作家でごはん!鍛練場
売文屋

賭博稼業

 歌舞伎町は某所の闇カジノ、に入った。
 吾輩は500円の白チップ、1,000円の銅チップ、5,000円の銀チップ、10,000円の金チップを乗せたトレイを両手で持つとポオカア<テキサス・ホウルデム>が行われているテイブルへ向かった。
 テキサス・ホウルデムはさっこんでは最も広く行われておるポオカアであり、ハンド、役は変わらぬが〈ホール・カード〉と呼ばれる、各プレイヤアごとに配られる隠した2枚の手札と〈コミュニティ・カード〉と呼ばれる、全プレイヤア共通の表向きとなった最大5枚配られたカードを組み合わせ役を作り、もっとも強いハンドのプレイヤアがチップを総取りすると聞いた。日本では主流のクロウズド・ポオカア、つまり全員手札を隠したままで行うのは廃れたらしく、殆ど行われていないそうである。
「吾輩もひと遊び、させて貰おうかの」吾輩は空いている、左端の席に座った。今宵はロイド・サングラスをかけておる。
 ディラアが吾輩を値踏みした。「お客様、初めてでございますか?」
「そうじゃ」

手引き

 ディラアが一席打った。「ええ、当店におけるテキサス・ホールデムでは、面倒臭い〈ディーラー・ボタン〉〈スモール・ブラインド〉〈ビッグ・ブラインド〉〈アンダー・ザ・ガン〉と云った役目を廃しました。〈フォールド〉〈チェック〉〈ベット〉〈コール〉〈レイズ〉などのアクションはそのままです。ただし、最初にお賭けする方の前に置くボタンをご用意致しました。〈トップ・ボタン〉です。まあこれだけは〈アンダー・ザ・ガン〉に相当するポジションですが、ご勘弁下さい。ミニマムは当店キャッシャーが申したと思いますが銅チップ1枚で、マックスはございません。お賭けになるのは時計回り、トップ・ボタンもゲームごとに回ります。ではご存分にお楽しみくださいませ」
 何じゃと。あれだけ頭に叩き込んだルウルが意味無しとは。
 ディラア・ボタン〈BTN〉は最も良いポジションで、総てのプレイヤアのアクションを見極めた上で行動を取る事が出来る。BTNの左隣がスモオル・ブラインド〈SB〉で、SBの左隣がビッグ・ブラインド〈BB〉じゃ。SB・BBは〈強制ベット〉あるいは 〈ブラインド〉と呼ばれ、カアドが配られる前に金を張らなければ無らぬ。レエトが1,000円の場合、SBはその半額の500円を張る。BBはその倍、1,000円を張る。そしてホオル・カアド2枚が配られた時、BBの左隣、アンダア・ザ・ガン〈UTG〉からアクションを開始する。しかしUTGがもっとも不利、と云われておるらしい。何故かと云うと、2枚のホオル・カアドを配られた上で、他のプレイヤアのアクション、SBとBBの張り以外であるが、見ずに行わねばならぬからじゃ。ベット=チップを張る。フォウルド=ゲイムから降りる。チェック=1チップも張らずに次のプレイヤアにアクションを回す。コオル=前のプレイヤアと同額のチップを張る。レイズ=それまで張られたチップを上乗せする。それらをじゃ。まず敵のアクションを見ておのれがすべきアクションを考える。それがポウカアの常、であるが、その様なしち面倒臭いルウルが無いのは結構。吾輩の〈学習〉は無駄ではあったがの。
 ともかく吾輩は、プレイヤアどもの容貌を観察した。
 テンガロン・ハットをかぶった面長の男。こ奴を〈カウボウイ〉と呼ぶ。
 金無垢らしき眼鏡をかけ高級そうな服じゃがはち切れんばかりの肥えた中年女。こ奴を〈マダム〉と呼ぶ。
 すすけた米軍ジャケットをまとった痩せ男。こ奴を〈兵隊〉と呼ぶ。
 ブラウンの背広をまとい、証券会社勤めの様な中年男。こ奴を〈トレイダア〉と呼ぶ。「おい、何ぼけっとしてんだよじいさん。ゲームを再開するぜ」〈カウボウイ〉が大声をあげた。
 吾輩は頭を下げた。「すまんの。なにぶん初めてなもんじゃて」
「じゃあディーラーさんよ、カードを配ってくれ」〈カウボウイ〉はテイブルを叩いた。

第一勝負

 ディラアは各自に2枚、ホオル・カアドを配った。
 吾輩は配られたカアドを手元でめくってみた。ハアトの10、クラブの6。
 プリフロップ。最初に張る時じゃ。
「トップ・ボタンは俺の前にあるから、俺からだな。ベット1枚」〈カウボウイ〉はチップを1枚、テイブル中央の〈ポット〉に置いた。
「コール」〈マダム〉、〈兵隊〉、そして〈トレイダア〉はチップを1枚置いた。
「コオル」吾輩もポットにチップを1枚 置いた。
 フロップ。ディラアはカアドの束の上1枚を捨て、3枚のコミュニティ・カアドをテイブルに置いた。もちろん表を見せて、じゃ。ダイヤの5と8、ハアトの9。
「レイズ」〈カウボウイ〉は黄ばんだ歯を見せ、ポットにチップ2枚置いた。
〈マダム〉は自分のカアドとテイブルの開かれたカアドを交互に見て口を開き、チップ2枚をポットに置いた。「コール」
「コール」〈兵隊〉はポットにチップ2枚置いた。口元に笑みを浮かべておった。
〈トレイダア〉は眼をしばらくつむり、開くとポットにチップ2枚を置いた。「コール」
「コオル」吾輩のハンドはそう悪くない。であるが次を待つことにし、ポットにチップ2枚置いた。
 この時点でポットにはチップ15枚。
 タアン。ディラアが4枚目のカアドを開いた。クラブの7。
「レイズ」〈カウボウイ〉は舌打ちし、チップ4枚をポットへ。
「コール」〈マダム〉は無表情にチップ4枚。
〈兵隊〉は眉間にしわを寄せチップ8枚をポットへ。「レイズ」
「うむ、なかなか手強いな」〈トレイダア〉は両手を組み、上に伸ばした。そして戻すとポットにチップ16枚を置いた。「レイズ」
 最初からツキが来るとは。吾輩の手札はハアトの10、クラブの6。テイブルはクラブの7、ダイヤの8、ハアトの9でストレイトが完成しているではないか。とにかく最後までこ奴らを粘らせる。
「コオル」吾輩は無表情でチップ16枚をポットへ。
〈カウボウイ〉と〈マダム〉は12枚、〈兵隊〉は8枚、追加のチップをポットに置いた。全員が同じ賭け金でないと次に進めぬのでな。ポットには95枚。
 リバア。最後のカアドが表になると同時に賭けも終わりとなる。
ディラアがカアドをめくった。ハアトのジャック。
〈カウボウイ〉が帽子を脱ぎ、チップを16枚ポットへ。「ベット」
「コール」〈マダム〉は面倒臭そうにチップを16枚ポットへ。
〈兵隊〉が上眼づかいでテイブルのカアドをにらみ、チップ32枚をポットへ。「レイズ」
「レイズ」〈トレイダア〉は笑みを浮かべチップを64枚ポットへ。
 吾輩のハンドはさらに強くなった。勘であるが、吾輩のハンドが最も強いであろう。
「レイズ」吾輩はチップ128枚をポットに置いた。
 他のプレイヤア、〈トレイダア〉を除いてだが、聯中は驚きの表情を隠さなかった。
〈カウボウイ〉は112枚追加、〈マダム〉と〈兵隊〉はフォウルドしディラアにカアドを返し、〈トレイダア〉は64枚追加した。ポットには479枚。
 そしてショウダウン。各自の手札を晒す。
〈カウボウイ〉のはハアトの9、スペイドの8。「ツーペアかよ、せこい手だな」
「最後に6が来てれば、俺のハンドはストレートだった」〈兵隊〉は捨て台詞を吐いた。
〈トレイダア〉は無言で手札を開いた。ハアトの5、クラブの6。
〈カウボウイ〉は叫んだ。「アンタのハンドはハートの5、クラブの6、クラブの7、ダイヤの8、ハートの9!ストレートか!運がいいな」
「運などではない、確率の問題だよ。私はいつもそれを読んでいるのだ」〈トレイダア〉は勝ち誇った表情を見せた。
〈カウボウイ〉は鼻を鳴らした。「そう云う事にしておこうか、ま、アンタの勝ちだろうよ」
「捕らぬ狸の皮算用、は止した方が良いぞ」吾輩も手札を開いた。
今度は〈兵隊〉がぶっきらぼうな口調で説明した。「クラブの7、ダイヤの8、ハートの9・10、ジャック。背広の旦那のストレートより、こっちのじいさんの方が強いな」
「そ、そんな馬鹿な!」〈トレイダア〉は背もたれつきの椅子にのけ反った。
「では吾輩の勝ちじゃな。俗に云うビギナアズ・ラック、と云う奴じゃわい」吾輩はポットのチップ、479枚を頂戴した。
 吾輩は147枚放り、手持ちの500枚は353枚となった。であるが、332枚儲けたので手持ちは685枚じゃ。
 まだひとゲイムしかやっておらぬが、参加プレイヤアどもの戰法と云うか性格が少し分かって来た。〈カウボウイ〉は猪突猛進で自己中心的な攻め方をする。〈マダム〉にはかけ引きなどほぼ考えておらず、総てを運に任せておるが金持ち。〈兵隊〉は好機と思えば攻めまくる。〈トレイダア〉の實力はまだ未知数じゃが、どうもきな臭い。吾輩の勘じゃが。

第二勝負

 ディラアがプレイヤアどもにカアドを配る。吾輩の手札はハアトとダイヤのジャック。
 プリフロップ。トップ・ボタンが目の前に置かれた〈マダム〉からの賭けじゃ。
「ベット2枚」〈マダム〉はポットにチップ2枚を放る。
〈兵隊〉は釣り上げ、チップ4枚をポットに置いた。「レイズ」
「レイズ」〈トレイダア〉はチップ8枚をポットに。
 吾輩はチップ16枚をポットに置く。「レイズ」
〈カウボウイ〉はいかつい眼でプレイヤアどもを見回し、ポットにチップ32枚を。「レ、レイズ!」
〈マダム〉は30枚、〈兵隊〉は28枚、〈トレイダア〉は24枚、吾輩は16枚、追加チップとしてポットに置いた。吾輩にはまだ2ゲイム目に過ぎぬが、どいつも熱くなっておる。
 この時点でポットには160枚。
 フロップ。三枚のカアドがテイブルに。ハアトのエイス、ダイヤの4・2じゃった。
「ベット」〈マダム〉はポットにチップ32枚。
〈兵隊〉はタバコ〈ラッキイ・ストライク〉を咥え、火を点け32枚をポットへ。「コール」
「コール」〈トレイダア〉は眼を細めポットにチップ32枚を置く。
 吾輩はポットにチップ64枚を置いた。「レイズ」
「レイズ!」〈カウボウイ〉はチップ128枚をポットに叩きつけた。
先の如く、チップを同額にする為プレイヤアは追加チップをポットに置いた。〈マダム〉と〈兵隊〉に〈トレイダア〉は96枚、吾輩は64枚。全員の賭け枚数が128枚となり、ポットにはチップ800枚。
 タアン。4枚目が開かれたクラブのジャック。
〈マダム〉はため息をついた。「チェック」
〈兵隊〉はフォウルドし捨て台詞を吐いた。「狙っても来る訳ねえよな」
〈トレイダア〉はポットに128枚置いた「ベット」
「コオル」吾輩もポットにチップ128枚。
「レイズだ!」〈カウボウイ〉は256枚ポットに置いた。
〈トレイダア〉と吾輩は追加チップ128枚を置く。
 ポットのチップは1,568枚。
 リバア。表になったのはハアトのクイィン。
〈マダム〉と〈兵隊〉に〈トレイダア〉はフォウルドした。
〈トレイダア〉は恨めしそうな眼差しで見回した。「次に回収してやるからな」
「ベット」吾輩はポットにチップ256枚置いた。
〈カウボウイ〉は256枚をポットに置いた。「コール!じじい、どうせハッタリだろ!勝負はそんなに甘かねえぜ!」
「そうじゃの。吾輩ははったりのみで生きて来た。先は短いが、したい様に生きてみせるわ」
 ポットには2,080枚。
 ショウダウン。吾輩は手札をさらした。コミュニティ・カアドに組み合わせると、スペイド・ハアト・ダイヤのジャックにハアトのクイィン・エイスじゃった。スリイ・オブ・ア・カインドじゃ。〈マダム〉が叫んだ。「く、悔しい!フォールドしなかったらストレートだったのに!」
「最後が5だったら俺もストレートだった」〈兵隊〉は抑揚無き声で呟いた。
〈トレイダア〉は口を眞一文字に結んでいた。
〈カウボウイ〉は自嘲した。「笑いたきゃ笑えよ、俺のハンドはこれだ」
 手札を見るとハートの3、ダイヤの7。テイブルのカアドの強いのを選んでもハアトのエイス・クイィン、クラブのジャックじゃ。合わせてもハイ・カアドつまりブタじゃ。どうもこの輩、腕は大した事無いくせにプライドだけは高いと見える。
「吾輩の勝ちじゃ。ポットのチップは頂く」
 カモを挑発するのは面白いのう。手持ちは2,093枚となったわい。負けておれば13枚じゃった。
 
第三勝負

 ディラアが吾輩に配るカアドはクラブの10・4じゃった。今度は〈兵隊〉からじゃ。
 プリフロップ。「ベット4枚」〈兵隊〉はチップ4枚を置いた。
〈トレイダア〉は「コール」。4枚じゃ。
 吾輩は上乗せし、ポットにチップを8枚放った。「レイズ」
〈カウボウイ〉は案の定、吾輩につられてチップを16枚ポットに置いた。「レイズ!」
「コール」〈マダム〉は16枚、チップを置いた。
〈兵隊〉は12枚追加、〈トレイダア〉はフォウルドした。吾輩は8枚追加した。
 ポットには68枚。
 フロップ。テイブルに乗ったスウトは総てクラブで、エイス、5、7じゃった。もう既に吾輩はフラッシュが完成しておる。
 今度は〈兵隊〉から。こ奴は釣り上げ32枚置いた。「レイズ」
「レイズ」吾輩は無表情でディラアを見つめ、ポットに64枚。
 意外にも〈カウボウイ〉は勝負を捨てた。「フォールド!」
「コール」〈マダム〉はチップ64枚をポットに置いた。
〈兵隊〉は32枚追加した。
 ポットには260枚。
 タアン。テイブル4枚目のカアドはクラブのクイィンじゃった。
「レイズ」〈兵隊〉はチップ64枚をポットに置いた。
 吾輩は倍賭けし、128枚をポットに。「レイズ」
〈マダム〉にとって、この程度は端金なのであろう。ポットに128枚置いた。「コール」
〈兵隊〉は64枚、チップを追加した。
 ポットには644枚。
 リバア。テイブルにはクラブの2が。
〈兵隊〉の顔を見ると額から汗が。それでも上乗せした。「ベット256枚」
 テイブルの5枚目のカアド以前に、吾輩のハンドは総てクラブのフラッシュじゃ。
 吾輩以上のハンドかも知れぬが容赦せぬ。吾輩は釣り上げ、512枚ポットへ。「レイズ」
〈マダム〉はフォウルドした。「気が狂ってなければやってられないわ」
〈兵隊〉は髪を後ろに撫でつけ、チップを256枚追加した。
 ポットには1,668枚。
 そしてショウダウン。〈兵隊〉は手札を晒した。
 こ奴の持ち札とテイブルの札を合わせハンドを作れば、ハアト・ダイヤ・クラブのエイス3枚、それにクラブの2・スペイドのクイィン。スリイ・オブ・ア・カインド。スリイ・カードじゃ。
「ハッタリかまして勝負したけどな、あんたのハンドはどうだい、じいさんよ」〈兵隊〉の笑い声は乾いておった。
 吾輩は手札のカアドを表にした。「大したハンドでは無いが、お主より上じゃろう」
「ゲゲッ!ふ、フラッシュ!」〈兵隊〉は椅子から転げ落ちた。
 吾輩はポットに乗ったチップを手に入れた。儲けは948枚、手持ちは3,761枚。
 
第四勝負

 ディラアが吾輩たちにカアドを配った。吾輩の手札はダイヤのエイスとハアトのジャックじゃった。
 プリフロップ。〈トレイダア〉からじゃ。
「ベット5枚」〈トレイダア〉はポットにチップ5枚を置いた。
「レイズ」吾輩は倍、10枚を置いた。
〈カウボウイ〉はタバコ〈マアルボロ〉に火を点け、しばらくふかした。そして10枚をポットに置いた。「コール」
「コール」〈マダム〉も10枚置いた。
〈兵隊〉はしばらく腕を組んでいたが、チップを20枚置いた。「レイズ」
〈トレイダア〉は15枚、吾輩と〈カウボウイ〉、そして〈マダム〉は10枚追加した。
 ポットには100枚。
フロップ。ハアトのエイス、ダイヤのキング、クラブの10じゃった。
「どうも肩がこるな」〈トレイダア〉はカアドを右手親指と人差し指に挟み両手を上に伸ばし、下ろすと20枚、ポットに乗せた。「ベット」
吾輩は見逃さなかった。こ奴が何をしたのかを。
 それはともかく、今の所のハンドはいにしえの米國西部のならず者、ワイルド・ビル・ヒコックが撃ち殺された際のハンド、通称〈死者の手〉と呼ばれる、エイスが2枚に8が2枚のツウペアとなる気がした。あくまでも勘じゃが、吾輩にはふさわしい。吾輩は20枚をポットに置いた。「コオル」
「熱くなりすぎじゃねえか、皆さんよ」〈カウボウイ〉は40枚、ポットに放った。「レイズ」
「フォールド」〈マダム〉は降りてカアドをディラアへ返した。
「レイズ」〈兵隊〉は強気で、ポットに80枚置いた。
〈トレイダア〉と吾輩は60枚、〈カウボウイ〉は40枚追加した。
 ポットには420枚。
 タアン。クラブのジャック。
〈トレイダア〉は澄ました顔で160枚、ポットに乗せた。「レイズ」
「コオル」吾輩は160枚をポットへ。
〈カウボウイ〉は320枚をポットへ。「レイズ。吠え面かくなよ」
「吠え面かくのはアンタの方だ。レイズ」〈兵隊〉は640枚をポットへ。
 吾輩と〈トレイダア〉は480枚のチップを、〈カウボウイ〉は320枚追加した。
 リバア。ダイヤのジャック。吾輩は死者の手、を完成させた。勝ち負けなど知った事では無い。であるが〈トレイダア〉の所業を見捨ててはおけぬ。
「レイズ」〈トレイダア〉はハミングしながら1,280枚をポットへ。
 吾輩は負けても構わぬので1,280枚をポットに置いた。「コオル」
〈カウボウイ〉と〈兵隊〉は「コール」。1,280枚をポットに。
〈カウボウイ〉はまばたきを繰り返した。
 ポットは7,680枚のチップが。
 ショウダウン。ハアトの8。
〈トレイダア〉のハンドはハアトのエイス・ジャック、クイィン、ダイヤの10・キング。ストレイト。醜き笑みを浮かべておった。
吾輩のハンドはエイス2枚・ジャック2枚・ハアトの8。死者の手、じゃ。
〈カウボウイ〉のハンドはクラブとハアトのエイス以外はバラバラじゃった。ワンペア。口ごもった。相変わらずの猪突猛進ぶりじゃ。
〈兵隊〉のハンドはハアトのエイス・ジャック、クラブのキング・クイィン、そして残念な事にクラブのジャックじゃった。10であらばストレイトであったがワンペア。〈兵隊〉は両肩を下ろした。
〈トレイダア〉は勝ち誇った口調で抜かした。「どうやら私の勝ちだな。ポットの金はー」
 吾輩は〈トレイダア〉の左腕を掴んだ。「お主は命知らずじゃのう。闇カジノでいかさまを用いるとは」
「な、何の事だ!私は為替トレーダーだ!ここではギャンブラーだが、その様な私をイカサマ呼ばわりするとは何たる侮辱!何か証拠でもー」
吾輩は〈トレイダア〉の左袖をまくった。そこには数枚のカアドが忍ばせてあった。
「貴様は両手を組み、上に伸ばした所で強いカアドを抜き都合の良いカアドにすり替えたな。いかさま師で無ければ、この様なシロモノは必要なかろうて。しかしまあ、この店と同じカアドが調達出来たものじゃのう。感心するわい」
〈カウボウイ〉は椅子を蹴たおし立ち上がった。「テメエ、イカサマしてやがったのか!ぶっ殺してやる!」
「俺も同感だね」〈兵隊〉はテイブルに置かれたジャック・ダニエルの瓶を掴んだ。
「お怒りの気持ちは痛い程わかります」ディラアが〈カウボウイ〉と〈兵隊〉を制した。「ここは当店の従業員にお任せ下さい」
 ディラアは2人の従業員を手招きして呼び、2人はテイブルに着くなり〈トレイダア〉の両肘を掴んで椅子から立たせた。
「でで、出来心だ!か、勘弁してくれ!私はまだ死にたくは、グムウ!」
 周到な準備。何が出来心じゃ。何度もいかさまで稼いで来たのであろう。
 従業員1人から鳩尾に拳を喰らった〈トレイダア〉は2人に引きずられ、ドアに聯れて行かれた。
〈マダム〉は甲高い声で叫んだ。「私たち、あいつのカモにされてたのね!この落とし前、どうつけてくれんのさ!」
「誠に申し訳ありません」ディラアは頭を深々と下げた。「当店のルールでは、イカサマ師の様な不届き者がいても、お賭けになったチップの返却は不可、となっております。ご了承下さい。その代わり、当店が然るべき〈制裁〉を不届き者に下しますので」
 ディラアは冷酷な眼つきでプレイヤアを見回した。憤慨していた〈カウボウイ〉、冷ややかだった〈兵隊〉も黙って席に座った。
 とにかく吾輩は7,680枚を手に入れ、手持ちは11,441枚となった。もう銅チップの山は見飽きたわい。
 
第五勝負

 その前に吾輩はディラアに声をかけた。「もう吾輩は銅チップを見飽きた。金チップに替えて呉れんか。そうさの、441枚は銅チップのままで良い」
「かしこまりました」ディラアは吾輩のチップを回収し、枚数を数えた。「現金換算ですと11,441,000円。金チップは1,100枚となります」
ディラアは金チップ1,100枚、銅チップ441枚を吾輩に寄越した。
「何だよじいさん、もう勝ち逃げの支度か?」〈カウボウイ〉は悔しげな表情をした。
 吾輩は無表情で〈カウボウイ〉を見つめた。「逃げるつもりは無い。じゃが、これ以上のチップは老眼で数えられんのじゃ」
 金チップは1枚10,000円じゃ。
「冗談じゃないわ!」〈マダム〉は叫んだ。「じいさん、アンタ、プロのギャンブラーでしょう!もうつき合っていられないわ!」
〈マダム〉はテイブルから去った。
〈兵隊〉は薄い笑みを浮かべた。「あのババアはポーカーをタロット・カードと間違えてただけだ。と云う俺もそろそろ限界だ。ここで巻き返しが出来りゃあいいけどな」
「俺はとことんまでやる!早く始めようぜ!」〈カウボウイ〉はマアルボロに火を点けた。
 ディラアがカアドを配った。吾輩に配られたのはハアトの6とダイヤの7。
 プリフロップ。吾輩は銅チップ20枚を置いた。「ベット」
「コール!」〈カウボウイ〉は珍しく慎重で20枚。眼玉は左右しておった。
〈兵隊〉は静かに20枚をポットに置いた。「コール」
 フロップ。クラブのジャック、ダイヤのエイス、スペイドの6。
 吾輩とカウボウイは共に「コオル」。ポットに20枚置いた。
「老兵は死なず、ただ去りゆくのみ、だ。俺はこれで失敬するぜ」〈兵隊〉は早々とゲイムを切り上げ、テイブルから去った。
 ポットにはチップ100枚。チンケな勝負になったもんじゃて。
 タアン。ハアトのジャック。
 どうせ吾輩のハンドはツウペア程度じゃろうが、フルハウスの可能性も無きにしもあらず、じゃ。勘は働かなかったが。このまま續ける事にし、ポットに金チップ5枚と銅チップ4枚置いた。ブラフじゃが。
「メイクレイズ。金チップ5枚と銅チップ20枚」
〈カウボウイ〉は怖気づいたのか、カアドをディラアに返した。「フォールド!」
 吾輩のツウペアより弱かったようじゃの。吾輩はポットの銅チップ120枚を得て、ブラフであった金チップ5枚を回収した。

第六勝負

 老骨に鞭を打ったわい。金チップ1,100枚、銅チップは501枚。参加しようとする者はおらず。吾輩の〈カウボウイ〉との一騎打ちとなった。
「俺も金チップは持っている。ここはセコイ銅チップじゃなく、金で勝負しようじゃねえか」もはや〈カウボウイ〉から思考能力が失せた、と見た。
 吾輩は答えた。「良かろう」
 まず吾輩に配られたのはダイヤの4とクラブの4じゃった。
プリフロップ。〈カウボウイ〉は金チップを1枚ポットに置いた。「ベット」
「レイズ」吾輩は2枚置いた。
 それでも〈カウボウイ〉の眼つきはギラついておった。追加1枚をポットに置いた。
 フロップ。3枚のコミュニティ・カアドはクラブの2、ハアトの4、スペイドのジャック。
〈カウボウイ〉は弱い。しかし万が一の事もある。
「レイズ」〈カウボウイ〉は口笛を吹き、チップを4枚置いた。
 吾輩はまたもブラフで8枚置いた。「レイズ」
〈カウボウイ〉は舌打ちし、追加4枚を置いた。
タアン。4枚目のカアドはスペイドの4。
〈カウボウイ〉は勝機を確信した、と見える。16枚置いた。「レイズ」
「レイズ」吾輩は倍の32枚を置いた。
吾輩にも勝機はあったが、こ奴を挑発せねば儲けが少ない。
 今度の〈カウボウイ〉はニヤケながら追加16枚を置いた。
ポットには金チップ84枚。
 リバア。5枚目のカアドはダイヤのジャック。
「イヤッホー!俺の勝ちに決まってらあ!」〈カウボウイ〉は64枚を置いた。「レイズ!」「コオル」吾輩も64枚置いた。
ショウダウン。〈カウボウイ〉は手札を晒した。ハンドはハアト・ダイヤ・スペイドのジャック、それにクラブとスペイドの2。フルハウスじゃった。
「じいさん、どうやら俺の勝ちの様だな。さっさと手札を見せねえか」〈カウボウイ〉は鼻の穴を丸くした。
「残念じゃったな。吾輩の方が上じゃ」吾輩は手札を晒した。ハンドはダイヤ・クラブ・ハアト・スペイドの4、加えダイヤのジャック。フォオ・オブ・ア・カインド。つまりフォオ・カアド。
「ち、ちくしょう!」〈カウボウイ〉は帽子を床に叩きつけた。「じじい、俺は降りる。だが、次に会った時にゃ、必ず泣き見せてやるからな!」
〈カウボウイ〉も席を立った。とうとう吾輩1人になってしもうた。
ポットからかき集めた金チップは212枚。今持っておるチップは金1,248枚、銅441枚じゃ。さすがにチップは見飽きたわい。吾輩もこの辺で退散するか。吾輩は立ち上がった。

鉄火

「お見事な腕前です事」拍手と共に耳障りな声が聴こえた。「どうやら参加者もいない様ですし、わたくしとひと勝負、と参りません?」
 オウナア、と思しき女じゃった。
「吾輩はもう疲れたわい」
「拝見しておりました所、あなた様には金チップが1,200枚以上ございますね。わたくしにはオーナー、または〈仁川のクィーン〉としての面子と意地がございます。ぜひ勝負して頂きたいのですが」
「良かろう」吾輩はトレイをテイブルに置き、椅子に座った。
 オウナアは指を鳴らし、従業員に金チップが乗ったトレイを運ばせた。これもブラフのひとつじゃろう。チップの量で相手の気迫を削ぐ。吾輩はその様なこけおどしに屈しはせぬ。オウナアが持つチップには眼も呉れず、じゃ。
「ならば銅チップに用はない」従業員を呼ぶと、すぐにかけつけた。「すまんがこの銅チップ441枚、換金して呉れぬか」
 銅チップを受け取った従業員は、キャシャアへ向かった。
 戻ってくるなり現ナマが乗ったトレイを吾輩に差し出した。「くどい様ですが申し上げます。銅チップは1枚1,000円、441枚でしたので441,000円の所、5%の22,050円引かせて頂き、お渡しする額は418,950円となります」
「そうか、ご苦労じゃったの」吾輩はトレイの現ナマを財布にしまった。
 オウナアは口元を押さえて笑った。「41万円もお有りでしたら、金チップにお替えしたら方が。41枚へ」
「では吾輩とオウナア、どちらからアクションを起こすか決めんと。吾輩はどちらでも構わぬが」
「それではこうしましょう」オウナアはテイブルからトップ・ボタンを拾い上げた。「このボタンの裏側には何も掘られておりません。ディーラーにコイン・トスをさせますので、当てた方がアクションの前後を選ぶ、如何でしょうか。お客様が先に表裏をお決めください」
「うむ」
 ディラアがオウナアからボタンを受け取った。そしてコインを親指で弾き、宙を廻転か廻せた。落ちた所で左手甲に乗せ、右手をコイン上に乗せた。
「どちらになさいますか」
 吾輩には前攻め後攻めどうでもよかったのじゃが、博奕打ちの悲しさか、勘働きを口に出した。「裏」
 オウナアはディラアを睨んだ。
 この女狐がいかさまを強要したとは思えぬが、このディラア、のちに呪詛をさんざ吐かれるいけにえとなるのであろう。
 ディラアが右手を退け、左手甲を見た。「う、裏です。お客様が前か先かのアクションをお決め下さいませ」
「じゃあ吾輩が先、オウナアは後のアクション、と行こうかの」
 オウナアがほくそ笑んだ。と云う事は、後を望んでいた事になる。相手の出方を見た上でアクションを起こした方が有利に働く、とカジノ本に書いてあった。にわか仕込みのカアド論。この女狐、もはや金を巻き上げるのが目的ではなく、大枚を積んで吾輩が怯えた挙句、弱々しく「フォウルド」と降りる姿を見たいのであろう。じゃが貴様の思い通りとなる吾輩では無い。
 プリフロップ。カアドが2枚配られた。吾輩に配られたのはハアトのエイス・キング。
オウナアはカアドを見るなり微笑む。
「ベット」吾輩はチップ1枚、ポットに置く。
「レイズ」オウナアはチップ2枚、ポットに置く。
 吾輩も金チップをもう1枚、ポットに置く。
ポットにはチップが4枚。
 フロップ。ディラアは3枚のカアドをオウプンにした。コミュニティ・カアドはスペイドの6・7、ハアトの2。
 まったくもって、話にならぬわい。
「メイクレイズ、100枚」吾輩は金チップを100枚、ポットに置いた。
 オウナアは表情こそ変わらなかったが、眼が泳いでおった。「お受けしますわ。レイズ」
 チップを200枚、ポットに置いた。
 吾輩もチップを100枚追加。
 ポットには金チップ404枚。
 タアン。ディラアは4枚目のカアドをオウプンにする。ダイヤのジャック。
 吾輩はピイスを咥え、火を点ける。深々と喫う。紫煙。吾輩は無表情でオウナアの顔を見つめる。微笑んでいる。だがこめかみに一粒の汗が。
 喫い終わった。
「レイズ」吾輩はポットにチップを400枚置いた。
「レイズ」オウナアの狡猾な笑み。800枚のチップをポットに置く。現金換算で8,000,000円じゃ。8百万。狂っておるとしか云い様が無い。じゃがそこまで舐められてフォウルドするは吾輩の博奕打ちとしての醜い面子が立たぬわい。
 吾輩は従業員を呼び、森伊蔵の炭酸割りを注文する。オウナアの眉間にシワが寄る。
 従業員はすぐに森伊蔵の炭酸割りを持ってくる。吾輩は500円硬貨を従業員に渡す。
 ゆっくりと味わう。吾輩は見逃さなかった、オウナアの舌打ちを。この女狐はそれなりに強いハンドを組むつもりじゃろう。現在のコミュニティ・カアドがスペイドの6・7、ハアトの2、ダイヤのジャック。吾輩のカアドはハアトのエイス・キング。
 本当に〈仁川のクィイン〉として君臨した博奕打ちならば強いハンドを狙う。それ以外ならば捨て金となってもフォウルドするであろう。見榮じゃ。
吾輩のハンドはどうあがこうがブタ、ハイカードじゃ。
女狐の手札は6・6あるいは7・7で、待ちは6か7、フォオ・オブ・ア・カインド、フォオ・カアドを狙ってるやも知れぬ。フルハウスなぞしみったれたハンドは狙わない、とは吾輩の賈い被りであろうか。
 吾輩はオウナアへ視線を移した。女狐はシガリロを咥えようとしたが床に落としてしまい、忌々しげにもう1本抜き咥えた。明らかに冷静さを失いつつある。
 吾輩もピイスに火を点けた。やはり吾輩には小博奕が性に合っておる。人殺しとは云え、マネイ・ゲイムなどに一喜一憂などしておったら気が狂う。否、すでに狂っておるが、金銭欲で動かされるのはまっぴらじゃ。
吾輩は追加チップ400枚をポットに乗せた。
 ポットには金チップ2,004枚。
オウナアは軽口を叩いた。「後先を考えないプレイは身の破滅に繋がりますわよ」
「もう破滅は何度も經験しとるわい」
 吾輩は性格と精神に破綻をきたしておるが、躰はまだ達者じゃ。先行きは知らんがの。
 リバア。コミュティ・カアド最後の5枚目。
クラブの10。
 金チップの残りは448枚、女狐をカマにかけるには乏しい。
吾輩は頭陀袋から100万の札束50個を取り出し、従業員に声をかけた。「五千万有る筈じゃ。まず数え、金チップに交換して呉れぬか」
「し、承知しました!」札束を受け取った従業員は青ざめ、キャッシャアへ走った。
 誰もが言葉を発しなかった。
 しばらくし、従業員が女の化粧箱ほどの大きさの黒い箱を運んで来た。「中には金チップ5,000枚ございます。ご確認のほどを」
 見るとコイン・ホルダアが何層もの箱に綺麗に収納されており、ホルダアひとつ開けて見るとまさしく金チップであった。わしはテイブル隅に置いた。
 再びオウナアに眼をやると、灰皿に火の点いたシガリロがあるにも関わらず新たなものを咥え、金無垢と思しきデュポンのライタアで火を点けようとしておった。
「メイクレイズ」吾輩は面倒臭いので、運んで来た従業員に一万円札一枚渡し、チップを置く役にした。万札一枚ならば断れまい。従業員にチップ5,000枚、と告げた。
従業員は慎重に箱から取り出しながらチップをポットに置いた。
「お客様。火遊びは火事の元ですわよ」オウナアの声は少々裏返っておった。
「吾輩はそれを見たいのじゃ」
 吾輩は見逃さなかった、オウナアの丸い眼を。すぐに元の切れ長の眼に戻ったが。オウナアは何やらおそらくフォオ・オブ・カインド、否、吾輩と同様にブラフやも知れぬ。
 もはやここまで来たらば後悔などするか。後悔する様な殊勝な心持ちがおうたのであらば、とっくの昔に博奕から足を洗っておるわ。吾輩がいまのところ投じておるのは現金換算で60,020,000円じゃ。
「ぶ、ブラフに決まっております!そんなまやかしに乗せられるわたくしではありません!」とうとうオウナアが感情をむき出しにしよった。「わたくしは相当なハンドを完成させております。あなた様のハンドはワンペアかハイ・カードに決まってますわ。カジノ・オーナーが口に出す言葉ではございませんが、そのチップを戻すくらいの慈悲は差し上げます。お分かりでしたら戻しなさい」
「ああだこうだやかましいのう。幾ら張ろうが負けるが、吾輩の勝手じゃろうが。ひとたびポットに乗せたチップは返してもらえん、とカジノ・ルウルにはあろうが。確かに吾輩のハンドは大したものでは無い。じゃがお主に勝つ自信はほんの少しじゃがある。ならばさっさと、フォウルドするか、コオルするか、レイズするか決めぬか。ちなみにな、吾輩はいかさまを使うが、バレたことは無い、ふふふ」
「フ、フォールド!くそったれ!」オウナアは震える手でカアド・ディラアに返した。
 これでポットに乗ったチップの総数は5,204枚、現金換算だと52,040,000円となった。五千と二百万。手持ちは1,848枚、交換しすぎたかの。
「さて、義務は無いがショウダウンと行こうか。土産となるからの。その前にタバコと酒をたしなんで良いかの?まさに白熱の勝負じゃて、吾輩は結果次第で心臓麻痺を起こすかも知れん」吾輩はディラアに問うた。
「ど、どうぞご自由に。た、ただし、カードには触れないで下さい」
 吾輩は従業員に注文した。「いつもは森伊蔵を頼むのじゃが、今日は〈百年の孤独〉が呑みとうなったわい。置いてあるかの?」
「ええ、ございますが」
「ならばそれの炭酸割りを頼む」
「かしこまりました」従業員は去った。
 吾輩はピイスに火を点け、紫煙を吐いた。「しかし何じゃな、『IR推進法』と『實施法』は可決・成立した。現在約17の都道府県がカジノ誘致をしておるらしいが、お主らも参入を考えておるそうじゃの。東京は競争が激しいじゃろうが、その辺はどう考えておるのかな?」
「そ、それはまだ未定です」オウナアは強張った表情で答えた。「ハイ・レートにして当カジノと勝ったお客様が利益を上げる様にするか、ロウ・レートにして誰もが楽しめる娯楽施設にするか、思案中でございまして」
 従業員が、百年の孤独炭酸割りを持って来た。吾輩は頭を下げ、チビリチビリと呑み始めた。
「もうお気分は落ち着かれたのではありませんか!」しびれを切らせた、であろうオウナアがたちあがった。「早くショー・ダウンしハンドを見せて頂けませんか?わたくしたちがいつまでもポーカー・テーブルを陣取る訳には参りませんので!」
「そうじゃな」吾輩は百年の孤独炭酸割りを一気に呑み干した。だがピイスを咥え、唇が焦げる寸前まで吸った。
 オウナアは再びシガリロを加え、デユポンで火を点けた。「相当お強いハンドを完成させたようですね。もしもいかさま、であらば畳の上で往生出来ませんよ」
「そう思うのはお主の勝手だが、発覚したことはない。下手にケチをつけらば吾輩は容赦せぬ。加えて二度とこの闇カジノには寄らぬ」
「まあ恨みつらみさえ忘れて下さるのであらば、あなた様を出入り禁止にしたり邪見にお扱ったりは決してしませぬ。では、ハンドを」
「まあチンケな手じゃが、晒すとしようか」
 吾輩は手札を2枚、表にしてテイブルに置いた。「まあ、こんなもんじゃ」
オウナア、ディラアは悲鳴を上げ、見物人は歓声を上げた。
「ハ、ハイカード!ブタ!」

宴のあと

「こ、こ、こんなバカな!こ、このハッタリ屋め!」オウナアは両手で頭を抱えた。
「10年、否、20年に1度はこう云う手で勝つこともあろうて」
 オウナアに眼をやると、明らかな殺意が。殺したければいまここで殺すが良い。返り討ちにしてやる。
「いやはや、この様なチンケなハンドでぼろ儲け、大金が拝めるとはのう。吾輩は明日にも車にひかれくたばるやも知れぬ。もっとも、あこぎな賊に今宵、襲撃されるやもな。であるが、吾輩には殺し屋稼業に鞍替えしてもおかしくは無いボディ・ガアドを待たせてあるがのう」吾輩は身動きもせぬオウナアを嘲笑してやったわい。
吾輩はテイブルを叩いた。「吾輩の手持ちがおよそ1,848枚、ポットには5,204枚。合わせて7,052枚、であろう。もうへとへとで運べぬ。すまんがキャッシャアへ持って行き、換金して呉れぬか」
「か、かしこまりました!」従業員ふたりが金チップの山をトレイに乗せ、キャッシャアへ向かった。
周りは騒然とし始めた。オウナア以外。
 従業員が現ナマを持って来た。「現金換算で、ええと、70,520,000円でした。そして5%の手数料3,526,000円を差し引き、計66,994,000円です。ご確認のほどを」
 吾輩は札束を頭陀袋に押し込み、残りを財布に入れ立ち上がった。「楽しかったぞ。ではまた、ご免」

賭博稼業

執筆の狙い

作者 売文屋
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ルウルシラナイとおもろくないし間違ってるかも。

コメント

匿名係
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うん。難しいデス。


麻雀、お好きですか?
さりげなく、質問デス。

売文屋
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匿名係さま

やりますがさいきんメンツが。昔は役満ばかし考えてたけど、じっさい出ないからね。阿佐田哲也を読んで始めた一人です。
カジノもさいきんはルールゲームを避けスロットマシンばっかりだとか。
ヴェガス空港にも、スロットがあるんです。

匿名係。
240.133.31.150.dy.iij4u.or.jp

役満って、なかなか出ないですよね〜!
カジノには行った事がありません。
NYはあるけれど、西海岸は未到です。
麻雀モノを書いてくださいよ。なんて、リクエストしてしまったり💦

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