作家でごはん!鍛練場
ケンジ

大草原の王女

『母となったあなたは女性だけれど、女の子の様な考えのあなた。大人に成りきれないあなただけれど女の子でも、心に飾り気のない母親ではあるあなた。まだ心は子供の様なあなたならば私の様に女王にはなれないでしょうね。あなたはまだ子供のまま。今はそれで良いと思うわよ。だってあなたまだ二十歳だし』





ーーその様な母親からの言葉は私には受けとめ易くなかった。その大人としての儀式を迎えたある日の母親の言葉がそうだったから。その言葉を優しさとして受け止められなかった当時、罵倒されたと感じてしまっていた私。今からならその言葉を昇華したいと思い始めている。厳格なる男尊女卑や老若男女の問題として見比べる事が出来るのでは? その言葉を逆手に取れば新しい古来からなる成人の価値観に何かを付け加え、新しい成人の価値が出来るのではないかと今の私は思っているからです。その女性としての私の思いは女王である母親の賛同者であった過半数の市民達へ伝える事が出来るのだろうか? その大人は大人、子供は子供と母に諭された人間としての価値基準の世論をくつがえす事が正しいのではないか? といった一見幼い自分の子供の頃から心がけている思いを大人になりえた他人は真実として受け止められるだろうか?だから、母はあえてその言葉を放ったのだろうか?性別や大人や子供への見方にはなぜかと思える、絶対な垣根が必要なのだろうか? 母親の思想は現実的な考え方だけれど、そういった生き方は男尊女卑の無くならない社会性もはらんでいるのではないかと思った時期もある。だからこそ、女王のその母親とは真逆に、極端にそれにこだわらない生き方をした方が楽しいし、ゆとりを持ち生きられるのではないか。けれど未知数の本能や社会性の避けられない価値観ならば国を統治する私から始める。子供の様な私から始める。子供っぽい発想であるのは分かっているし、不安だけれど、もしかしたらその考えというか思想は健全な人生観なのではないか。私がその価値を建設的に形にして書物にすれば、国の皆に受け入れて頂けるのではないか? けれど、人としての大人のみならず、子供の子供めいた存在を、人格を否定しないならば、すべてまでとは言わないまでも、やはり自分の考え方は大切だし大事な気がした。でももし自分が主体的に生きていこうとするのであれば、一旦はその母親の様な気持ちで生きる事に満足して、生きる事に行き急がず、落ち着いて納得した自分なりの思想や楽しみに慢心しても、そういった考えだけが先行してしまっても、それは一生懸命に思い描いた、想いを馳せられる人生なら。その人生を一生懸命生きられたなら......。そう言った気持ちが大事だと思えた。そういった生き方には賭けがはらんでいるな、とは思うけれど、努力と一生懸命さがそこにはあると思えた。それは私には満足いく生き方なのか今はまだ知らない先の未来と見越すしかないけれど。未来には今の自分とは違う生き方があり、それは素朴な素のままの自然な日常生活にあると思えた。書物がそのわたくしの考え方の人生論に、いつまでも過程として見られるのであれば、そう言った人生の価値観を私は最終結果と呼びたい。そしてそうもない私の考えを忌みとして掬うのであれば、それは、人生の最終経過と呼びたい。その二通りの成長にはどちらも譲ることが出来ない人智を超越した愛と情けの建築性の世界文化であるだろう。けれどその本の中の様な世界だとしても現実に実行すべき愛情の世界があるだろうし、なければならない。世界は書物の様な現実の人々の一進一退から奏でられている。それは人間性であり、愛の故郷は大人に成る事に見切りを付けずにいられるだろうか?書物と現実にある境目に憧れを抱き、書物のもの達は夫婦として名乗る事を忘れずにいられるだろうか? 多くの夫婦の仲から書物の中から、脳裡にまといし知識の記憶には夫婦としての記憶がいつまでも残るだろうか? 子供心にはだれが伴侶になってくれるのだろうかと行動力の無さから心細かった時期も皆あるかもしれない。さながら本の中なれば。そういった悲しい記憶は美化され思い出としながらくじけてはならないと思えるのが現実の人生ではあるが、大人としての相手の人格も認めて差し上げられたらそれはもう大人だろう……。マンガの卒業だろう、と今は思え始めている。だってそこまでの現実がマンガだから。だけれど私は子供の頃の自分にあった愛情の裏切り者にはなりたくなかった。ならなくて済ませたいから今、一生懸命マンガや小説から取り出した情報を持ちつつ、考え方を修正しながらありのまま生きている。そうじゃないと何が本当に自分に相応しい愛情の育まれる様な生き方なのか分からないから。浮わついた考え方の癖を直していける生き方は大事だし、それを考えたり、体感したり、物思いに更けたりしながら、いつかは赤子ができる事で培われる一家の家族としての愛情があったら良いなと思えた。空想から出た物語の死生観から病の生み出しがくるのであれば、現実の恋愛は直せるところは直して、直せないところは悩みもするし噛みしめる事もあった私だけれど、その上で恋愛は死生観といった大きな課題を下降しながらも上昇をして美しく空を飛行し、円を描くものであれば良い。愛情に至るまでの打算は社会の建設的な思想や行動力と混在するのだろうか。結婚や出産などが打算と打算がいつしか愛情を生じさせ、建設的健全さになるには情けを開拓する意志は書物と世界を平和に暮らせる日々を育む。そう言った連続の世界が人々の暖かい愛情の気持ちからくるのが日常生活だろうから。その繰り返す書物との垣根を無くし健全な社会性と家庭での愛の故郷といった思いで正した明るい家族がどこかにはいるのだろうし、そういう国がどこかにあってほしいし、あるのかもしれない。この国の大人の人ってそういった気構えを持たないのだろうか? 何人もの頭の良い女性はくつがえされる事を恐れ、更にくつがえされない事を重んじて自分が書物から獲た知識を尊ぶ。恋愛や死者の人々もいずれどこか安住の地に無事に還ると思いたい。皆、個人に対して壁を作る様な半人前の心が元の様に一人前に成るならば、短い恋愛マンガさながらに、愛や情けといったものに信用しきれないのに信用してる無垢な心を重ね重ね貼り付けていった自分なら、結ばれし相手を過去の記憶として気持ち落ち着きを尊び、その上で今の相手には消沈したくないけれど、先の事を考えて確実なものはない事に気付かせたいし、明るみに出た曖昧な答えからでるものが本質的な答えなのだと分からせたい時もある。そこはマンガだけでは無い世界だとしても、信仰心に核心的な心の純粋な叡智の窯の底に蓋をかぶせる事が出来たら。大人になっても、子供の様に本能的にオネショをした時期もあったわたくしだから、お昼寝でも良いから眠りたい。子供がえりした時期が以前にはあった事ですし、この国のその眠りをさまたげない安心する日常があるならば、愛情が何の値打ちか見定めている半面、束の間に時代の流れがあり、その時代が次第に2つの結婚リングの様にいつか天国から現世へ使者が迎えに来る日、不動な生き様を子供達に見せて眠る様に逝ける様な大人の立場があれば良いと思える。それが青年の壁を乗り越えるといった事なんだ。その事を忘れたくなる時もある、忘れたくない時もある、忘れちゃいけない時だってある。それゆえに出来ない時もある。そんな気持ちが、次第次第に人間としてふさわしい生き方になって行くのだろうなと思えた。人間には人間性ゆえに出来ない事も多い。子供の様な大人のそれに、成るか成らないかの様な、がい然性の立場の世界だった。その頃は私は大人のような心としての思慮深さを保持できた時でもあり、考えたり感じたりどちらも無くしてはならないのだと思い始めた時期でもありました。心の模様を固定された中でも貫ける、意固地でも頑固でも、それが自らの心に安心をもたらすのであれば、それはさりげなくても不器用でも曲がり方を知らない親になろうとする立場の子供の様な大人であり、大人としての優しさの本音であるし考え方であると思えた。それが本来の恋愛から発展した私達、いずれ子を持つ私自身の親の生き方で、それが大人の証であるのだろうなと考えたし思えた。願いは太古の昔からの罰への謝りであり今では気持ちは日常の助け合いとして書物は栄えている。極少数の夢のメイドとの対話での夢枕話。そして午後になるとメイドは夢の中へ消えていった。



そして王女ユフィーは目を覚ました。




「……」


「どうしましたか? プリンセス・ユフィ―?」


「つまりそれって……私が若い頃にできなかった課題にまた挑戦した方が良いといったことですか?」


「今になっても理解に、苦しむと言うのですか?! では噛み砕いて言いましょう。……つまりはですね。あなたは王族として『力』で人々を従えて。『お金』で国を豊かにし。王女として国王になる『男性』を城に迎え入れることです」


「……はい」


「……はい。『力と、お金と、男性』の三大要素。そして赤子を生み、お世継ぎを育てること。それは、『あなたの人生の課題』でもあります! プリンセス・ユフィ―!」


「『人生の課題』……ですか?」


「そうです!今からでもおそくはありませんよ。今回は星5つの難問です」


「先生?」


「そうね……。とても難しいですが、母親としての心得は今回は置いておいて、他の三大要素を……それを今回の宿題としましょう!」


「そんな大きなこと、私にはまだ無理です!」


「誰に知恵を借りてもいいですから……それにこの課題には、いつものような期日はもうけません! 貴女はよく問題の解決を忘れるので卒業の証しに私が貴女を真の女性として認められるまで、子供だという情報を遮断しても生きていける価値を身に付ける日が来るまで......それまではね......大人は、大人の価値は幻だったと思いなさい」


「……」


「どうしました?」


「《……王女になるよりも、『女性の在り方』をまずは知りなさいってことね。納得は行くけど……でも……》……はい」


「悩んでいるようですね。……良いでしょう!」


「え?」


「あなたが悩みぬいた後の答えを教えてください。先ほど言ったように、誰に知恵を借りてもいいですから、あなたなりの答えが見つかった時、その答えを教えてください。それまで……あなたの悩みは宿題にしましょう。私はいつまでも待ちます。……だって、あなたの先生ですものね」


「……はい」


「お父様、私は酒豪の男性が嫌いなのです。子供っぽいおじ様は好きなのだけれどね。だけど、、、平均的で中性的な男性も好きですわ」


こう言っている王女は、口には出しませんが、その自分の父親でさえ嫌っているほどです。


それには幼少期の忘れられない、苦い思い出があるようですが。


そのような王女ですから、ましてや男性と契りを交わすなんて考えたくもありません。


そんな中、このロイーウ城にはカラクリ鳥を世に生み出したという、王国のサイエンティスト【ホメタス】という男がいました。ホメタスの年は四十代ほどですが、見た目はなぜゆえか、沢山のしわのない顔をした、青年か中年かに間違われるほどの男です。その変わった風貌の男にユフィ―王女は、何を思うのでしょうか? 少し城の者の様子と、ユフィ―王女の昨今の心を見ながら、やがて更に深い王女しか知らない、一人の深遠な世界まで覗いてみましょう。


夢のような世界{その壱}


【その男はカーフィの城の軍事兵器の開発にも携わっています。


サーヴァントは、普段は夢見がちで人に無関心に見える男でした。しかし、こと誰かが悩みの相談を持ってきたときだけは、話に耳を傾け、それに応えました。


ロイーウ城には他に知恵の利く老人がいなく、一人いたホメタスの上司の博識だった老人はこの頃、旅に出ていました。


その為もあり、その部下のホメタスは、城の者から相談を持ちかけられることも、たびたびあったのです。


だけれど、ホメタスは相手が悩んでいる時にしか相談にのらない、口を利かないので、その愛想の悪さに、城の中では毛嫌いしている者も多いようです。


ユフィ―は今、男性を、話したこともないのになぜか気に掛けていました。


なぜなら、その男が人に平凡と思われても無口で愛想がないのは、男が自分の行動に自負があり何か人には言えない思惑があり、それに配慮しての様子のように、映ったからです。


だから、そのホメタスの物腰に、『個人的なある腹黒さのない男なのか? といった興味』を抱いてしまい、ユフィ―はホメタスに関心を持たざるを得ない気持ちになったのです。


記憶をたどれば、ユフィ―のその、知的な興味の最初の出所は、周りの侍女たちの様子を見たのが始まりでした。それが自分のホメタスに対する今の想いに絡み、興味を更に膨らますのです。侍女たちの中にも、真剣に相談にのってもらった者が今まで少なからずいました。過去に侍女達は『殿方は答えを出さない事もある。けれど真剣に話を聴いてくれるから安心ができる』と一様に言っていたのです。それはユフィ―のホメタスに対する、今のその胸中と重なるところがあり、心から溢れそうなほど、ホメタスに対しての興味を引き立てました。ユフィ―は、そのホメタスの、『答えを出さない事もある――』といった話から《言葉で言い負かしたりが嫌いな人》なのだと思えたのです。そう、言葉で攻める ように説くのではなく、見守ることを好む人。


そういった過去のホメタスの様子から、今になってユフィ―は相談した侍女たちの安心し、問題が解決したような顔を今まで見てきたことによって、ホメタスが無口で愛想がないのはやはり、経験の豊富な自分の知識を、大っぴらに他のものに見せたがらない、ひけらかさない為なのだと、相手に配慮した慎ましい物腰の人物なのだと思えました。


それゆえ自分の普段からの悩みや疑問さえも、ホメタスの知識からすれば、答えてくれるのでは。いや、ホメタスと同じ目線で礼儀正しく接することさえ出来たとしたら、ちゃんと答えを出してくれる。そんな律儀な人物ではないかと、素直に思えたのです。


それは例えるなら、経験豊富なおじいさんやおばあさんに、知恵を得ようとしている純粋な子供心のようなものでした。そう、ユフィ―にはホメタスのイメージが、侍女の様子を見て、他の誰よりも自分にとって賢き者であり、憧れだったのです。たとえそれが苦手な『男性』だったとしてもです。


それゆえユフィ―は、憧れのホメタスと話がしたいと思い、日々、何かホメタスに相談できることを探していました。


普段から色々と疑問の多いユフィ―でしたが、本当に心底、悩んでいることを話したことがない相手に最初から話すほど、軽率ではなかったし、それを他人に話す勇気も持てないことに安心もしていたけれど、先行き不安だった。


たとえそれが憧れのホメタスだったとしてもです。


だけれどそれも今は、『あのホメタスならば』と言った気持ちが、いつの日からかつのり始め、ユフィ―は《できれば、私の内面に関わることを必要とあらば……。ホメタスなら大丈夫だとは思うけれど、周りの者には口を閉ざしてしまうほどの、なんとなくだけれど本当の相談が良い、本心で語り合いたい......。でも本当は話したく無い》と思っていました。


そして昨今、ユフィ―はホメタスがカラクリ鳥を造った話を聞き、


『これが本当の意味でのきっかけになるかしら......本当の意味で淀みのない気持ちになるかしら......』と思いました。


ホメタスはカラクリ鳥という鳥を、生み出したらしい。


生命を産むことを拒まず。人生にあせることと落ち着くほどの力を持っているならば、人間の赤子を造ることもできるし、死を終わらせることもできるのではないかと。


そうなれば王位継承の男の子を秘密で造ってもらえば、王女にとって、くだらない男性と契りを交わす必要もなくなります。


ホメタスは街外れに根城を持っています。


ユフィ―はその男に会ってみようと思いました。


《ホメタスに会って国王を説得するための子供を、【カラクリの赤子】を造ってもらうことで、この先、小言の多い、国王には有無を言わせないわ。たとえ機械仕掛けでも子供は子供。だから当然、もしカラクリの赤子が誕生したならば、お父様には本当のことを言うわ》


しかし、王女はそうそう簡単に城を出る事はできません。何かしらの正当な理由がなければ……。


そんな中で、ちまたで流行っていた絵画にいつしか興味を持ち始めた頃のことでした。


ユフィ―が芸術に興味を持ち始めたのは一体なぜなのでしょうか。


その芸術に興味を持ち始めてからのユフィ―は、毎日毎日、美しいものへの想いはせて、外に出る事ばかりを考えていました。《ああ、あの芸術の島国【ダヴィの国】に一度でもいいから行ってみたい。どうにか真っ当な理由で、普通の人々の中に華やかな世界へ訪問者としての立場の上、旅行はできないものかしら? ……そこでしか見られない美しいものを私は描きたい!》


しかしつい先日から【ダヴィの国】を往復している定期便は、運行を停止してしまいました。


ユフィ―はそのことを知ったのちに、もう一つの憧れに想いをはせます。


《ならばあの北の湖に行きたい。教科書では習っているけれど、大地にぽっかりと大きな水たまりができているなんて、想像しただけでとても不思議で楽しい光景だわ。……その光景も絵にしたいわね》


【ユフィ―は女性の夢の中に中性的な『美』に対するあくなき探究心を植えつけられた絵画の女性の妖精香であり、男性中心の芸術世界などに心を向けると、うるわしい世界の大自然のある外に心を向けて、心の外出は三日間夢の中の殿方とリビングで日常のお話しをしている。その夢の中で儚い世界を求めて、そこに優しい猫を義湯猫を殿方として見いだし、かわいいや、かわいそうだと思える心を大切にしていた。そこには何ものにもこの子では無理ではないのかと思わせる猫に似た補記や、家主側は城での日常のさわがしい生活ではめでたい正月を迎え、一年の休暇でも歩くヨチヨチの赤子を育てていた両親。ヨチヨチ離れしていたよ。私は元気だからと赤ちゃんの頃は思っていたのかな。粉ミルクを愛していた帽子の似合う赤子だったから。浸かった産湯になら湖で無邪気にたわむれてみたい、という子供心があいまって、昨今、美を愛する女性と自然な遊びに気を取られる少女の気持ちを行ったり来たり遊泳して勝ち気になったり、弱気になんてなるものか! と虚勢を張ってみたり、得体の知りさえ分からない真実だとわかっていても何か神を信じながら本心では信じていない自分なのに独善的な信仰を求め生きたりして、本当に自分にとって信仰心て何なんだろうと日常的に頭をかかえた時期もあるけれど、今は流行りで文化が変わろうともそんな気持ちをいつかは消化して自然と受け入れる心をそれとなく育んでいることが大切だと思えた。気品に満ちた美にこだわらない生き方も良いし、色々な価値観を垣間見て遊んだり間を挟んでお手伝いさんと会話にたわむれていました。それは楽しそうな行為にも思えますがその水面下では実は、ユフィ―の心は自分では自覚の仕様のない嫌悪感がきっかけで、揺らいでいたのです。その女性としての悩みにも大きく影響を与えていきます。確かに日常の生活を城の中ではあるけれど楽しんではいたのですが......】


――子供心を残したままのこの頃のユフィ―は、大人としての女性らしい物腰も、現実として身につけなければならない年頃に直面していました。自分は王女としてとても悩んでいた時季もあり、生き生きといきることには不安もあったけれど、なんとなく自然の森林に信仰を仰いだ方が良いのではと思っていた。それは信仰を持つことで自分の幼い頃の消さなくて良かったと思える優しい気持ちを失わなくて済むと思えたから。悲しみからでた優しさだって良いじゃないか! と怒りと共に断ち切れない想いを心の傷になればなるほど誰からも拒絶される気がするくらい持っていたから。心の傷は心の傷だから誰にも見えないし、孤独な思い込みではあるけれど、いずれ伴侶になるのではと思い込んでいた相手にさえ誤解もされていたけれど......。その頃のユフィ―は、間近に迫った女王にふさわしい、うるわしい女性にも、凛とした母親にも変わらなければならない年齢が近付いていたことに怖じ気ずいていました。それほどユフィーは子供でした。それは、王女としてお世継ぎを残さなければならない立場として、王子を産まなければならない、という宿命を持っていたから頑張らねばと思っていたし、最近ではそれは、ユフィ―にとって現実に迫ってきた、大人の女性として母親になることへの、臆するほどの不安や戸惑いまでにも心の中で膨らんでいました。日常ではこだわりを捨てて生きていける精神性を持っていたかったから何を信仰の対象にするか迷っていた。


母と幼いころに別れた、そのぬくもりをあまり知らないユフィ―にとって、城での日常の生活で大人の女性の思いを感じられる様な方々に触れる機会が少ない為、母親は未知の存在でした。ですから二十代半ばという年齢になった今、そのような存在にはなれないのではないかという、不安の気持を強く抱いてしまうようになりました。その為、自分が大人の女性になる姿を想像する時には、母となる自分の姿は、どこか意識の中で遠ざけていました。母の温もりを知らなかったのかな? 親の立場から見た親を自分を知らなかったのかな? 幼い当時想いました。


いつの間にか親になった。城の中庭に冷たい秋のような木漏れ日が差す肌寒い日々には小さな恋人とポプラ並木を散歩して安心していた。そんな私と子供達だった。ささやかな幸せに数年前ならば何事も多幸だとふさぎこんで笑みをもらしながら子育てをしていた私達。その当時から数年後、子供達もその話しをすると俺達もいつの間にか親になったんだなぁと、過去の子育て時代の話題には顔がほころんでいた。そんな子供の性格に私達は安心していた。



その自分等の母親は話していた。


『当時は未成年であったあなたは親になるといった気持ちを大切にしていた。家では子供みたいで私たちから離れようとしなかった情に厚い人間だったようだけれど、まだ相手の両親には感謝も出来ない子だった。あなたは子供であったのでしょう?それが悲しかった。私たちあなたの両親としてはね』


私たちはそういった感謝の出来ないあなたを世間に出す前に、前もって礼儀を教えられなかった事に後悔していた。心の中が見えないあなたからの気持ちを受け止めきれなかった。あなたは大人としては充実したかったのだろうけれど、その私達の前ではけれどもけれども子供でいたかったようだね。私達の両親のジジとババから言わせれば今の社会で生きている身の上だから性別や大人や子供への見方には絶対な垣根は必要だろうし、そういった社会はいつまでもみんなの力で固持しなくてはならない。けど母親とは逆に、極端にそれにこだわらない人生を歩んだ方が良いのでは? 健康なのでは? と思えた霧中の神話伝説の国、儚い人生観。今の社会性は人としての人格を否定したくない、といったみんなの考え方は正しいし、それが、それぞれ次第次第に人間としてふさわしい生き方になって行くのだろうなと思えた。神がかったり神話がかったり、それを正しい信仰心だと知らず知らずのうちに思い慕い考えたり、感じたりすることは人間が人間でいられる大切な時間。世界は再び神と人間のどちらの価値観も無くしてはならないのだと思い始めた時期でもありました。人間としては大地で生きていても心の模様は天国へ行っても変わらない。代わり映えのある世界でも固定された中でも格好に拘らずに大切なものは平和だと貫ける、意固地でも頑固でも、それが自らの心が安心するのであれば、それは去り際があっても邪さがあっても、不器用であっても、曲がりかたを知らない私たちの神の落とした人間としての身心の形。それは私達の望む世界からの神の優しさの本音であり、思想であると判断した。だからといって自分が天国を夢見る儚き現世で大人となる姿を想像すると、人間が人間として生きる事は大人としての自分を受け入れない時期を乗り越えて、図らずとも大人の完結と未完結の気持ちを受け入れて達観する事が良い事である。過去の偉人達が神になる姿はいずれ期待しながらも、その姿は、どこか意識の中で暖かみを広げる偉人は人としてのイメージが強かった。それは現世での育みから社会秩序の人生を次第次第に忘れていきながらも信仰心だとか座禅だとかは忘れる事なく。神の世界は神のみぞ知る世界でなくては人は何ものにでも化ける資質を持つ。神は偉人や人にとっては話さなければ見えない社会に融け込んでいる。赤子なきところ神は成立しても意味があまりないし、人間の社会も成立しないと人は神をイデアの日の大地から遠ざけていました。逆に人間の社会で生きる事で神様の温もりを知らなかったのかな? 神の立場から見た私ら人間としての子供達は、私達は、現世での教えの世界を死後に続く様には知らなかったのかな? 幼い当時心細く切なく神はいないと想いました。


そこからひるがえし、神の存在意義を明白にしようと意気込んだ白昼夢から醒めた軟弱で柔和な寒い心の愛情の絡まれた世界。その現世に若さゆえの思春期のトンネルを抜けた聖女である彼女。少しずつ明るい柔軟な心が育まれる時期はまもなくだ。蟠りはありそうな彼女だけれどそれで良いと思えた。優良な人間の様に垣根があっても何でも適応できる事が大人だと言うことは確かにあるけれど、それで良いと思えた彼と彼女だった。


ユフィーは両親の考えを地平線を見つめる様な果てしない海の様な労使の発想と自分の想い出とを重ね合わせ、妙案と思うけれど、そこに新しい道理を模索しようとした一人の女性として、人間として、玄人の様な者ものから授かった宝物のような考え方だったのです。それは聖言なる労使の中の死の価値を穿って行けそうな予想もしない妥協案の様な自然な発想でした。


それは母親の考えだけではなく主体性を持ち、精神的に模索した自然な思想の選択肢のもと、寄り集めてまとまった自分なりの基準であり、人や生物や自然に素朴に優しい思慮深さでした。


すでに決められた未来に嘆き続けることで、空想として心の中で想い描いた女性に収まろうとする自分の考えの方がまさってしまうことへ誰しもが恐怖を持たなくてはならないと思えることが大切。それは他人を大きく否定してまで自分の価値を貫いてはならないゆえ。他人の話にもそれとなくでも良い、意固地でも良い、頑固でも良いから耳を傾けるべきだと、そう思えた。だからこそユフィ―は海のものとも山のものとも想像がつかない『大海は母であり母性愛』といった過去の天文学者であり、詩人でもある偉人たちの予見したすばらしい現実感を崇拝したかったし、その価値を不安から安心に変えようとしていた。けれど母なる大海を崇拝しようとする以前に悶え苦しみ崇めていた大いなる宇宙。


そう、大事な宇宙を崇拝するということに人間らしい自然な発想を見いだしたかった。だけど若かりし頃、現実のさなかでの純粋な少女としての豊かな世界に夢を見る様に生きていた。自分の世界は不思議な現実の環境である事を感じていたけれどそこは見ない聞かない喋らないようにして。そのあり方に発想や体感で森林や草原や建物や図工の校舎があたかも神聖なる礼拝堂の様に感じていた少女時代。そんな一面の想いをいつまでも忘れないでいたかったし、今でもそうありたいと思える懐かしい心が未だにある。善悪は別にしても大事な事はいつも、いかなる時も仲間が教えてくれていた。あの子供の頃を悔やみながら。あの頃の様に人生が泥にまみれても、だからゆえにか、考えあぐねた末の結論を出した時、私は何を思っていたのか? それは自分の心や健康を守るためだったのか? あの頃の、や、今も一人一人の人生とは何だったのか? 頑固な意思とは身を守る為に思い付いた思案だったのか……。それは今ではわかっている自分なのか?


 今のユフィ―の心はそれを表していました。


心と海には何か共通する価値観があるのかな? 小さい世界から大きい世界までいつまでも続く様な、だけれどどこかでお母様が夢に似た歯止めをかけてくれた海に落ちたイカズチを。


【四季色とりどりの世界で見れば、宇宙を要にする花々咲くとき。春の時の解き方に太陽と雲の揺らぎあり。公な宇宙に感動できる安心があれば世界にまとまりの歴史あり。更に区域分けされている世界を創るのであれば、夏には他の國からの使者の砕けないヨット使いや利用者にはオールがいる。休みは秋に苦味を感じるより、自分の好きな木に身を寄せて、木の朱の毒に疑う種を拾うより雪の結晶の想像できる1年後の時代の進行と停滞を繰り返す現在に希望を抱いている方が、余計なアイディアが浮かばないのでましかなと思えた。そして冬来たり、天の粉の豊かな島に飾りの鏡を大地で隠し、また春来れば結婚当日の安らぎの良い辺りでは性格を兼ねる女性の先祖の世に、にっこり笑って照れてる後の方が驚く程、尾を惹かないと思えた。私は大人の女性になりかけてそういう者になっていた。私の前世の方は時を遡る力で解きたいものがあり、何処からかやって来たのかなとも思えたし、前世のお母様はそれを知っている軒並みの見える日本家屋に住んでいたのだけれど、洋風気質なレモンティーをこよなく愛する女性だった】


ユフィ―は女性である。


それはユフィ―が今現在は、自分の心で想い浮かべる女性としての美しさを、今ちまたで流行っている国民の芸術『絵画』に求めている様子から見て取れます。


それはユフィ―が芸術の国へ憧れながら、いつかはその絵画に没頭し……『美』を求める女性らしい自分に酔うことで、あたかも母親ではなく、自分の中の凝り固まった女性像に陶酔するかの想いで、芸術に向かっているからです。ユフィ―はそうすることが母親を体験しなくとも、大人の女性になる道筋だと信じ、その思いを昨今大事に育てているのです。


ですがその行動に全てが収まる訳ではありません。なぜなら今、自分が受け入れられない、大人の女性の一つのステータスである、『出産』のことなどは、自分には無いものとして考えているからです。


だけれど望みもあります。ユフィ―は子供が大好きで、赤子は欲しいと思っているからです。


しかしながら、やはり、母親として伴侶を考えるとなるとダメでした。


大人、母親、男性、出産。


結局のところ、心を色々と巡らせながら、悩みもするけれど、だけれどユフィ―にとって『美への陶酔』を求めることが大人になることで、それは生涯追い求めたいものでもあり、それが現在の母親になることへの、臆するほどの不安や戸惑いを消してくれていることは事実でした。


それはひと時の安心にもつながることだったし、それに『自分の人生に望みを与えた考え』であったことには変わりは無かったようです。


【一人の女性として心を巡らせ、やっとのことで一時の安心を手に入れてきた気持ちを考えると、ここはユフィ―をほっておきたい所ですが、しかしながらそんな折、ホメタスに機械仕掛けの赤子を造ってもらうという、何かしっくりこない考えを、自分の内に秘めたことによって、小さな頃から抱いていたユフィ―の心の骨格ともいえるある信念が、崩れ始めていることに、新たな不安を感じていました。ユフィ―はまだ、自の意思で己の価値観に泥を被せてしまうことがあったのです。母親からの垣根を何事も敷くことが価値といった考えとそれに反発して垣根を自分で考え思い改めて敷いていく事に楽しみを見いだして行く生き方。


そういった判断の生き方に選りごのみをいれる、する行為に対しては人生を社会に適応してこその花咲人生としてみすぎる若かりし友人への将来の展望とトンボ返りをどうするか? クソくらいとどろどろと長引かせたらいいのだろうか? それが健康だと言えるのか? と。しかし、今は情歌の美にたわむれている時でいいのではないか。自分の相方に人格を求めるならばそれ相応の価値を認めなければいけないのかな? その相方に性格を認めるだけならば楽なのだろうか? 歴史の開拓精神は何かに守られているのだろうけれど、それはロマンとして音の無い世界観に任せるのか? 天命をはたしてから10年20年と経ち私の大事な信念が色あせてしまう前に、何かをしなければと思わされました。ユフィーは他の者の話には耳を傾けようとしない自分を保持しようとする意地っ張りな性格でしたが、短く済ませたら何かとはかどらない風の世界の空の雲から個人的な想いと思う本能的で禁欲的な資質を持った女性でした。だからそれを自分でと対策は練るのです。何かユフィ―の心が動き出しそうな様子です 】


女性の中の琴線の揺らぎを紐解けるか?


(1)


今やユーラシア大陸が誕生して4700と余年。


世界も過渡期に入ろうとする時代でした。


ここからはユフィ―の20代の頃のお話になります。


===================


この国でも芸術にいそしむ人々を目にするのもそう珍しいことはありません。


絵画や音楽が街にあふれ、庶民の暮らしも活気づいています。


ある日曜日の朝


……そうかえされた、王女のユフィ―はと言うと、最近になって思うところがありました。


「私は知っているのよ」ユフィ―は澄ました目で国王を見つめます。


「それはお前のことを思って……」


「……」


「そうだ! お前のことと言えば、ユフィ―!」


「何か?」


国王は笑みを見せながら、


「お前のお見合い話の段取りを今進めているところだ! まだ気が早いかもしれんがな」


「……え?!」ユフィ―の中で、


「喜べユフィ―……ははは!」


「……そんな」ユフィ―の中で一時は収まっていた……不安が再びよみがえってきた時でした。


この父親のその短絡さがユフィ―は嫌いでした。それに――


ユフィ―は不安をかき消すように話題を変えました。


「お父様、ダヴィの国への定期便を止めたのはなぜなの?私はあの国へ憧れているというのに……」ユフィ―は美しいものへの喪失感を胸に痛みを抱きつつ、先程の気持ちを忘れようとしました。


「ダヴィの国の事はもういい、ユフィ―」


「え?」


「お前は詳しい事は知らんでいい」


「なぜ……?」


生まれて二十数年の間にユフィ―は噂に聞いていました。


母がユフィ―の小さい頃、この国を出て行く際に言っていました。


【戦争に使う力はお金がすべてではない。色々な多種多様なものの中からそのような力が生まれたと私は思うのです。】


母はそのような力を否定するためという気持ちもかねて植物や芸術を愛する気品に満ちた性格になっていったのです。


ユフィ―は母の趣味が当時はわからなかったけれど、その気品に満ちた性格をなんとなく好んでいました。


そんな母親が時折見せる、もの悲しい表情も気になっていたのです。


「国は小国だ、戦の結果は見えている、ユフィ―」


国王は手に持った水差しを指でもてあそび、一言「花はおしい事をしたな」と言い、悲しげな顔をしました。その表情はまるで戦争のことよりも花のことを気にしているようでした。


そんな時ユフィーはひらめきました。


《外に出ればあのホメタスに会って男のカラクリの子供を造る相談をすることもできる!》


「お父様! 私は外に出て絵を描きたい!」


「ユフィ―! 王女が街に出るなどいかん! 王女は城にてその振る舞いを問われる! 街に出ていたことなどばれれば町民たちに面子が立たん!」


「お父様がいけないんじゃないかしら?」


「ううむ……」国王は頭をもたげ悩んでいます。


王女は国王に芸術を習うため、どうか街に出て絵筆を振るう事をお許しくださいと申し出ました。


「仕方ない……私が原因でもある訳だしな……だが……」


国王は一週間に一度、城から出る事を許してくれました。


しかし条件として街では変装をする事と、護衛兵を一人付けるといった条件を言いつけられました。ユフィ―王女は内心してやったりと思いました。


こうしてユフィ―は、ホメタスに会う口実を作る事が出来たのです。


ベランダから城の外を見ると、街はにぎわっていました。


ユフィ―は思います。《やっと外に出れるのだ。一時でいい。『赤子を産む』ことは忘れよう。


それにホメタスにカラクリの赤子を造ってもらえれば済むことじゃないか。本当にそんなことができるかわからないから、その思いも気休めにしかならないかもしれないけれど。母親になることも……自分が赤子を産むことも今は考えなくていいんだ……安心していいんだ……。安心していいんだ……》


ユフィ―は不安を抱えながらも、《自分はまだ幼いのかもしれない》と思っていました。


そこに二人の男の声が外から聞こえました。


ユフィ―はベランダから下の街路地を見下ろします。


「そこの男、ナイフを置き、犬を放すんだ!!」


「ヴィジョンちゃん!! あなた! どうかうちの子に危害は……」


「か、金だ!! おれには金が必要なんだよ……」


そこには警官と犬の飼い主の女性。それに、こそどろがいました。


どうやら城付近の高級住宅街の屋敷に入ったこそどろが、屋敷の司祭に見つかりましたが、そこの飼い犬を人質に取ったようです。


「か、金だ、うちには女房がいるんだよ! 食わせてやらねえと……」


――ドンッ


そこに鋭い音がして、こそどろの胸から青色の煙が出て、こそどろはその場に倒れこみました。


どうやら何かが当たったようです。


「良かった……ヴィジョンちゃん……」


ユフィ―はその状況を目の当たりにして、衝撃を受けました。そしていつもの疑問に答えを求めるくせで考えました。《こそどろは……お金を欲しがった……奥さんのために。……お金と……女の人。警官は何かをかまえたら、こそどろは死んだように倒れこんだ……。たぶん……何かの武器だわ……。……力。【お金と……異性と……力】》


ユフィ―は思いました。


《これって数日前のマゼンダ先生の授業で出た、私の人生の課題だわ……。……そうだ! ホメタスに会ったら……このことについて聞いてみよう! すべての事は聞けないかもしれないけれど……もしかしたら一つでも聞けるかも!》


ユフィ―は赤子のことよりも、今はその三つの課題に、関心が移ったようです。


その心はせわしなかったですが、母親になること、赤子を産むことへの不安を今は忘れて、何かに集中していたいのでしょう。再びよみがえってきてしまった女性の気配を消すために。


ホメタスはユフィ―王女に、三つの事柄、全てに答えを導き出せるのでしょうか?


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そこへ行く前になぜユフィ―が男性を嫌いになってしまったのかのお話をしましょう。


それは5年程前の事でした。年は18歳。


ユフィ―には中年のゲタウリという護衛兵が付きました。


この頃ユフィ―は男性がどういった人格を持ち争う気持ちを捨てがたいのか興味を持ち始めていました。


ゲタウリはごく平均的な体系でしたが、甲冑からぬんとでている腕の筋肉と太ももの筋肉が、一般の兵士より隆々としていることは、城の中で兵士を見慣れているユフィ―には一目瞭然でした。


ユフィ―はゲタウリが付き人になってすぐに面と向かってこう発しました。


「ゲタウリ、あなたは私に半径2メートル以内に許可なく近づくことは禁じます」


「……はっ!」


それから間もなく、


――二人は街の者たちが休日の日を選び外に出ることにしました。


色々ありました。そのなかでユフィ―は


【その一日を満喫してきて夜に城に帰ってきたときの事でした】


ベッドの上でしゃがみこみ


外界からの刺激を通して体験を得た今日の自分に思いをはせます。


ゲタウリからは男性のイロハを聞いて、ちょっと心がときめき、私にも異性に対しての魅力はあるのかしら? とゆっくり布団で寝転がり一人で妄想しながら、男性との交際が丸く収まり、生きとし生ける者が全て子供を産む時代が来るのかしら? 私は思春期の頃の心も感じながら気持ちだけは大人だと自分に言い聞かせ、姫といった立場もありますが、私としましてはこの歳でも男性と付き合えるのではないかと。お酒も少し飲んだことですし、ひょっとしたらと、どこかの一般男性と交際した気分で……そういった考えがふらちだなぁと思いながらも眠る前に独身貴族のパーティーに出席した時のことが心にしんみりと浮かびました。そして改めて考え直して今日の散歩の気分に純粋な次の目標を沢山掲げたいと思いました。


街では雑貨屋や青果売り場、魚屋、骨董鑑定所、武器、防具屋などもありましたが、心の中で今度の休みまでの段取りをどう考えればいいのかしら? と想い街で色々自分は他者への関り合いを優先するよりも国と国との国交に気持ちを向けていれば誠実さを忘れないでいられるのだろうな。そこに個性を見いだせれば何事も上手くいくだろうと考慮して、来週の街での探索の作戦を眠気まなこで考え、朝目覚めたら次こそは結婚式場の結婚式の視察を課外授業と称して出来るかな? とほろ酔い気分でソファーでうたたねていると、うとうとと妄想して心を穏やかに動かし、今日の白昼での街での光景を眠りながら思い出しました。


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まずユフィ―は、ゲタウリと話す前に、城外での軍資金を作ることにしました。


その為、自分の貴金属を金貨に変えようと質屋に立ち寄りましたが、質屋にその貴金属を出すと、『そんな高価なものを交換なんてしたら、こんな小さな質屋破産しちまいますよ』と言っていました。ユフィ―は不満に思いましたが、ちゃんとした値うちで見定めてくれて、あこぎな取引をしないところが、良心的な質屋だなと思いました。


ユフィ―は店の中でゲタウリの首元に光る銀の鎖に気付きました。


「それをちょっと売りに出してくれればいいのに」と冗談めかしに言いました。


するとゲタウリは鎖を甲冑から引き出します。


その先には銀のペンダントが付いていました。


ゲタウリは、「これは私の最愛の人が一生懸命に働いて私にプレゼントしてくれたものです!だから駄目ですよ!」と半ば興奮して言いました。


ユフィ―は「へぇー」と笑い、ゲタウリの、その一人の人物を一心に語る口調に、この男は自分の父親とは違って誠実な人なのかなと思い、ふいに嬉しい気持ちになりました。


ユフィ―王女はポケットから赤色のハンカチを取り出し、それを店主に見せると、「これも高価な品ですがこれなら……」と言い。金貨四枚と交換してくれました。


しばらく華やかな街の中に出ていると、お得意の美しさを求める心が騒ぎ、ホメタスと話しをするということを忘れそうな程、ユフィ―は寄り道もいいわね、と思いました。その後、芸術のダヴィの国の事が気になり始め、質屋を出て先に行ったのは街の南西に位置するチベの港でした。ユフィ―は本当にダヴィの国への定期便が運航を停止しているのか、実際に見て確かめたかったのです。


港に着くと大小さまざまな船があり、路上には海産物の取引をしている男どもの掛け声が盛んに行きかっていました。


ゲタウリはユフィ―王女に、船着き場で配られていた記事を持ってきて見せます。


「姫、どうやら先月からダヴィの国への定期便は運行を停止しているようですな」


「やっぱりそうだったのね……理由はなんなのかしら?!」


漁師たちに聞くと「船舶大臣の命令だ。理由は教えてくれねぇんだな......呆れちまうよな?」と言っていました。


ユフィ―は芸術の天国へはいけないのか、ならば気持ちを変えて、湖と言うところに行ってみたい、という思いも浮かびましたが、活気のある男たちの中にしばらくいると、その熱気にめまいがしてきて、気分が悪くなってきました。


ゲタウリに連れられて港の片隅のイスに座って、男々しているところは苦手だわ……と思っていると、急に、ゲタウリの存在が気になってきました。


今ゲタウリが気になったその理由は、カラクリの赤子の事ではなく、あの三つの課題の一つ、『男性』。つまり、異性のことです。


それは、今の周りにいる男たちとは違った、ホメタスのその個性的な人柄にありました。


ゲタウリは城の中では男性、女性問わずほとんど口を利かないので、ユフィ―は城でのごく側近のエミタと言う侍女に、以前、ホメタスについて聞いたことがありました。


『ホメタス様は自分の容姿にコンプレックスを持っているようです。失礼なことですが手は過労のせいか、年老いた老人の様にしわが入り醜く、背も鼻も低い。おまけに足も短いときたら自分にコンプレックスを持っているに違いありません。だから人とも話すのが苦手なのでしょう』


エミタはそう断言しました。


しかしユフィ―は、それも承知の上で、以前からホメタスに興味と愛着を抱いています。


それはホメタスを城の中で見た時に、男なのに若い男くささを感じなかったし、ホメタスのその風貌や、人への接し方などから、人生に対して思慮深さを持っていると思ったからです。


あえて言うならば、父親の国王のような女性に対しての軽い雰囲気を、ホメタスからは感じなかったのです。なぜならばそれは自分が信愛している男性の中の一人だったからです。


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そして回想から戻ったユフィ―はベットで眠気まなこで黎明期に入ってしまった自分に思いをはせます


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その弐


ユフィ―は国王エリックと母親であるセリーヌ王妃が、以前、女性の事でもめて仲直りに抱き合って布団の中でごそごそしている場面を、両親の部屋の扉越しに、こっそり見てしまったのです。


それが、実の父を今でも嫌う男性への不信感の芽生えだったし何よりも『大人の女性になりたくない』という理由でもありました。


その出来事のせいで、ショックを受け、若い男性から血気盛んな中年の男性までの年齢層が、今では苦手でした。それは、その年頃の男性は女性を求める傾向があるからです。


自分はそのようなものと関係を持ちたくないと思っていました。


そのことを考えると、カラクリの赤子をホメタスに造ってもらうことも仕方ない気もしましたが、やはり小さな頃からの、宮廷の教養からなる想いや、ある心の骨格となる信念が心にのしかかって、そうすることがしっくりこないことを感じていました。


その後、二人は町中に戻り、街を散歩する中でふとユフィ―はこの街の、この日の充実感に体が満たされている事に気がつきました。


しかし、目的を忘れてはならないと我にかえり、気を引き締めました。


ホメタスのことを考えると、先ほどまでののどかな気持ちが一変し、物思いにふけるような気持ちになりました。《マゼンダ先生の課題、今回難しすぎるわよ……》と。


噴水広場に来ると大道芸人が日中の照りつく日差しの中で、汗をかきながら芸を披露していました。


子供たちはその曲芸に見とれています。


ユフィ―は不意に思い、噴水広場の人気のないところへ行き、護衛兵のゲタウリに聞きます。


「……そうだわ……ホメタスがカラクリクジラを作ったという噂は……本当なの?」と。


すると護衛兵のゲタウリは沈黙を押し通そうとしましたが、執拗なユフィ―王女の口上に仕方なくと言ったところか口を開き始めました。


「……ホメタスはカラクリ鳥どころか巨大なカラクリクジラを作ったのには、ある噂があります」


ゲタウリは周りを一周見たのち続けました。


「ある画家の話ですが……若い頃、ダヴィの国から移住してきたある偉大な画家が、故郷を懐かしみ、その国へ帰りたいとカーフィの国の王に直訴したのです。今はルネサンスの最盛期に入ろうとしている時代、一人でも優秀な画家を手放せないと王は画家の故郷ダヴィの小国を滅ぼそうと大胆な計画に出ました、その際に国王はホメタスに兵器開発を依頼したのです。その兵器の一つが鳥の形をした爆弾、空から飛来し爆撃する兵器、カラクリクジラです!」


ユフィ―はその話を聞き、カラクリクジラとその生みの親のホメタス、それに実の父親の国王に恐怖を覚えました。


ユフィ―は今の話を聞くと、ホメタスに対してのイメージが崩れていきました。


やはりホメタスは兵器開発部門の副所長という身、人には冷たい、ようしゃがない人物なのかと。


そしてとても残念な気持ちになりました。


「ゲタウリ……」


「はっ、何か?」


「私ホメタスと言う男がどういった人物なのか知りたい。今回の目的は実はホメタスに会って『力やお金……人や男性』ってなんなのだろうと、色々なことを……本当に色々なことを話し……その答えを聞きたかったからなの」


ゲタウリは神妙そうな顔をします。


「でもホメタスはどういう人物なのかしら? わからなくなってきたわ……」


ゲタウリは終始、辛そうな顔をし、ユフィ―王女の話が聞こえてないかのようです。


なぜなら護衛兵のゲタウリもまた、芸術の小国ダヴィに憧れているからです。


ゲタウリは戦争時代の自分の他国の國の図書館で見かけて何度も擦り切れてしまうほどまで見定めた吟遊詩人のポエムの1ページを開いて、そこに心を融かしている世界を覗いた気分でした。そこに未来の戦争の場面を見たような気がしていました。活力であり軍人を個人的に辞めたい思わせてくれたその本の最後の一文節です。


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『平和と戦争の一節』


『各国つつうらうらに人々がいて色々な文化圏で幸福な意味を保つのは、その国その国が愛の壊れ易さを理解しているから。


それゆえに愛情の大事さも理解を深めた為に何が本当に大事か考え感じ、改めて愛情の尊さを知る国々が増えたり減ったりしてるから。


だけれどそういった時代が来る前、お金や宝石を求めても何の魅力も感じなくなってしまった境遇に愛なき歌を唄い、国旗を握りしめた兵士の気持ちとは何だったのだろう?


渇ききった口や肌には平和が見えていたのか。


また、見据えていた大陸の争い好きは戦闘マニアのようにライフルや刀などの武器を本当に振りかざし西洋、東洋画の戦国絵巻のように、争いに気持ちよさを感じていたのだろうか。


戦地の休息の時間があるならば、その時間にその人々達は、ふと日常に戻ったりするのだろうか。


興味本意に開けた心ほど悲惨な常識があったのだろうか?


気持ちに危うさを感じ、そこには触れまいと感情を押し隠し、気丈に身を心を、枯渇させていたのではないだろうか。


世界には人を恋しいと求める、人を死なせたくないと思っている戦犯もいるのだ。


求める世界は本当に世界としてありがとうと言える正しい世界だったのだろうか。それが本当に正しい選択じゃないにしても......。


世界の国境とは自分の心を潤すバリアなのだ』


戦場に花束を。


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ゲタウリが物思いにふけたそこにユフィ―の小さな悲鳴が横でしました。


ゲタウリが警戒態勢に入りユフィ―に目をやると、遠くで一人の少年があっかんべーをしてお尻を出しています。


ユフィ―は腕を組み、芸に見とれている子供たちの後姿を眺めました。


「まあ、子供だから微笑ましいわよね」


ユフィ―は困ったような呆れた顔をしています。


すると横で二人の婦人たちがひそひそと話し始めました。


「あの子、ノレールさん家の子じゃない?」


「かわいそうに、あの子、今度ここで行われる夕刻市場で奴隷商人に売られるそうじゃない?」


ユフィ―とゲタウリはその二人の婦人の話を耳をすませ聞いていました。


話によると、少年の母はアスター家という一級階級のお屋敷に召使として奉公していましたが、先ほどの息子の少年がアスター家の令嬢にある日、失礼をし、その責任を取らされて母親は召使の仕事を失い、その穴埋めの金銭を稼ぐため、自分の息子を奴隷商人に売る事になったと言います。


この街には上流階級、中流階級、下級階級の人々が暮らしています。奴隷売買はこの国の法律で認められていますが、子供を奴隷に出すほどの貧困層はめったにいません。せいぜい年に数名出るほどです。


ユフィ―は愕然としました。奴隷の取引がこの自分の国で行われているのかと。


自分が、あまりにも世間のことを知らないことへの、自分の常識への喪失感に、意気消沈していると、しだいに怒りがこみ上げてきました。


「ゲタウリ、お父様はなんでこんなことを許しているの?」


するとゲタウリは、首から下げている甲冑の中に潜めていた、銀でできた先ほどのペンダントを見せます。


ペンダントはロケットになっており、開くと若いきれいな女性の肖像画が入っていました。


「この女性は誰なの?」ユフィ―はいぶかしげに聞きます。


「結婚を誓いあっていた女性クリスです」


ユフィ―は両手を胸の前に持ってきて、胸を押さえました。それは結婚という言葉に不安を感じたからです。


ゲタウリはためらいながらも言いました。


「クリスは貧しい家の娘でした。私の両親は私が各国に名の知れた剣豪であり、クリスはその名にふさわしくない娘だと言いました。そのため私の両親はクリスの片親であった父、ルドに大金を積み奴隷として彼女を奉公に出したのです……」


ユフィ―は真剣な顔つきで聞き入っています。


ゲタウリは遠い土地に思いをはせるように言います。


「クリスは私の最後の戦いで国をあけた数カ月の間に奴隷として遠い国へ行ってしまったそうです。私が剣の道など選ばなかったら……それが理由で自分はもう剣の道は捨てたのです……だが完全にはそれを振り切れず今に至っている……」


ゲタウリは最後の方はペンダントを握りしめ、苦汁を秘めた口調で言いました。


ユフィ―は、奴隷になったクリスがどんな目に遭っているか想像すると、身震いしました。


ユフィ―は言います。


「なんて父親なの?! だから男は!!!」


ユフィ―は男に対する嫌悪感をあらわにしました。


「違います! ルドだって困っていたんです、貧困とは人をそこまで追い詰めるものなのですよ……王女……」ゲタウリは奴隷商が仕方のないことだと思っているようです。


「だって……実の娘でしょ? それを!」


「……!!!」ゲタウリは歯を食いしばり無言になりました。


ユフィ―は先ほどの少年を思い出して言いました。


「……でも今思うのはあの子を奴隷商人なんかに引き渡しちゃいけないんじゃないかと思うの……」


ユフィ―は同意を得るようにゲタウリを見つめました。


ゲタウリは王女に見つめられている事に気付くと、一呼吸置いて、少し落ち着きを取り戻したかのようでした。


ゲタウリは言います。


「しかし奴隷売買はこの国では認められているのです……私たちにはどうしようもない……」ゲタウリはそう言いユフィ―におもむろに近付くとユフィ―は「それ以上近づくのは契約違反よ!」と、少し尖り気味の口調で言い、ゲタウリを遠ざけました。


ゲタウリが丁重に頭を下げると、


「確かさっきの婦人達、3日後の夕刻、ここで夕刻市場が開かれる中、奴隷売買が行われると言っていたわよね……」


ユフィ―は目を閉じながら腕を組み、落ち着いてこう言います。子供を助けにこようと。


「しかし、私たちにその権限はありません。仮にあったとしても国王様からあなたを休日の日にしか外出させるなとの契約が……」ゲタウリは慌てふためいています。


ユフィ―はゲタウリの目を見つめ、きりっとした表情で言いました。


「私の命令です、ゲタウリ、その日は私と共にここに来るのよ!!」


ユフィ―は興奮して口元が少し震えていました。


ユフィ―は城に帰って来ると、城の兵士や侍女たちへのあいさつもろくにせずに、足早に自分の部屋に閉じこもりました。


そしてベッドにうつぶせになると、こんな時にと思いながらもふと考えがよぎります。


それはユフィ―の男性に対するいろいろな思いについてです。


《あの男、ゲタウリも自分の抱いている疑念の思い、父と同じように……たぐいは違うけれど大別は同じ、『力』。そして……『女の人』にほんろうされた人物なのだ》


ユフィ―ももう少し小さな頃なら、男性を好きになったことはありました。


社交界で貴族たちとの交流もあり、少しばかりの恋愛に想いをはせる事もありました。


でも周りに寄ってくる男たちはこの自分の、王女としての富と権力に魅了されているようでした。そのために大人の遊びを求めてくる者達もあとを絶ちませんでした。


その度に男性に対する不信感を強めて行ったのです。


ユフィ―はそういった男たちをしだいに敬遠し、軽蔑するようになっていきました。


ユフィ―は思います。《マゼンダ先生の言った通りだわ。嫌でも私についてくる課題……》


ベッドに顔を沈め、ユフィ―はまたこうも思います。《力やお金……それに男性でもない大事なものって何なのだろう?》と。


こんなことを考える自分はやっぱり少々考えすぎなのかな?とも思いました。


……それだけではないような気もしていましたが、一人でいるといろいろと疑問ばかりが頭に浮かぶ気質のユフィ―は、それから考え込んでいると、今日は良くない方向に思いつめて行ってしまいました。


《やっぱり男はみんな欲にほんろうされるんだ……。……かくいう私だって……城で同じ釜の飯を食べた仲……人間なんて自分の欲のために生きてるだけなんだわ……》


そこに部屋の戸を叩く音がしました。


返事をすると、十代半ばほどの、ユフィ―とさほど年も変わらない、顔もまだ記憶にとどめていない、新米の侍女が、


「お姫様、先程の慌てよう……良かったら、お話を、お聞かせ願えませんか?」


ユフィ―はまだ初々しい侍女の心遣いに不意に安堵しました。


ユフィ―は街で見たいろいろな出来事をその侍女に話しました。


侍女は最初こそ緊張で作り笑いをしていましたが、一時間ほど話を聞いていると、自分からも日常の事を話し始めました。


その中の話では、あのホメタスの話も出てきました。


何でもその侍女自身が静かな心と身体の病い。リングリングという心の病気で最近気持ちは楽だけれど寝たきりになった時、笑ったり、侍女は生活するお金を稼ぐために、この町へ奉公に来たそうです。


侍女は新しい環境に自分母や父からの血縁で気分障害の持病の亜種であるその心の病気が悪化してしまう時季に差し掛かった時に気持ちが浮ついてしまい、妙におたおたして嫌な気分でした。


仕草もそわそわしてしまいドジばかりやっていたそうです。


しばらくたち、表情も気持ち少しほぐれて自然と笑顔が出てきたのはよかったのですが、兵士からも周りの侍女から仕事に対しての実直さが足りないとも言われ、うとまれがちでした。


その様子を見かねてか、ホメタスがはげましの声を、何度かかけてきてくれたそうです。


それが何よりもうれしくて、この人なら私の心の中の、自分でも理解できない豊かさの中の愉快で、それでいてその気持ちが変だな? おかしい、何だろう? ……その深みをわかってくれるかもしれないと思い、話すことにしました。


話してる最中に侍女はうれしさで涙で目がうるんできて、それをハンカチで拭いてくれているホメタスも、意気揚々としていたそうです。


それから侍女は心の傷から染みい出た大きすぎる傷の入った心の豊かさは消えなかったけれど癒された気がして、仕事も励んで出来るようになったと言います。


それを話した後、侍女は「王女様もくじけずに頑張ってください!」と言って部屋を後にしようとしました。


ユフィ―は不意に思い、


「あっ……待って」


「何ですか?」


「その……ホメタスは一緒に生活したいとか、墓場に付け込むようなことはしなかった?」


侍女はにっこり笑い、


「そんなことないですよ」と言いました。


「そう……」


ユフィ―は部屋の戸が閉まると、ベッドに寝そべりました。


しだいに、一人で考え込んで、こんとんとしていた先ほどとは一転して、だんだん心が温かくなっていくのが分かりました。


そして名も知らない侍女に感謝と、ホメタスに何か男女の壁を越えた、人間のぬくもりのようなものを教えられた気がしました。


ゲタウリは悩んでいました。


自分は本来なら王女を止めるべき立場にあると。


また、そもそも親が行う取引に自分たちが介入していいものかと。


しかし、3日後の夕刻市場が来る前に少年がなぜ奴隷商人に売られることになったかの経緯を街に出て調べることにしました。


それは自分の立場や王女の契約を破棄してまでもその少年を助ける価値がある事なのかを知るためです。


ゲタウリは実情を知り、危険を感じました。


それゆえ、ゲタウリは悩みながらも街の噂話に耳を傾けました。


噂を聞いたゲタウリは困りました。少年が悪いわけではないと。


少年を助ける必要があるのではないか、


王女の意志に従うべきではないかと。


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エンジェル・ユニコーン


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3日後の夕刻少し前、ユフィ―とゲタウリは噴水広場の前のオープンカフェにいました。


ユフィ―はパセリと干し肉をパンにはさんだサンドイッチを、大口を開けてほおばりながら、自信ありげにこう言ってのけます。


「あなたがいるからよ、あなたがいるから心強いの。あなたみたいなタイプには、決して心から話せるわけじゃないけどね……」と。


「......」


「私は血の出るような争いは望んでいない、ただ後ろで見守っていてさえくれればいいの、私が奴隷商人たちを説得する」


ユフィ―は心から説得すれば同じ人間なのだから、きっとわかってくれるに違いないと……それがこの数日間、部屋に閉じこもり、ユフィ―が出した結論でした。


ゲタウリは思います。説得にのるような相手ではないことに気づいていない。ほとほとあきれる。


今回の一件は生易しいものではないことに気付いていない、と。……いざとなったら私はどうする……?


ゲタウリは、ぎゅっと剣のツカを無意識に、にぎりしめていました。


……その話を隣で聞いているマントに身を包んだ人物が、ぼそりと言いました。「助けてやらないとな……」と。


夕刻の噴水広場では、空や街並みがあかね色に染まってもまだ家に帰らないで遊んでいる子供たちもいます。


そんな中、異国の行商人たちが集まり始め、広場の雰囲気が様変わりし始めました。もうそろそろ、夕刻市場が始まるようです。


ユフィ―は空気にのまれたようで、これから起こるどんな場面も、子供たちに見せたくないと思います。


隣のテーブルでマントに身を包んだ先程の人物が立ち上がり、噴水広場の子供たちの所に軽く人払いをしながら近づいて行きました。


子供たちはそれを恐れて、野次を飛ばしながら噴水広場を去っていきます。


ユフィ―はその人物が奴隷商人かと思いましたが……イメージしていたものと全く違う、と思いました。


その人物は子供が近場にいなくなった後も、なお去っていく子供たちを脅すように蹴りの素振りをしますが噴水の前で大振りの蹴りをしてしまったため、噴水の水面に落ちてしまいました。マントをずぶ濡れにして立ち上がり、一つ大きなくしゃみをしました。


ユフィ―はその光景に失笑して、とりあえず、子供たちがいなくなってくれて安心したと思いました。


夕刻市場が始まるかと思った矢先――


その音はだんだんと近づいてきて大通りに姿を現しました。


それは大きな馬車でした。


馬車はゆっくり立ち止まり


そこからは大男が出てきました。


少年がひどく動揺していると、大男はじれったくなったようで、ゆっくりと近付いてきて腰に着いた鞭を手に持ち、怒鳴りつけ少年をそれでうなるような勢いでたたき始めました。


ユフィ―は震えています。


しかし――


鞭で叩かれ、少年の背中に血が滲み始めた時、ユフィ―は急に少年に近づき、少年におおいかぶさりました。


大男はきょとんとし手を止めました。


「王女!! なんてことを!!!」


その言葉に大男と母親は驚いているようです。


それを見ていたゲタウリはとうとう一塊の決意を捨て、剣を鞘から勢いよく抜きました。


大男は一瞬たじろきましたがその後、


『ははは、なんだその剣は、やっぱり噂通り剣豪のゲタウリはなまくらだったなぁ......』と思いました。


何年もの間ゲタウリは鞘から剣を抜くことはなく、その剣は錆びていました。


大男はなおもユフィ―を鞭で叩きます。


何度も何度も叩くうちにそれが心地よくなっていき、止められなくなりました。


大男は言いました。


「俺は大人たちが子供たちを性の対象にある者として見始めたことに喜びや怒りを感じて興味が湧きこの職業に就いたんだな。子供たちの味を知っているのは俺たち闇商人だけじゃないかもしれないな、と思ってな。俺には俺のやり方やプライドがあるんだ。子供たちが大人の欲に埋もれたとしても、いつか結婚させてやりてぇんだ。誰でもいいけどな......良い人がいればな」


ユフィ―は背中に血が滲み始めたので、子供をほうっておき逃げようとも思いましたがそれを聞いてやっぱりな、と考えを改めて逃げる事をやめました。そこでユフィ―はこの数日間で一本筋の通り始めた考え方、自分の人生で絶対的だと思った発想をバカヤロウと言う気持ちを込めて発言しようと思いました。王宮の教養はどこか納得しそうになる考え方で、善良な方々が備えるべきプライドなのかな?  と思い、大男が抱いている思いはそれを歪ませる考え方だと感じながらも人間らしいな、と感じたから。同じ感覚ではないけれど懐かしさを抱き嬉しさより歪みすぎていると感じたから。だから自分の立場からしか話せない罵倒を、歪んだ気持ちを正すように自分の淀んだ気持ちを即興で砕きながら、ゆとりを維持しつつ発言の中で大男に伝えました。自分でも話ながら納得出来るように、ある意味では感情を逆にしたり、思考を温め反転させながら。


「私は思います。大人の志しを抱きながら、子供の自由な気持ちを持ったり捨てたりしながら、軽やかに、しなやかに生きていることこそが本当の安心であり本当の幸せ。性とともに生活することが私にだってある。だって知ってしまったから。老い、若さ、男女といった価値が色々目まぐるしくもあり、そういった側面が大事であることが人間としてふさわしい死生観であるといった事を知ってしまったから。あなたの言うような事は大変な子供や大人を育ててしまうだろうと思う。あなたの発言を机上の空論のみで終わらせるために大人といった価値があるんだ。それは大変だし、だけど面倒くさい事だけど大事なことは習慣で身に付けさせるべきよ。大事なことは面白いことだけど、面倒くさいことはもっと大事。人類の歴史上いくらでもあることなんだと思う」


闇商人はいきり立ち始めましたが、ユフィーは続けます。


「南国のサンゴ礁の様に色鮮やかさを枯らしてはいけないけれど、私なりに近い発想で言えば、無理矢理にまでも心を感情を気持ちを理論攻めをすると、汚れを汚れと見なせなくなる自分になってしまう。たちの悪い生活感を懐かしむ事で汚れを汚れと見なす事は大事。だけれどそれと対比して子供の心や体を守るのは日常感を守るためなんだと思うわ! 大人や子供に不馴れな事件が起きるのは純粋さをはき違えた衝撃的価値が子供に影響を与えるからなんだと思うわ!」


「なんだと!!」


 「大人の心に負けないために子供の価値があるんだ! だけど、それを高みだと知る事を一歩ずれた事だと知り大人の呟きや子供の呟きに意味を見いだしたいと私は思う。それが自分なりのルールを作る事になる! だから憲法を守る警察や日常感を作り出す世界観が大事なんだと思うわ!」


「......チッ」


「変化と変化しない者たちの立場が必要なんだ!  だからあなたに忠告したい! 悪いと思うことなら、しばらく頭を冷やして考えてからまた想い煩い......子の立場になりなさいよ!! 親子の生活を分かりたくないだろうけれど......少しでも分かってあげて!!」


ユフィ―は痛みに必死で耐えながら欲のある世界に生まれたことを尊び、自分の今からする方法が仏壇に酒を納めるような方法だから現代の価値とは違うのは分かっている。けれどしっくりこないことだと世間的には言われてる。そうなんだけれど、それが今の状況なら致し方無いだろうと思い行動に移そうとしています。


「......」


やはりいざとなったらあの方法に出るしかないのかと。この場を鎮めるためなら仕方がないのかとも思いました。


ゲタウリは大男に立ち向かいましたが、鞭とは反対の手で顔面をわしづかみされ、それを振り払うことに必死です。手で大男の指をはがそうとしますが力の差に屈しました。


「ひゃはははははは、最高だぜ!!!」大男はとろけるような笑みを浮かべています。


ところがそこに――鋭い弩音がしました――


男の声がします。


「王女様、あなた様はすごい……。ただの世間知らずじゃないようだ……」


そのすぐ後に、大男が己の片方のブーツを両手で持ち、悲鳴をあげました。


ブーツには小さな穴とそこから青色の煙が出ています。どうやら何かが当たったようです。


濡れたマントに身を包んだ、背が低くて細身の男が立っていました。顔はフードを被り分かりません。


「ふぅ……濡れちまったんで火薬が完全にしけっちまったかと思ったが、どうやら大丈夫だったようだ」


男は先ほどの噴水に落ちてくしゃみをしていたマントの男です。


男はユフィ―達のところに近づいてきます。そして大男の前に立ち尽くします。


大男はとろんとした目をさせながらも、その男の正体の怪しさに恐怖します。


しかし、マントの男は大男に手を差し伸べて、こともあろうに「降参です……」と言いました。そしてその男はふところから、分厚い札束を取り出しました。


「この金でこの少年と馬車の荷台にいる全ての子供を解放してくれないか……これで勘弁してくれ」と。


大男は重たい体を鈍く動かしながらも、手を震わせながら、札束を手に取ると馬車の扉を開け、子供たちを解放し、馬手に「速くこの場から立ち退いてくれ!!」と言いその場を一目散に去りました。


あたりが静まり返ります。


そして――しばらくして。


(4)


市場は先ほどの騒ぎがウソの様に静かです。


「助かった、感謝するぞ……」ゲタウリは言いました。


ユフィ―は息を荒げています。意識がもうろうとしているようです。


「兄ちゃんの持ってるそれ何?」少年はいぶかしげに言いました。


「これかい? これは『成露銃』って言うんだ。私が開発した。馬鹿者を成人に改めさせる代物さ……」


ゲタウリはその男の言葉でふと思い、それを口にしました。


「ま、まさか、あなたはホメタス殿では?!」


男は頭に被さった布を外し


「そうだよ、助けるのが遅れて申し訳ない」と言いました。


その顔は童顔でしたがまるで青年の面でした。


ホメタスと言う男は言いました。


「火薬がしけってるせいか麻酔の効果が甘かったが、奴を成人にさせる事が出来たようだ。私の腕力じゃあんな奴に太刀打ちできない……。……何とか札束で、危機を回避できたから良かった……」


ユフィ―は「あ、ありがとう、助けてくれて……でも」ユフィ―は力弱げに「力や……お金で解決するなんていいのかしら……ホメタス」と言いました。


しかしホメタスはゆっくりとした口調で、自分に言い聞かせるように、


「力は使うもの、お金も使うものじゃないのですか? 王女」


それを聞いたユフィ―は、《信じられない……》というような顔をしました。


「そうさ! お金だよ!! あんた達のせいで私のもらう予定だったお金はどうなるんだい?! 私達夫婦を餓死させる気かい?! 金品があるなら私にくれてもらいたいもんだね」


ユフィ―は困りました。俗世では、それ一つあれば、一生生活に困らないほどの高価なものです。


これがあれば! ……このユフィ―にはそれは歯がゆくて仕方ありませんでした。自分の命、人の命、それがこのたった一つの小さな道具にかかっているなんて……と。


「さあ、どうするんだい? え?」母親に選択を迫られました。


ユフィ―は「指輪ならありますが、それはいざと言う時のために持っていたもので……」


ユフィ―は身袋に手をのばし、袋の中で指輪を強く握りしめます。


母親は「今、私らがいざという時なんじゃないかい? 私らは金に困ってるんだよ!」


ユフィ―は身袋からためらいながらも、ゆっくりとサファイアの指輪を取り出します。


「こいつは上等だねえ~」母親はユフィ―から指輪をはぎ取ります。


「無礼な!」ゲタウリは言います。


ホメタスは黙りこくってしまいました。


ユフィ―はうずくまって、うつろな目で、ぼう然と、地面を見ています。


母親は少年の頭をたたき少年を連れて帰ります。


「ほら、行くよ、バッツ!」と言いながら。


その場にはユフィ―たちと助けられた少年少女達、そして物珍しく見ている市場の人だかりが大勢になりました。


ゲタウリは言いました「金品でどれほどの家族の絆が築けるのか……」と、そして続けざまに「しかし……ホメタス殿……助かりました」と言いました。


先ほどから放心状態のユフィ―は、月の光に温かさを感じ世界に応えを見い出そうとするかのように祈ります。


そこにホメタスが、ゆっくりと近付いてきて、こう言いました。


「あなた様は間違っていない。……私たちはあの子が幸せになれるように願いましょう……」


そういわれたユフィ―は、不意に、今にも泣きそうな顔をして、


「私は間違ったことをした……」と言いました。


その言葉には色々な想いが重なっていました。


そう、ユフィ―には王族たるゆえん、『両親の教えを守り正しく生きる』という小さな頃からの、宮廷の教養からつちかった想い、心の骨格ともなっている信念があったのです。


ですから、今のユフィ―には、子供の身を金品で買ってしまったことによって、自分がいたずらな悪人のようにも感じています。


しかし、図らずも身をていしてまで、子供の命を救ってしまったそのことの重大さに、命の尊さも実感していました。


そういった気持ちになったことによって、自分がホメタスにカラクリの赤子を造ってもらおうとしていた思惑が、赤子の命を軽んじていたことに何事なのかと気付いてしまいました。


その為、はげましの声をかけてきたホメタスにも、カラクリクジラのイメージから、


《命をもてあそぶ薄情な男……》と思ってしまいました。


――ところが


そのホメタスは遠ざかっていく親子を見ながら、何かまだ今一歩足りないような


そんな哀愁を漂わせた顔つきになり、


まるでその子供を心配するかのように


なぜなのか、切なげに眺めていました。


それを見たユフィ―は腕を組、今はいるかわからない神になんとなく祈ります。意図することもなく、暖かな気持ちになり、しばらくそうしていました。


その後、ゆっくり、ゆっくりと、しだいに心が巡り始めました。そして……


そして『……なにかこの男は……今抱いてしまった、私の想いとは違った人物なのではないか?』と疑問がわきました。


そう感じるとそう簡単にあきらめていいわけがない! と改めて思い直せたのです。


だから、ユフィ―は目をつぶり、


《私も……ホメタスも......。心はいずれも、毒をもう計れないの……まだ。そうじゃないのかな?私自身も理想として見いだしている。毒を治す事を見いだしている。きっといつかは信じられるはず……疑いやすい私だとしても





と再び強く心に念じました。


――そして


「ホメタス……」


確かめるように、ユフィ―は心に思い巡っている疑問を……正直にホメタスに話します。


「力は使うもの、お金も使うものって……いったい? 私はそんなこと経験したことがあまりないし……認めたくないわ」


ホメタスはユフィ―に一礼をした後、


「それは私も悩んでいるところなんですがね……」


と言った後、眉間にしわを寄せ、


「私は力やお金は人を助けるために使うのならばいたし方ないと思っています。そう、どんな力やお金であれ、使い道を間違えれば世界の大事を巻き起こす。……先ほどのようにそれが今まで人を助けるために使う時代のものであっても……」


ユフィ―は両手を広げ、説得するように、


「違う! 私はそういう物で『人を助ける』ことじゃなくって……石や、紙や鉄だったり、所詮は『ただの道具』なのに、『人が助かってしまうこと』が……。そういうこと! そこが何よりも怖いのよ!」


「……そうでしたか」


しばらくホメタスは空を見つめていました。


ユフィ―は無言のホメタスに、自分の疑問に対する思いが変なのかと思い、


「何か答えてほしい……私は間違っているの?」と、ホメタスに問いました。


ホメタスは多少引き締まった表情をすると静観後……しばらくして、ユフィ―を正面に向き直し、こう言いました。


「そうおっしゃらないで……道具も大切に思いましょう……。それに人間も道具もすべて、元は自然界から生まれた尊いものに変わりはないのですから……。すべてが大切なんです。……いや、道徳的な話だし、その書物の内容にも聞こえますがね」


「……。……すべてが大切。……そういう考え方もあるのね。私はそういった意味でそのような枠があるならばその枠をはみ出ないくらいが丁度いいと思うけれど……だけど」


その後、ホメタスは悩んだ顔をして。


「しかし……今回、奴隷商を銃で傷つけてしまったのは……。あれしか方法が思いつかなかった私は、自分のまだこれで世がいいと思えてしまう心の炎が宿っている。それは今もなお世界や社会への変動が悪い形であるから。寄りどころのない自分に宿った悪心の炎に対してだ……守りを一歩、凍るような時代にもう一歩。人情の温かい灯りをともせたら……」


それを聞いてユフィ―は『傷つけた悪人に対して心配するなんて……』と思いました。


ホメタスはしわの寄った顔を……悲しみなのか、ゆがませていました。しかし直後に意を決した表情になりこう言いました。


「人間は本来、大人の価値と子供の価値を右往左往して立ち止まってはならない。それは人生の途中経過だからです。だから他人の気持ちに揺さぶられない気持ちが大事。負けようともくじけない意識でいることが大事です」


ユフィ―はその顔を見ていると、若い侍女から聞いた、ホメタスの優しい心を感じられた話や、想い描いていた、城での人々の相談にのるような、人情味豊かなそのようすが、頭に浮かび、そうすると、心が自然と穏やかになっていきました。


それから、ユフィ―はしばらく考え込みました。


――そして


『結局……人を傷つけようとも、いまの世の中で止まれない男なんだわ、何て可哀想で頼もしい、夢をいつまでも持ち続けていられる様な男性なのね......ちょっと現実を見ていないけどね』と思う気になりました。


その時は、そう思うことが、この国の死の美徳の正しさを問いただすのであれば文字を文字として認めつつ、アジアの含みと思いながらも、ふいになにか不思議な心の屈折を感じた様に思うことが大事。それは敗けではなく言葉のエネルギーが言葉のエネルギーとして収まり文字の光沢が屈折をして文字としてのエネルギーとして収まることで心の安定に繋がる事を悦びとしれたから。


ホメタスの話した言葉を信じたいといった想いからでした。


ユフィ―は、ホメタスの行いと思い、それぞれの善し悪しに、心の中で、なんとか妥協点を見つけたようです。


ゲタウリは言いました。


「さあ王女、城へ帰りましょう、傷の手当てをしなくては。侍女の者たちには傷のことは国王に言うなと言っておきます、心配なさらぬよう」


空が夕焼けから夜空の色に変化してきた帰り道。


ユフィ―は、今日の事を思い巡らせていると、不意に、ホメタスの『すべてが大切』という言葉が頭に浮かび、ポカン……と。しばらくそうしてぼんやりしていると、最近、常に思っていた疑問の答えに、手探りで自分の納得いく考えを、つむぎ始めました。


《ホメタスはすべてが大切と言っていた。すべてとはなんだろう……。お金や力? いや、違うわ。すべてが大切と言っていたのは……。そう、お金や力……それも含めた、世のすべてのものよね。……お金や力の威力はすさまじい。…………ひょっとして、すべてを手に入れたいから人間は、お金や力を生み出したのかしら? ……ううん、違うわ。もちろん、誰だって一度は頭をよぎることではあるかもしれないけれど、人間はそんなに欲張りじゃない、皆が皆そう思惑通りには行かないことはわかっているのだと思う。人握りの存在になっても大きな価値の上で平等の価値を捨てた力に何があるっていうのかな......。人の心条を操作することは無い方が良い。大切なのは皆に平等な......だけれど、他の誰とも似ていない私の私になれれば......皆に誤解されない自分に慣れれば良いんだ。みんな日々の生活で、そこにある何かをそれぞれ自分なりに考えながら、本当は欲しいもののみを求めたいと思っているのが人生の中での余りのでない答えですもの。……あの時、奴隷商が求めていたもの。理由なんて分かりたくないけど、分かってしまう事が怖い。だってあそこから分かる事は、何でもおぼろげに錯乱を煙や霧にまいてしまう……本当は奴隷にするための子供達が余っている現実。それを知っているはずなのに知り得なかった民衆達だったもの……。その子の親は民衆の気持ちなど考えず、これからの自分達の生活を私腹を肥やしながら気にしていた……。みんな本当に傲慢だわ……。私は父親を見て、そうなりたくないと思ったから、ずっと学んできた心の中の『死の美徳の正しさ』を求めているのだもの。お母様を……ううん。人々を悲しませたくないから……みんなと平等に接するため。死ぬために。……でも…...城の外に出てみて...…人によって欲しがるものがさまざまにあって、死の美徳以上に喪失感を抱いてしまった。ものやお金や生きること、それ自体が目まぐるしい程のことだとも分かってしまった。結局、人々の求めるもの。それに一つ一つあわせて行ったら、いつかはすべてが大切なものになって行くのかな? 私には分からないけれど、一生をかけて分かるものだろうし、分かりたいもの》


自分なりの答えが見つかったことによってユフィ―は、


《求める人や物事の善し悪しは確かにあるけれど、ホメタスはたとえこの世に何があっても、すべての人を認めようとしているのかしら? だから、すべての事を認めようと、あのように、すべてが大切なんて……とても大きな建前を言ったのかもしれないわね》


ユフィ―は自分の考えに納得したようです。


ゲタウリが聞きました。


「王女、穏やかな表情をされておいでですが何を考えておられで?」


「ホメタスの言葉をちょっとね……」


「『すべてが大切』……ですかな?」


「ええ……私は世の中のもの、すべてが大切なんて大それたことまでは思えないけれど……少なくともこれから、自分の国のすべての人々、自分の立場として、国民を大切にしていかなくては、それだけはしなくてはいけないな、と思って」


「王族としての自覚が出てこられたご様子で。私としては一歩引く姿勢が大事だと思いますが……ホメタス殿に感謝しなくてはなりませんな」


「ええ、ホメタス。会えてよかった。想像とは違ったけれど、弱い面もあるけれど……あの方は決して自分の価値に泥を被せない......そんな気概を感じました」


ユフィ―は照れ臭そうに無口になりました。


「どうしたのですかな?」


「……ええ。今は、いい人だとわかったし。 ……結局、探してたマゼンダ先生から出されていた、今回の課題。『王女の在り方』も見つけられた気がする」


「うむ。素晴らしい」


「……すべてが大切。そうね。人間として……とても壮大で美しい考え方だわ」


「そうですか、ホメタス殿も粋なことを言いますな!」


「ええ」


ユフィ―は立ち止まり目を閉じ。


《マゼンダ先生になんて言おう……》と思いました。


――翌日


「マゼンダ先生!」


ユフィ―は渡り廊下でマゼンダを呼び止めました。


「どうしたのです? プリンセス・ユフィ―?」


「はい! あの……数日前に話していたことですが」


「……ええ!」


「王女の在り方について、私なりの答えを見つけました!」


「ああ……! 素晴らしいわ! プリンセス・ユフィ―!」


「はい!」


マゼンダは真剣な顔に笑みを見せて、


「では聞きます! ……それは?」


ユフィ―はにっこり笑って、しだいにしっかりとした顔と口調で話し出します。


「それは――」


「はい」


「それは……天使の心で生きること。身近な人も道具なども全てじゃないにしても、時として一つ一つ、なるがまま、なすがまま、ありのままに、大切なことは本当に大切に……長い間一つでも、一人でも大事にしていけたら……そうしたら私はみんなに受け入れられる日が来る気がする。みんなに神様が幸せの場所の準備を提供してくれる。大人としての私の気概が自分自身の下にも上にもいるような天使の心になる。そんなとても壮大だけれど美しい魂が王女の心を作って行くのかな……と思いました」


「ええ! それならば国や人々に対して……。……というより個人に対しては?」


「……自分からも他の方々をその人その人、個々の人達が持っている神様から与えられた資質、もしくは努力する殿方や側近達を、輝かせられる人、そんな人に憧れるけれど......そのような者になりたいな、と思うけれど、なれないな、と思うけれど。......でも私は私自身を何よりも大切にしたいし、殿方、……じゃなくて、私は以前のままなら心は少女っぽくても今でなら母乳の出そうな立派な胸だからね。 夫が帰ってきても、自分やいずれ産まれてくる赤子を大切にしたいの。……だから私としましては、その様な境遇は違っても同じような心境の者達が心持ち密かに輝きを増すことに何か子供たちに期待したいなと、思いました。……まだまだ沢山大事なことがあると思うけれど……たとえ世の中が未知数であったとしても、何よりも自分が折れても世界が平和であれば、自分も個人として、世界も世界として平和ならば良いと思える人でありたい。子供に向き合える時間があったとしても、私は逃げないで自分の時間を捨てないで、自分の色を色褪せないで、自分の仕事を忘れないで、色々な方たちに平等の価値を築いてもらえるような、古風だけれどこの国の一人一人に縦社会の重要性とそこに曖昧ながらも横社会の重要性の大切さを、それに気付いてもらえる居場所を提供できたらいいなと思います。……怖いけれど……です!!」


【その後、マゼンダは微笑みを浮かべ。そこに細やかでありながら可能性に満ちた言葉を足しました。それは、『だれかを輝かせたり助けたりするのは自分に足りないところがあるから。そこに何かしらの世界という中のワールドパークに絶対君臨者がいても、その人は完璧な人ではない。決して全てまで受け入れる必要は無いのです。国という中の数多のテーマパークのテーマを全てまでを受け入れないって大切な事よ。人に対しての優しさが多少足りなくても、多少足りてても、その時、その時、人が日常に足を踏み入れて、全くの別の白人、黒人、黄色人種に冷ややかさや、温かさを感じられる世界に入っても、皆で創っていく天国、地獄、現世の世界だと思える。国から塩が出る自信のなさがここでの立場の辛かった彼等や彼女等の一番温かな生活ができる風土なんだ。そんな土地柄のテーマタウンがあっても良いんだ。……そう思いたい國創り。担当の国や地域や、その中には國からの劇場があっても沢山の喜劇、観劇で、満たされる、領域があっても良いんだ。笑いの中にもほのぼのとした空気を感じて、あ、笑ってくれたんだ、今日は笑ってくれたんだ、泣いたんだ、泣いてくれたんだ、泣いてもいいんだと思える、思える環境にいれることが大切なんだ』と思えることが大事なのよ】


ユフィ―はそこにマゼンダに対しておだてることなく自分が自分らしくいるためにはどうすればいいのですか?と問いました。


『私みたいな頭でっかちが言うのも難だけど、人に、理屈っぽく考えないで満たされる感情や、人を見た目や発言や頭の良さや雰囲気で判断し過ぎない。適度に程ほどに察して居られるだけの空気感の心があっても良いんだ。そんな、世界や社会への恩恵として生み出される社会が本当の幸せな社会なんだ、と思える人であってね。意地っ張りなところもあるユフィ―だけど、いつかは嫉妬から悔しくて悲しくて切なくても良いけれど、いつからか妬みを哀れみや恨みを見ない気持ちになれるユフィ―であってね』


その答えにユフィ―が涙ぐんだことを皆さんにお伝えしておきましょう。出された課題に自分なりの考えで応えたユフィ―。次の課題もきっと乗り越えられるとマゼンダ先生は信じつつ、ユフィ―の王女としての勉強の日々は続いていくと思われます。


「次の課題は……そうね! 簡単なことにも感じられる『疑問てどっから始り疑問てどこから信用に変わるの?』なんてどうかしら?」


「せ、先生、わ、私、それはまだ……」


「フフフ」


「干支がもう一度戻ってこないと無理かもしれない月日が必要ですよぉ……私疑い深いんだからぁー」


そう言って二人で空を眺めると月が白銀色に輝いていました。月って明るいところでも暗いところでも見えるんだ、と月の白さに、その荘厳さに、昼間に月が見えるってとても素晴らしいことだわ。たとえ遠出しなくても身近なところに運命を変えてくれる、宇宙や自分の運命が宿っているのね、と思いました。そんなユフィ―の気質が表れてしまうから......。私は恥ずかしくなりました。


ps.いつもへ捧ぐ優しい言葉


全てまでは、観れない、見えない、語れない。


罪悪人とはスッキリした中に、または淀んだ中に性欲の濁した淀みを加えたものたちである。


本来一般的達観とは前述とは逆のようでもあり、健康な精神状態に淀んだ気持ちが入った時、悩んだ時にスッキリと淀みを認めて、健全に悩みを消す事である。


スッキリと淀みを認めて解決するのが健常者。


スッキリとした淀みに溺れるのが犯罪者や半人前。

やれない事を大事に。
できる事を少しずつのばす。

『道徳心の地方より田舎の王女の心を込めて』

大草原の王女

執筆の狙い

作者 ケンジ
M106072173098.v4.enabler.ne.jp

面白い何かを書きたかった。

コメント

ケンジ
M106072173098.v4.enabler.ne.jp

>すでに決められた未来に嘆き続けることで、空想として心の中で想い描いた女性に収まろうとする自分の考えの方がまさってしまうことへ誰しもが恐怖を持たなくてはならないと思えることが大切。それは他人を大きく否定してまで自分の価値を貫いてはならないゆえ。他人の話にもそれとなくでも良い、意固地でも良い、頑固でも良いから耳を傾けるべきだと、そう思えた。だからこそユフィ―は海のものとも山のものとも想像がつかない『大海は母であり母性愛』といった過去の天文学者であり、詩人でもある偉人たちの予見したすばらしい現実感を崇拝したかったし、その価値を不安から安心に変えようとしていた。けれど母なる大海を崇拝しようとする以前に悶え苦しみ崇めていた大いなる宇宙。

>すでに決められた未来に嘆き続けることで、空想として心の中で想い描いた女性に収まろうとする自分の考えの方がまさってしまうことへ誰しもが安心を持たなくてはならないと思えることが大切。それは他人を大きく否定してまで自分の価値を貫いてはならないゆえ。

に変えました。

>そう、大事な宇宙を崇拝するということに人間らしい自然な発想を見いだしたかった。だけど若かりし頃、現実のさなかでの純粋な少女としての豊かな世界に夢を見る様に生きていた。自分の世界は不思議な現実の環境である事を感じていたけれどそこは見ない聞かない喋らないようにして。そのあり方に発想や体感で森林や草原や建物や図工の校舎があたかも神聖なる礼拝堂の様に感じていた少女時代。そんな一面の想いをいつまでも忘れないでいたかったし、今でもそうありたいと思える懐かしい心が未だにある。善悪は別にしても大事な事はいつも、いかなる時も仲間が教えてくれていた。あの子供の頃を悔やみながら。あの頃の様に人生が泥にまみれても、だからゆえにか、考えあぐねた末の結論を出した時、私は何を思っていたのか? それは自分の心や健康を守るためだったのか? あの頃の、や、今も一人一人の人生とは何だったのか? 頑固な意思とは身を守る為に思い付いた思案だったのか……。それは今ではわかっている自分なのか?


 今のユフィ―の心はそれを表していました。


心と海には何か共通する価値観があるのかな? 小さい世界から大きい世界までいつまでも続く様な、だけれどどこかでお母様が夢に似た歯止めをかけてくれた海に落ちたイカズチを。


【四季色とりどりの世界で見れば、宇宙を要にする花々咲くとき。春の時の解き方に太陽と雲の揺らぎあり。公な宇宙に感動できる安心があれば世界にまとまりの歴史あり。更に区域分けされている世界を創るのであれば、夏には他の國からの使者の砕けないヨット使いや利用者にはオールがいる。休みは秋に苦味を感じるより、自分の好きな木に身を寄せて、木の朱の毒に疑う種を拾うより雪の結晶の想像できる1年後の時代の進行と停滞を繰り返す現在に希望を抱いている方が、余計なアイディアが浮かばないのでましかなと思えた。そして冬来たり、天の粉の豊かな島に飾りの鏡を大地で隠し、また春来れば結婚当日の安らぎの良い辺りでは性格を兼ねる女性の先祖の世に、にっこり笑って照れてる後の方が驚く程、尾を惹かないと思えた。私は大人の女性になりかけてそういう者になっていた。私の前世の方は時を遡る力で解きたいものがあり、何処からかやって来たのかなとも思えたし、前世のお母様はそれを知っている軒並みの見える日本家屋に住んでいたのだけれど、洋風気質なレモンティーをこよなく愛する女性だった。そうする事を安心に変えていた】

そうする事を安心に変えていた、を
語尾に加えました

ケンジ
M106072173098.v4.enabler.ne.jp

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