作家でごはん!鍛練場
みく

あの夏、ダムの町で

あの夏、ダムの町はカラカラに乾いていた。
山林を抜けた山奥にある巨大なダムの、剥き出しになって乾いたコンクリート。
今でも目に浮かぶー。

今年の夏は暑い。暑すぎる。
梅雨を前に気象庁から発表された三ヶ月予報によると、例年並みの暑さになるはずが。
ここはまさに東京砂漠。
ヒートアイランド現象ってやつなのか、エアコンの効いた社内から一歩外に出ると、蒸されるような熱気だった。
僕はスーツの上着を右腕に掛け、額から流れる汗をハンカチで拭いながら取引先へと急いだ。
先方を待つ間、あるいは帰社するまでの束の間の休憩時間。
僕は十数年前の夏休みを思い出していたー。

その頃の僕は都会の小学生だった。
夏休みは、エアコンの効いた室内でゲームをするか宿題でもするうちに過ぎていった。
八月のお盆の頃。僕は父方の祖父母の暮らす町に家族で遠出することとなった。
高校受験を控えた姉は母方の祖父母の家で勉強してると言ったので、僕と両親の三人で。
父方の祖父母とは年にたいてい二度、お盆とお正月に会っていた。
祖父母の暮らす町は、ダムの町だ。
昔は反対運動など、色々あったとか。
僕は話だけ少し聞いていた。
そしてその年の夏は、特別降水量の少ない年だった。
十数年振りの水不足に、町は喘いでいた。

「せっかく来てくれたのに、もしかしたら取水制限やなんやあるかもしらん」
祖父が父にそう言っていた。
子供ながらに、少し町全体の空気が重たく感じられた。
大人たちの話は退屈だったので、僕より三歳年上の従兄弟が僕を外に連れ出した。
春から中学生になった従兄弟は、去年までと少し感じが違って見えた。
本来は近くを流れる川で水切りをして遊ぶところだけど、水不足と聞いていたらそんな気にもなれなかった。
僕は従兄弟が山林の木に登るのをしゃがんで見ていた。
そんな時、一人の老人に声をかけられた。
従兄弟は、この町の長老だという老人のことをよく知っていた。
僕にはどこから来たとか、あれこれ話しかけてきた。
僕らは成り行きで、山林のそばの空き地みたいな場所に連れていかれた。
そこには町の子供らが十人ちょっと、黙って体育座りをして集まっていた。
三分の一くらいが女の子で、皆年齢はまちまちだった。
僕らが後ろの方で体育座りをすると、老人が話しはじめたー。

昔々、山林に囲まれたこの町は林業や農業が主な産業だった。
とてものどかだった。
ある日、都会からスーツを着た男たちがやってきた。
彼らは町の人々にあれこれ話を聞き出しては、何やら測量をした。
彼らはこの町にダムを造ると言った。
町民の意見は真っ二つに割れた。
ダムを造るのに仕事が増える。
そうすれば、若い者が都会に出ていかなくてよくなる。
いや、ダムなんて自然破壊だ。
余計に自然災害に脆くなる。
しかし反対派の声など最初からなかったかのように、ダムの建設は進められた。
当時、青年だった私は心配になった。
子供の頃に聞いた、水神様(みずがみさま)の話を思い出したからだ。
この町は水神様によって護られている。
ダムなど造っては、水神様の怒りを買ってしまう。
案の定、ダムが出来た年の夏は深刻な水不足に陥った。
町の人々は水神様の好物を奉納し、祈祷し続けた。
翌年の梅雨、例年にも増して大雨が降り続いた。
水不足は解消されたのだったー。

僕はその話を半信半疑に聞いた。
家に戻ると、大人たちはまだ水不足の話をしていた。
その日の夜。僕は両親と三人で客間に布団を敷いて寝た。
エアコンがいらないくらい空気がひんやりしていた。
僕は朝方に目を覚ましたが、両親はぐっすり寝ていた。
退屈になった僕は、そっと家を抜け出した。
なんとなく老人の話が気になって山林の入口に行ってが、誰もいなかった。
帰ろうかなと思ったその時、妙な唸り声がした。
パッとその方を見ると、明け方の橙色に染まる空高くに、大きな龍の姿が見えた。
色は青と水色の中間くらいで、鱗に覆われた身体はとても長かった。
僕があっと口を開けるとほぼ同時に、龍は姿を消した。
その前に一瞬、僕と目が合った気がした。
鋭い三白眼とキラッと光る牙が見えた。
僕はそれを、夢だと思い込むことにした。

その次の日、僕ら家族は東京に帰ることとなった。
八月も下旬に入る頃、ダムの町にも大雨が降って水不足が解消されたというニュースが流れた。
それと同時に、町の子供が一人行方不明になったという話も。
それを電話で聞いた父の横顔は険しかったー。

この話はこれでおしまい。
水不足のニュースを聞いて、思い出したんだった。
あの龍の姿、やはり夢ではなかった。
そんなことを考えながら、僕は取引先から帰社した。
エアコンの効いた社内は快適だったが、さすがに外との温度差がありすぎる。
女性社員はたいてい、持参したカーディガンを羽織っているし。
僕は自分のデスクに鞄を置き、ふと思った。
僕はあのまま、無事に東京に帰れてよかったのか。
よかったんだろうな。
水神様の話をしていた時、老人はちらちら僕の方を見ていた。
その時の老人の顔、憐れむようななんとも言えない表情をしていたんだー。

あの夏、ダムの町で

執筆の狙い

作者 みく
om126179120007.19.openmobile.ne.jp

初めて投稿させていただきます。率直なご感想を頂けたらありがたいです。

怖い話や不思議な話をネット上で読むのが好きで、自分でも書いてみたいと思っていました。
構成などわかりにくかったらすみません。おまけに季節外れなお話で(汗)

コメント

そうげん
58-190-240-140f1.shg1.eonet.ne.jp

作品読みました。

今年の冬は雪も少なくて、冬らしい冬の感じられない珍しい年ですけど、その真冬に、とても暑いヒートアイランドの世界から避暑のことを回想するこの物語を読むという、季節感がまったく正反対なのが、逆に面白いなあと思いました。

水神さまが大雨を降らすのに、ひとりの子供の命が犠牲になったということみたいですね。それは場合によっては幼いころの主人公であったかもしれないというのが、たしかにすこしホラーの要素を感じさせてくれるものでした。子供をたくさん集めて、ひとりの老人が演説する。びくびくしながら子供たちは老人の語る話に耳を傾けていたのでしょうね。

面白かったです。

松岡修子
82.206.49.163.rev.vmobile.jp

 文末が「た」「た」「た」と「た」で終わるのが単調で、小学生の作文っぽい印象です。小説にするなら工夫しましょう。
 個々の文章は日本語の文章として成立していますが、小説と呼ぶには稚拙です。小説として鑑賞できる文章にはなっていません。余計な説明が多いのが気になります。最後に一例だけ挙げます。
 内容はありがちな物で、特に目新しさはありませんでした。ラストがホラーのような書き方になっていますが、説得力がないのでホラーとして成立していません。

>八月のお盆の頃。僕は父方の祖父母の暮らす町に家族で遠出することとなった。高校受験を控えた姉は母方の祖父母の家で勉強してると言ったので、僕と両親の三人で。父方の祖父母とは年にたいてい二度、お盆とお正月に会っていた。
 ↓
 八月のお盆の頃。例年どおり僕たち一家は、父方の祖父母宅に滞在していた。

 姉はこの話の中で特に重要ではないので、高校受験を控えた姉は云々という箇所は不要だと思います。

みく
om126179120007.19.openmobile.ne.jp

そうげん様
感想ありがとうございます。

>季節感がまったく正反対なのが、逆に面白いなあと思いました。

一応書けたし、ここに投稿してみようかな、と思いついたのが最近なので、妙なタイミングですよね。

面白かったと言っていただけて、すごく嬉しいです。
ちょっと狙いすぎかな、と自分で後から心配になっていました。

みく
om126179120007.19.openmobile.ne.jp

松岡修子様

感想ありがとうございました。

>八月のお盆の頃。例年どおり僕たち一家は、父方の祖父母宅に滞在していた。

ここまでスッキリと説明できる文章に変わるとは、参考にさせていただきます。

小説の書き方も、まだまだ鍛錬の途中なので。
今回はなんとなく、ここに投稿してみようと思いついたんですよね。

ありがちといえばありがちですよね…。
もっと精進したいと思います。

偏差値45
softbank219182080182.bbtec.net

最初の段落、次の段落、「回想シーンをしますよ」と同じことを言っているので、
調整して一緒にした方が良いと思います。

>この町は水神様によって護られている。
>ダムなど造っては、水神様の怒りを買ってしまう。

この辺はダム反対派の根拠のないロジックですよね。
そんな情報を子供にしてしまうのは、洗脳なのかな。
という裏読みをしてしまいますね。

>パッとその方を見ると、明け方の橙色に染まる空高くに、大きな龍の姿が見えた。
>僕はそれを、夢だと思い込むことにした。

本当の話なのだけれども、現実との整合性を取ろうとしたのでしょうか。


全体的には、、、。

・水神様
・大きな龍
・町の子供が一人行方不明
・水不足

本来は何の関係ない話なのですが、それらを関連性があるようにストーリー化するには、
もう少し工夫が必要だと思いましたね。点と点はあるけど線になってない感じです。

みく
om126179120007.19.openmobile.ne.jp

偏差値45様
感想ありがとうございました。

>この辺はダム反対派の根拠のないロジックですよね。
そんな情報を子供にしてしまうのは、洗脳なのかな。
という裏読みをしてしまいますね。

言われてみたらそうですよね。
昔だと、そういう言い伝えだからで通ってしまいそうなだと思いました。

みく
om126179120007.19.openmobile.ne.jp

途中で送信してしまいました。

>もう少し工夫が必要だと思いましたね。点と点はあるけど線になってない感じです。
これは自分でも思いました。

怖い話に限りませんが、最後の数行であっと驚いてまた最初に戻ってじっくり読み返す…。
そんな作品に出会った時、ワクワクしませんか?
私もそんな印象を読み手に与えられなら、なんて思っていました。
とにかく、読んでいただけでありがたいです。

愛&背文
nthkid021022.hkid.nt.adsl.ppp.infoweb.ne.jp

あまり小説っぽくしようと頑張って、時間の軸をすっ飛ばしたり、思い出したりさせないで、小学生の絵日記みたいに
書いてみるのが最初の内はいいと思います。語彙も経験もあるのだから、
きょうはともだちとあそびましたおもしろかったです。
みたいにはなりませんのでご安心を。

あとは、登場人物が何かを始めたら、ちゃんとその動作を終えるまでしっかり書ききってみるべきです。

喫茶店に入って冷たいコーヒーを頼んで、ご主人の作業を見つめたり、外に目をやったりしながらも、頭の中は仕事の
ことで一杯。運んでくれたアルバイトの大学生が少し可愛く和んだところで、ストロー立てから一本を選び、ミルクだけをちょっと加えて、氷とグラスが当たる音を楽しみつつ、若干濃淡が判別できるくらいに緩く攪拌したところで、ほんの少し吸い上げ、味を確かめる。かなり濃厚な香りと滑らかな舌触りを感じてこれが水出しか、などとほくそ笑んだが、やはり次の難しい商談がすぐに頭に浮かび、冷たさだけしか感じなくなくなったコーヒーをさっさと飲み干して、あまりに短い滞在時間を残念がるような表情のご主人にお金を渡すと、冷房の効いた店に後ろ髪を引かれつつも、目的の場所へ
急いだ。

でもこれ全部は必要ない。そこで推敲の出番です。お話に必要、お話の雰囲気に必要、キャラの性格上必要、
なんとなく必要そう、といった理屈と自分の直感で要らない部分を捨て、なるべくすっきりさせます。
なれれば、膨大な分量を書かなくとも最初からほぼ適切な文章を書けるようになるので、頑張ってください。

みく
om126179120007.19.openmobile.ne.jp

感想と助言をありがとうございます。
参考にさせていただきます。

登場人物の動作、お話の雰囲気などあれこれ意識して他の小説を読んでみて、それからまた自分で書いてみたいと思います。

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

テクニカルサポート

3,000字以内