作家でごはん!鍛練場
コツリス

月を捕まえる

 七海《ななみ》は毎晩空に浮かぶ月を眺めては溜め息をついていた。あれが欲しい。どうしても。家族が寝静まった頃を見計らって、七海は外へ飛び出した。月を捕まえるのだ。秋の冴え渡った三日月を目指して、七海は走った。月明かりが彼女を冷たく照らす。けれども、どんなに彼女が精一杯走っても、一向に月へはたどり着けなかった。七海は長期戦を覚悟して、歩いて月を追いかける事にした。丑三つ時になり、彼女は今日は月を追いかける事を諦めた。もうずいぶん家から離れてしまったし、明日に備えて寝なければならないのだ。七海はトボトボと家へ戻った。
 
 次の夜も、その次の夜も、七海は月を追いかけた。そのうち、母親が異変に気付いて七海を問い詰めた。
「毎晩家を抜け出して、一体何処へ行ってるの! 夜中に徘徊するのは止めなさい。危ないじゃないの」
七海は何も答えない。母に叱られようが、月を捕まえなくてはならないのだ。
 
 その夜も七海はこっそり家を抜け出した。ひんやりと冷たい風を受けながら歩いていると、後ろに人の気配がする。どうやら七海の後を尾けている様だ。まさか、変質者? 七海に緊張が走る。だがどうやらそういった類いでは無さそうだった。七海は思いきって振り向いた。少し離れた所に男の子が立っている。七海の家の向かいに住んでいる、小学校の同級生、陸《りく》だった。
 
「何故尾けてくるの?」
七海は陸を問い詰めた。
「いつも家を抜け出すところを見てたんだ。何処へ行くのかなあ、と思って」
「それは……。誰にも言わない?」
「言わないよ」
「私、あれを捕まえたいのよ」
七海は満月を指差した。陸は少し考え込んで、
「分かった。ここで待っていて」
そう言い残すと走り去って行った。七海が夜風に震えながら待っていると、陸は戻って来た。
 
「ほら、これを使えば良いよ」
陸は息を切らしながら七海に丸い手鏡を差し出した。
「これをこうして……」
手鏡の角度を調整して、月を映す。丸い手鏡の中で丸い満月が輝いた。
「あっ」
「これで、月は七海の手の中だよ」
陸はにっこり笑った。
「そうね。これで月は私の物だわ」
七海もにっこり微笑んだ。
 

月を捕まえる

執筆の狙い

作者 コツリス
126251011127.joetsu.ne.jp

読み終わったあとに、「ウフフ♥️」って思って貰えれば良いです。

コメント

偏差値45
softbank219182080182.bbtec.net

何処かで聞いたような話かな。
なぜなら、途中でオチが分かったから。
とはいえ、そんなことを言ったら創作活動はできないので気にすることも
ないのかもしれない。

で、ふと思ったことは、>毎晩 という言葉。
曇りの日、雨の日だってあるわけですからね。
それは無理でしょう。というツッコミを入れたい。

それらを抜きに考えれば、しっかりしたストーリーには成っていると思いますよ。

松岡修子
45.253.149.210.rev.vmobile.jp

 複数箇所、行頭字下げができていませんでした。
 これはもちろん童話や児童文学として書いた物ではないと思います。小学生が一人で毎晩徘徊するという内容、読んだ子供が模倣する危険性など問題がありますからね。
 となると読者層は中高生から大人かと思いますが、中高生や大人がこの話を読んで愉しめるでしょうか? 
「七海ちゃん、純真で可愛い」
「陸くん、優しくて頭イイ」
 と単純に感動してくれる幼稚な中高生や大人はほとんどいないと思います。このままでは不十分です。大人の鑑賞に耐えうる作品にする必要があります。

スカイ画廊の父
sp49-98-142-227.msd.spmode.ne.jp

 月はああやっていつも少しずつ姿を変えながら現れてはこちらを見下ろし、その圧倒的な存在感にも関わらず我々には何も語りかけてはこない。こちらからすると何かしらのアプローチもできないもどかしさがありますね。さて、作者さんの嗜好とはだいぶ乖離していることを書いてしまうと思うのですが、なぜ七海は月を欲するのでしょう。アポロが月に何度目か何十度目かでようやくたどり着いたのだって、天文学的な費用(税金)や数えきれないほど何人もの犠牲があってのことでした。政府は他国を意識しての競争(戦争)としていたのでしょうけど、パイロットたちは本気で月に行きたいと目指していました。手鏡の中で輝く月が自分のものになったかのように、パイロットたちも日々望遠鏡を覗いて月に焦がれていました。七海もそうですが、そこには根源的な欲求が隠されているのだと思うのですが、あまりうまく言葉にできません。私はそういう、世界に対するわからないことに境遇するたびに、意味があるとかないとかそういう理屈は抜きに文字を起こすことにしていますし、同時にそういうものが読みたいとも思います。失礼いたしました。

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

あの、掌編だから、こうならないとしょうがなかったとは思うのですけど。

出来れば、こういうオチでも、第三者の少年が突然解決するのではなく、七海が頑張って頑張って、自分自身で月を手に入れる話を読みたかったかなって思いました。

でも、人は何かを手に入れる時に、どうしても手に入らなかったら、それを映す(反映する、反射する)何か別のものに救いを求めればいい、とか、ちょっと、そんなことも考えたりして。
そういうものとして、男の子もいたのかな? とか。

これはこれで何か味はあるなー。って。

コツリス
126251011127.joetsu.ne.jp

皆さま、コメントありがとうございます。ご指摘参考になります。いずれまた書き直してみようかと思います。

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

テクニカルサポート

3,000字以内