作家でごはん!鍛練場
ツーマウス

センチメントキャンディショップ

路地裏の、隅の方に、不思議な雰囲気を醸し出しながら佇んでいる店があった。


散歩中。
散歩中に気になる路地裏があった。入ってみると普通の路地裏。
ここは予想出来ていた。しかし。
しかしだ。

「何だろう、ここ」

不思議なオーラを纏った店があった。
怖くは無いが、楽しそうといった雰囲気でもない。ただ、普通の店では無いことがオーラから分かる。

「ここはキャンディショップですよ」

唐突に声をかけられ、身体がビクッと跳ねる。振り向くと銀髪で背が低い、中性的な人が立っていた。

「おっと、驚いてしまったようですね。申し訳ございません。この店の説明を致しますと、ここはキャンディショップです。ただ、普通のキャンディを売っている店ではございません」

飴を売っている店、そもそもキャンディショップという言葉を聞いたことが無かった。
そして普通のキャンディを売っている店じゃない。だとしたらどんなキャンディーだ。


「怪訝な顔をしてらっしゃいますね。普通のキャンディを売っているんじゃないのならどんなキャンディだよってところでしょうか。ここでは、感情を操作できるキャンディを売っています」

そう告げられた時、俺はもっと怪訝そうな顔をした。自分でも意識するぐらいに。
感情を操作するキャンディ。疑問がありすぎる。

「どういうことです?」

銀髪の人に問う。

「言葉で説明しても分かりにくいもの。ならば体験してみてください。このソーダ味のキャンディをどうぞ」

その人に流されるままキャンディを受け取り、包みを開封する。
そして口の中に入れる。ソーダ味。何の変哲もないソーダ味。
外見もしっかりキャンディだったし、味にだって何かがされているような味ではない。

「どうでしょう」

「どうでしょう」。そう言われても何も無いものは無いのだからしょうがない。

「何も無いですよ。ただのキャンディじゃないです…か…!?」

急に何かが、いや、「悲しみ」という感情が、心を食い荒らしている。
腹を空かせた猛獣のように、心を食い散らかしているのだ。

「こういうことです」

いや、どういうことだよ。こっちは何も分からない状況が理解できない。
そう思っているうちに頬に何か生ぬるいものが伝って服に染みつくのが分かった。

「な、涙…!」

「感情を操作するとはこういうことですよ。ここでは「ソンバー」という名で売っています。口直しにこちらをどうぞ」

またキャンディを渡された。このキャンディを舐めると元に戻る気がしたから一心不乱に奪い取って口内に放り込む。爽やかなミント味が口の中を占める。

「クリアキャンディです。前に舐めたキャンディの感情を消し、元通りにすることが可能です」

説明されている間にも「悲しみ」という感情は消えて行き、至って普通の感情に戻った。

「どういう仕組みですか…!」

元々「変だな」という感情だったにもかかわらず、涙まで流させられてたまったもんじゃない。疲れた。

「難しいですので。ニュートンやアインシュタインでさえも理解不能でしょうからね」

「じゃああなたはニュートンやアインシュタインよりも天才なんですか!?」と喉まで出かかったがこれは初対面に発する言葉では無い、と思い留まる。

「さぁ、散歩にお戻りください」

…何故だ。何でこの人は俺が散歩中だったということを知っているのだろう。

「何で…!」

「さぁ、お早めに」

訊こうとすると催促の言葉と共に手で背中を押され、店に背を向ける形になってしまった。

「どうしてです…か…?」

振り返る。無い。
さっきまであった店がどこにもない。店のあった場所はゴミが散乱しており、さっきの銀髪の人も、店も、跡形も無くなっている。




――またどこかで。

脳内にその言葉が、さっきの人の声で響いた。

センチメントキャンディショップ

執筆の狙い

作者 ツーマウス
catgw1.hicat.ne.jp

この小説を書いた理由は僕でも分かりません。
表現したいものは「不思議」です。
執筆上どのような挑戦があるか、特にありません。

コメント

もんじゃ
KD111239165057.au-net.ne.jp

 ツーマウスさま

 拝読しました。

 個人的な感想ですが、なかなか面白かったです。

 でも、なんでだろ、デジャヴな感じがある。感情をどうこうできるなんとやらの話を前にこの鍛練場で読んだことが確かにある。偶然似てるだけ? それともそれを書いた作者さん?

 今回のやつのほうが読みやすくシェイプされてるような印象。

 よかったところはアイディア、語り口、文章。

 よくなかったかもしれないところは、はい、やっぱり既視感。でもこれは書き手さまのせいじゃない。あとは端的過ぎたかと。もう少し膨らませたほうがこれはよろしいかと。

 あと個人的な趣味を書いていいですか?
 キャンディじゃなくてね、ドロップのほうがリリカルかな。レトロでよくないですか?
 でね、ドロップの名前がムーンドロップ。
 銀髪さんがね、くちびるをすぼめて、ムーーーン……、って言って、一呼吸おいて、……ドロップです、とか言うわけ。そんでにっと笑う。よくないですか?
 だなんてね、ちょっと感じるとこあって出すぎたこと書いちゃいました、すみません。

 読ませてくださりありがとうございました。

茅場義彦
M106072175192.v4.enabler.ne.jp

こういうのでいいんすよねええ。。。

ツーマウス
catgw1.hicat.ne.jp

もんじゃ様

申し訳ございません。このサイトで小説を書くのが初めてなものでして。
僕もドロップは考えたのですが、何故でしょう、キャンディにしたんです。
本当にごめんなさい。

もんじゃ様のアイディア、次の小説にしっかりと生かしたいと思います。
ご指摘、ありがとうございます。

あと…ちょっとした言い訳みたいなのなんですが、僕自身が小5でして…。申し訳ございません。

ツーマウス
catgw1.hicat.ne.jp

茅場義彦様

お褒め頂き光栄です。拝読してくださり、ありがとうございます。

富山晴京
softbank126219062098.bbtec.net

拝読しました。
文章でところどころ気になるところがありました。
「不思議な雰囲気を醸し出しながら佇んでいる店」
「不思議なオーラを纏った店」
同じような役割を持つ表現が二回出てきます。二回も言う必要はないので、どちらか削った方が良かったと思います。
それから
「怪訝な顔をしてらっしゃいますね。普通のキャンディを売っているんじゃないのならどんなキャンディだよってところでしょうか。ここでは、感情を操作できるキャンディを売っています」
接客業をしている人間はあまりこういうなれなれしい言葉遣いはしない気がします。お客様に失礼だからです。
もっとも、そもそもこの銀髪の人が接客業をしているのかどうかとか、銀髪の人の立場によって言葉遣いは変わるのでしょう。
大事なのは、その人がどういう役割の人間で、主人公とどういう関係で、その役割の人間がいかにも言いそうなことを言っているかということです。たとえば小学生が
「先生、トイレ!」
 と言うのは、いかにも小学生が言いそうだし、読者が読んでもこれはリアルに書けていると納得してくれます。さらにそれが自分の身の周りにあったなと思ったとき、読者が共感とか興味を示してくれると思うのです。
ですが、こういうことは実際に経験してみないとわからないので、難しい部分ではあるのですが。一番いいのは自分が体験したことを書いてみることかも知れません。
それにしても、小学五年生でここまで書けるというのは素晴らしいですね。読んでいて面白かったです。この作品を通じてあなたはわくわくさせるようなものを書くのがうまい方なんだなと思いました。これからも頑張ってください。

ツーマウス
catgw1.hicat.ne.jp

富山晴京様

富山晴京様の言う通りですね。申し訳ございません。確かに同じような表現です。
次の小説を書くときにしっかりと生かさせて頂きます。

そして、銀髪の人は接客業はしていない設定です。分かりにくかったですね。
ごめんなさい

銀髪の人は最後にお店と共に一瞬で消えているので人間ではありません。
幽霊か、幻か…そこは富山晴京様のご想像にお任せします。

銀髪の人の立場は一応店主という感じで、従業員はいません。

本当に分かりにくかったですね。

以後、気を付けます。

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