作家でごはん!鍛練場
沙 励按

野いちご摘み

 桜生と絢は由にいってきます、と告げると早足で山を下って行った。
 しかし、しばらくすると、桜生は、絢に手を引っ張られながら途中で息苦しさを感じ始めた。異変を察した絢は振り返り、足を止めた。
「歩くの早かったよね。ごめん。苦しいの?」
「…ちょっと…苦しい。」
桜生は、呼吸を整えながら、しゃがみ込んだ。傍に絢も添う。山を下る道は、木陰続きで、春風が当たると少し寒気を感じる。
「…先に…行ってて。急いで…るんでしょ。ちょっと休んだら…行くから。」
と、瞳だけで絢を見上げる。絢は、それには応えず、桜生の背をさすりながら、薬は?と問う。桜生は、目を閉じて、首を左右に振った。
 桜生の早かった呼吸がやがて深呼吸で整えられると、二人は再び手を繋ぎ、今度はゆっくり目的地まで歩いた。
 上長沙橋(かみながさばし)の手前の森に二人が着くと、先客がおり、野いちごの実は殆ど摘み取られていた。
「そいつとグズグズ来るから、もうないぞ。」
それを言い放ったのは、煌士(こうじ)という男の子だった。引き連れた他の二人より体がひとまわり大きい。
「でも、これだけは、絢にやる。こいつに、はやるなよ。」
と絢に近づき、煌士の片手分の野いちごを渡した。1センチほどの小さな赤い実が絢の両手にこんもりのせられた。
甘酸っぱい匂いが絢の鼻を満足させる。
「お前には、これだ。」
松ぼっくりを他の二人が思い切り桜生に投げつけて次々に命中させた。見かねた絢が、煌士っ、と叫ぶと、
「もう、やめとけ。行くぞ。」
煌士は、目を細めて、桜生を睨み、次にチラッと絢を見やり、最後にもう一度、行くぞ、と言って他の二人を引き連れて去って行った。
 絢は、いつも煌士の真意を計りかねていた。
 煌士は、学校では成績も良く、体も大きいため、運動もよくでき、頼りになる。同年代の中ではリーダー的存在だ。
 煌士の家は、林業や炭焼きなどを生業にしており、この村の見渡す山は殆ど煌士の家が管理していた。煌士は、その家で男子四人兄弟の四男として育った。父親の厳しい教育のためか、ちょっとした町にいる何処かのぼんぼん男子より、かなりしっかりとした子に育っている、と周りの大人達は誰もが感心していた。
 一方で、煌士は、そんなによく喋る方ではないが、よく本を読むため、絢も物知りの煌士と話すのが好きだった。
 しかし、煌士は、絢が桜生といるのをいつも嫌った。そして、桜生に辛くあたるのだ。どちらも本当の煌士なんだろうけど、大人の信頼を受ける程の煌士が、桜生を傷付けることに、絢は納得がいかなかった。
「煌士の家の方が近いんだから、当たり前よね。ああ、残念。私は、桜生と一緒に摘んで、一緒に食べたかったのに。」
絢は、一緒に、というところを2回とも強調した。
「しかも、この苺の場所、今日、学校の帰りに私が先に見つけたんだよ。それなのに、横取りするなんて酷い。」
「ごめん…。僕が走れないから…。」
「なんで?桜生のせいじゃない。だって、走ったら…」
そこまで言うと、これではまるで、桜生の体が弱いからだ、と責めているようだ、と絢は自分の発言を悔いた。
「私もごめん…。野いちごより、桜生の体の方がうんと大事だったのに。急がせたのもごめんなさい。こんな事で悔しがるのも、もう辞めるね。」
それに、と絢は続ける。
「煌士ってば、手が大きいからさ、こんなに野いちごくれたよ。」
たべよ、と絢は、松ぼっくりを投げつけられた時に、尻餅をついたまま座り込んでいる桜生の隣にちょこんと腰をおろし、両手にのせた野いちごを桜生の顔の前に差し出す。
「でも、煌士君は摘んだ苺、全部絢にくれたんじゃないのかな。最初からそのつもりで。だって、この野いちご、茎にすごいトゲがあるから摘むの難しそうだし。」
よかったね、とにっこり笑って見せる桜生。頭を少し傾けて絢の顔を覗き込むように笑うと、桜生の肩までのまっすぐなやらかい横髪がそれに続いてサラリと傾いた。
 絢は、思わずその綺麗な顔と髪に見惚れてしまった。
 ふふっ、と笑うと桜生は、空を見上げて、春の森の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

野いちご摘み

執筆の狙い

作者 沙 励按
ZB011195.ppp.dion.ne.jp

今、書き始めてみている小説の一部です。特に重要な場面ではないのですが、三人の子どもの関係がわかるように場面を設定したつもりです。
本当は小説全体の構成に悩んでたりしますが、その前に文章の流れやセリフやらに問題がないか否か皆様に感想など頂きたく投稿しました。
宜しくお願い致します。

コメント

一陽来復
n219100086103.nct9.ne.jp

内容は「まだこれから」なようなので、
本文内容までは見ずに、画面傍観の印象を書きますが・・


「……」が2倍角(二文字分)になってなくて全角(一文字分)なのが、いちいち見づらいので、
二文字分使ってください。


漢字の使用量が見るからに多いので・・「子供の話」だって感じがしなくなる。
「殆ど」なんかは、「ほとんど」とひらがなに開いた方が「年齢感?」出るでしょう。


なんか、野いちごを収穫して「手のひらに乗せて受け渡し」してるんだけど・・
栽培もんじゃない「まじもんの野生の野いちご」って果皮が薄くてすぐ潰れるから、
そんなことしたら手がべしゃべしゃ・真っ赤っか!! のすごいことになって、悲惨。食べられたもんじゃなくなる。
(↑ 経験談)


まあフィクションなので、それは「重箱の隅」なんだろうけど、
「昔の人はどうしてたか」を聞いてみるなり、ちょっとシミュレート(考察)してみるなりしてみても いいかもしれません。

沙 励按
ZB011195.ppp.dion.ne.jp

一陽来復さん
貴重なご意見、ありがとうございます。
「……」は二文字分、気をつけます。

子供の内容なんですが、一応全体的には大人向けに書いているつもりなので、漢字をなるべく使っているんですが、、、多すぎでしょうか。

野いちごの件、参考になりました。
少し調べて考察してみます。ありがとうございます。

また、投稿した際には宜しくお願い致します。

青井水脈
om126254252036.33.openmobile.ne.jp

「野いちご摘み」読ませていただきました。
短いのですぐに読めましたが、物語の一部ということで。

>「そいつとグズグズ来るから、もうないぞ。」↓
「そいつとグズグズ来るから、もうないぞ」

かぎかっこを閉じる直前は、句点は使用しないのが適切かと。
登場人物3人の関係性で、友情だったり淡い恋愛感情だったり。今回は学年などがわからなかったので、それが少し残念ですが。それ以外は流れるように読みやすく、続きがどうなるかも気になりました。


私も野生の野いちごを触ったりした経験はありませんが(どんぐりとかだったらありますが。現代でも身近ですし)、野いちごや木いちごって、子供の頃に本で読んで、なんとなく憧れますよね。

沙 励按
ZB011195.ppp.dion.ne.jp

青井水脈さん
読んでくださり、ありがとうございます。

かぎかっこの句読点、ご指摘をありがとうございました。
今後、注意して行きたいと思います。

私も道に生えているいちごとか、学校の帰りに触りたくてしょうがなかったので。。。

感想もありがとうございました。
小説家になろうに投稿してもなかなか感想を頂けないので、ご意見頂けて、本当に心強いです。

また、投稿させて頂きますので、よろしければまたご意見聞かせて下さい。

前略
nat2.kkm.ne.jp

ざっと読ませていただきました。私は読めない方なので参考程度でお願いします。

1,視点の乱れがある
三人称小説といっても、通常は主人公の視点に固定されています。ですので、主人公以外の心理描写は書かないことが基本です。これは読者が主人公に感情移入しにくくなるためと、主人公以外の登場人物の思考が分かると、次の行動が読めてネタバレになる恐れがあるからです。

また、そのシーンを撮影するカメラは登場人物の目です。主人公が見えないもの(死角・遠い物の詳細など)は、基本書けません。

御作はほとんど風景の描写がない様に思います。風景の描写は、読者に伝えるべき、いつ、どこでなどの重要な情報を伝えるのに役立ちます。5W1Hを意識して冒頭のシーンを書くように工夫してください。

「行く」「来る」の使用は考える必要があります。視点人物より遠ざかることが「行く」 視点人物に近づくことが「来る」です。「あちら」「ことら」も同様です。


2,登場人物の描写と説明
主人公の容姿や性格の説明がほとんどない様に思います。魅力ある主人公ならばその情報を読者にうまく伝えなければ、読者は感情移入してくれません。多すぎる説明は読者にとっては退屈です。

年齢や性別をセリフの喋り方だけで表現するのもいかがなものかと思います。小説のセリフは現実の会話とかなりかけ離れているように思います。

また、主人公以外の登場人物は、主人公から見える・感じる印象だけの人物ではストーリーに深みを与えません。解説しすぎていないか考えてください。

3,文章表現
個人的な考えですが、
・セリフは地の文に埋める際も「カッコ」を付ける方が良いと思います。
・指示語はできるだけ使わないほうが良いと思います。
・読点の間隔が狭い様に思います。基本息継ぎです。読者にとって心地よい文章であることが理想だと思います。

頑張ってください。

前略
nat2.kkm.ne.jp

誤字報告
×「ことら」
〇「こちら」

失礼しました。

沙 励按
ZB011195.ppp.dion.ne.jp

前略さん
具体的なご指摘ありがとうございます。
こちらに投稿してみて本当に良かったです。
勉強になります。

ご指摘頂いた点を改善しながら、頑張ります。

また、投稿した際には、是非再度ご指導頂けると嬉しいです。

本当にありがとうございました。

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