作家でごはん!鍛練場
日なんとか

黄泉へ渡る笹舟

 今年で十六歳になる俊太は、笹舟を夜の小川の水面に浮かべた。
 笹の葉の両端をその辺の蔦で括って無理やり船に似せたお手製だ。中央には、家で炊いてきたお米が数粒載せてある。
 水深の浅い小川は、無数に敷き詰められた底の小石を魅力的に映しだす。ゆっくりと動き出した笹舟を、水面の縁辺から青々とした雑草の葉がエールを送っているかのように迫り出してい

る。
 二十二時を過ぎても抜けきらない夏の酷暑に、じっとりとした汗がでた。
 たまに吹く風は生ぬるくて、運んでくる夏の匂いから僅かな涼しさを感じられる。幾方向から奏でられる虫の大合唱にも心が癒された。都会とはまた違った夜の静けさだった。
 俊太は白い半袖で額を軽く拭い、お洒落っ気のないジーパンからアイフォンを取り出して構えた。ファインダーの焦点を漕ぎ出したばかりの笹舟に合わせる。
 アイフォンのライト機能をオンにすると、水面で光が細かく反射して、思わず声が漏れた。
「田舎も、思っているより悪くないんだよなあ」
 弧を描く雑草の葉先に接触して生まれるささやかな波紋が、同じようにして出来た後続の波紋と折り重なって、キラキラと光り、より幻想的な光景をみせていた。
 アイフォンのシャッターを切って、表示された写真画像に俊太は人知れず満足した。
 ひと夏の思い出を体現するかのような、良い画だった。
 写真を撮りに来たわけではなかったが、これだけでも来た甲斐があった。
 草の根をスニーカーで踏み分ける音が近づいてくる。
 同い年の雪華(せつか)だ。俊太の身近にまで寄って来て、なにやら唇を尖らせている。
「あ! 俊太フライングっ!」
 雪華は、ゆっくりと回転しながら微速前進する笹舟を指差して、不満げに柳眉を歪めた。
「私も一緒に流したかったのに。あのさー、俊太に笹舟の作り方教えてあげたの私なんだけど?」
 頬を膨らませてまるで、恩を仇で返しやがったな、と言わんとする剣幕だ。
「教えたって言われても、せいぜい二分程度レクチャーしてくれただけだろ? そこまで威張ることか」
「……一緒に流したかったのに」
 言葉を繰り返すその唇は、物寂しそうに弱々しくなっていた。すこし垂れた印象的な目元が一層、垂れ目に見える。
 雪華は夏に合わせたおでこ丸出しの黒いショートヘアーを、俊太の二の腕に寄り添うように傾けた。年々大人びるその顔は完成形に近く、凛として美しい。三十分前に待ち合わせた時から

感じていたシャンプーの甘い香りが、鼻の奥で強くなった。
 膨らんだ胸の柔らかさに触れた俊太の腕は、すぐにムズ痒い熱を返ようになる。雪華の程よく焼けた健康的な四肢から、背徳的に伝わってくる胸の色合いを脳が勝手に補完する。
 雪華の馴れ馴れしい態度は嫌いではないが、これは流石にくっつきすぎだと思い、さり気なく距離をあけた。
「あー……。俊太が逃げた」
「に、逃げてない。それより、今からでも一緒に流せるよ。ほら、早くしないと俺の笹丸号が行っちまう」
 即席で名付けた笹丸号は、途中途中で迫り出した葉と接触していて、言うほどに進んではいなかった。
「んじゃ、お隣失礼しよっかな」
 雪華は楽しそうに小川に身を乗り出して、予め持っていた笹舟を水面に浮かべる。
 狂った方位磁石のように回転する笹舟が二つ、行き着く先も分からない小川を流れていく。
 毎年の夏休み初めの期間を、俊太は父方の実家で数週間過ごしにやって来る。祖父母の家はドがつく田舎で、一人っ子の俊太にとって近くに住む雪華は、年齢の近い唯一の遊び相手だった。
「黄泉の国でもさ、幸せだと良いよね」
 故人をしんみりと偲ぶ雪華に、俊太は寂しい気持ちを思い出していた。
「だな。祖父ちゃんなぁ……去年会った時は病気もなく元気してたんだけどなぁ。急に逝っちまうんだもん。あと少し辛抱してくれたら、夏休みで会えたってのに」
 髪の毛は枯れた荒野のようにスカスカで、最期まで入れ歯にしなかった口もスカスカで、それでも快活に死後の世界を話してくれた。
 死んだ人間は魂となって黄泉の国を目指す。その途中で、方角を失う者や魂が崩れて動けなくなる者もいる。そういった者でも黄泉の国へとたどり着けるよう、死後七日目に生者の想いを

込めた笹舟を川に流してやる。お米を数粒載せるのは、空腹だと死者が可哀想だから、とのことだ。気の利く祖父ちゃんらしい配慮だと思った。しれっと「俺が死んだ時は頼むぜ」と、タバ

コが似合いそうなニヒルな表情で軽口を叩いてきたのは良い思い出だ。
 実際のところは、死んでみるまで分からない。
 この儀式が死んだ祖父の為というのは嘘ではないが、俊太の心の整理をする意味合いも強かった。
 二つの笹舟に手を合わせて、瞑目する。祖父との万感の想いを乗せる。
 少しして目を開けると、隣で雪華が地面に膝をついて合掌しながら目を閉じていた。
「ありがとな、俺の祖父ちゃんのために。通夜にも来てくれたし」
「私もお世話になった身だし。むしろ、夏休みにしか来ない俊太よりも近くで暮らす私の方がお世話になってるから、逆に俊太こそありがとうだよ」
 雪華は澄んだ顔を笑顔にパッと切り替えて、俊太の背中を肘で軽く突っついた。
 馴れ馴れしい奴だけど、だからといって礼儀は欠かない性格は好ましかった。雪華と一緒にいて嫌に感じた記憶はほとんどない。
「いや流石に、その理屈はおかしいだろ。祖父ちゃんは俺の身内だし」
「かな?」
 茶化すような雪華の笑みを見ていると、どっちがより祖父ちゃんのお世話になったか、なんてどうでもよく思えてくる。
「ね、俊太! さっきの写真よく見えなかったから、もう一度見せてくんない?」
「さっきの写真?」
「撮ってたじゃん。えっと、笹丸号? が映ってるやつ」
 たしかに撮ったが、雪華に見せた覚えはなかった。
「あぁ、さっき俺にくっついて来たのは、写真が見たかったからなのか……」
 一人納得する俊太に、雪華はうんうんと二度頷いた。悩みなんてなんも無さそうな、羨ましいくらいに無垢な黒瞳だった。
 快くアイフォンを操作していると、ふいにシャンプーの甘い香りが再び強まった。ふわりと鼻腔をくすぐって、落ち着かない気分に誘われる。
「さっきも思ったけど、体近くないか?」
「そう? 別に普通じゃない?」
 雪華は人の手元を覗く体勢から、俊太の顔をとぼけた様子で仰いだ。
 曲線を描いて上に伸びるまつ毛の一本一本がよく分かる。頬の凹凸加減や鼻の細かな造形の情報が、目まぐるしい速度で脳にインプットされていく。それに合わせて頭が悶々とした熱を帯

びてくる。
「なら俺も気にしないけど」
 雪華相手にドキドキしていると知られるのが恥ずかしくて、狼狽えないよう努めて応えた。もとより、雪華に対して恋愛感情を抱いていないはずだった。
「やっぱり、俊太この写真凄く良いよ! 水がキラキラしてて綺麗だし、両サイドの草のピンボケしてる感じが逆に笹丸号を際立たせてて良いと思う!」
「そー、なのか? 俺も気に入ってるけど、別にそこまで狙ってなかった」
「……でもこれ、人の顔見たく見える。私の気のせいかもだけど。ね、俊太はどう見える?」
 そう言って、アイフォンに映った写真の一点を少し伸びた爪で指した。
 波紋と波紋が重なって笑った口のように見えなくもなく、その上部分には、迫り出した葉と水面との堺に黒い目のような影が二つ見えなくもない。これを心霊写真と呼ぶのは幽霊肯定派の

俊太からしても、こじつけに思えた。
「うーん……そうかー?」
「きっとお祖父ちゃんだよ! 私たちが笹舟流したから、喜んでるんだよ!」
「雪華が言うなら、そういうことで良いよ」
 にしては祖父ちゃん鼻の下伸びすぎな気がするけど……雪華に見惚れたか? 九十二歳で、んなまさか。俊太は心の中で有り得ない妄想を笑い飛ばす。
「ところでなんだけどさ、俊太って彼女できた?」
 突拍子もない質問に、ドキリとした俊太は間抜けた声を「へ?」とだけ漏らした。
 困った表情でこちらを窺う雪華がどうしようもなく女性的にみえる。一度そう意識してしまうと、あとはドツボだった。
「い、いや、なんだよ急に」
 みるみる顔が赤くなっていくのが自分でも分かった。
 本能的にこの至近距離で居続けるのは不味いと感じて、月明かりだけが頼りの薄闇に身を隠すように退いた。じっとりとした暑さを言い訳に半袖で顔を覆う。それでも動揺は抜けなかった


「俊太の反応わかり易すぎ! 絶対彼女いないよね」
 雪華は垂れ目を細めて鼻でフフフッと笑う。それはケラケラと大笑いするのを辛うじて堪えたような、酷い笑い方に思えた。
「そう言う雪華はどうなんだよ。彼氏いるのかよ」
「あのさ、彼氏いたらこの話題振ったりしないよ?」
 普通に考えて、これで彼氏がいたらかなり嫌な性格だ。喧嘩を軽く吹っかけているようなものだ。雪華は人を怒らせる嫌味は吐かない、と俊太は改めて思った。
「俊太さえ良ければさ、私と恋仲になってよ」
 ショートヘアーを指先で捩って照れた様子の雪華が、淡い唇を俊太に向ける。その黒瞳は、耳心地の良い回答を求めてしたたかに煌めいている。
 俊太は「へ?」という言葉も出せないほど固まっていた。まさか、祖父の魂を弔いに来たついでで告白を受けるとは、つゆほども予想できていなかった。
「な、なんで俺なの?」
 長い時間をかけて渇いた喉を通って出した言葉に、雪華は恥ずかしさを紛らすかのように小さく笑う。
「俊太はいいよね、都会だと異性とも出会い放題でさ。こっちは若い異性を見つけるのも大変なんだよ」
 なんだよその理由は、と俊太は心の中で悪態をついた。遠まわしに「若い男なら誰でもいい」と言われたように感じた。俺は雪華にとってその他大勢の一人なのかと思うと、悲しさが込上がるのと同時に気力が足元から抜けていく。
「嘘でもせめてもっと無いのかよ、俺の良いところ……」
「あるよあるよ。口にするの照れるけど……言うよ。私ね、お付き合いするのなら、死んだ後も忘れたりせずに気持ちを尊重してくる人が良い……って、俊太を見て思ったの。これってね、凄く素敵だと思う」
 今夜の笹舟流しを発案したのは俊太だった。
 最初は一人で行うつもりだった。雪華に軽い気持ちで笹舟の作り方を聞いたら、同行したいと言われ、特に断る理由もないから受け入れた。俊太がこっちに来て間もない――つい昨日のこ

とだ。
 思えばその瞬間からだろうか、雪華の向けてくる黒瞳に愛(いと)おしむ色が混じったのは。最初は、一年越しの遊び相手にテンションが上がっているのだろうと思っていたが、誤解だっ

た。
「俺を明確に好きになったの、昨日かよ」
 呆れからではない自嘲じみた声が、自然と口をついてでた。
 雪華は昔から思い立ったが吉日な性格で、その活発な行動力にはいつも感心させられる。野山を登ったり川を下ったり、いつも前振りもなく振り回されてきたが、嫌に思ったことは一度も

なかった。
 いつだって見つかる新しい発見に喜んで、輝く瞳のまま夜の眠りに就く。世界を冒険する夢を見て、覚めると今日はどこへ行けるのかと心が逸る。
 雪華は良い奴だし馬も合う。女性としての魅力にもあふれている。
 こちらの良いところを指摘してくれた雪華には、同じ言葉を尽くして返事をするのが礼儀だろう。――けれどもどうして、必要以上に熱を持ってしまった頭のせいか、肝心の言葉が浮かば

ない。確かに胸の中にあるはずの言葉が、まるで煙に巻かれたように存在を隠している。
「もう、そんな深刻な顔しないでよ……返事はいつでもいいしさ。あ、そうだ! 笹丸号の写真後で送ってよね。プリントアウトして部屋に飾るんだー」
 暗に、長考した末の時間切れを告げていた。
 俺のバカ! と口の中で後悔の念を唱えつつ、雪華の明るい気遣いに心底救われた気持ちになる。告白の返事をしないまでも、なにか気の利いた一言を言えれば良かった。
 優柔不断な自分をどう思ったのか気になったが、背を向けて薄闇に溶けていく雪華の本心は、ついに知れることはなかった。



 翌年の七月下旬に、俊太は亡くなった。
 自分の死のせいで悲しむ家族や友人に、申し訳なく思う。特に雪華には、返事らしい返事をしないままにあの夏を終えてしまったことで、余計に悪いことをしてしまった。
 俊太は自分がどうして死んだのか、分からずにいた。
 体の至るところから深々とした傷口より血を滲ませていて、着ている高校の夏服は上下ともにボロ雑巾のようにズタズタだった。
 今でこそ痛みはないが、凄惨な死を遂げたのは想像に難くない。思い出せないのはむしろ、幸いなことだと前向きに考えるようにした。
 物質をすり抜ける体や、鏡に映らない姿に、人と交わることのない声が、死んだ現実を容赦なく叩きつけてくる。
 だけれども、不思議と憤りの念は沸いてこない。
 置かれた状況に即座に適応する、子供の頃から雪華に鍛えられた生存能力が、ここでも遺憾なく発揮されていた。
 ただ一つ、困ったことがある。
「これから、どうすればいいんだ?」
 誰かに助言を求めようにも、坊さんにも神主にも言葉は通じなくて、同じように彷徨う死者の魂とも出会わない。
 死んでから五日、顔を思い浮かべるだけで瞬時にその者の場所に移動する能力を使って、出来る後悔もし尽くした。
 五里霧中とは正にこのことだった。
 ふと、日に日に世界が白く霞んでいっていることに気がついた。俊太はすぐに考えを改める。霞んでいっているのは世界ではなく、俺の存在の方だ。


 さらに二日経つと、ほとんど真っ白な世界になっていた。もはや悪夢だ。どこから光が差しているのか分からないが、世界は影もなく、白をひたすらに反射している。
 今になってお腹が空いてきた。もちろん口にできる物など何もない。
 右足の太ももに受けた損傷より下部の感覚が希薄なってきていて、歩く足取りは泥酔したサラリーマンのごとく覚束無い。
 どっちが右で左なのか、果ては、上なのか下なのか。ふわふわした体だから、余計に方向感覚が分からなくなる。
 辛うじてうっすらと視える現世の形だけが頼りだ。無情なことに、それすらも完全に消滅するのは時間の問題に思えた。
「うわっ!?」
 とうとう足がもつれて手をついて倒れてしまった。立ち上がろうにも、体以前に心がついてこなかった。
 流石の俊太も、現状に参り始めていた。
「これが俺の最期なのかよ……。せめて雪華に一言詫びたかったな。チクショー……俺のバカ野郎!」
 し尽くしたはずの後悔は、心の底の底で燻りを高めていく。形容し難い衝動がどっと涙腺に押し寄せた。とてもじゃないが抗えない激情だった。
 ――雪華とは両想いだった。――そのはずだった。
 俊太はずっと、個性のない生き方でのらりくらりと生きてきた。誰からも嫌われず、好かれず。必要な工程を無難に収めてやり過ごしてきた。誰からも認められなくても、別になんとも思

わなかった。
 雪華に自分の良いところを褒められて、凝り固まって出来た価値観は瞬く間もなく崩壊した。告白が同時だったから混沌とした深みにハマったが、今なら絡まった心の内を紐解ける。
 自分を本当の意味で認めてくれて、求めてくれる人を本心では欲していたんだ。
 あの夜、決してお為ごかしではない褒め言葉を耳にして、俊太は雪華に恋をした。
 告白の返事をしなかったのは、言葉に詰まったからじゃない、それなら後になっていくらでも返事をすれば良かった。そうできなかったのは、雪華の期待に応えられる自信がなかったから

だ。
 でも雪華はきっと、そんなこと求めてはいなかった。雪華が求めていたのは、死者の気持ちを尊重する俊太の心の在り方、これに尽きるのだ。
「今更だよな……何もかもが遅すぎるよな……」
 自分の心の変化に気付けていれば、あの夏の夜から始まる雪華と歩む未来があったかもしれない。虚しくて、虚しくて、虚しい後悔だ。
 どこかからバイオリンをぎこちなく弾くような音が聴こえてくる。
「とうとう幻聴まで聞こえてきた。俺、これからどうなるんだ? 怖いよ」
 一人でうずくまって震える俊太の耳に、聞こえる幻聴はどんどん騒がしくなっていく。
 とても懐かしい、それは祖父母の家でなんどと聞いた夏の風情あふれる虫の大合唱だった。
 右側から黄緑色の何かが、空を滑るようにして俊太めがけて一直線に飛来する。時折それは、小さな波を乗り越えるような挙動をして、果ては目の前で停止した。あまりの巨体さに認識が

遅れたが、両端を蔦で括って造られた笹舟だった。
「おいおいこの匂い、嘘だろ……お米の匂いだ!」
 途端に鋭さを増した嗅覚に身を委ねて、笹舟の船べりに腕を掛ける。食いきれない大きさの団子が四つ乗っていた。見るからに柔らかく、ありがたいことに湯気まで立っている。
 俊太は笹舟を這って団子に齧り付いた。瞬間、仄かな甘みが味覚を刺激して、次から次へと涎が溢れて止まらなくなった。
「んまい! んー、うめぇーーー! 米うめぇー!」
 不思議と、途切れたはずの右足の感覚が蘇る。心身ともに力が染み渡っていくのを感じる。
 巨大な団子を一つ食べきると、俊太を乗せた笹舟はその場で回転を始めた。
 まるで往くべき場所を探っているかのように、時期にメトロノームのように左右に振れて、最終的には一点を船首が示した。
 聴いていると愉快になる虫の大合唱をバッグに、笹舟はゆったりとした移動を開始する。
 この先どうなるのか見当もつかないことに変わりはないが、不安な気持ちはすっかり消えていた。何故だか正しい方向に進んでいるのだと分かる。
 ただ笹舟に乗っているだけで、体がポカポカしてきて心地が良かった。
「誰かが俺のために笹舟を流してくれたんだ。ありがたいな」
 地獄に仏だ。胡座を掻いてそんなことを思っていたら、天から女性の声が降り注いだ。
『俊太……俊太……俊太がどうか無事に黄泉の国へ行けますように。お願いします神様』
 エコーが掛かって聞き取りづらかったが、忘れもしない雪華の声だ。悲痛に震えていて、聞いている俊太まで泣きたくなってくる。
「雪華、俺ならここにいる! 聞こえるか!? 笹舟ありがとな、ほんとに助かったよ!」
 俊太は諸手をあげながら真っ白い天に声を張り上げた。雪華には伝えたい想いが沢山ある、どうか届けと天に願った。
『俊太は顔では興味ない振りするけど、誰よりも好奇心の強い人だったよね。私は俊太が新しいものを知って興奮する姿を、横から見るのが好きだった。……もう見れないと思うと辛い、辛

いよ。ごめんね、泣くつもりなかったんだけど、まだちょっと立ち直れてなくて……』
 雪華は時折涙ぐみながらも、一方的な独白を続けた。俊太の声は届いていないようだった。
『俊太はさ、俊太が思っている以上に偉い人だったよ? 歩道を歩いていた時に交通事故に巻き込まれたって聞いた。俊太は咄嗟に隣にいた人を庇って、それで…………すごいよ。助かった人、

俊太に凄く感謝してたって。みんな俊太を褒めてること、ちゃんと伝わってるといいな』
「俺が身を呈して他人を庇った?」
 俄かには信じられない。
 些細な親切なら苦もなくできるが、命懸けとなると話が変わってくる。いざとなったら自分が一番可愛い、そういう人間だと俊太は自己を評価していた。
 雪華に今までの価値観を覆された時に、自分も知らない自分に少しずつ変わり始めていたのかもしれない。
「あの無個性だった俺が、誰かに尊敬される存在に、なれたのか?」
『後そうだ、俊太信じてくれなさそうだから内緒にするつもりだったんだけど、言っちゃうね。霊視ができる知り合いに、笹丸号の写真を視てもらったの。そしたら、たしかに俊太のお祖父ちゃんがいるのが視えるって言われたの! 未練のない優しい雰囲気だったって。……まー白状しちゃうと、私が思っていた場所とは違う場所に写ってるらしいんだけど、へへへ』
 写真に祖父が写っているという雪華の指摘は正しくて、その箇所が祖父に見えないという俊太の眼識もまた正しかった。
 写真一枚取ってもその実複雑で見極めるのが難しい、と俊太は諦観めいた渇いた笑いをこぼした。
『ということでさ、写真を撮りたいんだけどー……いい、よね?』
 答えを伝える術はないが、あえて伝える必要はなさそうだ。
『ハイ、チーズ!』
「え!?」
 一瞬、世界のすべてが白に飲み込まれた。現世で炊かれたカメラのフラッシュが、俊太のいる世界に影響を及ぼしたとでもいうのだろうか。
 にしても、体がポカポカと熱い。熱い。熱い。
 細胞の一つ一つが熱を生んでいるかのような、すごい熱量だ。でも汗は出ないし、不快にも思わない。むしろ無制限に温まっていく体が気持良いとさえ感じる。
 俊太の魂は終焉に近づいていた。
「雪華! 聞こえてなくても良い、最期だろうから言わせてくれ! 告白の返事ができなくてごめん! 俺は、雪華と一緒にいた時間が一番自分らしくて、一番幸せだった! こんな俺と…

…こんな俺と……仲良くしてくれてありがとう! 礼儀を欠かないところとか、取り柄のない俺を未知の世界にぐいぐい引っ張ってくれるとことか、大好きだった……俺だって、付き合いた

かったよ……ごめん」
 セリフの後半は切なさを抑えきれなくなっていた。
『俊太!? 今、俊太の声が聞こえた気がした……私の気のせい、なのかな?』
「俺の声が届いたのか!? ありがとう、ありが――」
 神の采配に感謝したその時、俊太の世界は在るべき処へと回帰した。

黄泉へ渡る笹舟

執筆の狙い

作者 日なんとか
KD036013124092.ppp-bb.dion.ne.jp

このサイト見てたら無性に何かを書きたくなって、二日間で衝動的に書き上げました。
最初の空行あたりでもう書くのがしんどかったです……

素人の作品なので粗は多いと思いますが、目を通してもらえるだけで凄く嬉しいです!
よろしくおねがいします!

コメント

日なんとか
KD036013124092.ppp-bb.dion.ne.jp

なんかメモ帳からコピペしたら、改行が変なことになった……
読みにくくてすみません!

日なんとか
KD036013124092.ppp-bb.dion.ne.jp

すみません、コメント欄に投稿し直します。

↓以下 黄泉へ渡る笹舟 本文↓

日なんとか
KD036013124092.ppp-bb.dion.ne.jp

 今年で十六歳になる俊太は、笹舟を夜の小川の水面に浮かべた。
 笹の葉の両端をその辺の蔦で括って無理やり船に似せたお手製だ。中央には、家で炊いてきたお米が数粒載せてある。
 水深の浅い小川は、無数に敷き詰められた底の小石を魅力的に映しだす。ゆっくりと動き出した笹舟を、水面の縁辺から青々とした雑草の葉がエールを送っているかのように迫り出している。
 二十二時を過ぎても抜けきらない夏の酷暑に、じっとりとした汗がでた。
 たまに吹く風は生ぬるくて、運んでくる夏の匂いから僅かな涼しさを感じられる。幾方向から奏でられる虫の大合唱にも心が癒された。都会とはまた違った夜の静けさだった。
 俊太は白い半袖で額を軽く拭い、お洒落っ気のないジーパンからアイフォンを取り出して構えた。ファインダーの焦点を漕ぎ出したばかりの笹舟に合わせる。
 アイフォンのライト機能をオンにすると、水面で光が細かく反射して、思わず声が漏れた。
「田舎も、思っているより悪くないんだよなあ」
 弧を描く雑草の葉先に接触して生まれるささやかな波紋が、同じようにして出来た後続の波紋と折り重なって、キラキラと光り、より幻想的な光景をみせていた。
 アイフォンのシャッターを切って、表示された写真画像に俊太は人知れず満足した。
 ひと夏の思い出を体現するかのような、良い画だった。
 写真を撮りに来たわけではなかったが、これだけでも来た甲斐があった。
 草の根をスニーカーで踏み分ける音が近づいてくる。
 同い年の雪華(せつか)だ。俊太の身近にまで寄って来て、なにやら唇を尖らせている。
「あ! 俊太フライングっ!」
 雪華は、ゆっくりと回転しながら微速前進する笹舟を指差して、不満げに柳眉を歪めた。
「私も一緒に流したかったのに。あのさー、俊太に笹舟の作り方教えてあげたの私なんだけど?」
 頬を膨らませてまるで、恩を仇で返しやがったな、と言わんとする剣幕だ。
「教えたって言われても、せいぜい二分程度レクチャーしてくれただけだろ? そこまで威張ることか」
「……一緒に流したかったのに」
 言葉を繰り返すその唇は、物寂しそうに弱々しくなっていた。すこし垂れた印象的な目元が一層、垂れ目に見える。
 雪華は夏に合わせたおでこ丸出しの黒いショートヘアーを、俊太の二の腕に寄り添うように傾けた。年々大人びるその顔は完成形に近く、凛として美しい。三十分前に待ち合わせた時から感じていたシャンプーの甘い香りが、鼻の奥で強くなった。
 膨らんだ胸の柔らかさに触れた俊太の腕は、すぐにムズ痒い熱を返ようになる。雪華の程よく焼けた健康的な四肢から、背徳的に伝わってくる胸の色合いを脳が勝手に補完する。
 雪華の馴れ馴れしい態度は嫌いではないが、これは流石にくっつきすぎだと思い、さり気なく距離をあけた。
「あー……。俊太が逃げた」
「に、逃げてない。それより、今からでも一緒に流せるよ。ほら、早くしないと俺の笹丸号が行っちまう」
 即席で名付けた笹丸号は、途中途中で迫り出した葉と接触していて、言うほどに進んではいなかった。
「んじゃ、お隣失礼しよっかな」
 雪華は楽しそうに小川に身を乗り出して、予め持っていた笹舟を水面に浮かべる。
 狂った方位磁石のように回転する笹舟が二つ、行き着く先も分からない小川を流れていく。
 毎年の夏休み初めの期間を、俊太は父方の実家で数週間過ごしにやって来る。祖父母の家はドがつく田舎で、一人っ子の俊太にとって近くに住む雪華は、年齢の近い唯一の遊び相手だった。
「黄泉の国でもさ、幸せだと良いよね」
 故人をしんみりと偲ぶ雪華に、俊太は寂しい気持ちを思い出していた。
「だな。祖父ちゃんなぁ……去年会った時は病気もなく元気してたんだけどなぁ。急に逝っちまうんだもん。あと少し辛抱してくれたら、夏休みで会えたってのに」
 髪の毛は枯れた荒野のようにスカスカで、最期まで入れ歯にしなかった口もスカスカで、それでも快活に死後の世界を話してくれた。
 死んだ人間は魂となって黄泉の国を目指す。その途中で、方角を失う者や魂が崩れて動けなくなる者もいる。そういった者でも黄泉の国へとたどり着けるよう、死後七日目に生者の想いを込めた笹舟を川に流してやる。お米を数粒載せるのは、空腹だと死者が可哀想だから、とのことだ。気の利く祖父ちゃんらしい配慮だと思った。しれっと「俺が死んだ時は頼むぜ」と、タバコが似合いそうなニヒルな表情で軽口を叩いてきたのは良い思い出だ。
 実際のところは、死んでみるまで分からない。
 この儀式が死んだ祖父の為というのは嘘ではないが、俊太の心の整理をする意味合いも強かった。
 二つの笹舟に手を合わせて、瞑目する。祖父との万感の想いを乗せる。
 少しして目を開けると、隣で雪華が地面に膝をついて合掌しながら目を閉じていた。
「ありがとな、俺の祖父ちゃんのために。通夜にも来てくれたし」
「私もお世話になった身だし。むしろ、夏休みにしか来ない俊太よりも近くで暮らす私の方がお世話になってるから、逆に俊太こそありがとうだよ」
 雪華は澄んだ顔を笑顔にパッと切り替えて、俊太の背中を肘で軽く突っついた。
 馴れ馴れしい奴だけど、だからといって礼儀は欠かない性格は好ましかった。雪華と一緒にいて嫌に感じた記憶はほとんどない。
「いや流石に、その理屈はおかしいだろ。祖父ちゃんは俺の身内だし」
「かな?」
 茶化すような雪華の笑みを見ていると、どっちがより祖父ちゃんのお世話になったか、なんてどうでもよく思えてくる。
「ね、俊太! さっきの写真よく見えなかったから、もう一度見せてくんない?」
「さっきの写真?」
「撮ってたじゃん。えっと、笹丸号? が映ってるやつ」
 たしかに撮ったが、雪華に見せた覚えはなかった。
「あぁ、さっき俺にくっついて来たのは、写真が見たかったからなのか……」
 一人納得する俊太に、雪華はうんうんと二度頷いた。悩みなんてなんも無さそうな、羨ましいくらいに無垢な黒瞳だった。
 快くアイフォンを操作していると、ふいにシャンプーの甘い香りが再び強まった。ふわりと鼻腔をくすぐって、落ち着かない気分に誘われる。
「さっきも思ったけど、体近くないか?」
「そう? 別に普通じゃない?」
 雪華は人の手元を覗く体勢から、俊太の顔をとぼけた様子で仰いだ。
 曲線を描いて上に伸びるまつ毛の一本一本がよく分かる。頬の凹凸加減や鼻の細かな造形の情報が、目まぐるしい速度で脳にインプットされていく。それに合わせて頭が悶々とした熱を帯びてくる。
「なら俺も気にしないけど」
 雪華相手にドキドキしていると知られるのが恥ずかしくて、狼狽えないよう努めて応えた。もとより、雪華に対して恋愛感情を抱いていないはずだった。
「やっぱり、俊太この写真凄く良いよ! 水がキラキラしてて綺麗だし、両サイドの草のピンボケしてる感じが逆に笹丸号を際立たせてて良いと思う!」
「そー、なのか? 俺も気に入ってるけど、別にそこまで狙ってなかった」

日なんとか
KD036013124092.ppp-bb.dion.ne.jp

「……でもこれ、人の顔見たく見える。私の気のせいかもだけど。ね、俊太はどう見える?」
 そう言って、アイフォンに映った写真の一点を少し伸びた爪で指した。
 波紋と波紋が重なって笑った口のように見えなくもなく、その上部分には、迫り出した葉と水面との堺に黒い目のような影が二つ見えなくもない。これを心霊写真と呼ぶのは幽霊肯定派の俊太からしても、こじつけに思えた。
「うーん……そうかー?」
「きっとお祖父ちゃんだよ! 私たちが笹舟流したから、喜んでるんだよ!」
「雪華が言うなら、そういうことで良いよ」
 にしては祖父ちゃん鼻の下伸びすぎな気がするけど……雪華に見惚れたか? 九十二歳で、んなまさか。俊太は心の中で有り得ない妄想を笑い飛ばす。
「ところでなんだけどさ、俊太って彼女できた?」
 突拍子もない質問に、ドキリとした俊太は間抜けた声を「へ?」とだけ漏らした。
 困った表情でこちらを窺う雪華がどうしようもなく女性的にみえる。一度そう意識してしまうと、あとはドツボだった。
「い、いや、なんだよ急に」
 みるみる顔が赤くなっていくのが自分でも分かった。
 本能的にこの至近距離で居続けるのは不味いと感じて、月明かりだけが頼りの薄闇に身を隠すように退いた。じっとりとした暑さを言い訳に半袖で顔を覆う。それでも動揺は抜けなかった。
「俊太の反応わかり易すぎ! 絶対彼女いないよね」
 雪華は垂れ目を細めて鼻でフフフッと笑う。それはケラケラと大笑いするのを辛うじて堪えたような、酷い笑い方に思えた。
「そう言う雪華はどうなんだよ。彼氏いるのかよ」
「あのさ、彼氏いたらこの話題振ったりしないよ?」
 普通に考えて、これで彼氏がいたらかなり嫌な性格だ。喧嘩を軽く吹っかけているようなものだ。雪華は人を怒らせる嫌味は吐かない、と俊太は改めて思った。
「俊太さえ良ければさ、私と恋仲になってよ」
 ショートヘアーを指先で捩って照れた様子の雪華が、淡い唇を俊太に向ける。その黒瞳は、耳心地の良い回答を求めてしたたかに煌めいている。
 俊太は「へ?」という言葉も出せないほど固まっていた。まさか、祖父の魂を弔いに来たついでで告白を受けるとは、つゆほども予想できていなかった。
「な、なんで俺なの?」
 長い時間をかけて渇いた喉を通って出した言葉に、雪華は恥ずかしさを紛らすかのように小さく笑う。
「俊太はいいよね、都会だと異性とも出会い放題でさ。こっちは若い異性を見つけるのも大変なんだよ」
 なんだよその理由は、と俊太は心の中で悪態をついた。遠まわしに「若い男なら誰でもいい」と言われたように感じた。俺は雪華にとってその他大勢の一人なのかと思うと、悲しさが込上がるのと同時に気力が足元から抜けていく。
「嘘でもせめてもっと無いのかよ、俺の良いところ……」
「あるよあるよ。口にするの照れるけど……言うよ。私ね、お付き合いするのなら、死んだ後も忘れたりせずに気持ちを尊重してくる人が良い……って、俊太を見て思ったの。これってね、凄く素敵だと思う」
 今夜の笹舟流しを発案したのは俊太だった。
 最初は一人で行うつもりだった。雪華に軽い気持ちで笹舟の作り方を聞いたら、同行したいと言われ、特に断る理由もないから受け入れた。俊太がこっちに来て間もない――つい昨日のことだ。
 思えばその瞬間からだろうか、雪華の向けてくる黒瞳に愛(いと)おしむ色が混じったのは。最初は、一年越しの遊び相手にテンションが上がっているのだろうと思っていたが、誤解だった。
「俺を明確に好きになったの、昨日かよ」
 呆れからではない自嘲じみた声が、自然と口をついてでた。
 雪華は昔から思い立ったが吉日な性格で、その活発な行動力にはいつも感心させられる。野山を登ったり川を下ったり、いつも前振りもなく振り回されてきたが、嫌に思ったことは一度もなかった。
 いつだって見つかる新しい発見に喜んで、輝く瞳のまま夜の眠りに就く。世界を冒険する夢を見て、覚めると今日はどこへ行けるのかと心が逸る。
 雪華は良い奴だし馬も合う。女性としての魅力にもあふれている。
 こちらの良いところを指摘してくれた雪華には、同じ言葉を尽くして返事をするのが礼儀だろう。――けれどもどうして、必要以上に熱を持ってしまった頭のせいか、肝心の言葉が浮かばない。確かに胸の中にあるはずの言葉が、まるで煙に巻かれたように存在を隠している。
「もう、そんな深刻な顔しないでよ……返事はいつでもいいしさ。あ、そうだ! 笹丸号の写真後で送ってよね。プリントアウトして部屋に飾るんだー」
 暗に、長考した末の時間切れを告げていた。
 俺のバカ! と口の中で後悔の念を唱えつつ、雪華の明るい気遣いに心底救われた気持ちになる。告白の返事をしないまでも、なにか気の利いた一言を言えれば良かった。
 優柔不断な自分をどう思ったのか気になったが、背を向けて薄闇に溶けていく雪華の本心は、ついに知れることはなかった。

日なんとか
KD036013124092.ppp-bb.dion.ne.jp

 翌年の七月下旬に、俊太は亡くなった。
 自分の死のせいで悲しむ家族や友人に、申し訳なく思う。特に雪華には、返事らしい返事をしないままにあの夏を終えてしまったことで、余計に悪いことをしてしまった。
 俊太は自分がどうして死んだのか、分からずにいた。
 体の至るところから深々とした傷口より血を滲ませていて、着ている高校の夏服は上下ともにボロ雑巾のようにズタズタだった。
 今でこそ痛みはないが、凄惨な死を遂げたのは想像に難くない。思い出せないのはむしろ、幸いなことだと前向きに考えるようにした。
 物質をすり抜ける体や、鏡に映らない姿に、人と交わることのない声が、死んだ現実を容赦なく叩きつけてくる。
 だけれども、不思議と憤りの念は沸いてこない。
 置かれた状況に即座に適応する、子供の頃から雪華に鍛えられた生存能力が、ここでも遺憾なく発揮されていた。
 ただ一つ、困ったことがある。
「これから、どうすればいいんだ?」
 誰かに助言を求めようにも、坊さんにも神主にも言葉は通じなくて、同じように彷徨う死者の魂とも出会わない。
 死んでから五日、顔を思い浮かべるだけで瞬時にその者の場所に移動する能力を使って、出来る後悔もし尽くした。
 五里霧中とは正にこのことだった。
 ふと、日に日に世界が白く霞んでいっていることに気がついた。俊太はすぐに考えを改める。霞んでいっているのは世界ではなく、俺の存在の方だ。


 さらに二日経つと、ほとんど真っ白な世界になっていた。もはや悪夢だ。どこから光が差しているのか分からないが、世界は影もなく、白をひたすらに反射している。
 今になってお腹が空いてきた。もちろん口にできる物など何もない。
 右足の太ももに受けた損傷より下部の感覚が希薄なってきていて、歩く足取りは泥酔したサラリーマンのごとく覚束無い。
 どっちが右で左なのか、果ては、上なのか下なのか。ふわふわした体だから、余計に方向感覚が分からなくなる。
 辛うじてうっすらと視える現世の形だけが頼りだ。無情なことに、それすらも完全に消滅するのは時間の問題に思えた。
「うわっ!?」
 とうとう足がもつれて手をついて倒れてしまった。立ち上がろうにも、体以前に心がついてこなかった。
 流石の俊太も、現状に参り始めていた。
「これが俺の最期なのかよ……。せめて雪華に一言詫びたかったな。チクショー……俺のバカ野郎!」
 し尽くしたはずの後悔は、心の底の底で燻りを高めていく。形容し難い衝動がどっと涙腺に押し寄せた。とてもじゃないが抗えない激情だった。
 ――雪華とは両想いだった。――そのはずだった。
 俊太はずっと、個性のない生き方でのらりくらりと生きてきた。誰からも嫌われず、好かれず。必要な工程を無難に収めてやり過ごしてきた。誰からも認められなくても、別になんとも思わなかった。
 雪華に自分の良いところを褒められて、凝り固まって出来た価値観は瞬く間もなく崩壊した。告白が同時だったから混沌とした深みにハマったが、今なら絡まった心の内を紐解ける。
 自分を本当の意味で認めてくれて、求めてくれる人を本心では欲していたんだ。
 あの夜、決してお為ごかしではない褒め言葉を耳にして、俊太は雪華に恋をした。
 告白の返事をしなかったのは、言葉に詰まったからじゃない、それなら後になっていくらでも返事をすれば良かった。そうできなかったのは、雪華の期待に応えられる自信がなかったからだ。
 でも雪華はきっと、そんなこと求めてはいなかった。雪華が求めていたのは、死者の気持ちを尊重する俊太の心の在り方、これに尽きるのだ。
「今更だよな……何もかもが遅すぎるよな……」
 自分の心の変化に気付けていれば、あの夏の夜から始まる雪華と歩む未来があったかもしれない。虚しくて、虚しくて、虚しい後悔だ。
 どこかからバイオリンをぎこちなく弾くような音が聴こえてくる。
「とうとう幻聴まで聞こえてきた。俺、これからどうなるんだ? 怖いよ」
 一人でうずくまって震える俊太の耳に、聞こえる幻聴はどんどん騒がしくなっていく。
 とても懐かしい、それは祖父母の家でなんどと聞いた夏の風情あふれる虫の大合唱だった。
 右側から黄緑色の何かが、空を滑るようにして俊太めがけて一直線に飛来する。時折それは、小さな波を乗り越えるような挙動をして、果ては目の前で停止した。あまりの巨体さに認識が遅れたが、両端を蔦で括って造られた笹舟だった。

日なんとか
KD036013124092.ppp-bb.dion.ne.jp

「おいおいこの匂い、嘘だろ……お米の匂いだ!」
 途端に鋭さを増した嗅覚に身を委ねて、笹舟の船べりに腕を掛ける。食いきれない大きさの団子が四つ乗っていた。見るからに柔らかく、ありがたいことに湯気まで立っている。
 俊太は笹舟を這って団子に齧り付いた。瞬間、仄かな甘みが味覚を刺激して、次から次へと涎が溢れて止まらなくなった。
「んまい! んー、うめぇーーー! 米うめぇー!」
 不思議と、途切れたはずの右足の感覚が蘇る。心身ともに力が染み渡っていくのを感じる。
 巨大な団子を一つ食べきると、俊太を乗せた笹舟はその場で回転を始めた。
 まるで往くべき場所を探っているかのように、時期にメトロノームのように左右に振れて、最終的には一点を船首が示した。
 聴いていると愉快になる虫の大合唱をバッグに、笹舟はゆったりとした移動を開始する。
 この先どうなるのか見当もつかないことに変わりはないが、不安な気持ちはすっかり消えていた。何故だか正しい方向に進んでいるのだと分かる。
 ただ笹舟に乗っているだけで、体がポカポカしてきて心地が良かった。
「誰かが俺のために笹舟を流してくれたんだ。ありがたいな」
 地獄に仏だ。胡座を掻いてそんなことを思っていたら、天から女性の声が降り注いだ。
『俊太……俊太……俊太がどうか無事に黄泉の国へ行けますように。お願いします神様』
 エコーが掛かって聞き取りづらかったが、忘れもしない雪華の声だ。悲痛に震えていて、聞いている俊太まで泣きたくなってくる。
「雪華、俺ならここにいる! 聞こえるか!? 笹舟ありがとな、ほんとに助かったよ!」
 俊太は諸手をあげながら真っ白い天に声を張り上げた。雪華には伝えたい想いが沢山ある、どうか届けと天に願った。
『俊太は顔では興味ない振りするけど、誰よりも好奇心の強い人だったよね。私は俊太が新しいものを知って興奮する姿を、横から見るのが好きだった。……もう見れないと思うと辛い、辛いよ。ごめんね、泣くつもりなかったんだけど、まだちょっと立ち直れてなくて……』
 雪華は時折涙ぐみながらも、一方的な独白を続けた。俊太の声は届いていないようだった。
『俊太はさ、俊太が思っている以上に偉い人だったよ? 歩道を歩いていた時に交通事故に巻き込まれたって聞いた。俊太は咄嗟に隣にいた人を庇って、それで…………すごいよ。助かった人、俊太に凄く感謝してたって。みんな俊太を褒めてること、ちゃんと伝わってるといいな』
「俺が身を呈して他人を庇った?」
 俄かには信じられない。
 些細な親切なら苦もなくできるが、命懸けとなると話が変わってくる。いざとなったら自分が一番可愛い、そういう人間だと俊太は自己を評価していた。
 雪華に今までの価値観を覆された時に、自分も知らない自分に少しずつ変わり始めていたのかもしれない。
「あの無個性だった俺が、誰かに尊敬される存在に、なれたのか?」
『後そうだ、俊太信じてくれなさそうだから内緒にするつもりだったんだけど、言っちゃうね。霊視ができる知り合いに、笹丸号の写真を視てもらったの。そしたら、たしかに俊太のお祖父ちゃんがいるのが視えるって言われたの! 未練のない優しい雰囲気だったって。……まー白状しちゃうと、私が思っていた場所とは違う場所に写ってるらしいんだけど、へへへ』
 写真に祖父が写っているという雪華の指摘は正しくて、その箇所が祖父に見えないという俊太の眼識もまた正しかった。
 写真一枚取ってもその実複雑で見極めるのが難しい、と俊太は諦観めいた渇いた笑いをこぼした。
『ということでさ、写真を撮りたいんだけどー……いい、よね?』
 答えを伝える術はないが、あえて伝える必要はなさそうだ。
『ハイ、チーズ!』
「え!?」
 一瞬、世界のすべてが白に飲み込まれた。現世で炊かれたカメラのフラッシュが、俊太のいる世界に影響を及ぼしたとでもいうのだろうか。
 にしても、体がポカポカと熱い。熱い。熱い。
 細胞の一つ一つが熱を生んでいるかのような、すごい熱量だ。でも汗は出ないし、不快にも思わない。むしろ無制限に温まっていく体が気持良いとさえ感じる。
 俊太の魂は終焉に近づいていた。
「雪華! 聞こえてなくても良い、最期だろうから言わせてくれ! 告白の返事ができなくてごめん! 俺は、雪華と一緒にいた時間が一番自分らしくて、一番幸せだった! こんな俺と……こんな俺と……仲良くしてくれてありがとう! 礼儀を欠かないところとか、取り柄のない俺を未知の世界にぐいぐい引っ張ってくれるとことか、大好きだった……俺だって、付き合いたかったよ……ごめん」
 セリフの後半は切なさを抑えきれなくなっていた。
『俊太!? 今、俊太の声が聞こえた気がした……私の気のせい、なのかな?』
「俺の声が届いたのか!? ありがとう、ありが――」
 神の采配に感謝したその時、俊太の世界は在るべき処へと回帰した。

ぷーでる
45.92.32.5

おや?何回も書き直しているね?
内容は、悪くないけど慌てて書いた感じがあります。

恐らく、これだけでは作者さんはまだ納得できる様な文章になっていないと思います。
でも、書き直しは無駄ではないので、納得するまで書き直して
また、一週間後に投稿されてみては?

日なんとか
KD036013124092.ppp-bb.dion.ne.jp

ぷーでるさん
コメントありがとうございます。

内容は悪くないと言ってもらえて嬉しいです。

改行が変なことになってしまったためコメ欄にて投稿のし直しをしましたが、実は本文には手をつけていません。紛らわしくてすみません。
慌てて書いたというのはおっしゃる通りです。『短期間でどれほどの作品が作れるか?』というのを知りたくて実践的に書いてみたというのもあります。
皆様の反応が薄いようでしたら、期間を空けての再投稿も考えてみます。

ぷーでる
45.92.32.5

再訪失礼いたします、ごはんは一度投稿してしまうと修正できません。
それが、ここの投稿サイトの欠点じゃないかなと思っております。

他の投稿サイトでは、一度投稿した後でも、何回でも書き直しが可能な所があります。
私は、他サイトで納得できるまで書き直して投稿していました。
やっぱり、書き直しの回数が増えるほど、読者さんの反応が多くなりました。

100回近く書き直して、ようやく読者さんの反応が出てきました。
1、2回では、ほとんど反応がなかったです。

同じ作品を、修正し続けて、感想がもらえたのは3年過ぎてようやくでした。
これは、作者さんにもよると思いますが、私の場合は、読者さんから
コメントがもらえるようになるまでは、かなりの回数で書き直しが必要みたいです。

途中で作品を変えるとまた1から出直しで、書き直しが必要になり
倍の時間が、かかります。

日なんとか
KD036013124092.ppp-bb.dion.ne.jp

ぷーでるさん
再訪ありがとうございます。

自作を編集できない投稿サイトというのは珍しいですよね。
今回のは私が投稿時に確認を怠った自業自得ですが、こういう時後から編集できのはやっぱ辛いです。

推敲はしますが書き直しとなると手間が多くて、あまりしたことがありません。
100回は凄いですね!時間をかければかけるほど質が上がるというのは、なんとなく分かる気がします。何日か寝かせてから読み返してみると、細かい粗に気付くことも多いです。

本サイトは比較的感想が貰えやすいと思っていたのですが、ここでも読んでもらえないとなると、私のモノ書きとしての実力は絶望的な気がしてきました(笑)。

陽炎のようだ
p0135770-vcngn.hkid.nt.adsl.ppp.ocn.ne.jp

まあ、落ち着いて。
他人様が金をかけて運営しているサイトなので、ガイドラインくらいは読んでからちゃんと「使わせて頂く」ところから
はじめないと、素人の駄文を読んで感想を書く、なんて何時間もかかるような労働をタダでやってもらえると思えんでしょ?w

日なんとか
KD036013124092.ppp-bb.dion.ne.jp

陽炎のようださん
コメントありがとうございます。

私ガイドラインに抵触するようなことをしてましたでしょうか?でしたらすみません(泣)
駄文……グサっときますが、反論できないです。
次に投稿するときは、投稿内容をよく確認したいと思います。
お目汚し失礼いたしました。

アリアドネの糸
dhcp.nipne.ro

日なんとか様

 描写を一つ一つ丁寧かつ印象的に書こうとしているのは伝わりました。
その意識が仇となっているのか、描写が、不要に情報過多になっていたり、重かったり力点がねじれていたりしていて、文章が流れにくいようにように思います。読みにくいのではなく、文章から想像される状況が自然に想起され、流れないという意味です。

 特に冒頭は、文章が流れにくいと想像力が喚起されない、想像力が喚起されないから、先を読む牽引力に乏しいのではと思います。繊細なイメージを切り取ろうとしているのは伝わるのですけど、繊細さでできた書くことの動機に対して、十分な筆運びできていないのではとか、そのようなことを思います。

例えば書き出しの一文ですけど、
> 今年で十六歳になる俊太は、笹舟を夜の小川の水面に浮かべた。
ここって、まず、笹舟が夜の小川に浮かんでいるシーンを、読み手に思いつかせたら成功だと思います。だから、もっと端的に初めていいと思います。今年で16歳になる、という情報はあまり重要じゃないわりに、主語を重くしていてノイズ、総じて、出だしから印象が育ちにくいんです。


>水深の浅い小川は、無数に敷き詰められた底の小石を
>魅力的に映しだす。ゆっくりと動き出した笹舟を、水
>面の縁辺から青々とした雑草の葉がエールを送ってい
>るかのように迫り出している。
丁寧な描写で、書きたいことは伝わるのですけど、丁寧も重ねすぎるとリズムがもっさりするし、言葉を重ねすぎると調和がとれなくなるように思います。
水深、縁辺、エールなんていう言葉もちょっと気になった。水深という言葉の表現としての肩さとか、擬人化することによってかえって大雑把になるところとか。また、水面の縁辺は、水面のまわりってことになりますから、日本語的に変な気も。川の縁辺ならわかるのですけど。
雑草の葉、という言葉にも違和。雑草は木じゃないし、草葉として同列に扱うならいいけれど。。

とこのように、傾向として思うのは、繊細な言葉をあてがおうとする割には、組み合わせたときに全体として調和がとれてないような。


>夜でも抜け切らない夏の酷暑
>風の生ぬるくて
>夏の匂いに涼しさを感じられる
 のあたりも、一陣の風が運ぶ情緒を演出したいのは分かるのですけど、夏が「酷暑」と結び付けられている〔酷というのはかなりの強調表現です〕ので、その匂いが涼しいという倒錯は読んでいてあまり納得ができない。論理的だけではなく、感覚的にも。

>漕ぎ出したばかりの笹舟
 漕ぎ出すは比喩表現なのはわかるのですけど、こう書かれると空白になっている動作主を想像したくなります。例えば、表現として面白くはないですが、「動き始めたばかりの笹舟」だとOKなんですよ。この動作主は笹舟ですから。漕ぎ出すの主語は笹舟ではなくて、笹舟を運転する何者かであるはずですから。

> 弧を描く雑草の葉先に接触して生まれるささやかな
>波紋が、同じようにして出来た後続の波紋と折り重な
>って、キラキラと光り、より幻想的な光景をみせていた。
 言葉の選択の繊細さと組み合わせの不調和の好例かも。
弧を描いた刃先がそっと水面に触れて、波紋が生まれ、その波紋が他の波紋と重なる、という、とても印象的で素敵な情景を描いていると思いますので、作者様の脳内にあるイメージはおそらくかなり繊細なものかと想像します。ところが、
>弧を描く雑草の葉先に接触して生まれるささやかな波紋
 この文章って、「何に」接触しているかってところが略されているのですが、その省略があまり効果的ではない。「葉先に触れて生まれるささやな波」ぐらいまで潔く省略すれば、その省略が威力を発揮するのですが、弧を描くというイメージも捨てがたいからそうもいかない。
 それから、この文章は水が葉先に触れるって構造なんですが、実際は、葉先が水に触れているわけで、主語をひっくり返してしますことはあまりうまくないなと。
 それからそれから「同じようにして出来た後続の波紋」にある「同じようにしてできた」という以下同文で処理される背景の説明が必要なのかどうかとか、繊細に重ねた描写の着地点が「キラキラ光る」という大雑把な印象に化かされているところとか。

>草の根をスニーカーで踏み分ける音が近づいてくる。
 三人称ですから可笑しくはないのですけど、その前の文章が相当一人称によった表現だったため、雪華の履いている靴が「スニーカー」であるという視力と解像度の高さが気になりました。


>微速前進する笹舟
 微速前進はとても人工的。

>剣幕
 はいきり立つ激しい様子を示すので、状況にそぐわないような。

>言葉を繰り返すその唇は、物寂しそうに弱々しくなっていた。
 なんとなく寂しく弱くなるって意味になっちゃうので、違和感。
 物寂しそうなのは唇で、弱弱しくなるのは言葉。捩れに捩れちゃっている。ここの描写。


>完成形
 これも人工的。


 重箱の隅を逐一つついてもアレですのでこれぐらいしますが、思うに、全体的に感覚的に言葉を処理しすぎなのではと思いました。感覚的なものを描くときに、感覚的に言葉を選んだとしても、感覚的に処理しちゃいけないように思います。


 辛口でしたけれども、俊太が亡くなってからの筆運びは落ち着いたように感じました。ほぼ一人称になり、吐露の文脈で間をつなげるので、書きやすくなったのかもしれませんが、最後の方は結構流れました。ただ、前半と比較して、そこからの観念の世界にそこまで面白みは感じなかったかもしれないです。とこれは主観的な感想です。


 感想が欲しいとのことですが、他の方の作品も読んで感想をつけてあげたらいいかもしれないですね。上の方が仰っているのは、ルールに抵触しているからギルティーというお話ではなくて、意見は交換してなんぼってことではないか、と。ガイドラインは、小説を読むこと、それから、感想を書くことも鍛錬と謳っていますから。要するに、自分からも感想を書いて、それから、感想をもらう、そういう了解に支えられたコミュニケーション。感想は一切書かないという投稿者もちらほら存在してはいますが。ふつうは、自分の小説に感想がほしいという欲求ほどに、他人の小説に感想を書きたいという欲求はないから、最初は自分から動くしかないのかもしれないです。余計なおせっかいでした。

日なんとか
KD036013124092.ppp-bb.dion.ne.jp

アリアドネの糸さん
丁寧なコメントありがとうございます。細かくご指摘いただけて、とても参考になりました。

>文章から想像される状況が自然に想起され、流れないという意味です。
たくさんのご指摘をいただいた後に読み返してみると、仰る通りだと思いました。
一つの文章に情報を入れすぎたために、結果、意味が伝わり辛くなっていました。
主語と述語の関係が噛み合っていない文章も多く、余計に分りづらくさせていたかと思います。気を付けてはいたのですが、長文になればなるほどボロが出るようです(汗)。
言葉を重ねて書く際は、文章全体の調和が乱れていないか、今一度考えるようにしたいと思います。

漕ぎ出したばかりの笹舟に関して、
私は『漕ぐ』を『水面を進む』という安易な理解で使っておりました……。これでは、動詞の主は誰なのか、突っ込まれても仕方がないと思います。

人工的というご指摘は、
自然的な物事に対して人工的な表現を使うのは違和感がある、ということでしょうか。
今まで意識したことがなかったので、興味深かったです。次作から活かしていきたいと思います。

>感覚的なものを描くときに、感覚的に言葉を選んだとしても、感覚的に処理しちゃいけないように思います。
ですね、本当に(汗)。

>俊太が亡くなってからの筆運びは落ち着いたように感じました。
こちらが私の本来の書き方になります。
いつも一人称でばかり書いてきて、ここに来て三人称にチャレンジしてみました。しかも繊細な描写増し増しで。

>観念の世界にそこまで面白みは感じなかったかもしれないです。
率直な感想ありがとうございます。
拙作は展開面でも難があるようです。

>要するに、自分からも感想を書いて、それから、感想をもらう、そういう了解に支えられたコミュニケーション。
そういう意味だったのですね。理解しました。教えていただきありがとうございます。
おそらく物書きとしての私の感覚はズレているので、皆様のように的確なコメントを残せるか不安はありますが、自分なりの感想コメを書いていこうと思います。

長くなるので返コメで全てに触れてはいませんが、戴いた感想はしっかりと目を通しました。
今後も作品を投稿していきたいと考えております。その際は、気が向いた時にでも立ち寄って頂けましたら幸いです。

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

テクニカルサポート

3,000字以内