作家でごはん!鍛練場
茅場義彦

座椅子とおなら

座椅子とおなら

桜が咲き始めた頃に、好きな女の子の座椅子になって放屁を定期的に浴びる仕儀となっていた。

ぷうう......また彼女がやってくれた。幸いにして、音は大きいけど、そこまで臭くない。

聞きようによってはかわいい音とも、いえる。でも......

ああもう、成仏したい。大好きだった彼女のおならを嗅ぐのはたまらない......でも、そこまで臭くないからやはり......我慢しよう。彼女の物語が完成するまでは。

 障子の向こうでは桜の花びらがゆらゆらと散っている。過疎まっしぐらのここ能登半島の土地は安く、民衆は身分不相応な大きな庭をもっている。だが、彼女の家は別格だった。公務員の娘である彼女の家は、元々が地主なので庭には大きな6本の桜の木がある。

 僕が座椅子になる前はその桜の木の下でピンク色のシャワーを浴びながら、僕らは今川氏真と織田信長どっちが幸せな生涯だったかを論議したものだ。

それにしてもjkの部屋にしては、素っ気ない部屋だ。何せ、和室でミニ仏壇すらあるんだから。素っ気ないを通り越して和風過ぎるし、線香臭い。でも、そんな不思議な彼女が、僕は大好きだった。

[あああ、私、本当に才能ないわいね]

彼女が能登弁でつぶやきつつ、尖った顎をコタツのテーブルにちょこんとのせている。落ち込んで放心しているときのポーズだ。

彼女の部屋には、もう5月だってのにコタツがそのままだ。まあ、座椅子である自分には有り難いかも。暖かくなったらコタツと一緒に、僕も片付けられてしまう運命だから。

[あああ、ストーリー浮かばんなあ]

彼女は小説サイトに投稿するネタに苦しんでいる。3ヶ月前まで僕が唯一の彼女の読者だった。勿論その時は彼女が、こんなにオナラをする人だとは知りもしなかった。少女たちは色んなことを隠して、若い雄(少年)たちに夢を与えているのかもしれない。

[そうやなあ……主人公は性病ある女子を好きになれんよ。これ、今までない話やがいね]

それはまじねえわ、甲斐!、奇抜だからっていいもんじゃないがいね。俺は甲斐のポンコツアイデアに警告を与えるために身体を揺らした。

[うわ、揺れるうう、ポルターガイスト現象やがいねえ]

座椅子(僕)が揺れて、甲斐が悲鳴を上げる。一日一回は僕におならを見舞わせる彼女の小さい臀が僕からふわっと離れた。背も低いけど〜

[もう、こんな座椅子捨てるわ。お化け宿っとるやろ]

彼女の発狂したような声を聞きつけて、彼女とそっくりの顔をした母親がドアを開いた。

[甲斐、何大騒ぎしとがん]
[この座椅子なんか勝手に動けんよ、薄気味悪い]
[はよう、捨てんちまいね]
お母さんが、無慈悲に言ってくれる。
[捨てるわけないわ、魚住君がくれたもんやし]
甲斐はふと我に返ったように、座椅子(僕)を慈愛のこもった眼差しで見つ0める。
[そうやねえ、魚住君の遺品じゃあ、捨てられんわねえ]
途端にしょんぼりする母子
という感じで僕のリストラ案は先送りされる。でも、毎週末何回も繰り返されてるぞ、この会話。

[そもそも、書きたいこと何もないがいね、はああ]
彼女は相変わらずキャラ設定も、プロットもまともに考えられない。僕が生きている頃は僕が考えてあげていた。
[魚住君おらんし、昔のことでも書こうっと]

そうそう、それが無難だよ。僕たちのことでも書いてくれたまえ。

甲斐が薄気味悪いと言いながら、恐る恐る座椅子(僕)に座ってパソコンを起動させた。カタカタと音がして、パソコンは彼女の駄文を吸い込む準備を整える。

甲斐の物語壱

それはある晴れた初春の日曜に、須藤君と地元の柴崎海岸を自転車でサイクリングに出かけた時のことだ。まだ海風はとても冷たくて、夏になっても閑散としている柴崎海岸は、私たち以外本当に誰もいなかった。

人っ子一人いない海辺で、高校生のボーイand ガールがしんみりと海辺を歩いていると、映画のワンシーンみたいだけど、現実は違った。

私たちは歴史マニアなので、海を前にして中国地方最大の戦国大名毛利氏の膨張に貢献した村上水軍が、なんで、徳川政権下であっさり没落したかをただの憶測だけで語り合っていた。

[まあ、普通に考えれば関ヶ原で西軍についたから没落したんやろな]
と須藤君がしたり顔でいうと
[江戸時代の平和が駄目やったんやわ。海の用心棒として商船から金とられれんようになったらからや]
[確かにそれは痛いやろうなあ]

私がそれらしいことを言うと、私にぞっこん惚れている須藤君はたちまち賛成してしまう。ぞっこんという表現はjkが使うにしては昭和すぎるか。

[へい、もっと反論しなよ。適当に言ってるんやけど]
[何や、村上水軍で小説でも書くがんか]
[とっくに、ヒット作品出来とるやろ]
私は呆れたように、大口を開けて浜風を飲み込む。
[だよなあ]
反対に

何となくつまんなくなって、私らは波打ち際の方に近づいて行った。高校生二年jkといっても能登みたいな眠ったような田舎にいると退屈でしょうがない。

海岸には座椅子の絵が描かれた絵馬が落ちていた。

[絵馬が落ちとるね]
[何も字ないな]

浜辺に絵馬が落ちているのは変だし、願いごとも書かれてない。しかも、座椅子の絵だけ。すこぶる面妖である。

[これは、何を意味するんやろね]

座椅子とおなら

執筆の狙い

作者 茅場義彦
M106072175192.v4.enabler.ne.jp

好きな女性の座椅子になってしまった男の話です
続き書く価値あるかな?





おお

コメント

shion
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座椅子になり、彼女の隠された側面を知るというなかなかおもしろい着想だと思います。場面の展開が大きいので、もう少し一貫した物語だといいかなと思いました。

茅場義彦
M106072175192.v4.enabler.ne.jp

場面転換級でした ご指摘通り

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