作家でごはん!鍛練場
飼い猫ちゃりりん

憎しみの河

 その日、奈津子は夫を送り出した後も、娘の遠足の準備に追われた。行く先は郊外にある紅葉の美しい渓谷で、娘はずっと前から楽しみにしていたのだ。
 娘は未熟児として生まれ、小学生になっても体は痩せ細っていた。夫は自然に触れさせた方が良いと言うが、奈津子は心配でたまらなかった。
「無理しちゃだめよ。休んでも良いんだからね」
「うん。でも大丈夫」
 娘は大きなあくびをすると、寝ぼけ眼をこすりながらテーブルにつき、トーストにバターを塗り始めた。

 その日から遡ること二十二年。奈津子が身を寄せる田舎町で、ある事件が起きた。
 その夏の日の午後、二人の若者が駐車場で煙草をふかしながら店内の様子を伺っていた。拓也と慎吾は、コンビニを襲うタイミングを計っていたのだ。

 拓也という青年は正真正銘の「クズ」だった。親から躾を受けずに育ったからか、倫理観を微塵も持ち合わせていなかった。
 彼の母親は若い頃からアル中で、吹き溜まりのような安酒場に入りびたり、春を売って酒代を稼いだりした。彼女は赤子の拓也を酒場の隅に放ったらかして飲んだくれ、眠っている拓也を指差して、「お酒と交換してよ」と言って客に絡んだりもした。
 彼は父親を知らず、母親からは「クズ」と呼ばれて幼少期を過ごした。一瞬たりとも愛情を注がれることなく育ったためか、彼はひどく短気で、堪え性のない少年に成長した。
 彼は万引きや恐喝に日々邁進し、シンナーを吸って人を刺して、お決まりのレーンに乗った。彼はどこまでも「クズ」だったから、少年院でも、慎吾以外に相手をする者はいなかったのだ。

 方や慎吾という青年は、相棒とは真逆な性質を有していた。彼には物事の本質を見抜く洞察力があり、知能検査でも高い数値を示した。しかし、彼はその知性を有益に使おうとはしなかった。
 慎吾の父親は家庭を顧みない遊び人で、彼が幼い頃、よそに女をつくって出て行ってしまった。母親も育児放棄に近い状態だったから、彼は二つ下の妹の面倒をよく見た。妹はそんな兄を慕ったのだ。
 彼は特に問題の無いごく普通の少年だった。しかし、ある事件をきっかけに人生の歯車が狂った。
 彼が中三のとき、妹が河に身を投げて死んだのだ。
 妹は陰で陰惨ないじめを受けていた。ある日、彼女は廃橋と化した工場に呼び出され、取り囲まれて自慰を強要された。総勢十人ほどの少年少女らが、笑いながらその様子を見ていたのだ。
 彼女は画像をばら撒くと脅迫されて金を要求され、無いなら稼ぐ方法を教えてやると言われた。彼女は迂闊にも言われるまま春を売り、ずるずると地獄にはまっていった。
 彼女は慎吾に相談をしなかった。いや、できなかったのだ。慎吾は、彼女が死んでから事の真相を知り、怒りと悲しみに打ち震えた。
 加害者とその親達は、自殺の原因は彼女の家庭環境にあると証言した。しかし学校と警察は、いじめが直接的な原因であることを知っていた。なのに真相はうやむやにされ、事件化は見送られた。
 イジメ事件は教育者のキャリアの汚点になるし、警察にとっても、少年事件は評価に繋がらない「美味しくない事件」だったのだ。
 慎吾は、妹が身を投げた河を見つめながら、事の顛末を振り返っていた。するとある真理に気づいたのだ。
「結局、悪党しかいないんだ……」

 慎吾は激しい憎悪を抱きながらも、冷静に復讐の機会を伺った。
 主犯格の二人は、慎吾と同じ三年生の男女だった。慎吾は平静を装いながら二人の一部始終を半年もの間観察した。
 慎吾は、二人が廃墟と化した工場の倉庫で、時々やっていることを突き止めた。慎吾は、彼らは卒業式の日に必ずヤルと踏んでいた。
 慎吾は卒業式が終わると、その廃墟に先回りをして待ち伏せをした。案の定、二人は現れてヤリ始めた。慎吾は鉄パイプを握りながら絶好のタイミングを伺ったのだ。
 女子は作業台の上で股を開き、男子は立ったまま腰を動かしていた。男子が女子の腹に種を撒き散らした瞬間、鉄パイプが男子の後頭部に振り下ろされた。慎吾は男子を死なない程度に痛めつけると、鉄柱に女子を後ろ手に固定した。そしてスポーツバッグから手斧を出すと、「面白いものを見せてやるよ」と彼女に言った。
 一つ目の「解体」が終わると床一面が血の海と化し、女の口からは血があふれていた。恐怖のあまり舌を噛みちぎったのだ。
 慎吾は女の髪を掴んで言った。
「どうだ? 気分は」
 慎吾は女を裸にすると、ロープで作業台に磔にし、彼女の割れ目に斜めに切断された鉄パイプの先端を入れた。それは大腸、膵臓、心臓を破壊し、喉を突き破って外に出た。そのとき、彼は致命的な真理を掴んだのだ。
「なにが人間だ。よく見りゃただの畜生じゃねえか」
 彼は煙草に火をつけると自分の甘さを責めた。
「俺がのほほんとしていたから、妹は死んだのだ」
 彼は吸いかけの煙草を固く握り締めた。
 その後の顛末は省略するが、要するに彼も拓也と同じように、しっかりとレーンに乗ったわけだ。

 慎吾と拓也が狙っていたコンビニは、片田舎で競争相手が少ないからか中々繁盛していた。彼らは煙草を吹かしながら、客が去るのを待っていたのだ。
 拓也は糞みたいな昔話を慎吾に聞かせた。
「あの変態は、俺の穴に指を入れてモノを大きくしてやがったんだ。聞いた話じゃ検査はインチキで、そりゃ奴の趣味だってんだ」
 慎吾はげらげらと笑った。
「良いじゃねえか。けつの穴くらい貸してやれよ」
「馬鹿野郎! あいつ、いつかぶっ殺してやる」
「おい、客がいなくなったぜ。そろそろやるか」
 二人は煙草を投げ捨てると、目出し帽を被った。

 拓也がナイフで店員を脅し、慎吾がレジの金を奪った。慎吾が、「逃げるぞ!」と叫ぶと、拓也は、「サツを呼んだら殺すぞ!」と青年を脅した。
 二人がアクセルをふかすと、カラーボールがバイクの横で弾けた。それは命中こそしなかったが、拓也のスニーカーを蛍光塗料で汚した。彼はバイクから降りると、リュックからバールを出した。慎吾は、「ほっとけ!」と叫んだが、拓也は完全に切れていた。
「いくらしたと思う? ディオールだぞ! あの野郎……頭砕いて脳味噌を踏み潰してやる」
 警察は間一髪のところで二人を取り逃がし、県下に緊急非常配備を敷いた。

 その事件があった日の晩、酪農家の食卓はいつものように賑やかだった。その牧場は、奈津子の母の姉とその夫、それと祖父母の四人で営まれていた。台風による土砂崩れで両親と妹を失った奈津子は、牧場を営む親類に保護されていたのだ。
 その土砂崩れの発生から二日後、まだ小学生の奈津子が、仮設された安置所で家族の遺体を確認した。両親の遺体は傷ついていたが、妹の遺体には傷ひとつなく、父と母の間で安らかに眠っていた。妹は本当にただ眠っているかのように見えた。奈津子は妹に話しかけてみた。しかし、彼女が目を覚ますことはなかった。

 そんな不幸に見舞われたにもかかわらず、奈津子は親類のお荷物になろうとはしなかった。
 奈津子は箸を置くと祖父に言った。
「何でもやります! 他人と思って下さい」
 祖父は笑みをこぼした。
「よし! 朝五時から牛舎で働け!」
 すると四十路が近い娘が怒った。
「なっちゃんはまだ小学生よ。意地悪ね!」
 怒る嫁を婿がなだめた。
「お父さんは冗談を言ったんだよ」
 子宝に恵まれない夫婦には、奈津子が我が子のように思えたのだ。
 そのとき、「バタン!」と音が響いた。
「あらいけない。鍵掛けるの忘れたかしら?」
「叔母さん。あたし見てきます」
 奈津子が玄関に行くと、木の扉が風に揺れていた。鍵を掛けようとすると、カサカサと草の擦れるような音が聞こえた。外に出て辺りを見回していると、「なっちゃん。誰か来たの?」と叔母の声が聞こえた。奈津子は扉に鍵を掛けてから居間に戻った。

 奈津子が、「たぶん猪です。でも鍵を掛けたから……」と叔母に説明をしていると、七時のニュースが事件を伝えた。
 祖母は箸を止めると祖父に言った。
「あれ、あんたがお酒を買う店よ。こんな田舎なのに物騒だねぇ」
 ニュースは若い店員の死を伝え、防犯カメラが捉えた二人の映像を流した。そのとき、牛舎から牛達の鳴き声が響き、婿が、「見てくるから食べていてよ」と言って座卓を離れた。
 叔母はまた自分の父に文句を言った。
「小学生に朝の作業ができるわけないでしょ」
「わかってるよ。しつこい奴だな」
 年老いた母が、「あんたに似たのさ」と皮肉を言うと、また牛達の鳴き声が聞こえた。
「何かしら? 見てくるわ」
「叔母さん。あたしも手伝います」
「なっちゃんは良いの。御飯を食べていてね」と言い残し、彼女も座卓を離れた。

 七時のニュースが終わると、祖父の好きな歌番組が始まった。一曲目の演歌が終わると、祖父は味噌汁を勢いよく飲み干し、奈津子に聞いた。
「酪農が好きか?」
「はい! 動物が好きなんです!」
「メリーか?」
「メリーも他の牛達も大好きです!」
 メリーとは雌の子牛のことで、母牛はメリーを出産すると死んでしまった。奈津子はメリーを妹のように可愛がり、メリーも彼女になついていた。
「酪農はきついから、まだ無理だな」
「どんな試練も乗り越えてみせます!」
 しっかりした子供だなと老夫婦は感心した。
 そのとき木材のきしむ音が響き、居間の扉が少しだけ開いた。
「お疲れ様。牛舎で何があったんだ?」と祖父が聞いても、扉の向こうから返事は無かった。
「おい何をしてるんだ? 早く入って来いよ」
 やはり返事は無い。扉の向こうは暗く、明るい部屋からでは逆光で何も見えなかった。しかし、奈津子は不穏な気配を感じた。二匹の獣が、彼女に手を振りながら笑っていたのだ。
 すると不気味なささやきが聞こえた。
「なっちゃん……試練が始まるよ……」
 祖父が、「誰なんだ!」と怒鳴ると、木材がきしむ鈍い音とともに扉が全開し、畜生どもが姿を見せた。
「なんの用だ!」と祖父が怒鳴ると、拓也が、「飯を食わせろよ。ビールあるか?」と言った。
「娘と婿に何をした?」
「さあな」
 拓也は料理を家畜の如く貪ったが、慎吾は料理に手を付けず、手持ちの錠剤を肴にビールを飲んだ。その錠剤は、後に市販が禁じられた薬物だった。
 しばらくすると画面が切り替わり、ニュース速報が、警察が犯人を特定したと伝えた。二人の容疑者は少年だから氏名は公表できないとし、社会部の記者とやらがコメントを述べた。
「少年の人権は十分尊重されるべきです。しかし、少年だから全て許されて良いわけではないという声も、多く聞かれるのです」
 全くもって正論である。しかしその正論も、憎しみに支配された者達には何の効力もない。

 拓也が慎吾に聞いた。
「俺たち死刑かな?」
「だろうな」
「でも未成年だぜ」
「三人じゃ無理だろ。それに、こんな世の中、生きていても仕方ないぜ」
 そのとき、パトカーのサイレンが遠くから響いてきた。すると祖父が彼らに罵声を浴びせ始めたのだ。
「人殺しめ! 少年だから許されると思うなよ!」
 慎吾は老人に言った。
「許してくれなんて頼んでないよ」
「クズどもめ! お前らは畜生以下だ!」
 慎吾は奈津子に聞いた。
「君はメリーの運命を聞いているかい?」
「運命?」
「なんだ。聞いてないのか。そうか。おい拓也、納屋に斧があっただろ。持ってきてくれよ」
「なにするんだ?」

 慎吾は、「メリーの運命」をその場で再現し、奈津子の顔に散った血を濡れタオルでふくと言った。
「君の試練が始まった。乗り越えるには憎しみを捨てるしかない。お兄さんにはできなかった。君はできる?」
「うん」
「そうか。良かった……」

 それから二十二年後の秋の日、奈津子は娘を遠足に送り出そうとしていた。行く先は紅葉に包まれた美しい渓谷で、娘はずっと前から楽しみにしていたのだ。
 その日は朝から曇り空が広がり、ひ弱な娘には絶好の遠足日和となった。夫は自然に触れさせるべきだと言うが、痩せっぽちの娘を見ていると、奈津子はたまらない気持ちになった。
「本当に大丈夫なの? 無理はだめよ。お母さんが、いつでも先生に言ってあげるからね」
「うん。でも大丈夫」
 奈津子はよく分かっていたのだ。娘をいつもそばに置こうとする自分こそが、娘に危険を及ぼす存在かもしれないということを。
「危ないところには行かないでね」
「うん。わかった」
 次の瞬間、奈津子は娘の水筒を手から落とした。朝のニュースが、当時十八歳だった二人の死刑囚の最期を伝えたのだ。
 おぞましい光景がまざまざと蘇り、奈津子はがっくりと床に崩れ落ちた。彼女は手をついてうなだれ、数滴の涙を床にこぼした。顔を上げると、肩に水筒を掛けた娘が目の前に立っていた。
「お母さん。どうしたの?」
「なんでもないの」
「なんで泣いてるの?」
「何でもないって言ってるでしょ! ああ、ごめんね。怒鳴ったりして」
 涙をこぼす母を、娘はじっと見ていた。
「あたし、遠足に行かない」
「だめよ。行かなきゃ」
「やだ」
 その毅然とした意思表示に奈津子はうろたえた。
「どうして?」
「あたし、お母さんを守る」
 ひしと抱き合う二人のそばを、束の間の幸福が通り過ぎていった。

 終わり

憎しみの河

執筆の狙い

作者 飼い猫ちゃりりん
dw49-106-186-136.m-zone.jp

 暗いコロナ禍、明るい作品を書いてみようと思いました。
 約5300字の長編です。飼い猫にしては長編にゃんです。笑
 推敲作品。サラッと読んで下さい。

コメント

茅場義彦
133.106.158.30

ケキョク奈津子さん ヤバい兄さんたちに何されたの? 攻めた話だけど ちょっと駆け足だね プロットっぽかった おつかれ様でした

gvjgjcjvjvjvjvjvcvっっっっっっっっhっっっっっっっっgっc

飼い猫ちゃりりん
123-48-48-253.area1b.commufa.jp

茅場義彦様
読んで頂きありがとうございます。
まだ粗筋っぽいですね。とく前半は。
なっちゃんはね……本当はね……

浅野浩二
flh3-119-240-43-32.tky.mesh.ad.jp

作品から作者が女であることを感じさせないのは、作者のアバズレ性格によるもので、それは創作での強い武器だと思います。ffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffffff

星掴
138.68.177.72

拝見しました。
 知能検査で高い数値を出したはずの慎吾が、何故いじめの主犯格を殺すという安直な行動にでたのでしょうか。また何故それが世間に発覚しなかったのでしょうか。学校に通っている人物が殺害されれば、流石に世間に警察が動きます。
そして、何故拓也と慎吾はコンビニに押し入ったり、奈津子の家を襲ったりしたのでしょうか。動機が分かりませんでした。
 また慎吾の復讐が中盤で述べられていますが、ちょっと緊迫感が伝わってきませんでした。説明的すぎます。そもそも、慎吾や拓也のエピソードは話の流れから逸脱したものなので、いっその事書かないか、あるいはしっかりと書き込むかの二択です。
 次に、主人公であるはずの奈津子の影が薄いといいますか、奈津子の心情が伝わってきません。書かれていないので。
 最後に、慎吾が「君の試練が始まった。乗り越えるには憎しみを捨てるしかない。お兄さんにはできなかった。君はできる?」と不自然なことを何故言い出したのでしょうか。それについての説明が必要です。
 
 蛇足ですが、本小説と関係のないコメントは控えたほうがよろしいのでは。意味のない文字の羅列は別の作品のものでしょう。

星掴
138.68.177.72

補足です。
この作品が推敲前の作品だということをすっかり忘れていました。
これが完成形かと思い、色々言ってしまって申し訳ありません。

飼い猫ちゃりりん
123-48-48-253.area1b.commufa.jp

浅野浩二様
読んで頂き感謝します。ありがとうございました。

飼い猫ちゃりりん
123-48-48-253.area1b.commufa.jp

星掴様
読んで頂きありがとうございます。
作者としては書いてあるつもりですが、伝わらなければ作者の力量が不足しているのでしょう。

えんがわ
p2215247-ipngn9802souka.saitama.ocn.ne.jp

バイオレンスだなー。

自分は苦手な分野ですが、確かにエンタメとして先が気になるスリリングなお話でした。
最期はほっと、しかけたのですけど、でもやっぱり印象としては、殺人犯のインパクトの強さが、心に残りました。

だけど、ここまでハードボイルド(?)に書ける鋭利なタッチは、凄いなぁ。
作者の武器だと思います。

飼い猫ちゃりりん
123-48-69-51.area1b.commufa.jp

えんがわ様
読んで頂きありがとうございます。
後で必ずきちんと返信します。
ごめんなさい。

飼い猫ちゃりりん
dw49-106-192-81.m-zone.jp

えんがわ様
 返信が遅くなり申し訳ありません。
 このような作品を読んで頂いたことに、先ずもってお礼申し上げます。
 内容については、他の方も指摘されているように、まだまだ説明的な部分があります。
 描写をもっと研ぎ澄ませたいとも思うのですが、女性や子供も閲覧するサイトだけに、慎重になるべきとも思っています。
 奈津子とメリーの日常を描写したほうが良かった後悔していました。

 またよろしくお願いします。

アリアドネの糸
dhcp.nipne.ro

飼い猫ちゃりりん様

「文法でしか語れていないところが弱み」
って以前書いた気がしますが、同じことを思いました。ここでいう文法は、飼い猫ちゃりりん哲学に基づく悲劇の文法という意味です。という補足説明は不要かもしれないけど。

 悲劇にあわせて筋書きを作っている、そういう、作り物感がどうしても拭い去れないのです。悲劇としてできすぎた言葉はかえって響かないとかそんな風に思います。まあ、そういうジャンルのものとして割り切って理解できなくもないのですが、正直もやもやします。
 文章の配置は、文法が要求する、適切な位置におかれていると思うけれど(以前にも書きましたが)、文章同士はあまり繋がっていない感じがいたします。端的に書くと、ちゃりりん様の文章は、映像的であって、音楽的じゃないように思います。
 文章に対するこだわりは、ちゃりりん様が以前反論されてましたが、襟をただして改めて眺めると、個々の文章にはそういったものを感じ取ることができるように思います。ですが、悲劇の文法の制約がやはり強めで、こだわるべくしてのこだわりといった、主客反転めいた作為をどうしても感じてしまいます。

 とにかく、悲劇の文法をどう考えるのかってことかと思います。悲劇の文法は、見も蓋もなく言い換えるならば、作者のこだわりです。これが、薬なのか毒なのか、といつも考えさせれる作品であるよなーってことです。あとは、作品の内容のエグさ以上に、登場人物たちが悲劇の文法が書くシナリオにいいようにあてがわれることにエグミを感じました。ちょっと辛口かもですね。失礼しました。
 

アリアドネの糸
dhcp.nipne.ro

>文章同士はあまり繋がっていない感じがいたします。端的に書くと、ちゃりりん様の文章は、
>映像的であって、音楽的じゃないように思います。
 というのはかなり抽象的で一方的な物言いだったので、少し具体的に考えてみます。端的に書くと、台本めいていて、その行その行でおきるイベントを、ちょっとお化粧して並べているような印象があるのです。濃厚にした出来事リストという言葉は、かなり極端に、言ってますけど、ある主の羅列であって、つながりが薄いと感じたのでした。ただ、そのやり方が作りだすテンポ感と印象深い個々とが、絵を思い起こすための重要な要素、つまりは、文法なるものを枠として見せるためのおのでもあるので、音楽的ではないけれど、映像的と思った次第です。うーん、結構、抽象的ですね、依然として。でも、このへんにしておきます。

飼い猫ちゃりりん
123-48-118-52.area1b.commufa.jp

アリアドネの糸様

猫自身が感じている苦悩を、アリアドネ様も感じとって頂いているのではないかと思います。

極端に言えば、音楽も絵画も小説も、最初の一音一筆一行でその運命は決まるのです。
芸術には法則がある、と以前言ったことありましたよね。

ある方はその法則とやらを説明しろと言った。できません。それができたら猫は芸術の神です。猫の髭で感じるしかないのです。

芸術家に一般的な意味での自由はありません。芸術における自由とは法則性の中にあると感じます。

当たり前ですが、猫はその法則性の波動や流れを掴んでいない。
だから文章はつまづきながら進む。
猫がサーフィンをできるようになるのは、まだまだ先です。

ありがとうございました。

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