作家でごはん!鍛練場
ゆーぷ

きーこ。きーこ。

『私は自転車でパトロールしている。重い責任を背負って`きーこ。きーこ。´と走る。晴れているときはまだいいが、雨が降っていると一苦労だ。
この街は比較的、車の通行は少なくて安全な道が多いのだが、時にはかなりの速度で狭い道を走ってくる車もある。時間に追われて、余裕がないのだろうと思うが、やはり、狭い道で小学生や中学生が通学で使う道は、安全に走行してもらいたい。
運転中のスマホの操作はとても危険だ。車も自転車も運転中でのスマホの操作は重大な違反。厳しく取り締まらなくてはならない』


その月は金色に輝き、地表を碧く輝かせた。空に浮かぶ水母の群れが金色を喰い、碧を吐き出したからだ。碧は静かに闇へと誘う。ヘッドライトを着けると雨が闇を突き刺している。月と雨。こんな夜もあるのだ。
 しばらく走ると海が見えてきた。寂れた無人灯台から朽ち果てそうな橙光が一定の間隔で見ることができる。海岸沿いのコインパーキングに車を停めタバコを吸った。エンジンを切ると波の音しか聞こえない。静かだ。海は穏やかな闇を照らし、針のような雨は海に戻っていった。見上げると月が浮かんでいる。数隻の漁船が黒い雨に打たれ、静かに眠っていた。海を覗き込むと空に行けない水母の大群が羨ましげに僕を見つめていた。しかたがないんだ。君たちは選ばれなかった。君たちが悪いのではない。この世は全て不条理にできている。理解しなくてはならないんだ。僕の説明に理解を示すもののいたが大方は不服の意を唱えていた。でも、僕にはどうしょうもないんだ。「すまないね」。タバコを投げ入れてやると嬉しそうに底に潜っていった。
「さて」
世界が消えかけた寂れた道を歩く。車も通らない。タバコに火を着け一口吸って手のひらでもみ消した。熱い。生きているんだと気づくと目の前の闇が渦を巻きだした。ぐるぐると。渦の中は真っ黒の得体の知れない何かだった。いったい何なのか見当もつかないような真っ黒なものだ。液体のようでもあり、気体のようでもあり、もっとどろどろとしたものにも見える。いずれにせよ、その渦の中に僕は引き込まれる。どうなるのか分からないが、そうしなくてはいけない。いや、そうしたいのだ。自らの意思をもって、僕は真っ黒な何かの中に入り、僕が最も真っ黒になるのだ。それが運命であり必然なのだろう。
闇色の雫は無限に飛び散り、結晶を破壊しながら無数の闇となり、光を食い散らかす。
しばらく歩くと今にも消えそうな灯火が近づいてくる。`きーこ。きーこ。´と悲しそうに泣きながら。灯火は僕の目前で闇に吸い込まれた。目の前には若い警官が自転車を立て掛けて近づいてくる。「お出かけですか?」
「ええ」
 こっちには何もないと言った警官は、身分の証明ができるものを提示しろと言った。
「君はまだ入り口にすら立っていない」君に最後の言葉だ。
ポケットからナイフを取り出し警官を刺した。生暖かいものが湯気を出して僕にかかった。倒れた警官はびくびくとしていて電気ショックを受けたハムスターみたいだ。

黒い赤い血が指先からしたたり落ちている。顔をさすってみる。ぬるりとした感触と同時に命の味が口の中に広がる。

人間は死ぬとどうなるか? 燃やされて灰になったり、埋められて土に還ったり、獣に食われて糞になったりもする。だけど、七割が水でできている身体。ほとんどが水へと還元するんだ。金色の月の色が溶け込んだ雨が警官の還元を祝福していた。
ナイフで紐を切り拳銃を持ってみた。冷たい。全身がぬるぬるして気持ちが悪いのでシャツを脱いだ。ズボンも脱いだ。パンツも脱いだ。全裸になってしまったので戻ることにしよう。警官の乗っていた自転車を借りることにした。股間がサドルにあたって妙に気持ちがよく、コインパーキングに着く直前で射精した。ずっと自転車は`きーこ。きーこ。´と泣いていた。

きーこ。きーこ。

執筆の狙い

作者 ゆーぷ
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短いです。雰囲気を伝える練習です。よろしくお願いします。

コメント

匿名ではありません
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いくらなんでも気取り過ぎだと思います。雨が降っているということを、碧が降ってきただなんだ、別に雨は青くないですからね。そういうことを書くのではなく、例えば、なぜ主人公はこんなにも厭世的なのか、といった心情を描写した方が良いと思う。


創作に於いて最も当然に努めなければならぬ事は、「正確を期する事」であります。(中略)小説に於いては、決して芸術的雰囲気をねらっては、いけません。

太宰治「風の便り」より。

ゆーぷ
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匿名ではありませんさん、読んでいただきありがとうございます。
 
碧とアメはリンクさせたつもりはないけれど参考にさせてもらいます。

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