作家でごはん!鍛練場
修道院長

クチバシの苺

 
 ガラス張りの壁の向こうに、鮮やかな水色の小鳥がいる。
 私の真後ろの席にいた年配の女性客もそれに気づいて「逃げて来ちゃったのかしら」と独り言をつぶやいたのが聞こえてきた。
 真新しいビルが建ち並んだ都市開発地区の一画で、その水色の小鳥はどこまでも異様な存在感を放っている。誰の目から見ても野生の鳥ではないことは一目瞭然だろう。
 小鳥は飛び立つ様子もなく、舗道の上を行ったり来たりしている。
 アスファルトと水色の小鳥。そのふたつがこんなにも違和感の強い組み合わせであることを私は知らなかった。他に気づいている人がいないか辺りを見回してみたが、今のところ小鳥を目撃したのは私と後ろの年配の女性、二人だけのようだった。一応、正面にどかっと座る夏子のことも確認したが、彼女は相変わらず一心不乱にスマホを操作しており、外の景色など興味の欠片もない様子だった。
 「混んできたね」
 私に見られていることを察知した夏子が、スマホの画面から目を離さないままそう言った。
 ウッドベースの落ち着いた店内は、様々な年代の女たちで溢れている。絶え間なくボサノバのBGMが流れ、その洒落たメロディーを打ち消すように、あちらこちらから女たちのけたたましい喋り声が響き渡っていた。もちろん私と夏子のように何の会話もなく静かに過ごすグループもいるのだが、店の中を飛び交うあらゆる音たちは、逆にこの店の居心地のよさを作っている気がする。
 私はさっき来たばかりのカモミールティーを飲みながら、また外へと目線をやった。
 小鳥は、昼下がりの陽の光を浴びた街路樹が作るまだらな影の中を彷徨っている。
 ふと「可愛いね」と、どこからともなく聞こえてきて、私は反射的に顔を上げた。
 まさか、あの鳥のことを可愛いと言ったのだろうか。
 そんなわけはないだろう。そう信じたかったが声の主を探し当てると、当たり前かのようにガラスの向こうを覗き込んでいた。
 信じられない。あれの、どこが、どの部分が、どういう風に可愛いと言えるのだろう。私にはまったく理解ができないし、理解しようにも嫌悪感のほうがどっと押し寄せて来る。
 私は鳥という生き物が、特に翼があるのにも関わらず飛べない種類の鳥が嫌いなのだ。
 翼をばたばたと羽ばたかせるあの動き。目には見えない、何百種類のウイルスやら皆目見当もつかない汚物が、空気中に拡散しているのではないかとゾッとしてしまう。
 アヒルも、ガチョウも、ニワトリも、ダチョウも、すべての飛べない鳥は、鶏肉として加工されて、ミンチにでもなればいいのだ。
 「ねぇ」
 夏子の声に我に返った瞬間、あごの付け根に激痛が走った。最近、無意識に奥歯を強く噛みしめてしまう悪い癖がついている。先日それで病院にかかったばかりだった。あなた日頃、何かをひどく我慢してるんじゃないかい? と医者から言われたことを思い返す。ゆっくりと痛みを慣らしながら口を開けて、遅れて返事をした。
 「ごめんね、ぼっーとしてて」
 「大丈夫?」
 「このところおかしくてさ」
 「もしかして、どっか悪いの?」
 「うん。それがね、実は私、病院にかかってるんだけど」
 「すみませーん」
 珍しく夏子が私を心配する言葉をかけてくれたと思ったのも束の間、彼女は二杯目のドリンクを頼むために店員を呼びつけた。この先、私が続きの話をすることはない。夏子にとって、自分が中心になっていない他人の話はとにかくつまらないのだ。
 悪い気はしなかった。実に夏子らしいと思った。
 そして彼女は年下の可愛らしい男の子を見つけると、居ても立ってもいられない体質のようなものを持っていた。私たちの席に駆けつけたウエイターは大学生風の若い男の子であった。
 「オススメって何かな?」
 夏子は甘ったるい声色で、彼にそう尋ねた。えっと、と困りながらオススメを答える彼の顔が次第に赤くなっていく。
 「バイトしてまだ短いの? かわいいね」
 ぎこちなく笑う彼の顔はまんざらではなさそうで、そのまんざらでもない顔に気づいた夏子は大いに満足げな表情をしている。
 私はいささか見慣れてしまった光景だが、周りの客たちの目には異様に映るらしい。ひそひそと、あきらかに夏子のことを噂しているのが分かる。だがそれに夏子は一切気づかない。幸せな人だな、と思う。夏子にはそういう、都合の良い鈍感さがあるのだ。
 夏子はみるみるうちに調子に乗って、その男の子の身体をベタベタ触って、スポーツしてるの? とか色々と聞き出した挙句、その子が胸ポケットに付けていたネームプレートをもぎ取った。
 夏子は、ふーんと何かに納得するような声を発したあと、はいっと可愛らしくネームプレートを元の胸ポケットに挟んだ。
 「ねぇイジイジ、仕事何時に終わるの?」
 「イジイジ? イジイジって何?」
 私はたまらずに声を出したが、夏子には届かなかった。気になって彼のネームプレートを盗み見ると、圭司(けいじ)と書かれてあった。
 昔から夏子はそうやって、男に変なあだ名をつけたがった。ただの変わったあだ名ではなく、絶対に他の女に呼ばれたことのないだろう名を与えるのだ。そうするとその名に縛り付けられた男たちは、夏子という女を介してしか存在できなくなった。
 ウエイターの圭司という青年も、今まさにイジイジとして新しい存在を手に入れた。私は彼のことを思った。これからの彼の人生の中で「そう言えば、イジイジと呼ばれたことがあった」などと思い出す日が訪れるのだろうか。そのとき彼は、夏子の顔を思い浮かべるのだろうか。


 私と夏子は女子校時代からの友人だ。と言っても高校三年生の中頃まで、私たちは喋ったことすらなかった。同じソフトテニス部の部員ではあったが、私は県大会ベストエイトを目指して、毎日ハードな練習をこなす部員で、対して夏子は幽霊部員だった。
 同じクラスになったこともなく、唯一の顔を合わせる機会といったら、不定期で行われる男子校のテニス部員たちとの合コンだった。夏子は幽霊部員の自分がそこに参加することに悪びれる様子もなく、さも当然かのように女子メンバーに混じっていた。
 「部員とも認めてない人が来るのはおかしい」と幹事の部長に意見した勇気のある子もいたのだが、理由はいた仕方ないことだった。お相手の幹事のお目当てが、夏子だったのだ。夏子がいなければ合コンをしないと、きっぱり言われたそうだ。
 「あの子、肌が白いってだけじゃない」
 誰からともなく、部員たちみんなが口を揃えてそう言っていた。
 日々の練習のおかげで夏子以外のメンバーは小麦色の肌を通り越して真っ黒に日焼けしており、それが夏子の肌の白さをさらに際立たせていたのだった。
 それに加えて、例の変なあだ名をつけられた男子たちは、面白いくらいに彼女に従順になる。夏子が笑えば、男子たちも笑った。夏子が嫌だと言えば、男子たちも嫌だと言ったし、夏子が帰ると言えば、私たちを置いて男子たちはぞろぞろと帰っていった。
 取り残された私たちは決まって、見た目だけで判断する男子たちを小馬鹿にして、知っている汚い言葉を寄せ集めて、言い尽くせるだけの夏子への悪口を言い合った。そして最終的には、私たちは絶対に肌の白い女になんかになるものか、とよく分からない誓いを立て合った。
 その頃の夏子は、影でそんなことを言われているなどと微塵も気づいていなかった。彼女には、人からどう見られているかという思考回路そのものが、最初から備わっていないように思う。
 そんなある日、たまたま通りかかった道で夏子と遭遇した。歩道の真ん中にしゃがみこむ彼女を不思議に思い「大島さん、大丈夫?」と声をかけた。それが私と夏子の始まりだった。彼女の両手には、翼の折れたセキセイインコがいた。


 先日、同じテニス部員だった優子と佳代に偶然出くわした時に、久しぶりに夏子に会うことを伝えると、二人は揃って鼻にシワを寄せた。それから高校時代にあんなことを言われたとか、されたとか、裏でこんなことをしていたとか、夏子の悪口がとめどなく彼女たちから溢れてきて、私はなんだか懐かしい気持ちになった。
 「ねぇ、理沙。悪いことは言わないから、あの子と関わるのやめときなって」
 「そうだよ。私なんてこの間、新しい男ができてグアムで一ヶ月過ごしたって話、三時間も聞かされたのよ? そんで私がちょっと自分の話すると、あっそで終わり。あっそよ? あっそ。信じらないわよ。後悔するのは理沙だからね」
 帰り際に二人にそう忠告されて、私はなんとも答えられず、ただ笑って手を振った。その時には思い出せなかったが、そういえばあの頃にも似たようなことがあった。休み時間に夏子と弁当を食べているところを見た同級生の部員が、部活の時間になってから、私が夏子と親密にしていることを忠告してきたのだった。その時も、私はただ笑って曖昧な返事をすることしかできなかった。理由は、当時、私はみんなに隠れて日焼け止めのクリームを必死に塗っていたからだった。私は、夏子に憧れていたのだ。
 「ねぇ、旦那さんってどんな人なの?」
 いつの間にか注文を終わらせて新しいドリンクを片手に持った夏子が、突然そう訊いてきた。
 とんでもない表情をしていたかもしれないと内心焦ったが、夏子はそんなこと気にも留めていないだろうとすぐに思い直した。
 「優子と佳代には紹介したって言ってたよね?」
 「うん」
 こちらにぐっと顔を近づけてきた彼女の顔を見やると、厚く塗ったファンデーションの下にシワやらシミやらが隠されているのが分かった。隠しきれていないのだが、本人は隠しきれていると思っているに違いない。
 「どうして私には紹介してくれないのよ」
 夏子がむすくれた様子で、こちらを睨みながら言ってきて、慌てて返事をする。
 「二人とは通ってるジムが偶然一緒だったんだもの。紹介って言っても、ちゃんとじゃないのよ。旦那が私を迎えに来てくれた時に、あっどうも、ってな感じで」
 「ふーん」
 夏子はつまらなそうに、レモンスカッシュのストローを咥えた。ぐんぐんとレモンスカッシュは彼女の中に吸い込まれていき、一瞬で氷とレモンの輪切りがグラスに残った。彼女の口から離れたストローには、べっとりとグロスがついていて、その表面が鈍く光っている。
 すかさず夏子はバックから手鏡とグロスを出して、塗り直しはじめた。ふわりと甘い香りが漂ってくる。ストロベリーの匂い。キスした男たちが決まっておいしいと言ってくるのだと、前に自慢されたことを思い出した。
 自分がまた奥歯を噛みしめそうな予感がして、意識をそらすためにカモミールティーを飲んだ。
 初めて注文したが、たいして美味しくなかった。
 「理沙ってさぁ、私のこと嫌いでしょ?」
 グロスを塗りながら、唐突に夏子がそう言った。
 たまに夏子は、心臓が止まるようなことを直球で投げかけてくる。それが今日かもしれない、今日かもしれないと、会うたびに覚悟してきたのに、私は動揺して片手で持っていたマグカップから危うくカモミールティーをこぼすところだった。
 「そんなわけないでしょ」
 「ならいいけど」
 夏子の顔が見れなくなって、私はテーブルに戻したマグカップに視線を落とした。カモミールティーの水面が、激しく波打っている。
 「ねぇ理沙、あんたが私に旦那紹介しない理由、なんとなく私分かってんのよ」
 「理由?」
 カモミールティー。普段は飲まないくせに、なぜ今日に限って注文したのだろうと不思議に思い、店内をきょろきょろと見回して、同じようにカモミールティーを注文した人を探すと、七人の団体客の中に一人、発見した。
 「ねぇ、聞いてんの?」
 「聞いてるよ」
 「私があんたの旦那、誘惑するとか思ってんでしょ?」
 その人はいかにも幸せそうな、何不自由ない暮らしを送っているように感じる、飾り気のない女性だった。周りの女性たちと、何かが決定的に違うのに、その何かが分からない。
 「そんなこと思ってないよ」
 「どうして?」
 「どうしてって?」
 「なんでそんなこと思ってないの? 旦那、年下でしょ? 私、年下好きじゃん」
 「夏子が私の友達だからかな」
 「ふーん」
 カモミールティーの女が他と違うところ。口角がきゅっと上がっているところだろうか、と周りの女性たちの顔と比べるが違う。口角じゃない。違う違う違う違う。一体、何が違う?
 「理沙、私ごめんだけど帰らせてもらうわ。なんかあんた今日は一段とつまんない」
 「ちょっと待って」
 夏子の腕を力いっぱいに掴んだ。指の間に夏子の二の腕の肉が挟まっていくのを感じる。そうしている間も、私は奥の席の、あのカモミールティーの女から目が離せない。
 「痛い!やめてよ!」
 夏子の叫び声が遠くに聞こえる気がした。そして、ハッとようやくあの女の違和感の正体に気づいた時、胸がじわりと痺れるような自己嫌悪が襲ってきた。なぜすぐに気づかなかったのだろう。私は気づいていたのに、気づかないふりをしていた気もした。気づきたくなかった。
 あのカモミールティーの女は、周りの女たちに比べて、若干ではあるが肌が白かった。
 私はガラスのほうに振り返り、そこにうっすらと映る自分に目を凝らした。
 高校時代のあの自分のように、焦げ茶色の皮膚に戻っていないか、確かめたかった。
 この目の前の女を引き立てる、みすぼらしい女に私はなっていないか、知りたかった。
 そして今、私は、どんな顔をしてここにいるのか、見てみたかった。
 その時、ぼきっと聞き慣れない何かが砕ける音が響いて、夏子と私は目を合わせた。
 「ねぇ、何、今の音?」
 夏子が不気味そうに、私にそう問いかけた。
 その音は、どうやら私の口の中から鳴ったようだった。恐る恐る口の中に手を入れ確認すると、指の先に鋭くて硬い何かが当たる。取り出してみると、大きく欠けた奥歯だった。
 「夏子、見て。欠けちゃった」
 「やだやだやだ、理沙、あんた、マジでおかしいって!」
 ボサノバが鮮明に聞こえる。こんなにも陽気な曲調だったのか驚いたが、店内が静まり返っていることに気づいて言葉を失った。
 そこにいた誰もが私を見ている。自分で自分が恐ろしくなって、ぶわっと身体中に寒気が走った。
 腕を見ると、鳥肌が立っていた。ぶつぶつと、細かく産毛が逆立っている。
 私は鳥になろうとしているのか。嫌だ。絶対に嫌。あんな生き物になりたくない。そう思うのに私の中の夏子への感情が、羽根をつけて、ばさばさと音を立ててばたついている。
 「あのね、旦那のことだけど」
 「へ? 何、急に」
 「たすくって言うのよ。旦那の名前」
 それを聞いた夏子の表情が消えていく。
 「珍しい名前ね。そんなことどうでもいいから、病院いこう」
 「ある女の前では、スクスクって呼ばれてたみたいだけど」
 夏子の顔が固まった。
 「見たのよ、私。旦那の携帯」
 夏子がバックを抱き寄せて出口に向かおうとしたので、私はまだ話を聞いて欲しくて、そこにあったグラスを掴んで中身を夏子にかけた。勢いよく氷がそこら中に飛び散って、周りの席にいた客たちが短い悲鳴をあげた。夏子の後頭部にはレモンの輪切りが張り付いて、ゆっくりと床に落ちていった。
 「何が嫌ってさ、旦那がいきなり持って帰ってきたのよ」
 私は夏子の後頭部に話しかける。
 「セキセイインコ。気色の悪い、水色の鳥。会社の部下が長期の出張になって、一人暮らしだから預かってくれって頼まれたんだって。でもね、すぐ嘘だって分かったの。その鳥かご、柵の部分にべっとりなんかついてんのよ。てかてかしたもんが。それがストロベリーの匂いすんのよ。この鳥の飼い主、バカだから柵と顔の距離感がわかなくて、毎回グロス塗りすぎた唇、接触させてんだろうなって影ながら笑ったわ。うちの旦那の口元から同じ匂いがするのも、そういうことでしょ?」
 私は固まったまま動けなくなっている夏子に近づいて、肩に手を置いた。
 「夏子、私ここに来る前ね、その鳥をベランダから放り投げたわ」
 彼女の顔を覗き込むと、音もなく泣いているのが分かって、私は自分が鳥かごから解放された気分になった。
 「あ、そうそう。あの鳥、飛んだのよ、一瞬だけど。まっすぐ上に飛んで、そんで真っ逆さまに落ちてったわ」
 ふと気になって、ガラスの外を見た。水色の小鳥は、もういなかった。










 

クチバシの苺

執筆の狙い

作者 修道院長
p1240097-ipngn201004fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp

初めて小説を書き上げました。新人賞に作品を送ってみたいと思ってきたのですが、自分が書く文章に自信が持てず、不安で不安で作品を書き上げたことすらありませんでした。今回が処女作になります。
もしよければご拝読いただいて、皆様からの文章についてのアドバイスがいただけたら嬉しいです。
(純文学志望)

コメント

may
pw126033133113.23.panda-world.ne.jp

夏子がすごく鬱陶しいです。
私は、鳥が好きなので、主人公がなぜそこまで鳥を嫌うのか前半理解できませんでしたが、後半になり、何となくわかりました。
夏子、めちゃ嫌な奴。。。
ウエイターにセクハラするとことか、悪寒がしました。
でも、この小説を通して作者は何が伝えたかったのかがいまいちわかりません。夏子の嫌さは伝わりましたが、作者はどの部分を書いていて楽しかったのでしょうか?メッセージ性のない作品かなと思います。

修道院長
p1240097-ipngn201004fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp

may様

御拝読ありがとうございます。
きちんと作品をお読みくださって、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。
文章練習に書いた作品で、内容やメッセージ性を疎かにしていたのかもしれません。以後、アドバイスを活かして頑張りたいと思います。

文学猿
p6695076-ipngn30501marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp

地の文に主人公の鳥類への生理的な?嫌悪感を表すような比喩、表現を盛り込むとよりよくなると思います。
あとは夏子の行動の無神経さやらを描写するのにハッと目を引くようなブラックジョークを混ぜるとか?
主人公が自分の奥歯を砕いてしまうシーンと鳥肌を鳥への恐れに繋げるのは個人的に気に入った。
そこにボサノバについての描写を入れたことで文全体が静かになった気がする。その部分が夏子の常識に欠けた性格をよく強調していると思った。

夜の雨
i223-216-205-231.s42.a027.ap.plala.or.jp

「クチバシの苺」読みました。

「執筆の狙い」で「純文学志望」とありましたが、御作をラストまで読むとエンタメになっています。
途中までは「純文学」です。
後半でエンタメになっています。
つまりストーリー(物語)を創りすぎているということ。
導入部から中盤までは純文学でした。
どのあたりまでかというと、作者さんも自分で書いていて気が付いていると思いますが、「夏子」のキャラクターを描いているエピソードまでが純文学です。

A>>「たすくって言うのよ。旦那の名前」
 それを聞いた夏子の表情が消えていく。<<

Aから後がエンタメになっています。
つまり、構成が壊れてしまったということになるのかな。

あくまで、私が感じたということです。

● 御作は「夏子」という特殊な人物を「普通の女性(凡人の主人公)」が、どう見たのか、知り合って、どう接したのかが、書かれている純文学小説の作品になる予定でした、ラストの手前まで。

ところが、作者さんが色気を出して物語を創りすぎたので、せっかくの純文学がエンタメになってしまった。
ここに、御作の悲劇があります。

せっかく夏子という特殊なキャラを描いているのだから、ストーリー(物語)創りに向かうのではなくて、夏子の味わいを夏の季節(短編の御作のことです)が終わるまで残してほしかった。

たとえば御作では主人公のご主人の存在が描かれていますが、彼は夏子と関係していたということになっています。
こうなるとエンタメになります、物語を創っているので。
たしかに夏子のキャラからいうと、主人公のご主人と遭遇していれば、関係が出来る可能性があります。
だから、遭遇していたということにすれば、物語を創りすぎているのでエンタメになってしまいます。
ここは、遭遇していたことにするのではなくて、旦那と主人公のエピソードを書いて、現実的なリアルテイを出して、旦那の性格だと夏子にボロボロにされる可能性があると読み手に思わせておいて、夏子と主人公のご主人とは遭遇させない。
遭遇させなくてもイメージすれば、御作のラストに間違いなくなります。
なので、読み手に想像させるだけでよい。

作者は御作をエンタメではなくて純文学にしたいのだから、夏子という特殊なキャラクターを凡人の主人公がどう見ていたのかを描くだけでよいのではないかと思います。

文学は人間を描くのであって、決して物語を転がすのではないと思います。
物語は人間を描くまででよいのではないですかね。
もちろん中編とか長編とかになってきますと、物語の顛末をラストまで書く必要が出てきますけれど。

● 御作のような短編の場合は、物語の顛末をラストまで描くと創りすぎのように思います。

● 御作では鳥がキーワードになり、いろいろなエピソードと絡んでいますが、これはうまい書き方だと思いました。

● ちなみに御作の夏子のキャラクターに関連して、以前NHK Eテレの放送で、『ねほりんぱほりん』という番組のなかで「元サークルクラッシャー」 2017年10月11日放送で、夏子と似たキャラクターの紹介をしていました。
その女性は大学のサークルで色沙汰の問題を起こしていたわけですが、彼女に言わすと男を落すのは簡単ということらしいです。
「パーソナルスペース」に踏み込むと、相手の男は女性を意識して「堕ちる」と言っていました。

好きなことを書かしていただきましたが、あくまで私の感想にすぎません。

お疲れさまでした。

修道院長
p1240097-ipngn201004fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp

文学猿様へ

コメントありがとうございます!ご指摘のところ、真摯に受け止めてこれからの作品に
活かしたいと思います!

修道院長
p1240097-ipngn201004fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp

夜の雨様へ

コメントありがとうございます。丁寧にご拝読いただいて、細かくご指南くださったこと、心より感謝申し上げます。
ご指摘された部分ですが、おっしゃる通りで、私がまだまだ安易な発想に頼って執筆していることを再認識させていただけました。純文学性がなくなっている点のご指摘も、納得しました。
人間を描きたいと思っていたので、自分の都合で書き上げてしまう癖を気をつけようと思います!

本当にありがとうございました。これからの執筆活動に活かして、頑張りたいと思います!

5150
5.102.0.111

作品読ませて頂きました。

また、あわせて前述の夜の雨さまの感想にも、興味を持ち書かせていただきます。
純文学とエンタメの境、あるいはその中間小説って、僕もむちゃくちゃ気になって仕方がない事柄です。で、純文学志望を狙いとして書かれている、という点から読んで、一つだけ気になった点がありました。

もしこの作品を純文学として書いたのであれば、キャラの夏子がどうも読んでいて、キレイすぎるような気がしてなりませんでした。誤解のないように書くと、夏子の一風変わった性格を描写していますが、言葉から伝わるのは映像的なイメージであり、純文学として読むと(こういう言い方は嫌いですが)、やや映像的というか、夏子があまりにキレイすぎてしまっているように思えます。もっと、夏子の細部の描写を取り入れるといいような気がします。ゴツゴツしたものとか、よくわからない部分を、わからないなりに書いていくと、結果的にもっと夏子が立体的というか、奥行きをもって読む方に伝わるような気がします。わかる部分をわかるように書き過ぎると、エンタメになると思います。そういう意味でキレイすぎ、と書きました。以上、参考になれば幸いです。これからも頑張って下さい。

修道院長
p1240097-ipngn201004fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp

5150様へ

コメントとご拝読、ありがとうございました。
私もご指摘された箇所は書きながら思っておりました。
どうしても淡々と描写をしてしまい、今の私にはそこから先を書く力がまだ備わっていないのだなぁと痛感しております。
参考にさせていただきます!ありがとうございました!

金川明
sp49-97-104-114.msc.spmode.ne.jp

地の文に主人公の鳥類への生理的な?嫌悪感を表すような比喩、表現を盛り込むとよりよくなると思います。
あとは夏子の行動の無神経さやらを描写するのにハッと目を引くようなブラックジョークを混ぜるとか?
主人公が自分の奥歯を砕いてしまうシーンと鳥肌を鳥への恐れに繋げるのは個人的に気に入った。
そこにボサノバについての描写を入れたことで文全体が静かになった気がする。その部分が夏子の常識に欠けた性格をよく強調していると思った。

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