作家でごはん!鍛練場
コウ

神の生まれる場所

プロローグ

雷を伴う激しい夕立が駆け抜け、初夏の日差しを取り戻した日曜日。立ち並ぶ低いビルの隙間から吹き注ぐ風は、汗を洗い流したように透き通っていた。
「お父さん、一緒にお風呂に入ろうよ」
 2DKの古ぼけたアパートに、眩しいほど明るい声が弾む。
 この一年で、勇仁(ゆうと)は見違えるほど逞しくなった。身長や体重といった外見だけでなく、目線の位置まで違っている。体も弱かったのがまるで嘘のように、今日も少年サッカーの練習から泥まみれになって帰って来た。
 俺たちが神永を逃げるように去ってから、早半年が過ぎた。しかしそこでの記憶は封印され、家族の誰からも語られることはない。その九ヶ月の間、一家は間違いなく集落の中心にいた。そこで無防備のまま閃光に晒され、得体も知れぬ神々に翻弄された。
 人里離れた山間(やまあい)では、時代から取り残された人々が美しくも歪な世界を創り上げていた。彼らは故郷を愛するが故に追い詰められ、時空を繋ぐ小道の途上で行き先を見失う。そしてあの常軌を逸した事件を巻き起こしたのだ。果たしてその罪は、彼らだけが負うべきものだろうか。今、その答えを俺には出せない。ただ一つ言えることは、人は皆、神にも悪魔にもなる瞬間がある。
 都会に戻った俺達は、この街でもう一度やり直す。そう決めたからには、どんなに辛く苦しくても神永での日々を総括する必要があると思う。あの場所で、何が起こったのか。それは、勇仁の将来にとっても重要なことだから……。


第一章

 一家がその村に住むきっかけは、二年前に開かれた大学の同窓会まで遡る。
「雅(まさ)志(し)。最近、川下りやったか? 俺なんかもう四年も行っていないや」
 五年ぶりに会った旧友の問いかけは、水の匂いとなって鼻の奥を刺激する。この森田とは、学生時代に日本中の川を巡った仲だった。
「就職して結婚して、おまけに子供ができりゃあ、よほどのことでもないとそんな時間は作れないしなあ」
「全くだ。でも、また行ってみたいよな」
 森田も膨らみ始めた腹を撫でながら、目を輝かせ始めた。勢い話題は、その頃の思い出話に移っていく。水を切るバトルの音や体に掛かる水しぶきの心地よさが、昨日のように思い出された。
「お互い年を取って子供が大きくなると、なおさら行けなくなるだろう。夏になったら、久しぶりに二人で遠征しないか?」
 鼻先に旨そうな餌をちらつかせると、小太りの若鮎はまんまと食いついた。体とともに老化し始めた心は遡上する鮎になって、体を燦めかせながら勢いよく若返っていく。
「よし、夏休みを使って遠征するか。今度いつ行けるか分からないんだから、どうせなら四万十川か釧路川がいいな」
 酔いに任せて盛り上がるうちに、話はどんどん具体的になっていく。時の間に、八月に一週間の休みを取って四万十川に行くことが決まってしまった。
「絶対だからな。どんなことをしても、女房と会社を説き伏せるぞ」
 この言い回しは、人を誘うときの森田の口癖だった。
「合点だぜぇ。これから体を鍛えるぞ」
 いつの間にか、雅志までもが学生時代の口調に戻っていた。

 翌朝目覚めると、雅志の頭の中から夕べの記憶の大半が飛んでいた。一次会の後、スナックに入ったところまでは覚えているが、その後の記憶がどうも曖昧だ。喉の渇きと吐き気を堪えながら、昨夜のことをお浚いする。確かカラオケで何曲か歌った後、探検部のメンバー五、六人で三軒目の小汚いバーに行き――。
 回らぬ頭で、四方八方に散乱した記憶のピースをかき集める。何とか繋ぎ合わせてみると、頭を抱えたくなるようなおぞましい光景が脳裏に浮かび上がった。こともあろうに、仁王立ちした自分が皆の前で説教を垂れている。
「お前らよう。知らない間に親父臭くなっちまって、昔の元気はどうしたんだよ。おい、水島。お前、冒険家になるんじゃなかったのかよ。そのみっともないお腹と死んだ魚の目を恥ずかしいと思わないのか。皆の衆、心して聞け。俺と森田は今年の夏、長年の夢を果たすために我らが聖地へと旅に出る。誰がなんと言おうと、実行する――」
 後悔先に立たず。仲間の白けた顔が目に浮かび、雅志は思わず頭からフトンに潜り込んだ。頭を抱えて、髪を掻きむしる。同時に嫌な予感がして、顔を半分だけフトンから出して妻の美和を探した。しかし、人の気配はない。壁に掛けた時計を見ると、とうに十時を回っていた。勇仁の姿も見あたらないところからすると、多分二人で散歩にでも出かけているのだろう。
 やけに体がだるく動くのも辛かったが、喉が渇いて我慢ができない。仕方なくのろのろと起きだし、立て続けに三杯の水を胃に流し込んだ。命の水とは、まさにこのことだった。昔の粋人は酔い覚めの水を飲むために酒を飲むというが、うまいことを言ったものだ。詰まらぬことを考えていた矢先に、吐き気を催してトイレに駆け込んだ。
 頬は、まだ熱いほど火照っていた。すべてを吐き出して空になった胃袋に、二度目の水を補給する。体は重いのに妙にふわふわして、自分の体ではないように感じられた。何とかソファーの方まで、よたよたと歩みを進める。しかしそこで糸を切られた操り人形は、背骨を抜かれたようにへたり込んだ。
 四万十川行きの計画を早く美和に話して、楽になりたかった。しかしこの調子では、ことが良い方向に進みそうもない。どうしようかと思案しているうちに、賃貸マンションのドアが安っぽい音を立てて開いた。
「お帰り。散歩か?」
「あら、お目覚めですか。お早いことで」
 案の上、美和は雅志を横目で睨んで嫌みったらしく言う。それから喘息の気がある勇仁を連れて、さっさとうがいのために洗面台へ行ってしまった。結婚生活九年の経験からして、機嫌が悪いことだけは間違いない。夕べ、何をやらかしたのだろうか。雅志には、家に帰ってからの記憶がまったくなかった。
 遠征の話は、機嫌が直ってからにするか。それとも先に話して、さらに悪くした上で機嫌を取るか。究極の選択を迫られた時に、雅志の決断はすこぶる早い。多少のリスクはあっても、面倒なことが一回でも減る方を選んだ。
「実はさぁ。昨日の同窓会で、久しぶりに森田に会った。あいつ、先月の検診で医者から糖尿病を宣告されたらしい。これ以上悪くなると激しい運動ができなくなるって、すっかり落ち込んでいたんだ。それでな。今のうちに、もう一度だけ思い出になるような川下りをしたい。頼むから、一緒に行ってくれって泣くんだよ。俺さ、なんだか可哀相になって、思わず行ってもいいって言っちゃったんだ」
 戻ってきた美和に、思い切って切り出した。言い終わると、フローリングに付いた傷の一点を見つめる。森田には悪いが、我ながら完璧な演技だと思った。頃合いを見計らって、ゆっくりと視線を上げる。と、そこには呆れ顔の美和が腰に手を当てて立っていた。
「あのね、夕べ家に帰って来た時のことを覚えてないの?」
 一瞬、背筋を冷たい空気がすり抜ける。明らかに自爆だったようだ。
「貴方は――」
 美和は、ここでわざとらしく一呼吸置いた。
「夜中、森田君に支えられて帰ってきたの。分かる? 足腰の立たない状態で、ドアを開くなり私にこう宣言したのよ。これまで俺は家族のために、夢もやりたいことも我慢してきた。このままでは、自分の生きている意味も見失ってしまう。自分のアイデンティティを取り戻すためにも、四万十川に行くんだって。いつ私が、そんなに貴方を抑圧した?」
 おそらくその時は、まだ皆の前で演説したときの興奮が残っていたのだろう。この分では、自分から四万十川行きを提案したことも、間違いなくバレている。
「いや。特にそんなこともないが、できれば若いうちに一度行ってみたいなと――。もちろん、美和が許可してくれたらの話だけど……」
 雅志はしどろもどろになりながらも、美和の顔色を窺った。
「そんなに行きたいのだったら、家族で行けばいいでしょう。何で、私や勇仁を置いていくの? 旅行なんて、もう何年も行ってないのよ」
「だから、今回はカヌーをやりたいんだ。一緒に行ったって、退屈するだけだぞ。家族旅行は次の機会に行こう。な、俺は約束を必ず守る男だ」
「嘘ばっかり。じゃあ、もう勝手にしたら。ただし、私は一切協力しませんからね」
 一切の部分に妙な力が入っているのは、かなり怒っている証拠だ。その剣幕に押される形で、雅志は寝室へと逃げ帰った。次なる作戦を考えようとフトンに潜り、美和の言葉を復唱してみる。すると、ある考えが浮かんだ。
 さっきあいつは、勝手にしろと確かに言った。それを素直に捉えれば、承諾とも受け取れる。ならばこの際、勝手にしてやろうじゃないか。言葉の本意を無視すれば、見事に論理的整合も取れている。半ば強引だが、最大の難関をクリアして気分は上々だった。
 休暇は森田に合わす形で、八月の頭の土日を引っかけて九連休を取ることにした。雅志の勤める情報処理会社は、忙しい時には連日のように徹夜続きとなる。しかしある程度早めに段取りさえすれば、比較的自由に休むことができた。
 結局美和は宣言通り、何の手伝いも金銭的な援助もしてくれなかった。

「こんちわぁ。いい天気だよね」
 出発の土曜日、無駄に明るい挨拶を手土産に森田が家へとやってきた。童顔のうえにTシャツ、短パンのその姿は、どう見ても三十過ぎには見えない。予定どおりに彼の車をここに置き、雅志のランクルに荷物を積み込む。その頃になるとさすがに諦めたのか、美和の機嫌も少しは治まっていた。それでも意地と言わんばかりに、攻撃の手は緩めない。
「勇仁にお土産を忘れないでよ。森田君、雅志をお願いね。言うこと聞かなかったら、あっちに捨てて帰ってきてもいいから」
「おいおい。ゴミみたいに扱うなよ。それに俺の車で行くんだぞ」
 慌ててつっこむが、そんな言葉などは完全に無視して見ようともしない。
「お父さん。行ってらっしゃい。早く帰ってきてね」
 かろうじて無邪気に別れを惜しんでくれる勇仁が、愛おしかった。
 見えなくなるまで手を振る二人に見送られて、家を出たのが午後六時。高知まで約十一時間で、それから四万十市まではさらに二時間は掛かるはずだ。休憩時間を考えると、日曜日の昼には着く予定だった。車内では学生時代によく聞いた曲を掛けて、大声でがなりたてる。中央道に乗ってからは、もう遠足気分だった。
「はい、これ」
 途中のサービスエリアで休憩を取っていると、森田がおもむろに封筒を差し出した。中にはピン札の一万円札が五枚と、丁寧に折りたたまれたメモ用紙が入れられている。それを雅志は、森田に見られないようにそっと開いた。そこには見慣れた丸文字で、『私の分も楽しんできてね』と書かれていた。
「美和ちゃんから預かったんだ。直接手渡すのは、照れくさいってさ」
 学生時代に戻って馬鹿話をしているうちに、中国道から瀬戸大橋を渡って四国に入る。ほとんど休憩も取らずに交代で運転したおかげで、明るくなったときには高知まで辿り着いていた。その後、自販機しかないパーキングエリアでようやくゆっくりと休憩する。二時間ほど仮眠を取ってから、二人は海沿いの道を四万十市に向かった。
 紺碧の海と真っ青な空。南国の光を浴びて、汐の香りを包んで吹き向ける風さえも碧く感じる。真っ白な砂の向こうには、先端だけを白く染めた波がどこまでも長く延びていた。その波間浮かぶサーファーが、カモメの水兵さながらにお行儀よく並んでいる。そこを通り過ぎると、目的地はすぐだった。
 最後の清流、四万十川。なんと魅力的なネーミングだろう。大地に同化した憧れのその川は、豊富な水量を湛えてどっしりと横たわっている。聖地の名にふさわしく、堂々として美しい川だった。
「きゃっほー。とうとう来ちゃったぜ」
 三十男の子供っぽいはしゃぎぶりを、決して笑えない。実は雅志も、車を飛び降りて川まで駆け下りたい気分だった。その日は下見だけして、予約してあったオートキャンプ場に向かう。久しぶりに男二人で酒を飲み、騒ぎ、そして夜はさすがに疲れて早くから死んだように眠った。
 次の日からは、思いっきりこの川を堪能した。幾度となく上流までカヌーを運び、海までのんびりと下る。焦がすような日差しの中で、ゆったりと流れる時間と澄んだ水。瀬を流れる水の囁き。太陽の光をはね返し燦めく水面(みなも)。たおやかな川に流れに身を任せて、二人は時の感覚をなくした。
 それが終わると、美味しい魚と子供のような男同士の会話が待っていた。キャンプ場には、海水浴を目的の若い子も泊まっている。時にはきわどい水着のお姉ちゃんに目を奪われながら、あっという間に三日間が過ぎ去った。
 その日の夕方、食事の途中で森田から提案があった。
「せっかく四国まで来たんだから、どこか別の川にも行ってみないか?」
 実は雅志も同じことを考えていた。早速二人は管理棟に向かい、備え付けのパソコンでネット検索する。『四国の川、カヌー、ラフティング』と打ち込み、真っ先にヒットしたのが吉野川だった。水質の良い急流河川らしく、歯ごたえがありそうだ。帰る途中に立ち寄ることのできる位置にあるのも都合が良かった。
 二人で相談をして、翌日の朝から向かうことにした。少しでも節約しようと高速道路には乗らず、国道三十二号を暫く北進する。大きな峠を越えると、右手側に目的の吉野川が清らかな水を湛えて現れた。水量もあり、ラフティングスポットはすぐそこのようだ。二人は情報を仕入れようと、ラフティングと書かれた大きな看板のある店に車を停めた。
 ログハウス調の入り口には、『スプラッシュ』と書かれた看板が掛かっていた。その横の物干し場を見ると、色とりどりのライフジャケットが吊されている。店内はこの時期には意外なほど閑散としており、三十後半とおぼしき髭面の男が一人で店番をしていた。
「初めて来たんですが、カヌーをやりたいんです。どこかにいいポイントはありますかね」
 森田が男に近寄り、満面の笑みを作って尋ねた。店長らしき男は二人の実力を見定めるかのように全身を一舐めし、壁の地図を指さす。
「それなら、まずはこの下から始めたらいいよ。やってみて、物足りなかったら言ってよ。もっとスリリングなポイントも沢山あるからね」
 言葉は素っ気ないが、友達感覚で接してくれた。
「随分と閑そうですね」
「今の時期にそんなに閑だったら、商売にならないだろう。今日はラフティングの団体さんが入ったから、スタッフがみんな出払っているんだ」
 森田の不躾な挨拶にも気を悪くした風でもなく、笑顔を絶やさない。気をよくして、雅志も話し掛けてみた。
「店の名前が涼しそうでいいですよね」
「ああ、あれね。確かに飛沫(しぶき)って意味だが、トムハンクスとダリル・ハンナが競演した昔の映画の名前でもあるんだ。その中で人魚役のダリル・ハンナが妙に色っぽくて、一度お願いしたいほどそそる。それで付けたっていうのが本音かな」
 看板に目を向けて開けっぴろげに言うが、何故か嫌らしく感じなかった。
 標準語で話すところを見ると、地元の人ではなさそうだ。話を聞くと出身は埼玉で、店長だと思った清水はこの店のオーナーだった。この豊山村に遠い親戚がおり、その縁でここに店を構えて住み始めたらしい。
「吉野川はいいぞ。客は夏場がほとんどだが、本当は秋口が最高なんだ」
 清水は、遠くを見るような目でこの川を語った。その後も、身振り手振りを交えながら歌うように話し続ける。まるでミュージカルを見ているようで、二人は知らず知らずのうちに引き込まれていた。

 別名を四国三郎とも称される吉野川は、利根川や筑後川と並ぶ日本三大暴れ川の一つだ。県境に聳える瓶ヶ森を源流とし、そこから四国の東半分を分断するように流れて行く。最終的には紀伊水道に注ぐのだが、店のあるこの辺りは中流域に属していた。
 四万十川を母なる川と例えるなら、吉野川は荒々しく表情豊かな男の川だった。自然が造形した奇岩群は変化に富んでいて、見る者を飽きさせることがない。すべてが期待していた以上で、たちまち雅志の心を鷲掴みした。
 まず目を惹いたのは、色彩の豊富さだった。
 フィリピン海プレートは、西日本の太平洋側でユーラシアプレートへと潜り込んでいた。その高圧変成帯が、海底に堆積した地層を錬金術師のように様々な岩石へと変える。付加体は何億年もかけて隆起し、四国山地を造り上げた。黒っぽいかんらん岩や青味を帯びた砂岩、緑色片岩や白い石灰岩、紫を帯びた蛇紋岩、赤色チャート。川岸は様々な色の石で彩られ、流れる水も水晶玉のように透き通っていた。
 東京での生活に不満があるわけではないが、清水が羨ましく思えて仕方がなかった。収入は少なくても、こんなところで生活できればどれだけ幸せだろう。雅志はキャンプ場へと帰っても、眠りにつくまでそんなことを考えていた。
 次の日、二人は近くの食堂で昼食を摂っていた。ふと壁を見ると、その片隅に一枚のチラシを見つける。貼られてからかなり経つらしく、A3版の青い紙には小さな染みと微妙な膨らみができていた。
『自然豊かなこの村で、貴方も暮らしてみませんか。豊山村は、皆様を待っています。格安の貸家、売家も紹介できます。Iターン、Jターン等の相談は下記まで』
 その下には、丁寧に役場の住所と担当部署、担当者の名前がぶら下がっている。明らかにパソコンで手作りしたとわかるチープな作りがいじらしく、余計に好感が持てた。神様が俺を誘っている。あまりにタイミングが良すぎるこの偶然に、雅志にはそうとしか思えなかった。
「これ、見てみろよ。面白そうだろう」
「移住なんかできっこないし、興味もないな」
 森田も誘ってみたが、色良い返事をしなかった。そんな彼をスプラッシュに置いて、一人で十分ほど車を走らせる。目的の豊山村役場は、国道沿いの川縁で張り出すように建っていた。入り口で、最近めっきり見なくなった紺色の事務服のおばさんを見つけて声を掛ける。産業観光課の場所を尋ねると、よほど閑なのか前に立って案内してくれた。
「どう言ったご用件ですか」
 山本と名乗った担当者は、いかにも人の良さそうな笑みを浮かべて尋ねた。三十半ばだろうか。赤銅色に焼けた太い腕は、いかにも田舎の若い衆という雰囲気がある。
「実は移住者募集のチラシを見たんですけど、もう少し詳しい話を伺いたいのですが」
「どこから来られたのですか?」
 カヌーをやるために東京から来たことを告げると、山本は複雑な表情を浮かべた。
「問い合わせはボツボツあるんですが、具体的な話と言われましてもね……。それじゃ、まずこの村のことから話しましょうか」
 そう言うと、ロッカーから大きな地図を取り出す。それを、部屋の中央に置かれた大机の上に広げた。
 豊山村は、面積二百平方キロメートルの広大な土地に約三千人が住む過疎の村だった。四国山地の中央に位置することから雨も多く、年間降雨量は三千ミリに達するところもある。それ故に夏は比較的涼しくて、四国では珍しく冬には雪も積もるのだそうだ。
 村にはこれといった産業もなく、ほとんどの者が林業や農業といった一次産業と公共事業で生計を立てていた。その歴史は古く、縄文時代にまで遡る。様々な伝説が残されており、それを伝える祭や文化財も多かった。
 山本は、結構話し好きらしい。ここまで一気に話してから、ようやく一息ついた。
「山間部の自治体では、急速に少子高齢化と過疎化が進んでいます。この村でも十数年前に十二あった小学校が、今は三つになってしまいました。豊山村は、今そんな状態なんですよ。だから、若い人が来てくれるのは手放しでうれしい。でもね、本当に移住しようと思ったら大変ですよ。考えても見てください。仕事や教育、医療、福祉。生活の質が確保できるのなら、こんないい村が過疎なんかにはなりません」
 ちょっとしゃべり過ぎたと思ったのだろうか。山本は席を立つと、飲み物を先ほどの女性に頼んでくれた。出されたお茶は、独特の甘酸っぱい香りがする。芳醇で独特な風味があって、どこか中国茶を思い出させた。
「美味しいですね。これ、なんて言うお茶ですか」
 よくぞ聞いてくれたというような嬉しそうな顔で、今度はお茶の説明が始まった。
「この村の特産で、宝山茶って言うんですよ。日本では珍しい発酵茶の一種です」
 一通り話し終わったところで、山本が真顔に戻る。
「この村の良いところを宣伝することが僕の仕事なのですが……。実際都会の人からしたら、不便なことも多いのが実状です。だから、ご家族とも十分に相談して下さい。なんかネガティブに聞こえるかもしれませんが、誤解しないでください。僕は、この村が大好きなんです。人情は厚いし、自然は豊かだし。だからこそ来てくれる方には納得して、できれば永住してもらいたい」
 山本の熱い語り口に、ますますこの村が魅力的に思えてくる。
「仮に移住するとなれば、住むところなんかは用意してもらえるんでしょうか」
「希望を言ってもらえれば、たぶん用意できると思いますよ。都会に比べたら土地代なんか只みたいなもので、空き家なら捨てるほどある。それに野菜や米は自分で作ればいいわけだし、何でもやる覚悟さえあれば生活に困ることはありません。池田さん、期待をしていますよ。決心したら、ここに電話ください」
 山本は満面の笑みを浮かべて、自分の名刺と豊山村のパンフレットを渡してくれた。

「お帰り。わー、お父さん真っ黒。お土産は、買ってきてくれた?」
 一週間ぶりに家に帰り着くと、小さな玉となった勇仁が雅志の腕に飛びこんできた。
「暢気で良いわね。貴方がいない間に、喘息の発作が起きて大変だったんだから。学校から救急車で病院に運ばれたのよ」
 美和の言葉に驚いて勇仁を見たが、今の元気そうな顔からは想像もつかない。
「どうして連絡してこなかったんだよ」
「しようと思ったんだけど、せっかくのお楽しみ中に水を差すのも可哀相だと思って遠慮したのよ。いい奥さんでしょう? ――本当はね。病院に着く頃には落ち着いたし、連絡しても帰って来てくれなかったら余計に腹が立つからさ。でも先生の話じゃ、喘息が前よりも酷くなっているって」
「やっぱりこの空気がいけないのかな」
 この絶好の展開に、移住の件が口から零れ出しそうになる。しかし迂闊に焦って、これまでも幾度となく墓穴を掘ってきた。その苦い経験が頭の中に染みついている雅志は、出掛けていた言葉をやっとの思いで飲み込んだ。
 久しぶりの家族での夕食は、旅行中に撮った写真やビデオで盛り上がった。留守番だった二人は、夏をそのまま焼き付けた景色に見入っている。そこでの思い出話をすると、感嘆の声を上げてうらやましがっていた。
「私も行きたかったな。今度、家族で行きましょうよ。勇仁も行きたいよね」
「うん。僕、虫取りに行きたい。こっちにはいない昆虫も、たくさん居そうだもんね」
 美和は、元々自然志向だった。探検部の遠征にも見るだけでいいからと言って、何度か同行している。最近ではベランダ菜園に嵌まり、たくさんのプランターが並んでいた。そんな二人を連れて行かなかったことに、雅志は今更ながら後悔した。

 ひと月も経たぬうちに、勇仁が恐れていた喘息の発作を再発した。体育の授業中、運動誘発喘息を起こしたのだ。病院で薬の吸引をして落ち着いたものの、一時は嘔吐とともに意識を失いかけた。
 仕事を早めに切り上げた雅志が家に帰ると、勇仁は隣の部屋で眠っていた。母親似のあどけない顔は、熱があるのか少し赤らんでいる。起こさないように息を凝らし、しゃがみ込んでそっと頬を撫でる。柔らかな白桃を連想させるその頬は、確かな熱を持って湿っていた。
「大丈夫なのか」
 安らかな寝息を立てる我が子を確認して、雅志はリビングにいた美和に声を掛けた。
「喘息のほうはまだいいんだけど、もっと心配なことがあるの。あの子、学校でいじめられているかもしれない。何も言わないから分からなかったけど、今日、松木先生から聞いてびっくりしちゃった。近頃、勇仁と話す子が誰もいないんですって」
「颯太君や雅夫君達もか?」
 黙って頷いた後、不安げにうつむく美和の顔には濃い影を浮かんでいた。病院まで付き添ってくれた担任は、特に目立ったいじめを現認したわけではないと言う。しかしこの二ヶ月ほど、休み時間も一人机で本を読んでいることが多かったらしい。
 思い返せば、誰もが経験したように子供は残酷だ。力のある子にはいとも簡単に屈し、たわいもないきっかけで弱い子を集中的に虐める。心の底では悪いと知りながらも、自らが逆の立場になることを恐れるのだ。そしてそれを続けていると、次第に罪悪感もなくなってしまう。
「勇仁には確かめただろうな」
「ううん。病院から帰ってきて、そのまま寝ちゃったから。明日にでも聞いてみるつもりだけど……。私は、学校に行く機会が多いでしょう。先生に告げ口されると思って、本当のことを言わないかもしれないのよ」
 親の欲目かもしれないが、勇仁は他人に意地悪をするような性格ではない。それだけに理不尽に思え、雅志は身を裂くような怒りに拳を固く握りしめた。
 翌日になると、勇仁の状態はかなり落ち着いていた。今日一日は念のために学校を休ますことして、雅志も会社に休暇を取る旨の電話を入れる。この機会に、本人の口からいじめのことを聞いておきたかった。本来そういう面倒なことは苦手だったが、そんなことを言っている場合ではない。しかしいざ切り出そうとすると、なかなかきっかけが掴めなかった。
「勇仁、学校は楽しいか?」
 朝食を終えた勇仁に、頃合いを見計らって何気なく訊ねてみた。
「うーん。楽しいこともあるし、そうじゃない時もある。お父さんだってそうでしょう」
 少し間を置いてそう答えると慌てて目を外し、テレビの画面へと走らせた。力の籠もらないその言葉は、地に足が付いていない気がする。ここで繋ぎ留めておかないと消えてなくなりそうで、雅志は思いきって直球勝負に出た。
「まあ、そうだなあ。お父さんだって、会社に行きたくない時もあるからな。でも、そんなことじゃないんだ。勇仁は、学校でいじめられているんじゃないのか?」
 振り向いた勇仁の目が、何かに堪えかねたようにみるみる潤んでいく。瞬く間に、大粒の涙が床に零れ落ちた。
「ごめん。僕がのろまで、みんなと同じことができないからいけないんだと思う。だから、隆君も僕が嫌いなんだ」
「何も謝ることなんてないぞ。その隆って子がいじめるのか」
 思わず語気が荒くなる雅志を見て、勇仁が激しく首を振る。
「僕は、『勇仁』になりたいんだ。僕が勇気を持ってみんなに優しくすれば、仲良くしてくれるはずでしょう。だけど弱虫だから、それが上手くできない」
 この子の名前は、勇気の勇と儒教の五常の徳から仁の字から取って雅志が名付けた。しかし両方の両親からは、不評を買った。
「思いを込めるのはいいけど、読み辛いし字画が悪いな。神社で名付けを頼むか、どうしても自分で付けたいのであれば別の名前を考えたほうがいいぞ」
 かなり反対を受けて、別の候補がいくつか示される。しかし優柔不断と言われている雅志でも、これだけは譲れなかった。結局、押し切る形で市役所に届け出を行った経緯がある。そんなこともあり、勇仁には物心がついた頃から名前の由来を話してきた。
「仁、義、礼、智、信。孔子っていう中国の偉い人が、人間にはこの五つが大切だって説いたんだ。中でも人を思いやる心を表す仁は、一番重要だと言っている」
「じゃあ、勇は?」
 勇仁は目を輝かせて、雅志の話に聞き入った。
「優しいだけでは、思いが相手に伝わらない。気持ちがあっても行動する勇気がなければ、周りを変えることはできないだろう。勇仁がいつも見ているテレビドラマのヒーローも、ひとりでも戦う勇気を持っているからかっこいいんだよ」
「だから僕の名前は、勇仁なんだね」
 幸い勇仁は、名前の由来を知って気に入ってくれた。しかし親が気づかなかっただけで、重圧を感じていたのだろうか。人並みに息子への期待があったことは否めないが、名付けた時の思いと違っている。
「学校に行きたくないんでしょう? 辛かったら、別に休んだっていいのよ」
 そばで黙って聞いていた美和が、二人の会話に割って入った。それをきっかけに、勇仁は堰を切ったように号泣を始める。止めどなく溢れる大粒の涙は、たちまちフローリングに小さな水たまりを作った。
「僕は学校には行くよ。学校に行く勇気もなかったら、勇仁じゃないもん」
 嗚咽の間に紡ぐ声は裏返っているが、その意思は固かった。
「無理をして、名前に合わす必要なんかないんだぞ。お父さんの勝手な思いなんだからな」
 雅志は、勇仁の頭を正面から腕の中に抱き締めた。暖かい涙が、Tシャツを通して雅志の胸に伝わる。この頼りない命がとてつもなく愛おしく、知らず知らずのうちに腕に力が入っていた。
「僕、勇仁って名前、大好きだよ。こんな素敵な名前を付けてくれたお父さんには、感謝しているんだ」
 我に返ると、腕の中では苦しげな息遣いで震えていた。その間から見上げる目は、赤く腫れ上がっている。無理に作った笑顔が、ただ痛々しかった。
 その夜、勇仁を寝かせつけた後に夫婦で話し合った。
「転校させようか。今は校区とかあまり関係なく、結構簡単に学校を変えられるらしいの」
 美和のその提案には、雅志も賛成だった。だが勇仁は、自分の名前の呪文に囚われている。何か別の理由がなければ、転校を逃げることと解釈するに違いなかった。
「この前の旅行で行った吉野川沿いの村で、移住者を募集していたんだ。とってもいいと所だし、家も用意してくれるらしい。選択肢の一つとして検討してみないか」
「唐突に何を言い出すのよ。そんなこと、無理に決まっているでしょう」
 いつもの気まぐれと思ったのだろう。美和は驚いたように振り向くと、唇を尖らせた。
「何が無理なんだよ。喘息や学校のことも、俺なりに考えたつもりだ」
 移住を思い立った動機は、不純なものだった。好きなカヌーが自由にできて、時間に追われる暮らしから逃げ出したいと思う我が儘だ。しかし今は違う。無理やり押し込まれた袋の中で藻掻いている我が子を、何とか救ってやりたい。それを一番に考えていた。
「勇仁のことを考えればそれはそれで良いことかもしれないけれど、生活はどうするのよ」
「色々な問題があることは、分かっている。仕事に関しては、今、下請けに出している仕事を廻してもらえれば食べていけないことはないと思うんだ。会社には、折を見て打診してみようと思っている。その目処が立ったら、一度みんなで行ってみないか」
 美和は、テーブルに肘を突いて暫く考え込んでいた。それから俺に向き直り、三日月形に目を細めて微笑む。この何もかも受け入れてくれるようなこの表情こそが、雅志の大好きな幸せを運ぶ笑顔だった。
「そうね。勇仁の気分転換にもなるかもね。もしも生活の目途が立ちそうだったら、行くだけは行ってみようか。だけど、本当に見るだけよ」

 学校にも相談をして善処を求めたが、ほとんど状況に変化はなかった。子供たちもあからさまな行動は止めたものの、相変わらず無視を続けている。それでも勇仁は、必死に戦っていた。ランドセルにありったけの勇気を詰め込んで、一日も休まず通い続けた。
 登校時に見せる唇を噛みしめた顔には、送り出す美和も相当堪えたらしい。たまらず転校を打診してみたが、勇仁は頑として首を縦に振らなかった。日を追う毎に、美和までもが暗い顔をしてふさぎ込むことも多くなっていく。それに連れて移住に対しても前向きになり、二人の会話に村の話題が出る日も増えていった。
 秋の気配が色濃く漂い始めた十月になって、雅志は豊山村の山本に連絡を取った。差し障りのない程度の事情を話して、家を探してくれるように依頼する。それを聞いた山本は、心から喜んでくれた。
「とうとう決心しましたか」
「まだ決定したわけではないんですよ」
 あまりにも弾んでいる電話口の声が気に掛かり、一言だけ付け加える。
「そうですよね。でも、仕事についてはどうするつもりなんですか」
「せっかく田舎暮らしをするんだから、できればそちらで探してみたい。でもとりあえず最悪の場合も想定して、パソコンを使って自宅でできる仕事も用意するつもりです」
「――ほう。それは良かった」
 電話の向こうで頷く一呼吸の間が、山本の安堵の気持ちを物語っていた。
 勇仁が歩いて小学校通えること。自分の家で食べる野菜が作れる程度の畑が付いていること。どんなに古くてもいいから、家賃は三万円以下であること。近所で相談に乗ってくれそうな人がいること。雅志の出した条件は、その四つだった。
「じゃあ、早速探してみます。ただ条件に合う物件が見つけるには、少し時間が掛かるかもしれませんよ。楽しみに待っていてください」
 このことは、美和にも相談していなかった。果たして、本当にこれで良かったのだろうか。電話を切った後も、雅志は暫くその場で自問自答を繰り返した。
 その夜、役場に住宅の斡旋を頼んだことを美和に告げた。
「で、その人はどう言ったの?」
 あっけなくそう言われて、ひと暴れを覚悟していた雅志は肩すかしを食らった。おまけに美和の顔色を窺っても、怒っている風でもない。急に力が抜けて、何を訊かれたのかさえも忘れてしまった。
「ねえ、見通しはどうなの?」
 重ねて訊かれてやっと我に返り、電話での内容を説明する。美和は黙って聞いていたが、山本に話した条件のところで口を挟んだ。
「さすがA型よね。ちゃらんぽらんで面倒くさがり屋のくせに、変なところで細かい。でもさ、貴方にしてはよく考えたわよね」
「まあ、君子は豹変するもんだ。それに、血液型と人格は関係ない」
 呆れ顔の美和が、おもむろに腕を組む。これは、ひと言ある時の前兆だった。
「雅志君、君子の意味知っているの。徳のある立派な人のことよ。貴方にあるのは、徳でなくてせいぜい毒でしょう」
 皮肉を言うときに限って独身時代の呼び方に変わるのも、美和の癖だ。内心は、不安で一杯なのだろう。それでも、いつもと変わらず振る舞ってくれている。雅志は、その気持ちが嬉しかった。

「見つかりましたよ。それも最高の条件で」
 山本から連絡が来たのは、寒さが一段と増した一月の末のことだった。
 何でも、廃校の危機に立っている小学校の校長が尽力してくれたらしい。そのうえ適当な物件がないと知ると、持ち家の提供を申し出たと言う。条件も申し分なかった。築七十年は経つものの豪農の家を思わせる立派な家を、無償で貸してくれるそうだ。おまけに、三反歩の水田と四畝ほどの畑まで付いていた。
 最初に聞いた時は、その広さを実感できなかった。ネットから換算表を引っ張り出すと、一反は約千平方メートル、一畝が約百平方メートルもある。つまり、約五十五メートル四方の水田と二十メートル四方の畑が付いている勘定だ。その水田と畑で、どれだけの作物が収穫でくるのかは想像もつかない。それでも自分たちで耕すには、十分過ぎる広さだった。
「メールで写真を送っときますから、早い時期に家族で見に来ませんか。きっと実物を見たら、もっと気に入ると思いますよ」
 受話器を通して伝わる声から、山本の人なつこい顔が目に浮かんだ。
 その日の夕方には、もうそのメールが着信していた。ファイルを開くと、二十枚分ほどの写真データが圧縮されて入っている。一枚目は遠景だった。少し小高い丘のような所に、平屋の立派な家が建っている。周りに人家は見当たらず、庭には三本の大きな木があった。
 屋根にうっすらと雪が見える所を見ると、電話の後にでも撮りに行ってくれたのだろうか。写真は、枚数を重なる毎に家に近づいていく。日当たりの良さそうな縁側や、広い居間、土間の炊事場などが何枚も撮られていた。
 その次からが、水田と畑の写真だった。水田の脇には、水量豊かな小川が流れている。最後の一枚は、大根らしき葉っぱが写った畑の写真だった。今も誰かが耕作しているようだ。これほどのものを無料で貸して貰えるとは、思いもしていなかった。一刻も早く美和にも見せたくて自宅に転送し、同時に電話で連絡を入れてみる。
「借家が見つかったらしい。今、家に写真を送ったからを見てみろよ。驚くぞ。今日早く帰るから、後のことはそれから説明する」
 自分でも恥ずかしいほど語尾が弾んでいる。できることなら、今すぐにでも家に飛んで帰りたい気分だった。
「はいはい。帰ったら見ておくから。今、買い物の途中なの。近所の高田さんと大事な話をしているから切るね」
 雅志の興奮をせせら笑うように、一方的に電話が切られた。どうせくだらない井戸端会議だろうが、まあいい。写真を見た後で、只だと言うことを伝えると美和も驚くはずだ。そう思うと、自然と口元が弛むのを抑えられなかった。
 雅志は定時で仕事を終えると、早足で家路を急いだ。駅から家までのわずか十分ほどの道のりが、どうにももどかしい。
「写真、見たか」
 帰り着くなりドアを開けながら、何はともあれ美和に尋ねた。
「立派な家よね。あの田んぼや畑も貸してくれるの?」
 期待に反して、あまり喜んでもいないように見える。しかし、雅志は次のひと言を用意していた。
「そうさ。しかも無料で」
「嘘。ほんとに? 畑は嬉しいけど、田んぼは私たちじゃ無理じゃないのかな」
 表面上は話を合わせているが、美和の言葉はどこか冷めていた。
「何か不満があるのか。こんな条件、普通はないだろう」
 冷や水を浴びせるような対応に、雅志の言葉も荒くなる。
「条件に不満があるわけじゃないの。でもね。生活するっていうのは、家や土地だけの問題じゃないでしょう。勇仁の学校のことや、近所との付き合いのこと。買い物や病院のことなど、解決しなければならない問題が山ほどあるのよ。私、話が具体的になるに従って、不安になってきたの。楽天家の貴方には分からないでしょうけど……」
 たしかにそうかもしれない。ひとりで舞い上がっていた自分が、情けなくなってくる。第一、勇仁が気に入るかどうかさえも考えていなかったのだ。
「そうだよな。どっちにしても三人で見に行こう。結論は、それからだ」

 勇仁が春休みに入るのを待って、一家は豊山村へと向かった。雅志の運転する車が、吉野川沿いの狭い国道を進んで行く。車中から眼下を眺めると、深い川底から三十メートルはあろうかと思える岩錐(がんすい)が立ち上がっていた。その対岸を見ると、転がり落ちそうなほど急な斜面に人家が張り付いている。そこへと繋がる真っ白なガードレールは、天空に駆け上がるスロープのようだった。
「お母さん、あそこの家見て。どうやって建てたんだろうね」
 勇仁が不思議そうに、指を指す。
「八王子と比べれば、同じ日本じゃないみたい」
「きっとここは、日本のガラパゴスだ」
 横目で見た顔は、昨日までの不安が嘘のように楽しそうだった。二人のはしゃぐ声が、車の中を駆け巡る。運転で疲れ果てた雅志をよそに、眠むっていた二人は絶好調だった。その後も二桁国道とは思えないほど線形の悪い道を進んでいく。このままなら、山本と待ち合わせの豊山村役場に一時間ほど早く着きそうだった。
 そうこうするうちに、見覚えのあるスプラッシュが遠くに見えてきた。清水から、オフシーズンも周辺の観光ガイドもやっていると聞いている。あそこなら二人も退屈することはないだろうし、少し休むこともできそうだ。そう思った雅志は、寄ってみることにした。
 駐車場には、ほとんど車が停まっていなかった。扉を開けると、暑いほどの熱気が飛び出してくる。それに気づいて、パソコンに向かっていた清水が振り向いた。彫りの深い端正な顔立ちと涼しげな二重の目。白いTシャツから突きだした日焼けした二の腕は、たくましく盛り上がっている。このままテレビのトレンディードラマに出ていても、何の違和感がなかった。
「おう、夏に来た人じゃないか。えーと、池田君だっけ。いらっしゃい」
 清水は、覚えてくれていたようだ。後に続く二人を見ると、ゆっくり立ち上がった。それから勇仁の髪を、両手の指を広げて揉むような仕草で乱暴に撫でる。子供慣れして、まるで前から知り合いだったかのように接した。
「ぼく、なんて名前だい?」
「勇気の勇にカタカナのイとニで勇仁です」
 勇仁は恥ずかしそうに身を細めながらも、はっきりとした口調で答える。
「なんだか高貴な人みたいで、いい名前だね」
 あの説明で仁という字を思い浮かべたことに、雅志は感心した。
「お父さんが付けてくれたんです」
 清水ははにかむ勇仁に笑顔を返してから美和のほうに向き直り、軽く会釈をした。その自然な態度は、男から見てもすこぶる恰好がいい。
「俺にもちょうどこのくらいの歳の子がいてね。別れた女房が連れているんだが、勇仁君の方が少しハンサムかな。――ところで今日はどうしたの? 家族旅行?」
 改めてひとり一人の顔を、まじまじと見回した。
「実は、僕らもここに移住することになるかもしれないんですよ。だから今日は、家族で下見にきたんです。それで、挨拶をしておこうと思って」
 清水は、両手を広げて大げさに驚いてみせた。そんな芝居がかった仕草も不思議と自然に見える。
「それなら俺は大歓迎だ。ついでに夏場のスタッフになってくれたら、最高なんだけどな。でも、また何でここに住もうと思ったの?」
「元々、田舎暮らしに憧れていたんです。スローライフって言うんですかね。自然の中でゆったり暮らしたいと。そうすることでこの村の役に立てるのなら、最高ですもんね」
 横で美和がクスッと笑う。この村の役に立てる云々は、その場で口を滑らせたものだった。そこを笑われたのが、癪に障る。雅志は清水に気づかれないように、横に座る美和の太ももを膝で軽く押した。
「で、どこに住むつもりなの?」
「まだ、決まったわけでもないんですよ。でも候補地は、神永地区の平文(ひらふみ)って所です」
「おう、天国か。ここからも車だと三十分ぐらいだし、いい場所じゃないか」
 意味不明なことを言って、含み笑いを始める。
「天国って何ですか」
「まあ、行ってみたら分かるよ。そこには昔、神様が住んでいたんだってさ。それと、平文って音読みすると『へいぶん』になるだろう。ヘブンに似てないかい? 神永地区のヘブン」
 何のことか理解できずに戸惑う雅志達を楽しむように、清水はひとりで大笑いを始めた。
 左側の壁一面に取り付けられコルクボードには、予約を書いたポストカードやラフティングの写真が貼り詰められている。どの写真も絶妙のアングルで、生き生きとした顔が躍動していた。興味を持った美和と勇仁は、それを一枚ずつ丹念に眺めている。
「これ、田村伸吾じゃないですか?」
 突然美和が、大声を上げた。
「そうですよ。彼も仕事が空いた時には、時々ここに寄ってくれるんだ」
 その男は、若い女性に人気がある関西出身のアイドル人気グループの一員だった。おそらく、望遠レンズを装着した固定カメラで撮ったものだろう。カメラを意識しない真剣な表情でパドルを操るそのアップは、水しぶきさえ止まって見える。無駄のない構図と相まって素人目にもいい写真だった。
「清水さんは写真が趣味なんですか」
 美和の妙に媚びた口調が腹立たしい。
「ああ、幾つかのコンクールで入賞している。まあ、かなりのお金と時間を掛けたからね。オフシーズンは写真三昧だよ」
 本来は人物より風景や静物写真が好きで、時間ができると村中を走り回っているそうだ。主に、この村の隠れた名所や文化財などを撮っているという。次から次へと飛び出してくる豊富な話題は、一家を飽きさせることはなかった。美和などは、知っている有名人の名前が出てくる度に身を乗り出すように聞き入っている。そうこうする間に、待ち合わせの時間が迫っていた。
「お邪魔しました。また寄らせて貰います」
 雅志は、名残惜しそうな二人を追い立てて役場へと向かった。
「素敵。今度生まれ変わったら、私、清水さんと結婚したい」
 車の中で、唐突に美和が呟く。よくまあ、旦那を目の前にして言えるものだ。そのうっとりした目を見ていると、憎まれ口も叩きたくなる。
「俺も生まれ変わったら、もう少しデリカシーのある女と結婚したいよ」
 その言葉にも上の空で、美和は話を進めていった。
「あの人独身よね」
「ああ、離婚したって言っていたな」
「そのうち貴方がぽっくり逝ったら、私にもチャンスがあるわけだ。じゃあ、ここに住もうかな。清水さんなら勇仁のこともかわいがってくれそうだし」
「妄想もいい加減にしろよ。大体、あの人がお前なんかを相手にするか。それに、俺も勝手に殺すな!」
 まったく、冗談でも言って良いことと悪いことがある。

 役場からは山本に案内で、平文がある神永地区へと向かった。国道から外れてコンクリートの古い橋を渡り、幅三メートルほどの細い道に入る。そこからは、川沿いの道をひたすら上流へと進んで行った。窓の外はうっそうとした木々に阻まれて、ほとんど空さえも見えない。たまに少し開けた場所に出ても、対岸の切り立った岩肌が目に入るだけだった。
 擦れ違う車もなく、さすがの雅志も心細くなっていた。この先に、とても人の住めそうな場所があるとは思えない。さっきまで上機嫌ではしゃいでいた美和と勇仁も、周りの景色が変わるにつれて無口になっていた。
 そろそろ不安が頂点に達そうとした頃、突然トンネルでも抜けたかのように明るくなる。すると、正面に十軒ほどの小さな集落が現れた。ここがその平文らしい。前を行く山本の車は更に小道に入り、少し登ったところで車を停めた。
「空が広くて、いいところでしょう」
 車から出た山本が、眩しそうに空を見上げながら言った。
 空が広い。このロケーションにぴったりと嵌るその表現には、雅志も納得してしまった。映画にでも出てきそうな風景は、のどかで心が落ち着く。左側のなだらかな斜面には、美しい棚田が広がっている。清水が天国との表現したのも、あながち大げさでもない気がした。
 目指すその家は、茶畑に囲まれた一段高い位置にあった。写真で見るよりもずっと立派で、すぐにでも住めそうなほど掃除も行き届いている。昔は、いろりでもあったのだろうか。煙に燻された黒光りする太い柱や梁のおかげで、築七十年の家は些かの衰えも感じさせない。八畳の居間に十二畳の客間、ほかにも小部屋が二つあり、親子三人が暮らすには文句のない広さだった。
「どうですか。いいでしょう」
 自分のことのように誇らしげに言う山本が、どこか可愛らしく見えた。美和も同様のことを考えていたようで、そんな姿を見て微笑んでいる。勇仁は、始めて見る本格的な田舎の風景が物珍しいのだろう。忙しく周囲に目を走らせていた。
「本当にこの家を?」
「ええ。僕も今まで何軒か紹介しましたが、こんな好条件は初めてですよ。でも、持ち主がいいって言っているんだから問題ないでしょう。心配ならもうすぐ本人も来ると思いますから、直接聞いてみてください」
 案内されるままに家を見ていると、濃紺のスーツを着た初老の男性が現れた。
「あの方が梶原先生です」
 白髪交じりの長めの髪に、赤みを帯びた血色のいい肌。六十過ぎと聞いていたが、長身で幅のある立ち姿は威厳と気品が感じられる。山本は仕事柄会う機会が多いのか、親しげに挨拶していた。それが済むと、雅志達を紹介してくれる。梶原は、ひとり一人を確認するように名前を復唱して頷いていた。
「遠いところを良く来て下さいました。正直なところ、山本君からこちらへ着いたという連絡が入るまで、いつ心変わりするかと冷や冷やしていたんですよ」
 その見るからに温厚そうな物腰と話しぶりは、雅志たちを安心させた。
「いいところですね」
「お世辞でもそう言ってもらえると、地元に暮らす者としてはうれしいですな」
 梶原は満面の笑みを作って、雅志に握手を求めた。
「こんな立派な家を、無料でいいんですか。しかも、田んぼや畑まで付けて」
「いいも悪いも、住んでいただけるのであれば何の問題もありません。この小学校は、何としても残したい。私も定年延長で校長を続けていますが、それも後数年で終える。事前に聞いていると思いますが、私にとっては小学校の存続の方が重要です。それに、今はこの家も空き家です。もし、住んでみてここに永住する気になったら、貸すのではなく差し上げますよ。どうせ、たいした価値もない」
 穏やかで控えめな話しぶりに、雅志はこの人なら信頼できると感じた。
 これから会議がある山本は、早々に帰っていった。暫くの間、二人で当たり障りのない世間話に花を咲かせる。梶原は東京の大学を卒業後、すぐには就職をせず研究者として大学に残ったそうだ。そのためか、話す言葉も丁寧で標準語に近かった。
「君が勇仁君か。平文の印象はどうかな」
 両肩に手を置いて、目線の高さまでしゃがみ込む。
「僕、前にここへ来たことがあるような気がするんだ」
 梶原は驚いた顔をして、勇仁を凝視した。
「来たことがあるって、――具体的に何か覚えているのかな」
 焦点が合わなくなるのではと思うほど顔を近づけて、そう問い掛ける。あまりにも真剣な表情に怖じ気づいたのだろう。勇仁は困ったように下を向いて、黙り込んでしまった。
「不躾なことを訊きますが、勇仁君に身体的な特徴はありませんか。たとえば肩に痣のようなものはあるとか……」
 返事を待つのがもどかしいのか、今度はこちらを向いて妙なことを言い出す。怪訝そうに首を横に振る美和に、梶原は落胆とも安心ともとれる複雑な表情を浮かべた。
 話が途切れたところで、家へと向かう。いつの間にか縁側の障子は開けられ、部屋を仕切るふすまが取り除かれていた。部屋の中には、折りたたみの細長い座卓がいっぱいに並べられている。その上には、一抱えもあろうかという大きな皿に乗せられた料理が並んでいた。地元で取れたらしい山菜や、川魚に田舎寿司。どれも、ここでしか食べられないような素朴なものばかりだった。
「古くなって痛んでいた所は、平文の人達が修繕してくれました。それに、今日は池田さんたちの歓迎会も用意しているみたいですよ」
 おもむろに指差した横の小道には、四、五人の老人が所在なげに立っていた。どの顔も硬い表情で、池田家の三人を遠慮がちに見ている。梶原が覗き込むようにして手招きをすると、生け垣の裏からも十人ほどが現れた。
 この平文には、十四世帯二十一人の人が住んでいるそうだ。梶原は、主だった人を順番に紹介してくれる。皆、見事に年寄りばかりだった。最年長が樋口源造で八十六才、最も若いさっちゃんこと木内幸代でも五十八才だ。どの顔も気立ての良さが表情に表れており、心から歓迎してくれていることが肌で感じられる。
 ただし、ひとりを除いては……。
 梶原に促された住民が、宴会の用意のされた部屋へと入ってくる。雅志たちも勧められるまま、中央に構えられた主賓席に座った。全員が席に着いたところで、地元を代表して源造が挨拶に立つ。緊張しているのか、一つ咳払いをして仰々しく話を始めた。
「この度は、我が平文にようこそ来てくださいました。我々一同は、池田さん一家を心から歓迎しちょります。神永地区は、豊山村でも特に歴史と伝統があるところです。中でもこの平文は安徳天皇も住まわれた場所で、住民も誇りに思っております。本日は大したおもてなしもできませんが、心づくしの宴席を設けました。池田家の皆さんに、ここの良さを少しでも感じていただければ幸いです」
 方言はきついが話す言葉も明瞭で、矍鑠(かくしゃく)としている。まばらな拍手が起き、続いて宴会が始まった。まず正面に座った源造が、持っていた杯を飲み干す。その縁を指で拭って、今度は雅志の胸の前に杯を差し出した。
 どうすればいいのか分からず戸惑っていると、それをじっと見つめている男がいる。太い眉に睨みつけるような大きな目。さっき雅志が、本能的に除外した男だった。何が不満なのか苦虫をすり潰したような表情をしている。身長は百六十五センチ程だが、腕には作り物のような力こぶを乗せていた。真っ白なタオルを額に巻いて、何かの拍子に噛みつきそうな雰囲気さえある。何事も話し合いで解決したい雅志には、最も苦手なタイプだった。
「おい、早うせんか! その杯を貰うて飲まんといかんがよや。飲み終わったら元の人に返して、今度はお前が酒を注ぐがじゃ」
 その苦手の権化が、吠えた。いや、吠えたように聞こえた。暴力的な言葉使いに、一瞬雅志の体が強ばる。大学生の時に、盛り場でヤクザに絡まれて以来の衝撃だった。雅志は慌てて杯を受け取り、味わう暇もなく飲み干す。
「おいおい、良夫。お客さんがびっくりするぞ。もう少し、優しゅうに言わんか。初対面の人には笑顔で話すもんじゃ」
 一斉の笑い声が上がり、源造に窘められた良夫が亀のように首を竦める。普通の人なら愛嬌と感じる仕草にも、雅志は笑うことができなかった。
「良兄(よしにい)の顔は、危険物じゃきのう。熊でも逃げるわ」
 そう言って、また誰かが笑いを誘った。源造以外は彼のことを、良兄と読んでいるらしい。良夫は、その声の主にいかにも不機嫌そうな顔で一瞥をくれた。それから雅志に、引きつったような笑顔を向ける。
「返杯と言うて、挨拶みたいなもんよ。こっちじゃ、いつもこうやって飲むがぞ」
 ここは、言われる通りにするのが得策だろう。飲み干した杯を源蔵に返して、今度は自分の杯を飲み干す。それを、恐る恐る良夫に勧めてみた。巨大な黒いイモムシを連想させる指が、小さな杯を器用に受け取る。それに酒を注ぐと、器ごと飲み込みそうな勢いで口に放り込んだ。すぐさま今度は、乾杯で使ったビールも一気に空にする。そのコップに半分ほど日本酒を注ぎ入れて、雅志に差し出した。
「ここに住むんなら、このくらいは飲めんといかん。一応、男じゃろうが」
 一応は余計だが、子供のように笑った顔は見ようによっては愛嬌がある、――ようにも見える。どうやら、怒っているわけではないらしい。少しは安心したが、いつ気分が変わるか分からない。雅志は、注意深く言葉を選びながら会話を進めた。
「良兄さんは、どこに住んでいるんですか」
「そこじゃ」
 彼の手に付いた黒いイモムシが、北東を向いた。その方向には、山本から聞いていた相談相手の木内幸代さんの家があった。何かが間違っていなければ、その旦那が良夫ということになる。雅志は混乱した頭で、山本との会話を反芻した。
 あの時、なぜ気づかなかったのか。普通、夫妻を呼ぶ際には夫の名前を使う。わざわざ幸代の名で言ったのは、そういうことだったのだ。できれば彼の住む所が壁の中か、遠くに見える山の向こうであることを真剣に祈った。
 それにしても、ここの酒はやけに飲みやすかった。どう言ったらいいのだろう。今まであまり日本酒が好きではなかったが、淡麗であっさりしているのに深い味わいがある。
「これ、旨いですねえ。なんという銘柄ですか?」
「おう、この酒か。俺の家で造ったイモリ酒じゃ。旨けりゃ、なんぼでも飲め。隠し味にマムシの肝も入れちゅうき、精が付くぞ」
 雅志は、思わず吐き出しそうになって手で口を塞いた。それから恐る恐る良夫の顔を見ると、大きな目をゆっくりと左右に動かしている。
「嘘じゃ。嘘じゃ。ちゃんと酒屋で買った普通の酒じゃ。ただ地酒じゃから、都会の酒とは、味が違うのかも知れんのう」
 良夫は、茶目っ気たっぷりに目を細めて笑っている。何でも日本酒を飲む機会が多いこの地方では、量が飲めるよう淡泊な味に仕上げているらしい。その後も気になって、良夫の姿を横目で追っていた。不思議なことに、皆が次々とこの男の所へと酒を注ぎに来る。地元の人たちから、嫌われているわけでもないようだった。
 一段落つくと隣の源造が、ここの歴史について色々と教えてくれた。
「神永の地形は、天然の要塞になっておる。そこが気に入り、壇ノ浦の難を逃れた安徳天皇がこの平文に行宮を構えたんじゃ。嘘じゃないぞ、証拠もある。三種の神器のうち、壇ノ浦からは見つからなかった天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)が、この奥にある宝刀神社に納められておる。尤も調査を断り、百年に一度しか拝観もせんから国宝にもなっていないがな」
 神永という地名も、そこから付けられていた。この地区は、一番下流の黒瀬の他、平文、杖谷の三集落で構成されている。昔から特別な場所として、昭和四十年代までは八百人ほどが暮らしていたらしい。しかしその後は減少が続き、今では百人を切っていた。
 安徳天皇は、壇ノ浦の戦いで幼くして崩御した悲運の天皇として知られている。しかし戦乱を逃れて生き延びたという説も、根強く残っていた。しかもその場所は、北は岩手県から南は奄美大島まで百二十にもなるという。雅志がそれを知ったのは、森田と九州遠征の帰りに立ち寄った下関の安徳天皇陵だった。それを聞いて、いくら何でも多すぎるだろうと腹を抱えて笑った思い出がある。しかしそんな話が、まさかこの豊山村にまであろうとは……。
 宴もたけなわになると、雅志の元へ住民が順番に酌をしに来てくれた。すぐに返杯を求めるこの飲み方を繰り返すうちに皆も酔いが回って、場も和んでくる。
「あんたらぁが来てくれたら、まっこと良いにねぇ」
 老人たちは、一様にそう口にする。雅志にはそれが希望を通り越して、悲痛な哀願に聞こえた。この人達の息子や娘達は、いったいどこに行ってしまったのだろう。いくら仕事がないとはいえ、老父母を残してこの地を去った本当の理由は何なのか。ここに住むことが現実味を帯びてきた今、彼らにそれを聞いてみたかった。
 ふと美和と勇仁を見ると、二人とも楽しそうに周りの人と話し込んでいる。美和はともかく、人見知りの激しい勇仁の和んだ顔は意外だった。
 一時間もすると、どこからか旧式のカラオケセットが運び込まれた。聞いたこともない昔の曲に流れ、老人たちが順番にとてつもない大きな声で歌い始める。いつの間にか、勇仁の横には小学生らしい男の子が座っていた。同級生か、それとも少し上だろうか。カラオケがやかましいのだろう。二人は、耳に手を当てて話を続けている。暫く我慢をしていたようだが、やがて連れだって外に出て行った。
 春を待つ三月の太陽は、高い山々の間にあっけなく沈んでいく。遠くから来た一家のことを気遣ってくれているのだろう。五時半になると、源造が閉会を告げる。それを合図に男たちは夕日に背中を押され、千鳥足で一人二人と帰って行った。
 そんな中で良夫だけは、まだ飲み足りないのか残っていた。残ったとっくりの酒を、名残惜しそうに浚っている。女性陣は、いつものこととそれを横目に手際よく片づけ始めた。土間にある炊事場で、洗い物をする何人かの笑い声が響いている。ふと見ると、その輪の中に美和の姿も混ざっていた。
 片付けも終わると、広い家の中に家族三人だけが残された。当初の予定では、役場の近くの旅館に泊まるつもりだった。しかし寝具も用意してあるから、ぜひこの家で泊まってみて欲しいと言う。雅志は断り切れず、その言葉に甘えてしまった。
 先ほどまでの賑やかさが嘘のように静まり、荷物もない広い部屋は妙に落ち着かない。三人は、自然に部屋の隅で寄り添っていた。思い切って、六枚もある障子戸を一斉に開けてみる。ガラス戸越しに冷気が引き込み、雅志は思わず身震いした。
 見上げれば、目を奪うばかりの無数の星が煌めいていた。わずか十分ほどの間に、幾つかの星が光を増しながら競い合うように夜空を切り裂いてゆく。視線を下ろすと、山並みが静かな闇を広げていた。その中に、いくつかの家の明かりが見える。雅志は太い柱にもたれ、ぼんやりと儚げなで温もりのあるその光を数えた。険しい山と深い谷に囲まれたこの山里にも、人間の営みがある。そんな何でもないことが、何故か心に沁みた。
「みんな、いい人達よね」
 これからのことを漠然と考えていた雅志は、美和の声で我に返った。
「あ、うん」
「なんだか、ここで暮らすのも悪くないなって思えてきた。私、祖父母を早く亡くしちゃったから、お爺さんやお婆さんとの思い出がほとんどないの。だからかなあ、最初はどう接していいのか分からなかった。でもね、話してみるとみんな優しいし可愛いのよね。私たちのことを見守ってくれているような気がして、温かい気持ちになれる」
 平文の人と接したことで、美和の不安も薄れてきたようだった。
「だけど、俺達の相談役が良兄とはな。幸ちゃんも大変だ」
 美和は、苦笑しながらも小さく頷く。
「これまで出会ったこともないタイプだものね」
「僕はあのおじさん、大好きだけどな。本当は優しいんだ」
 不満顔の勇仁が、口を尖らせて話に割り込んできた。良夫と話もしていない勇仁の意外な言葉に、美和と二人で顔を見合わす。
「どうして優しい人だと思うの?」
「どうしてって……」
 改めて考えてみると根拠が見つからないのか、思案顔の勇仁が言葉を詰まらせた。それでも気を取り直すと、美和の真似をして腕を組み、援護する。
「絶対に優しいって、僕には分かるんだ。それに恭一君も大好きだって言っていたよ」
 子供なりの勘なのか。それとも、恭一という子の受け売りなのだろうか。確かに口が悪いだけかもしれないが、あの顔を思い出すと近寄るのにも覚悟がいる。しかしそれを割り引いても、平文は魅力的な場所だった。
「俺さ、いつか自然の中で暮らしてみたいとは漠然と考えていた。実際に実現できるなんて思っていなかったけれど、ここだったら大丈夫な気がする」
 雅志は勇仁のいることも忘れて、美和の返事を待たずに話を続ける。
「勇仁にとっても、きっと良い影響を与えると思うんだ」
「うん……。だめだったら、八王子に帰ればいいだけのことだものね」
 曖昧な返事を返しながらも、美和の顔には否定の色がない。それどころか、いつにも増して柔和な表情になっていた。
「勇仁はどうだ? ここで暮らせそうか」
 二人の話を黙って聞いていた勇仁にも、話を向けてみた。
「恭一君もいるし、僕、ここに住んでもいいよ」
 いとも簡単にそう言い切った声に、少しの躊躇もなかった。
「その子は平文の子なのか?」
 おそらく、途中から参加した男の子のことだろう。人見知りの勇仁が、たった数時間で仲良くなったのは驚きだ。利発そうで体の大きい子だった印象はあるが、雅志はその顔が浮かばなかった。
「上流の杖谷って集落の子で、勇仁と同い年だって。明日のこともあるし、梶原先生が誘ってくれたらしいの」
 気になっていたのか、美和が解説してくれる。翌日は、勇仁の通うかもしれない小学校に行くことになっていた。果たして、どのような反応をみせるのだろうか。心配してみても仕方がない。そう、だめならだめで帰ればいい。

 神永小学校は、谷相橋からほど近い黒瀬の川沿いにあった。思っていたより校舎も大きく、運動場も広い。学校を囲むように、数多くの桜が植えられていた。まだ蕾を固く閉じているが、満開になるとさぞかしきれいだろう。校庭には、一塊になって遊ぶ子供達の姿が見える。春休みにも関わらず、勇仁のために集まってくれたようだった。
「この春の時点で、生徒は十三名です。しかしそれも来春四人の六年生が卒業すると、入学予定者もなく九人になる予定です。これまで廃校だけは免れてきましたが、十人を切るとさすがにそれも難しい……」
 校長の梶原が、現状を説明してくれた。現在この小学校では、複式学級で授業を行っている。この四月の時点で一、二年が三人、三、四年が四人、五、六年が六人だそうだ。勇仁が編入した場合には、三年生が二人となる。生徒のうち神永地区の子は、恭一を含めて四人。残りの九人は、他の地区から通っていた。
 地区では存続のために、山村留学や里親方式も検討してきた。しかし高齢者ばかりの神永では受け入れ先の確保もままならず、頓挫したらしい。まだ移住の決断ができていない雅志には、相当なプレッシャーだった。
「待ちよったぞ。みんなに紹介しちゃるきにゃあ」
 勇仁を見つけた恭一が、一目散に走り寄ってきた。恥ずかしそうに目を伏せるが、有無を言わせずその腕を掴んで引っ張っていく。引っ込み思案の勇仁には、頼もしい相棒になってくれそうだった。
「お力になれるかわかりませんが、皆さんの歓迎してくれる気持ちは伝わりました。前向きに検討してみます。梶原先生。しつこいようですが、あの家、本当にいいんでしょうか」
 横で勇仁を見守っていた美和もこちらを振り向いて、梶原の言葉を待っている。昨日の話で一様は納得したものの、美和は極度の心配性だ。先住者が首でも吊った家じゃないのかなどと、邪推して一人で怖がっていた。
「実は……」
 一瞬の間が開く。きた――。二人同時に唾を飲み込んだ。
「あの家は、もともと父の実家です。私は県外で生まれたのですが、父が死んだこともあり、母とあの家に帰ってきました。その後、大学に行くことになりましてね。そうなると、あの家は母一人で住むには広すぎる。家賃収入も期待したのでしょう。母は小さな家を借りて、遠い親戚に貸してあったのです」
「ここに帰ってきたのなら、先生がなぜ住まないんですか」
 話を聞くと、梶原は一時神奈川県で教師をしていた。そこに小さな家でも建てて、母と一緒に住むつもりで妻と話し合っていたらしい。しかしそれを話すと、母は老後をこの神永で過ごしたいと言ったという。
「幼い頃に父を亡くした私は、大学進学を諦めかけていました。しかし母が、どこからかお金を捻出してくれたのです。その時には、お金の出所など考えもしませんでした。しかし後で聞くと、神永の人々が少しずつお金を出し合ってくれたそうです。正直に言って、驚きました。そして、生まれ故郷に戻って教師をやろうと決心したのです。当然あの家に住むことが一番良かったのですが、もうすでに貸してあった。それを私たちの都合だけで、追い出すわけにはいきません。結局うまくタイミングが合わず、この黒瀬に家を建てたのですよ。で、その遠縁の者が一昨年亡くなったというわけです」
「だからといって――」
 梶原は、言葉を遮って話を続ける。
「池田さんは、限界集落っていう言葉を知っていますか? 六十五歳以上の高齢者が半数を超えた集落をいうんですが、この地区はまさにそんな状態です」
「それのどこが問題なんですか?」
「まず過疎化、少子高齢化が加速します。そうなると共同体としての機能が急速に衰えて、やがてその集落は間違いなく消滅してしまいます。――中央の偉い人達は、非効率な過疎の村などなくなっても構わないと考えているとしか思えない。都会の人はこんな山奥の村など関係ないと思っているでしょうが、川によって繋がっているのですよ。山を、森を守る人がいなくなれば、下流の街の人が使う水を涵養する山は荒れる。川や町だけでなく、遠く海の漁業にだって影響する。これまで人知れず国土を守ってきたのは、こういう田舎の人間なのですがね……。私には、子供ができなかった。だから子孫を残すという意味では、地域のために何も貢献できていない。妻も昨年他界して、渡す者もいない土地です。遠慮なく使ってください」
 ゆっくりとして、穏やかな話しぶりだった。しかし家族を失った深い悲しみと、神永に対する思いが余すことなく伝わる。少し寂しそうな苦笑いを浮かべながら、梶原は周囲に目を移した。見渡す限りの山々は、人々の苦悩など感じさせないほど堂々と聳えている。空を囲むように、しっかりと大地に根を生やしていた。
 雅志は梶原の話を聞いて、始めて自分たちがここに住む意義を理解できた気がした。運動場では、校庭の隅に残ったわずかな雪を集めて雪合戦を始まったようだ。勇仁も他の子に交じり、真っ赤な顔をして走り回っている。もう都会では、年長の者から幼い子供まで一緒に遊ぶ姿を見ることもない。しかしここでは、それが当たり前のように行われていた。
 一際頼りなげに走る勇仁が、何かに躓いて転んだ。慌てて美和が立ち上がるのと同時に、今時めずらしいお下げ髪をした女の子が駆け寄るのが見えた。勇仁を抱き起こすと、ごく自然に汚れた衣服をはたき始める。美和と目を合わせて微笑み合う横で、梶原も満足そうに目を細めて頷いた。

 神永での下見を終えて家に帰り着いた翌日、一家はささやかな家族会議を開いた。しかしそれは、陶芸家が満足に焼き上がった作品を遠目で見直すのと大して変わらない。単なる意志を再確認するための儀式のようなもので、すでに三人の心は固まっていた。
 そこからは、できるだけ早く準備をするだけだった。勇仁のことを考えれば、三年生になる四月に転校するのが最良だろう。しかし様々な手続きを考えれば、どんなに急いでも間に合いそうにない。相談した結果、引っ越しはゴールデンウィークに決めた。
 楽観主義者の雅志は、自分でも優柔不断な性格だと自覚している。要するに、美和が言うところの人生を舐めているタイプだ。しかし一度決断すれば、その行動は早い。三月に入ると、早速会社に退職する旨を伝えた。
 理由は、お決まりの一身上の都合にした。上司は、「君がいなくなると困る。考え直してはどうか」と、引き留めてくれた。正確に言うと、頭にとりあえずの一言が付く。だが雅志は、それをいいことに下請けとして仕事を回してくれるように頼み込んだ。
 心ならずも引き留めた手前、上司は複雑な表情を浮かべつつも渋々承諾してくれた。要するに、会社にとっては雅志がいなくても大した痛手にはならないのだ。現実を突きつけられると寂しい反面、移住を進める上での後押しとなった。
「いい別荘ができたよな。俺らの泊まれる部屋もあるんだろう?」
 同僚たちは、移住の話を聞いて単純に面白がっている。雅志が会社を辞める理由なんて、彼らには興味もないのだろう。美和は美和で、何かに取り憑かれたように超人的な働きぶりをしてくれた。勇仁の転校から転出、転入の手続き。マンションの解約や公共料金の支払いから各種の住所変更など、煩わしい手続きが山ほどある。そのほとんどを、一人でやってのけた。
 引っ越しは、四月の末に行われた。収納の少ない2DKのマンションとはいえ、荷物は四トントラックでたった一車。不必要な物を処分したことを差し引いても、こんなものなのかと思うほど少なかった。持ち物の量で、何かが計れるとも思わない。しかしここで暮らした思い出を考えると、複雑な心境だった。
 業者の作業員は、手慣れた手つきで次々に荷物をトラックへと積み込んでいく。空っぽになった部屋の中には、家具の位置を再現した壁紙の日焼け跡だけが残された。
「なんだか少し寂しいね」
 ぽつりと言った勇仁の言葉が、家族全員の心を代弁していた。もう引き返すことはできない。フローリングに付いた細かい傷だけが、この部屋で暮らした八年間の証だった。隣では、きつく唇を閉じた美和が勇仁の肩を後ろから抱いている。雅志は、そんな二人を誘ってベランダに出た。
 すぐ前の児童公園では、待ち構える母親の胸へと幼い子が歩みを進めていた。見慣れた景色に、様々な思い出が浮かんでは消える。勇仁の成長は、この木立に囲まれたその場所とともにあった。幼稚園の頃、ブランコから落ちて頭の上に七針縫う怪我をしたこと。小学生になって、日の暮れるまで自転車に乗る練習をしたのもこの場所だった。
 雅志には、何もかもが愛おしく思えた。おそらく、美和や勇仁もそれぞれの思い出を重ねながら、眺めているのだろう。何も語らなかったが、焼き付けるような目がそれを物語っていた。
「よし、池田一家の出陣じゃ」
 雅志はわざとふざけて言って、美和の肩に手を掛けた。ドアを閉め、最後の鍵を掛ける。カシャという聞き慣れた音が、いつまでも耳に残った。引っ越し先で運送会社と落ち合うのは、明後日の十時になっている。管理会社に寄ってマンションの鍵を返すと、理想郷と信じる新天地への長旅が始まった。

 役場では、山本が玄関まで出て待っていてくれた。
「ご苦労さま。疲れたでしょう」
「いろいろとお世話になりました。これからもよろしくお願いします」
 雅志と美和は、気の良さそうな笑顔で迎えてくれた山本に心から頭を下げた。
「荷物が着くのは、明日ですよね。今日は、旅館でゆっくりしますか。それとも、もう一度家を見ておきますか?」
 時計を見ると、まだ二時半を回ったところだった。八王子のマンションを出て十二時間。途中のサービスエリアで仮眠を取ったものの、疲れていないと言えば嘘になる。それでも引っ越しの前に、家の下見をしておきたかった。
「道が狭いから慣れないうちは気をつけてくださいね。人手が足らなかったら明日は土曜日だから、僕も手伝いに行きますよ」
 気持ちはうれしかったが、荷物もさほど多くない。手伝いを頼む必要もないだろうと、丁寧に断りを入れて車に乗り込んだ。役場から国道を十五分ほど北上し、吉野川を対岸に渡る。そこから少し川沿いに走ると、重厚な佇まいを残した谷相橋(たにあいばし)が見えてきた。神永地区とは、この対岸にある集落をいう。
 昨夜に降った雨の影響だろうか、低い位置に漂うような靄が掛かっていた。杉林と新緑の自然林が混在する斜面は、複雑な模様を描いている。深山幽谷とまではいかないが、都会の者から見れば秘境という雰囲気を醸し出していた。平文に着くと、青い帯にしか見えなかった空がパノラマのように広がる。それは、何度見ても感動する景色だった。
「幸ちゃんだ」
 勇仁の声が聞こえたかのように、遠くで畑仕事をしていた幸代が振り向いた。一家の車を見つけて、手ぬぐいを持った手を力一杯振っている。六十歳にもうすぐ届く、三十近くも年上の人に『さっちゃん』はないと思う。だがよく考えて見ると、この幸代が平文では一番歳が近いのだ。それに皆が呼んでいるのを聞いていると、この呼び方があの人には一番似合っているように思えた。
 車が家に着くと同時に、幸代が息を切らせて駆け上がって来てくれた。
「よう来たねえ。おばちゃんたちが家の中きれいに掃除しといたから、いつでも荷物は運び込めるぞね」
 早速家に入ってみると、中は文字通りピカピカに磨かれていた。夕方まで掛かって慌ただしく家具の配置を決め、部屋の使い方を話し合う。そうこうするうちにまだ引きずっていた不安は消えて、期待だけが膨らんでいた。

 2
 引っ越しの朝は、まさに雲一つない見事な快晴だった。四月の末とは思えぬほどの眩しいほどの光が、木々の生命を授けている。その新葉の緑は、膜を剥いだように新鮮な輝きを放っていた。目が覚めると早めに旅館で朝食を済ませ、すぐに平文へと向う。業者の来る時間まではまだ二時間以上あるが、幸代はもう家で待っていた。その横には、建設現場に行っているはずの良夫までいる。
「良兄さん、現場は土曜日でもあるんじゃないですか?」
「どうせお前らじゃ、まともなことはできんじゃろう。俺が後始末をするのも嫌じゃから、様子を見てやることにしたんじゃ」
 眉を顰めながらぶっきらぼうに言うと、良夫は庭の隅にしゃがみ込んだ。それから今では珍しくなった両切りの煙草出して、ゆっくりと火を点ける。きっと彼なりの照れ隠しなのだろう。旨そうに煙を吐きながら、その目はあらぬ方向を向いていた。
「わざわざ仕事を休んでもらわなくても……。荷物もそんなにないし、大丈夫ですよ」
「俺が邪魔か?」
 まなじりが突然針金のように尖り、雅志の方に向き直った。
「邪魔とかそんなんじゃなくて、おそらくすぐ終わると思いますよ。積み込む時も、運送業者が全部やってしまいましたから」
 良夫は機嫌損ねたのか、雅志に聞こえるほどの音を立てて舌打ちをした。それから乗ってきた軽トラに向かい、荷台から大きな剪定鋏を引っ張り出してくる。何を始めるのかと見ていると、勝手に庭の木を刈り始めた。
 引っ越しのトラックは、約束の時刻ちょうどに到着した。雅志と美和の指示を受けて、作業員たちは次々と指示された場所に荷物を下ろしていく。慌てて庭から戻った良夫をあざ笑うかのように、搬入はあっけなく終わった。しかしこの広い家には、四トントラック一杯くらいの荷物では物足らないようだ。荷物をすべて搬入しても、部屋の中はまだガラガラの状態だった。
 今夜の夕飯は、木内家が招待してくれるという。買い出しに行く時間もないし、雅志はその厚意に甘えることにした。美和と幸代は、早速運び込まれた段ボールを開けて整理を始めている。電気の配線を考える雅志の横で良夫は、熊のようにうろうろ歩き回っていた。そのうち勇仁を相手に遊び始め、暫くすると二人でどこかへ出掛けてしまった。
 夕方帰って来た良夫は、袋からたくさんの山菜を取り出した。タラの芽やゼンマイから始まり、見たこともない山草も入っている。中には、いかにも胡散臭い透明感のあるピンク色のキノコが混じっていた。
「それ、本当に食べられるんですか」
「馬鹿言うな。これはハナビラダケと言うて、酢の物にすりゃあ絶品じゃぞ。お前に喰わせてやろうと思って採ってきたが、嫌なら食べるな」
 雅志は、良夫からまた目くじらを立てて怒鳴られた。
 夫妻の家を訪れるのは、その日が初めてだった。庭には粗末な鶏小屋があり、中で三羽の鶏が忙しなく餌を啄んでいる。卵を採るだけではないようだ。一羽は立派なトサカを付けている。雅志が物珍しそうに覗いていると、良夫から声が掛かった。
「この鶏、どっか変わっとるとは思わんか」
 そう言われて念入りに観察するが、見たところ色も大きさも変わったところはない。勇仁でも知っている普通の鶏だった。餌箱を叩くコツコツという音だけが、絶え間なく響いている。これなら良夫の方がよっぽど変わっていると思ったが、それを口に出すわけにもいかない。雅志は適当に、「この辺で特産の地鶏ですか?」と答えてみた。
 それを聞いて良夫は、うれしそうに上から目線で解説を始めた。
「神永では、昔から音を出す生き物を嫌うんじゃ。特に鶏の雄は、朝になると大声で鳴く。だからここでは、雄が産まれると小さいうちに声帯を潰す。安徳天皇と一緒にここに逃げてきた平家の落人が、追っ手に居場所を悟られないように始めたと言われちょる」
 ここから雅志の家までは、さほど離れていない。言われてみれば、試しに泊まった時にも鶏の声は聞こえなかった。そんな話を聞くと、源造が言っていた伝説もまんざら嘘ではない気がしてくる。
 良夫の家では、鶏の他にも犬を飼っていた。眉毛の部分がマンガの両さんのように黒くなっていて、よく見ると飼い主に似ている。ハチベエという名前で、秋田犬の血の混ざった雑種だった。良夫が水戸黄門のうっかり八兵エが好きで、犬の名前もそこから取ったそうだ。老犬の部類に入るが、若い頃には腕利きの猟犬として活躍したらしい。
「ねえ良兄、ハチベエと散歩に行ってもいい?」
「かまわんが、もうすぐ暗くなるからあんまり遠くに行くなよ」
 マンション住まいのために動物は飼えなかったが、勇仁は生き物が大好きだった。了解を取り付けると、すぐにリードを取って外へ出る。大きなハチベエに引っ張られて歩く勇仁を、良夫は心配そうにいつまでも目で追っていた。

 一家がここに住み始めたことで、平文の景色は一変した。
 色を失いモノトーンとなっていた集落に、突然南風が吹き出した。晴れた日には、鮮やかな色の洗濯物がはためくようになる。老いるということは、何かを失うということらしい。住民たちは高台にある雅志の家を見上げ、久々の祭りのように心を弾ませた。
 そんな中、引っ越し早々奇妙な出来事も起こった。
 初孫が生まれたのがよほどうれしかったのだろう。八年前、雅志の両親から鯉のぼりが送られてくる。しかしマンションのベランダで揚げるには大きすぎ、ずっと押し入れで眠っていた。それが未整理だった荷物の中から出てきたことから、ようやく日の目を見ることになる。
「僕の鯉のぼり、元気がいいね」
 勇仁も大喜びで、感嘆の声を上げていた。
 しかし次の日に一家が買い物から帰ってくると、その鯉のぼりが降ろされていた。最初は、雨でも心配した誰かの親切心かと思った。しかし空を見上げても、振りそうな気配すらない。良夫に相談すると、その理由がようやく分かった。
「心配せんでええ。前に、鳴かない鶏の話をしたのを覚えちょるじゃろう。それと同じ理由で、ここでは目立つ物を嫌がる。昔は、竈(かまど)の煙にさえ気を遣ったらしいからな。誰かが気を利かして降ろしたんじゃ。特に悪気があるわけじゃない」
 そうは言われても、雅志には納得できなかった。仮に不快でも、直接言われた方がよほどすっきりする。それに今の時代、そんな古い因習を引きずる意味が理解できない。雅志は気になって近所の者に尋ねたが、結局誰がやったのかは分からなかった。
 少し生活が落ち着くと、美和は幸代に習いながら念願の家庭菜園を始めた。畑は予め、耕運機を持っている良夫が肥料を入れて耕しておいてくれた。トマトやナス、キュウリ、スイカの苗を農協で買って、少しずつ植えていく。麦わら帽子を被って首に掛けたタオルで汗を拭う姿も、いつの間にか様になっていた。
 しかし水田の方は、そう簡単ではなかった。雅志には農業の知識もないうえに、農機具も持っていない。どうしたものかと良夫に相談すると、いつものように無碍もなく怒鳴られた。
「阿呆か、百年早いわ。米づくりは、素人が簡単にできるほど甘もうない。お前などに耕作されたんじゃあ、立派な田んぼが可哀想じゃ」
 最初は萎縮した毒舌も、この頃には次の言葉を待つタイミングまで掴めていた。暫く困った顔をして黙っていると、案の上そっぽを向いていた目が雅志を探り始める。おそらくもう少しすると、助け船を出してくれるだろう。そう思って待っていると、良夫の口がおもむろに開いた。
「しゃあないのう。なあに、隣の俺の田と一緒にやりゃあ、大した手間じゃないわ。ド素人は俺を手伝いながら、ゆっくり覚えたらええ」
 もうすぐ始まる田植えや稲刈りを手伝うことで、一家の一年間の米は確保された。
 一方雅志は、前の会社から融通して貰った仕事を始めた。それ自体は、以前からやっていたシステム設計なのでパソコンさえあれば問題はない。しかし仕事柄、ある程度の纏まった時間集中する必要があった。
 当初は昼間にやっていたが、人の出入りが多く一向に捗らなかった。老人が多い平文では、ほとんどの人が現役から引退している。仕事といえば、家の周りでの畑仕事くらいだ。彼らにとって、まさに一家は異邦人だった。田舎特有の面倒見の良さから、次第に親切の押し売りが始まる。毎日のように、誰かが雅志の家を訪れた。米はもちろんのこと、野菜や息子から送られてきたというお菓子まで持って来てくれる。それを口実に、長い時間話し込むのが常だった。
 仕事を、夜型に切り替えてもみた。しかし夕方になると、酒の誘いがあった。それも大抵は、最も断りづらい良夫からだ。極力断っていたが、次第に周りのペースに引き込まれる。二ヶ月も経つと、雅志もいっぱしの朝方人間になっていた。日が落ちると仕事をする気が失せて、パソコンの前に座るのも億劫になってしまう。このまま自宅での仕事を続けるのは難しいと考えていた矢先、清水からの電話があった。
「夏休みは、関西の大学生が毎年何人か手伝いにくるから何とかなる。しかしシーズン前半の人手確保が手薄でね。それに学生は、毎年のように入れ替わるだろう。いちいち教えるのが大変なんだよ。住まいや食事も考えてあげなければならない。雅志君が手伝ってくれるならそんな心配もないし、閑なときには安心して撮影旅行に行ける。是非頼むよ」
 渡りに舟とは、このことだった。しかし今のところ、それを本業にするつもりはない。ここで暮らす以上、自給自足の生活をすることを基本にしたいとの思いもあった。
「できれば、毎年九月一杯までにしてください。稲刈りを手伝わないといけないし、逆に冬場はそんなに人はいらないんでしょう」
「そう言ってもらうと、俺の方も都合が良い。その代わり、仕事の閑な時は適当にカヌーをやってもらってもかまわないから」
 望外の言葉を受けて、雅志は給料の交渉もせずに決めてしまった。もともと、客商売が嫌いではない。そのうえ、好きなことを仕事にできるなら断る理由は何もなかった。
「いいわよねえ。私も雇ってくれないかしら。清水さんの店なら、給料なんて要らないのに。なんだっけ、売れている芸人と駆け出しの人を一緒にテレビに出すやつ。バーターだったかな。おまけで私もくっつけて雇ってくれないかな。ねえ、今度話してみてよ」
「そんなこと、言えるわけがないだろう。美和は雑誌の見過ぎだって。第一、俺は人気タレントでもないし、お前をカバーできるほどの力量はない。それにバーター取引って言うのは芸能用語じゃないぞ」
 羨ましそうな美和は、やっかみながらも賛成してくれた。
 一方、勇仁の順応は予想以上に早かった。初登校の日こそ雅志の車で送っていったものの、帰りは恭一と一緒に歩いて帰ってきた。日を追う毎に、表情も明るくなっていく。空気がきれいなせいもあるだろうが、喘息の発作も嘘のように出なくなっていた。
 何もかもが、怖いぐらい順風万端に進んでいた。そんな矢先、雅志は郵便受けの中に一枚の紙を見つける。無造作に二つ折りにされた何の変哲もない白い便箋が、底に張り付くように置かれていた。ここでの伝達手段に、文字が使われることはほとんどない。いつも顔を合わす者同士、よほどのことがない限り伝言で事が足りる。不吉な予感がして、取ろうとする手が一瞬だけ躊躇した。
 恐る恐る開いてみた。中には青いインクで、『死人が出んうちに帰れ』と書かれている。走り書きされた字はつたなく、所々震えていた。見ようによっては、子供の字のようにも見える。しかし平文には勇仁しかいない。ならば大人が、酒でも飲んで書いたのだろうか。あれこれ考えて見たが、思い当たる相手は浮かんでこなかった。
 それにしても、タチの悪いいたずらだった。美和に言うべきかと迷ったが、結局伝えないことに決めた。地元の人からすれば、雅志たちはよそ者だ。良く思わない者もいるかもしれない。しかしそれも、いつかは時が解決してくれる。具体的なことが書かれていない以上、家族にいらぬ不安を与えることはないだろう。それが雅志の出した結論だった。

 4
西日本を延びる中央構造線は、四国の北部を東西に貫く形で九州まで続いている。フォッサマグマを解明したナウマン博士は、これを『大中央裂線』と名付けた。さらにその南側には、御荷鉾(みかぶ)構造線、仏像構造線が並行して走り、四国を南北に大きく四分割している。この複雑な地質構造が、四国に西日本一、二位の標高を誇る石鎚山や剣山を造り出した。
 神永の三つの集落を繋ぐ三谷川は、御荷鉾構造線をなぞるように流れていた。平たく言うと、構造線とは断層のことだ。そのため両側の地層が擦れ合って、流域では破砕帯地すべりが発生しやすい。中でも平文はその典型で、土塊の移動が何千年も継続している。棚田を形成する美しいカーブは、その緩やかな地すべりよって形作られていた。
 四国山地に囲まれた豊山村は、深い森林が九割を占める。そんな中で平文は、まさに陽だまりだった。大空を舞う鳥から見れば、大地に咲いた一輪の向日葵のように見えるだろう。その花弁の中には、三日月形の棚田が太陽の光を奪い合うように犇(ひし)めいている。周りを飾るのが、モザイクにも見える石積みだった。微妙に色を違う何千個、何万個の石が、丁寧に積み重ねられている。先人たちは川や山から石を担ぎ、途方もない時間を掛けてこの棚田は築き上げていた。
 水入れの頃には、そこに上流の沢水が引かれる。上から順に何日も掛けて水が張られてゆく様は、まるで巨大なシャンペンタワーだった。オレンジの陽が差し込む朝夕には、無数の水面が黄金色に光り輝く。それは、今まで見たどんな絵画よりも美しかった。
 
 六月二十二日。テレビの天気予報は、この地方に久しぶりの傘マークを表示していた。今年は日照り続きで、農家は空梅雨(からつゆ)ではないかと囁き合うほど苦労している。この天気を恵みの雨と歓迎こそすれ、懸念する者はいなかった。
 日曜日の朝のまったりとした時間を、雅志は縁側柱に凭れて過ごしていた。空を見る限り、雨が降りそうな素振りすらない。しかしそれが昼前になって、微かな風とともに急速に雲行きが怪しくなってくる。近年めざましく当たり始めた天気予報も、その日は注意報さえ出していなかった。
 上空では、東シナ海からの暖かい空気が偏西風に乗って流れ込んでいた。やがてそれは、湿舌(しつぜつ)と呼ばれる長い舌の形を作りながら四国山地にぶつかる。姿なき台風と揶揄されるこの雨は、台風や低気圧のように強風を伴わない。それが、猛烈な勢いで豊山村の一点に降り注いだ。一時間に百十ミリを越える雨が神永を乳白色に包み込み、白い闇が視界を遮っていく。
 早い夕食を済ませた雅志は、一向に衰えそうにもない雨を雨戸の間から睨んでいた。ニュースでは山間部での豪雨を伝えたものの、その後の有力な情報はなかった。雨戸を締めた室内でも、屋根を叩く小気味の良い音で雨脚の強さが伝わる。こめかみを押さえられたような重苦しい気配が、蛍光灯の明かりを暗く感じさせていた。
 勇仁も、子供なりに何かを感じているのだろうか。口数も少なく、美和と二人でテレビを眺めていた。画面が、南国の海で戯れる若いカップルに切り変わる。番組を切り刻む無粋なコマーシャルが始まった瞬間、テレビと電灯が同時に切れた。「キャー」という美和の悲鳴に被さって、甲高い泣きそうな声が室内を走る。のっぺりとした闇は、わずか数メートルの離れていない家族の気配さえも遮断した。
「お父さん、怖い。どうしちゃったの」
「大丈夫。ただの停電だ。美和、蝋燭を出してくれ」
 そう言った後、雅志は声の方向を頼りに手探りで勇仁を探した。抱きしめた体は、怯えた子犬のように小刻みに震えていた。
「ごめん。蝋燭なんて用意してないわ」
 少し目が慣れたところで懐中電灯を探し出して、美和はスイッチを押した。しかし頼りない光を放つだけで、足下を照らすのがやっとだ。都会育ちの美和には、簡単に停電するような事態を想像できなかったらしい。予備の電池はないかと訊ねたが、買い置きもなかった。普段なら小言の一つでも言うところだが、こんな時にと雅志は思い留まった。
 停電は、家だけなのだろうか。雨戸を少し開けて、確かめようとした。しかし視界は激しい雨に遮られ、何も見えなかった。しばらく待ってみたが、雨は一向に止みそうにもない。それどころか、激しさを増しているように思えた。
「このじゃあ、何時間も保たないな。俺、良兄の所で蝋燭と電池を借りてくるわ」
「大丈夫? 危ないわよ」
「仕方ないだろ。俺だって行きたいわけじゃない」
 雅志は自分の口から出た言葉に含んだ毒に気づき、反応を横目で探った。美和も悪意を敏感に感じ取ったのか、珍しく言い返すこともない。無言で出された合羽は黴臭く、ひんやりと湿っていた。
「気を付けね」「お父さん、僕怖い。早く帰ってきてよ」
 二人の声に後押しされて扉を開けると、雅志が外へ足を踏み出した。屋根を伝う水は樋から溢れて、軒先にすだれを作っている。散弾のような雨粒がビニール合羽に突き刺さり、パシパシと乾いた音を立てていた。
 その時、地が割れるようなゴォーという爆音が真っ暗な空に響き渡った。若干遅れて足下が揺れた気がする。雅志は船酔いでもしたかのように平衡感覚を失い、思わずその場にしゃがみ込んだ。神永で、とんでもない何かが起きている。暗い胸騒ぎが、体の奥を突き抜けた。
 雨は途中の水路を溢れさせ、周囲の畑を飲み込んでいた。そこに架かる丸太橋も、ほとんど見えなくなっている。また遠くで、腹の底を震わす低い音の地響きが聞こえた。雅志は慎重に足下を確認しながら、やっとの思いで良夫の家までたどり着く。浮島となった飛び石を辿り、雨戸の閉まった戸を拳で力一杯叩いた。
 暫くするといつもの怒ったような低い声がして、遠慮がちに少し戸が開いた。
「どうした。美和に追い出されたか」
 酒臭い息を吐きながら、良夫がニヤリと笑う。
「良兄、蝋燭と電池の買い置きはないですかね」
「まあ、とりあえず入れ。俺の家の前で倒れられてもかなわん」
 雨戸の隙間から憎々しげに漆黒の空を睨むと、中に雅志を迎え入れてくれる。神棚と流しに置かれた蝋燭の明かりが、食卓の上の飲みかけの湯飲みを照らしていた。いつもは庭にいるハチベエも、さすがに今日は入ることを許されたようだ。土間の隅の方で、大きな体を精一杯丸めていた。
 用意する物を幸代に言いつけて、良夫は新しい湯飲みに酒を注いで差し出した。それを一気に飲み干すと、冷えた体内が一気に暖まっていく。まるで口から侵入した蛇が体内を動き回るような、不思議な感覚だった。良夫は、そんな雅志を黙って見つめていた。
「ところでさっき凄い地鳴りがしたんですよ」
 一息ついたところで、外の状況を説明した。
「この雨やと、土石流や土砂崩れも起こっちょるかも知れんぞ。雨が止んだら、道路や橋の点検に行かんといかんな。お前も手伝えよ」
 蝋燭の薄明かりの中で良兄の厳つい顔に暗い影を作り、不安そうに揺れていた。
「勇仁は、どうしゆうぞね。怖がっちょらあせんかね」
 幸代は、荷物を入れるビニール袋の隅にお菓子を詰めながら心配してくれる。長居をすると、帰る辛くなりそうだった。早々に礼を言うと、雅志は家路を急いだ。

 翌朝早く、雅志は電話の音で目を覚ました。昨夜からの雨は嘘のように止んでおり、静かな朝だった。美和が先に起き上がろうとしたが、手で制して受話器を取る。思った通り、良夫からの呼び出しだった。
「まだ寝よるんか、早う集会場へ来い。子供らが学校へ行く前に、皆で道を点検しちょかんといかん」
 眠気を吹き飛ばす槍のような一声を聞くと、否応なしに背骨が延びる。雅志は急いで身支度をして、集合場所へと向かった。まだ動き出しそうな雲の間には、所々に薄い青空も見える。澄み切った空気が、やけに心地よかった。遠くの方に目をやると、山肌にはいくつもの切り裂いたような赤茶色の傷が付いている。この状況を見る限り、かなりの被害が出ていることが予想された。
 神永地区では、集落毎に土木委員が置かれている。良夫は、五年前から平文の委員だった。災害等の発生に供えて、集落毎に点検範囲の分担が決まっている。ここは、上流の黒瀬から谷相橋までを担当だった。良夫はその指揮を任されているが、若い者がいないために人集めも大変らしい。それでも集会場には、もう四人ほどが集まっていた。
「杖谷から上流は、すぐ上の山滝で山が落ちちゅうきに、車じゃあ行けん」
「外ヶ谷の堰堤の建設現場では、重機が流されたらしいぞ」
 何人かは車やバイクを使って、もう偵察を終えているようだった。口々に自分の待っている情報を出し合っている。その真剣な表情からも、事の重大さが読み取れた。建設現場では、良夫も監督の指示に従って仕事をしていると聞く。しかしここでは、毅然とした態度で皆に仕事を割り当てていた。
「市さんは、杖谷までの道路の路側と山を点検してきてくれんかい。クヌギの木のあたりは前も崩れたことがあるから、細い亀裂も慎重に見ちょけよ」
「安夫は、平文の周辺じゃ。転石が多いき、気を付けんといかんぞ」
 自信を持って指示する態度が頼もしい。普段と違う丁寧な話し方が可笑しくもあるが、良夫にはこの方が似合っていた。
「雅志は、谷相橋までの道と橋の点検じゃ。水が多いから近くには行かれんぞ。遠くからじゃあよう見えんから、この双眼鏡を持って行け」
 良夫が、部屋の隅の棚に置かれていた分厚い牛革のケースを手渡す。家に帰ると、また少し雨が降り始めていた。まだ濡れている合羽に着て、軽トラに乗り込む。この四駆はここに来てすぐに中古で買ったが、今ではなくてはならない足になっていた。
 平文を出て、村道を三谷川沿いに走る。川底を覗き込むと、茶色く濁った水で驚くほど水位が上がっていた。根の付けたままの流木を飲み込んだ流れは巨岩にぶつかり、真っ白い飛沫を上げている。川縁には、昨日まではなかった大きな転石が方々に溜まっていた。
 流れてきた草が、立木に絡みついている。その高さから見ると、ピーク時の水位はあと三メートルほど上にあったはずだ。水面は激しく動き回り、とてつもないエネルギーを感じる。中からあり得ないような物が飛び出てきそうで、雅志は息苦しさを覚えていた。谷相橋までの村道を、斜面から落ちた石をスコップで除きながら進んで行く。小さな土砂の崩落や路面のひび割れはあるものの、通れないほどではなかった。
 車は、いつもより倍の時間を掛けて谷相橋の見える所まで辿り着いた。相変わらず、水位は今まで見たこともないほど高い。しかし、遠目で見る限りでは橋に変化はないようだ。雅志は、少し広くなっている路側に車を停めて橋の上に立った。
 四方を見回すが、どうやら一目で分かるような被害はなかった。注意深く点検をしながら、慎重に橋を渡る。上流側を見ようと回り込んだ時、微かな異変に気づいた。川の真ん中に一本だけある橋脚の水面近くに、黒い染みのようなものが見える。
 最初は、何かが引っかかっているのかと思った。だが、どこか違っている。胸騒ぎとともに、踵が浮くような不安が突き上げた。三十メートルほどの距離があり、肉眼ではよく見えない。良夫から渡された双眼鏡を思い出して、目に当ててみた。黒く見えたのは、コンクリートにできた穴のようだ。橋脚の大きさから推測すると四十センチ四方と思われる。その入口には、枯れ木のようなものが引っかかっていた。
 雅志は、双眼鏡のつまみを調節して倍率を上げてみた。徐々に大きくなって、白い棒が見えてくる。しかし最初は、それが何か分からなかった。最大になったところで、焦点を合わせると徐々に鮮明になっていく。そこへ現れたものに、雅志は息を呑んだ。
 水に濡れた人の腕の骨らしきものが、鈍く光っていた。コンクリートの表面から少し手首が飛び出して、手招きするかのように折れ曲がっている。穴は結構深く、出入りする濁水が苦しげに息をしていた。奥には、衣服だったと思われる赤茶けた布のような物も見える。雅志には、それが口の中で小刻みに揺れる爬虫類の舌に見えた。激しく動き回る水面のせいか、骨は手を振っているように揺れている。
 吐き気を催した雅志は、その場にしゃがみ込んだ。喉が渇いて、いつまでも足の震えが止まらない。全身の体毛逆立ち、その一本一本の先まで感覚が研ぎ澄まされて意識が分散されていく。ようやく建ち上がっても流れが岩に砕ける音だけが耳に響き、呆然と立ち尽くしていた。
 早く何とかしなくてはならないが、何をどうすれば良いのか。焦る気持ちだけが空回りして、雅志は冷静な判断を失っていた。落ち着かせようと深呼吸を繰り返すが、喉を通る空気を肺は思うように取り込めない。警察が先か、良夫への連絡が先か。躊躇っているうちに、ふと誰かの悪いいたずらかも知れないという思いが頭を掠める。どちらにしてももう一度だけ確かめておこうと、震える手で双眼鏡を操った。
 しかしどんなに目を凝らしても、視線の先に映るものは昔理科室で見た骸骨だった。

神の生まれる場所

執筆の狙い

作者 コウ
p3004-ipngnfx01kouchinwc.kochi.ocn.ne.jp

第九回アガサクリスティ賞の候補になったものですが、数年経ったので踏ん切りを付けるためにもここに出そうと思いました。
3章立て620枚もあるため、一括で転載できません。そのため今回は1章のみです。需要があれば2章、3章も追って投稿いたします。
長い上に方言も入っていて読みにくいとは思いますが、一人でも感想や意見をいただければ幸いです。よろしくお願いします。
尚、選評等は「アガサクリスティ賞」のHPから読むことができます。

コメント

夜の雨
ai209104.d.west.v6connect.net

第九回アガサクリスティ賞の最終選評読んできました。

5作品が残っていたわけですが、そのうちの2作品が抜けていたようですね。
特に穂波了さんの『月よりの代弁者』(月の落とし子、で出版)はかなりの評価でした。
この作者は第1回(2006年)のポプラ社小説大賞を受賞しています。賞金2000万円(笑)。
それ以後、第5回まで大賞の該当作なしということは、相当の実力者ということになります。

もう一人は折輝真透さんで、こちらも出版歴ありで『それ以上でも、それ以下でもない』の2作品が大賞に選ばれました。

それで、残りの3作品の選評を読むと、御作の「神の生まれる場所」は5作品中、3位ぐらいにつけていますね。
問題点もかなりわかりやすく書かれているように思いましたが。
選考委員の選評役に立ちます。


今回投稿されている第一章は原稿用紙113枚なので、明日までには読んで感想を書きます。

以上です。

u
opt-220-208-25-236.client.pikara.ne.jp

読みました

第九回アガサクリスティ賞の候補をうpありがとうございます
あたしミステリ好きなので大感ゲキ!!!!!!!!!!!!!!!!
よくぞUPしてくれましたコウさんwww
読みたいです最後まで!!!!!!!!

てか ここのサイト管理人わけワカメですーwww
昔は500枚まで投稿おk
ほんで100枚? になって
今はも少し長いものもおkミタイ
コロコロかわって節操がないwwwww
あたしとしては本作のようなものは一気に読んでみたい つまり最後まであげて欲しいわけですw

「四国三郎吉野川」が出てきます
そんで山村神永地区の設定が気になったわけでして(無論作者さん設定の架空でしょうけど)高知なのか徳島なのか? (吉野川高知徳島どちらも流れてる源流たどれば愛媛までいくかも?)
徳島県祖谷には平家落人伝説があります また大歩危にはカヌーに適したスポットあり
>方言も入っていて読みにくい
いえいえ読みにくくはございません 土佐弁に近いかなーなんて? 阿波弁じゃないんだーミタイナwww

本作での登場人物把握できたのは主人公家族3人 良兄夫妻 ショップの清水です
殺人事件? にはここらが絡むんでしょうね?www

プロローグ
家族iターンしたのにまた都会に帰っているのか? そこらへんが気になります
続きあげてね




 

コウ
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夜の雨様

返信ありがとうございました。
いろいろと調べていただいたようで、恐縮です。
感想をお待ちしています。

コウ
opt-219-106-162-152.client.pikara.ne.jp

u様
読んでくださり、ありがとうございます。
500枚以上大丈夫なのですね。だった次回、需要があれば一括であげます。
ごめんなさい、今
外で飲んでいて、スマホで。

コウ
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uさまま

明日返信させていただきます。

夜の雨
ai199133.d.west.v6connect.net

導入部というか、主人公の池田が四国の川下りで「豊山村」が村人を募っていることを知り、役場の担当者と話して心ははや豊山村の住人というところまで読みました。
ここまでで気が付いた事は、文章は読ませるモノになっていますね。
それから人物も描き方がうまいので、個性がよくわかります。

池田の妻である「美和」が魅力的に描かれていました。
『私の分も楽しんできてね』というところがよいです。伏線を張っておいてからの落とし方なので生きますね。
ほかの人物もよいので、読んでいて苦になりません。
この文章と人物、それにテンポとか流れだと、長編でも読めそうです。

それで、池田の家族がこのあと「豊山村」に都会から引っ越ししてきてから、殺人事件が起きるのですよね。
これは、先の展開が楽しみです。

この導入部は、不満はありません、よく書けていました。
森田が急に登場しなくなったことぐらいでしょうか、違和感といえば。


一応選考委員が、取り上げている問題点は注意しながら読みますが、それは御作をラストまで読まないと、わかりませんよね。

それでは、引き続き、読んでみます。

夜の雨
ai195155.d.west.v6connect.net

「神の生まれる場所」読みました。


3章立て620枚あるということで今回は第一章の113枚を読みました。
ラスト近くまでの世界観はヒューマンドラマという作りのように感じましたが。
「鯉のぼり」を無断で降ろされたりするあたりから、「いやらしさ」みたいなものが見え始めました。
「壇ノ浦の難を逃れた安徳天皇がこの平文に行宮を構えた」ので、追手が近づくような「目立つもの」を嫌ったのかもしれないとか、背景が時代を越えたところにある因縁がタイトルにある「神の生まれる場所」と関係しているのかとか、想像が膨らみます。
三章のラストで豪雨から山道を点検している主人公の「雅志(池田)」が橋脚に引っかかっている骨のようなものを見つけるところで、これまでのヒューマンドラマがいよいよミステリーに展開かと本題が盛り上がるところで続きになりました。

人物がよく描かれているのとエピソードがしっかりと書きこまれていて、どっぷりと作品世界に浸ることが出来ます。
背景とかもじっくりと書かれているので、全体では丁重に練り込んであるなぁという感じです。
郵便受けの底に置かれた『死人が出んうちに帰れ』という青いインクの走り書き、なども伏線としてよいですね。


これだけ作りこまれていれば、読み応えがあります。
それでは、続きをよろしく。

コウ
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u様

昨日は途中ですみませんでした。
四国に詳しいようですね。もしかして出身ですか?
舞台となる場所は何度か下見に行って、自分の中では特定しています。でも殺人事件が起こるわけですので、そのまま書くわけにはいかない。興味があるのなら、ヒントは面積や人口です。

読みにくくなかったそうで、良かったです。

>本作での登場人物把握できたのは主人公家族3人 良兄夫妻 ショップの清水です
>殺人事件? にはここらが絡むんでしょうね?www

楽しみにしていてください。

コウ
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夜の雨様

真っ先にコメントを入れてくれたうえ、丁寧な感想をありがとうございます。

>人物がよく描かれているのとエピソードがしっかりと書きこまれていて、どっぷりと作品世界に浸ることが出来ます。
>背景とかもじっくりと書かれているので、全体では丁重に練り込んであるなぁという感じです。

素直にうれしいです。
しかし選評をいただき、改めて読み返してみると反省点もたくさんあります。
第1章では、

まず事件が起こるのが遅い。
ミステリーの基本は、できるだけ早く事件を起こして読者の興味を惹くこととよく言われます。拙作では100枚以上も掛かっています。しかも出てきた死体が事件に結びつくかは微妙。もう少し工夫すべきだったと思っています。

二つ目は、読者に媚びている。
冒頭で読むのを止められるのが怖くて、変なサービス精神を出して文章が柔らかくなりすぎている。2章、3章と進み話がシリアスになっていくと、違和感を感じるのではないでしょうか。入り口は広く、その後は深く狭くと考えていましたが、うまく機能していないかもしれません。

本作は、基本三人称で書いています。しかしこの後、意図的に1人称や神視点も使っています。選評ではこの部分には触れられていませんが、はたしてどうだったか……
この先も読んでくれるのであれば、このあたりについてもコメントを頂ければ幸いです。

ありがとうございました。

地蔵
KD111239155117.au-net.ne.jp

思ったことを逐次的に書いて行きます。

プロローグでは既視感バリバリのいまだ因習の残る謎めいた日本の山村が舞台であることが明かされます。この時点でいろいろと思う人は多いと思います。ひとつ言えることは最初にやった人は立派ということで、私はミステリに詳しくないですが、津山三十人殺しに着想を得て『八つ墓村』を書いた横溝正史がこのスタイルのミステリのオリジナルのような気がしますが、それの亜流感がどうしても出てしまう。読んだことはないですけど最近の作品で『ひぐらしのなく頃に』というのがありますが、あれも同じスタイルを踏襲していて、あれはあれで人気が出て評価されましたので、模倣というよりはもうそういうミステリのジャンルが確立していて、様々なスタイルがある中でそれ(因習の残るミステリアスな山村のジャンル)を選び取っただけと見なされたのかもしれません。そういう意味では御作も問題ないのかもしれませんが、自分が選考委員なら新人の作品を読む時には話の型が今までに見たことのない新しいものであることを期待すると思います。因習の残る山村が出て来た時点で「ああ、あの類いのやつか」と落胆すると思います。たぶん同じ作風の投稿作がいっぱいあると思うんです。でもパイオニアになるのが一番難しいので、すごく無理な要求をしていることもわかります。

文章上手いです。読みやすい。ただ、事件が起こらないので退屈ですね。文章上手いから読めますけど退屈です。説明パートがずっと続く感じ。映画とかだと制作者に観客の「飽き」に対する恐怖心みたいなものがあって、とにかく飽きさせないようにあの手この手の工夫をしますが、そこへ行くと御作はちょっとのんびりしているというか危機感が足りないような気がします。冒頭で人の心をガッと掴むような場面を見せたりすると思うんです、映画の場合。インサイティングインシデント(ツカミ)と言うそうですが、何であれツカミは大事だと思いますね。必ずそういうもの(外連味たっぷりの冒頭の驚き)がないとダメだとは思いませんけど、話の「目的地」を早めに見せて欲しいというのはあります(誤解のないように言っておきますが、ツカミ=目的地ではありません。ツカミは事件の中の一場面であり感覚に訴えるものです)。どんな物語も「何か」を巡って話が進行するわけで、それを早めに見せて欲しい。プロローグもちょっと気になります。村の連中がおかしいってことを軽くネタバレしてますね。その村からほうほうの体で逃げた主人公家族が無事だったことも明かされています。冒頭に全てが終わった後の当事者の述懐みたいなものを入れるより、出来事を描いた方が良いような気がします。解釈を加えずに、謎めいた、読者の興味を引くような出来事を描く。時間の流れを前後させて。そこは読者に対して親切である必要はないと思うんです。引きを作れさえすれば良いので。解説めいたものを入れるとダメだと思いますね。あと気になるのはプロローグで
>神永での日々を総括する必要があると思う。
と一人称の形式で主人公の意図が語られるわけですが、第一章からは三人称で叙述される点。三人称で叙述するなら軽いネタバレありのプロローグの主人公の言葉は必要ないのでは? と思いますね。第一章以降、全編を通して主人公の手記という形で一人称の形式で書かれるなら、その決意表明(なぜそんなものを書いたかという理由の説明)としてのプロローグの言葉は意味があったかもしれませんが(しかしもちろん必須ではありません)。Wikiによると『八つ墓村』は冒頭が作者自身の言葉、作品の本体部分が主人公の回想手記の形で書かれているそうです。こういうのはわかりやすいと思います。事件の当事者ではない作者がたまたまどこかで手記を入手して…という体裁ですね。作者としては、特に異様な世界を描く場合に特にそうですが、作者の人間と地続きの言葉で作品を語りたくないという欲求が生じるのは理解できます。バッファをひとつ噛ませたいのです。しかし逆のパターンはあまり見かけないですし、意図がよくわからないですね。

すみません、長くなりそうなのでこの辺で失礼します。続きは書くかもしれませんし書かないかもしれません。作品にがっかりしたからではなく(現時点で読了してませんので)私的な時間の配分の問題です。あしからず。

コウ
opt-219-106-162-152.client.pikara.ne.jp

地蔵様

感想をありがとうございます。

書かれている一つ一つが、選評で指摘されたことと自らの反省点を的確に指摘しているように思います。
>津山三十人殺しに着想を得て『八つ墓村』を書いた横溝正史がこのスタイルのミステリのオリジナルのような気がしますが、それの亜流感がどうしても出てしまう。

これがミステリマガジンの清水編集長曰く、「新奇性が欲しい」なのでしょう。
恥ずかしい話ですが、告白します。実は本作は横溝正史賞に出そうと思って書きました。(顔真っ赤
しかし書き終わった時点で700枚になっていました。その賞は600枚まで。短時間でそこまで削れそうもなかったため、アガサに応募した次第です。


>文章上手いです。読みやすい。
有難うございます。これについては、鴻巣先生からも褒めていただきました。読みやすい文章を常に心がけています。

>冒頭で人の心をガッと掴むような場面を見せたりすると思うんです、映画の場合。インサイティングインシデント(ツカミ)と言うそうですが、何であれツカミは大事だと思いますね。

そうですよね。
上にも書いていますが、反省点です。

>>神永での日々を総括する必要があると思う。
>と一人称の形式で主人公の意図が語られるわけですが、第一章からは三人称で叙述される点。三人称で叙述するなら軽いネタバレありのプロローグの主人公の言葉は必要ないのでは? と思いますね。

これも、エピローグにつながる複線のつもりであえて入れました。でも上で書いたように視点を変えることの是非については、自分でもよくわかりません。

ちなみに拙作に
「『神の生まれる場所』は小説に対する真摯な取り組み方には好感を持った。しかし、タイトルの重さのわりには、重厚感の希薄な作品で、過不足なくまとめたが、ぐっと迫ってくるものが感じられなかった。何かが足りないのである。その何かは書き手の中から滲み出てくるもののような気がする」
と講評された直木賞作家の藤田宜永先生は、発言後数カ月で亡くなりました。ちなみに私は、何の関与もしておりません。

できましたら、今後もご指導よろしくお願いします。

どばと
118-105-225-227.area2b.commufa.jp

すごくおもしろいです。

皆さんみたいにいいコメントは書けないと思いますが、是非続きを読ませていただきたいです。よろしくおねがいします。

いかめんたい
softbank060111225156.bbtec.net

拝読しました。貴重なものを読ませていただき、ありがとうございました。続きも楽しみにしております。
小説の評価などとは関係のない視点から一つだけ、気になったことを書かせていただきます。
主人公はカヌーで川下りをするために八王子からわざわざ四万十川まで遠征するのですが、彼はどんなカヌーに乗っていたのかが、とても気になりました。
冒険で川下りとくれば、真っ先に思い浮かべるのはカナディアンカヌーです。車はランクルですし、そのくらい所有していてもおかしくはないのですが、賃貸マンションでは流石に厳しい気がします。引っ越しも4トントラック一台で済んだと言っていますし。そうすると、フォールディング(折りたたみ式)か、インフレータブル(ゴムボート)か、と思うのですが、そこらへんの記述(どんなカヌー、あるいはカヤックで、どうやって現地まで運び、どう組み立て、どんなふうに下ったのか)が、欲しいと思いました。
また、友達と二人で車一台で何度も川下りしたことになっていますが、これもちょっと厳しい気がします。海まで下って、スタート地点まで戻るには、通常は車が二台必要です。車一台の場合には、自転車やバイク、公共交通機関の利用などが必要になります。それで何度も下るというのも想定しづらいですし、川を下る最中の描写もないし、個人的にはそんなところが気になりました。
読ませていただき、ありがとうございました。

夜の雨
ai215164.d.west.v6connect.net

視点を変えることの意味。

プロローグですが、これは主人公の「雅志」の一人称で神永から無事帰って早半年が過ぎたということになっていますが、「実は、そうではなくて雅志は現在も事件の闇の中をさまよっている」という「ラスト(三人称)に出来ます」。
現場(神永)で妻の美和や息子の勇仁を失った(亡くなった、または監禁されて半死に状態)あまり精神が崩壊して雅志が後悔のあまり無事東京に家族ともども逃げ帰った夢を見ている、という展開が可能。
もちろん美和や勇仁が無事で雅志だけが精神崩壊の状況にいるということも可能です。

●そうなると、導入部の「プロローグ」を読んでいる読者は「プロローグ」がラスト(三人称)の中の世界だったということを知り、恐怖(後味が悪い)を感じながら読み終えることになると思います。

現状の御作の「プロローグ」だと、無事現場(神永)を脱出したことになっています。
実際はラスト(三人称)で雅志が逃げられない状態で精神が崩壊して自分に都合の良い夢を見ている「それが一人称の『プロローグ』の意味。

ということにすれば導入部の「プロローグ」は、ラストの伏線ということになります。

具体的に書くと、ラストで導入部の「プロローグ」で主人公の雅志が「言っている事」、「感じている事」を三人称視点で客観的に書く。
そこには第三者である「神」がいるかもしれないし、いろいろな状況の中に雅志が置かれていることが可能になる。


以上。

柔らかい月
n219100087087.nct9.ne.jp

ささーっと流し見して・・

文量がとても長いもんで、致し方ないことなんですが、序盤にしては校正が行き届いていなくて、「誤字・誤記・脱字・誤変換」ってなのがちょこちょこ放置されてる。
そこに出くわすごとに軽く引っかかって「流れ」を阻害する。
(自分で書いてても、たかだか100枚程度でも「序盤はどうしても校正が甘くなる」もんで、気持ちはよく分かるんですが……)

一例をあげると、最初にカヌー川下りが話題にのぼるところで「パドル」が「バトル」になってた。



「子供連れてど田舎・限界集落に移住」設定で、立派な古民家に畑と田んぼ付きだと、脳内映像がどうも『おおかみ子供の雨と雪』的になってしまって。。
そうなる原因は「田んぼも三反歩」設定。

群馬や新潟で三反だと、「大きく平たい田んぼ」なんだけど、山あいの平家落人集落とかは「棚田」なんで、
棚田なら棚田で、はじめの方の説明に書いといた方が読者親切。


主人公の「推察される年齢」も、苗字が「池田」であることも、結構後出しになってるし、
主人公が物語開始時点では「東京在住」で「八王子」であることは、まったく書かれてない。
冒頭のプロローグで「都会に戻って」って一言があるから、作者は「当然東京!」って意識でいるんだけど、
神奈川(横浜)あたりでも「都会」だし、
舞台が四国なんだったら、東京よりまず【大阪】が近所にありますし??


そもそも、「8月にぽんと1週間の長期休暇が、指定した日程ですぐ取れてしまう主人公の職種」が書かれていなかったんで、
「村の下見」的に冒険サークル友達と「現地訪問」してる間じゅう、とにかくもやもやしてた。




>安徳天皇は、壇ノ浦の戦いで幼くして崩御した悲運の天皇として知られている。しかし戦乱を逃れて生き延びたという説も、根強く残っていた。

まで、さーっと見たんですけど・・


「そこまで」では、まず「事件がなんも起きてない」んで、《ただの妄想予想》にすぎないんですが、、、
(いちおう 半下げ?)

















主人公息子の「勇仁」は、安徳天皇の生まれ変わりで、
この村では代々の「生まれ変わり皇子」をイキガミ様的に崇めていた。
「雨の叢雲の剣」ここにある限り、「ここが正統な朝廷だ!」とかとか。

「平文」って言うのは、「自分らが平家であることを決して忘れない」誓いの地名。


雨の叢雲の剣は、その巫力で「安徳天皇の生まれ変わり」を、この地に引き寄せてきた。
生まれ変わり様には、身体に一目瞭然な「特徴的な痣」があり、
名前には「仁」の文字が入っている。


そのおかげで、「勇仁」がその生まれ変わりであることは、最前から見当がついていた??

元の学校で唐突にいじめっぽいことされて移住に追い込まれたのも、村関係者で家主である「小学校校長」が手を回してた結果??

校長、四国出身だのに、大学は「東京」設定だもん。
(県外に出るにしても、近場に「大阪・京都」があんのに、東京の大学で「研究してた」らしいんだもん。彼の手下となる「教え子」は東京各地の学校に大勢赴任してんじゃないだろうか??)


で、そもそも同窓会で「川下り」持ち出して「四万十行き」に仕向けた森田もグルな可能性が、現時点では高い?
「スプラッシュ」で移住募集の貼り紙が、主人公の目に入るように工作したのも、森田とオーナー。
移住の話聞きに、主人公一人で役場に向かってた時に、森田はスプラッシュオーナーと二人でその場に残ってたし。



《当代の安徳天皇生まれ変わり:勇仁》が、無事村に取り込まれたことで、
《先代の生まれ変わり様》は、お払い箱に??
それが「平文」の、何百年も守られてきたしきたり。。




憶測です。憶測。




ええと、、、完全に余計ごとなんですが、

うちの近所に「平家落人の村」が実際あって、『そのうち書こう』とずっと思ってんです。

義経は平泉にゆく際、うちの県内を通過して、ワタシの実家の町で「休憩」してる。
静御前の墓もうちの県内にある。

この前、「短編でその村に軽く言及してみた」んだけど、うまいことゆかず、浅〜く散漫になって、、、
『もうちょい長く伸ばして、しっかり書く』つもりなんだけど、

それが出来た暁に『コウさんのコレ見て、考えたに違いない』って言われたくない。。。

柔らかい月
n219100087087.nct9.ne.jp

↑ って書いてて・・


「北の平泉」、「西の平文」とかなんかなー??

ミイラとか即身仏とか作ってたり???

(平泉の金色堂には藤原三代のミイラがある、って話じゃなかったでしたっけ??)



崖に「投入堂」とか、山の中腹にちょうどいい窪みとかがあって、

生まれ変わり様は、「代替わり」の時が来ると、強制的にミイラ化されてたり???






そんで、
本作にも「縄文」「フォッサマグナ」って記載があったんだけども、

ワタシの近所の平家落人村は、縄文土器のメッカにあるんです。。
で、フォッサマグナと言えば〜の「糸魚川」はうちの県内。

↑ なので、ワタシが書いてるやつ小説にも両者が出てきますけど、「それは必然」。。

5150
5.102.16.93

拝読しました。

勇仁君がどう巻き込まれるのか、何かを起こすのか、変化が起きるのか、このあたりがけっこう気になりました。この土地に来たことがあると言い出す。喘息持ちでもありますし、繊細そうな性格でもありますね。そこらを作者さんがどう生かすのか。

勇仁君が何かに関わってゆくなら、まだ小学生なので当然雅志と美和の二人に大きく影響を与えるわけで、そのあたりがどういう展開を見せるのか、個人的に楽しみであり、目をつけた箇所になります。住人も今のところ、みな優しいですが、この後は……。

御作の展開からは、トリックや殺人に重心があるものではなく、人間の闇の部分が因習と関わって犯罪がもたらされるタイプの作品なのかな、と想像してみたり。ミステリーらしい部分と人間ドラマの部分がどういうバランスで作品に散りばめているのか、一作者としてすごく興味があります。場合によっては、ホラーっぽい箇所もあるかも、なんて。

プロローグから察するに、上の方も書いていましたが、やはり横溝正史の一連の作品が頭を掠めます。この後家族はじわじわと何かに追い詰められて、やがて事件が起こるのかな、と。いわゆるミステリーの「魅惑的な謎・謎らしい謎」は出てこなさそうな感じですが、そのあたりはどうでしょうか。ここまでに伏線は入っているのでしょうかね。森田は絡んでいくのかな。自分としては、人間ドラマに注視していきたいです。ミステリーって、書くテクニックの部分が大きいジャンルのような気がするので、そこらへんもまた気になりますが。このサイトって、ミステリーほとんどあがらないですし。

続きを上げられるのを楽しみに待っております。最終まで残った作品が読めて、しかも作者さんの生の声が聞ける。他の読者の感想を見ることができる。いろいろと勉強できる機会ですので嬉しいです。なお、選考委員の選評は、作品を読んだ後の楽しみにしておくことにします(笑)。ありがとうございました。

コウ
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どばと様
初めまして。

>皆さんみたいにいいコメントは書けないと思いますが、是非続きを読ませていただきたいです。よろしくおねがいします。

いえいえ。どんな気の利いた言葉よりも、作者にとってはその「面白かった」一言がうれしいものですよ。しかも続きが読みたいと言ううことで、もうお腹いっぱいです。

どうもありがとうございました。

コウ
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いかめんたい様

そこにきましたか。(汗
カヌーや川下りに詳しい方ですね。実のところ私は、1回だけやったことがある全くの素人です。

>冒険で川下りとくれば、真っ先に思い浮かべるのはカナディアンカヌーです。車はランクルですし、そのくらい所有していてもおかしくはないのですが、賃貸マンションでは流石に厳しい気がします。引っ越しも4トントラック一台で済んだと言っていますし。そうすると、フォールディング(折りたたみ式)か、インフレータブル(ゴムボート)か、と思うのですが、そこらへんの記述(どんなカヌー、あるいはカヤックで、どうやって現地まで運び、どう組み立て、どんなふうに下ったのか)が、欲しいと思いました。

お恥ずかしい話ですが、カナディアンカヌーについても今ネットで調べた程度です。ですから詳しいことは書けませんでした。おそらく趣味にしている方からすると、おっしゃる通りなのでしょう。
四万十川の「カヌー館」ではレンタルや輸送輸送サービスがあるとのことでしたので、あまり深く考えませんでした。すみません。

>また、友達と二人で車一台で何度も川下りしたことになっていますが、これもちょっと厳しい気がします。

これもネット情報から安易に書きました。
「距離は約12キロ。時間的には、3時間くらいです」
この文言をもとに、じゃあ1日2~3回くらいはできると仮定して数日間だから何度もと……
もう少し調べてから書くべきでした。

それと期待をされていればがっかりするので先に言います。今後もカヌーに関する詳しい描写は出てきません。
でもよかったら、この先も読んでください。

ありがとうございました。

コウ
opt-125-215-99-172.client.pikara.ne.jp

夜の雨様

詳しい解説を読んで、少し頭が整理できたような気がします。

再訪、ありがとうございます。

コウ
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出たな妖怪! 冗談です。ごめんなさい。

柔らかい月様
流し見でもうれしいですよ。

>文量がとても長いもんで、致し方ないことなんですが、序盤にしては校正が行き届いていなくて、「誤字・誤記・脱字・誤変換」ってなのがちょこちょこ放置されてる。

推敲はしたつもりでしたが、甘かったですね。これに関しては言い訳もできません。

主人公のディテールが冒頭で示されていないとのご指摘。
これに関しては、難しい問題ですね。あまり冒頭に詰め込むと説明になりやすく、話が動かない。多くの方々が違和感を感じたのであれば、再考したいと思います。
あと、四国から都会と言えば、大阪、京都だろうというご指摘。
月さんがおいくつか知りませんが、今の時代そんなこともないですよ。東京まで飛行機で1時間。それに雅史と美和との会話を読んでも想像がつくと考えました。それに校長の年代でも普通に東京の大学に行っています。私の中では、「東京学芸大をイメージしていました。」


それ以下の憶測も素晴らしいですね。できれば冒頭を月さんに見てもらって、ストーリーを考えてもらえばよかったです。
ここに長々と書き込む意図も意味も、私には分かりませんが……

>ワタシが書いてるやつ小説にも両者が出てきますけど、「それは必然」。。
月さんは新潟県の方ですか。食べ物がおいしい良いところですね。月さんも同じような舞台で小説を書いているとのこと。その作品が書籍となって読めることを期待しています。

「月は自ら輝かない」そんな言葉を思い出しました。ですから月さんが小説を書いていることは意外でした。

どうもありがとうございました。

柔らかい月
n219100087087.nct9.ne.jp

>私の中では、「東京学芸大をイメージしていました。」

↑ それ「分かってた」んですよー。

書くと『知ったかぶり〜』と揶揄される、ワタシにだけ異常にキツいサイトだもんで、遠慮したけど。。


主人公の居住地「八王子」だし、
東京の大学で「小学校教諭」だもん。

学芸大か、『ゲゲゲの女房』長女の卒業校で、校長の頭脳的には、前者であろう、と。



>「月は自ら輝かない」そんな言葉を思い出しました。ですから月さんが小説を書いていることは意外でした。

↑ 「長いもんは無理」なんで、たまに「短いもん」書いてるんです。





あと、《四国から見たら、そこに大阪があるよね?》問題ですけど、

前にここのサイトの人で、
《四国から出発して、広島に行って、京都まで新幹線に乗って、そこからサンダーバードで金沢へ〜》って書いてた人がいて、

「なんで大阪に行かないのでしょう?? まず大阪へ行って、そこからサンダーバードに乗れば、金沢直中なのに……」
と指摘した。


その時にも思ったんですが、『ここのサイトの人はとかく、大阪を失念する。度外視しがち』。


この小説で、大阪を完全度外視されると『???』とちょっと引っかかるのは、
【東京には八王子があるけど、大阪には四天王寺があるよなー……】だから。


「仁義礼智」ってフレーズが意味深に書き込まれてたから、そこから誰もが連想するのが【四】であり【八】。
でもって、【王子】を地名に持ってる場所には「似たような謂れ」があったりもする。小説的には。

柔らかい月
n219100087087.nct9.ne.jp

>ここに長々と書き込む意図も意味も、私には分かりませんが……


それは、姿の見えない超陰湿・腐れ果て外野からの「パクリだ〜!!」ってー 言われなき誹謗中傷を「受けがち」な理不尽環境だから。。


短編公募に出してて、「ここのサイトの人と素材がかぶってた」ことが、これまでに何度もあって、
それは「同じ回に出してたその人の作を、ここに上げてもらったから分かった」んですけど、

『別の回だったらまあ、「そうかー」でしかないんだけど、、なんで同じ回かね??』と。


それが一度や二度ではないのです。


一例をあげると、
北条さんって人が「江戸時代の襖絵師が、孔雀の絵を描く」話を出してた回の、ワタシの方の末端入賞作も「襖絵師が絵を描く話」で、冒頭が「江戸時代の名匠の孔雀の襖絵」。


もうピンポイントで、かぶる。『なんでやねん??』と。


そういうのが、過去に何回かあって、、、

襖絵の話でかぶった時と、カメラの話でかぶった時は、たまたま【応募回までまったく一緒だった】のと、
作品集に収録してもらったもんで「私のが、ここのサイトのUP見て・後から書いたパクリではない! ことは、そこで証明されてる」んだけど、


「そうじゃないケース」だと(当然、その方が普通で、多くなる訳なんだけど)
もう声高に《パクリだー!!》と 執拗〜〜に理不尽に喧伝、いつまでも長々「一方的に誹謗中傷」されまくるサイト!! なんで。

柔らかい月
n219100087087.nct9.ne.jp

んで、さらに「よけいごと追記」して申し訳ないのですが、



《序盤時点での、一読者であるワタシの脳内妄想》を書いてるのは、

ワタシはもともと「推理系連ドラの感想と、そこから予想されること&妄想展開を、手短に呟いてきた」人間で、

近年だと、T東野圭吾原作『危険なヴィーナス』とか、2話目冒頭時点で真犯人と「真の動機」、作者のミスリード〜ミスティフィカシオンも、まるっと分かって、言い当てた。

その後番組の『天国と地獄』ん時は、ミステリー作家じゃない脚本家に振り回されて、、余計な横道に分け入りかけたけど、途中で「原点」に立ち戻って、「結構いい線」で行けてた・・と思う。



ミステリー視聴者&読者って、【そういうもん】で・・

「提示されてる範囲(そこまで)でありえる展開」が、読みながらリアタイで「数パターン」、頭の中でシミュレートが走る。

さらに読んでって「作者に追加された情報」で、「除外される線」を振るい落としてゆく。
そういう作業。



なので、
《ベタ鉄板から、大穴。トンデモ予想、ワクテカ展開。読み手の願望路線まで 妄想し放題で、よりどりみどり揃ってる》
のは「序盤」(ドラマだったら第1回のラスト)。



「そこの時点での予想」あげといて、
3話・4話……と話が進むにつれて、追加で出た情報を「検証」、可能性除外〜軌道修正、「新たな線」を検討したり……
ってことを、ゆるくやってる。

そういうのがミステリ読者の醍醐味で、視聴者の愉しみ。(頭の体操)



「アンフェァな超展開が、力技で無理やり炸裂!」だの「大方の視聴者の予想と希望を、大幅に裏切る悲惨どんでん返し」だのが来ちゃうと、
ため息つきながら感想欄で「反省会」「検討会」になるんだけど、
それもミステリー。



ことミステリについては、「原稿に書かれてあることがすべてではなく」
「読者が推理を進めてゆく過程」と「読者の納得・満足度」が 結構大事・・だと思う。



よけいごとでした。

コウ
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5150さま

>御作の展開からは、トリックや殺人に重心があるものではなく、人間の闇の部分が因習と関わって犯罪がもたらされるタイプの作品なのかな、と想像してみたり。ミステリーらしい部分と人間ドラマの部分がどういうバランスで作品に散りばめているのか、一作者としてすごく興味があります。場合によっては、ホラーっぽい箇所もあるかも、なんて。


そうですね。本作は、間違いなく本格的ミステリーではありません。鮎川哲也、都筑道夫、綾辻行人のようなものは私には書けないし、好みではありません。どちらかというと、横山秀夫のように人の心の動きが感じられる作品を好みます。何より単純な人間で、時々ネット小説で泣いていると妻から笑われます。

セガサクリスティ賞は、
「本賞は、本格ミステリをはじめ、冒険小説、スパイ小説、サスペンスなど、アガサ・クリスティーの伝統を現代に受け継ぎ、発展、進化させる総合的なミステリ小説を対象とし、新人作家の発掘と育成を目的とするものです」だそうです。
あまり知られていませんが、アガサクリスティってメアリ・ウェストマコット名義で推理小説以外の人を描いた作品も結構残しているんですよ。
ですから私は、そっちのほうに寄ってみました。

>続きを上げられるのを楽しみに待っております。最終まで残った作品が読めて、しかも作者さんの生の声が聞ける。他の読者の感想を見ることができる。いろいろと勉強できる機会ですので嬉しいです。

そう言われると、こ迷いましたがここに挙げてよかった。私も、なるだけ正直に答えようと思います。

ありがとうございました。

コウ
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柔らかい月さま

再訪ありがとうございます。

イメージしたのが東京学芸大であったことはわかっていたとのこと。
>書くと『知ったかぶり〜』と揶揄される、ワタシにだけ異常にキツいサイトだもんで、遠慮したけど。。
私には何も迷惑がかかる話ではないので、遠慮とは少し不思議な表現ですね。

>前にここのサイトの人で、
>《四国から出発して、広島に行って、京都まで新幹線に乗って、そこからサンダーバードで金沢へ〜》って書いてた人がいて、

サンダーバードで金沢にということは、自家用車ではないですね。それなら四国の人間が本州に渡る場合には、鉄道で岡山に出ます。愛媛県でも一部地域の、ごくごくレアなパターンですね。



>>ここに長々と書き込む意図も意味も、私には分かりませんが……

>それは、姿の見えない超陰湿・腐れ果て外野からの「パクリだ〜!!」ってー 言われなき誹謗中傷を「受けがち」な理不尽環境だから。。

お察しします。それは大変ですね。それで、いろいろな妄想を書き込んだのですね。でも内容が違えば、大丈夫だと思いますよ。それに、2年前に書いた私には何も関係ないことでしょう? 


>《序盤時点での、一読者であるワタシの脳内妄想》を書いてるのは、ワタシはもともと「推理系連ドラの感想と、そこから予想されること&妄想展開を、手短に呟いてきた」人間で、近年だと、T東>野圭吾原作『危険なヴィーナス』とか、2話目冒頭時点で真犯人と「真の動機」、作者のミスリード〜ミスティフィカシオンも、まるっと分かって、言い当てた。

これは凄い。
私も『危険なヴィーナス』は見ましたが、最後の方までわからなかった。
それで、本作への推察を 長々とここに書く意図や意味は何ですか? いろいろと書けば、当たる部分もあるでしょう。
事前の推理が当たっていたことを証明したいのでしょうか? それならご自分のブログにでも書いてアリバイを残したらいい。

しかし月さんとっては、それでは意味がないのでしょうね。このサイトにいる人に、自分の優秀さをアピールできなければ……
少なくても私は少し迷惑だったかな。

でも捜索は、頑張ってください。私よりも確実に知識はある。

アン・カルネ
219-100-29-179.osa.wi-gate.net

うーん…。
私も先に選評の方を読んできました。
これはある意味、運も悪かったのかも、と言う気がしました。読み比べてるわけではないですが、あらすじだけでも受賞2作は、ああ、これは専門知識が無いと書けないな、と思わされますから。
応募総数ってどれくらいだったんでしょうか。
一般に最終選考まで残るなら実力は受賞者と同等と見なされるものなんですけどね。大賞を取れる取れないは運のあるなしにも左右されると言われますから。

さらっと流し読みした感覚では「題材を考えると何らかの新奇性が欲しい」という選考が一番、そのことをよく考えてみるべき大事な選評のように思えます。
欲しいのは新しい感性、新しい切り口、新しい何かを持っている人! これはもう絶対でしょう、発掘する側としては。昔ですけど、確か江戸川乱歩賞は兎に角、内容如何よりいまだかつて誰も使った事のないトリックが使われていること、なんなら小説の体裁をなしてなくとも賞は取れるとまで言われたそうですよ。
ま、小説も商品と考えるならそれは当り前ですけどね。
あとは私も最初の掴み、「得体も知れぬ神々に翻弄された。」「その罪は、彼らだけが負うべきものだろうか」「人は皆、神にも悪魔にもなる瞬間がある」そしてダメ押しのように「神の生まれる場所」。作者自ら、ハードル上げちゃったなあと思わされました。
これはもう選者の人達、ある意味、引きの目で読み出しちゃうだろうなあって…。
どれどれ、どんな神さまを出してくれるんかい、お手並み拝見といこうじゃねーか、そういう斜に構えた読み方をおそらくさせたろうなあと…。
だからもしかしたら、作者さんの場合、そういう、小説以前の問題でちょっとした工夫が必要な、そういうタイプなのかもしれないなあ、なんて思わされました。
なんと例えれば良いのか。そうですね、例えば既に高評価を得ているジャン・ポール・エヴァンのボンボンショコラであれば、会場にそのパッケージを見ただけでひれ伏すものはひれ伏しますけど、まだ海のものとも山のものとも知れないものが超高級感ありまくりパッケージに包まれてやってきても第一印象は、勿体つけてるけど「あんた何者?」と眉を顰められるだけ、そういう感じにちょっと見てるかもなあ、と。そんな気がしました。

事件が起こるのが遅い。それもそんな印象でした。あと何がどうと的確に指摘は出来ませんが、なんとなく登場人物皆今どき感がないような…。LineもYouTubeもClubhouseも無縁に人生進んでます、ってか、それで何か? な人達なんだろうなって感じがあり、その感覚を子供も持っているように思えるところが気になるかなあ。“移住”巡って何よりこの辺りの攻防ありますよね、親子で、と思ってしまったので…。
あと、チラッと思った事。
>しかしどんなに目を凝らしても、視線の先に映るものは昔理科室で見た骸骨だった。
この表現はちょっと気になったかな。火葬場に行って祖母の骨を皆で拾う場に初めて行ったのは小学校高学年の時でしたけど、頭蓋骨がそこそこ残っていて、かなりの衝撃を子供心に受けたのですが、それでもその時思った事は、「ああ、テレビや映画も、模型も、みんな嘘なんだ。本物はこんななんだ」でした。
「死」もそうですよね…。人ってやっぱり動物だから、五感の認識って、凄いんですよ。異様なものは異様って、理屈じゃなく本能で一瞬にして見抜くんです。
これは主婦友の話なんですけど、こちらは自宅で義父と同居で。ある日、お留守番の義父が倒れていて。外出から戻った友人が子供を連れて玄関の鍵を開けた時、何がどうって訳じゃないけど、異変に気付いて、とっさに息子におばさんち(隣の家)に遊びに行って! と言っちゃったって言ってました。
おじいちゃんの足は玄関から見えてたんだよね、と。子供もたぶん、目にしてたんでしょう。ごねもせずお隣へ走っていったそうですから。5歳位だったのかな、聡い子ですよね。義父さん亡くなっていたそうです。それから救急車に警察にと色々大変だったそうですけどそれはまあ置いといて。
ま、これらはあくまでも個人の体験ですけど。ただ、活字になると言う事は無数の個人体験と照らし合わされてゆく事でもあるので、そういう事だって言うのは心にとめておいていただければなあ、と思い、つい書いてしまいました。まあ、余計な事ばかり書いてしまって申し訳ありませんでした。でも最終迄と言う事ですから書き方云々ではなく、いかに本当の事のように語られているか、という所の問題なのかもしれないなあ、と。そんなふうに思わされたので。小説は嘘だからこそ、本物以上に本物らしく、というのがかなめのように思います。

コウ
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アン・カルネ様

>これはある意味、運も悪かったのかも、と言う気がしました。読み比べてるわけではないですが、あらすじだけでも受賞2作は、ああ、これは専門知識が無いと書けないな、と思わされますから。

ありがとうございます。私もそう思いたいですが、やはり受賞2作とは明確な差があったのでしょう。選評を見た上で読み返すと、自分の欠点も自覚できました。専門知識についてもそうでしょうね。

コメントの冒頭で、夜の雨さんが受賞者の経歴を調べてくれました。それで興味を持って一次通過者の経歴もググってみると錚々たるメンバーです。

『兄(あに)やん航路』森 輝喜 24回鮎川賞最終候補
『毒婦の楽園』平野 俊彦 東京薬科大教授(薬学博士)「安楽死介助人キリコの暗雲」出版
『ぬいぐるみ探偵最後の事件』原槻 さら 19回鮎川賞1次通過
『赤い三日月にさよならを』藍原 小夜 15回このミス「次回作に期待」
『国家犯罪』中野 雅至 神戸学院大学教授(経済学博士で元官僚)テレビのコメンテーターとして良く出ている。著書40冊以上
『雷鳴』碓氷 霜子 8回(前回)アガサの最終候補者
『月よりの代弁者』穂波 了 このミスで何度も1次通過
『マイナス二七四』直原 冬明 日本ミステリー大賞受賞者 その前年三冊目を出版
『一途な家―あるいは赤屋敷の秘密―』水野 隆志 脚本家としてプロで活躍
『ルーツ』佐鹿 史郎 このミス1次通過
『それ以上でも、それ以下でもない』折輝 真透 4回ジャンプホラー大賞受賞者 著作出版あり
『醜悪』岡本 好貴 28回鮎川賞最終候補者

薬学博士である平野さんは、題名を見る限りやはり毒殺ものですね。官僚だった中野さんは「国家犯罪」。素人の私たちは、官僚と政治家のリアルなやりとりなど書きようもない。
こんな中で最終に残れたことは、今から考えると奇跡に近いように思います。

>さらっと流し読みした感覚では「題材を考えると何らかの新奇性が欲しい」という選考が一番、そのことをよく考えてみるべき大事な選評のように思えます。
>欲しいのは新しい感性、新しい切り口、新しい何かを持っている人! これはもう絶対でしょう、発掘する側としては。昔ですけど、確か江戸川乱歩賞は兎に角、内容如何よりいまだかつて誰も使った事のないトリックが使われていること、なんなら小説の体裁をなしてなくとも賞は取れるとまで言われたそうですよ。

私もそれが1番のネックだったと考えています。受賞2作はあらすじを読む限り、SFチックな要素を取り込んでいるように思います。しかし拙作は、日常から抜け出せていない。私自身の好みでもありますが、受賞2作は日常を突破した世界観のなかでも違和感のない作品に仕上げていたのだと思います。

今までなんとなく受賞作を読む気がしなかったのですが、本屋で探してみます。

>火葬場に行って祖母の骨を皆で拾う場に初めて行ったのは小学校高学年の時でしたけど、頭蓋骨がそこそこ残っていて、かなりの衝撃を子供心に受けたのですが、それでもその時思った事は、「ああ、テレビや映画も、模型も、みんな嘘なんだ。本物はこんななんだ」でした。

火葬場で見る骨は焼けたあとで、かなり印象が違うように思います。コンクリートの中で空気にあまり触れずミイラ化した骨は、きっとこんな感じだと思いますよ。

>「死」もそうですよね…。人ってやっぱり動物だから、五感の認識って、凄いんですよ。異様なものは異様って、理屈じゃなく本能で一瞬にして見抜くんです。

私も「虫の予感」のようなものを体験したことがあり、それを信じる派です。そんな小説も書けたらいいですね。

客観的な指摘、ありがとうございました。

柔らかい月
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>受賞2作はあらすじを読む限り、SFチックな要素を取り込んでいるように思います。



ええと、頂いてそうな個別レスすら未読な状態で、横からつぶやいてて悪いんですが・・


貼られてた一覧の中で、タイトルで目に止まったのが、
・『マイナス二七四』直原 冬明 日本ミステリー大賞受賞者 

↑ このタイトルからして、この人「理系な物書き」でしょう。
一度見たら忘れない、シンプルイズベストなすばらしいタイトルづけ。



そんで、短いもん専門であんまし投稿してないワタシに見覚えがあったのが、
・『それ以上でも、それ以下でもない』折輝 真透 4回ジャンプホラー大賞受賞者 

↑ この人だか、別の人だか、そこはググんないとあやふやなんだけど、

『アガサ』で大賞受賞してた人が、すぐ後の『創元SF短編賞』を受賞してて、それは創元のHPに載ってるから、行けばわかる。

『うすら長いもんも、コンパクトなもんも、両方書けるなんて〜〜……
 アイザックアシモフかっ!』って思った覚えが。。




私は、適当な短編しか書けないやつですけど、
ワタシが入賞してた時に「大賞受賞してた人」は、その時点でもう「超人気作家」で、とにかくどばどば本出してる人だった。。
何シリーズも連載持ってて、角川から出てる文庫シリーズとか相当売れてて、すでにアニメ化もされてる。


その事実を、迂闊にも全然全く知らない・気づけなかったのは、
「当該の受賞作を読んでなかった」せい。(いまだに読んでないんだけど……)

それから たーっぷり歳月が流れた頃あいで、
ここのサイトで「その公募に応募してたベテラン常連女性作家さんのぼやき」で、
ようやく知った、とゆー。。

(あのぼやきカキコがなかったら、いまだに知らなかったと思う)



どうでもいいつぶやきでした。

柔らかい月
n219100087087.nct9.ne.jp

>『うすら長いもんも、コンパクトなもんも、両方書けるなんて〜〜……
 アイザックアシモフかっ!』って思った覚えが。。


SF読まない人だと、意味が分かんないのかもしれないんで、補足すると・・


「SFミステリー」ってのがあって、アシモフ先生はもう「デビュー作からそれ」だったんです。

アシモフはその名手だった訳なんだけど、
「理系知識を生かした本格推理物の大人気シリーズ」も書いてて、
「ミステリー得意」だったの。


けど、「SFミステリー」な作品で、世界で最も売れてて・最もメジャーなのは、アシモフやクラークの佳品短編じゃなくて、

ハインライン『夏への扉』。。

↑ 今夏、実写映画が上演されるね。

コウ
p3004-ipngnfx01kouchinwc.kochi.ocn.ne.jp

柔らかい月様

再訪ありがとうございます。
早速『創元SF短編賞』のHPを見てきました。たしかにアガサのあとにこの賞も受賞されていますね。

これでホラー、推理、SFで大賞が3つです。しかも長編、短編両方で。折輝真透さんは、我々とレベルが違いますね。同時にこの世界の厳しさも感じます。

第4回ジャンプホラー大賞の受賞を出版したものの、その後アガサまで本が出ていない。おそらく売れず、その後の依頼がなかったのでしょう。だから再デビューをするためにアガサ、創元SFに応募した。そう考えると納得ができますし、折輝さんの物書きで生きるという覚悟も伝わってきます。凄いとしか思えません。


>私は、適当な短編しか書けないやつですけど、ワタシが入賞してた時に「大賞受賞してた人」は、その時点でもう「超人気作家」で、とにかくどばどば本出してる人だった。。

もしもそんな人と戦うとわかっていたら、私は応募しないだろうな。


『夏への扉』上映されたら、見に行きたいと思います。

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