作家でごはん!鍛練場
ニャンコロ

瓦礫に埋もれた生存者

 予備校のある雑居ビルから出た笹本は、長い息を吐いた。
 吐息は黒縁メガネのレンズ越しに、白いモヤとなって夜空に向かって溶けていく。
「寒っ」
 スカートの隙間から入り込んだ冷気に体が震えた。すぐに脇を固めてマフラーの中に首を引っ込める。暖房の効いていた教室が早くも名残惜しい。
「失敗した。ズボンで来ればよかった」
 高校の服装のまま来た愚かさに嫌気が差す。
「ほんと、私って要領悪いなぁ」
 すこし気を抜いただけで、勉強して重くなった頭が自然と下に傾いていく。
 違和感のある後頭部に、マフラーを貫通した冷気が触れた。手入れの時間を減らそうと長かった髪を切り落としたが、勉強中にうなじがスースーして集中の邪魔になる始末。
 先日百均で買ったマフラーは生地が薄くて、防寒具としての意味があるんだかないんだか。
 こういった失敗はまだ可愛い方だ。
 面白くもない勉学に精を尽くして、将来なにになりたいのか、そんな根本的なことさえ分からずにいる。ただ両親を安心させたくて良い大学に入ろうと必死に勉強しているけれど、昼と夜のどちらの授業内容にもついていけなくなってきている。
 参考書の入ったバッグを片手に家を目指す。たったそれだけのことなのに、なんだか息が詰まる。
(家に帰っても寝るだけで……もっとちゃんと心の休まる場所があればな。安らぎ、最近ないな。――ん?)
 向かいの歩道から、女の子の喜ぶ声が聞こえた。
 五歳くらいだろうか。若いカップルの間で楽しそうに跳ねている。
(元気があるのは良いことだ。ふふっ、飛び跳ねすぎてお母さんに注意されてる)
 女の子はイヤイヤ頭(かぶり)をした末に、母親に抱き上げられた。少し暴れてから、母親の肩に顎を休めて落ち着いた。ふとした瞬間に、笹本と視線が合った。
 笹本が作り笑顔で小さく手を振ると、女の子は何事もなかったように額を逸らす。
(そりゃそうだよね。お母さんに抱かれて幸せそうなら、それがなによりだ。……にしても、可愛らしい子だったな)
 一週間振りくらいに、心がほんの少しだけほっこりした気がする。
 笹本は首に巻いたマフラーをいっそうキツく締めて、帰路であるネオンの煩(うるさ)い駅へと向かった。
 駅地下へと続く階段を下りると、メガネのレンズが厚く曇る。
(将来どころか、今目の前さえまともに見れないなんて……)
 気にせずしばらく歩き続けていると、少しずつメガネの曇りは解消されていく。端に追い詰められた最後の曇りがとうとう消えようかという時――笹本は激震に襲われて、視界がぐらりと暗転した。

 土煙の臭いで笹本は目を覚ました。
 不自然に横たわっている自身の体を確認しつつ、五感にも意識を割いていく。薄暗闇が視界を覆っている。近くから微かにジーッという通電音が聴こえる。
「なにがどうなって……」
 うつ伏せの状態からゆっくりと上体を起こすと、地についた掌がじんじんと痺れた。肩も背中も足も、衝撃を受けた後のように重く痺れている。
 動きと連動して、ぱらぱらと小さな石や砂が制服の上から零れ落ちていった。
「どうして私、こんなところで寝てたの?」
「おう! やっと起きたか、嬢ちゃん!」
 背後から浴びせられた男の図太い大声に、ギョッとなる。
 暗闇の奥がうごめて、笹本より一回りも二回りもでかい大男がニヒルな笑みを浮かべて現れた。
 似合ってないチェック柄の明るい長袖を、上機嫌に見せびらかすかのような堂々とした態度。胸ポケットには、お洒落のつもりなのかミラータイプのサングラスが掛かっている。
「え? ……ここは?」
「なんだ、覚えてないのか?」
 大男は笑みを崩して短髪頭の天辺を指で掻いた。
「ここは駅の地下道だ。突然揺れたと思ったら、天井がドーン! 落ちてきてよ」
(この人は大岩でも持ち上げるポーズをして、何を言っているのだろう?)
「落ちてきた? 私、たしか予備校から家に……うぅ」
 軽くめまいがした。
 ここ最近は、受験勉強に関係のない思考を無意識に避けるよう過ごしてきていた。理解しがたいこの現状に、ついさっき頭に叩き込んだはずの内容が、ぽろぽろと抜け落ちてしまいそうで怖くなる。
「ああ、無理しないでください。混乱するのも当然だけど、こういう時こそ冷静にね」
 大男の隣に優しげな男がすっと現れた。
 笹本の顔を心配そうに覗き込む彼の第一印象は――紳士な人。縦にすらっと長い体に、パリッとノリの効いた黒いスーツが絶妙に決まっている。
 彼に救いを求めるように、笹本の強張っていた口元が緩んだ。
「すみません、あの、あなたは?」
「僕は佐藤。隣の彼は田口さん。ここに居る人は皆、あなたと同じで崩落に巻き込まれたんです」
「崩落? ……ですか。あの、それより私、家に帰ります」
 早く帰って寝ないと、明日の学校に遅刻してしまう。万が一遅刻したら、自己PRの要である内申に汚点が付く。ただでさえ周回遅れの受験戦争に、傷を増やして臨める余裕はない。
「嬢ちゃん正気か?」
 大男の田口が大げさに呆れて続けた。
「帰らせたくても出られないから、こっちは困ってるってのに」
「ちょっとー! まだこの子は目覚めたばっかりなのよ? そんな言い方しなくてもいいじゃない」
 明るい髪色の女性が田口の後ろから浮かび上がる。拗ねたような口調とは裏腹に、ポジティブな笑みを湛えている。
「あ、私の名前は涼子ね。よろしく」
 若々しさを前面に出した涼子は、百戦錬磨の顔ではにかんだ。歳は大学二、三年生くらいだろうか。
 長ジーンズのズボンで近づいてきて、黒いダウンの袖から細い指を気さくに差し伸べてきた。
「あの、笹本です……痛っ!?」
 体を立ち上げようと涼子の手を左手で受けた、その瞬間だった。左手首に電流のような痛みが走った。強い痛みはすぐに衰えるも、嫌な感じにじわじわとくすぶり続ける。
「大丈夫ですか? 左手首が痛むんですね? あーえーっと……こういう場合はー」
 佐藤と名乗った長身の男は、手当てをする気持ちはあれど具体的な方法が分からないのか、触れない距離で手をあわあわさせた。
「少しだけ。でも大丈夫です。ご心配おかけしてすみません」
 笹本はあしらうように適当に答えた。
 本当は大丈夫じゃなかったが、左手首の負傷ならまだ勉強はできるし、直近の問題はないだろう。
「駄目よ無理したら。時間は経ってるけど、しない手当てよりする手当てってね」
 涼子は、有無を言わさずに笹本の左の袖口をたくし上げていく。
「何するんですか!? 痛いっ」
 左腕を引っ込めようと暴れると、手首の方が酷く痛んだ。
(病院でお金を払って診てもらう分には、喜んでじっとする。けど、素人に適当な処置をされて、悪化でもさせられたら敵わない。受験までには治ってもらわないと困る。大学受験は今の私のすべてなんだ!)
「あぁ逃げないでよ。取って食ったりしないから。手当てをするだけよ」
「涼子さんはたしか、看護師を目指しているんですよね」
 佐藤が涼子に訊いた。断固として抵抗の意思を示す笹本にさり気なく教えるような、そんな訊き方だった。
 佐藤の向けた優しい相貌に反して、涼子は寂しげに視線を落とす。
「ええ。……夢は叶わずだったけどね。――これでよし! 私のハンカチを巻いておいた。お気に入りのキャラの絵が入ってて、ちょっと恥ずいけど」
 笹本が二人のやり取りに聴き入っている隙に、涼子はささっと手当てを終わらせてしまった。左手首が固定されて、痛みは少しずつ和らいでいった。
 その手際の良さには思わず感心する。
 今度こそ手を引っ込めて防御体勢を作る笹本に、涼子は両の手の平を見せてウインクを一つ返した。涼子の表情は「やり遂げた」とでも言いたげだ。
 勝手に手当されたのは腑に落ちないが、ハンカチを突き返す気にはなれなかった。
(観念して、感謝の一つでも言うべき、なのかな。――にしても、このハンカチの絵って)
「くまのプーさん? あ、ありがとう、ごさいます」
 右手ですくった蜂蜜を食べようと大口を開けたプーさんが、横目でこっちを見ている。お茶目な構図だった。
 プーさんに癒された、のかは分からないけれど、笹本はぎこちないながらも愛想笑いできるだけの余裕と冷静さを取り戻していた。
「良かった、ちょっとだけど笑ってくれた」
 嬉しそうに話す涼子の笑顔が眩しくて、直視するのがなんだか辛く感じて、つい視線が逸れる。
「あの、まだ良く飲み込めてないんですけど……本当に出られないんですか?」
「ダメだな」
 笹本の希望を、田口がだるそうに首を振って否定した。
「非常灯の明かりだけでも、薄っすらと全体が見えるだろ」
 田口の重々しい口調の先は、最終的に非常灯へと向けられた。笹本もその先を追いかける。ジーッと低い音を漏らす非常灯は、時折大きく点滅する。
 非常灯のわずかな明かりを頼りに、暗闇に慣れてきた目で辺りを観察する。
 出口になりそうな場所は、見当たらなかった。
「前も後ろも瓦礫の山だよ。お嬢ちゃんが生きているのは奇跡なんだぜ?」
(生きているのが奇跡? なんともバカっぽい言葉の配列だ。それだと世界中の生物が、奇跡を起こし続けていることになる)
「そうなんですか」
 自分でも驚くくらい冷めた言葉が口から出た。
「おいおい、そろそろしっかりしてくれよ。これは遊びじゃないんだ! 命の懸かった状況なんだ!」
 突然の田口の怒鳴り声に、笹本はとっさに耳を塞ぐ。
(もうイヤだ! ど、どうして私が怒鳴られなきゃいけないの? 命の懸かった状況? 私がこんな所で死ぬとか……あり得ないからっ)
「田口さん、そう声を荒げても事態は好転しませんよ」
 佐藤が場をなだめようと介入した。
 けれども、田口の憤る気持ちは収まる気配をみせない。
「だったら何か良い案を出してくれよ、佐藤さんよー。こうしている間にも、いつここの天井も落ちてくるやら」
(天井が落ちる? そしたら私はどうなるの?)
 怖い。一人で考えるには怖すぎる。
「あの、天井が落ちてきたら、私たちも無事じゃ済まないですよね? それって……不味くないですか?」
 恐る恐るながら、誰にともなく訊いてしまった。
 大学受験を失敗する以上の不安や恐怖は、ないと思っていた。けれど、上には上があった。
(人生って、どこまで私のことを貶めれば気が済むんだろう)
「もう! 田口さんはそうやって不安を煽らない! お願いだから冷静になってよ! あれから何度か揺れてるけど、ここは平気だったでしょ!?」
 涼子の高い声は、塞がれた空間内で良く反響した。
 死を目の前に突きつけられて、とてもじゃないが冷静になんてなっていられない。
(私はまだ死にたくない。それもこんな所で、知らない人と一緒にだなんて!)
「あ、そうだ! 携帯は、携帯は通じないんですか?」
「涼子さんの携帯でどうにか試みましたが、圏外でした。残念ですが……」
 笹本の必死の提案を、佐藤が悔しそうに俯いて打ち消した。
 その顔をする時の気持ちを、笹本は痛いほど良く分かっていた。それは自分が生まれてこのかた、何度も周囲に見せてきた顔だった。
「冗談、ですよね? 嘘ですよね? 私は死にたくない。まだ死にたくない! なんですかこれは。おかしくないですか? 私はただ、普段通りに家に帰ろうとしていただけなのに……私が何をしたって言うんですか!」
 ずっと真面目に生きてきた。地味でも良かった。人の幸せ、人の悲しみの平均を感じられる人生を目標にしてきた。
 よくよく振り返ってみれば、小学生を境に下がりっぱなしの人生だった。そしてとうとう崖が見える。
「天井は落ちませんし、あなたも死にません。僕らが死なせませんから! 生きて帰る手立てを考えましょう」
 佐藤の一つ一つ感情の乗った言葉は、反して、現実を無視したただの綺麗ごとにしか聞こえない。
「……あるんですか? 手立て」
「あります。出来るだけ体力を温存して、救助が来るのを待つんです」
 佐藤の眠たくなるような返答に、あーそだよね、としか思わなかった。

 それから何事もなく小一時間が経過した。薄暗くてじめっとした空気は、霧散することなく留まり続けている。
 体育座りでがっくしと頭を垂れる笹本は、地面に置いた“圏外”の携帯を無心で見つめていた。
 何かの拍子に電波が入るかもしれない。初期に抱いた淡い期待は、時間の経過とともに消え去っている。今はただただ無心だった。
「おいそこの人、嬢ちゃんの様子はどうなんだ」
 笹本からそれほど離れていない位置で、周囲を壁伝いに調べていた田口が手を休めて訊いた。
「そこの人じゃなくて、涼子ね。――左手首の怪我より精神的なショックが大きかったみたい。ずっとああして塞ぎ込んでる」
「最近の若いのはどうしてこう貧弱なのかねー。生きようっていう気概はないのか?」
 涼子が面倒くさそうにこめかみを手で押さえると、佐藤が両者を隔てるように間に入った。
「そうであれば良いのですが。皆が皆、田口さんみたく強くはないんですよ」
「はあー、そういうものか? することねぇなら、日記でも書いたらどうだ? 何もせず落ち込むだけよりマシだろ。俺の若い倅(せがれ)は、くよくよした日の夜はそうしてるぞ。これで明日になったらケロっとしてらぁ」
 それ良いんじゃない? と訝しげだった涼子は打って変って笑顔になって、立てた親指を田口にぐっと向けた。
「ということで、気も紛れるしさ。――どうかな?」
 涼子は声を弾ませながら笹本の元までやって来て、優しく肩を叩いた。
「日記……ですか」
 しぶしぶ顔を上げて対応するが、その色はどうしても曇ってしまう。
「予備校の帰りなんだってね。なら、その鞄にノートとペンも入ってるでしょ?」
「あり、ますけど」
 気乗りはしなかった。けれど断るとまた面倒臭い展開になりそうだったので、仕方なくノートとペンを取り出した。
(というか、この状況で日記って)
「あの、これってつまり遺書ですよね」
「あぁいや、そっか。……そうなっちゃうか。あ、あはは」
 涼子は明らかにしまったという顔をした。
 涼子の乾いた笑いを見ていると、笹本の緊張まで解けてしまいそうになる。
「でも遺書って、どう書けばいいんですか?」
 まさか成人式を迎える前に書く事になるとは、思っていなかった。
 遺書とはたしか、遺産について書くモノでもあったはずだ。
(私の遺産って……なにも思い浮かばないや。そっか、私って今まで、なにも持たずに生きてきたんだ……。なにも……。なーんにもない人生だったなぁ)
 笹本が足を抱えたまま呆けていると、すかさず佐藤も寄ってきた。
「人それぞれだと思うけど、家族や親友に対して普段言えないような事を書けば良いと思いますよ」
(普段言えないことなら、たくさんある。本当にたくさん)
「私……何をやっても上手くいかないんです。親孝行したくて勉強を頑張ったのに、期待だけが膨らんで、肝心の実力はつかなくて」
「大丈夫だから。思っていることは全部ノートに書いていこ」
 涼子は、小さく震える笹本の手を力強く支えた。
 そんなちょっとした親切に、心が揺さぶられて、涙が出てしまう。
「私こう見えて、本当は子供が大好きなんです。似合わないのは分かってるんです。でも、学校の先生になるのが幼い頃の夢で。もうずっと昔の夢ですけど……。本当に死ぬんですか? ――死ぬの怖いです」
「ぐだくだ抜かすな! 人はいずれ死ぬ生き物だろ」
 横から図太い怒声が全身を貫いた。
 声の主は田口だった。
(私はこの田口とかいう横柄なオジサンが嫌いだ。大嫌いだ!)
「やめてよもう! 死ぬのは怖くて当然じゃない」
 背中をさすりながら庇ってくれる涼子に、隠れるようにして身を寄せる。それでも田口に対する嫌悪と恐怖は募っていく。
 笹本を責め立てるような怒声は続いた。
「死は当然だ。だけどな、死を恐れるのはそいつが空っぽな証なんだよ。そんなに怖いのが嫌ならな、怖さを感じる暇もないくらい我武者羅に生きてみろ! 自分だけじゃなく、周りにも誇れるものを一つでも手に入れろ!」
 すべての負という負の感情が、我慢の限界を超えた。生まれて初めてプッツンきた。
「勝手な事を言わないでよ! なら、あなたは死ぬのが怖くないって言うんですか!?」
 笹本は負けじと田口に怒鳴り返していた。
「今はもう、怖くないね。それよか、守れるものを守れない悔しさのほうが……ずっと怖ぇ。怖えよ」
「私には守りたいと思うものもありません。どうせ私は何にもない、空っぽな人間ですよ」
 田口は何も言い返さなかった。自分の中の何かと戦って、一杯一杯になっているようだった。
「あなたはまだ若いんだから、空っぽで良いと思います」
 佐藤が諭すように割って入り、平坦な口調で続ける。
「僕、実は高校で教師をやってるんです。あなたのような生徒をたくさん見てきました」
「私みたいな人……?」
「何もないと思っている生徒ほど、何か一つの切っ掛けを得るだけで変わるものです」
「でも、ここで死んだら意味ないですよね?」
 本音が漏れる。隠す気にもならない。
 現実とはこういうものだと思う。いつだって綺麗ごとを嘲笑うように待ち受けている。
 佐藤はじっくりと悩んだ後に、澄ました顔を見せた。
「一つ賭けをしようか。ここで死んだら全て終わり、あなたの言う通りだ。でももし生きて出られたら……あなたは教師になる。教師になって、僕の分まで生徒を導いてあげてください」
 (そんな極端な賭けがあるだろうか? 死ぬか教師になるか、だなんて……。上手く言えないけど、とてもズルい気がする)
「あっれー? 教師が高校生と賭けをしてもいいのかな?」
 理不尽な賭けだと気付いた頃には、おちゃらけた涼子に話題を転がされていた。
「非常事態につき、細かいルールは無視してもいいでしょう」
 佐藤の返しに、涼子は「あはは」と軽快に笑う。一頻り軽快に笑ってから、笹本の不服そうな態度に合わせるようにトーンを落として、会話を振った。
「それはそうと、笹本さんはどうして先生になりたいと思ったの? ちなみに私は、困っている誰かを助けられる人になりたくて、看護師を目指しました。って、改めて口にすると単純な理由だね」
 自嘲して言葉を区切った涼子に、笹本は通じるものを感じていた。
「……子供が、好きなんです」
「いいよねー子供って。大人と違ってすれてないし、声も太くなくて」
 涼子は気付かれないようにして、チラリと田口を横目に捉えた。
「もっと声を抑えないと飛んできますよ、図太い声が」
 佐藤がおかしそうに談笑に薪をくべる。
 笹本はどうしようもなく込み上がる笑いで、頬をほころばせる。さすがに陰で笑うのは人として良くないなと思い、笑みをごまかすように舌を滑らせていく。
「小学生の頃、女性の担任に勇気づけてもらったことがあって……それで私もこんな風になりたいな、って」
 忘れかけていたセピア色の記憶をたぐり寄せる。
 二年生の運動会で、五十メートルの走者に選ばれた時の話。
 運動は苦手だった。特に走るのは、首がニワトリのように前後してみっともなくなる癖があった。衆人環視の前で恥をさらした上にビリっけつになるなんて、死んだほうがマシだとさえ思っていた。
 すがる想いで担任の先生に相談したら、どういうわけか、放課後に多目的室を占領して秘密の特訓をすることになった。
 今にして思うと、たった一人の子供のために毎日数時間を費やすのは、大変な労力だったはずだ。
 お陰でみっともない癖もなくなって、五十メートル走では二着になれた。
(こんなこと思うと、先生に呆れられてしまうかもだけど)
 癖や順位のことはどうでもよくなっていた。努力した過程と、二着になると同時に手放しで褒めてくれた先生の温かさ。この時に覚えた感情が、今も深層心理の底の底で人格をたしかに支えているのを感じる。
「でも、月並みの理由ですよね」
「そんなことないよ。私もね、改めて言葉にすると他愛ないなって思っちゃったけど、言葉じゃ語れない本当に大切なことが自分のココにきちんと残っていれば、それでいいんじゃないかな?」
 涼子の作った握り拳にはおよそ及ばないけれど、言葉にならない塊が、心のどこかで一際強くくすぶるのを感じる。
 昔はもっと無垢な性格だった。いったい何時からなのだろうか、物事を卑屈に考えるようになってしまったのは。
「おいお前ら、少し黙れ!」
 田口の一喝が笹本の童心を一蹴した。
「もーう! 楽しいお喋りくらいしてもいいじゃない。田口さんってなんでそんなにケチなのよ」
 唇を尖らせる涼子に、田口は懲りずにシーッと息を漏らして合図する。
「そうじゃない! シッ…………瓦礫のずっと向こうから何か聞こえた」
 それを聞いた佐藤と涼子は、眉の歪んだ顔同士を突き合わせた。
「僕には聞こえませんでしたが」
「私もちょっと。何かの勘違いじゃない?」
「ったく、いいからお前らは黙ってろ」
 田口は大きなため息を落としてから、瓦礫の向こうに注意深く耳を傾けた。
「ねえ! もし捜索隊が近くにいるのなら、声を出して知らせた方がいいんじゃない?」
 ハッとなった涼子が、すかさず提案した。
 それもそうだな、と田口は目を見張って胸を膨らませる。
「ぅおおおぉぉぉーーーい!! ここだああぁ! ここに居るぞぉぉお! 助けてくれぇーーー!!」
 笹本は耳鳴りに顔をしかめた。
 同じように佐藤も涼子も、迷惑そうに首をすくめている。
 耳鳴りが収まる頃合いに、涼子が静かに口を開いた。
「どう?」
「うーん。ダメだ、音が遠ざかって消えちまった」
 壁に耳を張り付けていた田口の表情が、分かりやすく落ち込んだ。
「声だと瓦礫に遮られて上手く届かないのでしょう。なにか硬い物を壁にぶつけて、音を鳴らしてください!」
 佐藤の逼迫した指示に、田口が誰よりも早く反応する。手近にあった大きな瓦礫を拾い、頭上で振り構えた。
「うし、任せろ!」
 カーンとガーンという音が繰り返し混じり合い、狭い空間の中で数回木霊した。
「…………返答、ないですね」
 しばらく口を閉ざしていた笹本の呟きだった。期待しても裏切られる、暗にそう告げている。
「くっそがああぁー!」
 田口は誰がどう見ても我武者羅に、瓦礫を壁に叩きつけ続けた。
 笹本は咄嗟に耳をふさいだ。
 耳鳴りこそ引き起こさなかったが、次第に寂しさを増させる音は、音が止んだ後もしばらく耳に残った。
 三分ほど様子を見守ったが、向こうからの返事はない。
「ちょっと田口さん、なにしてるのよ! 右手から血が出てるじゃん!」
「あ? んなこと気にしている場合か?」
 アホちゃうか、とでも言いたげな田口に、なおも涼子は声を荒げた。
「バカ!! ばい菌が入ったら大変なことになるのよ? もっと慎重に行動できないの!? できないならもう何もしないでっ!」
 涼子の思わぬ激しい剣幕に、隣で寄り添っていた笹本は目を丸めた。
 そんな笹本を知ってか知らずか、涼子は胸をしぼませて申し訳ない顔を向けてきた。
「ごめんね。田口さんって無鉄砲なところがあるみたいで」
「いや、あの、私は別に……」
 目を頻りに瞬かせている笹本に、奇妙な音が届いた。
 最初は田口が持っていた瓦礫を、地面に落としたのかと思った。けれど、それにしては音の響きが鈍い。もっとこう、遠くから伝わってきた音が、この狭い空間内で広がったような、そんな音だった。
 一度なら勘違いかとも思うが、二度三度と、その音は繰り返し響いた。
「音が……音が返ってきました!」
「だぁーから言ったろ!? きっと救助に来てくれたんだ、ありがてぇ」
 佐藤の驚きを塗り替える大声で、田口は大口を開けながら地面にどっしりと胡座を掻いた。
 音は一定間隔だったり、かと思えばランダムだったり。何かしらの意図を感じるタイミングで、絶え間なく届き続けている。
「もしかしたら……モールス信号?」
 笹本は呆然と巡る思考を垂れ流した。
 仮にそうだったとしても、解読の術を笹本は知らない。
「そのようですね。田口さん、向こうに返事をするので、代わってもらってもいいですか?」
 佐藤が瓦礫を持って田口の元へと寄った。
 モールス? と田口は口をあんぐりと開けて、間もなく「よく分からんが、好きにしろ」と場所を明け渡した。
「ひゅー、かっこいい!」
「涼子さん、茶化さないでくださいよ」
 佐藤は黄色いヤジを背中で笑って受け流す。
 再び瓦礫を叩く音が響く。田口の時とはえらく変わって、繊細で小気味好い、聴いていると心が疼いてくる。音色のような音だ。
「これで出られますか?」
「もちろん。なんとかなったのよ。もう少しの辛抱だから、頑張ろう」
 いつの間にか目を輝かせている笹本を、涼子は頭を自身の胸に押し付けるようにして抱きしめた。
「……はい。私、まだ生きていたい」
 真情を吐露すると、心の中で未来への展望が急速に芽生えていく。夜になると輝く星々のように、やってみたい事が湧いてくる。
「これからきっと楽しいこと沢山あるよ。辛いこともあるかもだけどね、そんなの気にしてちゃ人生が勿体無い。――せっかく生きているんだもん、楽しまなきゃ」
「楽しむ……。私失敗ばかりでどん臭いけど、もっと人生を楽しみたい。この閉ざされた闇から早く出たいです」
 声が自然と弾む。
 モヤが霧散して見るべきものがきちんと見えるようになっていく、そんな気がした。
「よく言った。それでいい、あなたはそれでいいのよ……」
 涼子の与えてくれる温もりに、笹本は心の底から安らぎを感じていた。
 次第にモールスのやり取りもなくなり、ただただ救助を待つだけとなった。
 時間の経過を待って。待って――。
 気がつくと笹本は浅い眠りの中を行ったり来たりしていた。目を開けようか少し悩んで、けれどもやっぱり心地良いから目は開けない。
 暗闇の中に三人の面影がおぼろげに浮かんでくる。一人は田口さんだ。含みを持ったしたり顔をしていて、気味が悪い。もう一人は佐藤さん。満足気に笑っている。最後は涼子さん。なぜだか少し寂しそうだ。
(目を開ければすぐ近くに居るのに、頭の中にまで出てくるなんて、変な感じだ)

 いつの間にか深い眠りに就いていた笹本を、ギュイーンというけたたましい機械音が起こした。
 頬に張り付いた砂利をぽろぽろと振り落としながら、笹本は立ち上がって待望の光景を見た。
 閃光のような明かりが視界を覆ったが、それでも目は閉じ切らずにいた。
「助けに来ました! 私一人ですが安心してください、もう大丈夫ですからね!」
 隊員は早口に言うと、ヘッドライドを上にずらして、代わりに小型の懐中電灯を取り出した。
 レスキューと書かれた腕章をした全身砂まみれの救助隊員が、複雑そうな発掘機を地面に置いて、注意深く天井を照らしている。その後ろには、中型犬が一頭なんとか入れそうな穴が空いていた。
「た、助かるんですか? 私」
 笹本から気の抜けた声が漏れる。
「はい、よく頑張りましたね。まずは左手首の怪我の具合を確認させてください。脱出に差し障りがないかだけここで診ますので」
「あの、なんで手首のことを?」
 えっ? と隊員は明らかに困惑の色を見せる。
「あなたが教えてくれたのでしょ? モールス信号で」
「あの、それなら私じゃなくて佐藤さんが――」
 誇らしい気持ちで佐藤の功績を説明しようとすると、隊員が未だに困惑した様子で言葉を遮った。
「ちょっと待ってください。あなたお一人ではないんですか!? では、佐藤さんはどちらに?」
(この人は何を言っているんだろう)
 そう頭の片隅で疑問を浮かべながら、辺りを見渡して佐藤を探した。
(あれ、居ない? 佐藤さんだけじゃない……涼子さんに田口さんも、みんなどこに居るの!?)
「さ、さっきまで一緒に居たんです! なんでなんで? 佐藤さんも涼子さんも田口さんも……どこ?」
 ひゃぁあ!? 悲鳴が出た。笹本から。
「どうしました!?」
「て、手に血が……」
 左手首に血に染まった何かが巻きついている。
(こんな気味の悪いものをいったい何時!? 私が寝ている間に? 誰が、なんでそんなことをするの!?)
「落ち着いてください。それは手当てのためにご自分で巻かれたハンカチではないですか?」
「……ハンカチ?」
 よく見てみると、血糊の隙間からくまのプーさんの頭が辛うじてうかがえる。その目はじろりとこちらを見つめている。血糊を抜かせば、紛れもなく涼子の巻いてくれたハンカチだった。
 ごほっごほ! なんだか急に喉が痛くなってきた。大声を出して枯らしたみたくにイガイガする。
「涼子さんに巻いてもらったハンカチ、どうしてこんなに血が付いてるの? ひぃいぃ!」
(私、右手も怪我してる? 眠る前までは無かったのに)
 右手の親指の付け根に、血の流れた跡のある切り傷がある。それだけじゃない、右手も左手も掌に無数の擦り傷があった。
(まるで……まるで大きな岩を両手で持って、それを別の何かに叩き付けた際にできる傷跡だ)
 笹本は力無く地面にへたり込んだ。
 その際に、制服の内側からノートが滑り落ちた。
「気をたしかに持ってください! ノートを落とされましたよ? 私の言っていることが分かりますか?」
 心ここに在らずの笹本に、隊員は困り果てた。ふと、落とした視線の先で開いたノートを捉える。懐中電灯の明かりが、たどたどしい文字列を照らし出す。
「『この子は死なせないこのこは死なせないこの子はしなせないこの子は死なせないこの子は』、これは……あなたが?」
 笹本はまるで霊に取り憑かれたように、ひょいと立ち上がる。
「あ! あれを見てください! あのジーンズはりょ……涼子、さん?」
 指を差した先には、上半身が瓦礫に埋もれている人の姿があった。若いファッションをしている。女性のようだ。瓦礫沿いに滝のように流れた血の跡があり、可愛らしくデコレーションされた携帯が血を受けとめるようにして転がっている。
「あれでは、おそらくはもう……」
 隊員は無残な骸から目をそらした。あまりジロジロ見るものではなかった。
 けれど、笹本は違った。
「どうして……。だって、さっきまで」
 瓦礫からはみ出た遺体を凝視して、口をぽかんと開けている。
「時間がありません! 見渡したところ、この狭い空間に人が隠れられるとも思えない。行きましょう。気を強く持って!」
 隊員は笹本の二の腕を掴んで強く引いた。不思議なことに、憮然と立ち尽くすだけの笹本を動かすことが出来ない。
 笹本は頭だけを隊員に回した。
「みんなぁ……これから生きて出られるっていうのに、どうしていなくなっちゃうんですかぁ?」
 虚ろな目を見開き、深くて荒い呼吸を繰り返している。
「……さあ、行きましょう」
 隊員は体を一瞬こわばらせて、視線を出口に逃がしながら答えた。
「分かりましたぁ。私は……先に上に行って待ってます。みなさんも必ず……生きて出てきてくださいねぇ……」







 ※



 あれから八年の歳月が過ぎた。
 笹本は運転中に車の窓を少し開けた。柔らかな空気が風とともに入り込んでくる。適当に流していた音楽を切り、バックミラーをずらして自身の前髪の様子を確認する。黒縁メガネより少し高い位置で風に揺られていて形はないが、ゴミなどは付いていない。
 服装はベージュのカジュアルスーツで無難にきめて、伸ばした髪の毛は不潔感のないよう前を残して全て後ろにゴムで纏めてきた。
 カーナビの案内に従い右折する。
 冬の寒さを乗り切った桜の木々が、初々しい花びらを咲かせているのが見えてきた。目的地到着まで、もう幾ばくもない。
 緊張で胸が高鳴る。
 幼い頃に培った恐怖心が、闇の淵から顔をのぞかせている。
『怖いのが嫌ならな、怖さを感じる暇もないくらい我武者羅に生きてみろ! 自分だけじゃなく、周りにも誇れるものを一つでも手に入れろ!』
 自信を失いそうになると、耳で聞いていないはずの図太い声が頭の中で蘇る。それも胸にずしりと響く怒鳴り声だ。
 今でもあの時の光景が何であったのか、笹本は確信を得られていない。けれどあの空間の側に田口や佐藤、涼子の遺体があったのは後に判明している。
(夢を思い出して、進みたい道を来た。後は勇気を振り絞るだけ!)
 小学校の正門から敷地に進入して、指定された駐車スペースに車を停める。
 ドアを開くと、車内では良く味わえなかった春の匂いで胸がいっぱいになった。
「中学の入学式はこんな気持ちだったなぁ」
 高校の時には感じられなかった戸惑いと期待に溢れた興奮。
 大人が走るには狭く感じるトラックに一瞥をくれてから、いつもより重く感じる車のドアを閉じた。
(行ってきます! ……我武者羅に、楽しみます)
 自分ではない何かに思いを馳せながら、笹本は心の中でそう呟いた。
 折りたたみ式の教鞭の入ったバッグを右肩に掛けて、職員室のある校舎へと一歩一歩地面をたしかめるようにして向かう。

瓦礫に埋もれた生存者

執筆の狙い

作者 ニャンコロ
110-132-110-247.rev.home.ne.jp

34枚。
掌編ばかり投稿していたので、たまには短編も投稿してみます。
主要の四人を同じ空間内で同時に動かしているので、その辺が分かりづらくないか? と、キャラはそれぞれ立っているか? が気になります。

楽しんでいただけましたら何よりでございます。

コメント

茅場義彦
M106072175192.v4.enabler.ne.jp

ええええ、と 幽霊だったんですか? びっくりしまぢた

青木 航
sp1-66-96-188.msc.spmode.ne.jp

ニャンコロ様。拝読させて頂きました。

 お名前を良く目にする方だし、『書き慣れている方なんだろうな』と言うのが第一印象です。

 しかし、終始違和感しか感じない構成でした。小劇場の芝居を見ているような雰囲気。

 まず、何故『私』で無く『笹本』なんだろうと言う違和感。

 次に、突然の事故にあった数人が何故名前で区別されているのか? そう思いながら読みました。

 笹本が目を覚ます前に彼らは、こんな状況で自己紹介でもし合っていたのだろうかと言う疑問が沸きました。
 しかも、彼らは、危険性の少ない場所、例えばエレベーターなどに閉じ込められたかのような冷静さを保っている。

『不自然だな』

と思って読んでいたら、田口や佐藤、涼子は事故で死んだ人達?

 死霊達が笹本を励ましてたの? ちゃんと自己紹介までして? 
 そうですよね。笹本の見た幻想なら、名前まで分かる訳ないですものね。
 怪談ですか? それとも、笹本は超能力者? 霊と話せるんですか?

 いずれにしろ、『落ち』は、ちょっと私の好みではありませんでした。すいません。
 名前が無くて、夢か幻想か分からない辺りで止めておいてくれたら、もう少し余韻が残ったのではと思いました。

u
opt-183-176-87-74.client.pikara.ne.jp

なんか惜しいねww
良くかけているしww
でも構成に難!
メッチャ書ける人(ジュンブンもかけるwwwwwww)が無理やりラノベ異世界ものに挑戦ミタイナ感じwwと思って読み始めた
というのも主人公笹本、事故?にあうシーン
>笹本は激震に襲われて、視界がぐらりと暗転した。—---土煙の臭いで笹本は目を覚ました。
で、作者さん、すましてしまった これでは作者わかってても読者(あたし)状況解りまへーん!wwwww

その後閉じ込められた空間でのお話
あたしが期待をもって想定した異世界ものでもないみたいwwww
登場人物主人公含め4人でしたっけ?
この部分なんだか舞台劇にでもなりそうな感じ
勿論他の3人のキャラもう少し際立てる必要があるかもしれん

そんで大団円はホラー系www
こんだけかけるのに勿体ないなんて思ったのよねwwww

冒頭、主人公説明する部分なんでどうなのかなーとは思うのですが、いらないんじゃないのかなー
いきなり事故遭遇から入って、主人公の身の上心情、地下でどうにでも展開できるしwww

マー最後、夢落ちぽいかも知れんねwwww
御健筆を

hir
f90-pc190.cty-net.ne.jp

 崩落で生き埋め状態になっているのなら、光源と熱源がないと考えます。
 相手の顔はおろか、自分の手足さえ見えない。でも、非常灯が機能している。不思議です。
 季節は冬で夜となれば、気温はどんどん下がっていく。寒くないのかな。
 キャラ以前に状況が分かりません。

ニャンコロ
110-132-110-247.rev.home.ne.jp

茅場義彦さん
感想ありがとうございます。

はい、幽霊でした!
一応びっくり要素でした。随所に引っ掛かりを作ってありましたが、気づかなかった人はここで驚いていただければなという思いです。

ニャンコロ
110-132-110-247.rev.home.ne.jp

青木 航さん
感想ありがとうございます。

今作は度重なる改稿を行っていますが、元々は音声だけで成り立つ小ドラマの脚本として作りました。
『名前「セリフ」』が、縦にズラッと並んでいたものを、小説になるよう手を加えております。
小劇場の芝居という指摘を受けるということは、その時の名残が消しきれずに残ってしまっていたのだと思います。

>まず、何故『私』で無く『笹本』なんだろうと言う違和感。
地の文が三人称なのは、キャラを書き分け易くするためでした。一人称でもできないことはありませんが、言い回しが不自然になったり文章が無駄に膨らむのを避けたかったからです。
たしかに違和感といえば違和感ですね。一人称の方が自然だったと思います。


>笹本が目を覚ます前に彼らは、こんな状況で自己紹介でもし合っていたのだろうかと言う疑問が沸きました。
これは推察の通りです。
そうでなければ、色々とおかしなことになってしまいそうです。
彼らなりに死を一旦飲み込んで、まだ生きている笹本を救うことで一致団結したのでしょう。
にしても対応が冷静過ぎましたね。
私も書いていて思いました、人は自分の死に対してこんな短期間で飲み込めるものなのか? しかもその状態で、赤の他人のために奮闘できるものなのか?
やはり無理があったみたいですね。

>怪談ですか? それとも、笹本は超能力者? 霊と話せるんですか?
ホラー系怪談になるのかと。
笹本にそういった力があったのか、はたまた、霊の干渉がそれだけ強かったのか、それは分かりません。ただ笹本の妄想というだけでは説明がつきませんので、霊と何らかの方法でコミュニケーションを取っていたのでしょう。

>いずれにしろ、『落ち』は、ちょっと私の好みではありませんでした。すいません。
これは『実は幽霊だった』部分に対してでしょうか。(この後に物語の締めへと続くので、一応)
謝らないでください。もっと精進したいと思いました。

>名前が無くて、夢か幻想か分からない辺りで止めておいてくれたら、もう少し余韻が残ったのではと思いました。
なるほどです。
私なりに余韻の残るように作ったつもりでしたが、ダメだったようです。今後の参考にしたいと思います。

ニャンコロ
110-132-110-247.rev.home.ne.jp

uさん
感想ありがとうございます。

お褒めの言葉ありがとうございます。ですが構成に難ということで、もっとどっしり構えて書かないといけないなと思いました。

私にとって純文学はまったくの未知の世界だったりします。読むのも書くのもラノベが多いです。
今作はラノベっぽさを減らして書いたので、純文っぽく映ったのかもしれませんね。

>で、作者さん、すましてしまった これでは作者わかってても読者(あたし)状況解りまへーん!wwwww
状況が分かるように書けていないのは、純粋に私の実力不足です。もっと周囲の状況を書き込めばよかったですね。ご指摘に感謝です。

上の返コメ書きましたが、やはり舞台劇っぽいですか。
そう指摘されて、嬉しいような残念なような……複雑な心境です。
舞台劇にするのでしたらそうですね、現状ですと笹本にスポットが当たりすぎているので、他三人のお仕事についてや交友関係にまでツッコンだ方が良さそうですね。

ホラーだけど癒される、そんな小説を目指したのですが、どうもイマイチだったみたいです。
まあこれはこれとして明日への糧にして、折れずに書き続けたいと思います。
(書き続けていれば、いずれは面白いと思ってもらえる作品を書ける……はずです(笑))

>いきなり事故遭遇から入って、主人公の身の上心情、地下でどうにでも展開できるしwww
たしかにその通りですね。
回想するなりなんなりで、組み込んでしまった方が冒頭でスムーズに入れそうです。

ニャンコロ
110-132-110-247.rev.home.ne.jp

hirさん
感想ありがとうございます。

非常灯とは、内部の蓄電池によって停電の際に稼働するものだと認識しております。
非常灯が機能していること自体に不思議はないと思うのですが、どうなんでしょう……。すみません、これについては保留させてください。

寒さについては仰るとおりだと思いました。
暖房もない中で寒かったと思います。そういった描写を入れるべきでした。ご指摘に感謝です。

>キャラ以前に状況が分かりません。
分かりづらくて申し訳ないです。これはもう致命的でしたね。
次回からは気をつけて書きたいと思います。

あでゅー
KD106154127060.au-net.ne.jp

飛行機事故で、深手を負った人たちが、お互いに励まして、やがて一人、二人と声が聞こえなくなっていく。最後に残ったのは、私っ一人だった。

という話を思い出しました。

貔貅がくる
n219100087087.nct9.ne.jp

ええとぉー、
出先で震度6強〜震度7に遭遇して、国道の立派なトンネルが崩落して、自宅に帰りつくまでが果てしない行程だった者です。

その経験からすると、主人公が埋まっちゃう経緯と、その直後の「状況分かってなさ」が、絶対アリエネェな! と。

主人公、おそろしく鈍感で、頭の回りが悪すぎて、そこですんげぇ「不快」になった。

地震大国ニッポンなので、震度6程度に遭遇している人は結構いる・・ように思うんで、
最低限「ハナシの前提条件」ぐらい、気を使って書けばいいのに。



のっけからアホで鈍感すぎて好感持てない主人公の、(  )に入れ込んだ独白の口調が、
一々不自然で大げさで、うるさい。
全部を(  )に入れるのではなく、肝心なとこだけ(  )内処理にして、ただの説明口調・棒読み部分は、「地の文に入れ込んで処理」した方が、体裁整う。
現状だと、あんまり「稚拙」だから。



「幽霊の方が生き生きしてて、主人公を助ける」とゆー、この手の話、私も書いちゃう人間だもんで、こう持ってきた作者の気持ちは分かるんですよ?

似たタイプの話を書いてきた私なだけに、とても引っかかったのは、

1:「主人公がいきなりノートに日記書かされる」〜「書かされたその文字が、他人のものに変わってた」ところ。
2:看護師が巻いたハンカチが、現実に引き戻されても「そのまま」存在していたところ。
3:元々教師志望でもなかったのに、穴の中で決意して、高校教師になっちゃうところ。

「1」は、あの状況ではそもそも書ける筈もなかったんで、カットしたら違和感減りそう。

「2」は、幻想譚ではままあるんだけども、描写として気色悪かったのと、実際主人公も気持ち悪がってたんで、「書きよう」を工夫。

「3」は、、、同様の体験した人は、レスキュー隊員になったり、看護師になったり、駅職員になったりして、後にテレビで紹介されたりもしてる。
べつに「高校教諭」でもいいんだけども、それならそれで『元々、淡く教職志望だったんだけれども、自信がなくて迷っていた』設定とかだと、読者は納得しやすいかなー。


そのように、徹頭徹尾「引っかかりどこ」満載だったこのハナシの、最大の引っかかりは、ラストの1文。

>折りたたみ式の教鞭の入ったバッグを右肩に掛けて、職員室のある校舎へと一歩一歩地面をたしかめるようにして向かう。

「職員室のある校舎」って言い方も、すんげぇヘンテコだけども、
目が点になったのは【折りたたみ式の教鞭】。。。

そんな物体、見たことないから〜、、、
『主人公、SM女王様なんかなー???』と。


まあねー、おそらくは「アレ」のこと言いたいんだろう・・とは思うんだけど、
アレにはアレの正式名称があるんで、
そこはサボらず、ググろう??

ライダー
KD175134225224.ppp-bb.dion.ne.jp

ニャンコロ様

面白かったです。

四人の書き分け、私は混乱するところはありませんでした。

ただ、他の評者の方への回答で、元々は脚本だったとおっしゃってる通り、小説というより、脚本らしさが残ってるように思います。会話はいいのですが、地の文が、ト書きみたいな感じがしてしまうんです。

>紳士な人。縦にすらっと長い体に、パリッとノリの効いた黒いスーツが絶妙に決まっている。
>若々しさを前面に出した涼子は、百戦錬磨の顔ではにかんだ。歳は大学二、三年生くらいだろうか。

そのまま、登場人物表に使えそうな気がします。

3人が幽霊だというのは、私にはわかりませんでした。4人の会話は、それぞれの個性が出ていて、面白かったと思います笹本以外の三人のエピソードを書き込むと話が膨らむとおもいます。ただ、緊急事態の緊張感がそがれて、間延びしてしまうかも、と思います。

次回作、楽しみにしています。

ニャンコロ
110-132-110-247.rev.home.ne.jp

あでゅーさん
感想ありがとうございます。返信遅れてしまってごめんなさい。

たしかにそういった類のお話は、映画では良くありますね。
今作が、既視感のある内容だったということだと思います。もう一捻り加えないと独自性が足りなかったと、反省致します。

ニャンコロ
110-132-110-247.rev.home.ne.jp

貔貅がくるさん
感想ありがとうございます。

震度6強以上を実際に遭遇したとのことで、とんだ災難でしたね。ご無事なのが何より。
私はそこまで強い地震には幸いながら遭ったことがなく、今作は想像しながら書いたわけですが、色々と描写が足りなかったようです。

>主人公、おそろしく鈍感で、頭の回りが悪すぎて、そこですんげぇ「不快」になった。
不快にさせてしまって申し訳ないです。
笹本は頭が悪くてネガティブ思考という設定で書きました。不快とまで思わせてしまったということは、やり過ぎてしまったのかもしれませんね。

>最低限「ハナシの前提条件」ぐらい、気を使って書けばいいのに。
設定と状況描写が圧倒的に足りていなかったですね。次にお話を書くときは気をつけたいと思います。

>一々不自然で大げさで、うるさい。
他の方から演劇だと指摘される理由の一つですね。情緒不安定のヒステリックさを出したかったのですが、裏目に出たようです。

>全部を(  )に入れるのではなく、肝心なとこだけ(  )内処理にして、ただの説明口調・棒読み部分は、「地の文に入れ込んで処理」した方が、体裁整う。
なるほどです。仰ることはすごく良くわかります。
気をつけていたつもりではあったのですが、まだまだ甘かったようです。()書き自体初めて使う技法だったので、今作は良い学習の機会になりました。ご指摘に感謝です。
感情のこもらない時は、地の文でいった方がよさそうですね。

>「1」
僅かながらも光源があって、暗闇になれた目とペンとノートがあれば、書けることは書けると思うのですが……どうなんでしょう。とはいえ、作中での説明不足感は否めませんが。

>「2」
気色悪さは狙ったところでもありました。先ほど不快と書かれていたので、面白さには繋がらなかったようですね。工夫ですか。色々と考えてみたいと思います。

>「3」
なるほどです。小学生の頃にあこがれを抱いたことがある、というだけでは説得力が弱かったですね。

>アレにはアレの正式名称があるんで、
SM云々はちょっとよくわかりませんでしたが、なんでしょう……教鞭でも通じると思ったのですが、折りたたみ式という記述がヘンテコということでしょうか。
たしかにこれはちょっと良くなかったですね、書き直すのなら『伸縮式』でしょうか。
一応他の呼び方についても調べてみたのですが、指示棒のことをアレと仰っているのでしょうか。
知識がなくてヘンテコな返しになっていたらごめんなさい。

貔貅がくる
n219100087087.nct9.ne.jp

ちゃんとググりましょう??



『教鞭を執る』で、ひとつの慣用句。

だからほとんどの場合「執る」とセットになって使用される言葉で、

「現代日本に《教鞭》という物体が単体で存在している訳では 絶対にない」と。



そういう慣用句というか「決まり文句な言い回し」は色々あるんだけど、

ここのサイトの人は、なんでか【勝手にバラして単体使用している】のをまま見るんで、

そのたびに気になってた。

貔貅がくる
n219100087087.nct9.ne.jp

「ちょっと昔のイギリスの学校」が舞台な映画やドラマだと、

教師が「鞭」を持ってて、
罰として生徒の尻をぶったり、てのひらを上に向けさせてしばいたりしてました。

ニャンコロ
110-132-110-247.rev.home.ne.jp

ライダーさん
感想ありがとうございます。

楽しんでいただけたようで嬉しく思います。
四人の書き分けについてお答えくださり感謝です。混乱しなかったとのことで、一先ずやってみたかったことは出来たのだと安心いたしました。

地の文はかなり抑えて書いたので、ト書きのような説明調が強くなってしまいました。
四人を同時に動かそうとすると、私の実力だとどうしてもこうなってしまいます……この辺は改善する余地が大いにありますね。ご指摘に感謝です。

>そのまま、登場人物表に使えそうな気がします。
たしかにな、と思わず笑ってしまいました(笑)。
なるほど。セリフだけでなく、こういった部分からも演劇の台本臭が漂っているようです。

四人の会話に個性が出ていたのとのこと、良かったです。筆者の狙い欄に書いた質問が、今作の目標でもあったので。
三人のエピソードを膨らませるというのは、私もアリだと思っております。
仕事でのあれこれ、家族でのあれこれ、それぞれが抱えた問題をここで独白させて、ある程度の解決をさせ『より死を受け入れられる』状態にする。物語として成り立ちますし、深みも出ますね。
それこそどこかの映画の二番煎じ、三番煎じになりそうですが。プロでもなければ気にする必要はない、というのは素人の強みですかね(笑)。
間延びはすると思いますが、それなりの書きようはあるはずなので、問題は私がちゃんと書ききれるかどうかになりそうです……。

ニャンコロ
110-132-110-247.rev.home.ne.jp

貔貅がくるさん

そうだったのですね。
そうとは知らず失礼しました。
商品名に『教鞭』と書かれているものが複数あったので、それで勘違いしました。
教鞭であるけど教鞭とは言わない……日本語の難しさを痛感いたしました。

>罰として生徒の尻をぶったり、てのひらを上に向けさせてしばいたりしてました。
私もそういうシーンを観たことがあります。
SMというより体罰といった感じでしたが。SとMな嗜好のある者がそういったシーンの真似事をする際によく使われるのが、教師の持っている鞭なのですね。
私の想像していた『教鞭』とは違うものなので、貔貅がくるさんの言わんとしていることが分かりました。
再訪感謝です。

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