作家でごはん!鍛練場
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アダチガハラ 2

☆愛と死
 
私、ある女性を好きになりましてね。
 きっかけですか。いやあ、これを言うと作り話だろうって多分言われるだろうなあ。
 以前、オタクの若者が電車の中で酔っ払いに絡まれていた年上の美女を助ける。そこから恋が始まる。そんなインターネット発の―――2チャンネルでしたっけ、確か『電車男』―――評判になりましたよね。映画にもなったし、TVドラマにもなった。本もでたのかなー。
 私と彼女の出会いも同じようなものだったのです。本当ですって。
 ただ違うのは、私はオタクじゃなくてヤクザ。女性は年上じゃなくて、私より年下の女子大生でした。美女と言う設定は同じにしといてください。まあ、美女というにはまだ若すぎる年齢でした―――美少女ですかね。
 ああ、きっかけでしたよね。
 その美人女子大生が街中でチンピラ三人に絡まれていたのです。私がちょうど通りかかり、チンピラを追い払った。
 その頃、私ある組に属していましてね。いっぱしの顔だったのですよ。
「おい、てめーら、俺の女に何ちょっかい出しているんだ!」そう言ってやりました。
 えっ、その時チンピラどもと立ち回りにならなかったかって。喧嘩なんぞしませんよ、チンピラ相手に。
 いくらヤクザといっても、のべつ喧嘩やっていたのじゃあ身が持ちません。それにあいつらみたいな若い奴はひとつ間違うと危ないのです。喧嘩慣れしていない、度胸が据わってない、
恐怖心で何をしでかすかわかったもんじゃない。
 プロはここ刺せば懲役何年、この位刺せば何年って、頭の奥底、身体の芯のほうでは、意識しなくても、ある程度計算して喧嘩しますからね。そんなものかって。ええ、ええ、そんなものなのですよ。
 まあ、そこらへんのチンピラ相手には「××組の者だ」その一言で十分ですがね。あいつらニヤニヤしながら「兄貴申し訳ございません」とか何とか言って、ペコペコお辞儀しながら逃げ出します。
 いわゆる金看板というやつです。まあ私に言わせれば一般の会社員も会社という看板しょって仕事している。大企業は中小とか零細企業にはふんぞり返って商売しているでしょう―――同じです。
 ヤクザだって組という看板しょって渡世張っているのです。会社員と同じで、弱小な組は大きな組織の奴らには頭が上らない。ましてや、そこいらのチンピラなんぞ。
 ああ、女子大生との出会いの話でしたね。
 チンピラが退散した後、彼女は丁寧に頭を下げ「ありがとうございました、助かりました。これだけ人がいるのに誰も助けてくれなくて」お礼がしたいので喫茶店へでも、と言いました。
 私、改めてその娘を見て、綺麗な娘だなあと思いました。細身で背が高く、少し長めに切り揃えた前髪の下で、黒目が勝った大きな瞳がクリクリして、色白の頬に微かに紅が差し、少し上向きに尖った鼻が意思の強さを微かだが垣間見せていました。少女と大人の中間―――そんな感じでしたかね。
「礼には及ばねえ」私はそう言って歩き出しました。
 娘は追いかけてきて、じゃあ、せめて住所と電話番号を教えてください―――そう言いました。今ならさしずめ携帯番号教えて、メルアド教えて、でしょうが。
「うるせー! とっとと帰れ」私はそう言うと足早にその場を立ち去りました。
 えっ、その後の展開が読めたって。しばらくして偶然にもその少女と再会する―――そういうベタな筋書き。まあ、そう思うのも無理ありませんよねえ。
 ところがどっこい、驚かないでくださいよ。私もその時は本当にたまげたのだから。
 二日後、なんと組事務所を訪ねて来たのですよ、その娘。
 その時、私はたまたま兄貴格の人の用事で出かけていたのですがね、組事務所に戻ってみると、留守番の若いのがニヤニヤしながらアニキお客さんですよって、ソファーに座って、もうひとりの若い衆とにこにこ喋っている彼女を顎で示したのです。「兄貴もやりますね。あんな上玉と何処で知り合ったのです」という若いもんの言葉を聞き流し、私は娘に歩み寄りました。
 私に気づいた娘は立ち上がり、こう言いました。「あら、安藤君お帰り」
若い衆二人がプッと吹き出しました。私ももう少しでずっこけるところでした。だって「安藤君」ですものねえ、そりゃあ若い衆も吹き出しますよ。私かなり年上ですし。
私は笑いそうになるのをぐっと我慢して、若い衆二人をねめつけました。ヤクザって相手になめられたらおしまいですからね。でも、その時の私は多分、笑いが込みあげてくるのをぐっと抑えた微妙な顔していたと思いますよ。そして、思いましたね、この女、綺麗な顔していやがるが、頭がいかれているか、余程の馬鹿に違いねえ、ってね。
 しかしなんで俺の名前を知っているのだろう。留守番の若い衆だって、娘が私の名前を出さない限り事務所には絶対入れません。たとえ女子供でもね。
「どうして俺の名前を知っている」私は娘に訊きました。
「だって一昨日、チンピラに安藤君言っていたじゃないですか。『××組の安藤だ』って」
 そうだったかも知れない。じゃあ、娘はいかれてもいないし馬鹿でもない。あの状況で組の名前と俺の名前を覚えているのだもの。
 二人の若い衆がニヤニヤしながら私達のやり取りを見ているので「バカ野郎! にやけてんじゃあねえ」と怒鳴りつけ、取り敢えず娘を外に連れ出しました。
 近くの喫茶店に入り、私は娘を叱りつけました。
「お前、何考えているのだ。怖くないのか、あすこは組の事務所だぞ。お前みたいな堅気の娘の来るところじゃねえ!」
「すみません。でも私、安藤君に会って改めて一昨日のお礼が言いたかったのです」娘は目を伏せて小さな声で言いました。長い、少しカールをした綺麗な睫毛でした。
「怖くなかったのか」私は娘に聞きました。
「怖かったです。でも事務所にいた若い人、二人とも優しかったですよ。私のこと、姐さん姐さんって―――」
「あのなあ……。お前なあ……」ちょっと脱力。なんなんだよ、この娘って感じです。
「お前、俺が帰ってくるまであいつらと何喋っていた」
「身の上話、聞いてあげていました。かわいそうですよね、あの若い人。まだ十六、中学生の時、親に捨てられたって言っていました。組の上の人に拾われて、ここに置いて貰っているって―――修業中だって」
 いやね、ヤクザなんぞになろうかってろくでなしは、ほとんどがそんな連中でね。私だって似たり寄ったりの境遇でした。
 十五の時、家(ヤサ)出(グレ)て、組の人間に拾われ、小遣い銭貰って、電話番やら事務所の掃除、組員等の使い走り、運転免許持っている奴は運転手とかね。そうやって何年間か奉公して、やっと盃を貰える―――そんな寸法です。
 おっといけない、また話が逸れてしまいました。齢はとりたくないものです。
 私は娘に言いました。じゃあ、今ここでお礼言ってくれ、それで気が済んだら、もう二度と来るなってね。
 娘はわざわざ椅子から立ち上がり、深く腰を折り有難うございましたと言いました。
 娘のお辞儀が長いので私はもういい、もういいと娘を急いで座らせましたよ。だってそうでしょう、私は誰がどう見てもヤクザ者。一方、娘はまだ、いたいけな部分も残している少女ですよ。ヤクザが堅気の娘にイチャモンつけていると思われても仕方ありませんからね。
「これで気が済んだだろう。さあ帰りな」私は娘に言いました。すると娘は私にこう言うのです。電話番号と住所を教えてくださいって。驚くと同時に、やはりこの女、頭のネジが少し緩んでいるのかなと再度思いましたよ。
「教える筋合いはねえ」
「お願いします」
「駄目だ。教える義理もねえ。第一お前俺が怖くないのか」
「だって安藤君、私を助けてくれたヒーローですもの、怖いことなんかありません」
「俺ヤクザだよ。犯してトルコ風呂に売りとばすぞ」
「安藤君はそんなことしません、私には判ります」
「いったい俺の電話と住所聞いてどうしようっての」
「次は一昨日のお礼にお食事をご馳走させてください。そしてよかったら時々会ってください」
「ええー! 何なんだよお前。駄目だ、駄目だ」
「じゃーこうします。私会いたくなったら、また組事務所へ行きます」
「おいおい冗談じゃねえ。それだけはやめてくれ!」
 大体ね、こんな会話だったのですよ。
 根負けした私は電話番号だけは教えました―――渋々でしたけれどね。だって事務所なんかに来られた日にゃあ……判りますよね。
 これがまあ馴れ初めというやつです。えっ、そうそう、今風に言うとそうですよね、不思議ちゃん、悪く言えばエキセントリック。そんな感じですかね、第一印象は。
 いくら不思議ちゃんでも娘の行動が理解しがたいって? そうですよね、私もその時はそう思いましたよ。この娘チョットいかれてるんじゃねえか、そう思っていたくらいですから。
 これはかなり後になって聞いた話ですけどね。チンピラに絡まれた時、娘は彼氏と一緒だったそうです。しかしその彼氏、娘を置き去りにして後も見ず逃げ出したそうです。マッハ3ぐらいのスピードだったと笑っていました。
 こいつはいけませんやね。三十六計逃げるに如かずとは言いますが、連れの女を見殺しにして遁走するなんて男のすることじゃないですよね。
 その直後に私が通りかかった訳です。まあ、その彼との対比で私がスーパーマンにもウルトラマンにも見えたのかも知れませんね。相対的効果というやつですかね。
その彼のこと少し好きだったんですけど―――そう言っていましたよ。
 彼女の名前ですか。ユリコ……夕里子って言いました。

 その後、夕里子は時々、電話をよこしました。
 私は彼女からの電話をふんふんと聞き、話を適当に合わせて、あしらっていましたがね。
 会ったかって―――デートですか。最初はこちらも会う気はなかったですよ、女日照りじゃなかったし。そもそも彼女、私の守備範囲の女のタイプじゃありませんしね。
 夕里子の方からは電話の度に食事に行きましょうとか、どこそこへ一緒に行きましょうとか、そんな誘いはありましたがね。適当に受け流していました。
 電話での話では、彼女は地方から出て来て美大に通っているとのことでした。専攻は洋画。私には洋画がどんなもので、日本画がどんなものか解るわけもないですけどね。
 初デートですか。はい、はい、すみませんねえ、年寄りの話は長くなっていけませんね。                                   
ある日、夕里子から大学祭に来ないかって電話がありましてね。何でも自分の絵も展示されているので、ぜひ見て欲しい―――そう言ってきたのですよ。私の絵見たら安藤君もびっくりしますよ。そんなことを言っていました。
 行ったのかって。行きました。今にして思えば言葉は適切じゃありませんけど、魔が差したのでしょうね。いや、いや変な言い方ですけど。
 私は中学校すらろくすっぽ行ってない人間ですからね、大学ってのがどんな所なのか多少興味もありました。それに私が見たらびっくりするという、夕里子の絵にも少し興味がわきました。その時、私の兄貴格の人とやっていた仕事(シノギ)も、ひと段落ついたところで、時間的な余裕もありましたし。
 夕里子に行くよと言ってしまったものの、よくよく考えれば私、大学祭に着て行けるような服なんて持っていません。さてどうしたものかと思案している時、夕里子から電話がありました―――服は用意しますからって。何でも大学の同級生だか先輩だかに借りたというのです。
 たぶん服装で悩んでいるんじゃないかと思って。安藤君そういうこと気にするタイプでしょう。うちの大学、美術の単科大学だから安藤君みたいなチョット変わったファッションの人いっぱいいますから、別に違和感はないですけどね。でも取り敢えず借りました―――そう言うのです。大学祭の当日、私のアパートまで来てください。そこで着かえてから行きましょうって。
 ええ、夕里子のアパートですか―――住所は聞いていました。私の方は電話番号だけ教えて、住所は告げていなかったのですが。
 夕里子のアパートで着かえるのは断りましたよ。そうでしょう、若い女性の所へ私みたいなのがのこのこ出入りすれば、ご近所であらぬ噂も立ちかねない。しかたなく彼女に私のアパートの住所を教えました。
 当日の朝、夕里子は紙袋にその日の私の衣装を詰めてやって来ました。
 服はあつらえたようにピッタリでした。
私、大学祭って学生さんばっかりだと思っていたのですが、構内に入ると老若男女っていうのですか、いろんな人が来ていて驚きました。
構内に植えられたイチョウやカツラの葉が黄色く色付き始める頃でした。
模擬店の焼きそばの匂い、どこか遠くで演奏するフォークバンドのギター音を、ときおり吹くゆるい風が運んできました。
夕里子の案内で催し物とか模擬店とかを見て回りました。大勢の若者達の間を夕里子と並んで歩きながら、彼女が借りてくれた服装も手伝ってか、幾分若やいだ気分になりました。
 「それでは本日のメインイベント」と言う夕里子に先導されて、展示室へ入りました。絵とか彫刻が展示されていました。
 どれが油絵でどれが日本画なんて私にわかる訳ありませんよ。ただ、すぐに判ったのは夕里子の描いた絵だったのです。ホントすぐに判りましたよ。私にだけはすぐに判りました。
じらすなって―――すみません。
 夕里子の絵のモデルはね、なんとこの私だったのです。
 びっくりしましたよ。ただただ驚くばかりでした。そして次に思ったのが、夕里子の観察力というか。
 だって私と直接会ったのは、たったの二回きりですよ。一回目は極々、短時間だし、それだけでこんな絵が描けるのかと思いました。芸術家の観察眼とでも言うのですかねえ。
 夕里子が借りてくれた服もピッタリだったし、そういったことも併せて正直彼女の観察力はすごいなと思いました。
 夕里子ですか―――私の横でにこにこ笑っていました。

 それからです。二人は逢瀬を重ねるようになりました。
 よく恋に落ちるって言いますよね。英語で言えばフォールインラブですか。
 あれはね、本当に落ちてしまう。自分の心が相手の心の中に、相手の心がこちらの心の中に、ストーンと落っこちてしまうのですね。
 夕里子に対する第一印象は、前にも言いましたように、少し変わった娘といった感じでした。しかし何回も会ううちにその印象は違ったものになっていきました。
 毎回、違った表情を発見するというか、この前会った時とまた違う彼女がいるのです。
 昨日は少女のような、今日は老たけた女のような。ある時は壊れやすいガラス細工の人形のような、ある時は困難などものともせず突き進む女兵士のような―――そんな全てが夕里子なのだなあ、なんてね。なんか表現が陳腐ですかね、えっ、なかなか文学的だって。有難うございます。
こう見えても私、本はある場所で沢山読んでいますから。貸出数に制限があったり、週刊誌などは墨で塗りつぶされた頁もありましたけど、ただ時間だけはたっぷりありましたのでね。何処かって―――まあ、それは追々に、ということで。
 ともかく私の心の中を彼女が占めてしまうのに時間はかかりませんでした。
 えっ、それですよね、やはり興味があるのは。夕里子と男と女の関係になったのは出会ってから一年半経った頃でした。
 遅いって―――そうですかね。それまで私も何人かの女と付き合いましたが、その女たちにはもっと早く手を付けていましたから、そうかもしれません。
 なんていうのでしょうかね、夕里子にはそれまでのどの女とも違う何かがあって、俺の手で壊してしまっていいのだろうか―――上手く言えませんね。まあ、私にとってとても大事なもの。あの時の気持ち……しっくりくる言葉が見つかりません。
 その時、刺青は入れていたかって。はい入れていました。
 初めての時、夕里子が驚いただろうって。ところが彼女がこう言うのです。安藤君はヤクザだから刺青入れているのは当然ですよね。ヤクザの人は全員、刺青入れているのでしょうってね。まあ、このような惚けたところも、夕里子の魅力のひとつでもあるのですが。
 それから同棲したのだろうって。七十年代ってそんな時代でしたよね。当時、かぐや姫の「神田川」とか「22歳の別れ」なんてフォークソング流行っていましたっけね。漫画では上村一夫の「同棲時代」。TVドラマとか映画になりました。この映画で思い出したんですが、兄貴に一緒に見に行こうって無理やり誘われましてね。兄貴、由美かおるの熱烈なフアンだったんです。でも、若者向きの映画だったから、一人で行くのはこっぱずかしかったんでしょうね。
「由美かおるのヌードが見れるんぞ! チケットは俺が用意するから」
兄貴はそう言っていたけど、どうせ金出して買うわけじゃない。半分脅して、どこかから調達するわけですよ。
 私はTVドラマの梶芽衣子のほうが良かったし、映画は東映仁侠路線に決めていたんですがね。もっとも、その頃は私の好きだった「昭和残侠伝」とか「緋牡丹博徒」なんぞは場末の二番館、三番館でないとかかってなくてね、封切館では「仁義なき戦い」なんかが人気になっていました。そんな時代でした。
すみません、話が横道にそれてしまって。当時、同棲流行っていましたけど、それはお互いにぐっと我慢てな感じでしょうか。
 実は、夕里子が借りていたアパートの家主さんが、夕里子の父親の知り合いの親戚だったのです。郷里の親御さんとしては少しでも目が届くところへ置きたい―――親心でしょうね。
 ですから同棲はチョットね。何でも夕里子の父親は郷里で町工場を経営しているそうで、その知り合いの人も仕事関係の知人だということでした。
 その頃からですね、お互い口には出さないものの将来について考え始めたのは。
 夕里子はこの街に残って絵をやりたいと言っていました。両親には反対されている、郷里に帰ってこいと言われている―――そう言っていました。
 私もその頃からこのままでいいのだろうかと考えるようになりましてね。できれば稼業から足を洗いたいと思うようになりました。
 よくよく考えましてね、兄貴格の人に相談しました。
 この兄貴、私が若いころ拾ってくれた人で、親分との盃も取り持ってくれました。二人で少しヤバイ仕事(シノギ)もやっていました。そうです、由美かおるの裸、一緒に見たあの兄貴です。
 この兄貴、ヤクザとしてはいっぷう変わった人でね。
 私が最初に親分との盃を取り持ってくれと頼んだ時にこう言ったのです。
「お前は優しいからヤクザなんかにゃ向いてねえ。堅気になった方がいい。俺も昔お前を拾った責任があるから、どうしてもと言うなら仲介の労をとらないとはいわねえが、あと三か月なり、よーく考えてみな。それでも決心が変わらなければ親分(オヤジ)に頼んでやる」
 考えは変わりませんでしたね。それどころか私はその日からいそいそと背中に墨を入れていたのですから。
 三か月経ち、兄貴のもとへ行き、私は意気揚々と背中の刺青を見せたのです。兄貴これが俺の決意の証ですってね。
 おもいっきり殴られました。
「安藤、刺青の彫代はどうした。てめえ、どっかで金盗んだか」
「借金しました」
「借金だとこの野郎!」もう一発殴られました。てめえ、その借金踏み倒すつもりじゃねえだろうな。
「安藤よく聞け。刺青てのはな、俺らの間じゃガマンって言うだろう、どうしてそう言うか。もちろん彫る時には痛いのを我慢する。一度には彫れない、何日もかかる、従って彫代がかさむ。金も痛みも、彫りあがるまで我慢できるかどうか。財力というのも男のひとつの力だからな。そういうことだ。借金して彫ったモンモンなんぞ、ろくでもねえ」
 まあ、おめえに金貸す奇特な御仁がいるということは、おめえにも多少の信用があるってことだ、借金ちゃんと返せよ。今でも兄貴の言葉を思い出します。
 そうそう、組に入った時じゃなくて辞めた時でしたよね。
 そりゃあ、すんなりとはいきませんよ。詫びは入れましたがね、ひと悶着ありましたよ。
 入る時も、出る時も兄貴が面倒みてくれました。まあ、私と兄貴は気が合っていたのでしょうね。なんせ、由美かおるの裸いっしょに見た仲だし。
 私は指(エンコ)の一本も詰めなければと思っていたのですがね、兄貴に言わせりゃあ、おめえの小汚い小指なんぞうちの親分(オヤジ)は強欲だから喜ぶわけねえ。
 いえね、ヤクザの世界って、義理だ、人情だ、男気を売るだ、なーんて粋がっちゃいますがね、一旦、裏へ回れば金がものいう汚い世界なのですよ。
 堅気の世界だって同じだって―――まあ、そうかもしれませんけど。
 結局、兄貴が金で解決してくれました、金も出してくれました。なんでも一緒にやっていた仕事(シノギ)の退職金と、俺からの餞別だと言ってね。良い兄貴でした。水商売でしたけど次の仕事先まで紹介してくれました。

  夜も更けてきました、先を急ぎましょう。少し話を端折りますね。 
 あれは私がヤクザの足を洗って一年半ほど経った頃でしたか。年も明けた一月の初旬だったと思います。寒い日でした。
 夕里子の両親が訪ねて来たのです。
 あるホテルの喫茶室で会いました。私と夕里子、ご両親の四人です。
 父親は背が高く、がっしりとした体格をしていました。温和な顔付きでしたが、時折その目がきらりと光るとでもいいますか、何かに裏打ちされた自信のようなものを感じさせる人でした。温かさとともに厳しさをも併せ持つ―――そんな感じでした。
 夕里子からは田舎の町工場の経営をしているとは聞き及んでいましたが、私が抱いていたイメージとはかなりかけ離れていました。
「安藤さん、あなたのことは娘から聞いています」父親はそう切り出しました。
 年末年始に五日間ほど帰省をした夕里子から、私のことを両親に話したというのは聞いていました。それまでにも断片的に母親には話していたそうですが、正月にはかなり詳しく話したという報告を受けていました。
「今までは父の仕事が忙しくて、なかなか時間が合わなかったのです。お父さん仕事一筋ですから」そう言っていました。
 夕里子は以前から電話で母親とは話をしていたようですが、彼女のこちらで画家を目指すという希望と、卒業したら郷里に帰って来いという両親の願いは、平行線をたどるばかりだったようです。
「安藤さん、夕里子から聞いているとは思いますが私、金属加工関係の会社を経営しております。私の父、つまり夕里子の祖父が創業した会社です。父から受け継いでこれまで必死で働いてきました。倒産の危機に見舞われたことも何回かありました。しかし自分で言うのもなんですが、人様に多少なりとも自慢できる会社にしてきたつもりです。私が仕事人間なもので子供達のことはこれに任せきりになってしまいまして」父親は隣に座る母親を見やりました。
「この前、夕里子が帰省した正月にやっと纏まった時間が取れまして、娘とはかなりつっこんだ話をしました」今度は私の隣に座る夕里子を見ました。
 やや間がありました。
「結論から申し上げます。夕里子と別れてください」
「嫌です!」夕里子が辺りかまわず叫び声をあげました。椅子から立ち上がっていました。「私は安藤君と結婚します。画家の夢も諦めません」そう言いました。はっきりと言いました。
 父親は娘の言葉にはうんうんと頷き、次に私の方に向き直りました
「夕里子が私の子供であることと同じように、会社も私の子供なのです。これまで手塩にかけてきた可愛い子供なのです。これからも成長を見守らなければならない。夕里子には相応の婿をとり、婿に会社経営を学ばせ、跡をとって欲しいと思っています。あなたの前歴の事は夕里子から聞いています。それをとやかく言うつもりは毛頭ありません。今では真面目に働いている。一店舗をオーナーから任され、店長をなさっていることも聞きました」父親は私の目を見て静かに言いました。
「夕里子からのアナウンス効果を差し引いても、あなたが良い人だとひと目で分かりました。あなた優しい人だそうですね。娘が惚れた人ですから、悪い人であろうはずはないと思います。ですが今から申し上げることを怒らず聞いてください。私がいうことは決してあなたの人格を否定するものではありません」言葉を切り、暫し考える素振りを見せ、言葉を継ぎました。
「経営には重い責任があります。そして厳しさも必要です。失礼ですが、従業員百二十人、その家族も含めれば数倍。大げさですが、その人々の運命を担う覚悟がおありでしょうか」
 えっ、その時の私ですか。黙って聞いているしか術はありませんよ。まさか私にお任せ下さいなんて言える訳ないじゃないですか。
 しかし驚いたのは会社の規模ですよ。夕里子からは田舎の町工場だと聞かされていましたのでね。私はせいぜい七人か八人くらいの小さな町工場と思っていましたから。
 話し合いですか、なかなか結論は出ませんでしたね。
 夕里子は夕里子で「画家になる。結婚する」の一点張りですし、私は私で考え込まざるを得ませんし。
 正直、そんな大きな会社なら私が潔く身を引いた方が夕里子の幸せ、強いて言えばご両親の幸せ、もっと大げさに言えば百人を超す社員の幸せにもなるのではないかとすら思ったくらいですから。
 いやいや、夕里子を愛しているという気持ちはまったく揺らぎはしませんでしたがね。
 話し合いは平行線でした。
 はい、もうお判りですよね。えっ、だいぶ前から判っていたって。
 そうです、夕里子の父親は八幡さん―――八幡会長だったのです。
 私が仕事に行かなければならない時間でした。
 安藤さんに仕事を休ませる訳にはいかないと言って、八幡さんの提案で、母親と夕里子が女同士ここで話し合い、八幡さんと私は私の店で話し合うということになりました。
 店ですか―――最高級とはいえないまでも、客筋も良く、落ち着いた雰囲気の小さなクラブでした。
 ええ、先にお話しした例の兄貴が紹介してくれた店です。オーナーは七店舗ほどそういった店をやっていました。私は半年ほど別の店で修行しましてね、そこの店長に抜擢されたという訳です。
 店で八幡さんと話しました。四人で話している時は毅然としていた人でしたが、男同士になると、父親の気持ちを判ってくださいと言ってね、涙を流しました。
 私の父親というのがロクでもない大酒飲みだったんです。自分はほとんど仕事をせず母親ばかりを働かせ、酔っ払ったら母や私には殴る蹴る。父親が死んだ時にはせいせいしたくらいです。まあ、父親はいたが、父親の愛情なんてまったく感じなかった子供時代でした。
 そんなことを思い出しまして、八幡さんの涙を見ていると、なんだか切なくなりました。ああ、この人はいい父親なのだろうなあ、夕里子はいい父親を持って幸せだなあって。
 私は八幡さんに言いました。
「私は夕里子さんを愛しています。別れることなどできませんし、諦めることなど到底無理です。しかし八幡さんの夕里子さんを思う気持ちも痛いほど判ります。そして私もこんな小さな店ですがオーナーから任されて、今では全般を取り仕切っています。経営者として八幡さんの足元にも及びませんが、会社を思う気持ちも十分判るつもりです」
「夕里子に言われました、私と会社とどっちが大事なのって。欲張りで、私の我儘かも知れませんが、私にとってはどちらも大事なのです」八幡さんはしんみりと言いました。
「考えさせて下さい。時間を下さい。……でも夕里子さんがどうしても私と結婚すると言い張った場合、私は全力で夕里子さんをお父さんから奪い取ります。……もう少し考えさせて下さい」
「そうですね、夕里子も含め、お互いもう少し時間が必要なようですね。今の安藤さんの決意、厚く受け止めました。夕里子もいい人を好きになってくれたと思います」八幡さんの目から涙が落ちました。
「安藤さん同様、私も夕里子を命がけで説得します」そう言いました。
 開店時間が迫っていました。先程から「お早うございます」と、従業員が三々五々出勤していました。
「八幡さん、こんな店で恐縮ですがゆっくりしていってください」
「有難うございます。母親と夕里子もまだ話し合っているでしょうから、お言葉に甘えます」八幡さんが初めて笑顔を見せました。

 お客さんは八幡さんを含めて三人だったと思います。ひとりはよく来るどこかの会社の部長さんでした。もうひとりが若い男でした。
 この男、私が店長になる前から月二回ほど来ている男でした。その店には相応しくない人でしたね。私が店長になってからはなかったのですが、なんでも過去に数回、他のお客さんとトラブルを起こしたことがあるそうでした。古株の従業員から言われていました。「店長、あの客には気を付けてください。切れたらチョット危ないですから」
 まあ、余程のことがない限り、もう来るなと言えないのが客商売―――特に水商売のつらいところですよ。
 私その時、外のトイレに行っていたのですよ。いやね、店の中にも当然トイレはありました。その店ではお客さんがいらっしゃっている時には、従業員はそのビルの共同トイレでというルールがあったのです。
 私が店のドアを開けて戻った時、事件は起こっていました。
 八幡さんが尻餅をついていて、あの若い男が襲い掛かろうとしていました。八幡さんの左頬が切れ、血が滴っていました。左腕の肩口も切れていて、チャコールグレーの背広がパックリ割れ、白いワイシャツに血が滲んでいました。
 男は、二の太刀だか三の太刀だか知りませんが、ナイフを振りかざして今まさに襲いかからんとしていました。
 私は八幡さんと男の間に飛び込みました。男ともみ合いになりました。私は男のナイフを持った手を掴み、テメーと叫びました。私は男を刺していました。
 ヤクザ稼業から足を洗って二年近くになっていました。感覚が鈍っていたのか―――そうです喧嘩の感覚です。手元が狂ったのでしょうかねえ。
 結局、その男は数日後に亡くなりました。

 私は傷害致死罪で起訴されました、検察が十分戦えるとみたのでしょう。弁護士は正当防衛による無罪を主張しました。
 判決は傷害致死で懲役六年でした。私が元暴力団員ということが裁判官の心証を悪くしたのかもしれません。
 重過ぎる―――弁護士は控訴すべきだと言いました。悪くても三年以下、執行猶予付きは勝ち取れる筈だ。
 私、それはお断りしました。どうしてかって。
 私ね……公判中の検察側の証人の証言にショックを受けていたのです。
 もうひとりのお客さんでした。そうそう、どこかの会社の部長さんです。
 証言によると、男と私が揉み合った時に私ね、「テメーぶっ殺してやる!」そう叫んだそうです。自分自身では覚えていませんでした。
 やはりヤクザ時代の名残がまだ残っていたのでしょうかねえ。それとも普段から店には迷惑な客だからこんな野郎殺しても構わねえと、心の片隅で考えていたのでしょうか。
 八幡さんですか、もちろん弁護側の証人として立ってくれました。ひょっとしたら殺されていたかも知れない―――命の恩人ですと証言してくれました。
 地裁の判決が出た後、八幡さんが訪ねてくれました。腕っこきの弁護士を紹介するから控訴しなさいと言ってくれました。
 嬉しかったです。でもお断りしました―――どうしてかって。
 いえね、長い拘置所生活、連日の警察、検察の取り調べ、それに続く公判。疲れ果てていたし、自信もなくなっていました。
 公判であの部長さんが証言した、ぶっ殺してやると私の口から出たあの言葉。
 いっぱしにヤクザの足を洗った、俺は堅気だ、なんて気取ってみたところで、この身に染みついたそういったものはなかなか消えてくれない。人間、切羽詰まったら地が出ます。俺の地は未だにヤクザそのものだ―――そう思ったのです。所詮、俺は元ヤクザの中途半端な人間だったのだ、そう思いました。
 こんなことでは夕里子を幸せにすることなぞ到底できない。夕里子と一緒になるなんて思い上がりもいいところだったのじゃないかってね。
 夕里子ですか、毎回傍聴に来てくれました。何回目の公判だったか、傍聴席の夕里子と眼が合いました、悲しそうな眼差しでした。

 私が刑務所に入って暫くして、八幡さんと弁護士が一緒に面会に来てくれました。
 八幡さんの話では、その頃、夕里子はご両親の元へ帰っていました。私がいない街にいても仕方がない―――そう言っていたそうです。
 私は八幡さんに言いました。「夕里子さんを幸せにしてください」八幡さんは黙って頷いていました。
そりゃあ、つらかったです。

 夕里子から便りが来ました。出所するまで待っている、面会に行きたい。そう書いてありました。
 私は面会を断りました。
 また便りが来ました。私、面会は拒否し続けました。ええ、囚人にだって拒否する権利はあるのです。
 会いたくなかったのかって、会いたくない訳ないじゃないですか。
 どれくらい経った頃だったでしょう、頻繁に来ていた便りがパッタリと届かなくなりました。
 しばらくして八幡さんが面会に訪れました。憔悴しきっていました。見る影もなくやつれていました。あの毅然とした面影など何処にもありませんでした。 
 八幡さんは目を伏せ、私に告げました。
「夕里子が、娘が亡くなりました。自殺しました」
 私は呆然と八幡さんの顔を見ていました。
「夕里子さんを幸せにしてやってくださいという、安藤さんとの約束を果たせませんでした。駄目な最低の父親です」八幡さんは絞り出すような声で言いました。
「夕里子の心を最後まで判ってやれなかった。以前、夕里子から言われたって言いましたよね。お父さんは私と会社とどっちが大事なのって。私にとってはどっちも大事でした。でも死なれてみて初めて判りました、どちらが大事だったかをね。
 郷里に帰った夕里子を私たちは説得しました。安藤さんのことは忘れてくれ、青春の思い出としてお前の心の中にしまい込んでくれ、絵は趣味としてやればいいじゃないか、頼むから婿を取って安心させてくれ。そう説得し続けました。
 私としては無理強いをしたつもりはありませんでした。でも私の言葉の端々に会社をどうにかしたい、もっと大きくしたい―――そういう風なニュアンスが隠れているのを夕里子は敏感に感じ取っていたのでしょうね。
 元気で明るくて少し天然。そんな娘でしたけど、片方では非常に感受性の強い面もある娘でした。
 どれくらい経った頃だったでしょう、夕里子は吹っ切れたように、私たちの薦める見合い話に従うようになりました。私達はやっと安藤さんのことを諦めてくれたのだなと思いました。良かった、良かった。これで会社も安泰だと。
 ある日突然、自死しました。何の前触れも有りませんでした。いや、気付かなかったのかも知れない、仕事の忙しさにかまけて。私が夕里子を殺したのです。
「以前、面会に来た時、安藤さん、夕里子さんを幸せにしてやってくださいと私に言いましたよね。無論あなたが夕里子のことをきっぱり諦めたなどとは思いませんでした。しかしその時、正直言って夕里子を説得するチャンスだと思いました。
 あなたの本当の気持ちは痛いほど判っていました。私を救ってくれた恩人でもありました。でも説得のチャンスだと思ったのは確かでした。
 鉄面皮だなどと思わないでください。習い性とでも言いますか、長い経営者人生の中で、これはこれ、それはそれという風に考える習慣がついていたのです。
 しかしそのことが結果的に夕里子につらい思いをさせてしまいました。そして安藤さん、あなたにも………とても償えるものではありません」
 八幡さんは話し終え、うなだれました。
 その時、私ね、夕里子が亡くなったのは、私の不甲斐なさにこそ責任があったのではないかと思いました。
 弁護士の控訴しようという提案も、八幡さんの腕のいい弁護士をつけるという申し出も断りました。夕里子の、面会したいという手紙も拒否しました。
 結局、私はそれらのことから逃げだしたのではなかったろうか。私はそれらのことにちゃんと向き合うことができない、卑怯な男ではなかったか―――そう思ったんです。ヤクザの世界へ入ったのだって、一般社会から逃げを打ったのではなかったのだろうかってね。
  私の優しさがそういう行動をとらせたのだろうって。
 そうでしょうか。私が身を引くことで夕里子が幸せになってくれればと思っていました。でもそのことが夕里子を死に追いやったのかもしれないのです。私の独りよがりの偽善だったのかもしれない。
 優しさの中にもプラスとマイナスが同居している、良く効く薬のように。プラスのつもりが時と場合によってはマイナスの方向に作用する。
 私こそが夕里子の心をまったく判っていなかったのかもしれません。
 
 刑務所生活は立派に勤め上げました。まあ、刑務所の中にいて立派もクソもないですがね。私、あちらでは模範囚でした。刑期を一年残して出所しました。そうです溶接技術も刑務所で覚えたのです。本もたくさん読みました―――中学生の時より沢山勉強しましたかねえ。
 ある日、お世話になっていた保護司さんの所へ八幡さんが訪ねて来ました。
 八幡さんは「うちの会社に来ないか。夕里子の墓を参ってくれ、夕里子も君に逢いたがっている」そう言いました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 安藤さんの長い話が終わった。
「これで安藤さんと八幡会長の関係も判った訳か。長年の謎が解けてスッキリはしたのだけれど、反面、なんかつらいですね。師匠も夕里子さんも八幡会長も」エビタンが呟いた。
「私ね、安藤さんのお話お伺いしていて、安達ケ原を思い出したの」私は二人に言った。
「安達ケ原ですか―――安達ケ原の鬼婆伝説」安藤さんが伏せていた目をあげ、私を見た。
「八幡会長が乳母で、殺される妊婦が夕里子さん。安藤さんはその夫。そしてね、八幡さんの会社は乳母が可愛がっていた姫だったのじゃあないかって」 
安藤さんが、小さく頷き、目を閉じた。
エビタンも黙って頷いた。
 若干の沈黙があった。外の風は、また強さを増したようだった。
「安達ケ原では、妊婦の夫は薬を買いに出ていくんでしたね。夕里子さんが亡くなった時、私は刑務所の中でした」安藤さんは自身に言い聞かせるように湿った声で呟いた。
 店の前の舗道を行く、妙にテンションの上がった酔客の話声とそれに呼応する笑い声が近づき、そして遠ざかる。  
「明日、帰る前に墓参りに行きます」安藤さんがぽつりと言った。
「八幡さん?」私は聞いた。
「……そして、夕里子さん……久しぶりです」
 安藤さんは遠い昔を手繰り寄せるように、また目を閉じた。
 私は安藤さんの心の中にはずっと夕里子さんがいるのだなと思った。
 夜が更けてきた。
 外では風がないていた。                    
(了)
       

アダチガハラ 2

執筆の狙い

作者 u
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今2面にあるアダチガハラの続編です
メッチャ〈哀しい? ラブコメ〉です
若干長いけど
お読みいただければ、ありがたいです

コメント

そうげん
58-191-198-57f1.shg1.eonet.ne.jp

作品、読ませていただきました。

前作とは独立したエピソードとして読みはじめてみても、じっくり読ませられてしまう堅実な筆の運びが印象的な、よい一編になっていたと思いました。uさんが書いていらっしゃる「執筆の狙い」の言葉――《メッチャ〈哀しい? ラブコメ〉です》という言葉にまったく遜色がありませんでした。

夕里子さんについてのキャラクターの造形がとてもよかったと感じました。三人に絡まれているときに助けてくれた安藤君(笑)に心酔して、なんとしてでも関係を詰めるためにと、ヤクザの事務所にまで押しかけられるとんでもない情念? 情熱? の人。さまざまな極道物の物語のなかで形作られた定番のイメージなのかもしれないけれど、御作の展開のように若い衆がはやし立てるような展開、姐さん呼ばわり、これはuさんの筆の旨さも手伝ってのことかもしれないけれど、現実にあるかもしれないような実感が伴っていました。

前回の、安達ヶ原のお話ともちゃんとつながりました。二週間前にどうなるんだろうと思いながら、ひとつめのお話を読み終えたときの頭の中に浮かんだ疑問がちゃんと行き場を見つけて、落ち着くことができました。

御作――たいへんに読みやすかったです。話の運びもムリはないし、文法、言葉遣い、文体、とても好感を抱くことのできる書きっぷりでした。このところ、他の方のまとまった文章を読む機会が少なかったので、御作を読むことができて、精神衛生上、とても良好な効果を得ることができました。感謝の気持ちをここに表明しておきたいと思います。ありがとうございました!

大丘 忍
p1793091-ipngn200202osakachuo.osaka.ocn.ne.jp

いやー、面白い。文章がいい。こんな小説を読んだのはこのサイトでははじめてかな。気取った、わかりにくい文章が多いこのサイトの中で、平易な語り調の文章、認知症じみている私には、難しい理屈っぽい文章は読みにくいのですが、そんな私にも滑らかに読み進めてやめられなくなる、そんな文章、いや、小説でした。
前作、長そうなのでまだ読んで居ませんでしたが読ませていただきます。

ドリーム
27-136-247-172.rev.home.ne.jp

読ませて頂きました。

題名を見てアダチガハラってなんの事だろうと思いました。
正直読んでいて強烈な衝撃を受けました。凄い!! の一言です。
安達というヤクザの独り言で始まって行くのですが、もう吸い込まれて行きました。
人を引き付ける文章はいったい何処からくるのでしょう。
本当に素晴らしい、いったい貴方という人はどんな方なのでしょう。
感動物です。この(作家でごはん)を始め、色んな作品を読んできましたが一番です。
凄い、素晴らしい。そんな言葉しか浮かんで来ません。
この際、尊敬を込めて先生と呼ばせて下さい。

勿論最高の作品ですが、読者としては二人を結ばせて欲しかったと思います(笑)
素晴らしい作品を有難うございました。

夜の雨
ai208255.d.west.v6connect.net

「アダチガハラ 2」読みました。

原稿用紙46枚でした。

チンピラに絡まれて彼は逃げてしまったのに、そこをやくざの男に助けられて、惚れ抜くという「女子大生とやくざ」との付き合いから「女子大生の父親が絡んで」後半は父親を助けようとしたやくざが刃物を振りました男を殺してしまい、刑務所に入り、その間に女子大生が自殺するというような展開でした。

上に簡単に展開を書きましたが、まるで説得力がありません。
「助けられた」とはいえ「一般の女子大生がどうしてやくざな男に好きだ惚れたとかで、付きまとうのか」このあたりの、女子大生のキャラクターに説得力がない。

安藤がやくざではなくて、超優秀な人間、例えば有名芸能人とか会社経営とか財閥とかスポーツマンでオリンピックにでも行くような立ち位置なら、まだしも。と、思います。
まあ、そのような相手と女子大生の恋愛なら、物語として、面白味に欠けると思いますが。

「彼女は地方から出て来て美大に通っているとのことでした。専攻は洋画」ということで、「芸術を愛する彼女が究極の愛を信じてやくざな男を好きになる」という設定になるのなら、説得力があると思います。
また、そのような設定に展開するのかと期待していましたが、なりませんでした。
芸術家になってくると、いろいろと変わったキャラクターの人物がいるので、やくざな男に惚れるというのもありかなと思いますが、それとて、女子大生のキャラ設定をしっかりと書きこんで、「このキャラならやくざな男にでも付きまとうわな」と思わせるような設定にする必要があると思います。
御作は、それができていない。

設定に伏線を張らずに、結果だけを書いている、という感じでした。


漫画的な面白さはありますが、漫画にしても説得力は必要かと思います。

それでは、頑張ってください。

北に住む亀
flh3-133-202-83-160.tky.mesh.ad.jp

拝読しました。
ちょっと前(梅宮辰夫さんが亡くなられた時かな)にアマゾンプライムで「仁義なき戦い」を一気見したこともあり、御作も非常に興味深く読み進めていけました。

前作の感想欄に「地に足ついた文章」と書きましたが、今作は逆にとても筆がのっている感じ出ていて、ぐいぐい読ませる力があったと思います。もしかしたら、一人称とか独白形式がU様には合っているかもしれませんね。

また、夕里子がとても魅力的に描かれているのが良かったです。これがあったから物語の吸引力もありましたし、ラストの哀しい部分がより際立ったと思います。

気になった点はほぼありませんが、
>はい、はい、すみませんねえ、年寄りの話は長くなっていけませんね。        
>すみません、話が横道にそれてしまって

これを少し便利に使いすぎな気もしました。物語の世界を楽しんでいた故に、「それはもういいから」とちょっと思ってしまいました。

ただこれは些細なことで、総じてとても良い作品だったと思います。次回作も期待しています。

u
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そうげん さん
お読みいただきありがとうございます

>夕里子さんについてのキャラクターの造形がとてもよかったと感じました
本作かなり以前に書いたものですが、執筆時、彼女のキャラを楽しんで描いていたように思う
前回のアダチハガラは別として、この後半は夕里子さんのキャラがなければ成り立たない話でwww
お褒め頂いてよかった

>前回の、安達ヶ原のお話ともちゃんとつながりました
最初かいた時、前回の部分が先にできていて、それで終わるつもりだったんですが、あまりオモンナイwww  そこである程度の(謎)を設定して本作に繋げた
この後半部分はキャラ(安藤、夕里子、八幡、兄貴)決まるとスラスラ書けたんです

>御作――たいへんに読みやすかったです。話の運びもムリはないし、文法、言葉遣い、文体、とても好感を抱くことのできる書きっぷりでした
そうげんさん、ほめ過ぎですwww
でも素直に喜んでます
ありがとうございました

u
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大丘 忍さん
お読みいただきありがとうございます
 
>気取った、わかりにくい文章が多いこのサイトの中で、平易な語り調の文章、認知症じみている私には、難しい理屈っぽい文章は読みにくいのですが、そんな私にも滑らかに読み進めてやめられなくなる、そんな文章、いや、小説でした
ありがとうございます
読みやすさは大事だと思っていまして、特にエンタメでは
逆に言えば、あたしに高尚で難解な文章を書く能力がないのかもしれませんwww
ボキャブラリーもそんなに豊富じゃないしねwww

ともかく大丘先生にお読みいただき、感想いただき
うれぴー 古―っ!

>前作、長そうなのでまだ読んで居ませんでしたが読ませていただきます
ぜひ是非
本作よりもう少し長いかもです

ありがとうございました

u
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ドリームさん
お読みいただきありがとうございます

>ヤクザの独り言で始まって行くのですが
ひとり語りで描いたのは本作はじめてですし、その後書いてません
で、本作、書けていたのかどうなのか?www

>いったい貴方という人はどんな方なのでしょう
と、いわれてましても? 元ゴクドウの前科一犯凶状持ちのしがないトセーニンです
たまに、さっかでごはんに自作あげたり、イヤミな感想書いたりのトセーニンですwwww

>先生と呼ばせて下さい
アハハ!
ドリームさん「先生と呼ばれるほどの馬鹿でなし」とか申しますwwww
まあ、確かに、あたし馬鹿なトセーニンではあるのですが

>読者としては二人を結ばせて欲しかったと思います
うん、ハピエンドにするか、バドエンドにするか難しいところですが、二人が結ばれない方がカタルシス効果があがる↑というか

まあ、死に落ちなんですけどねwww

そういえばドリームさん以前極道の親瓶と娘の話あげてたよね? あれダメ。クローとのあたしが言うのですから間違いないwww
それより超大作? の宝くじあたった男の話、あたし読みたいわー!
と、話がそれてしまったスンマソン

ありがとうございました

5150
5.102.5.24

uさま

当然ながら前半部を先に読んでから、後半部を読みましたし、それから、再度通しで読みました。後半部を読んでから前半部を読み返すと、本当によくできた物語だと感心しました。前半に何気なく書かれた細部が意味を伴って、くっきり浮かび上がってきました。前半にはかなりの伏線が当然ながら潜んでいて、それが結ばれる、つまりは物語の面白さがそこにはありました。よく書けていると思います。

ただ通しで読んでみても、前半時に出した感想とあんまり変わらないような気がします。

前に感想を書いたときには、uさんにあっさりスルーされてしまいましたが、やっぱり作者さまの登場人物を見る目が優しいし、この作品には心の芯から悪い人が出てきませんよね。作者さまの人柄だと思うのは、後半のあのとてもヤクザとは思えない語り口からも、滲み出ています。

ただ、あの語り口はちょっとキャラに合わない。前半部での安藤さんがこんなふうに語るなんて。若干マイルドすぎかなと最初思いつつ読んでいたのですが、途中から気になくなりました。

内容を追っていると、安藤さんはヤクザでありつつも、心のどこかで自分自身に対して違和感を持って生きていたのかもしれませんね、なんて思ってしまいました。

似合う服がない、着替えあたりのエピ、めちゃ好きです。

語り口、プラス、安藤というキャラの性格、それと70年代という時代背景、これらがうまく重なり合っての、御作での魅力的な語り口を成しているのだと思いました。

いかにも日本的な会社経営の精神が、まだよい形で残っていた時代ですね。会社がある意味で、家族代りだった遠い昔です。

二人のストーリーが現代だったら、これはギャグにしかならないでしょうね。

>>私の優しさがそういう行動をとらせたのだろうって。〜から続く、最後の場面が胸を打ちます。
の、はずでしたが、実際のところ、インパクトはあまりなかったです。本来ならもっと感動するはずなんですが。

何故かと考えると、たぶん、

夕里子が自殺を選んだ箇所だけは、読んでいて少し違和感がありました。夕里子の心理的な伏線も書かれてないようですし。

あと本作が非常に惜しいのが、語る順番というか、語り方、つまりは構成部分ですね。内容ではありません。ストーリーはこれで十分すぎるくらい、よくできていると思います。

通して読んでも、いや通して読んだからこそ、冒頭の始まり方にこのストーリーを一番よく見せることのできる、もっと最適で効果的な入り方があるように思えてしかたありません。

いっそのこと、安藤さんが何か事件っぽいことを犯してしまう or 巻き込まれる。それで過去を話さなくてはいけなくなる話にするとか。枠組みと構造的にはミステリーっぽい形をとる、ということですが。モロエンタメになります。まあ、それだと、話を組み替える部分がかなり出てきてしまいますが。

さらに突っ込んで言うと、エビタンが出るところですが、ちょっと出しゃばりな感じがしました。たぶんストーリーをわかりやすく伝えるためと、つまりは作者さんの自信のなさをカバーするものだと思うんですけど、こういう部分はもっと少な目にして、正々堂々と書けばよいのにな、きちんと書けるはずなのに、と思ってしまいました。

思っていることを容赦なく書いてしまいましたが、いずれにせよ力作だったと思います。素直に拍手を送りたいです。ありがとうございました。

加茂ミイル
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ヤクザって怖いイメージがありましたが、
この作品に登場する人物は人間味があって、親しみを持てました。

ただ、前半で女の子があっさりと組事務所に入れてしまうのは、唐突感を感じました。
せっかくですから、女の子が事務所に入るまでに、
もう少しハラハラするような場面を入れてもいいんじゃないかと思いました。
それはそれで面白いような気がします。

大丘 忍
ntoska314132.oska.nt.ngn.ppp.infoweb.ne.jp

アダチガハラの一部と二部とを通して読みました。結構長いのですが、こんな長い文章を私のような年寄りはパソコンで読むことはかなり困難なのでワードにて一部と二部を合わせてプリントして通して読みました。二部だけ読んだ時の感じと違い、非常に面白かったと思いました。夕里子さん、素敵でしたね。私は亡くなった妻を思い出し涙が出ました。

u
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夜の雨さん
お読みいただきありがとうございます
返信遅くなってゴメン

>女子大生のキャラクターに説得力がない
そうでしたか残念!
あたし夕里子さんのキャラ自分でも楽しんでいたんですが
(チンピラに絡まれた時、夕里子は彼氏と一緒だった。しかしその彼氏、彼女を置き去りにして逃げ出す。直後に安藤が通りかかって助ける。夕里子にはその彼との対比で安藤がヒーローになった)
というexcuseでは説得力薄いですかねww

>芸術家になってくると、いろいろと変わったキャラクターの人物がいるので、やくざな男に惚れるというのもありかなと思いますが、それとて、女子大生のキャラ設定をしっかりと書きこんで、「このキャラならやくざな男にでも付きまとうわな」と思わせるような設定にする必要があると思います。
そうかもしんない
あたし夕里子の設定若干エキセントリックにはしているのですが、書き足らなかったのかもしれませんんね スンマソン

>設定に伏線を張らずに、結果だけを書いている、という感じでした
そうなのか!
キャラ的には伏線的なもの入れているつもりだったんですが

夜雨さんの感想参考にさせていただき今一度考えます

ありがとうございました 今後ともヨロ!

u
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北に住む亀さん
前作に引き続いてお読みいただき、また両方に感想いただきありがとうございます
返信遅れてスンマソン

文章お上手な北に住む亀さんに「地に足ついた文章」とか>今作は逆にとても筆がのっている感じ出ていて、とか言われますとナンカうれしい!

まず前作の感想返し
他の方の感想で登場人物が多すぎるという意見が大半だったんですが、
>登場人物が多い気はしなかったので、つっかえることなく一気に読めました
とのことなので一応安心

>ここまで詳細に書かなくてもいい気がしました(登場人物多そう…みたいな印象を与えますし)。上記はあくまで一例ですが、詳しく書く部分とそうでない部分のバランスがとれていると、もっとスッキリできたかもしれません。
そうですね
あたし詳しく書き過ぎるとみんなから言われます
本作初期の作なんで余計にそんなとこ出ている まー、今も変わらないかな? 進歩がないかもwww

>小林課長が、ちょっと無能っぽいなぁと(笑)。もっと切れ者のイメージで読んでいたので、ひっかかりました(瀬尾さんが有能なだけかもしれませんが)
小林課長は最初から「小悪党」ミタイナ設定なんですよ
ですから、あまり現実感が無かったかも。もう少し複雑な設定のほうがリア
リティ出たかもしれません

そして本作なんですが
>はい、はい、すみませんねえ、年寄りの話は長くなっていけませんね。        
>すみません、話が横道にそれてしまって  これを少し便利に使いすぎな気もしました。物語の世界を楽しんでいた故に、「それはもういいから」とちょっと思ってしまいました
あは!すみませんでした
つかい便利がいいんで、ついついww
民謡の合いの手みたいに使ってしまいましたwww

ありがとうございました

あと、あたし再訪はほとんどしないのですが、北に住む亀さんの作にもう一度おじゃましたいと思います
明日は無理かも土日です
でわでわww

u
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5150さん
加茂ミールさん
拙作に感想いただきアジャースwww
返しショートレンジではむりなの!

なので、土か日かも?
ゴメンナサイ

夜の雨
ai192083.d.west.v6connect.net

再訪です。

こういう具合に書いてほしいのですが。

夕里子が安藤にチンピラから助けられる。

そのときに夕里子がぼぉっと安藤の顔を見ていたので、安藤が「俺に惚れたのか」と冗談をかます。
「残念ながら、俺は小娘には興味はないんだよ」
しかし夕里子は惚れた晴れたで、安藤を見ていたのではない。
こんど日展(ほかのコンクールでもよい)に出す作品のモチーフが安藤とチンピラとのやりとりでイメージ出来たのだ。
ここのところさっぱりと描く意志がわかなかったのだが……。
「けんそう、けんそう……」
「せんそうが、どうかしたのか?」
「けんそう、けんそう、街の喧騒」
「はぁ? 街の喧騒?」
「あはは、ありがとう。おかげ様で、こんど日展に出す絵のモチーフのイメージがわいたわ」
「なんだ、おまえ」
 安藤は夕里子の頭の先から靴先までじっと見た。

こういうような調子(きっかけ)で、夕里子は安藤にお礼を言って去っていく。
その後姿をぽかーんと見ている安藤。
夕里子は「街の喧騒」という題材で、安藤の抽象画を描きあげて日展に出品する。
その絵が優秀賞に選ばれ、メディア等で夕里子が出ているのを安藤が見る。
夕里子が絵の説明をしているのを視聴して、「これ、俺なのか?」とテレビにくぎ付け。

そういったことがきっかけで、安藤と夕里子が再会を果たし、お互いに相手を意識するようになる。
夕里子は安藤の生きざまを見ているとどんどんイメージがわいて、絵を描くのがはかどるので、安藤に接近してくる。
安藤もまんざらではない、何しろ若くて美人だし、その上に自分にはない才能がある。
世の中に出る才能。天下を取る才能……。
もしかしたら、俺の力で夕里子に天下を取らせることが出来るかもしれない。
そう思うと今までの自分の人生がつまらなく思えて仕方がない。
そして夕里子にのめり込んでいく。
付き合っている女を捨てて……。

こんな感じで二人はいつの間にかお付き合いしている、という展開です。

どうでしょうか、芸術家を真剣に目指している美少女(大学生)とやくざな安藤という男の人生劇場は。
こわもての安藤が、夕里子を超一流の芸術家にするために奔走する。話です。
悲しいラストは大いに結構です。
安藤が捨てた女に刺殺されるとか、安藤自身でもよいし、夕里子が犠牲になってもよい。
まあ映像的には夕里子が天下を取って授賞式に立っているところへ、こわおもての陰が無くなった安藤がスーツを着て向かっているわけですが、そこを自分が捨てた女に刺されるとか。
芸術家やその近辺には悲劇はてんこ盛りなのが、浮世の世界ですから。

以上です。

u
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5150さん
お読みいただきありがとうございます

>前半に何気なく書かれた細部が意味を伴って、くっきり浮かび上がってきました。前半にはかなりの伏線が当然ながら潜んでいて、それが結ばれる
↑前半部分にはかなり伏線を仕込んでいます  安藤さんと八幡会長との謎は勿論ですが、この会社なぜ西島さんが社長をやっているの? 八幡さんとしては夕里子に婿をとって跡継ぎにしたかったのだが彼女は死んだ!
じゃー夕里子の妹に婿!
でも姉妹はかなりの年齢差、婿獲れる年じゃない 
しょうがなく中継ぎということで西島社長 マア、次の社長は妹の婿養子の専務が、というような細かな設定です

>前に感想を書いたときには、uさんにあっさりスルーされてしまいましたが、やっぱり作者さまの登場人物を見る目が優しいし、この作品には心の芯から悪い人が出てきませんよね
↑まー、根っからの悪人っていないように思う(たまにはいるのでしょうが、それはそれでその悪党自身の中では正義ミタイナ、あたしらから見たら歪んでるミタイナ)
表から見るか裏から見るか あたしの場合は良い面しか描いていない それはそれでお話としてはインパクトに欠けるのかもしれない
でも、あたしとしては「切っ先」尖っていてもいいけど、その鋭利な部分の一番先のほう少しだけ丸みをつける そうすれば鋭利な部分あたっても致命傷には至らないミタイナ
そういったところが登場人物に対するやさしさと5150さんがお感じになられるのかなーミタイナww

>あのとてもヤクザとは思えない語り口からも、滲み出ています >あの語り口はちょっとキャラに合わない。前半部での安藤さんがこんなふうに語るなんて
↑ここはかなり悩んだんです 前半の安藤さんは寡黙な職人という設定 後半に入って安藤さんの独り語り あたし自身も、立て板に水の安藤さん、饒舌スギだろうと思いましたwww
裏設定としては安藤さんの置かれた状況と年齢 海老田さんと溶接やっていた頃はまだ若いし、引っ張ってくれた八幡に対する恩義もある、前科がある、ということを秘密にしていたので、飲み会とか慰安旅行にも極力参加しない寡黙な安藤さんでしたwww 夕里子との恋が1970年代 安藤さん年上なので居酒屋に現れた安藤さん多分70歳後半80歳前半の設定(ギリ)で、マア年の功というか亀の甲というか、おしゃべりというか?www

>日本的な会社経営の精神が、まだよい形で残っていた時代ですね。会社がある意味で、家族代りだった遠い昔です
↑そうですね 70年代 その他のものも、ギリ残っていた時代だったのでしょう

>私の優しさがそういう行動をとらせたのだろうって。〜から続く、最後の場面が胸を打ちます。の、はずでしたが、実際のところ、インパクトはあまりなかったです。本来ならもっと感動するはずなんですが
↑ここ感動してほしいところなんですが(涙!

>夕里子が自殺を選んだ箇所だけは、読んでいて少し違和感がありました。夕里子の心理的な伏線も書かれてないようですし
↑裏設定としては刑務所の安藤さんが面会を断り続けたこと 夕里子が見合い話に応じるようになったんですけど、刑務所にはずーっと手が見送っていた‥‥ しかし彼女は……… ここらへんは八幡さんに語らせた方が良かったかもですね

>語る順番 ←前回もご指摘いただいたけどムツカシーヨ!

>エビタンが出るところですが、ちょっと出しゃばりな感じがしました。つまりは作者さんの自信のなさをカバーするものだと思うんですけど
↑そうですね エビタン一応ナレーターorナビゲーターみたいなところあるしね 考える必要あるかもです

色々とご指摘いただき感謝!
ありがとうございました

u
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加茂ミイルさん
お読みいただきありがとうございます

>ヤクザって怖いイメージがありましたが、この作品に登場する人物は人間味があって、親しみを持てました
↑あざーすww安藤さんの設定はともかく 兄貴の設定書いてて楽しかった!

>前半で女の子があっさりと組事務所に入れてしまうのは、唐突感を感じました。
せっかくですから、女の子が事務所に入るまでに、もう少しハラハラするような場面を入れてもいいんじゃないかと思いました。それはそれで面白いような気がします。
↑そうかも マア設定としては70年代なのでヤクザも現在よりはおおらかwwwそんな感じです
この場面、加茂さん描いてヨ(笑
筆は速いし得意でしょ? そんなの(笑

ありがとうございました

u
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大丘 忍さん
前後編通してお読みいただきありがとうございます
しかもプリントアウトまでしていただいて

確かにパソコンとかスマートフォンとか便利になりましたけど
でも「便利」は「不便」を内包していますよね
ワープロ使っていたら、昔書けていたはずの難しい漢字書けなくなったww
スマホ便利ですが昔暗記していた電話番号覚えなくなったwww マアその他いろいろ

>夕里子さん、素敵でしたね
↑あたしも好きですwww

大丘先生ありがとうございました

加茂ミイル
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>この場面、加茂さん描いてヨ(笑

そうですねー。
サングラスをかけた女が組事務所の前をうろうろしているところに、
突然、お前誰だって声かけられて、女がピンチになったところで、
場面が変わって、主人公がパチンコから出て来て、
熊のぬいぐるみの景品と交換して、
このぬいぐるみどうしよっかなーとか悩みながら事務所の中に入ったら、
先日の女子高生と組員たちが意気投合して酒盛りして盛り上がってて、
「あ、お前!」
みたいな感じで、
「先日はどうもありがとうございましたー! あ、そのぬいぐるみかわいー」
「お前にやるよ」
みたいなノリってどうでしょう?

加茂ミイル
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続き

しかし、そのぬいぐるみは、景品として受け取るべきではなかった。
そのぬいぐるみの中には覚せい剤が隠されていたのである。
実は、景品に見せかけて、主人公とは敵対する組のチンピラに手渡すはずだったのだが、
主人公をそのチンピラと勘違いした店員が、渡してしまったのだった。

主人公はそれを知らず、女子大生にそのぬいぐるみをプレゼントしてしまった。
主人公「パチンコの景品だよ」
女子大生「やだー、かわいー!」

へまをして半殺しにされるパチンコ店員。
「24時間以内に見つけられなかったら殺す」
と脅され、必死にぬいぐるみを探す店員。

ぬいぐるみを抱えながら道を歩いている女子大生を発見する。
「おい、お前! そのぬいぐるみ返せ!」
「返せって、何よ、これは私がもらったのよ」
「いいから、返せ! それはただのぬいぐるみじゃないんだ」
「何すんのよ、離しなさいよ!」

「あれ、さっきの女の子、忘れ物してますよ」
「本か。『風と共に去りぬ』しぶいの読んでるじゃねえか」
「また来た時に渡してやりゃあいいっすね」
「いや、まだその辺にいるだろうから」
と言って、主人公は外に出る。
実は女子大生に会いたい気持ちがあったのである。

男女の言い争う声が聞こえる。
女子大生の声だ。
主人公はそちらへ向かって走る。

u
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うんうん!
加茂さん続きお願い!

u
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採用せんけどね(笑
オモロイ

加茂ミイル
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主人公が駆け付ける。
女子大生が襲われていると思い、
「てめえ、何しやがる」
店員からぬいぐるみを奪い返す。
そして、店員をぼこぼこにする。
「もう、いっそ殺してくれ……」
と嘆願する店員。
「よし、殺してやる、こっちこい」
「ちょっと、待って。この人、何かわけがありそう」
「情けなんかかけなくていいんだよ、こんな屑野郎に」
「だって、おかしいでしょ。こんな熊のぬいぐるみにここまで執着するなんて」
「そう言われりゃあ、確かにそうだな、おい、お前、何だってこんなぬいぐるみのおもちゃに、そこまで必死になるんだ」
しかし、本当のことは口が裂けても言えない。
「そのぬいぐるみを返してもらわないと、殺されるんだ」
とだけうわごとのように言う。
「何だ? このぬいぐるみに何かあるのか?」
「それは言えない」
ふと主人公は気づいて、懐からナイフを取り出し、ぬいぐるみを切り裂く。
中から、大量の白い粉が。
「おい、こいつはとんでもねえ量だな」
「ねえ、これってもしかして」
「覚せい剤だ」
「ちょっと、あなた、私にこんなものプレゼントしたわけ?」
「知らなかったんだよ」
「ほんっと、あんたと関わるとろくろくなことがないわね!」
「お前の方から尋ねて来たんだろうが」
「何よ!」
「返してくれ……」と店員は手を伸ばす。

u
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加茂ミールーーー!
メッチャ話拡げとるやんかー!
でもオモロイwww

加茂ミイル
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「あれ、お前、もしかして、あの時の店員じゃねえのか」
 と主人公は思い出す。
「あ、あんた、あの時の……」
 と店員も思い出す。
「あんた、〇〇組の人じゃなかったのか」
「俺は、△△組の者だ」
「よりによって……」
 店員は自分の運の悪さにうなだれてしまう。
「とにかく返してくれ。返してくれたら、何でもするから」
「そういうわけにはいかないんだな」
 と言って、主人公はいきなり店員に手錠をかける。
 店員は何が何だか分からず、ただ唖然と主人公を見上げる。
「え、どういうこと?」 
 これには女子大生もびっくり。
「お前を覚せい剤取締法違反で逮捕する」
 何と、主人公は警察だったのだ。

加茂ミイル
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女子大生「あなた、警察だったの」
主人公「隠してて悪かったな」
「なあんだ。警察かー」
「何だ、そのがっかりしたような言い方は」
「ヤクザだと思って、ちょっとわくわくしてたんだけどな」
「悪に惹かれるタイプか?」
主人公は応援を呼ぶ。
すぐに応援の車が到着した。
主人公は後部座席に店員と乗る。
女子大生は助手席に。
「おい、お前はもう帰れ」
「いいじゃない。こんな面白い展開、ついて行かないでいられる?」
「どうします」と運転手。
「めんどくせえからとりあえず車出せ」
車は走り出した。

警察署の前を通り過ぎる車。
「あれ? 警察署過ぎたけど」
運転手も、主人公も何も言わない。
首を傾げる女子大生。

車は、倉庫の前に停まった。
「え、ここ、どこ?」
車から降りる主人公と運転手。
女子大生もついていく。
何だか怪し気な雰囲気。

u
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加茂ミール―――!!!!
まだ広げるんかいwww

加茂ミイル
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倉庫の中に入ると、さらにもう一つ厳重な扉があった。
カードキーで、ロックを解除する。
ものものしい様子に、女子大生は固唾を飲む。
中に入る主人公たち。
女子高生もついて行こうとする。
「お前はここまでだ
と帰そうとするが、女子高生は意地でもついて行く。
「あなた、本当は警察じゃないんでしょ?」
「お前には関係ない」
「お願い。私も中に入れて」
「駄目だ。帰れ」
「死んでも帰らない」
「なら、しかたない」
 主人公は懐から銃を取り出し、女子大生の額につきつける。
 撃鉄を起こし、引き金に指を添える。
 恐れる様子もなく、主人公を睨む女子大生。
「もうよい。その娘を中に入れよ」
 と奥から声がする。
 主人公は腕を下ろす。
 奥から、一人の老婆が近づいて来た。
「勇気のあるおなごじゃ。名は何と申す」
「夕里子」
 老婆はその名前を聞いて、はっと何かを思い出したみたいに、夕里子の顔をまじまじと見つめたが、すぐに取り繕ったような笑顔を浮かべた。
 その様子に、主人公も夕里子も一瞬戸惑ったが、その後の老婆の陽気な態度によってうやむやにされた。

u
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夜の雨さん
再訪ありがとうございます

なるほどですwww
夕里子さんが安藤にひかれる芸術家としての(キッカケ)
参考になります

でもこれ採用するとなるとマッタク別の物語?ミタイナ
しかもかなり長尺になる予感
あたしまた300~500枚書かなければならないかもね
書いてみようかな冗談ww
加茂さんも別仕立てでお話し展開しているしwww

ところで本作あたしが昨年末に3回に分けてUPした作と関連あるのわかります?
夜雨さん感想何回かくれたよね

ということでステキナアドバイスありがとうございます
参考になりました

加茂ミイル
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「新日本秩序」
そう書かれた額が正面の壁に飾られてあった。
老婆は安藤から覚せい剤を受け取り、それを棚の引き出しにしまった。
「夕里子と、申したかな?」
老婆が夕里子を見て尋ねた。
「はい」
「あなたがここに来たのも何かの縁じゃろうて」
「そう思います」
と夕里子は安藤を見てにっこり笑った。
「実はの、わしゃあ、あんたをずっと見てたんじゃよ。組事務所のカメラに映ってるあんたをな」
「え、私、見られてたんですか? 恥ずかしい」
「どうも、あんたは、ただ者じゃないって、感じてたよ」
「私が? やだー。普通の女子大生ですー」
 老婆は、運転手に目で合図を送った。
 運転手は、棚の引き出しから注射器を取り出した。
 夕里子はそれを見て、少し驚く。
「あんた、今の自分に満足してるかえ?」
「私がですか? たぶん、全然……平凡な毎日に飽き飽きしてます」
「それじゃ、今の自分を越えた存在になってみたいとは思わないかえ?」
「今の自分を越えた……それはいつも目指しています。芸術活動を通して。でも、全然、才能がなくて」
「あっという間じゃよ。すぐになれる」
「え?」
「超人になれるんじゃよ」

u
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やはりそっちへの展開ねwww
加茂さん予想を裏切らないwww
あざーす!

加茂ミイル
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どちらかというと、ハリウッド的なスケールのぶっ飛んだ作風を目指しています。

もんじゃ
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 uさま

 拝読しました。

 とても読みやすい文章でした。語り掛ける文章、とりわけ得意なのでありましょうか、瑕疵も見当たらず嫌なくさみとかもなくすらすらと読めました。

 文章同様内容にもいやみがなく、てらったところもなく、誠実な印象も受けましたし、話そのものもシンプルに面白いし総合力の高い作品であるなとお見受けしました。

 個人的に感じました弱点を強いてあげるなら一言で言って「紋切り型」であるかと、文章もお話も。定番というか。でも定番ほど需要のある商品もありますまい、とかそんなふうにも思います。豪華絢爛なフルコースでもゲテモノ料理でもなくやはり定食がいちばんなのかもなあ、と何か学ばせていただいたようにも思います。

 キャラも立ってますね、悪目立ちしない控えめさでしかししっかり立っている。そう感じました。すべらかな筆で描かれたキャラのしっかり感も御作の魅力であるなと感じました。

 読ませていただきありがとうございました。

u
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もんじゃ さん
お読みいただきありがとうございます

>嫌なくさみとかもなくすらすらと読めました
ありがとうございます とくに(くさみ)なくてよかったwww

>話そのものもシンプルに面白いし総合力の高い作品であるなとお見受けしました
あざーす! 社交辞令でも(総合力の高い)と言っていただければウレシ!

>「紋切り型」であるかと、文章もお話も。定番というか
マアこんなんしか描けないのよねあたし

>キャラも立ってますね、悪目立ちしない控えめさでしかししっかり立っている。そう感じました。すべらかな筆で描かれたキャラのしっかり感も御作の魅力であるなと感じました
まあね、そこら辺しか特徴ナイッチュウカwww
お褒めの言葉とかいしゃくいたします

ありがとうございます

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