作家でごはん!鍛練場
みく

王子の花嫁

昔々、とある王国のお城に王様が住んでいました。王様の一人息子である王子は、二十代半ばに差しかかる頃。
「そろそろかな…」
王様は傍らにいる王子に目をやり、ポツリと呟きました。王子はお城の一室で、耳にイヤホンをしてラジオを聴いていたのです。

ある日、王様は城下町の町民を町の広場に集めて呼びかけました。
「皆の者、王子の花嫁を募集する。未来のお妃となる女性だ。我こそはという者、あるいはふさわしい女性を知っている者は、お城まで来るように。日曜日、この広場で王子の花嫁を発表する」
町民は色めき立ちました。
「王子の花嫁だって。立候補しちゃおうかな」
「あんた、ダニエルはどうなるのよ。あんたに熱上げてるのに」
「あんなの、ただの馬車引きよ。いつでもフッてやるわ」
大笑いする女性二人のそばを、古びた服を着て大きな黒いサングラスを掛けた青年が通ろうとしました。
「邪魔ね」
青年が女性の一人にぶつかってよろけると、女性は迷惑そうに言いました。
「そういえば王子って、帝王学のためとかいってお城で勉強して、子供の頃から町民の前に姿を現さないのよね」
「よっぽどブ男なのかもね。立候補するの、やめようかしら」
それを聞いた青年は溜め息をつき、人混みの中に消えていきました。

「未来のお妃様ですからね、慎重に選ばないと。牧師さんの一人娘はどうかしら」
「神学校のマリウス先生の末娘のリンダはどう?綺麗で賢いし」
「いいわね、お城に連れていっちゃう?」
盛り上がっていたのは、三番街に暮らす年配の婦人たちでした。
「他にいないかしら。リンダのお姉さんたちも綺麗だけど、皆結婚してるし…。そうだ、リンダの従姉妹のマギーは?」
一人の婦人が言い出すと、その場に気まずい空気が流れました。リンダという娘は、金髪で豊かに波打つ長い髪と青い瞳の持ち主。幼い頃からかわいいと評判で、二十歳になった今は才色兼備と町でも有名人。
マギーはリンダより三歳上。こげ茶色の癖のある髪に、同じ色の瞳の持ち主。控えめでパッとしない娘でしたが、親切なところが町民には評判でした。マギーも王様の話を聞いていましたが、自分には関係ないと思っていました。

それから日曜日に向けて、町は大忙し。我こそはという女性はドレスを新調したり。町民はふさわしいと思う女性をお城に連れていったり、噂話に明け暮れたり。
さて、誰が王子の花嫁になるのでしょう。

日曜日、町民は広場に集まりました。マギーはリンダや、リンダの友人たちと広場に来ていました。リンダは、ショッキングピンクと桜色のちょうど中間くらいの甘いピンク色の、ふんわりしたワンピースを。マギーは、痩せた身体に合うストンとした茶色のワンピースを着ていました。王様が町民の前に立ちました。
「王子の花嫁募集に応じてくれた者、ふさわしい女性を推薦してくれた者に感謝する。これより、王子の花嫁を発表しよう」
町民は指笛を鳴らすなどして盛り上がっていました。

お城の入口の扉が開き、一人の青年が現れました。青年は肩や袖口に黄金色の縁取りが入ったクリーム色の長袖の上着と、朱色の細身のズボンを身に付けていました。更に青年は大きな黒いサングラスを掛け、右手に白い杖をついていました。
「王子、こちらへ」
お付きの者が王子の左手を取り、町民の前に導きました。王子と呼ばれた青年がサングラスを自ら外すと、町民はたいそう驚きました。
「ねえ、どういうこと?」
「王子って、目が見えないの?」
「そういえば私もお城に行ったけど、王様に話を聞かれただけで、王子の姿は少しも見なかったわ」
「そう。僕は生まれてすぐの病気で光を失った。ずっとお城で暮らしていたけど、たまに古びた服を着て、お忍びで町に出かけた。その時はいつも、若い女性の話に耳を傾けることにした。
それが大抵の若い女性ときたら、公の場に姿を現さない僕を面白おかしく噂したり。花嫁を募集するなり、恋人を捨てようかと言ったり。僕はうんざりしていた。
いくら父から言われたって、妻にしたいと思える女性なんか、見つかりっこない」
町民は、静かに王子の話を聞いていました。
「その矢先、いつも人に親切だと評判の若い女性の話を聞いた。彼女の名はマギー」
広場全体がザワめきました。皆一斉に、マギーの方を振り返りました。
「僕は町中で、お年寄りの荷物を持ってあげている彼女の声を聞いたことがある。優しそうで心地いい声だ。この声の持ち主が、人の悪口を言うなんて想像もつかない。妻にするなら、このような女性がいい。
いつからか、僕はそう思うようになっていた」
町民や王様は、神妙な顔をしていました。マギーはお付きの者に促され、王子の前にやってきました。マギーはすっかり困惑していました。
王子は左手を伸ばすと、輪郭を確かめるようにマギーの髪や肩に優しく触れました。
「マーガレット、僕と結婚して下さい」
王子は手繰り寄せるようにマギーの右手を取って、そう言いましたー。

王子の花嫁

執筆の狙い

作者 みく
om126194113170.10.openmobile.ne.jp

率直な感想をいただけると嬉しいです。執筆の狙いというと難しいですが、物語としてどう読まれたのか、それが一番気になります。

コメント

茅場義彦
M106072175192.v4.enabler.ne.jp

よくある正直者が報われる話ですね

ラジオがあるから近世なんかね
庶民から募集するなんて非効率なことするなあ、身元調査大変だろうに
オリジナリティとして最後の そう言いましたー が 好き

大丘 忍
p1793091-ipngn200202osakachuo.osaka.ocn.ne.jp

そうですね。盲目の王子にとっては顔の美醜は関係ありませんね。ストーリーとしては少し平凡すぎるかと。

みく
om126194113170.10.openmobile.ne.jp

茅場義彦様

読んでいただいて、オリジナリティの好きな点も褒めていただいてありがとうございます。
近世というか、現代のおとぎ話を一応狙ってみました。
シンデレラストーリーやディズニー映画のの影響でしょうか、大丘様も書かれたように、ストーリーはやっぱり平凡ですよね。

大丘忍様

読んでいただいてありがとうございます。
盲目の王子なので見た目は気にせず、且つ声の心地良さに惹かれた、というのも自分なりのポイントです。
感想嬉しかったです。

偏差値45
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>昔々、
>イヤホンをしてラジオ

昔話かな、と思いきや、それほど昔ではないですよね。
ちぐはぐですね。

>王様、王子
という言葉に対して、>町民という言葉はつり合いが取れているか?
疑問に感じましたね。
町長に対して町民になら納得できますけどね。ちぐはぐですね。

そしてストーリーに関して言えば、
ある意味『シンデレラ』の亜流の感じを受けましたね。
一番、気になった点として
マーガレットとの直接的な人間関係が希薄なことですね。
ここでは一つや二つのエピソード
(王子の具体的な経験・体験)が欲しいところですね。
そうすることで相思相愛の状況を構築したいところです。

そしてもう一つ。
マーガレットかマギー、言葉の統一をした方がすっきりすると思います。

みく
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偏差値45様

読んでいただいて、感想や助言もありがとうございます。参考にさせていただきます。
一つ二つのエピソードとは考えてみなくて、目からウロコでした。
物語というのも中々難しいですね〜。

北に住む亀
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拝読しました。
シンデレラてストーリー良いですよね、私も好きです(拙作で「ガラスの靴なんてない」と書いておいて言うのもあれですが)。文章も分かりやすく場面がしっかりイメージできました。

気になった点は、偏差値45さんとほぼ一緒ですが、マギーの魅力がもっと描かれていると良かったかもしれません。ベタですが、マギーとリンダとその他大勢の女子が参加する「花嫁試験」をしてみるとか。その試験の中で、マギーの心の美しさが分かるエピソードなんかがあると、より感情移入できる気もしました。

色々書きましたが楽しく読まさせていただきました。ありがとうございます。

みく
om126194113170.10.openmobile.ne.jp

北に住む亀様

読んでいただいて、感想ありがとうございます。マギーのエピソードがあるといいなど、ためになりましたよ。
たしかに今回は、王子が盲目だと判明する話の流れに気を取られたというか、キャラクターが不十分でしたね。
楽しく読まれた、というのが一番嬉しかったです。

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