作家でごはん!鍛練場
古谷

母の苦労

 私は今年で、もう五十五歳になる。本当は、家事なんてしないで、同級生の友達と遊びたいのだけれど、それはできない。それは、私の一人息子に世話を焼いているからだ。
 息子はもう『子供』とは言えない年齢で、就活もしないで、部屋に引きこもっている。息子が、部屋の中で何をしているかは分からない。物音はしないし、部屋の中を見ると暴れて、怒って来そうだからだ。
「ドアを開けて〜」
 私はコンコンと、ドアにノックした。部屋になんて入りたくはないけれど、息子にご飯をあげなくてはいけない。
 今日の献立は、ごはん、味噌汁、鮭の塩焼き、ほうれん草のお浸し、といった、シンプルな献立だ。
 いつまで経っても、ドアを開けないので、無理矢理開けて、ご飯を置いた。勝手に部屋に入っても、息子は何も言わなかった。部屋をチラッと見ると、今日の朝ごはんがある。まだ手をつけられていない状態だ。
 息子はいつまでこのままなのだろう。先のことを考えると、頭がクラクラする。
 私は、リビングのゴミ袋を両手に持ったまま、ゴミ捨て場に運んで行った。

 近所の人が、一人の老いぼれた女を見て、話している。
「あの人の息子さんって、もう亡くなってるわよね?」
「ええ。もう二十年前ぐらいの話よ」老いぼれた女の子供は、二十年前の自動車事故で、亡くなっていた。
「じゃあなんで、『息子の世話が大変だ』なんて言ってるの?」
「噂では、クマのぬいぐるみを息子に見立てて、世話をしてるらしいわよ」

 老いぼれた女は、ゴミを捨て終わると、家の中に戻っていった。

母の苦労

執筆の狙い

作者 古谷
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久しぶりに投稿しました。
600字なので、すぐに読めると思います。
雰囲気は世にも奇妙な物語みたいな感じです。

コメント

浅野浩二
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古谷様。
シンプルで、ショートショート小説になっていますね。
とてもいい作品だと思います。
ここのサイトでは結末まで書かないで、書きかけの小説を投稿する人が多いですね。
そういう点、古谷様は、ちゃんと小説を完成させているので、好感がもてます。
それと。
読むのは簡単ですが、ストーリーを思いつくのは、作者にとっては難しいことです。
なので、とてもいい作品だと思います。

古谷
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久しぶりに書いたので、不安でしたが、良かったです。
ありがとうございます。

夜の雨
ai209008.d.west.v6connect.net

「母の苦労」読みました。

55歳になる女性が20年前に亡くなった息子の死を受け入れられなくて、クマのぬいぐるみを息子に仕立てて世話を焼いているというお話で、ご近所が噂をしているが、女性は我関知せずというお話です。

ということは55歳の女性で20年前に息子が亡くなっているということは、35歳のときに息子を亡くしている。
25歳で子供を産んだとして10歳の時に交通事故で亡くしたということになる。
それから20年なので現在生きていたら30歳で就職活動もせずに部屋に閉じこもっているという設定です。

御作の場合は背景的なことは書かれていないのでご主人がどうしているとかは書かれていません、また、この短い展開なら、そこまで書く必要もないかもしれませんが。


>雰囲気は世にも奇妙な物語みたいな感じです。<
こういった世界にするのなら、ラストはその「クマのぬいぐるみ」が実は生きていたというようなオチにしたら面白いのではないかと思いました。
もちろん現実的に「ぬいぐるみ」が生きて動くわけはないので、そのあたりは、それらしくする。
ぬいぐるみが「頭の部分を外して」そこに無精ひげの30男が頭部を、顔を出して、食事をやりだすというあんばいです。
男が机に向かって何をしているのかというと、10歳の少年のときに遊んでいたテレビゲームなどをしているという設定にすればよいのでは。

10歳で亡くなった少年を母親が受け入れられなくてクマのぬいぐるみで代償にしている。そのクマのぬいぐるみに息子が宿ったという展開です。
しかし現実世界の生きている息子ではなく母親だけの息子なのでその部屋からは出られない。
息子は母親から与えられたクマのぬいぐるみの中で生きて生活をしている。

という「世にも奇妙な物語」の世界。

このあたりまで設定すれば面白くなるのでは。

以上です。

古谷
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夜の雨様 ありがとうございます。
たしかに、そうすれば物語にも深みが出て、面白くなる気がしますね。
長文でのアドバイスありがとうございます。

浅野浩二
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古谷様
この小説では。
①お母さんは正常で、実際に引きこもりの息子がいるのに、世間では、息子は死んでいる、という、間違った噂をしている。
という解釈と。
②お母さんは、統合失調症で、息子は、自動車事故で死んでいるのに、お母さんの妄想で、クマのぬいぐるみ、に食事を与えている。つまり、噂話をしている人達の言っていることの方が、事実である。
という、二つの解釈ができると思いました。
僕は、最初、①だと、てっきり思っていました。
しかし、②の解釈も出来ますね。
そういう点もミステリアスだと思います。

古谷
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浅野浩二様
僕は②の方で書いていたのですが、そういう見方もできますね。

偏差値45
KD106154138023.au-net.ne.jp

前三分の二と後三分の一で視点が変わるわけですね。
前者は主観的に後者は客観的に描いている。

小説としての面白さはあるのだけれども、
視点が変わるというリスクがあるので、
いかがなものかな、とは感じますね。

古谷
124-159-50-124.ppp.bbiq.jp

偏差値45様
ありがとうございます。参考にさせて頂きます。

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