作家でごはん!鍛練場
あぁ

予定調和

「何してるの?」
俺からの電話には決して出ないクセに、友美の電話は、いつも必ず同じ台詞から始まる。
「仕事だよ」
俺は、短く答えて車を脇に寄せた。
時刻は午後二時を少し過ぎているが、顧客との約束には小一時間程度ある。
「大田建設の野間専務にハウスの見積り出してきた」
友美の少しかすれた声と甘く噛んだような喋り方に心が安らぐ。日々の喧騒で心に張り付いたヒリヒリと尖った何かが、削り取られてつるりとした何かに変化する。しっとりと落ち着いた何かで安定する。
「そうか、良かったじゃん。反応は?」
「うん、良かった」
「凄いな」
言いながら緩く過ぎていくこの時間を永遠に繋ぎ止めることができそうな錯覚に陥っている自分に気付く。
そんな事が許される筈もないのに友美の全てを手に入れたような気になっている自分に気付く。
馬鹿げている。
「そう! 頑張ったから私」
弾けるように喜びを表現する友美の明るい声を、もっと近くに感じたくてスマホを耳に押し付けた。
「逢えないか?」
溢れだした言葉の答えを枯渇した心が切望する。車道を忙しく行き交う車の騒音を意識から閉め出す。友美の声だけに集中させる。
出逢ってからどのくらいの時間が経過したのだろう。永遠を共に過ごしたような気もするし、今この瞬間まで見知らぬ関係だったような気もする。時間の概念は剰りにも曖昧で二人の関係を表現するには相応しくない。
「なぁ、逢えないのか?」
待ちきれずに、もう一度訊いた。
「直ぐに、浜松事務所と山崎事務所に備品の納入があるから無理」
俺の問いに答える友美の声に、真綿で臓器を締め上げるような切なくもどかしい痛み。
どちらか一方が強く想いすぎると恋愛は上手くいかない。何かの映画にあった台詞だ。正に、その通りだと思う。相互に愛を囁き確かめ合うからこそ愛情は成熟した何かになる。
片方が一方的に想いを寄せても辿り着く場所は見付けられない。
「俺達、たまには逢って話してもいい」
「そうだけど、今日は無理」
そっけない態度。いつも通りの態度。俺は繋がる度に自分の想いを伝えているのに、友美の本当の気持ちを知らない。
至極当たり前の結果だ。自分以外の心を操ることは誰にもできない。どれだけ想いを募らせても相手の本心は覗けない。
だからとは言い切れないが独りよがりな空回りは加速する。
それは当然の結果で、相手の負荷が全くない世界で自分の思いは永久動力を得た振り子と同じように、右から左に、前から後ろに、永遠に同じ速度と振れ幅で揺れ続ける。
「俺の想いに、お前はなぜ応えてくれないんだ」
俺は懇願するように訊いた。スマホを持つ手に力が入る。車外のノイズが消えて、辺りが真空状態のように無音になる。
「じぁ……明日また連絡するね」
通話が切断されて無音の世界が広がる。
胸を掻き乱す不快な余韻。
理由みたいなことを散々考えて辿り着くのは、この一年程の間に友美と逢えたことは一度もないという事実。
勤めていると言っていた会社も、取引先という会社も、実在はしない。
休みに逢おうと、詳らかに語った住所には巨大なショッピングモールが十数年前から建っている。
友美の日常や悩みは全て共有している。そうしたいと友美は色々な打ち明け話を俺に訊かせるからだ。その口調に冗談や作為的なものも微塵も感じられない。本当の友美の姿だと確信出来る。
だが、そこに俺はたどり着くことはできない。友美が生きている世界が実在しているのかさえ分からない。
一本の間違い電話。
同僚に掛かけた電話から親しくなり、たまに日々の近況を報告し合うようになり、それが毎日となり。日常となった。
あれは全て幻だったのだろうか?
それとも友美が幻なのか?
分からない。分からないが、俺は毎日友美からの電話を待っている。
待ちわびながら生きている。

予定調和

執筆の狙い

作者 あぁ
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あぁぁ( ̄▽ ̄;)

ぐがっと唸るのも
うがぁと笑うのも

なんだか面倒い
今日この頃です

コメント

偏差値45
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冒頭は分かりにくいかな。
もう少し丁寧に書いた方が親切ですね。

ラピス
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んー、地の文は繊細なのに、作者の生活臭漂う狭い世界の台詞がなー。壊してる。
オチは良いんですけど。

夜の雨
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「予定調和」読みましたが。
エピソードの書き方は手慣れていますね。
読ませる文章を書いています。
しかし人間を深く掘り下げていないような気がします。
物語のほんの導入部と言った感じです。
だから、主人公の「俺」も、相手の友美もどんな人物なのかがわかりにくいです。
登場人物の裏の部分を描いてほしい。
御作、どちらかというと、表の部分よりも裏の部分を描いたほうが面白いのではないですかね。
作者さんは、ハードボイルド好きでしょう。

>この一年程の間に友美と逢えたことは一度もないという事実。<
このあたりは面白いのですけれどね。
裏の部分が垣間見えて。
主人公や彼女の背景が見えるような世界を描く必要があると思います。

世界観の書き方次第でかなり面白くなるのではないかと思います。
ジャズでも聴きながら構想を練ったらいかがですか。
とりあえず、「ニューヨークのため息」などが、よいと思いますが。


お疲れさまでした。

あぁ
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偏差値45さん

ありがとうございます

確かに投げやり感が凄いです
冒頭だけじゃなくて分かりにくいかもなとも感じるのでした。

もっと真面目になりたいです

ありがとうございました

あぁ
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ラピスさん
ありがとうございます

視野が狭い……
間違いないです

台詞は苦手って感覚は生まれてからずっと感じています

ありがとうございました

あぁ
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夜の雨さん
ありがとうございます

掘り下げて書く
精密に書く
奥の方まで書く
ねっとりと書く

わかっていてもなかなかできないのでした。

自分自身の愛撫と同じでしょうね
挿入したくてジタバタしちゃう
ペロペロ、ブスッって

なんか最近ゴハンも更に元気ないみたいですね。

ありがとうございました

may
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繊細さとセンスは感じられました。
言いたい事があるんだなーって感じです。
ただ、荒削りですね。光ダイヤモンドの原石をまだ山から掘り出した途中みたいな小説。それに、重い!!!
主人公の彼女への想いが重すぎてしんどくなり、彼女が彼に答えてくれないからさらにあーもどかしい笑笑
でも、私は好きですね、これ。
面白いと思いますよ。日々の喧騒で尖った心が丸く(?)なる、とかどれだけ想っても相手の気持ちを操る事はできないとか、ね。
ありがとうございました。

あぁ
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mayさん

ありがとうございます

返信が遅くなってごめんなさい
重いとのこと
確かに…暗いですね鬱々した感じですね…

でも、好きだと言ってもらえて単純に嬉しいですた

ありがとうございます!

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