍だと決めつけたようだけど、松子、お前は自分の頭と心で俺を評価して部屋に上げたんだぞ? 少しお母さんに諭されたぐらいでコロコロ意見を変えるのは大人として恥ずかしいんじゃないか? それは俺を否定しているんじゃなくて自分を否定していることになるんだ。俺がガンかどうか見分けがつかなくて、お母さんに聞かなきゃわからないなんて、それは自分の23年間を否定している。仮にも君の貞操を捧げた相手じゃないか。

 俺も確かによくない。ナマでやったことじゃない。男性用ピルを飲んだとかふざけた嘘をついたことだ。ナマでやったことは特に悪いと思っていない。イヤと言われればやらなかった。イヤと言わなかったお前が悪い。イヤならイヤって言えばよかったじゃん。なんで言わないの? 後になってそんなこと言われてもしらないよ。そういうのはおとなしいとか、しょうがないとか言わないよ。性格が悪いって言うんだよ。後になって人のせいにするようじゃ、卑怯もいいところだよ。

 私が彼氏できなかった理由はなんだったんだろうって? そこだよ、そこ! 性格がわりーからだよ! 自分が大好きで自分を大事にしすぎて、ちょっと自分に傷がつくと相手を大悪漢に仕立てあげる卑屈さだよ! 自分の直感を信じろや! 誰に頼まれたわけでもねーだろ? (自分で言うのも何だが)俺がいいと思ったからやったんだろ? 女が初体験をその男に明け渡したんだ。運命的な男女の機微があったんだ。それ以上それ以下でもねーんだよ。男なんてみんな気持ち悪いからな。よーく口元を見ればみんな歯周病予備軍。あの黄ばんだ歯と糸ひいたネチネチした舌を無視して通り過ぎなきゃ、恋もキスもできないぜ? ちょっと不安の方に引っ張られて、それにずっとフォーカスしてたら、簡単に不安一色に染まっちまうんだ。その不安を全部人のせいにするから、彼氏ができねーんだろーが! 自分を大事にして、自分の心ばっかり見つめてる人間ってのは殺したくなるから、みんな付き合わねーんだよ。

 しかし、お互いがあの夜に何を思っていたのか、きちんと話して収まりがついたというのに、もう元に戻れないというのは残念だ。俺の悪いところはわかった。松子の悪いところもわかった。なのに、また会いましょうにならない。

『婦人科に電話した女の子の気持ち分かりますか?』

 わかるよ。俺だってチンコが立たなくなってEDかもしれないと思って泌尿科に行ったことあるもん。仮性包茎だから手術を受けようかと思ったこともあるもん。肉を食うと3回に1回は肛門から出血するから痔の手術を受けようと思ったこともあるもん。
 
 俺は全ての出会い系の女(17人)とナマでやってきた。これはお互いが覚悟してやったことだ。いや、単に互いに頭がおかしかっただけかもしれない、深くも考えていなかったかもしれないが、とにかく女からクレームが入ったことは一度もない。

 しかし、これはあまり考えたくないのだが、その中にはヤリマンが何人かいて、俺はそのヤリマン達とナマでやってきたのだ。つまり俺は既に性病に罹患しているかもしれないのだ。別に今は異常はないけど、「イッチニ♪ イッチニ♪」とまだ幼い潜伏型の性病ウイルス君が俺のちんこの中で準備運動をしているかもしれないのだ。泣きたいのはこっちの方だ。医者にエイズだとはっきり言われるのが怖いから病院に行けないだけなのだ。「気持ちがわかりますか?」だって? わかるよ(笑) 傷物にされた女の気持ちを飛び越えてエイズの危険性に晒されてんだよこっちは! エイズで死ぬとなったら、災害レベルに男女差はないだろ?

 イヤならイヤという事。これが一つ。その場でイヤと言わずに後になってイヤだったというのは反則である。もう一つは、女は女の弱さを受け入れ過ぎている。傷つけられたとわんわん泣き叫ぶのはやはり女のヒステリック性が関与している。女は女の弱さを受け入れることでヒステリックが育つ。ヒステリックは弱さの証だ。嫌悪アレルギーですべてをうやむやにしてしまえというのは雑で卑怯な考えだ。大人しいやつってのは全員性格が悪い。全員卑怯。全員ヒステリックだ。自分の弱さが自分を追い越した時、あんなに従順だった松子でさえ、別れのときは強い口調だった。俺に対して気持ち悪いとさえ言った。

 しかし、こんなに性格が悪い卑怯な女に対しても、俺は、『次っていうかさ、俺は松子ちゃんに会えて本当によかったと思ってるんだ。あの日は本当に楽しくて、また会いたくて、言葉悪いかもしれないけど、誤解……、だったんだから、もう会わないとか嫌だな』と言ってしまった。俺は俺も松子も大嫌いだ。

 彼女は今どこで何をしているだろうか?
 青森に帰ってしまっただろうか?
 今もまだ俺につけられた傷が癒えてないだろうか?
 結婚して幸せになっているだろうか?

 しかし、出会い系で傷を負った女は、出会い系で傷を癒やしに戻ってくることを、俺は知っている。

出会い系で優良物件に出会ったけど、ナマでヤッたのをお母さんに

執筆の狙い

作者 りょういちんこZ
150.140.5.103.wi-fi.wi2.ne.jp

「出会い系で優良物件に出会ったけど、ナマでヤッたのをお母さんにチクられて会えなくなった」です。

また再掲載だけど^^;

コメント

上松煌
111.85.0.110.ap.yournet.ne.jp

りょういちんこZさん、こんにちは

 楽しみに拝見しましたが、今回のものは出来がよくないと感じました。
単に面白くないだけでなく、主人公もカノもストーリーも気持ちが悪いのです。

異世界かと思うくらい現実味がない。
このおはなしのために作られたキャラ感がハンパなく、初っ端から「ナニコレ?」となってしまう。

 青森県出身で「おかん」という関西弁を使い、大手薬局の正社員のくせに、主人公の言う、架空の「ピル」なるものをいとも簡単に信じる。
大手薬局の正社員なら、それなりの大学を出て、社員研修も受けているはず。
常識以上の薬剤知識はすでに持っている。
だって、社内テストの成績はいいんでしょ。

 また、和姦だったのに後になってから、親に聞いた・友達が言ったと、本来、自分で判断すべき事象を他人の言葉に乗せてくる。
23歳にもなってです。
ウブという設定にしても低知能系でしょう。
「うっそだろ~、今時こんな女いね~よ、絶海の孤島でもムリムリ。いつの話よ?」と読者のだれもが思います。
おまけに今回は彼らの心の交流もなく、後半で主人公がグチグチと彼女を非難するにいたっては
、この女々しいヤロウに不快感すら持つ。
いや、男ってもうちょっとハッキリすっきりしてるじゃん?
おれなんかはフェミなので、「おい、女性蔑視かよ、ぐおぉらぁ」となりました。

 今回はあなたのよくないところが激しく出ています。
暗くて、ねちっこくて、自分勝手を聞こえのいい言葉で糊塗しようとし、いいわけとクドイ心理分析に紙面を無駄についやしている。
いっそのこと、この男が淋し~いビョウキにでもなってすったもんだする展開のほうが、まだ共感を得られるのでは?

 ともあれ、次作に期待しますね。


 

りょういちんこZ
vc078.net183086183.thn.ne.jp

上松さん、いつもありがとうございます!

楽しみにしていただけたのは、うれしいです。そうでしたか、気持ち悪いし私のよくないところが出ているところはおっしゃる通りだと思います。同じことばかりやっててもあれなので、いろいろな方面で、今自分がいちばんコミットできそうなものに尽力したいと思います。次作もまた良さそうなものできたら持ってきます!

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