作家でごはん!鍛練場

夏の怪談

私は幽霊を信じていない。
けれども、細心の注意を払うようにはしている。

今まで、このかた一度も、"見た"ことはないけれど、
このまま、どうか見ずに済めば良いと思っている。

なので、今回も、見てはいない。


ある夏ー
私と友人の宇田と平賀の3人で、
山の方へ旅行したときのこと。

車は宇田が出してくれることとなった。
出発の日、22時頃になると家の前に、
すでに平賀を乗せた宇田の車が迎えにきた。

車に乗り、夜中のドライブがてら静岡へ向かった。

東京から静岡まで、高速道路を使わずに下道で向かった。
最初はテンションが高ぶっていたのだが、
2時間も車走らせるとすっかり落ち着いていた。

そうして、県をまたいで行くと、次第に山道にさしかかった。

運転手である宇田は、一番気が強く、そして一番の怖がりである。
山道が良い感じに奥まってきて、外灯も減り、車内にどこか静けさが広まる頃、

私は「今なんかいた」と、おもむろに真剣な口調で言った。

「いたかも...見えた?」と、すかさず平賀が乗ってきた。

平賀は、色白で細身のスタイルのいい美人で、
一見クールに見えるのだが、笑いにおいては貪欲であり、
外見に反して、ふざけた性格をしている。

宇田だけが、聞こえないふりをしていた。わざと前だけを向いていた。
空気が、やめろと言っている。

さらに「ね、なんか聞こえない?」と悪ふざけを続けていると、
宇田が真面目にやめてと訴えてきた。

それでも、しばらく平賀と私でからかったのだが、
S字の狭い坂道に差し掛かったあたりで、
「まじで事故るぞ!」と言われたのでやめた。そこそこ怒りの声であった。

かわいそうに思った私と平賀は、今度は気を紛らわせるために、
音楽をかけ、陽気な話をした。着いてから何を食べるとか
温泉にも入ろうとか、山見ながらね、なんてことを話した。
泳がないでね、と平賀に言われたので、人がいなければねと返した。


山道を無事に抜け、
休憩のためにコンビニに立ち寄ると、富士山が見えた。
綺麗だった。もうあたりは明るくなり始め、清々しい気持ちだった。

そうして、到着までずいぶん時間をかけ、
朝方になる頃に、ようやく目的地へついた。
時間配分がおかしいのだ。
計画性のあるタイプが一人もいなかった。

着いて早々、くたくたになっていた我々は
初日をロッジで過ごした。
みんな爆睡で、起きたら夕方になっていた。

温泉なんて言ったが、そのロッジには温泉がついておらず、
近場で検索してみると、一件だけそれほど遠くないところに温泉が見つかった。

着替えと貴重品だけ持って、私たちは再び車に乗り込んだ。
まったく知らない場所、馴染みのない山奥で、土地勘もない、
全てがカーナビ頼りである。

今回も、運転は宇田で、助手席に私、後部座席に平賀が乗った。
しばらく車を走らせていくと、カーナビが右です、と言った。
急だったので、思わず、通り過ぎてしまったのだ。

でも、道を間違えても修正してくれる。
次の指示を待って、それにしたがって走っていると、
どうやら、また元の道に戻ってきてしまった。

そして、同じところでカーナビがまた「右です」と言う。
えらく、冷たく聞こえた。

カーナビとは、「何百メートル先、右方向です」と、
普段は予告してくれるのに、この時はいきなり「右です」とだけ。

その目立たない細い脇道を指すのだ。本当にこんなところ?と思ったが、
何度か試して、何度もそこを右に曲がれと言ってくるので、
仕方なく私たちはその道に入っていった。

その道を進んでいくと、だんだん道が細くなっていく。
もともと細い道であるが、周りは木しかない、一本道だ。
対向車なんて来たら、どうするのだろうと思った。

通りすがれるほどの、スペースがない。

しばらく進んで、ずっと景色が変わらない。
奥まった森。周りは木だけ。外灯もどほとんどなく真っ暗だ。

私たちは黙りこくっていた。だれもがこんなところに温泉なんてない
と気づいていた。
ただ、カーナビだけが「直線です」と前に促してくる。


いよいよ、全員の不安がマックスに達したころで、
ついにカーナビが「到着しました」と言って、すっと案内が終わってしまった。
目の前にあったのは、使われていない、廃墟であった。


これは、やられたな。と思った。
宇田は案の定、無言である。相当、恐怖しているに違いないと思った。
平賀はというと後部座席から、助手席へと移動してきた。

ひとまず、3人で身を寄せ合った。
ここからのミッションは、無事に帰ることである。
幸いなことに、私は"見える"体質ではない。
平賀も宇田もだ。みんな鈍感だ。よかった。
でも、今の状況は何かがおかしいと言うことには気付いている。

宇田はもはや使いものになりそうもない。あまりにもしゃべらない。
何かを感じているであろうが、無言を貫いている。
それが、恐怖している何よりの証拠となっていた。
行きの山道の無言よりもひどい顔をしていた。
大丈夫ではなさそうである。


気が動転してるであろう宇田に代わって、私が運転を替わると申し出た。
席を移動しようとして、ドアを開けると、びっくり、横道が崖。

暗くて気が付かなかったが、これは降りない方がよい。
前に来ていた平賀にいったん後部座席に行ってもらい、
その後、私も後ろにいき、宇田が助手席へと移動した。

その後、私が運転席に座り、最後に平賀がやっぱり前にやってきて、
席替え完了だ。

宇田にサイドミラー、平賀に全体を見てもらって
少しずつバックで来た道を戻っていく。

ズレたら、死ぬ。多分。落ちる。
高いのか、低いのか、なんなのか、
真っ暗で見えないし、わからないが、
今は、ただ戻るんだ、それだけを考えろ。
そんな気持ちだった。必死の思いで、戻っていくと、
Uターンできそうなスペースを見つけ、
そして、「右です」の道から、帰ってくる
ことができたのであった。

夏の怪談

執筆の狙い

作者
pd2ae3770.chibnt01.ap.so-net.ne.jp

ふと、思い出したので、書いてみました。
拙い文章ですが...
あまりこわくないかな。
数年前にあった実話です。

コメント

すももりんご
116-65-240-38.rev.home.ne.jp

 十分に怖いです。昔、大学生の頃、廃墟までにはなっていませんが営業を中止している親戚の旅館に一人で泊ったことがありました。百畳の宴会場でカラオケして部屋に戻って寝ました。夜中に目が覚めたので電器をつけようとしてリモコンを何回もバチバチバチバチバチバチと押しましたがつきません。焦って怖いよと思った瞬間、部屋の外の廊下で誰かが走ってくる音がした。と同時に金縛りになりった。勇気を絞って必死で誰ですか?と叫んだら金縛りがすーととけて電器がついた。でも怖くてトイレいけなかった。あとで叔父に言ったらあの部屋よくでるんだ。先に言ってよ。怖かった。世の中は不思議なことがたくさんあるんですね。
悪夢を見た時はバクバク。
幽霊を見た時はかナンマイダかな?

貔貅がくる
n219100087061.nct9.ne.jp

幽霊の本拠地?らしき場所まで連れてゆかれるのだろう……までは予想どおり進行で、それから、ドアの外すぐが崖!
到着してすぐ、半ばパニックになっているだろうところへ待ち構えていた、罠のような崖が効いてる。

短い文量なのに、文章には引っかかり箇所が結構ある。

・今まで、このかた一度も、
・山道が良い感じに奥まってきて、外灯も減り、
・車内にどこか静けさが広まる頃、
・通りすがれるほどの、スペースがない。
・しばらく進んで、ずっと景色が変わらない。
・奥まった森。周りは木だけ。外灯もどほとんどなく真っ暗だ。

筆者の「癖」らしいのですが、文語調を織り交ぜると用法に違和感が出る。全部通して平易に書いた方がいいと思った。

貔貅がくる
n219100087061.nct9.ne.jp

前のコメントで指摘しかけて一旦やめたので、追記になってしまいますが……

再現ドラマだと映像が先に来ているからこの書き方でも支障はないのだけれど、ショートショートとして読む時は「主人公の性別と人物関係」は早めに出して欲しい。

>平賀は、色白で細身のスタイルのいい美人で、
の記載にぶちあたって「それまでは二十代のあんちゃんで脳内シミュレートしていたものを、全面変更」させられたので。

あとタイトルは、『ドライブ』『道案内』等の方が、はじめから「怪談」と言われちゃってるより怖そうな気がした。

pd2ae3770.chibnt01.ap.so-net.ne.jp

>すももりんご様

コメントありがとうございます!
それはまた怖い体験ですね...足音に金縛り...
想像しただけでもこわすぎます。
本当に、世の中は不思議なことがたくさんありますね。
これからも、幽霊だけは見ないようにしたいものです。。

pd2ae3770.chibnt01.ap.so-net.ne.jp

>貔貅がくる様

コメントありがとうございます!
さすがに崖を見た時は「逃さない」と言われたみたいでぞっとしました…

確かに言い回し?というか口調と文語調がごちゃっとしてますね。
どうにかして状況を伝えようとしたのですが、なかなか難しいですね…

>「主人公の性別と人物関係」は早めに出して欲しい。
ここ、完全にすっ飛ばしていました!ご指摘ありがとうございます。


あと、タイトルのひねりがなさすぎましたね。
もうそのまんま付けてしまいました。笑
『道案内』いいですね!『案内人』とかでもいいかもですね。
考え直してみます!

三枝松平
ntngno151245.ngno.nt.ngn.ppp.infoweb.ne.jp

オ 様

 読みましたが、日本の方ですか?
 
 最初に「今まで一度も見たことはない・・・」と言ってすぐに「なので今回はみていない」って変でしょう。
 今回は、の前には見ていることが前提の言い回しになりますね。
 そのほかにも色々ありすぎて、怪談になりようがありません。
 怪談はシャープでないと。

 気分を害したとしたらすみませんが、ご自分でしっかり読んでみることをおすすめします。

pd2ae3770.chibnt01.ap.so-net.ne.jp

>三枝松平様

コメントありがとうございます!
たしかに変ですね。
最初の文の「今までに見たことない」はこの『体験をする前』に
幽霊を見たことはないという意味で

「なので、今回も見てない」は、不思議なことはあったんだけれども、
『この体験後』も、見てはいないんだという意味です。これが伝えたかったのですが
表現不足で申し訳ないです。

「なので、」って言い回しがややこしくしたのかもしれないですね

丹村あさひ
ritt-177-66.ranksitt.net

オ様

これが実話って怖すぎますね!個人的な好みの問題かもですけど、最初の入りがすごくよかったです。それから、友人同士でわちゃわちゃしてる感じも、微笑ましくて。ああいうテイストを日常系みたいな感じでもっと長く読んでみたい気もしました。

ありがとうございました。

pd2ae3770.chibnt01.ap.so-net.ne.jp

>丹村あさひ様

コメントありがとうございます!
そう言っていただけて、嬉しいです。日常系の友人同士の
なんてことない会話とかって、すごく和みますよね。

こちらこそ、ありがとうございました。

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