作家でごはん!鍛練場
のべたん。

1500文字探偵

 
 セレブたちが集う絶海の孤島で事件は起きた。干潟に大柄な男の死体。全身は泥でひどく汚れていた。首には紐が巻かれたような痕と吉川線(犯人による絞殺等に抵抗した際、被害者が自らの身体に傷をつけた跡のこと)があり、他殺と断定。しかし遺体発見時、干潟には足跡がひとつもなく、判明した死亡推定時刻は全員が島唯一のコテージで朝までパーリィーを楽しんでいた。つまり容疑者全員にアリバイがあったのだ。捜査は混迷を極めた。詳しい経緯は省略するが、偶然ゲストのひとりとして招かれていた名探偵、数野限(かずのかぎり)はこの事件のトリックを暴き、容疑者七人と捜査担当の朝倉刑事を犯行現場に呼び寄せた。
「数野限、通称『千五百字探偵』どんな事件も千五百字で解決してしまうという、あの!」朝倉刑事が興奮気味に語った。
「限りある文字数のため、皆様なるべく不必要な発言は控えていただきますよう、ご協力お願いします」
 数野は軽く会釈すると、早速トリックの解説をはじめた。
「このあたりは部分的に流砂がある干潟なのです」
「流砂?」
「つまり、底なし沼です」
「ほう」
「犯人は気絶させた被害者を、潮が満ちる夜にボートで沖まで運び出し、ロープに重りをくくりつけて海に落とし、端を被害者の首に巻き付けて海に投げたんです。ここは満潮時でも150cmしか潮位がないので、長身の被害者は溺死することはありません。投げ込んだ重りは流砂の上に落ちて沈み、被害者の首に巻き付けられたロープは徐々に泥のなかへ引っ張られ、被害者は窒息死したのです。身体が泥で汚れていたのは被害者が必死でもがいた形跡でしょう。そのころ犯人は私たちと一緒に朝までパーリィーしていたという訳です。まあ、犯人にとっては溺死だろうが窒息死だろうが被害者の死亡時刻にアリバイがあれば、死因はどっちでもいいんですけど。ちなみに被害者の身体は泥に沈みません。流砂にも底がありますし、被害者は仰向けで死んでましたから。ムツゴロウをご覧なさい。解らない方は後でググってください」
「流石名探偵。で、犯人は」
「佐藤さん、あなたですね」
 数野は佐藤を指差す。
「第一発見者のあなたは、被害者の首のロープを刃物で切り、そのまま泥のなかに隠したんです」
「ち、違う!」
「泥に埋まっていた刃物とロープは既に鑑識にまわしてます。あのとき手袋はしてなかったから、あなたの指紋が出てくるはずですよ」
「う、うぅ……」
「早く白状してください。あと494文字しかない!」
「すいません、わたしがやりました!」
 佐藤は頭を地面に擦り付けて泣いた。
「あいつを、許せなかった。あいつは」
「すみませんが手短にお願いします」
「わたしの妻を寝取ったのです」
「ご協力ありがとうございます。これにて事件は無事解決です」
「おおっ、聞けるぞ、あのキメ台詞が!」
「この世に解けない謎はない!真実はい」
 そのとき付近を捜索していた警官が駆け込んできた。
「大変です! 浜辺に死体が!」
「いやいやちょっと待て! 言いたいことは色々あるがあと267文字しかない句読点もなるだけ使うな状況を説明しろ簡潔に」
「五十代全裸男性死体包茎コテージ管理人です!」
「誰だ!誰がやった!あと201文字しかない早く名乗り出てくれ」
 数野喚き周囲に懇願。
 周囲沈黙。

「分かった皆目をつぶれ正直に手を上げろ警察には云わん」
「そんな滅茶苦茶な!」
「これしか方法はない! さあ皆目をつぶれ!」



「手を上げろ」





「よし、目を開けて」
「犯人はお前だ佐藤!」
「そんな云わないって約束でしょう!」
「知るかこの連続殺人犯!情け無用刑事さん早くこいつを捕まえて」
「見事だ千五百字探偵」
「この世に解けない謎はない!真実はいつも《1,500文字達しました(\(^o^)/△▨▩)/》

1500文字探偵

執筆の狙い

作者 のべたん。
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トリック穴だらけミステリーを書きました。

感想いただけたら幸いです。


※《1,500文字達しました(\(^o^)/△▨▩)/》は1500文字に含めておりません。

コメント

脱ぬるま湯
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楽しませていただきました。

不思議な点が2点。

1)文字数を数える箇所を削減したら、もっと書けるのに、しなかった点。
2)
作者は、どうして二人殺したのか。一人だけだともっと複雑なトリックが書けたのに。

この2点を考えるに、作者は意識的に杜撰さを見せつけて、食い付いてきたコメントを釣り上げる策略なのではと、ビクビクしながら書いていることの方が、よほど恐怖。

のべたん。
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脱ぬるま湯 さま
感想ありがとうございます。

〉1)文字数を数える箇所を削減したら、もっと書けるのに、しなかった点。

 文字数を云えば臨場感伝わるかなと思いまして…… 残り時間的な感じです(ご指摘の通り、これをやると書ける内容は減ります)

〉2)作者は、どうして二人殺したのか。一人だけだともっと複雑なトリックが書けたのに。

 複雑なトリックが書けないからですね。


 ありがとうございました!

かじリン坊
vc226.net112137227.thn.ne.jp

これいっその事、あと四、五人の遺体が発見されて、いったい何人寝取られとんねん?そりゃ男を殺すより女房を殺した方が良かったんじゃね?的な落ちでもよかったのかもね。最小文字数の最大量殺人文学になったかもね!面白かったです。

夏の魔物
KD106128127251.au-net.ne.jp

アイデア賞ですね!別の意味で緊迫感が生まれていて、面白かったです。普段本を全く読まない妹に見せたら、手を挙げるところが面白いと言ってました。
そのあと、夜ご飯を食べている時に私が「そんな云わないって約束でしょう!」と言ったら、妹がご飯吹き出してました。

ライダー
KD175134225224.ppp-bb.dion.ne.jp

のべたん様

拝読しました。

いやー、面白かったです。前回は、精妙な描写を楽しませていただきましたが、こんなコミカルな作品もお書きになるのですね。感心しました。

1500文字探偵、タイトル通り、まさに1500文字というところ、笑ってしまいました。文字数がどんどん減っていくのがカウントされるのは、この作品の設定ではうまく働いてると思います。

今回は、「第一発見者が一番怪しい」で解決でしたが、この調子で、「犯罪の影に女あり」「家族が一番怪しい」「被害者実は犯人でした」等など、ミステリの定石をいく事件を1500文字探偵が解決していく話、読んでみたいと思いました。シリーズ化できる設定だと思います。

個人的には、「名乗り出てくれ、警察には言わん」が一番好きな所です。終わりに近づくにつれて、なりふり構わずの必死さがおかしかったです。

次回作、楽しみにしています。

夜の雨
ai192003.d.west.v6connect.net

「1500文字探偵」読みました。
トリックは考えるだけで邪魔くさそうですね。
御作はトリックを考えたり、ひも解いたりする作品ではなくて、1500字でいかに解決するのかという面白おかしい作品のようです。

そういう方向では成功しているのではないかと思いますが。
登場人物のキャラクター等がわかるように、もう少し人間描写とか、味付けをするとか、作品の世界観が伝わるように描くと楽しめるかも。なので、1500字にこだわることはないと思います。10000字とか。

以上です。

のべたん。
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かじリン坊さま
感想ありがとうございました。

〉最小文字数の最大量殺人文学

確かに。いっそ島に来たセレブ全員殺害して、誰もいなくなったーというオチを千五百文字でやればよかった、かもしれません。
大塚英志の『探偵儀式』で、島に集まった探偵たちが一斉に死ぬ(トリックは忘れてしまいましたが)やつがあったんで、出来ないこともないのかも。

ありがとうございました!

のべたん。
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夏の魔物 さま
感想ありがとうございました。


普段本を読まない妹さんにも楽しんでいただけたようで、ホッとしました\(^o^)/

のべたん。
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ライダーさま

感想ありがとうございました。

シリーズ化は考えてなかったんですが、検討してみます。
本当は事件を1000文字で解決する『千文字探偵』がやりたかったんですが、力不足で……

次はもっとコンパクトにまとめて、今回よりマシなトリックを考えてみます。

ありがとうございました!

のべたん。
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夜の雨 さま
感想ありがとうございました。

人物描写等やアリバイの説明には文字数を使ってしまうため、1500文字で収められないのですが、今後、ちゃんとした物を書くときには、文字数の制限はしないで、しっかりと書いていこうと思います。

ありがとうございました!

ニャンコロ
110-132-110-247.rev.home.ne.jp

拝読しました。

アイディアは素晴らしいですね。これだけでもう楽しく読めました。
内容がそのために犠牲になっている節は否めませんが……ドラマ古畑任三郎も展開やギミックに突っ込みを入れようとすれば入れられますが、それは野暮のように思います。(古畑と似たものを感じました)
ただ一作だけですと1500文字の魅力が活かしきれないかもしれませんね。シリーズ化して、すべてを1500文字内で作り上げて、はじめて魅力が全発揮されるのではないかと思います。
ありがとうございました。

ニャンコロ
110-132-110-247.rev.home.ne.jp

「1500文字内」ではなく「1500文字ちょうど」ですね、失礼しました。

のべたん。
sp49-104-8-242.msf.spmode.ne.jp

ニャンコロさま
感想ありがとうございました。

内容が犠牲になっているとの指摘。その通りだと思います。
あらためて見直してみると、酷い出来です。手抜きでしかないです。そもそも鍛練場に出すべきではなかったのかもしれません。

自らの未熟さと甘さを痛感しました。


ありがとうございました!

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