作家でごはん!鍛練場
すももりんご

大きな忘れ物

大きな忘れ物

 私の名前はもも。父が桃を食べている時に生まれたので、ももという名前を付けたそうです。本当は生まれる前から決めていたが母に反対されていました。
「女の子はもも。男の子なら桃太郎にする。冗談言わないで、お父さん」
 母は女の子らしい名前にしたかったようです。それでも父は頑として譲らない。母は仕方がなく折れて、ももに決まりました。
 私はももという名前が嫌いと思わない。他の名前ともも、どちらがいいか?と聞かれたら、やはり、ももを選ぶだろう。でも自分の名前を付けた父は好きになれない。むしろ嫌いであった。母は嫌いじゃないけど好きでもない。
 家族とは大人になるまでに関わっている人の繋がりだけと思い込んでいた。何かあると家族を強調し重い言葉が返ってくる。結局、何一つ自分の意思を言えなくなり、この長い時間が早く過ぎ去って欲しいと思うようになっていた。しかし、ももはあることがきっかけで考え方を変えてしまう。そのことを話します。
 今の実家は父と母、そして犬のマロンがいます。以前は父、母、姉のりんご、私もも、そして途中から犬のマロンが家族になって暮らしていました。父と母の名前は恥ずかしので言わないで欲しいと頼まれました。
 マロンはミニチュアダックスフンドの雌で、今年の誕生日が過ぎたので十五歳になっています。人間で数えると七十過ぎのおばあちゃん犬です。
 今から十五年前、私が高校二年の時にマロンは家に来ました。マロンが家に来る前は事業をしている両親の口癖で忙しい、忙しい、という言葉だけが耳に入る生活でした。
 大学に行っている姉を含めて四人家族はそれぞれの主張が強すぎて意見の一致に至らず纏りません。家族で何かをしようとしても一触即発、言い争いになるような気まずい雰囲気です。
 私は中学卒業まで親に精一杯、反抗しました。何を言っても意見が通りませんでした。高校生になり表面上はよい子に見えるように振る舞っていました。しかし、内面では家族が好きになれない。特に父が嫌いで話もしたくなかったのです。
 そんなある日、仕事が休みの両親は日頃からの疲れが溜まっていたらしく昼近くまで寝ていました。私も休みで気分転換をしたく母の代わりに料理を作りましょうと思い、冷蔵庫の食材を見ました。これらの材料で何が作れるかスマホで調べてメニューが決まり、プロの調理人がこつを伝授しているので、さっそく調理に挑戦しました。注意することは読んでから作りましょう。読みながら作っていると焦がしますよと書いています。
 あ、と叫び慌てながら火を止めたら、やっぱり少し焦げて失敗したなと思ました。ま、いいか。どうせ自分が食べたいわけでなく、作りたいから作ったので妥協する。それでも見栄えが良いのでメインの三元豚トマトソース酢味噌焼きを大皿に入れて、暖簾が下がり手元しか見えない対面キッチンのカウンターに置く。そして大皿を居間のテーブルに運び、別皿に盛り付けしたサラダを並べた。何か足りないと思ったら皮付きレモンの細切を忘れている。キッチンから持ってきてパラパラと上から皿に散らしていると二階から階段を下る音が壁に響いたので、父が起きて来たのがわかった。二人だけで父といるのが嫌で見られないようにして直ぐにキッチンに戻った。少し遅れて母も来る。
 二人は寝ぼけた顔をして席に座り、皿に盛り付けしている料理を見る。
「お母さん。いつ作った?」
「私、作ってないよ。ももが作ったのかな?」
 そこにキッチンから、ももが出てきて、もう一品を運んできた。父と母の前に置きスプーンとホークを渡す。
 二人は「なに、どれ、どれ」といいながら食べ始めて「この一品、なんていうの?母さん、わかるか?」
「ポトフスープよ。野菜がいっぱいで牛肉が柔らかいでしょ。圧力鍋で煮込んでコンソメで味付けし、お父さんの好きなニンニクと生姜を入れたのね。もも、そうでしょ」
 ももは軽く頷いて、はにかんだ。二人はももが初めて作った料理なので喜んで食事を楽しんだ。
「ももは食べないのか?」
「作る時に味見をいっぱいしたからいらない」
「そうか、焼き加減が強くカリッとして、おいしいぞ」
 父とももは会話することが少ない。父が話しかけ会話が成立したのは久しぶりだった。
 焦げ臭いといったらどうしようと思っていたので安心した。自分では失敗したと思い込んだが褒められて気分がよくなり「お父さん、コーヒー、飲む」
「母さんも飲みたいな」
「いいよ。待っていて」
 父が教えてくれた通りにコーヒーを入れた。入れ方は御湯を沸かし、カルキ抜きのためにガスの火を直ぐ消さないで少し沸騰させる。その間に豆を挽く。挽いた豆の粉を熱くした鉄のフライパンに入れる。フライパンを二、三回、動かし粉をサーバーのペーパーにうつす。香ばしさが辺りに広がった。注口が細長いコーヒーポットで湯を注ぐ。最初に注いだ湯を止めて三十秒蒸らす。あとは周りから真ん中に向かって湯を注ぐ、その繰り返しで出来上がり。
 母が「いい香り。早くカップに注いで」と急かした。父も頷いていた。二人はコーヒーを飲みながら仕事の話をしている。いつもなら口角泡を飛ばし、言い合いになることもある。今日は何故か楽しそうに話している。暫くして話が途切れて父はコーヒーを飲みながら窓の外をぼんやり見ていた。
ももは影になった父の顔に恐る恐る言った。
「犬を飼いたい、、、、」
 話の途中で父が顔を向き直した。
「何だ、そんな魂胆があったのか?だめだ。事業をしているのに誰が面倒をみるのだ。動物は毎日、休みなく世話しなければならないぞ」激しい口調で言った。
「魂胆なんて酷い」
 涙を浮かべて階段を上り、自分の部屋に入って鍵をかけた。父が追いかけて来てドアを叩いて何か言っている。蒲団の中で耳を塞いで泣いているので聞こえない。やっぱり、私の気持ちを理解しないで頭越し怒る。家族とは何だろう。と思いながら寝てしまった。
 それから一週間、父と一言も話さなかった。また土曜日が来たが風邪をひいていると言って朝の食事をしないで寝ていた。
 母はももを心配しているかどうか分からないが「いい考えがあるの」突然、言ったので「なに」と返事をしたが何の事かわからなかった。
「ペットのことよ。お父さんを攻略するのによい方法があるの。朝、食事の時テレビを見るでしょ。今日のわんこや犬のでる番組を見せるの。そのうちに、この犬、可愛くない。足が短くて格好悪いと言ったらチャンス。その後に取って置きの秘策があるのよ」
 どうせ、いつもの思い付き、言うだけ言って実行しないくせに。そう思ったが一応、聞いてみた。
「な~に、な~に、お母さん、教えて」
「平日に、さっき言った、お父さんの攻略法をある程度、仕込んでおくよ。それは母さんに任せて。お父さんは外食が嫌いで手作りにこだわるでしょう。今日の朝、ももが仮病で食事をしないのでカップ麺を出しておいたの」
「仮病とわかるの?」
「わかるよ。仮病はどうでもいいよ。お父さんがこれ、なにと聞いたからラーメンよ、と答えて、嫌なら、うどんもそばもあるよ。どれがいい?そばと言ったのでそばを出して、特別お湯を入れてあげたら喜んでいたよ」
 ももはカップラーメンやカップそばで喜ぶ筈ないと思った。
「今度の土曜の朝は食事を作るの。メニューを決めて手作りパンとサラダ、茸と茄子のチーズ焼き、その上に、誰でも簡単に作れるローストビーフをのせる。バジルを添えたら出来上がり、お父さんに食べさせる。母さんは料理が苦手なので手伝ってね。もも」
「また、魂胆があるのか。と言われて喧嘩になるのは嫌」
「喧嘩はよくないよ。ももが喧嘩する度に、お父さんの性格に知らず、知らず似てくるよ。お父さんの弱点、知っているから娘よ、安心せ~よん」
「安心できない。私がお父さんの性格に似てくるなんてもっと嫌。お母さん、本当に大丈夫」
「迷える汝よ、信じたまえ」
 母は自分の言った事を直ぐに忘れるのがいつもの癖なので信じろと言っても半信半疑だ。しかし、母は相手が言ったことを書く習慣があった。自分の言ったことは忘れるが相手の言った事を詳細に書いて見解まで付けている。普段は意味ない事を長くて軽い口調で話しているけど、言い争いになると要所を突き、さらに何月何日何時何分こう言いましたよね。と迫ってくる。
 相手が驚いて次の言葉が出なくなる。そんな母だから父の事を何でも知っているので任せても良いと思った。不安な事は母が犬を好きかどうかであった。どちらかというと奇妙な動物が好きそうである。
 父の仕事は祖父が起業して受けついたもので、大手会社のひ孫くらいの下請けで従業員二、三人の小さな会社の社長であった。最高難度の技術を持っているが給料は従業員以下。利益のあがらない難しい仕事ばかりをしていた。最新式機械も導入する。従業員は祖父の代からいる年配の一人を除いて技術を習得すると直ぐに独立してしまう。
 母は会社の経理をしている。さぞかし不平不満を言っていると思ったが全く言ってない。父の手取り収入が月二十万しかないのに母は別会社を持っていて父の五倍以上の収入があった。母はアイデアを生かして独自の製品をデザインし父から独立した会社に生産依頼して収益を伸ばしている。売る店舗も持っている。母はやり手である。だから今回は信じよう。
 休日の朝がきた。この日だけは皆で食事をする。食べ終わるまで席を立たない決まりであった。母とももは朝早くから予定のメニューを作っていた。
 苦虫を潰したような顔して父が起きてきた。平日の朝に犬や猫などのペットの番組だけをテレビで見せられ、ストレスが溜まっているようだ。料理が並べられた。旨そうである。父の顔が普通になった。そして父はテレビをつけた。ニュース番組がながれている。
 母が「ちょっと待った。見たい番組があるのでリモコンください」
「おいおい、休日だけは選んでいいだろう」
「決を採ります。この番組でいい人は手をあげてください。お父さん一人ですか。却下」
 この展開が何なのかわからず、頑固な父だが口を開けて目をぱちくりさせていた。
「次にかわいいペットの爬虫類。この番組を見たい人、手をあげてください」
 母とももが手をあげた。
「はい決まりました。爬虫類にします」
 母は爬虫類を強調するように声高く言った。父の顔は子供のように拗ねている。ももが見る初めての顔だ。
「わかった。もういい」
 椅子から立ち上がって席を去ろうとした。
「駄目です。休日に家族で朝食を食べようと決めたのはあなたでしょ。座ってください」
「俺、爬虫類、気持ち、悪く、大嫌い、」父はもごもごと途切れ途切れに言葉を並べているので動揺しているのがわかる。さらに「子供の頃に山道を歩いていたら毒蛇がとぐろを巻いて首を上げ、口をあけ襲いかかって来たことがあった。一目散に走って逃げて振り向いたら、蛇が諦めないで追ってきていた。本当に怖かった。まだある。親戚の農家で馬を飼っていて仔馬が生まれた。早速、見に行った。仔馬が可愛いので長い時間そこにいたら親馬が急に反対の向きになって尻を見せた。馬の尻はでかいなあ。と驚いた時、その尻から何かが大量にでてきた。また仔馬でも生まれるのかと思ったら糞だった。同時に馬は足を蹴り稾(わら)の腐ったような糞が俺の体に飛びついた。臭いし、体についた糞から湯気まで立っている。泣きながら家に走って帰ろうとした。途中、遊び友達と会ってしまった。くせい、あっち行け。追い払われた自分がみじめになり、もっと悲しくなった。わかってくれ」
 今度は同情してもらうため母の感情に縋った。
 母は冷酷に突き放した。
「臭くても駄目です。先々週の土曜の午前十一時四十五分三十秒、もも、が二階の部屋に入った時、あなたは追いかけてドアを叩き、家族の決まりを守れ、まだ誰も席を外していない。と言いましたね」
 父は我に返り、開いた口をきりりと閉めて絶対に屈しないぞ。と決意したようだ。その態度を貫かれたら母の秘策は失敗する。
 ももは我慢比べなら母の負けかと感じた。
 録画した爬虫類をペットにしている番組が映しだされた。母だけがはしゃいでいる。父は食べながら時々頬を左右にぷるぷると犬のように揺らす。最後に蛇をペットにしている人の嬉しい顔が映った。金髪の美人の外人さんで小ぶりの錦蛇を首に巻いて「可愛いよ。あなたもペットにしたらいかが?」
 さすがに青い顔をしていたが、これで終わり、ほっとして気が緩んだ。母は父の気の緩みを見逃さない。
「いいな、蛇は可愛い。ペットにしたい。私も蛇を首に巻きたい。似合うかしら」
「え、何、蛇、ペット、駄目だ、駄目だ。びっくりした」
 さらに母は犬だけを小さい声で「じゃ、犬と蛇、どっちをペットにするのじゃ、」と駄洒落てみる。父は蛇の事しか頭になく「蛇は駄目じゃ」つい、言ってしまった。
「ペットにするのは蛇ね」
「え、言っていない。駄目じゃ、と言っている」
「蛇は駄目じゃ、と言っているよ。そこから駄目を抜いたらどうなる?蛇はじゃ。じゃ、は蛇ですよ。正解だ。ほらね、また蛇と言っているでしょ」
「そんな」
「私は駄目か、いいかを聞いていない。蛇か犬どちらと聞いている。どちらにする?」
 父は訳が分からなくなり苦し紛れに「蛇より犬の方が、まだまし」とまた言ってしまった。
「これでペットの蛇は却下。ペットは犬にします。決定します」母は宣言した。
 ももは賺さず「異議なし。ありがとう」
 父は蛇でなく犬で安心したようで喜んでいる。
 嬉しい筈のもも、だけど目的が、あればどんなことでもしてもよいと思わない。母の軽い言動が好きになれない。それに長い台詞の一人芝居に疲れた。頑固者で融通が利かない職人の父に通用するかどうか疑問に思っていたが誤りだった。父は誘導尋問に引っ掛かったのに気づかず、何故か喜んでいる。その姿が滑稽であり悲しく感じて嫌いであった父に同情して気の毒に思った。
 厳格で厳しい父は絶対で強さだけが目立っていた。しかし、父は弱い所があった。母にうまく操られて四苦八苦している姿に見えて普通の父親だった。
 父は食事を済ませ友人のところに出かけた。ももは一日中部屋で待っていた。午後六時過ぎになった。ホームセンーターも閉店の時間が迫っている。もう間に合わない。あれだけ嫌いな動物をペットにすることは心の中で抵抗があるはずだ。駄目でも恨む気になれなかった。
 父が帰ってきた。
「母さん、ホームセンターに犬を貰いに行くぞ。金、用意して」
「はい、わかったよ。もも出ておいで」
 ももは嬉しさのあまり部屋の中でドン、ドンと跳ねた。
 父はももが転んだと思い「大丈夫か」「はーい。大丈夫です」と明るく返事をした。
 三人は急いでホームセンタ―に行った。閉店前の動物コーナーは客がいない。静かだろうと思ったら意外とうるさい。客がいなくてほっとした動物たちがケージ越しにおしゃべりでもしているのかなあ。と勝手に想像した。
 ももと母は全部のケージを見て三匹に絞った。一匹、一匹、抱っこする。最後に小さいミニチュアダックスフンドを抱っこしたら尻尾が千切れそうになるくらい振っている。ももの顔に尻尾が勢いよくあたった。
「いやだわ~、きゃ~」
 声を出して抱えている手を顔から離した。それでも、あたったが顔を反らしながら笑っている。
「こんなに笑っている、ももを見たのは初めてよ。さあ、この犬に決めなさい」
「は~い」返事をしながら父を捜した。動物が嫌いな父は遠くの入り口付近にいた。ももは声をださないで、この犬でいいかいと指をさした。父は両手をあげて丸をかいた。早速、手続きに入る。
「三ヶ月間は指定の動物病院で無料検診が受けられます。ここに住所と名前を書いてください。それと犬ちゃんの名前を書いてください」
「あの、名前はまだ決まっていないのですが、、」
「マロンにしましょう。いい名前でしょ」
「そうですか。マロンちゃんにしますか?」
「でも父がもう車に戻ってしまいました」
「どうせ主人は変な名前を付けるので考えなくていいでしょう。娘の名前はもも、変でしょう」
「私は気に入っているし、友達も可愛いと言ってくれる。お母さんこそ変な事、言わないで」
「確認します。届出人はももさんで、よろしいですね。犬ちゃんの名前は明日電話をするまでに決めといてください」
 受け渡しは明日だが、ももの願いで、どうしても今日、連れていく事になった。ももは車の中で家に着くまで犬を抱っこしていた。家に着いた。三人と一匹の生活が始まる。
「どうする。大きい物置もあるし、外で飼うか」
「お父さん、やめて、死んじゃう」
「昔は皆、外で飼っていたのだが、、」
「今の犬は違うの。どうしても外が良ければあなたが外で暮らせば。とにかく家に入り家族会議を開こう。あなた、物置から段ボール箱もってきて」
 母は父からカギを預かり、私は犬を抱っこして家に入った。ドアの鍵をかけた。
「お母さん、まだお父さん、家に入ってないよ」
「いいの。あんなこと言うから仕返しよ。それより、マロンどこで飼う」
「二階で飼うのが理想だね。お母さん。まだ名前がマロンと決まったわけでないよ。勝手に決めたらお父さんに悪いよ。でもいい名前だね」
「そう、そう。この家は二世帯住宅だから、二階でマロンを飼いながら食事ができると便利だよね。ついでにお父さん、一階で寝てくれないかな?」
「お父さんを嫌いになったの」
「嫌いでないけど、寝台で寝ないのが嫌なの」
「どういうこと」
「畳や床に蒲団を敷いて寝るのが一番良いというの。そして蒲団をあげたり、敷いたりして埃が舞いあがるのが嫌なのよ」
 そこへ父がきてドアノブをカチャカチャしている。それでも開かないのでチャイムを五回ぐらい鳴らした。
 母が、とぼけながら、「こんな夜分、遅くにどなたさまですか?」
「俺、俺、開けて」
「おれ、おれ、サギのおれですか」
「違う、夫の俺だよ。開けて」
「よ~く、顔をみせてください。はは~ん。昔はハンサムだったけど、今はやつれているね」
「そんなことより、蚊に刺され痒い。開けて」
「ごめん、ごめん、鍵をかけちゃった」
 父は穴を開けた大きな段ボールを抱え怒りながら入ってきた。母は笑いながら、「ご苦労さん」三人と一匹は家族会議を開いた。途中のコンビニで買ってきた、おにぎりを食べながら父が最初に話し出した。
「外で飼うのが駄目なら家で飼うしかないのだが一階は御客が来るので犬がいたら困る。二階はどうだ」
 母は思惑通りと言う顔をして、ももの方を見た。ももは従う目をして合図した。
「二階は食事の時に皆が一階にいったら誰もいなくなるし、困ると感じる」
 母は曖昧な言葉を使い一応反対する。本当の目的は新しい最新式の冷蔵庫を買わせる事であった。
「元々、二世帯住宅だから冷蔵庫を置くと、それだけでキッチンなる。起きてすぐ飯を食えて便利だ。犬にもすぐ餌をやれる」
 ももは不思議に思った。性格が全く違う父と母、そして自分だが考えていることは同じであった。
「一階はお客さんが来た時に冷たい飲み物や果物を出したりするのに冷蔵庫が要るし、二階にも冷蔵庫が必要よ」
 父は少し考えて「新しい冷蔵庫を買ったらどうか?」
 母はももに目で合図、あとは父が下に行ってくれと言う顔だった。無理と目で言った。母は内心ご機嫌で父のことをパパッチと呼んだ。
「ん~ん、そこまで言うならパパッチのお願い聞いても良い。その代わり一つだけ条件があるの」
「なに、できる事なら何でも聞くよ」
「パパッチが犬の散歩を毎日させる」
「え、動物が嫌いな俺がするの?この犬コロ言うこと聞くかなあ、、」
 その時タイミングよく犬が「ワン」と言った。母と私は堪え切れず笑いの息を吹き出した。
「パパッチ、ワンちゃんもお願しているのよ。いい?」
「仕方がないなあ。犬コロ、言うことを聞けよ」
 父は犬を見た。ももに抱っこ、されている犬は父を見て小さな声でウーと唸った。
「休みの日に散歩させるから、ももからも、お願い」
「次に名前をつけますよ」
「犬だから犬コロがいい」
「賛成の人、パパッチだけ、却下」
「庭に栗の木があるのでマロンです。お父さん、ゴメンね」
「私も賛成だからマロンに決定。新し家族はマロンです」
 ももがマロンのお尻を少し痛くない程度につねった。マロンはワンと吠える。早速、マロンを二階に抱いて連れて行くので「パパッチ、段ボール箱をあげてくれない?それと階段から落ちないように柵を作って欲しい。ママッチはエサと水の用意いして」
 ももは不思議だった。父と母に、これして、あれして、と頼んでいる。名前さえパパッチとママッチと呼んでいる。それを両親が何の違和感もなく受け入れている。今までは家族であって家族でなかったような気がしていた。今は家族である。そのことが驚きであった。
 ももは父の置いた段ボール箱にマロンをそーと入れた。
「マロン、段ボール箱で我慢してね。明日、新しいケージを買ってくるからね」
 マロンはおしめパットを敷いている段ボール箱が気に入っているらしく、ごろんと横になっていた。三人はそれぞれ部屋に入って寝る準備をしている。マロンはむっくと起き上がり父の作った入り口から覗いている。
 犬だからわからない筈だが鼻をぴくぴく動かし嗅いで、ここが台所か?台所のむかえに廊下があって洗面所、おいてないけど洗濯機置場。その奥にはクン、クンこの匂いトイレか、そう感じていそうである。
 そして少し広い居間を通りドアが開いていたので覗いた。
 母が見つけ「マロンおいで」尻尾を振り母のもとに行こうとした時、「犬コロ来た」父が大声で言ったので、びっくりして走って逃げた。
 ももは以前なら部屋に入ったら必ず鍵を閉めていた。今はマロンが気になりドアを少し開けている。マロンがももの部屋を覗いた。ももは、気が付き「マロン、こっちへおいで」マロンは尻尾を振り近づいてくる。手がとどきマロンの頭と背中を撫ぜた。尻尾が益々早くなる。
 父は敷蒲団を敷いた。
「お母さん。シーツ、どこにある?」
「一階の物干し整理棚に入っているよ」
 この家は自分の物を自分でしなければならない決まりがあった。父は取りに行った。
 マロンはももの部屋から出てきて、うろうろする。もう一つ部屋があってドアが閉まっていた。マロンが、この部屋は誰の部屋だろうと考えるわけがない。しかし、ドア越しに臭いを嗅いでいた。
 母が「マロン、マロン」と呼んでいる。マロンは部屋を覗いた。父がいないので尻尾を振りながら母のところに行った。二、三回、撫ぜられた時、ももが「マロン、マロン」と呼んでいた。
 マロンは一目散にもものところに走った。また母が呼んでいる。何回も出たり入ったりしている。マロンの舌がびよ~ん、と伸びて、はあ、はあ、息を吐き出し、ついに疲れて父が敷いた蒲団に腰を落とし、顎を付けて休んだ。そこに父がシーツを持って戻ってきた。
「こら、犬コロ、どこで寝ている」
 マロンは慌てながら走って段ボールハウスに隠れた。
 敷蒲団にシーツを広げ、枕を置いた時に濡れているのが分かった。
「ママッチ、シーツ、まだ乾いてないよ」
「そんな筈ないけどね」
 ママッチはシーツを剥いでみた。
「蒲団が濡れているよ」
「どうして?あ、あの犬コロ、やってくれたな」
 パパッチはマロンのハウスに来た。
「犬コロ出ておいで粗相をしたのかい?」
 マロンはじっとして隠れている。父が作った段ボールハウスは便利だ。上から見られないので安心して隠れることができる。ももが心配して部屋から出てきた。母も来た。
ももがマロンの代わりに「お父さん。ごめん。つい我慢できなくてしちゃったの。マロン、反省しなさいよ。だから今日は怒らないで」
「わかった。犬コロ、蒲団は駄目だぞ」
「お母さん。マロンのしつける場所どうする?」
「必要だね。洗面所前の洗濯機置き場にしよう。排水口もあるのでおしめパットを敷いとけば洗えるのでいい場所よ」
「明日からしつけるね。マロン覚悟しなさいよ」
「くう~ん」
「ところで、パパッチはどこで寝るのよ。狭いけどママッチの寝台でくっ付いて寝ましょう」
 ももは咳払いをしながら緊張して「プ、プライベートのことは自分たちの部屋で語ってく、くれ、、」
 マロンも出て来て「ワン、ワン」
「犬コロのせいだぞ。蒲団におしっこするから」
「パパッチのお母さんが言っていたよ。小学五年まで、おねしょ、していたって、、」
 今度は父が咳払いして離れで寝ると言い出した。
「パパッチ、いいの?」
「いいさ、犬コロうるさいし。暫くは父と寝るさ。ここの土地は工場を含めて二百五十坪あるけど無事に残ったのは父のおかげでもあるよ」
「祖父の離れ、伯父さんたちが幽霊出ると言っていたけど本当?」
「本当さ。この家を壊す時に離れを残した理由がそれさ。兄たちが相続で土地を処分すると決めた時、困ったなあ。親会社の生産拠点が海外に移り、経営はかなり苦戦していたので兄たちは誰一人継がなかった。父は離れだけが生きがいでどんなことあっても残せと言っていた。父が死んだ時、工場は納期があるので直ぐに壊せない。元家を壊し土地を売って遺産分けする事になった。母屋は直ぐ壊したが、離れは壊そうとするたびに事故になる。業者を代えたが事故が起きて壊せなかった。兄たちはお前が継いだので責任を取れと言って銀行に行って八千万円を借りさせられた。土地と工場と離れは残ったが返済は月六十万、苦しかったな」
「その金どこに使ったの?」
「四人の兄達が持って行ったよ」
「家族ってそういう事するの?」
「そういう家族もいるよ」
「お母さんはどう思った」
「私はまだ結婚もしてないし。お父さんを知らなかったし。大手の銀行に勤めていた時に手形で相談しに来たので実情を聞いて驚いた。私と同じ年の二十代でこの借金は多すぎると思ったね。行く先は決まっていたね。金に困って若い経営者、何とか~ってことよ」
「そうなっていたら、結婚もできず、ももは生まれてなかったの?」
「そうだよ」
「それがどうなって、何故、結婚したか知りたい」
「取引をしている信用ある不動産で調査すると価値があるみたい。お金をかけないで収益をあげる方法を考えたら商店街に近いので駐車場にするのが一番良いと結論がでた。地盤整備は道路整備で出る再製材料を使うとほぼ金がかからない。あとは支店長と相談して他銀行の融資の借り換え」
「お母さん。すごい。どうしてそこまでできたの?」
「先祖が近江商人で商いが好きなの。一応、大学を出て本店採用だけど女ということで地方店に勤務したのよ。不良債権を優良債権に替えるのが仕事よ。お父さんの土地は地方銀行と評判の悪い不動産屋がタックを組んで競売(けいばい)にかけてマンションを建てる予定の情報が入っていた。そうでしょう。お父さん」
「あの時は本当に感謝したよ。ありがとう」
「お母さん。すごい。見直した。高校は意味がないと思って辞めようかなと決めた事もあったが勉強して大学へ行きたくなったけどいい」
「いいけど、その代わり朝ごはん、毎日、ももが作ってくれない」
「それはちょっと。でもお母さんの見かたが変わり、ちょっと尊敬するね」
「もも、肝心な事、忘れていない」
「何だっけ」
「お父さんと何故、結婚したかってことよ」
「そうだ。それよ」
「もも、恥ずかしいので聞いたら駄目だ。ママッチ、話さないで」
 ももは家族の事を何にも知らなかったがマロンが来て初めて知った。マロンを許してくれた父に感謝して聞かなかった。
「明日、早いからもう寝るよ」マロンが覗いたので一緒に寝た。
 母は父の寝床を作るので手伝ったが戻ってくる気配がなかった。
 ももは家族か~と一言いいながら寝た。朝早く起きてマロンを散歩させ、手作りパンでサンドイッチを作りハムと目玉焼きにトマトサラダを付け朝食を用意した。
 父と母は離れでまだ寝ているのでメモをおいた。
 マロンは散歩しました。餌と水を取り替えました。図書館へ行ってきます。と記した。
 ももは重いバックを背負いバスに乗り図書館にいった。本を広げ参考問題を解いた。苦戦していた数学も解ける。暗記物も簡単。自分自身が今まで何をやっていたのか?と思うほど不思議だった。勉強しても疲れない。
 区切りがついて、窓の外を見ていたら昨日の場面がドラマのように再現させることができた。自分が笑っている。それは何も考えず心から自然に振る舞っている姿だ。父と母がいる。笑ったり、怒ったり、しているがびくびくすることがない。家族の信頼あるからか?
 図書館も閉まる時間が来た。
 バスに乗る。いつも降りるバス亭の一つ手前に降りると広い公園が見える。父が約束を守っていたらマロンを散歩させている筈だ。犬がたくさん散歩している。みんな飼い主と一緒にすいすいと歩いている。その中でぎこちなく止まったり、歩いたりしている犬がいた。マロンと父であった。直ぐに声を掛けないで遠くから見ていることにした。
 父がリードを引っ張って歩くと腰を落とし前足を突っ張り抵抗している。父が止まると歩き出す。マロンと父はライバルで主導権争いをしているように感じた。その時、大きな黒い犬が近づいてきた。マロンは怯えながら吠えたが、黒い犬は動じない。お尻をクンクン嗅いでいた。マロンは怖くて尻尾をまるめてお尻を隠したが、それでも臭いを嗅いでいる。耐えきれず前足を父の足に乗せクンクンと鳴いた。
 父は気づき抱っこしたら黒い犬が離れて行った。マロンは安心して下ろしてくれるよう吠えた。またライバル心がでてきた。また止まったり歩いたりしていたが急に走り出した。父も引きずられ走っている。
 マロンはももに気づいて走ったのだ。傍まで来て尻尾を立て大きく振っている。
「お父さん、代ろうか?」
「あ、あ、良かった。先に帰っていいか?」
「このバック持って帰って」
「いいよ。重いな。なに入っているの?」
「漫画とか」
「遅くならないうちに帰ってこいよ」
「はーい」マロンとももはキャキャ、ワン、ワンといいながら楽しく遊んだ。
父が家に帰ってきた。
「あれ、マロンはどこ?」
「公園でももに会ったので犬コロ、任せた。これはもものバック」
「とても重いけど何が入っていているのだろう?」
「漫画らしいよ」
 ママッチはバックをこっそり開けた。教科書や問題集が入っていた。ももが自分の将来を考えて本気になった。つい最近まで高校さえ辞めると言っていたが大学を目指す。その事が母親として嬉しく感じた。
 ももは高校の最後の夏休みに入り遊び友達の誘いを全て断り毎日、図書館に通った。帰りはいつものように公園に行く。やはりマロンと父は意地の張り合いを未だにしている。絶対的な力を持っていたと思った父親だが純粋な少年のように見えた。マロンと同じ目線で接しているからだ。言うことは言う。しかし今、考えると反発してもそれ以上追求しない。犬を飼いたいと言った時に駄目だと反対され部屋に引きこもって鍵をかけた。父の言葉は決められたことを守れと言いに来ただけであった。それと同じようにマロンを散歩させると決めたから仕事が忙しくても天気が良い限り公園に来ていると思った。
「やあ、お父さん。交代の時間ですよ。バックお願いね」
「もうそんな時間か?犬コロをだいぶ調教させたのに。では頼んだぞ」
 マロンは調教されていないというように「わん、わん」と吠えた。
 お盆の前に珍しく姉のりんごが一年生の正月以来二回目の帰省をしてきた。来年でもう四年が過ぎるので卒業だ。
 ももは図書館が今日からお盆休みに入ったので自宅で勉強をしていた。
 りんごがドアの鍵をカチャッと開けたのでマロンが激しく吠えた。りんごは玄関を通り抜け一階の居間から階段を上り二階の居間に入ろうとした時に柵の裏側でマロンが吠えていた。
「この犬がマロンか?マロン、マロン」と呼んで手で頭を撫でようとした。
 マロンは「ううう~」と少し唸った。さらに唸ろうとしたが臭いを嗅いだら気になっている部屋と同じ匂いだ。安心して尻尾を振った。
 りんごは両手で顔を撫でマロンと呼んだら喜び過ぎて嬉ションをしてしまった。
 ももが部屋から出て来て「お姉、帰ってきたの。久しぶりだね。マロンのおしっこ拭いとくね。疲れていそうだから休んで。あとで紅茶とケーキ用意するから食べてね」「うん」といいながらももの変わりように戸惑い驚いた。
 りんごが部屋で休んでいるとドアがカチャカチャと音がしている。
 ドアを開けたら「ワン、ワン」ケーキの用意ができた。と教えに来たような気がした。早速テーブルに行って見るとケーキがおいしそうだ。
「お姉ちゃん。紅茶にミルク入れる?」
「ん、砂糖も入れて」
「大学、楽しい?」
「すごく、楽しいよ。気が付いたら四年生になってしまった。卒業したくないよ」
「就職大変じゃないの?」
「それが全然、大変じゃないのよ」
「決まったの?どこ」
「親に絶対内緒よ。実は一年生の時から決まっていたの」
「ほんと」
「就職先の奨学金を貰っていたの」
「貰う?奨学金は返すものでしょう。それにお父さん借金で苦労したらしく凄く嫌がるでしょう」
「それが、奨学金は返さなくていいの。月六万かける十二かける四。いくらになる」
「二百八十八万になるよ。凄くて訳が分からない。就職しても給料を減らされんじゃないの?」
「ない。ない。ボーナスも出るし問題なしね。仕送りを含めて月十六万の生活だし、アルバイトも入れると二十万以上よ。海外旅行に三回もいったので帰省する暇がなかった」
「いいな、いいな、私もお姉ちゃんの大学に行くよ」
 ももは姉の話をじっくりと聞いていた。姉は家族の仲立ちをするような自分の意思を見せない中間的な存在。父はがちがちのどうにもならない存在。母は賢いのか、単に飛んでいる軽薄か、わからない存在。その全てが根底から崩された。それぞれ、長所と短所を持ち互いに補っていた。何も知らないで幼く無駄に反発した自分だけが恥ずかしいと思った。
 足元でじっとしていたマロンのおかげで家族の事を知った。時々二人の足を舐めている。
 突然、マロンが吠えだした。ももの携帯に電話がかかってきた。
「お盆前の明日午前中まで納品しなければならない。機械を止められず手が離せないので父と母に構わず夕ご飯食べてね。お父さんがカレーライス食べたいから用意しておいて。下のキッチンのところにインスタントカレーがあるのでお願いね。お湯を沸かすだけでいいから」
 母が一方的に言い電話を切った。
 姉に相談したところ「インスタントカレーなら可哀そう。本格カレーにしよう。マロンを散歩させて肉とカレールーを買ってくると作れるよ。ポトフと同じように作ろう」
 マロンと公園で六時半まで遊ばした。そして近くのスーパーで買い物をした。家に着いたのは七時過ぎで、まだ暗くなかった。
 肉と野菜を切ってニンニクと生姜を入れて少し焦げ目をつけて圧力鍋に入れた。鍋の蓋を取るまで一時間。サラダを作り、ルーを入れたら八時四十分になった。
 マロンが激しく吠えた。
「犬コロか」
「マロン、マロン」と呼ぶ声がした。
 ももが二階から下に向かって「お風呂入れたけど、先に食べる?」
 インスタントカレーと思い「先に食べる」と言って上がってきた。
「席について」
 ももが二人を座らせた。テーブルの上には何もない。これから湯を沸かすのかな、思ったところに暖簾から手が出てきて盛り付けしているサラダの皿がカウンターに並べられた。それをももが運んだ。カレーも出てきた。
「キッチンに誰かいるの?」
「マロンに手伝ってもらったの」
「あれ、マロンは足元にいるよ」
 マロンが「ワン、ワン」と吠えた。そこに姉が出てきた。
 父はももとりんごを見て何も言わないでカレーをスプーン三杯連続で食べた。
「お父さん、おいしいね」母が言ったがまだ何も言わない。
 父は瞳の奥の心の中にうれしい涙を閉じ込めていたが、ついに気持ちがあふれて目から涙を流してしまった。皿に残っているカレーを全て食べ空にして「ありがとう」の言葉を皿に残して階段を下りて行った。
「お母さん。お父さんどうしたんだろう?泣いていたね」
「皆で食事をしたのが三年ぶりなのに、あの性格だから口で素直に言えなかったのよ。りんご、良く帰って来たな。二人でカレーライス作ったのか?うまくて嬉しいよ。と言えばいいのにね」
「違うよ。お母さんがいつも手抜きするから思い出して泣いたかも?」
「そうかな?りんご」
「お母さん。お姉。取り敢えず感謝のありがとう。と言ったのでどっちでもいいよ」
 マロンも「ワン、ワン」と吠えた。
 朝が来た。両親は食パンを齧り仕事に行った。従業員は休みでもう来てない。納入先の企業に製品を納めて十時過ぎに工場へ帰ってきた。工場の片付けをして「お母さん先に家に帰っているよ」
 母は伝票処理しながら「スーパーに寄って焼き肉の材料を買って帰るから」
 りんごは起きて遅い朝食を食べていた。ももは朝から勉強をしていた。りんごがマロンを散歩させる予定だったが寝坊して今、朝食だ。
 マロンが激しく吠えた。父が帰ってきた。りんごを見て「昨日はありがとう。元気そうで安心したよ」
「お父さんも元気だった?仕事を頑張り過ぎて休まないで働くと病気なるからほどほどにね」
「わかった」
 ももが部屋から出て来て「お母さんはどこ?」
「明日から盆休みだから今日、外で焼き肉をするので材料を買いに行ったよ。もうすぐ帰ってくると思う。そこで提案があるのだが外で焼き肉を食べるなら波の音が聞こえる海辺がいい。一泊するけど。昔、買って一回も使っていない四人用のテントがあるので行こう」
「お父さん、一回使ったよ。庭にテント張ったよ。私はいいけど。ももは受験だから行けないかもつづく。?」
「私なら平気。この頃、成績が伸びている。お姉の大学に入ろうとしているので楽勝よ。それよりマロンを砂浜で思い切り走らせたいの」
「マロンを走らせるのは賛成だが失礼だね。落ちれ。落ちろ」
「嫌だ。嫌だ。入りますよ」
 母が帰ってきた。マロンが直ぐ気づき吠えた。昨日の残ったカレーを食べたら十二時半過ぎには行ける。
つづく。

大きな忘れ物

執筆の狙い

作者 すももりんご
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どこにでもあるような家族のことを想像で書きました。それぞれ感じ方が違うと思います。あまいと言われるとそうですと思います。現実はわからないことがいっぱいです。途中、くだらないところもありますが我慢してください。

コメント

すももりんご
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入力ミス。ももは受験だから行けないかもーつづくー?つづくを消して読んでください。すみません。

shion
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家族の話でしたね。なかなか悪くない小説だと思います。ところどころ良さそうなテーマ、父の家族の裏切りや家族に対する主人公の愛情など、深掘りしていくと良さそうなものを感じました。

marin
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ペット系の小説は、大好きです。
30分楽しく読みました。
家族でも素直になれない時があります。その期間が長いことも。犬は、人の表情や言動、動作、雰囲気などよく感じていて、良いタイミングで吠えたり、しゃべったり、やらかしたり、何も言わずに聴いていたり。
父のシーツにやらかしたり、散歩とか、父と犬の場面がおもしろいです。

すももりんご
116-65-240-38.rev.home.ne.jp

shion様。読んでくれてありがとうございます。今回、書いたテーマは空に広がる花火に触発されました。
彼女は当時、自分の病気に気づいていたのだ。大学を卒業してから、彼女は入院し、そして息をひきとることになる。
 赤い花火が暗い青い空に広がっていく。辺りを轟音が響き渡る。火花は空一面に広がる。そして穏やかに消えていく。また地面から火の玉が空に打ちあがる。今度は緑色の花火だ。彼女はとても幸せそうに空を見ていた。僕は彼女の手を握り返した。
 ここが特に好きで花火を見ている幸せそうな彼女の姿。目に映る花火。瞳の奥の心に刻む花火。やがて消えていく空の花火。
やるせなく、せつない気持ち、、、ここまで完璧でないがここを意識した場面があります。改めてありがとうございました。

すももりんご
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marin様ありがとうございました。後半も期待してください。

すももりんご
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反省。
りんごは両手で顔を撫でマロンと呼んだら喜び過ぎて嬉ションをしてしまった。
意味は分かるが文章がおかしかった。

大丘 忍
p1793091-ipngn200202osakachuo.osaka.ocn.ne.jp

最初の方は、私は……、という一人称ではじまっておりますが、後半はももは……と三人称になっておりますね。おそらくミスでそうなったと思います。読んでいてその様に感じました。
視点は小説の基本だから注意しなければ成りませんね。

すももりんご
116-65-240-38.rev.home.ne.jp

大丘忍様。読んでいただきありがとうございました。。参考にします。
教養と文才がありませんので正確な判断はできません。しかしミスでもありません。
変わりゆく姿と考えています。間違いは間違いだと思いますが表現を変える程の意味を持たないと思います。
ありがとうございました。

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