作家でごはん!鍛練場
tomo

ana

身体の真ん中から、もっと中心に向けて押しつぶされそうで息ができない。
昔、貴博が自慢げにブラックホールの噺をしていたのを思い出す。
砕け散った星の巨大すぎる力が、全てを内側にのみ込むアナをつくるって言っていたのを思い出す。
今考えてみても意味なんてよく分かりはしないけど、たぶん私の身体の中にも貴博が言っていたブラックホールみたいなものができてるんだと思う。そのアナは全てをぐいぐいと暗くて静かで冷たい場所に吸いこんでしまう。
大好きなケーキにかぶり付いてみても、友達に借りたDVDを眺めてみても、ネットでお気に入りの服を探してみても、私の楽しいや嬉しいを全力で吸いむ。
その代わりに淡く静かに痛むなにかを私に塗りたくる。
そんな風に痛めつけられれば誰でも心がもたない。
いや、私はもたない。
「むぅりぃぃ…」
二日間の主食だったポテチの袋をベットから投げすてて、常温になったビールを毛布にくるまって飲みほす。
できればもう、トイレにいくのもやめてしまいたい。
人間、やってできないことはない。
ただ、やらないからできていないだけだ。
どうせ、ポテチしか食べれなくて死んでも、反対に食べすぎで死んでも、とにかく私が死んでしまっても誰も泣いたりはしない。
いや、両親や友達は泣いてくれると思う。父親なんて号泣して、失恋くらいで死んでしまった娘にひどく落ち込むに違いない。そんなことは分かってる。分かってるけど今はベットから出たくない。なにをしていてもフッとしたきっかけで貴博を思い出すから。
思い出したとたんに、ブラックホールのヤツが押しつけてくるから。
暗くて淡い痛みを押しつけてくるから。
「くそっ」
指先についたポテチのざらざらを舐めとるとしょっぱくて悲しくなった。
人を愛するってことは、失うことを忘れていくことだ。出逢った瞬間から必ず用意されてる別れを忘れるための衝動だ。無意味で無謀で厚顔無恥な衝動だ。必然を受け入れないための言い分けだ。愛していれば全てを否定できると思い込みたいだけだ。
だから、愛が枯れるとこんなにも苦しい。叫びだしたい。身体の真ん中から、もっと中心に向けて見えないなにかに押しつぶされそうで息ができない。
それなのに、その痛みで死んでしまうことはできない。
私は痛みを抱えたままベットで丸くなる。私の真ん中に巣食う暗くて冷たくて静かなアナをふうじこめる。
愛とは矛盾だらけの言い分けだから、私はしょっぱい指を舐めて愛したことを忘れる。


おわり

ana

執筆の狙い

作者 tomo
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ストーリーはありません

美味しくない蕎麦を食べたことや塩辛いチキンにかぶりついたことを思い出しただけです。

コメント

shion
KD027083171050.ppp-bb.dion.ne.jp

叙情的な小説という感じがしました。これはこれでありだと思います。好感の持てる小説でした。

ラピス
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一場面を切り取ったような話ですね。比喩の使い方が巧みで、読んでて勉強になりました。

tomo
sp49-104-36-99.msf.spmode.ne.jp

shionさん

好感の持てる小説でした。と言ってもらえてありたいです。

次は少し長いのを書きたいと思います

tomo
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ラピスさん

比喩の使い方が巧みで、読んでて勉強になりました。

ありがとうございます。
そんな風に感じてもらえたら嬉しく思います。

また書くようにします

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