作家でごはん!鍛練場
ショコラ

星降る海

青い波が小石だらけの浜を叩き白く砕ける。
乾き切らない髪に潮の風が心地よい。この音、この匂い、この海が好きだ。
 ウェットスーツの袖を後ろに脱いで、僕はマリナとふたり、浜辺の石垣に腰かけている。ここ、伊豆海洋公園から車で十分位の高台に、マリンブルーというペンションがある。マリナはそこの経営者ヨシさんのひとり娘だ。
浜の外れで、高い岩壁に波が寄せ、勢いよく水を浴びせかける。ヨシさんに率いられ、あの岩伝いに初めてエントリーしたときは不安でどきどきしたものだ。
「ねえ、タクミ君」 
 中学生のマリナが大学生の僕のことをタクミ君と呼ぶ。反抗期なのかな、と僕は思う。

大学に入った年の夏、ヨシさんの下で、オープンウォーター講習を受けた。果てしなく青い世界に魅せられた僕は、三年生の今年まで、夏休みになるとスタッフとしてマリンブルーに住み込み、ダイビングに明け暮れてきた。
去年はプロの第一歩であるダイブマスターの資格も取れて、今年はファンダイブのガイドも任されている。
ヨシさんは卓越したダイバーであるばかりではない。
マリンブルーでは、オープンウォーター講習最後の夜に、いつもバーベキューをして、ビールや地酒、ソフトドリンクの他に、 奥さん手作りの山桃酒が振舞われる。タンク運びしかできないうちから住み込みでバイトさせ、僕みたいにダイブマスターまで育ててくれもする。
とにかく教え子を大切にしてくれるのだ。だから、マリンブルーは、お客さんも、そして僕たちスタッフも、殆どがヨシさんを慕うダイバーたちだ。
 出会った頃、マリナは中学一年生で、大人たちに交じって潜ることも多かったし、愛くるしく人なつこかったから、みんなのマスコット的存在になっていた。バーベキューのときはマシュマロばかり食べ、鼠花火を地面に放つと、きゃっきゃと愉しげな声を上げたものだ。
芝生の前庭で山桃の木蔭にすわり、僕がスケッチブックに海の底を描いていると、マリナは「タクミお兄、絵え、うまいよね」とくりくり目を輝かせたり、背後から「それ、なんて魚なの?」と訊いてきたり、好奇心でいっぱいらしかった。
 この夏会ったとき、僕は思わず目を瞠ってしまった。マリナから子どもっぽさがすっかり失せて、長い髪を手櫛で掻き上げる、すらりとした少女になっていたのだ。
 その分めっきり口数が少なくなり、お客さんはもちろん、ヨシさん夫妻にも、僕たちスタッフにも近づいてこない。
「そういう年頃だから」
 奥さんはあまり気にならないらしかった。
「ここんとこ、ダイビングもしたがらないしなあ」
 あんなに『パパ、パパ』と甘えていたのだから、ヨシさんの胸の内はかなり複雑だろう。
 とまれ、これだから思春期の女の子は扱いにくいなと思って、僕も無理して話しかけはしなかった。
 ところが昨夜のことだ。
 いつものように奥さんの皿洗いを手伝い、片付けも終わりかけたキッチンへ、マリナが入ってきた。
「今日塾でやったプリント、よくわかんないの。タクミ君、教えてくんない?」
 スタッフダイニングの食卓にすわり、僕は時々ヒントを出しながら、マリナが二次関数の問題を解いていくのを見守っていた。すると、三問目のグラフに交点の座標を書き入れながら、マリナは独り言のように呟いた。
「明日、タクミ君と潜りたいな」
 マリナは睫毛を伏せていた。
「塾が有るんだろ」
「夏期講習、休みなんだ」
「じゃあ潜ろうか」
 そんなわけで、僕たちは今日、この浜の外れから岩壁伝いに海へ入った。
マリナは、太陽の照りつける海原を見ていた。海洋公園の正面は大島の浮かぶ外海だから、いつも波は荒い。岩で砕けると、ちょっとした波でも大きく感じる。
 僕はマリナの手をしっかり握った。
「さあ、行くぞ」
 シュノーケルして波に入ると、すぐ目の前に石ころが転がっている。水面を泳ぐうちに、海底は傾斜した溶岩になり、段々深く遠ざかっていく。
 水深十メートル位になった辺りで僕は顔を上げた。マリナもフィンを止めた。晴れた空、そして光るさざ波が目に眩しい。真っ青な海面から首だけ出して、ひんやりした水の中にぶら下がり、僕たちはぷかぷか波に浮かんでいる。
「こっから潜ろう」
 ふたり向かい合わせになって、静かに休めたフィンの先から沈んでいった。
 海底で顔色を確かめながら、『OK?』と指で訊くと、マリナも指でOKサインを返してきた。ガラス越しの眼差しにも不安な兆しは無い。ふたりの呼気が幾つもの丸い泡になり、ぽこぽこと昇っていく。その彼方、明らむ水面の直ぐ下で、ヘラヤガラの細長い腹が銀色の光をきらりと反射させていた。
 マリナはジュニアのライセンスを持っている。海中に入ってしまえば慣れたもの。だけど潮流に流され見失いでもしたら大変だ。手は放さないことにした。
 ふたりで中性浮力を保ち、ゆったりとフィンを振りながら遊泳していく。あちこちで、いろんな魚たちが岩肌を突いている。見渡す限りどこまでも青く、呼吸の音しか聞こえない。
 うごめくように触手のなびく珊瑚の周りに、オレンジ色と白の縦縞、小さな魚たちが見えてくる。クマノミだ。
 マリナは、岩に貼り付いた真っ赤なヒトデを僕に指差して見せたり、一斉に素早く向きを変える魚群の動きを目で追ってみたり、桜色の丸い襞が揺れてる小さなウミウシにマスクした顔を近寄せたり……声にはならない、はしゃいだ気分が素直に伝わってくる。
 鼠花火に喜んだ、あの頃のマリナが戻ってきたようで、僕の気分も明るくなった。

 海から上がって、僕たちは石垣に並んでいる。
「タクミ君、もう来られないんだよね」   
 マリナは遠い水平線、或いは、沖の大島、なだらかな三原山の島影を眺めているようだ。
 明後日から九月、僕は横浜の家へ帰る。マリナは一人っ子だから、兄が遠くへ旅立つような気分なのだろう。僕も懐かしい故郷を去るような一抹の寂しさを感じていた。
 大学に戻ったら就活を始めることになる。来年は企業の拘束も有るというし、卒論も書かなくてはならない。まして働きだしたら、長い休暇は望めないだろう。こうして伊豆でひと夏過ごせるのは今年が最後かもしれなかった。
 こんな時こそ、じめっとしてはいけない。
僕はなるべく屈託なさそうな笑みを浮かべて、マリナの大きな瞳を覗き込んだ。
「なわけないだろ」
「でも忙しくなっちゃうんでしょ」
 マリナは見つめ返してくる。
「暇を見つけて潜りに来るさ」
「ほんとに? 来年の夏もふたりで潜れる?」
「ああ」
「じゃあ、げんまん」
 小指を絡め、マリナの歌う、嘘ついたら針千本の唄に合わせて、僕たちは指を切った。


§Ⅰ

法学部を卒業するんだから、官僚や法曹を志す道も有る。抜かりなく、一、二年の頃からダブルスクールしている友人も少なくない。だけど受験勉強はもうご免だ。とにかく学校とか親許とかいう柵から外へ出て、早く社会へ漕ぎ出したかった。
だから五月に銀行から内定をもらえたときには正直ほっとしたものの、僕はできることなら、クリエイティブな仕事の有りそうな広告代理店に入りたいとも考えていた。
 大手の代理店は次々に落ちてしまい、電鉄会社系の中堅代理店に最後の望みを繋ぎ、漸くのこと、採用決定を知らされたのは、 六月も下旬になってからだった。
マリンブルーに報告の電話を入れると、ヨシさんが出た。
「それはよかった」
「マリナちゃんも高校生ですよね。元気ですか」
「まあ、楽しくやってるみたいだ」
「奥さんにもよろしく」
「ああ。今、伊東の病院行ってるから、伝えとくよ」
「どうかしたんですか?」
「いや、近くに目医者がないんで、マリナを眼科に連れてっただけさ。みんなタクミに会いたがってる。暇になったら遊びに来いよ」
「はい。卒論全然なんで、形が付いたら伺います」
 ヨシさんの声を聞いてるうちに、直ぐにでも伊豆に行きたくなった。しかし、論文も考えなければならない。いつ代理店から呼び出しが有るかわからない。
 そんなわけで、四年生の夏、昼は図書館、夜は自宅で論文に励むという、僕らしくもない、なんともアカデミックな日々を過ごしていた。

 その日は水曜日で図書館は定休だった。
昼食後、自室でキーボードを叩いていると、三時過ぎにスマホが鳴りだした。
マリンブルーの奥さんからだ。
芝生の庭、山桃の木、そして青い海が目に浮かんだ。学生最後の夏休みも終わってしまう。
『ウッソついたらハッリ千本のおます』
マリナとの約束も有る。明日にでも伊豆へ行ってみようか。
「ご無沙汰です」
「今東京に居るの」
声が暗い。鉛のように沈んでいる。
「マリナ、先週から、大学病院に入院してるのよ」 
「東京で?」  
「時々目が暗くなると言うんで、伊東の病院で診てもらったら、脳の、いろんな検査を受けることになって」 
 え、脳? 僕は息を詰めた。
「CTで腫瘍が見つかったの」
 冷徹な医学用語が耳に刺さった。
しかも難しい位置に有るから、良性にしろ悪性にしろ、完全には切除できないと告げられたという。
「長くて半年だって」声が震えている。「もっと別の診断はないかと思って、大学病院に紹介してもらったの」
信じられない。マリナの顔が浮かぶ。なんでだよ。これからってときに……。
「マリナちゃん、どこまで知ってるんですか」
「脳に腫瘍が有るとしか、言ってないけど……もう高校生ですもの、いろいろ気づいてるでしょうね」
 涙ぐんでるみたいだ。訊いてはいけないことだったと僕は浅はかな自分が厭になった。
「マリナ、タクミ君に会いたがってるの」
「直ぐ行きます」
 信濃町駅の改札口で奥さんと落ち合った。
「ありがとう。タクミ君が来てくれるって伝えたら、マリナ、とっても喜んでた。ふたりきりで会ってあげて」
 奥さんは赤い目をしている。
「わたし、夜まで出かけてくるから、待たないで帰って。新棟の八階で、脳外科のナースステーションに寄ればわかるわ」
 エレベーターで八階へ昇る。
ホールに出ると、正面はクリアガラスで、高層ビルの建ち並ぶ新宿副都心が一望の下、目に飛び込んできた。外の熱気も喧騒も失われた眺望は、まるで無声映像のようだ。
新棟は直ぐ左手だ。指示通りナースステーションに寄ると、受付に居たナースが「伺ってます」とマリナの病室の位置を教えてくれた。
病棟は音も光も淡く、フロア全体が独特の静けさに沈んでいる。
ノックすると、直ぐにマリナが迎えてくれた。
頭に巻いた、黒い模様の青いバンダナが、大きな瞳をひと際目立たせている。水色のパジャマと、全く灼けていない肌、その抜けるように澄んだ白さが闘病中であることを感じさせはしても、真夏の海のように溌溂としたマリナの印象にまるで変わりはない。
「髪の毛が無いの。こんなの被って、可笑しいよね」
「そんなことないさ。バンダナ、よく似合うよ」
 部屋を見回して、この個室にマリナを入院させた、ヨシさん夫妻の親心を思い、胸が詰まった。明るい出窓には電話が置かれ、小さな机からクロゼットまで、まるで高級ホテルの客室みたいに揃っているのだ。
しかし、ベッドは白一色で、横の壁には治療用の丸い栓が三つ、色違いで装備されている。
マリナの心を癒したいのに、うまく言葉が浮かばない。
「ソファまで有るんだな」
口にしながら、もっと増しなことがどうして言えないのか、情けなくなった。
「うん、ここで話そうよ」
 並んですわり、僕は、就活の顛末だとか家族や友人のエピソードなんかを嘘にならない程度に脚色して話すことにした。
つまらない小ネタにも、マリナはいちいち受けてくれたし、高校の合格発表の日のヨシさんの歓びぶりとか、この春から奥さんがフラダンスを習い始めたとか、国道沿いに新しく開店したパン屋のクロワッサンが美味しいといった、身辺の話題を朗らかそうに語ってくれもして、僕もまた、いかにも愉快そうに応じてみせた。
僕たちは笑みを絶やすことなく、核心を外した話ばかりして時を過ごしたのだ。
踏んではならない地雷を避けでもするかのように。
「タクミ君、そろそろ帰るんでしょ」
 マリナは立ち上がり、僕を振り向いた。
「見て。いい眺めなんだから」
 ふたりで窓辺に立つと、なるほど、真下は首都高のランプ、その直ぐ向こうは外苑の森と国立競技場、左手には東京タワーがよく見える。
「凄いな。夜景も綺麗だろ」
はしゃいでいた、マリナの顔から笑みが消えた。
「ママから聴いて、知ってるんでしょ」
 声が掠れている。
「知ってるよ」
「入院した日、パパとママがホテルに帰ってからね、独りで外を見てたんだ。東京の夜景はきれいだけど、明る過ぎて、空は黒いだけでさ。ちっさい頃、パパとママと三人でワゴンに乗って、よく星を観に行ったなあって、思い出しちゃった」
「いいパパとママだもんな」
 マリナは昼の大都会から目を離さない。
「ふたりとも忙しいでしょ。なのにママは伊豆へ帰んないで、こっちに居てくれる。早く退院しなきゃな、そしたらまた星を観たいなって、そんなこと思ってた」
「いっぱい見えるんだろうな」
「でももう……」 
消え入りそうな声だ、今にも泣きだしそうに。
「見らんないかも」
どんな慰めも励ましも浮いてしまいそうで、なんにも言えない。だから僕はマリナの肩に腕を廻して、しっかりと、この胸に抱き寄せた。
マリナは凭れてきた。僕は斜めにうつむき、マリナを見ていた。彼女は遠い空へ顔を向けている。
「だけどさあ。悲しいとか、悔しいとか、怖いとか、考えてみたってなんにも変わんないでしょ。だからもう、頭は空っぽにしてあるんだ。今、生きてるこの世界を、精いっぱい感じておくしかないんだよね」
彼女にとって、この刹那は僕の何十年に値するんだろう。
「タクミ君のことも……」
マリナは僕を見上げてくる。
「胸に刻んでおきたいの」
黒い瞳は、底の底まで澄み切っている。
僕は胸を合わせ、白い額に唇を押しあてた。しばらく祈りを込めた後、僕は細い両肩に手を置いて、「また来るよ」とマリナに言った。
「ありがとう。でも、お見舞いはこれきりにして」
 僕は戸惑った。
「今日のこと、死んでも忘れない」
マリナの瞳から、生の輝きと死の翳りが強いコントラストで伝わってくる。
「タクミ君……治ったら、一緒に潜ろうね」
「マリナ」
 華奢な躰を抱きしめた。
「きっと潜ろうな」
 僕は青いバンダナに頬を寄せていた。
 真っ直ぐ帰る気にはとてもなれない。エントランスを出ると、正門の手前で脇道へ折れた。
すると血のような色のトンボが一匹、真ん丸な目をして石の上に居た。黒い斑点の有る薄い翅も、生々しく赤い、細長い胴も、幽かに震えている。
翅でも傷めたのか、飛びたいのに飛び立てないのだろう。
救ってやりたいが、どうしようもない。
マリナの瞳が浮かんでくる。僕は、なんにもしてあげられないのだ、マリナにも、この赤トンボにも。 
 来た道を引き返し、病院の門を出ると、神宮外苑から青山通りへ抜けて、渋谷の駅まで歩いていった。
 蒼い空の底は夕焼け色に明るんでいる。
薄墨色に翳りつつあるビルの街並みを眺めながら、黄昏の景色は美しいというよりも切ないものだなと、生れて初めてそんなことを思った。

 マリナの訃報がもたらされたのは十月の中旬だった。
海の見える丘の上、伊東の寺で葬儀が営まれた。僕は日帰りで告別式に参列した。
読経の後、棺の中のマリナに白い蘭を供えようとして……蝋のような肌、瞳の閉ざされた目、心が凍りつきそうになった。
抜け殻だ。マリナではない。 
夏の海辺でした指切りは永遠に果たせないのだ。やましさと悔しさが綯い交ぜになって胸を駆けめぐる。マリナの夢も望みも今は消え、もう叶えようもないこと、それがたまらなかった。
奥さんは泣き崩れ、ヨシさんも号泣している。
愛しい娘を失ったふたりの悲しみの深さを思うと、僕まで辛くなってくる。来てはいけない処へ来て、見てはいけないものを見てしまったようで後ろめたかった。
見舞いはこれきりにしてとマリナに言われ、迷いながらも、あれきり会いに行かなかった。マリナにとって、僕は肉親でも血縁でもなく、地縁もない。学校繋がりでも、恋人というほどの存在でもないのだ。
葬儀は遠い儀式でしかない。   
御骨を拾う立場でもないように思えたから、斎場には行かないことにした。
僕は出口に並び、ヨシさんと親戚の男の人たちに運ばれて、マリナの棺が霊柩車に入れられていくのを見守っていた。マリナのために、僕も何かしてあげたいと思いながら。
 厳かに装飾された黒い自動車が角を曲がり見えなくなっていく。
焼いたマシュマロの好きだったマリナ、鼠花火に喜んだマリナ、スケッチブックを覗いてきたマリナ、桜色のウミウシにマスクの顔を近寄せたマリナ、指切り唄を歌ってたマリナ、青いバンダナを巻いてたマリナ、こんな僕に『死んでも忘れない』と言ってくれたマリナ。マリナはもういないのだ。
黒く澄んだ瞳が語りかけてくる。
『治ったら、一緒に潜ろうね』


§Ⅱ
 
『タクミ君、絵を描くんだ』
『いや、大した絵は描けないけどさ。まあ、好きなだけだな』
 卒論も試験も終わった日、僕は新しいスケッチブックを買って帰った。マリナと潜った海、いつか潜るはずだった海――学生最後の長い休みに、海の絵を描いてみようと決めのだ。
 伊豆で潜る度に描き留めてきた、三年分のスケッチブック、その一ページずつを確かめながら、絵を覗き込むマリナの気配を背後に感じて、胸が熱くなった。
マリナが喜んでくれるのは、どの生物、どの地形、どんな海だろう。
 毎日、いろんな構図で描いてみた。しかし、どれもしっくり来ない。珊瑚と岩礁の海を泳ぐ熱帯魚たち――ラッセンの絵のようになってしまう。僕が描きたいのは、海そのものの美しさではない。僕たちふたりの心の繋がり、その心象みたいなものを海に託したいのだ。 
 僕はマリンブルーを訪れた。
「まあ、上がってくれよ」
 ヨシさんは朗らかだ。けれども、潮に晒された茶髪に交じって、白い髪がかなり増えたみたいだ。
 奥の座敷で仏壇に掌を合わせる。
 その後、スタッフダイニングで向かい合い、ヨシさんの淹れたコーヒーを飲んだ。
「奥さんは……?」
「伏せってるっていうのかな、暇な時はベッドで横になってる。だが俺はそれでいいと思ってるんだ。いつか起きる気になれるさ」
 きっと僕は暗い顔になったのだろう。
「心配要らないよ。あれであいつも働いてれば元気なもんだ。胸ん中がどうあろうと、すべきことはきっちりやろうなって夫婦で約束したんだ。塞ぎこんでばかりいたんじゃ、殻から出らんなくなるからな」
僕は もっと心の和むことを話さなくてはいけないのだ。
「マリナちゃん、パパとママと三人で、よく星を観に行ったんだって、懐かしそうに話してました」
「マリナ、憶えててくれたんだな」
 ヨシさんは目を細めている。マリナにとってばかりでなく、ヨシさんにも、そしておそらく奥さんにも、かけがえのない思い出なのだろう。
 夜空いっぱいの星――海底よりも、いい絵になるかもしれない。
「僕も、観たいな」
「じゃあ、今晩、行ってみるか」
 夜まで時間がたっぷり有る。
 ヨシさんとふたりで久しぶりに海に潜り、夕食には奥さんの手料理をご馳走になった。
 帰り際、奥さんも前庭まで出てくれた。
「また来てね」
ヨシさんは運転席に、僕は助手席に乗り込んだ。走りだしたワゴンの窓から奥さんを目で追うと、ライトアップされた山桃の木に歩み寄っていった。
緑の葉に手を触れている。
「山桃は葉を落とさないんですね」
「そうか、タクミが来るのは、いつも夏だもんな。冬も緑で、春は花も咲くし、夏には実も成るからって、あいつが言うもんでさ、マリナが生まれた年に植えたんだ」
 ワゴンは別荘地を抜け、急坂を上っていく。
 大室山の麓ビル、営業を終えたリフト乗り場を通り過ぎた。カーブを回り込むと、家も電柱も無い。
 僕たちは真っ暗な空き地に降り立った。
 ところがだ。
 急に辺りが明るんでいった。夜空には、丸に近い月が昇り始めている。
「こう明るくちゃ、見えないな」
 星のまばらな空に、ヨシさんも残念そうだ。
月には勝てない。すごすごとワゴンに戻りながら、出直すしかないなと僕は思った。
坂道を下り、伊豆高原駅で降ろしてもらった。
帰宅すると、真っ先にパソコンに向かい、月暦をチェックした。月の出は、毎日一時間位ずつ遅くなっていく。明後日なら二十一時四十八分まで月は出ない。予報が外れなければ、伊豆は晴れだ。
今度こそ満天の星を観たい。
翌朝は遅く起きた。
 坂道を吹き下ろす山風は向かい風になる。ベンチコートで身を包んでいても、顔の肌は夜気に晒され、春とは思えない冷たさだ。
 空き地に着いた。
真っ暗だ。僕は夜の底にすわって、満天の星を眺め続けた。
この星空を観たいと願った、マリナの希求、心の在り処をどうしたら表現できるだろう。舞台を海底から夜空に変えたところで、道は拓けそうもない。僕は根本的に方向を間違えている。大切な何かを見落としているのだ。  
青いバンダナ、抜けるように白い額――マリナの横顔が浮かんでくる。
『今、生きてるこの世界を、精いっぱい感じておくしかないんだよね』 
どんなに去りがたい思いで、マリナは、この世界を心に刻もうとしていたことだろう。もっと、その思いに寄り添わなくては、マリナのレクイエムは描けない。
マリナにとって、僕は世界の欠片だ。
この広い夜空に散らばる、あまたの星屑のひとつでしかない。
指切りが果たせなかっただの、何もしてあげられなかっただの、僕自身の、ちっぽけな思いに拘ってばかりいるから、マリナの魂が表現できないのだ。 
大室山の麓から坂を下り、伊豆高原駅から幾つも電車を乗り継いで、帰り着いたのは真夜中だった。さすがにぐったりして、 シャワーを浴びるとすぐベッドに入り、泥のように眠ってしまった。
翌日は朝から画材を買いに行き、キャンバスは二十号に決めた。長辺七二七ミリを縦にしよう。
夜空に浮かぶ幾つもの丸い星明かり、真ん中にはマリナの肖像。長い髪は、真昼の海の色、マリンブルー。水色のローブは蒼い 背景に溶け合うようになびいている。
次から次へとイメージが膨らんでいった。
就職するまでに仕上げたい。
しかし、下界に何を配そうか、そこが決まらない。 
闇夜の底だ。黒い影絵になるだろう。海なら島や半島、陸なら森や山、或いは、窓から小さな灯りの漏れる家並のシルエット…… どれを思い浮かべてみても、赤沢で見た、月夜の海に見劣りしてしまうのだ。あの銀盤のような海が下界に欲しい。しかし、明月の空に星のまばらなことは思い知らされている。
嘘の絵にはしたくなかった。
 
 僕は下田からナイトクルーズの船に乗ってみた。
夜空いっぱいに星がまたたいている。
岬の外へ曲がる。
凄い! 無数の夜光虫が集まり、下界は光る海、海の闇に光の絨毯が浮かんでいる。まるでひとつの炎のように光が放たれて、それぞれの命は儚くとも、個を超えた流れの中で永遠なるものに連なっていく。
マリナの絵が描けそうだ。
生まれ来たる命、去りゆく死者の魂、大きな命の流れを描こう。
決めたぞ。タイトルは『星降る海』だ。
天上は星空、下界は光を放つ夜の海。その真ん中に青い髪のマリナ、水色のローブは上昇していく流れに沿って夜の大気になびいている。黒い目の輝きは、空と海、この世界に散らばるすべての光のリフレクションだ。
そして内なる魂のきらめきでもある。
星屑は水中に舞い下りて、数知れない光の泡となり、青白い焔のように黒い海原を輝かせる。海の放つ光はマリナと共に立ち昇り、天上に還るとまた金銀の星になる。
空と海を廻る命、永遠の噴水だ。

 三月最後の土曜日の朝、ミニワゴンに絵を積んで、僕はヨシさん夫妻に会いに行った。
 スタッフダイニングで完成した絵を見せながら、拙いながらも心を込めて贈りたいと、せめてもの気持ちを伝えると、ヨシさんは目を細めた。
「いい絵だ。『星降る海』か。青い女の子がマリナなんだな。目がそっくりだ。ここの壁に飾らせてもらうよ」
「マリナ」
 奥さんは娘の肖像に話しかけた。
「タクミ君のこと大好きだったものねえ」
 静かに微笑んでいる。
「この頃思うのよ。今もあの子は生き続けてる、わたしたちの生きてる限り……」 
 奥さんは、僕を見つめた。
「ありがとう。絵にしてもらえて、うれしいわ」
 帰りがけの前庭で、山桃の木の下に――長い髪を掻き上げるマリナ、好奇心で目をくりくりさせたマリナ、人なつこくて愛くるしいマリナ――マリナの姿が浮かんで見えた。

マリンブルーから、高い蘇鉄の並木道を抜けて、僕は海洋公園でミニワゴンを降りた。 
石ころの浜に立つ。
海は果てしなく、波を寄せている。 
(了)

星降る海

執筆の狙い

作者 ショコラ
h175-177-040-032.catv02.itscom.jp

二つの物語を入れ込んだため、分かりにくくなっていたものを一つに絞って改稿しました。

コメント

茅場義彦
M106072175192.v4.enabler.ne.jp

一気に読んだ 読みやすい 描写綺麗 でも サプライズがない。
いい線いってます

君の膵臓には敵わない。

君の膵臓は 膵臓悪い女子が 焼肉もりもり食うんだよね なんか ひっかかりがあるね 展開に個性がある 会話にも個性が

この話にはこの話特有のもっとひっかり、個性があればいいかと

個人の感想ですが

もんじゃ
KD111239165103.au-net.ne.jp

ショコラさま

拝読しました。

リズミカルで、メロディカルで、言葉の選択が適切で、だからとても読みやすく、つっかえるところもなく、するりと最後まで味わえました。

マリナの話し言葉に書き手の工夫が感じられたり、§の区切り方に構成の意図が感じられたり、スキルフルな作品であるな、とも思われました。

冒頭の一文、締めの一文、前作と同様に、よいな、と感じました。

ダイビング、伊豆、法律、図書館、肖像画、月の出、どれもこれもがたまたまこの読み手の好きなものばかりで、だからでありましょう、いくらか感傷的にかぶき過ぎてるかな、とも感じられなくもなかった話ではありましたが、耽溺に近い読み方で楽しませていただきました。

>マリナにとって、僕は世界の欠片だ。

というような表現もつぼでありました。

よろしくなかったかも、と感じられました点もお伝えするなら、一言で表して「ためがなかった」かと。似たようなリズム、似たようなメロディラインでするりと表されているので(緩急に乏しいので)、美しいのだけれど、うねりが足りない、緊張がゆるい、とも、この尺の割りには、という意味で感じられました。ドキドキやハラハラはあまりなかったように思われました。

また、予定調和といいますか……。つまり、驚きというか、発見というか、あるいは外連味と表現すべきあざとさもなく(美しくあらむというあざとさは感じられたけど、裏切ってやろうというあざとさは感じられず)、これは美点でありつつ、いくらかの物足りなさを思わせる欠点であるともいえなくはないかも、だなんて感じてしまいました。

でも、詩的な情緒が漂う描写がてんこもりで、十分に甘やかな感傷で染め抜かれている御作からは、緩急の演出による「葛藤→カタルシス」や、外連味を漂わせたキャッチングなど、ノイズになりかねない凸凹はむしろ排されていてこれ当然にして適切なのかもしれず、この話は実にこの話のままでよいのかも、確かに、しれませんね。ネガティブなことも指摘しなくてはという、この場の在り方に拘束された感想であるとして、流すべきを流してしまってください。

読ませてくださり、ありがとうございました。

10月はたそがれの国
n219100086113.nct9.ne.jp

「小さなもの、些細なエピ」が、ていねいに・端的に、要所要所的確に「描写」で、するっと・さらっと織り込まれている。

その『作者の 世界の端々まで見えている感』が 小気味いい?し、
『端まで見させてもらってる臨場感』が心地よいのです。


終盤近くまでは『ほぼ完璧じゃないか?』って思う。
『こういうのが小説なんだよ』と納得のゆく、もう文句ない良作なんですよ。




けど・・

マリナの病室訪問あたりから、『???』と違和感が徐々に大きくなってく。


それまでに作者が積み上げていた(読者に提示していた)確かさが、あやふやになりだし、『なんで??』って違和感がクレッシェンドしてゆく。

終盤にかけてもそのクレッシェンドが依然継続し続け・・徐々に違和感が大きくなってって、終わる。
その「クレッシェンド開始時点」を修正すれば、終盤の違和感も解消される・・筈。



違和感の開始点になった病室シーンもだけど、

後に続く「星空観察シーン」と「油絵描写シーン」が、「序盤〜前半の海の景色」の描写的確さからの「落差」が激しくて。。



>僕たちは真っ暗な空き地に降り立った。
 ところがだ。
 急に辺りが明るんでいった。夜空には、丸に近い月が昇り始めている。
「こう明るくちゃ、見えないな」
 星のまばらな空に、ヨシさんも残念そうだ。
>月には勝てない。

から、「情景」が途端にヘンテコになる。
「星と月と海」の光景は、『作者がこう書いてるんだから、ここはこうなんだろう』と流そうとしても、違和感の方がどうしても大きいので、、、

——と書いてて、おそまきに気づいた。


伊豆? 伊豆の海だと、【海面から月が昇る】のかー。

「そうは明記してなかった」んで、「背後の山の端から昇ってくる状況なんだろう」って思ってた。
なぜなら、【作中だと、月の出の時刻が、遅い設定になってた】から。
けど、「海面から昇る月」なんであれば、それは「海は銀盤」になるよなー。

現状、「どこにもはっきりそう書いてはない状況」な訳だけど。
まあはっきりそう書いてないのは、《太平洋側だとそれは常識だから》なのかも知らん。

けど、「太平洋に面してない日本国民も、半数近くいる」し、「太平洋側でも、湾とか半島とかあって、角度によっては状況違って来る」ように思うんで、

肝心なことは、やっぱきっちり書いて(明記して)おきましょうよ。




月もだけど、「満天の星空」「満天の星」と書く中に、「目立った星座か、恒星の名前」入れといてくれると、
「時期、方角、時刻」が明瞭になる。



そんで、、、話のフィナーレである「主人公が描くマリナの絵」って、油絵でないとダメなんだろうか??

そう思ってしまったのは、序盤で描かれてる海の情景が、本文中にも固有名詞出てきた《ラッセンの絵》なイメージが先行してて、
読者(=私)にそれが刷り込まれてる状態で、後出しで「油絵」だから、

『・・・。』な 唐突感。

「主人公が美大〜造形大、美術の専門学校生」だったら油絵でアリなんだけど(広告代理店に就職してるしね)
主人公、法学部だから。



そんで、、、

大昔、普通の四大卒で広告代理店の制作に入った私からすると、
主人公はてっきり《マリナへの想いを、アドバタイジングに込める》んかと思ってた。

ショコラ
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皆さま

 もともとはマリナの絵を横軸に、マリナの主治医である女医との恋物語を縦軸に書いた小説から、マリナの物語だけを残して改稿した小説でした。
 §Ⅱでマリンブルーを訪れる前に置かれた、このシーンを削るべきではなかったと反省しております。

 スケッチブックをまた見直してみる。
 手が止まった。 
 気晴らしに一枚だけ描いた赤トンボの絵だ。丸い目が訴えかけてくる。 
 マリナの瞳。どうしてそこに気づかなかったんだろう。描くべきは海じゃない。マリナなんだ。マリナの肖像を描いてみよう。
 しかし単なる肖像画にはしたくない。
 太陽よりも月の光だ。
 伊豆の砂浜がいい。
 白い砂より、黒くてしっとりした砂……。
 赤沢かな。
 十五夜の日を調べ、赤沢の民宿に予約を入れた。

 午後四時過ぎに赤沢の民宿に着いた。僕は直ぐにハーフパンツに穿き替え、坂道を下っていった。
 山の木々が芽吹きかけている。 
 海岸の崖縁まで来ると、露天風呂から白い湯煙が上がっていた。
 岩に腰かけ、温泉に両足を浸しながら、黒い波打ち際、そして、広い海原を見晴らしてみる。
 うららかな日が差して波も静かだ。民宿に戻り、暗くなるのを待つことにする。
 夕食を済ませると、冷えに備え厚着してベンチコートもしっかり着込み、海岸へ向かった。
 防波壁の前で足を止める。
 下から波音が聞こえてくる。
 夜の海を眺め遣った。黒い空から月が差して、蒼い水面に銀盤が浮かんでいる。スマホの光で一歩ずつ暗い足元を照らしながら、細い急な石段を踏んでいく。
 そして僕は、月夜の浜辺に降り立った。
 夜空には丸い月が輝き、波の音が響いている。蒼い水に浮かぶ銀色の光、海のリフレクションはとてもきれいだ。
 僕は夜の海を眺めながら、ヨシさんたちに会って行こうと考えていた。

ショコラ
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茅場義彦さま

 ご感想ありがとうございます。

 
>サプライズがない。
>この話にはこの話特有のもっとひっかり、個性があればいいかと

 そこなんですよね。
 文章を書くのが好きなだけ、うまく物語が紡げない。メリハリですね。

 お読みくださり、感謝しております。

でんでんむし
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星降る海、拝読しました。

みなさんが褒めておられるように、文章的にはひっかっかるところもなく、ふんわり読むことができました。
ただ読後は薄いものでした。なんか、どっかですでに読んだような、見たような展開で、印象に残り難いと感じました。
最初の設定とかはよかったですし、期待を持ちました。海の中で、クマノミを見たり、ウミウシがいたりして、楽しかったです。
ところが、ふいにマリナが、何でしょうか、癌でしょうか、そんな不治の病気になってしまう。そこから、私はずずっと引いてしまいました。
後は、哀れな乙女と途方に暮れる男、毎度のパターンの感じになってしまいました。茅場さんが、君の膵臓を食べたい、に言及されていますが、私は映画でしか知らないのですが、あれも余命いくばくもない若い娘の話ですが、ちっともめそめそしていないのですね。浜辺美波の、明日にも死にそうな娘が、実に元気がいいのです。
焼肉もりもりは覚えていないですが、とにかく走るんですよ。ありえないと思いますが、物語なんですから何でもあり、という感じでしょうか。
膵臓に限らず、今のラブストーリーの女の人は、やたらに走ります。映画の場合ですけどね。
時をかける少女の仲里依紗以来、まあ、走り回っていますよ。体力がないと、ヒロインなんか演じられないです。
つまり、先行短くて悲しいのを表現するにしても、めそめそはNGらしいのです。マイナスを表すのに、マイナスを描く、ではあたりまえすぎて心に残らないということですね。逆にプラスを描けば、心を打つ。
まあ、きっと住野よるなら、黙ってもう一度潜らせるのじゃないでしょうか。死ぬまでにしておきたことその1として。なんて、勝手に書いてすみませんが。
もちろん、上のは私が適当に思いついた案ですが、物語を作るときには、逆に逆に向かうのは必要かも、と思いました。もっとも迷路に落ちることもありますけどね。
返信に書かれた女医さんがどうのこうのはよくわかりませんが、誰でもが考え付く入院の場面は、もっともっと明るく書くか、控えめにするかではないでしょうか。
そして楽しい思い出になる海の潜り、最初だけで終わるのは、ちょっとさびしいですね、
という感想でした。
まあ、あくまで外野の適当なヤジですので、適当に流して下さい。それでは。

ショコラ
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もんじゃさま

 ご感想、ありがとうございます。

>よろしくなかったかも、と感じられました点もお伝えするなら、一言で表して「ためがなかった」かと。似たようなリズム、似たようなメロディラインでするりと表されているので(緩急に乏しいので)、美しいのだけれど、うねりが足りない、緊張がゆるい、とも、この尺の割りには、という意味で感じられました。ドキドキやハラハラはあまりなかったように思われました。

 いつもそうなってしまう。構成に工夫が必要ですね。


>裏切ってやろうというあざとさは感じられず

 ご指摘、ありがたいです。緩急の演出による「葛藤→カタルシス」や、外連味を漂わせたキャッチングですとか、そういうあざとさ、目指してみます。


 文章を磨くだけでは限界がありますこと、実感しております。ありがとうございました。

ショコラ
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10月はたそがれの国さま

 ご感想ありがとうございます。


>終盤近くまでは『ほぼ完璧じゃないか?』って思う。
『こういうのが小説なんだよ』と納得のゆく、もう文句ない良作なんですよ。
 
 うれしいです。でもこれ、出だしのダイビングシーンだけの評価なのですよね。
 

>マリナの病室訪問あたりから、『???』と違和感が徐々に大きくなってく。
>それまでに作者が積み上げていた(読者に提示していた)確かさが、あやふやになりだし、『なんで??』って違和感がクレッシェンドしてゆく。終盤にかけてもそのクレッシェンドが依然継続し続け・・徐々に違和感が大きくなってって、終わる。その「クレッシェンド開始時点」を修正すれば、終盤の違和感も解消される・・筈。

 病室訪問シーンが最もまずいということですね。


>後に続く「星空観察シーン」と「油絵描写シーン」が、「序盤〜前半の海の景色」の描写的確さからの「落差」が激しくて。。

 そのあともすべからく、ですか。



>伊豆? 伊豆の海だと、【海面から月が昇る】のかー。
「そうは明記してなかった」んで、「背後の山の端から昇ってくる状況なんだろう」って思ってた。
なぜなら、【作中だと、月の出の時刻が、遅い設定になってた】から。
けど、「海面から昇る月」なんであれば、それは「海は銀盤」になるよなー。
現状、「どこにもはっきりそう書いてはない状況」な訳だけど。
まあはっきりそう書いてないのは、《太平洋側だとそれは常識だから》なのかも知らん。
けど、「太平洋に面してない日本国民も、半数近くいる」し、「太平洋側でも、湾とか半島とかあって、角度によっては状況違って来る」ように思うんで、
肝心なことは、やっぱきっちり書いて(明記して)おきましょうよ。

 ここ、痛恨のミスです。
 皆さま宛てのコメントでお伝えいたいしましたように、赤沢のシーンを削ってしまったために、海が銀盤に見えるという伏線なしになっていました。


>月もだけど、「満天の星空」「満天の星」と書く中に、「目立った星座か、恒星の名前」入れといてくれると、
「時期、方角、時刻」が明瞭になる。
 
 なるほど、伊豆東海岸が舞台ですので、10月なら東の正面に冬の大三角が見えますものね。


>そんで、、、話のフィナーレである「主人公が描くマリナの絵」って、油絵でないとダメなんだろうか??
そう思ってしまったのは、序盤で描かれてる海の情景が、本文中にも固有名詞出てきた《ラッセンの絵》なイメージが先行してて、
読者(=私)にそれが刷り込まれてる状態で、後出しで「油絵」だから、

 版画よりも、素人である主人公には油絵のほうが描きやすいかなと思ってしまったのです。


>大昔、普通の四大卒で広告代理店の制作に入った私からすると、
主人公はてっきり《マリナへの想いを、アドバタイジングに込める》んかと思ってた。

 目から鱗です。それいいですね。


 親身になってのご指摘の数々ありがとうございました。

飼い猫ちゃりりん
dw49-106-186-170.m-zone.jp

ショコラ様
はじめまして。
表現は綺麗だし、描写も上手だし、羨ましいですね。
ただ、猫は欲張りだから、綺麗なものばかりではなく、ばっちいものも好きなんです。
飼い猫思うに、生命には残酷で汚くてグロテスクな側面がある。
そして芸術作品は生命であって欲しい。つまり芸術作品には内蔵が必要。グロテスクでも。
 ショコラ様の作品にはその内蔵部分を猫は感じることがあまりできないのです。綺麗ですけどね。

13hPaブロでしょ
softbank221022130005.bbtec.net

評判がいいのか悪いのかよくわからないんですけど、そもそもそんなこと気にしないタチの人間として正直に言ってしまうと、“酷い”っていうのが率直なところですはっきりと。


文末の処理が逐一曖昧で、たぶんわからない人にはわからないしそんなこといちいち気にしないと言いたい人は勝手に言ってればいいだけのことなんですけど、個人的には結局語り手はいつどこで何を話したくてたらたらと喋り続けているのやらちっともわからない、っていうのが一番の感想になるわけです。

真面目に書き続けている方にこんな言い方をするのはただの失礼でしかないことはわかるんですけど、文章がキレイだのこれこそ小説のようなことを軽々しく言い腐る好意的な感想者たちの対局としてこんな読者もいても全然悪くないだろうというか、適正なバランスとして当たり前のことをお伝えしておかなければこんな場所の意味ないでしょう、ってごく健全なだけの意識に基づくクソ暴挙なので不愉快に感じられても差し出す側としては至極当然の感覚としてお伝えしているまでのことなのでどうかご勘弁頂きたく。



人がいて物語になるのか。

物語のために人がいるのか。



その勘違い甚だしい臭みが酷いということ。
どちらのことを言っているのかわからないのだとしたら絶望的、諦めた方がいいっていう単純で当たり前のハナシをしているだけのつもりです。

読み進める中で、人間として共感できる場面がただの一つもないです個人的には。
海がきれいとか星空がどうのとか、どっかのポエム馬鹿とは似ても似つかない下劣な人間が言うことですから区別して判断してほしいんですけど、作者として書きながら、場面にその人間らしい反応を反映させる気がないなら書くより読んで感じることからやり直したほうがいいってはっきりとその退屈を、欠落こそをお伝えしたいところです。

まともな人間感情が見当たらない。
まともな人間関係が反映されていない。

これは単純な景色のハナシでもいいつもりなので、描写だの丁寧だのが売りのつもりらしい作者にはむしろ見落とすなら絶望的なハナシだと、覚悟するべき要因足り得るハナシのはずだと個人的には思うんですね。


ムカつくだけで伝わらないならそれでもいいです、これはあまりにも当たり前すぎる“違和感”のハナシでしかないですから。




>そんなことないさ。バンダナ、よく似合うよ



まじかと。
同じ立場なら、あたしはそんなこと絶対に言えない。

めっちゃどうでもいいとこつっ込まれてる気がしますか。
とんでもないですよ、物語全体を掬ってずっこけさせるに十分な感覚っていうハナシのつもり。


タクミなんてこいつは自分のことばっかだし周りの人間にもそんなに好かれてないでしょ、マリナのおやじだって面倒見良いフリだけのただのエゴ大将、散々可愛がられた愛娘の出棺に“教え子”なる慕うダイバーたちの影もなく指一本手出しもさせないなんてどんな見栄なのかさっぱりわからないし創作として鈍感すぎるし、何よりマリナの気持ちこそ想像するだけでも忍びないですよただの他人の読者としてすら率直に。

要は手抜きも甚だしいというのが率直な感想ですし、作り話として割り切ることを嫌うつもりなら他人に読ませるなりの物語を書くことなんて適わないでしょう。



物語って、何ですか。
“小説”っていう世界を裏付けるモノって何ですか。


それがキレイだの美しいだの読みやすいだのっていう描写云々ってことでしかないつもりならクソでも喰らってろ鈍感無自覚の見栄吐きどもが、ってあたしは木っ端みじんに見下して少しも惜しくないところです当たり前に。



マリナは物語の都合で殺された。
無念も未練も後悔も呪いの一つすら吐くことも許されずただの張りぼてらしく美しく儚く物分かりの良い便利な道具として。



なにが書きたいのか読ませたいのか、全然わからないです個人的には。

お話を束ねてみたものの、わけわかんなくなったってそこに了を打つのは作者の最後の仕事でしょう。
ぜんぜん関係ないですよ言い訳になんかならない、絶対。


物語なんて関係ないです。

創作者のはしくれとしてただ単純に、作品にも感想の有り様にも呆れすぎて反吐が出る。



何を書いているのか、何を読んでいるのか。


そんなことも意識に置けない馬鹿しかいなくないですか、はっきりと。



キツい言い方で申し訳ないですけど、馬鹿馬鹿しくて見ていられないので。

ショコラ
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でんでんむしさま

 ご感想ありがとうございます。


>みなさんが褒めておられるように、文章的にはひっかっかるところもなく、ふんわり読むことができました。

 それだけではねえ。


>ところが、ふいにマリナが、何でしょうか、癌でしょうか、そんな不治の病気になってしまう。そこから、私はずずっと引いてしまいました。
後は、哀れな乙女と途方に暮れる男、毎度のパターンの感じになってしまいました。

 本作は『伊勢物語』の蛍の段を下敷きにしました。
 つい発想を古典頼みにしてしまうのですが、それではだめだと痛感しております。作者自身の内からほとばしる何かを描かなくてはならないのですね。


>茅場さんが、君の膵臓を食べたい、に言及されていますが、私は映画でしか知らないのですが、あれも余命いくばくもない若い娘の話ですが、ちっともめそめそしていないのですね。浜辺美波の、明日にも死にそうな娘が、実に元気がいいのです。

 わたしは映画見ていないのですが、浜辺美波さんはかわいくて、大好きな女優さんです。そうですか、そんなに元気にふるまうのですか。


>マイナスを表すのに、マイナスを描く、ではあたりまえすぎて心に残らないということですね。逆にプラスを描けば、心を打つ。

 なるほどです。


>そして楽しい思い出になる海の潜り、最初だけで終わるのは、ちょっとさびしいですね、

 ホントそうですよね。なんとか指切りの約束を果たすべく、マンタでも見に行くとかしたらよかったですね。


 丁寧に読んでくださり、的確なアドバイス、ありがとうございました。
 御作、読みましたらお伺いします。しばしお待ちくださいませ。

ショコラ
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飼い猫ちゃりりんさま

はじめまして。ご感想ありがとうございます。


>綺麗なものばかりではなく、ばっちいものも好きなんです。
飼い猫思うに、生命には残酷で汚くてグロテスクな側面がある。
そして芸術作品は生命であって欲しい。つまり芸術作品には内蔵が必要。グロテスクでも。

 おっしゃるとおりですね。うわっつらだけの美しさしかない人形ではなくて、命ある存在としての人物を描けたらなあと思います。

 的を射たご指摘、感謝いたします。

ショコラ
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13hPaブロでしょさま

ご感想ありがとうございます。


>評判がいいのか悪いのかよくわからないんですけど、

 評判は悪いです。
 読みやすさだけしかない。それでいいはずないですよね。皆さんご指摘の仕方に個性がありますけど、外連味ですとか、汚い内臓ですとか、サプライズですとかが足りなくて、ワンパターンの薄命の少女には違和感をおぼえるとおっしゃっています。


>そもそもそんなこと気にしないタチの人間として正直に言ってしまうと、“酷い”っていうのが率直なところですはっきりと。
>適正なバランスとして当たり前のことをお伝えしておかなければこんな場所の意味ないでしょう、ってごく健全なだけの意識に基づくクソ暴挙なので不愉快に感じられても差し出す側としては至極当然の感覚としてお伝えしているまでのことなのでどうかご勘弁頂きたく。

 でしょさまの歯に衣着せぬご指摘、うれしいです。


>文末の処理が逐一曖昧で、たぶんわからない人にはわからないしそんなこといちいち気にしないと言いたい人は勝手に言ってればいいだけのことなんですけど、個人的には結局語り手はいつどこで何を話したくてたらたらと喋り続けているのやらちっともわからない、っていうのが一番の感想になるわけです。

 なんちゃって一人称ですものね。三人称神視点で書いたほうがよかったのかな。

 
>人がいて物語になるのか。
 物語のために人がいるのか。

 確かに。でしょさまの作品はまず人がいて、物語は予定されていないですものね。
 本作も実は物語ありきで、『伊勢物語』の蛍の現代版として書いたものです。そこがいけないのでしょう。だからタクミは主人公だかナレーターだか曖昧な存在になってしまうし、マリナは死ぬために造形されたお人形になってしまう。
 発想がないのなら、書くなということですよね。


>作者として書きながら、場面にその人間らしい反応を反映させる気がないなら書くより読んで感じることからやり直したほうがいいってはっきりとその退屈を、欠落こそをお伝えしたいところです。
>まともな人間感情が見当たらない。
>まともな人間関係が反映されていない。

 これは皆さまからもご指摘いただいています。
 何を描きたいのか、どんな人物を描きたいのか、そこが曖昧なら書くなということですよね。


>これは単純な景色のハナシでもいいつもりなので、描写だの丁寧だのが売りのつもりらしい作者にはむしろ見落とすなら絶望的なハナシだと、覚悟するべき要因足り得るハナシのはずだと個人的には思うんですね。
>これはあまりにも当たり前すぎる“違和感”のハナシでしかないですから。

 この違和感も皆さまお感じのようです。人に血が通っていない。


>そんなことないさ。バンダナ、よく似合うよ
>まじかと。
 同じ立場なら、あたしはそんなこと絶対に言えない。

 これ業平設定なので、浮きますよね。もっと今を生きる作者として、今を生きる人を描かないと小説として書く価値がないと痛感しております。


>タクミなんてこいつは自分のことばっかだし周りの人間にもそんなに好かれてないでしょ、

ですよね。


>マリナのおやじだって面倒見良いフリだけのただのエゴ大将、散々可愛がられた愛娘の出棺に“教え子”なる慕うダイバーたちの影もなく指一本手出しもさせないなんてどんな見栄なのかさっぱりわからない

 ただ葬儀出棺というのは家族親族が中心になってするものですのでね。列席してもすこし控えて手出ししないのが血のつながらない者としては良識ある行動かと。


>マリナは物語の都合で殺された。
無念も未練も後悔も呪いの一つすら吐くことも許されずただの張りぼてらしく美しく儚く物分かりの良い便利な道具として。

おっしゃるとおりですね。


>作り話として割り切ることを嫌うつもりなら他人に読ませるなりの物語を書くことなんて適わないでしょう。
物語って、何ですか。
“小説”っていう世界を裏付けるモノって何ですか。
 
 ですよね。まさに小説という世界を紡ぐ覚悟が足りないのでした。



>創作者のはしくれとしてただ単純に、作品にも感想の有り様にも呆れすぎて反吐が出る。
>何を書いているのか、何を読んでいるのか。

 何を書いているのかわからないということには同意いたします。
 でも感想くださった方たちは決してほめているのではなく、違和感を感じたり、人物に血の通ったいないことを感じたりなさって、そこもしっかりご指摘くださっています。でしょさまのようにずばりというのはなかなか言いにくいので少しやんわりおっしゃっているだけかと思います。

 
 手厳しい、けれど大変ためになりますご指摘、ありがとうございます。

13hPaブロでしょ
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キツい言い方は申し訳なかったです。
そう伝えた方がいい気が勝ってしまうのがあたしのサイコなところで。

どうして忖度した表現で感想を伝えるべきなんだろう? っていうことが疑問で、むしろ卑怯な気がするとまで言ってしまうとやっぱりアタマおかしい感じがしてしまいますかね。

相手に言葉を控えるのは思い遣りかもしれないけど、角を立てたくないのは自分のことで、腹を割るよりやり過ごすことを選ぶのは不親切なだけのただの否定のような気がしてしまうとか。

ましてこんな場所なら、ということなんですけど、自分の言葉を弱らせることはつまり、その後の自分への逃げ道を備えるみたいで何だか格好悪い気がしてしまうんです。

立派なこと言うわりに、書かせれば大したことねえ、なんて思われたくない。

それはわかるけど、感想という機会においてそれを優先して、一体誰のためになるのか? って普通に疑問に感じるのはアタマおかしいですかね。
こんな場所の目的に当たって他人に言葉を選ぶことが"感想の鍛錬"ってことなら、あたしはその本意を取り違えてる気がしてしまうんです。

あたしは確かに度が過ぎるところがあるので失礼は謝ります。
ただ、他人に言葉を選ぶことって結構生意気な気がするっていうか、むしろ何様のつもりなんだろ、なんて思うところもわかって欲しいっていうか、変なハナシやっぱり誰も得しない気がしてしまうんですかね。

本意を伏してわきまえたつもりなら、見失うものは言葉ばかりではない気がする。
それはこんな場所での話でしかないことを理解したうえで言ってるんですけど、それを鬱陶しいとした上で要領を得ない感想をやりとりすることに何の意味があるのか。

受けたものは濁されて生煮え、送ったものは単純に言葉を弱らせるばかり。
書くべきものにこそ覚悟や気合が備わらない。

あたしも気を付けたいですけど、つまんないとか意味ないことにマナーや常識を装って日和る気にはやっぱりなれないし、嫌われる方がむしろ力が出るっていうかとりあえず意地くらいは思いつけるというか。


自分のために手加減するように見える言葉選びはむしろ相手に失礼な気がするし、損しかないなあって思ってしまいます。


とはいえ差し当たり、言い方キツくてすみませんでした。


相手によりけりで気を付けます。←アホ

ショコラ
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13hPaブロでしょさま

再訪くださり、ありがとうございます。


>相手に言葉を控えるのは思い遣りかもしれないけど、角を立てたくないのは自分のことで、腹を割るよりやり過ごすことを選ぶのは不親切なだけのただの否定のような気がしてしまうとか。
ましてこんな場所なら、ということなんですけど、自分の言葉を弱らせることはつまり、その後の自分への逃げ道を備えるみたいで何だか格好悪い気がしてしまうんです。

 感想の書き方、そして対人関係についての考え方は人それぞれでいいのではないかしら。もちろんでしょさまのお考えもうなずけます。


>立派なこと言うわりに、書かせれば大したことねえ、なんて思われたくない。それはわかるけど、感想という機会においてそれを優先して、一体誰のためになるのか? 
>こんな場所の目的に当たって他人に言葉を選ぶことが"感想の鍛錬"ってことなら、あたしはその本意を取り違えてる気がしてしまうんです。
>ただ、他人に言葉を選ぶことって結構生意気な気がするっていうか、むしろ何様のつもりなんだろ、なんて思うところもわかって欲しいっていうか、変なハナシやっぱり誰も得しない気がしてしまうんですかね。

 でしょさまの美意識ですよね。


>自分のために手加減するように見える言葉選びはむしろ相手に失礼な気がするし、損しかないなあって思ってしまいます。

 失礼だなんて全く感じていませんので、少なくともわたしには手加減なさいませんように。


ありがとうございました。

そうげん
112-70-248-248f1.shg1.eonet.ne.jp

投稿されてすぐに開いたのですが、わたしは冒頭一文目でダメでした。
はじめの空白まではがんばって読んでみましたが、それ以降はリタイヤいたしました。

●青い波が小石だらけの浜を叩き白く砕ける。

たたき・しろく・くだける
これリズムがとても悪い。
たたきしろくくだける。
か行が多用されて、しかも叩【き】白【く】砕【け】ると、なんといいますか、
叩きが3音、白くが3音、かぶるうえに、動詞・形容詞の送りがか行で揃ってしまっている。
読んでみて、とてもリズムが悪いのと、ちょっと気持ち悪くなりました。
わたしがプロの作家さんの本でも冒頭1行2行でとじることがあるというのは、こういうこともあるからです。自分には合わないなと肌で感じるのです。

意味的なところでも、浜に転がっているのが小石だとして、それを横にスライドする波がどうやって叩けるのか、そして砕くというからには可能な限り波の進行方向に対して垂直に近い面が大きくてこそという印象があるから、小石だとどうもイメージが弱い。「叩き」よりは、「打ち寄せ」とかのほうがいい気がしました。

●乾き切らない髪に潮の風が心地よい。この音、この匂い、この海が好きだ。

ここも乾ききらな【い】髪【に】潮の風が心地よ【い】。母音が揃ってしまってます。わたしは本腰を入れるときは、黙読するときも自分で口に出して読む速度と一致させて読むことにしているので、一音ずつ拾っていくと文章の粗が気になることがよくあります。文字は意味をとれればいいという感じでがしがし読んでく人だと気にならないのかもしれません。でもこの冒頭一文目で読めないと思い、二文目にさしかかって、苦手意識が生まれ、はじめの空白部まで読んだのですが、リタイアしました。

わたしには合わなかったのですが、楽しんで読まれた方もあるようなので、人ぞれぞれかと思います。ケチをつけたみたいになってしまって申し訳ありませんでした。それでは失礼いたします。

もんじゃ
KD111239165103.au-net.ne.jp

そうげんさま

他者さまのコメント欄にて、そうげんさん宛のコメントを失礼いたします、ショコラさんにもすみません。

感性、というものは人様々なのだな、と大変興味深く感じましたので、何かを深めるきっかけになればとコメントさせていただく次第です。

そうげんさんの文章が、個人的にとても好きなのでありますが、今回そうげんさんが書かれましたことに大変驚き、ふむ、そういう感性もありうるのか、と呻吟いたしました。

>●青い波が小石だらけの浜を叩き白く砕ける。

この一文のリズム、響きをもんじゃは大変心地よく感じたのでありますが……、

>たたき・しろく・くだける
これリズムがとても悪い。

とのご指摘。びっくりしました。
まさにその三点のリズムが素晴らしいと感じましたもので。

>たたきしろくくだける。
か行が多用されて、しかも叩【き】白【く】砕【け】ると、なんといいますか、叩きが3音、白くが3音、かぶるうえに、動詞・形容詞の送りがか行で揃ってしまっている。

まさに、まさに。
かきくけこ、で、硬質な響きが演出されています。
そこがよいなと感じられました。
そうげんさんは、伊豆の、ゴロタ石の浜辺を叩く波を見て、聴いたことがありますでしょうか?
砕ける白さ、衝撃音、とても硬質なものであります。かっきっくっけこっ、であります。瀬戸内の波とは違うのであります。さざ波が砂浜に打ち寄せるさまとは一線を画すのであります。
かきくけこなる硬質さが重ねられていることは、いかにも臨場的であるかと、この読み手には感得されました。

>読んでみて、とてもリズムが悪いのと、

リズム……。
そうげんさんの文章はとてもメロディカルだから、他作品のスタッカートの「っ」にも似た「かきくけこ」な調子に違和を感じられるのかも、みたいにちょっと思えてしまいました。
例示されました冒頭の一文の、少なくとも「リズムが」よろしくないようには、この読み手にはまるで感じられないのであります。

>ちょっと気持ち悪くなりました。

と、この強さで表明されます不快感の向こうに、何か別種のものさえ感じられてしまい不思議な気持ちがいたしました。

>自分には合わないなと肌で感じるのです。

文章の正誤は客観でありますが、好悪は主観でありますからね、いろんな感じ方、受け止め方があってよろしいように思われます。

>●乾き切らない髪に潮の風が心地よい。この音、この匂い、この海が好きだ。

この文章も、大変全う、かつ好ましい、と、この読み手には感じられましたことを白状いたします。

>ここも乾ききらな【い】髪【に】潮の風が心地よ【い】。母音が揃ってしまってます。

まさに。
そこが心地よく感じられました。

>わたしは本腰を入れるときは、黙読するときも自分で口に出して読む速度と一致させて読むことにしているので、一音ずつ拾っていくと文章の粗が気になることがよくあります。

まさに、この読み手も、本腰を入れなくともそのような読み方をしています。
今回のそうげんさんの、粗、という言葉の用い方に違和感を覚えます。

>文字は意味をとれればいいという感じでがしがし読んでく人だと気にならないのかもしれません。

文章の韻律は、この読み手も大変重視いたします。
だからこそ、そうげんさんが今回例示されました文章を、大変に律の整った文章として堪能させていただきました。
同じ文章に、同じ律を読み、しかし、片やそれを不快に、片やそれを心地よく感じる……、とても興味深い現象でありますね。

他者作品に寄せられましたコメントに対してコメントを発してしまいましたが、リズムないしは韻律なるものに対する感性の相対性、みたいなことは、何事かを書かんと欲するすべての筆にとって興味深いテーマであろうかと思いまして、見て見ぬふりをしたまま、そしておそらくは受容的になられるのであろう書き手の返信をも見て見ぬふりをしてやり過ごすこともできましたが、そうはせず、以上を書かせていただきました。ショコラさんにもすみません、場を汚してしまっていたら残念です。

失礼いたしました。

ショコラ
h175-177-040-032.catv02.itscom.jp

そうげんさま

 お久しぶりです。お名前、ひらがなになさったのですね。
 ご感想、ありがとうございます。


>投稿されてすぐに開いたのですが、わたしは冒頭一文目でダメでした。

 残念ですが、冒頭だけでもお読みくださり、感謝です!


●青い波が○○○叩き白く砕ける。

 この○○○の一文節が決められずに、悩みました。石を叩くのか、浜を叩くのかということもありますしね。
 この海岸、砂浜でも岩場の磯浜でもないのです。形も大きさもは不揃いで角の丸い、小石からメロンくらいの大きさくらいまでの石が転がっている、言うなれば石浜なのですけどそんな言葉はないと思いますので、一文節でうまく表現できない。
 もちろん、そういう地形を説明しておくという手もありますけれど、冒頭の一文は短めにしたい、退屈な説明文にしたくないという思いがありまして。 

>意味的なところでも、浜に転がっているのが小石だとして、それを横にスライドする波がどうやって叩けるのか、そして砕くというからには可能な限り波の進行方向に対して垂直に近い面が大きくてこそという印象があるから、小石だとどうもイメージが弱い。「叩き」よりは、「打ち寄せ」とかのほうがいい気がしました。

 砂に近い小石が想像されてしまう「小石だらけの浜を」という表現がつたなくて、そうげんさまにうまく情景が伝わらなかったのでしょう。


 お読みくださり、ありがとうございました。

ショコラ
h175-177-040-032.catv02.itscom.jp

ごめんなさい。

○○○部分、一文節ではなく二文節で考えていました。

石ころの浜を
小石だらけの浜を
石ころだらけの浜を

ショコラ
h175-177-040-032.catv02.itscom.jp

もんじゃさま

 拙文に関しまして、深くご考察くださり、ありがとうございます。

たまゆら
p1817002-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp

読ませて頂きました。
じつは掲載されてすぐ読んでいたのですが、感想を書きそびれていました。
 
変わらずきれいですね。文章も、ストーリーも、キャラも。そして何より丁寧です、全文が。
すべて丁寧だとどこを重要視しているのかわからなくなります。また読み飛ばしたくもなります。端折るところは端折って、込めるところは込めて、読み手の感情を支配してほしかったです。
 
それと、もしタクミが好青年ではなく、マリナからもヨシさんからも持て余されるできの悪い青年だったら、物語はずいぶん変わったように思います。
ダイブ資格も取れない劣等生、講習会でもお荷物的存在。そんなタクミをマリナはどう思うでしょう。またタクミはそんなマリナに対し、何を考え、どんな行動をとるでしょうか。
ショコラ作品の欠点は、キャラが文章と同じできれいすぎるところです。一度でいいから、主人公のキャラの質を落としてみたらどうでしょうか。ラストが同じなら、そこに到達するまで好青年以上のドラマが生まれたような気がします。揺れ幅も大きいですし、ラストもより効果的になったと思われます。始まりと終わりでの主人公の変化。たぶんそれって小説の醍醐味だと思うんです。
 
勝手すぎる感想ごめんなさい。いつまでもキャラが金太郎飴ではいけないと思って^^
またいつか、ショコラさんの作品が読めることを楽しみにしています。

ショコラ
h175-177-040-032.catv02.itscom.jp

たまゆらさま

 ご感想ありがとうございます。
 

>すべて丁寧だとどこを重要視しているのかわからなくなります。また読み飛ばしたくもなります。端折るところは端折って、込めるところは込めて、読み手の感情を支配してほしかったです。

 メリハリですよね。
 

>ショコラ作品の欠点は、キャラが文章と同じできれいすぎるところです。一度でいいから、主人公のキャラの質を落としてみたらどうでしょうか。
>始まりと終わりでの主人公の変化。たぶんそれって小説の醍醐味だと思うんです。

 どなたのご感想か、わかりました。金太郎飴脱却を目指して、新しい作品構想してたいです。
 ありがとうございました。

5150
5.102.18.152

文章で読ませる作品でありました、文字通りに。なので大変するすると読み終えることができましたが、内容的にはあまり咀嚼して味わうことなく終わったなという感じがします。そういう意味では、文章的に引っかかる箇所が多かった前作の方が内容を味わうことはできました。今作は、読後に残った情景もセリフもありませんでした。それは御作が云々というよりも、たぶん私がこの手のストーリーには全く惹かれないからだと思っています。すごく綺麗に着飾ってはいるが、それだけ、という感じもします。文章のために書かれた感じがしないでもありません。類型的テンプレに沿っただけで、作者個人の何かを感じさせるものはありませんでした。実力とテクニックはある方だと思いますので、そういうのを一切忘れて(せめて一稿目は)、テクニックと文はすべて自分の想いを伝えるためにある、くらいの作品を一度読んでみたいですね。なんて、とても図々しく書いてしまいました。いつも偉そうかつ辛口感想スミマセンです。ありがとうございました。

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