作家でごはん!鍛練場
大丘 忍

拾った女

 みぞれ混じりの雨が雪に変わった。タイヤの軌跡から取り残された路肩が、街灯の光を跳ね返して仄白く浮かび上がる。京都の市街部では積もることは滅多にないが、万一積もると厄介だ。タイヤチェーンを持っていない。
 時刻は夜中の十二時に近い。この時刻になると、道を流れる車の数は減っている。私はアクセルを踏み込んだ。
 突然、ヘッドライトの輪の中に人影が飛び込んできて、身を乗り出すようにして腕を振った。ブレーキが不快な悲鳴を上げた。
 助手席の窓を開けると寒風が雪を車内に運び込む。
「大阪へ行くんやろ。乗せてんか」
 顔を出した私に、女は甘えたように声をかけた。行き交うヘッドライトの光が、髪を掻き上げた女の顔をスポットライトのように白く光らせた。
「大阪までは行かへんで。途中までや」
「かまへんわ。乗せてよ」
 風が女の髪をなびかせる。
 私は迷った。なにか事情がありそうだ。余計な厄介事を抱え込むのはごめんだが、この寒さの中、コートも着ずにずぶ濡れの女を放置するわけにはいかない。助手席のロックを外してドアをあけた。
「助かったわ。うち、どないしようかと思ってた」
 女は歯を鳴らして身震いした。水滴がシートに滴り落ちた。まだ若そうな女だった。
「こんな処で何してたんや」
 女は答えず、じっと前を見つめている。
「おっちゃん、どこまで行くんや?」
「枚方までや」
 車は京都の七条通りから国道一号線に入った。
 ヘッドライトの円の中を、白い粒が横に流れていく。
「おっちゃん、タバコくれへんか」
「おれ、タバコ吸わんのや」
「なんで吸わへんの」
「タバコは体に悪いからな」
 女は鼻を鳴らした。
「ふん、おっちゃんはダサイなあ」
「そのおっちゃんは、やめてくれんかな。おれ、まだ三十五やで」
「三十五やったらおっちゃんやないか」
 私は思わず女を横目で見た。車内の暗闇では女の表情はわからない。
「あんた、年、何ぼや」
「十八」
「十八? そんなら高校生か?」
「違う。やめたんや」
「高校やめて、何してんねん?」
「何もしてえへん」
「こんな時間に雨に濡れて、何もしてえへんことないやろ」
 女がこちらに向いて身構えたような気配がした。
「うるさいなあ。おっちゃん、うちに説教する気か?」
 女の挑むような口のききかたに、思わず足がブレーキを踏んだ。車を道路脇に寄せ、徐行させる。
「何しようとあんたの勝手やけどな。嫌やったら車から下りて貰うで」
 女はしばらく口を閉ざして窓の外を眺めた。みぞれはすっかり雪に変わり、うっすらと積もり始めている。
「どないするんや。下りるんか」
「ごめん、おっちゃん」
「そのおっちゃんだけは止めて欲しいな」
「そんならどない言うたらええんや。おにいさんか?」
 私は苦笑した。十八の小娘におにいさんと呼ばれる年でもない。ふと、十八才にとっては、三十五才という年齢は私が思っているよりはるかに年寄りなのかも知れないと思った。
「まあええわ、好きなように呼びや」
「おっちゃん、奥さんいるの?」
「まあ、この年ならいるのがあたりまえやろ。けど、おれはまだ独身や」
「なんで結婚せえへんの」
「いろいろ事情があってな」
「さては彼女に逃げられたんやね」
「そんなこと、あんたに関係あらへんやろ」
 女は私の膝に手を伸ばした。その手は腿の付け根に伸びていく。
「こら、変なところ触るな」
 私が怒鳴ると、女は手を引っ込めた。しばらくすると女の手がまた私の股間に触れる。
「変なことするな言うてるやろ」
「おっちゃん、こんなん、嫌いか」
「好き嫌いの問題やないやろ。事故起こしたらどないするねん」
 私はたしなめるように言った。
「うち、おっちゃんと気が合いそうやな」
「どうしてわかる?」
「おっちゃん、優しそうやんか」
 優しい? 私はまた自嘲した。
 
 医学部を卒業して内科医局に入ったとき、勤務していた内科病棟にぽっちゃりした若い看護師がいた。世話好きで、年配の患者からは百合ちゃんと呼ばれて人気があった。
 私が夜遅く看護師詰所でカルテの記載をしていると百合が声をかけてきた。
「先生、コーヒーでも淹れましょうか」
 患者から貰ったコーヒーが詰所に置いてあり、夜間当直の看護師が眠気覚ましに飲むのであろう。
 彼女はコーヒーを淹れながら私に話し掛けようとする。
「十号室の山村さんが、点滴のとき私の胸に触るんですよ」
 山村は七十才の男性で慢性肝炎の患者である。
「そりゃあ、百合ちゃんのお乳が魅力的なんやろう」
 私は軽く受け流す。
「でも、気持ち悪いわ」
「ただ触るだけで、それ以上のことはないんやから、これもサービスのうちやで」
 肉付きの良い百合の胸や腰は、老いた男の患者の標的になっている。彼女は自分の姿態から発するフェロモンの効果を知り尽くしているはずだ。数ヶ月前まで、妻のある講師との間が噂されたこともある。その講師は、地方大学の助教授になって大学を去って行った。
 百合は、悪戯っ子をもてあましている母親のような目つきで私を見上げた。その目になまめきを感じて誘いの言葉が口をついた。
「今夜、仕事が終わったら飲みにいこうか」
「ほんと?」
 彼女の顔面に満足の笑みが浮かぶ。
 深夜勤務は十二時までである。タクシーを拾ってなじみの飲み屋に案内した。ここは十二時過ぎでもやっているのである。
「新入医局員の中で、先生が一番もてるでしょ」
「そうかな」
「皆が狙ってるから気をつけた方がいいよ」
 彼女はビールを立て続けに流し込む。飲める口らしい。
「君はどうなんや」
 彼女は流し目で私を見て、ふふと笑った。
 独身の新入医局員をめぐって、若い看護師の間で熾烈な戦いが始まる。医師を恋人にし、医師夫人に納まることができれば将来は安泰である。百合が私に目をつけたとしても不思議はない。要領のいい医師は、性欲処理の対象として看護師の間をうまく泳ぎまわっている。これが男の甲斐性だと豪語する奴もいる。
 何度か飲みに行ったあと、私は彼女をホテルに誘った。
「先生もやっぱり男やね」
「当たり前や。ご馳走を目の前にして、指をくわえるだけではつまらんやろ」
「食べて味を見たい?」
「当たり前やろ」
 ホテルに入ると、彼女は私を上目使いで見た。
「ご馳走食べて、あとはどないするの」
「言うとくけど、これは遊びやからな。おたがい、美味しい物食べたいやろ」
「どうせそんなことやろと思うた」
 百合はいきなり抱きついてくる。そこからの手順は雑念の入り込む余地はなかった。彼女の豊かな胸と腰の膨らみは、私の欲情をかき立て、彼女の体内に食い込んだ私の肉片は柔らかい襞に締め付けられた。百合のような女は情事の相手としては好都合だった。
「先生、時々逢ってくれる?」
「毎日詰め所で逢ってるやんか」
「もう、意地悪」
「もっと食べたいんか」
 百合は貪るようにまた体を重ねてくる。
「ホテル代は私が払うからね」
 彼女は私の耳元で囁く。
 百合の肌は、粘り着くようにしっとりとしており、男の悦ばせ方を知っている女だった。
 私と付き合いはじめて間もなく、彼女は大学病院を止め市内の病院に移った。私との関係が知れることを恐れたからである。これで周囲に気兼ねすることなく彼女と逢うことができた。
 百合とつきあい始めて一年目に、いつものように抱き合ったあと、
「私、生理が止まってるの」
 彼女が私をためすような眼差しで言った。
 私はぎょっとして百合を見つめる。ふくよかな彼女の頬が少しやつれて見える。
「出来たのかも知れない」
 この数日、百合の様子がおかしかった。食欲がなく、何となく元気がない。私が抱けば全身で喜びを表わしていたのに、物憂く応じるだけであった。
「出来たって、妊娠? 安全日を確かめてたんだろう?」
 彼女はうなずく。
「でも狂ってたらしいわ」
 一応避妊には気をつけていた。荻野式で排卵日を計算して、危険日は避けていた筈である。
「堕せよ」
 私は冷たく言った。
「生んでは駄目?」
「あたりまえや。そんなこと、はじめからわかってるやろ」
 私とは遊びの間柄であることは彼女も承知の上だ。
「私、生みたい」
「あかん。そんなことを言うなら、百合との仲も終わりやな」
 彼女は大きく目を見開いて私を見つめた。その目が潤ってきた。
「堕すからそんなこと言わないで。私を捨てないで」
 私は百合に深入りしすぎているのではないかと後悔した。情事用の女と割り切っている筈の彼女に、気持ちが移りかけているのを感じた。もしこの女と一緒になったらどうかと考えてみる。私に献身的に尽くしてくれる百合と一緒になってやっても良いのではないかと思った。これまで、彼女と付き合っている間に、他の女と遊んだことは数知れない。しかし、百合に勝る体を持った女は居なかった。でも、平凡な看護師である彼女と結婚するふんぎりはつかなかった。百合はあくまで性欲処理の女であるべきだった。私が結婚する相手は、良家の娘であり、それが私の出世を約束する筈だった。
 こうして百合との関係は三年続いた。
 私は大学院に進み、将来を嘱望される研究者となっていた。
 大学院が終わる頃、教授室に呼ばれた。
「君はまだ独身かね」
 教授の質問の意味がわからずに、思わず、はいと答えた。
「実は娘の多恵子だがね」
 多恵子は教授の自宅を訪問したときに何度か顔を合わせている。市内の私立大学に通う女子大生であった。長身で彫りの深い魅力的な容貌は、教授門下の若手医師の憧れであった。
「多恵子と結婚する気はないかね」
 私は耳を疑った。教授の門下生の中には独身の医師は沢山いる。その中でなぜ私を選んだのだろうか? おそらく私の医学者としての将来性を認めたからに違いない。私の胸はときめいた。日本の内科学会の重鎮である教授と縁続きになることは、学者としての将来が保障されたも同然である。家柄も財産もない私には、信じられない幸運だった。
 ふと、百合の顔が浮かんだ。私は慌ててその顔を打ち消した。
「私で良ければ……」
 教授は笑みを浮かべて私の肩を叩いた。
「君にはアメリカに留学して貰おう」
 あの美しい教授の娘が私の妻になり、同僚に先駆けてアメリカに留学できる。うきうきした気持に水を差すように、百合の顔が翳を落とした。
 美しく聡明な教授の娘と、平凡な看護師と、比べてみるだけ野暮なことだ。百合とは結婚の約束をしているわけではない。はじめから遊びであることは両方が承知の上だ。百合もそのつもりだったのだ。
 私が教授の娘と結婚して出世コースに乗るためには、何としても百合を捨てなければならない。誰だってこのチャンスを逃がす馬鹿はいない。彼女もいつかは捨てられることは承知している筈だ。
 もし、百合が承知しなかったら……。
 私は奔放な百合との行為を思い浮かべた。教授の娘と結婚しても百合を抱くような訳にはいかないだろう。教授の娘を断り、このまま百合と結婚して、どこかの病院の内科医長としての道を歩むのも良いかも知れない。しかし私は出世を望んでいた。国立大学医学部内科学教授。医者としての最高峰であるその椅子を、百合ごときの平凡な看護師のために棒に振ることはできないと思った。百合にいかにして引導を渡すか。もし別れを告げて彼女が承知しなかったら‥‥。
 百合の下宿を訪れる足は重かった。
「私に飽いたのね」
 別れて欲しいと告げたとき、彼女はそう言った。
「そうじゃあないんやけど」
「ではどうして?」
 理由は言えなかった。
 私に取りすがって、捨てないでと哀願するかと思っていたが、彼女は唇を噛み締めて涙を流すだけだった。
「わかったわ」
 涙を拭いて百合は私を見据えた。彼女があっさり承知したことはかえって不気味だった。
 教授の娘と結婚する。誰だってこんなチャンスを……。百合から目を外らしながら私は心の中で何度も言い訳をした。彼女に対する憐れみの心は、将来に約束された栄光の前に霞んでいく。やはり私は一流の学者として成功したい。教授の地位につけば、私は日本を代表する研究者になる自信があった。
 翌日、百合は睡眠薬を飲んで自殺を図った。
 飲んだ睡眠薬の量が多すぎて嘔吐したことが彼女の命をつなぎ止めた。数日の昏睡の後、彼女は意識を回復し、福井県の故郷の田舎に帰っていった。
 百合の自殺未遂事件は教授の耳に入り、多恵子との話は立消えになった。そして、私は研究半ばにして大学を去った。

「そうか、おれがやさしく見えるか?」
「うん」
 女は窓から外を眺めている。雪は雨に変わっていた。
「煽てても大阪までは行かへんで。枚方からどうするんや」
「タクシーを拾う」
「こんな時間、タクシーが拾えるかな」
 枚方が近づくにつれて、少女の口数が少なくなってきた。
 国道一号線から右折して京阪楠葉の駅前に出てみると、タクシー乗り場には長い列が出来ていた。最終の電車から吐き出された客が並んだらしい。
「枚方市駅に行ってみるか」
 私は車を国道一号線に戻した。枚方市駅も長い行列であった。
「しかたない。大阪まで行ったるわ。大阪の何処や」
「大阪にも行くとこ、あらへん」
「なんやと?」
 駅前の街灯の光が女の顔を浮き出たせた。女の目に涙が光ったように見えた。
「そんならどうするんや」
「行くとこあらへん」
 先ほどまでの葉すっぱな物言いは影をひそめており、平凡な少女の頼りない声だった。時計を見た。もう一時を過ぎている。この寒い深夜に、女を下ろして置き去りにすることはできない。
 車を迂回させてアパートの駐車場に止めた。無言で女がついてきた。
 明るいところで見ると、女は唇を紫色にして震えていた。少し鰓のはった顔に甘えたような口元。まだ幼さが残っている長い睫の目が、捨てられた子猫のように私を見つめていた。車の中では生意気な不良娘だと思っていたのに、なんと寂しそうな目なんだろう。
「そんなもん着てると風邪引くで。すぐ風呂沸かしたるからな」
 バスタオルを女に投げかけ、石油ストーブに火をつけた。浴室に飛び込み、浴槽に湯を張った。
「名前はなんというの?」
「えみ、かたかなでエミ」
「じゃあ、エミ。はよ服を脱いで風呂に入れよ」
 エミはしばらくもじもじしていたが、バスタオルを肩にかけて向こうを向いた。濡れて黒っぽくなった赤いスカートが足元に落ちる。私は彼女が脱ぎ捨てた服を恐る恐る手で摘み、ハンガーにかけて壁に吊した。
 私はゆっくりとお茶を飲んだ。エミを何処へ寝させるか。やはり私のベッドを彼女に譲り、私は隣の部屋に寝なくてはならないだろう。私がその気になれば彼女を抱くことができる。道で拾った女だ。本人もその気でついてきた筈だ。しかし、私は抱かない事に決めた。得体の知れない女を抱いて、あとでどんな災難に巻き込まれるかわからない。女を抱きたければ、もっとふさわしい女を探せばいい。女には不自由はしていない。
 エミはバスタオルを胸から腰に巻いて浴室から出てきた。
「こんなもんしかあらへん。これでも着ときや」
 差し出した男物の下着を受け取ろうとして、胸に巻いたバスタオルがはらりと落ちた。彼女はあわててバスタオルを巻きなおし、ちらりと私を見た。
 バスタオルの合間から見えた彼女は見かけより豊満であった。
「うちのお乳、小さいやろ」
 私はエミからすぐに視線を外らせた。彼女が言うほど小さいとは思わない。
「そんなん見てへんからわからん」
「お乳は小さいのに、お尻だけ大きいんやから嫌になるわ」
 エミは言い訳するように言って、下着をもって隣の部屋に消えた。
 下着を着て部屋に戻ると、彼女は部屋を見回した。
「やっぱり、奥さん、おらへんのやね」
「あたりまえやろ、おったらエミを連れてくるかいな」
 私の笑いにつられて彼女も笑った。
 エミがストーブの側にあぐらをかいて座った。男物のシャツの下からはみ出ている白い肉が目にしみた。
「あかん、目の毒や。これでも着とき」
 私はトレーニングウエアを押し入れから出して彼女の膝に投げた。
 壁の時計は二時を指していた。
「はよ寝な明日の仕事に差し支えるわ」
 私は押し入れから一組の布団を出して隣の部屋に敷いた。
「おれ、こっちで寝るからな」
 エミが不思議そうに私が寝ている部屋をのぞき込んだ。
「なんでそっちで寝るの?」
「まさか、エミとおんなじ布団で寝るわけにはいかんやろ」
「なんで?」
「なんで言うても……。とにかくおれはここで寝るからエミはそっちで寝とき」
「そんなん、いやや」
 私は驚いて布団から身を起した。
「おっちゃん、うちが嫌いか?」
「そんなんと違うっちゅうのに」
「ははあ、わかった」
 エミはバッグを探ってコンドームを取り出した。
「これ使うたらええんやろ」
「あほ!」
 私はコンドームをひったくって放り投げた。
「おまえ、いつもこんなことしてるんか」
 エミは慌ててコンドームを拾い上げ、目を大きく見開いた。私が何故怒鳴ったのか理解できないようだった。
「おっちゃん、セックスは嫌いか」
 エミは私の股間に手を伸ばした。
「うちがちゃんと立たしてあげるで」
 私はその手を払いのけた。
「セックスが嫌いな男はおらへんやろ」
「そんなら何でうちを抱かへんの?」
「エミのような子供を抱くわけにはいかん」
「うち、子供やないのに」
「あかん言うたらあかんのや」
 私は怒鳴った。私の下半身の怒張は我慢の限界に達しようとしていた。
 エミはしばらく私を見つめ、肩を落としてベッドに戻った。その後ろ姿を眺めて、彼女に意地悪をしたような気がして、怒鳴ったことを悔いた。
 エミは、セックスをするのには何の抵抗も感じないのだろう。おそらく、一夜の宿のお礼として私に抱かれようとしたに違いない。彼女が生きるためには、女の最大の武器を有効に使わなければならないのだ。抱かれるのは当然の応礼であり、それを拒否することは彼女の好意を否定することになるのだろうか?
 股間の怒張は脈打っている。
 エミの部屋をそっと覗いてみた。彼女は背を見せて私のベッドに寝ていた。その肩が軽く震えていた。
「エミ」
 私の声に彼女が振り向いた。幼女のような彼女の目に涙が宿っていた。
「コンドームもって、こっちへ来てもええで」
 彼女が勢いよくベッドから下りた。

 翌朝、目が覚めるとコーヒーの匂いが漂っていた。
「朝はパンなんやろ」
 テーブルには焼いた食パンとバターが並んでいる。エミが入れたコーヒーは旨かった。
 彼女はテーブルについた両手に顎を載せて、食事する私を見つめていた。
「おっちゃんはお医者さんなんやね」
 私の本棚に並んでいる医学書を見たらしい。
「そのおっちゃんは止めて欲しいな。おれにも名前があるんやで」
「正木茂夫、そうでしょう」
「そうや、今度から茂夫と呼んでくれ」
「茂夫さんか、それよりお医者さんやから、先生の方がええな」
 先生と呼ばれるのには慣れている。すくなくともおっちゃんと呼ばれるよりは違和感がない。
 私は一万円札五枚とスペアキーをエミに渡した。
「おれ、病院に行くからな。部屋を出るときは鍵をかけて、鍵は郵便受けに入れといてくれよ」
 私が勤めている小さな病院は車で二十分のところにある。
 私は診察しながらエミのことを考えていた。十八才の少女が一人で生きていくとすれば、これからどんな生活になるのだろうか。私の布団に入ってきたエミは、口とは裏腹に動きはまだぎこちなかった。
「セックスは好きか」
 終わったあと私が尋ねた。
「べつに好きな訳やないけど」
「そんなら何でセックスするねん」
「男の子は、うちがセックスしてあげると喜ぶやろ。そやからしてるんや」
「男を喜ばせるためにセックスするんか」
「そうや。男の子が喜んでくれたらうちも嬉しいんや」
 セックスによる繋がりが、エミにとっては唯一の人との絆かもしれない。
 私は百合とのめくるめくようなセックスを思い出した。もし百合と一緒になっていれば、教授コースから外れたにしろ、今頃は博士号をとってどこかの大病院の医長になっているに違いない。子供も一人か二人は居るだろう。一人の女を捨てたことで、私は大切なものを全て失ってしまったと思う。
 夜、勤務を終えてアパートに帰ってきた。鍵でドアを開けようとすると先に中から開いた。エミがお帰りなさいと言った。
「なんや、まだおったんか」
「晩ご飯出来てるよ。それともお風呂を先にする?」
 彼女は若妻のように後ろに廻り、私のコートに手をかけた。
 部屋は暖かく、綺麗に片づいていた。
「今日一日何してた?」
 彼女は手を広げて着ている洋服を見せた。安物のセーターとスカートだった。
「スーパーで着るもの買って、肉と野菜と、他に色々」
「お金足りたんか」
「うち、ぜいたくしてえへんから十分や」
 エミは夢みるように部屋を眺め回した。
「この部屋、ダサイやろ。そやから綺麗に飾ろう思うてるんや」
 食事が済むと流しに立って洗い物をする。その後ろ姿を私はぼんやり眺めていた。
「先生、これ買ってきた」
 流し台から離れて、エミが買物袋から箱の包を出してみせた。
「なんや、これ」
「コンドームや」
「こんな沢山コンドーム買うて、おまえ、ここに居座るつもりか」
「居てもかまへんやろ。うち、行くとこあらへんもん」
 エミは流すような目つきで私を見上げた。この流し目はこれまで何人の男に注がれたことだろう。
 彼女が同居したところで私が困るわけではない。近所には姪が遊びにきているとでも言えばいい。そのうち、飽きがくれば勝手に出て行くに違いない。
「好きなようにしたらええ」
 彼女は喜んで私に抱きついた。
「うちと毎日セックスできるやろ」
 ダッチワイフの代用ではないか。それもいいかもしれない。
「親はおらへんのか」
「おらへん。おってもあんな奴、親やあらへん」
 エミは私から離れて吐き捨てるように言った。なにか事情がありそうだ。
「なんか訳ありやな。言うてみたら」
「言いとうない」
 彼女の表情が固くなった。私は深く聞くことを諦めた。どうせ何時までいるか分からない女である。彼女の事情など私には関係ないことだ。
 日曜日は晴れて暖かい日だった。
「大阪の百貨店に買物に行こうか」
 私がエミを誘った。
「大阪か……」
 彼女は顔を曇らせた。大阪には嫌な思い出があるのかも知れない。
「大阪が嫌やったら京都でもええで」
「京都に行く」
 車は国道一号線を北上した。日曜日は道が空いていた。
 高島屋の婦人服売り場で、エミは服を見て回った。
「先生、お金、大丈夫?」
 気に入ったらしい服の前で私に囁いた。
「大丈夫や。好きなのを買うたらええ」
 彼女は大人びた口ぶりで店員と話をしている。試着室に入ったり出たりしてやっと買う服が決まったようだった。
 その日一日、私はエミのお供をして買物に付き合った。ふと、これが幸せというものかと思った。
 殺風景だった私の部屋が、女の子の部屋のように可愛らしく模様替えされた。エミは掃除、洗濯、買物が終わると、食事の支度をする。暇な時にはテレビをみたり、私の書棚から小説を取り出して読んでいるようだった。
 十八才の少女と中年に差しかかった男と共通の話題はあまりない。エミは私が帰ると、昼間見たテレビの話、読んだ小説の感想などを思いつくままに話した。
 私は多少うんざりしながらそれを聞く。
「おれと居ても退屈やろ」
 ふともらした言葉に、エミはぎょっとしたように私を見た。
「うち、居たらあかんの?」
「そんなことない。こんなおっちゃんと一緒やったら退屈かな思うただけや」
「うち、先生と一緒に居るだけでええんや。退屈やあらへん」
 彼女は私の下半身に目を止めた。
「夜、抱くのしんどかったら抱いてくれんでもええんや。うち、セックスせんかて平気や」
 彼女が毎晩私に抱かれるのは、男は女を抱いて喜ぶと信じているからであろう。私への奉仕である。彼女にとって、私との繋がりは抱き合うことだけかも知れない。
 エミのセックスは未熟であった。一方的な男の放出だけがセックスと思っていたようである。私は面白半分に彼女の性感帯を愛撫してみた。彼女の反応に変化が見られるようになり、興奮した体が上気する。彼女の存在は私の生活の一部に同化していた。

 三ケ月経って春になった。
 私が帰るとエミの姿が見えなかった。不吉な予感が走った。慌てて郵便受けを覗いてみた。彼女に渡したスペアキーはそこには無かった。スペアキーを持って出たということは帰って来るつもりだろう。
 いつも金を入れておく引出しを開けてみた。五万円が無くなっている。この引出しには、いつも五万円になるように、彼女が使った額を補って入れてある。
 なにか大きい買物でもするつもりだったのか。それとも……。
 タンスを開けてみた。私がエミに買ってやった服やエミの持ち物が消えていた。彼女を拾った夜に着ていた洋服だけが片隅に残されていた。私はその意味を考えてみた。不安が大波のように押し寄せてきた。間違いない。彼女は私を捨てて出て行ったのだ。
 なぜ?
私との生活に飽きがきたのだろうか? 私とのセックスでは満足できなかったのか? そんな筈はない。未熟な彼女の官能を開発したのは私だ。
 エミの居ない空間は虚ろだった。セックスだけの女と思っていたのに、居なくなってからのこの空虚さは何だろう。
 翌日、早めに仕事を切り上げて帰ってみた。やはり部屋は虚ろだった。何か手がかりがないかと何度もタンスや押し入れを開けてみた。押し入れからこぼれ落ちたエミの小さなショーツを手にして、私は呆然と立ちすくんだ。
 翌日から京都の夜の盛り場を、エミを求めてさまよい歩いた。彼女のような女の子がたむろしそうなところを探して回った。
 新京極の人混みの中でエミを見つけた。茶髪の男に肩を抱かれて歩いている髪の長い女。足を運ぶ度に伸縮する尻の動き。胸が高鳴った。私は足を早めて二人を振り返った。
「なんか用か」
茶髪の男が白い目を向けた。女も見上げて変なおやじと吐き捨てるように言った。
 私はその場にしゃがみ込んだ。エミではなかった落胆と、こんな男と一緒にいたのがエミではなかった安堵感とが入り交じって、しばらく胸苦しさが治まるのを待たねばならなかった。
 京都から大阪へ。また京都へ。私は憑かれたように盛り場をさまよい歩いた。何度かエミに似た女を見かけたがすべて人違いであった。彼女はどこへ行ったのだろう。また以前の生活に戻ったのだろうか。若い男に組敷かれて、エミは声をあげているのだろうか。
 エミが消えてからの一ケ月、何をする気力もなく、ただ彼女を待ち続けた。
 探し疲れてエミを待つことを止めた。彼女は、はぐれ鳥のように何処かへ飛んで行ってしまったのだ。
 エミが消えて二ケ月経った。
急患の処置に追われて、アパートに帰った時は深夜になっていた。ドアを開けると光が目を刺し、エミがタックルするように体をぶっつけてきた。
「ごめんなさい」
 私の胸に顔を埋めて彼女の声がくぐもった。私は彼女をかかえあげてベッドまで運んだ。もう二度と逃げ出さないように彼女の体を抱きしめ、その重さで現実であることを確かめた。はぐれ鳥は古巣に戻ってきたのだ。
「ごめんなさい」
 エミは口の中で何度も繰り返した。ハンカチで彼女の涙を拭いてやる。彼女がやっと微笑んだ。彼女は少し痩せたようだった。そのせいか以前に比べて大人びて見える。
「うち、帰ってきたんや」
「わかってる」
「怒らへんの?」
「怒ってる」
「やっぱり、でも、帰ってきてもええんやろ?」
「あたりまえや。帰って来るのを待ってたんや」
「先生」
 エミはじっと私の顔を見つめた。
「うちが何処へ行ってたか、何をしてたか聞かへんの?」
「聞かんかてかまへん。エミが帰っただけでええんや」
「うち、聞いて欲しい」
「なぜ? 話そうとしなかったのに」
「先生にだけは聞いて欲しい。うちの本当の姿を知ってほしいんや。それでうちが嫌いになったら、黙って出て行く」
 聞かなくても想像はつく。エミのような少女が家出をして、一人で生きていくためにはどんなことをしてきたのか。私には彼女を責めることはできない。
「気がすむまで話したらええ」
 エミは体を乗り出すように話し始めた。
「うちなあ、家に行ってたんや」
「何処の家や」
「お母ちゃんの家。大阪の住吉にある」
「家に帰ってたんか」
「帰ったんと違う。行ってきただけや」
 エミは自分の家に帰ったとは言わず、行っていたと言ったのだ。
 エミが小学生のころ、両親は離婚した。父親が女を作ってエミと母親を捨てて家出したからである。母親はスナックに勤めた。夜遅く男を連れて帰宅することが多くなった。時には違う男のこともある。夜中に目が覚めると、母親の悲鳴のような声が聞こえた。襖を細めに開けて見た光景をエミは忘れることができなかった。男の下で母親の体がのたうっている。
「お母ちゃんをいじめたらあかん」
 エミは男にむしゃぶりついた。
「あほ、あっちへいけ」
 男はエミを突き飛ばした。
「エミ、こっちへきたらあかん」
 母親も白けた顔で言った。
 エミが中学に入ると、母と男のしていることの意味が理解できた。母が男を連れて帰った夜は、耳をふさぐようにして布団をかぶって寝た。
 まもなく、母親はエミを連れて再婚した。母親にも新しい父親にも、エミはじゃまな存在であった。昼間から義父と母が睦みあうときはお金を握らされてアパートから追い出された。義父はエミが高校に入ると好色の目で見るようになった。
 夏の午後だった。母の留守のときに義父がエミを呼んだ。
「ええ尻してるな」
 義父は好色そうに舌を舐め、いきなりエミの腰に手を伸ばした。やにくさい口臭が迫ってくる。彼女はその手から逃れようとした。男の力は強かった。彼女は組み敷かれ、下着を剥がれた。
「やめて」
 エミは犯されている間中叫んだ。
「誰にも言うたらあかんぞ」
 終わると義父はすごい目でエミを睨みつけた。凶悪な殺人犯の目だと思った。
 母親に言うこともできず、何度か義父の言いままになるしかなかった。
 エミは何とかして家を出たいと思った。
 ある日、繁華街をうろついているとき、中年の男に呼び止められた。
「映画に出てみる気はないか」
 エミは耳を疑って男を見た。崩れた感じの顔色がくすんだ風采の上がらない男であるが、映画関係者はこんなものかと思った。
「うちでも映画に出られるの?」
 映画に出るなら女優ではないか。エミが興味を持ったのは当然である。
「ちょっと裸になって貰うけどな」
「裸ってヌードのこと?」
「そうや。ヌードになってちょっと演技もしてもらうけどな」
 連れていかれたのは、民家の一部屋であった。
 そこに敷かれた布団の上で、裸の若い男とセックスするのである。それがAVビデオであることを始めて知らされた。
「出演料は三十万や」
 義父に犯されて以来、義父とのセックスの経験は何度もある。
「顔を映すのは嫌やで」
「顔は男だけでお前は映らんようにするから」
 性器の交接部をアップで映し、色々の体位を取らされた。
「よがり声をださんかい」
 ビデオカメラを回していた男が言った。
「よがり声ってなんや」
「気持ちいい時に出す声や」
 エミは母が男の下で出していた悲鳴のような声を思い出した。セックスをしてなぜあんな声が出るのか、セックスをする度に不思議に思っていた。ちっとも気持ちいいことは無いのに。こうしてエミはいかがわしい裏ビデオに時々出演して金を貰うようになった。これを期に彼女は学校を止めて家を出た。
 まもなく、スタジオが摘発され、AV女優の職を失った。家出した少女の辿る道は決まっている。男をナンパしては一夜の宿を得るという生活が続いていた。私に拾われたのは、相手の男と口論して逃げだした時であった。
 エミを拾ったときはとんだ不良娘だと思っていたが、彼女は自分なりに精一杯生きていたのだと思う。家庭の温かみと親の愛情を知らぬ彼女にとって、私との生活は始めて経験した平穏なものだったのだろう。
「そんならなんでおれのところから逃げ出したんや」
「先生と暮らして、家族って良いなあと思うたんや」
 子供のころの団欒を思い出して、母親の家に帰ってみた。もう一度母親と家族として生活して見たかったのだ。
「でもやっぱりあかんかった。あいつは獣や。うちの体ばっかり狙うてるんや。お母ちゃんも、それに気がついてるのに知らん顔や。あいつに捨てられるのが怖いんやろう。お母ちゃんは優しかったのに、あいつと一緒になって人が変わってしもうたんや」
 エミは唇を噛んで涙を浮かべた。
「うち、あの家からまた逃げだしてきた。もう死んでもあの家には帰らへん。うちが居るとこ、ここしかあらへん。うち、先生が好きなんや」
 どんな理由があろうとも、子供を捨てる母親は許せなかった。家族を失った子供の悲しみを私は知っている。
「ええがな。いつまで居ってもかまへんで。エミの気持ちはようわかる」
「こんなうちでも嫌いにならへんの」
「あたりまえや」
 エミはふーとため息をついた。
「やっぱり、先生がいちばんええわ」
「なにがええねん?」
「セックスや」
「誰かとセックスしたんか」
 当然だろう。ここに帰ってくるまでエミの生活の糧はセックスしかない。
「ごめん。うち、先生でないとあかんのがわかったんや。そやから戻ってきた」
 エミは首をすくめた。彼女が誰かとセックスをしたとしてもそれを責めることはできない。
「あんまり、誰彼なしにやってると病気を貰うからな」
 わかってると彼女は呟いた。
 エミを風呂に入れ、やっと部屋に温かさが戻ったような気がした。
「先生には家族居ないの?」
「家族か」
 私は天井を見上げた。
 私には家族がいたといえるのだろうか。もの心ついてから親に優しくされた記憶がない。
 小学校のころ、父が片手間にやっていた百姓仕事は、私だけが手伝わされた。冬の寒風の中で鍬をふるう。中国地方の山地の寒さは厳しかった。手は凍瘡で腫れ上がった。日暮れて家に帰ると一つ違いの弟はコタツで本を読んでいた。私ばかりがきつい労働をさせられるのは、私は体が丈夫で、弟は病気がちだからと思っていた。私は弟が憎らしくなり、ある日弟を連れだして公園に置き去りにした。弟は私を捜して歩き回った。兄ちゃん、と呼ぶ声が悲鳴に変わった。私は物陰からそれを眺めてほくそ笑んだ。夜遅く、弟は近所の人に連れられて帰ってきた。ものも言えないくらい消耗した姿をみてざまをみろと思った。弟を置き去りにしたことがばれて、私は散々殴られたうえに物置でまる一日を過ごさなければならなかった。
 中学の終わりが近づき、進学の季節になった。教師は私の成績を見てR学園をすすめた。R学園は進学校として有名な難関校である。家から遠く離れており、下宿しなければならない。
「R学園じゃと? 何様じゃ思うとるんじゃ」
 私の成績を喜ぶどころか、私立のR学園などとんでもないと父ははき捨てるように言った。
 私は近くの公立高校に進学した。
 弟と違って、私にだけ親が辛く当たるのは、実の子ではないからだと知ったのは、高校に入学した時であった。本当の両親は子供の頃死んで、叔父の家で育てられたのだった。私は両親の顔を知らない。それほど裕福ではない叔父一家には、私は余計なお荷物だったに違いない。
 高校に入って間もなく、私は不良学生の喧嘩に巻き込まれた。警察から私を請け出してくれたのは担任の宮下教諭だった。宮下教諭は私がR学園ではなく、この公立高校に入ったいきさつを知っていた。
「正木君。君は医学部に行きなさい」
 宮下は、医学部に進んで医師になりたかったが、医学部の難関を突破しきれずに、何度か挑戦したあげく教育学部に転向したのである。
「医学部なら、親がなくても就職が不利になることはない。実力しだいだからな。君なら医学部に入れる。本校から医学部に入ったら、本校の名誉にもなることだ」
 私がグレずに真っ当な道を進むことができたのは宮下教諭のお陰である。
 叔父の家から出るために、私は必死で勉強し、難関と言われる国立大学の医学部を目指した。一流の高校に行かして貰えないなら、実力で一流の大学に入ってやる。有名な医学者になって、叔父を見返してやると決心した。この目的の為に私は手段を選ばなかった。家族の団欒はもとよりなきに等しかったが、友人との交流すら絶ってひたすら受験勉強に没頭した。誰も信用しない。誰も頼らない。頼れるのは自分の力だけだ。こうして私は最難関といわれる大学の医学部に合格した。
 大学に入っても生活は苦しかった。育英会の奨学資金と、宮下の骨折りで県人会の奨学資金を貰うことができて何とか生活のめどが立った。
 そのうち、未亡人の家に下宿し、週に一、二回、女主人のお相手をすることで下宿代を只にして貰った。男めかけの生活も恥ずかしいとは思わなかった。こうして、卒業後は大学院にまで進んだ。大学院を終了すれば、助手、講師という道が待っている。すべては計画通りに運ぶはずだったのだ。

 大学を去って、今では小さな病院の医者をしている。かっての同僚が助教授や講師として各地の大学で活躍しているのに、博士号もなく、ひっそりと町医者をしている私は負け犬であった。百合を捨てた瞬間から栄光と安らぎを失った。百合が自殺未遂をしないですんなりと身を引いてくれさえしたら‥‥。
 そんな私がエミを責めることができるだろうか。
「おれかて人生の負け犬や」
「でもね、先生はお医者さんやろ。病気で苦しんでる人を助けるのが仕事やんか。うち、先生は素敵やと思う」
 エミはうっとりとしたように私を見上げた。
 私がどんな思いで高校や大学で勉強したかは彼女にはわからない。でも、彼女の言うことは正しい。私は本当に負け犬なのか。
 家族か、と私は呟いた。ついぞ思っても見なかった言葉だった。
「寝よう」
 私はエミに声をかけた。
 彼女がコンドームを持ってきた。
「そんなもん、いらんで」
「なんで?」
 彼女は不安そうに私とコンドームを見比べた。
「そんなもん使うたら、おれの子供、生まれへんやないか」
 彼女がくしゃくしゃに顔を歪めて私の胸に飛び込んで来た。

 五月の連休が終わった日曜日、私とエミは枚方公園の大観覧車の上に居た。
「すごい高いとこやね。何メートルあるんやろ」
 彼女はこわごわ観覧車の窓から見下ろす。北を見ると、大和川、宇治川、桂川が淀川の大きい流れに合流している。
「地上八十メートルと書いてあったな」
「八十メートル」
 エミが呟いた。
「ここから落ちたら一遍に死ぬやろな」
「自殺しよう思うてもあかんで。第一、この窓から出られへんからな」
 エミは窓に手をかけて揺さぶった。
「やっぱりあかんね」
「そらそうや。落ちたら大変やからな」
「うち、死にたい」
 下を向いたままエミが口走った。
 私は彼女の顔を見た。その顔は寂しげに沈んでいた。何が彼女を悲しませたのか。
「なんで死にたいねん?」
「うち、こんな女やろ。先生とは不釣合いの女や。先生と居たかて、いつかは捨てられる。それやったら捨てられる前に死にたい」
 突然、百合の顔がエミに重なった。私が百合を捨てたとき、百合はどんな気持ちで薬を飲んだのだろうか。エミの言葉は百合が言わせたのではなかろうか。
「あほなこと言うたらあかん」
 私は怒鳴った。
「おれはエミを捨てたりせえへん。エミはおれの大事な人や」
「ほんまか。先生」
「ほんまや。エミはおれの子供生んでくれるやろ。おれのたった一人の家族やないか。あの川を見てみい。三本が集まって一本の淀川になってるやろ。左がおれ、右がエミ。真ん中が生まれてくる子供や」
 エミが振り返って川を眺めた。
「うち、はよう先生の子供、生みたい」
「すぐ生まれる。エミは若いし、おれかてまだ若い」
 私は観覧車が下りるまでエミを胸に抱きしめて、呪文のようにこの言葉を繰り返した。

                  終わり

拾った女

執筆の狙い

作者 大丘 忍
p1611005-ipngn200303osakachuo.osaka.ocn.ne.jp

いつもと同じように、近未来でもなく、男女を描いた平凡な小説です。

コメント

松岡修子
18.252.149.210.rev.vmobile.jp

ツッコミどころは多々ありましたが最後まで読めました。
 人を愛することができず、避妊も適当で無責任な男が女を孕ませ堕胎を強いて自殺未遂させた。反省の日々を送っていた主人公は紆余曲折を経て、ようやく人を愛する事ができるようになった。
 もしくは、人を愛することができず、避妊も適当で無責任な男が女を孕ませ堕胎を強いて自殺未遂させた。反省することもなく独身の日々を送っていた主人公だが、紆余曲折を経てようやく人を愛する事ができるようになり、そこで初めてかつて自分が犯した罪の深さに気付いて深く反省した。
 こういう話の展開なら共感できますが、御作には共感できませんでした。

大阪弁のセリフがところどころ変です。

>「大阪へ行くんやろ。乗せてんか」
 語尾に「てんか」を使うという事は、かなりコテコテの大阪弁の使い手です。その場合、ほとんど助詞を使いません。ですから、
「大阪行くんやろ。乗せてんか」
とするのが普通です。

>「そのおっちゃんは、やめてくれんかな。おれ、まだ三十五やで」
「やめてくれへんかな」が普通です。

>「何もして【え】へん」
>「こんな時間に雨に濡れて、何もして【え】へんことないやろ」
 このように「え」を入れません。

>「おっちゃん、奥さんいるの?」
 彼女はコテコテなので、
「奥さんおるん?」「奥さんいてんの?」とするのが普通です。

>「うち、おっちゃんと気が合いそうやな」
 コテコテなので助詞を落として、
「うち、おっちゃんと気ぃ合いそうやな」となります。

>私はまた自嘲した。
 これより前に自嘲している必要がありますが、自嘲してません。

>私が夜遅く看護師詰所でカルテの【記載】をしていると百合が声をかけてきた。
 記入

>一応避妊には気をつけていた。荻野式で排卵日を計算して、危険日は避けていた筈である。
 オギノ式は避妊法ではありません。効率よく妊娠する方法です。医学部卒でこんなお粗末なことをしているなら、彼の将来は藪医者ですね。

>「ではどうして?」
 感情的になっているときの話し言葉として不自然

>「そうか、おれがやさしく見えるか?」
 表記揺れ。優しくは漢字に

>私は怒鳴った。私の下半身の怒張は我慢の限界に達しようとしていた。
 腹は立つわ、息子は立つわ(爆) 最高です。

>「うち、ぜいたくして【え】へんから十分や」

>十八才の少女が一人で生きていくとすれば、これからどんな生活になるのだろうか。私の布団に入ってきたエミは、口とは裏腹に動きはまだぎこちなかった。
 この二文は続けずに改行するか、二文めの行頭に「昨夜、」を挿入。

>「なぜ? 話そうとしなかったのに」
 
関西人の話し言葉として不自然

>終わると義父は【すごい目で】エミを睨みつけた。凶悪な殺人犯の目だと思った。
 一人称小説なのに視点がエミ視点になってしまってます。

>母親に言うこともできず、何度か義父の【言いまま】になるしかなかった。

>一流の高校に行か【し】て貰えないなら、実力で一流の大学に入ってやる。
 地の文なのに訛ってます。

>百合が自殺未遂をしないですんなりと身を引いてくれさえしたら‥‥。
 反省してなかったんですか⁉ 加害者のくせに被害者ぶって最低ですね。

>彼女がコンドームを持ってきた。
「そんなもん、いらんで」
 セックスよりも性病検査が先です。医者のくせにそんな物の道理もわきまえないなんて理解不能です。ここは「なんでやねん!」とツッコんで笑うところでしたか? 私は笑えず途方に暮れてしまいました。

大丘 忍
p1611005-ipngn200303osakachuo.osaka.ocn.ne.jp

松岡修子様

早速読んで頂き、多くの突っ込みどころをご指摘いただいて有難うございます。

大阪弁のことですが、いわゆる方言と言うものは実に複雑なものですね。

私は18歳(高校卒業まで)広島県東部で育ち、ネイティブの広島弁でしたが、大学入学か
ら京都に10年間(関西弁)、その後3年間高知(高知弁は覚えず)、10年間奈良(関西弁)、それ以後現在まで60数年間大阪府下に住んでおりますから、日常の生活では関西弁
(大阪弁)で話しておりますが、ネイティブの大阪人ではありませんので、広島弁(アクセ
ントで広島出身がわかるらしい)の混じった大阪弁もどきであると思っております。

さて、小説に方言を使う場合に、純粋の方言ではなく、方言もどきにするべきだと聞いたこ
とがあります。純粋の方言では他地方の読者には通じない、又はそのニュアンスが伝わらな
い事があるのが理由のようですね。というわけで、私はネイティブ(純粋の)の大阪弁は知
りませんし、先に述べた理由から、大阪弁もどきで書きました。

話の展開は、

> 人を愛することができず、避妊も適当で無責任な男が女を孕ませ堕胎を強いて自殺未遂させた。反省の日々を送っていた主人公は紆余曲折を経て、ようやく人を愛する事ができるようになった。
 の方のつもりでした。

 小説では、この意図に共感できなかったそうで、その点は再度反省したいと思います。

>終わると義父は【すごい目で】エミを睨みつけた。凶悪な殺人犯の目だと思った。
 一人称小説なのに視点がエミ視点になってしまってます。

 これは地の文ですが、エミの話ですから視点はエミにしました。

>一流の高校に行か【し】て貰えないなら、実力で一流の大学に入ってやる。
 地の文なのに訛ってます。

 これは広島出身者の思いですから広島弁が混じっております。

コンドームを使う理由は避妊と性病予防ですが、どちらが主たる目的は相手によりますね。
慣れている特定の相手であれば使用目的は性病予防より避妊に限定されます。エミの場合は避妊のつもりで持ってきたと考えて良いでしょう。

突っ込みどころは色々ありますが最後まで読んで頂き、詳細な感想を有難うございました。

松岡修子
139.204.49.163.rev.vmobile.jp

>純粋の方言では他地方の読者には通じない、又はそのニュアンスが伝わらない事がある
 おっしゃるとおりです。特に青森弁や沖縄弁をそのまま書かれてもわかりませんね。ですが、大阪弁は全国的によく知られている方言です。上方芸人は他の地方の人に忖度して大阪弁を使うのを差し控えたりしません。それでもちゃんと通じています。
 だから小説でもそのまま使えば良いのです。でたらめな大阪弁を使うべきではありません。読んでてシラケます。大阪弁ユーザーに不快感を与えます。登場人物にコテコテの大阪弁を使わせておいてでたらめな大阪弁を使うべきではありません。何も知らない読者に、『これが本場の大阪弁なんだ……』 と誤解を与えてしまいます。大迷惑です。

>話の展開は、
>>人を愛することができず、避妊も適当で無責任な男が女を孕ませ堕胎を強いて自殺未遂させた。反省の日々を送っていた主人公は紆余曲折を経て、ようやく人を愛する事ができるようになった。
>の方のつもりでした。

 そうなってませんよ?

>大学を去って、今では小さな病院の医者をしている。かっての同僚が助教授や講師として各地の大学で活躍しているのに、博士号もなく、ひっそりと町医者をしている私は負け犬であった。百合を捨てた瞬間から栄光と安らぎを失った。百合が自殺未遂をしないですんなりと身を引いてくれさえしたら‥‥。

 主人公は反省の日々を送ってませんでした。自分が加害者のくせに、『自分は博士号を取れなかった、出世できなかった、栄光と安らぎを失った。それは百合のせいだ』と被害者に対し恨みを抱いてました。最低です。

>小説では、この意図に共感できなかったそうで
 違います。「こういう展開なら共感できます」と書きました。ですが御作はそうなってません。だから共感できなかったのです。

>>一人称小説なのに視点が(非主人公の)エミ視点になってしまってます。
>これは地の文ですが、エミの話ですから視点はエミにしました。
 だからダメなんです。

>エミの場合は避妊のつもりで(コンドームを)持ってきたと考えて良いでしょう。
 私はそんな話をしているのではありません。エミは不特定多数の男に売春しているのだから、STDに罹患している可能性は大です。『売春する際にコンドームを使っているならSTDには感染しない』とでも思ってるんですか?
 主人公はそんなエミとコンドームなしでセックスしてる場合ではありません。先に性病検査を受けさせるべきだと言ってるのです。主人公は医者のくせに馬鹿なんですね。呆れます。

大丘 忍
p1611005-ipngn200303osakachuo.osaka.ocn.ne.jp

松岡修子様

お言葉を返すようですが、私はネイテイブの大阪人ではありませんが大阪府下には数十年暮らしており、話す言葉もいわゆる関西弁が主となっております。この小説で使っている関西弁です。小説の主人公も広島県出身ですから私と同じですね。従って、厳密な、ネイティブな大阪弁でなくても差し支えない、というよりそのほうが自然であると思いますね。

松岡修子
57.210.49.163.rev.vmobile.jp

 地方出身の主人公のセリフならその旨を冒頭で書けば差し支えありません。では、エミのセリフをどう説明するんですか? いかにも生粋の大阪人みたいなコテコテの大阪弁「てんか」を使わせてますけど、でたらめですよね。「実はエミも地方出身でした〜」とでも言い訳しますか?
 ここで言い訳せずに、本文に書きましょう。「うちはほんまは地方の出身やねん。だから大阪弁も結構でたらめなんよ」とでも。

 で、私の指摘した矛盾についてはどう答えるんですか? あなたは「主人公は反省の日々を送っていた」と主張しましたが、それは事実ではありませんよ? 主人公は加害者のくせに反省せず、被害者の百合を逆恨みしてました。

 医学的知識に乏しい素人の貴方の失敗談(オギノ式で避妊に失敗、売春婦に生挿入)ならともかく、この主人公は医者という設定ですよね? こんな馬鹿な医者がどこにいますか? リアリティーゼロです。
 あなたはもしかして中学生か高校生ですか? 性の知識に乏しすぎますよ。大人ぶって背伸びしてこんなエロ小説なんか書いてないで、まともな性知識を学びなさい。

 オギノ式は避妊法などではありません。よって安全日も危険日もありません。強いて言うなら、生挿入しなかった日が安全日、生挿入した日はすべて危険日です。
 コンドームを使用していても、STDに感染します。どうしても売春婦とセックスしたいなら、必ずコンドームを使いなさい。それでも感染しないとは限りませんよ?
『生挿入したい』といういっときの欲望に負けてHIVにでも感染したらどうするんですか? セックスは愛し合う行為です。身勝手な欲望を満たすための行為ではありません。多分、あなたは童貞なんでしょう。あなたはまだ子供だから、人を愛するという事が理解できていません。ただただ身勝手な『生挿入したい』という欲望を満たしたいだけです。だから主人公に生挿入させがるんです。自分の分身として。

 一体どういう教育を受けたんですか? あなたの親は何をしてたんですか? エロ本ばかり読んで間違いだらけの記事を鵜呑みにして、こんなお粗末な作品を晒して……。親が見たら泣きますよ?
 猛省しなさい。

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松岡さん、あなた何かしら実績の裏付けがあって他人を罵倒しているんだろうね?
大丘氏には大丘氏の世界観があって、他人が口汚く罵るべきではない。誤っていたとしてもだ。

荻野久作博士の「オギノ式」が避妊法だろうとなかろうと、それに基づいた『法王庁の避妊法』って
演劇も書かれたんだから(実際、ローマ法王はコンドーム使用は認めず、オギノ式は認めた)。

「こんな作品、それに書く作者は許せない」ってあなたが思っているのなら、あなたはファシスト
だよ。価値観の多様化なくしては文化は発達しない。

正直言って、松岡さんの書くのは面白くないよ。「消えなさい!」って抜かすだろうけど。

松岡修子
57.210.49.163.rev.vmobile.jp

*さんへ

 何か勘違いしてらっしゃるようですが、私は罵倒などしてませんよ。言いがかりはやめてください。

>荻野久作博士の「オギノ式」が避妊法だろうとなかろうと、それに基づいた『法王庁の避妊法』って演劇も書かれたんだから
 演劇が書かれたらそれがどうかしましたか? この21世紀に正しい避妊法として小説に書いてなんの問題もないとでも言うんですか?
 もしこんな作品が出版されたらバッシングを受けますよ。出版されませんけどね。出版社も馬鹿じゃありませんから。でももし出版されたらネットで大炎上します。主人公が医者という設定を外せば、『ああ、馬鹿なのね』で済むかもしれません。

>(実際、ローマ法王はコンドーム使用は認めず、オギノ式は認めた)。
 法王は医学者でありません。権威を引き合いに出すのはハロー効果と言って、詐欺師が良く使う手法です。卑怯な自分を恥じなさい。

>「こんな作品、それに書く作者は許せない」ってあなたが思っているのなら、あなたはファシストだよ。
 物書きなら整合性のない小説は書くべきではありません。これに関しては、後刻改めて投稿します。

>価値観の多様化なくしては文化は発達しない。
 おっしゃるとおりです。ですがそれはなんの反論にもなってません。整合性のない小説は、小説として低レベルであることに変わりはないからです。詭弁はやめなさい。

>正直言って、松岡さんの書くのは面白くないよ。
 この発言は、私の作品よりも大丘さんの作品の方が面白いと言いたいから書いたんでしょうね。こんな整合性のない作品が面白いなんて、読解力が低いんですね。それともエロシーンが好きなんですか?

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まあ二度と口はさむことはないが、黙ってろキチガイが!
松岡、てめえみたいなきちがいが気に食わねえからコメント残したんだよ!
ひとりで生きやがれ、そしてくたばれ!

松岡修子
57.210.49.163.rev.vmobile.jp

大丘さんと*さんへ

この作品のあらすじ
 人を愛することができず、避妊も適当で無責任な医学部卒の男が女を孕ませ堕胎を強いて自殺未遂させた。男は加害者のくせに反省することもなく、それどころか被害者を逆恨みしかしなかった。虚しい独身の日々を送り、三十代になった男は十代の売春婦の肉体に溺れ、それを愛だと勘違いして売春婦を孕ませようとする。
 この男は医学部卒のくせにオギノ式を信頼できる避妊法であると勘違いしていて、いわゆる危険日に生挿入中出しさえしなければ妊娠しないと思い込んでいたのだ。そして現役の医師であるにも関わらず、コンドームさえ使用していれば性感染症に感染することはないと思い込んでいた。
 いつもコンドームを持ち歩いている売春婦だから病気は持ってないだろうと思い込み、その女を孕ませるためになんの性病検査も受けさせることなくコンドームなしのセックスをしたのである。
 そして作者はこの話を感動的なドラマであるかのように締めくくっている。

 まったく荒唐無稽で整合性のない話です。この話を荒唐無稽でなくすには、①主人公が医者という設定を外せば良いのです。お粗末な性知識しか持たない色ボケ男の失敗談にするのです。
 そして整合性のある話にするためには、②感動ドラマではなくピカレスクロマン(悪党小説)にします。エロ小説によくありますね?
 加害者のくせに何も反省することができない頭の悪いサイコパスが、『俺は真実の愛に目覚めた!』と勘違いして感動し、売春婦に生挿入。女が妊娠して病院に行くとHIVに感染していたことが発覚。
 男、ブチ切れて女を階段から突き落として流産させ、そのまま捨てる。ヤケクソになった男は次々と売春婦を買っては生挿入中出しを繰り返す。地獄への道連れを一人でも多く作るために。これなら整合性のある小説になります。 

 ③どうしても感動ドラマにしたいなら、女を孕ませ堕胎を強要し自室未遂にまで追い込んだことを深く反省させれば良いのです。『どんなに反省したところで、俺の罪は消えない。俺に幸せになる権利などない』と反省の日々を送らせます。そこで売春婦と出会い、紆余曲折を経て真実の愛に目覚める。『だけど自分には幸せになる権利などない』と悩む。売春婦、「百合さんに会ってちゃんと謝れば? 一緒に謝ってあげるから」と一緒に百合の故郷へ。そこには結婚して子供も生まれて幸せそうな百合の姿。「そろそろ幸せになってもええんとちゃう?」「そうやな」でハッピーエンド。これで整合性のある小説になります。

 私はファシストなどではありませんよ。リアリティーのない荒唐無稽な整合性のない小説が大嫌いなだけなんです。わがままでしょうか? 高望みでしょうか?

松岡修子
57.210.49.163.rev.vmobile.jp

*さんへ

 それを罵倒と言うのです。自己紹介お疲れ様でした。あなたは私を誹謗中傷した罪人です。必ず罪を償いなさい。いつどこで? さあ、いつかどこかで。 どこでしょうね? 楽しみですね。お楽しみに……。

まひる
softbank126141042001.bbtec.net

他の方が指摘している「茂夫視点からエミ視点への変更」の件ですが、私ならエミの過去については節を区切ることで問題を解消します。

具体的には、以下の部分が回想だとわかるように行を空ける、ないしは区切り記号(*など)を付すのはどうだろうか、と思ったしだいです。

「エミが小学生のころ、両親は離婚した。父親が女を作ってエミと母親を捨てて家出したからである。(後略)」から、「まもなく、スタジオが摘発され、AV女優の職を失った。家出した少女の辿る道は決まっている。男をナンパしては一夜の宿を得るという生活が続いていた。(後略)」まで。

この部分が視点変更されていることさえわかれば、何ら問題はないように感じます。
というのも、一人称小説における視点変更がタブーとされるのは、主に以下の理由だと考えているからです。

⑴誰が物語っているのかわかりにくい(読者の混乱を招く)
⑵ 主人公視点が読者と同じになることにより生まれる共感性が薄まる(一人称視点である必要性に疑問符がつく)

回想部分は極めて短いので、⑵は問題にならないと考えます。
いかがでしょうか。



話は変わります。

作品の粗を指摘するだけならまだしも、「キチガイ」や「一体どういう教育を受けたんですか? あなたの親は何をしてたんですか?」とまで書き込むのは、他者への一方的な中傷・誹謗を含むと思います。
(前者は論外として、後者は投稿者とその御両親の教養不足を誹るような意味合い)

利用者間のトラブルに運営が関与しない以上、利用者ひとり一人のモラルが問われます。

もう少し言葉を選んでください。
作品を読みにきただけなのに、目に入ったコチラが不愉快な気持ちになります。

松岡修子
158.71.239.49.rev.vmobile.jp

まひるさんへ 

>「一体どういう教育を受けたんですか? あなたの親は何をしてたんですか?」とまで書き込むのは、他者への一方的な中傷・誹謗を含むと思います。

 これは真摯な質問です。本心からの疑問です。一方的な誹謗中傷などではありません。
 言いがかりはやめなさい。それを一方的な誹謗中傷と言うのです。無礼なことを言うのはやめなさい。ガイドライン違反です。
 あなたのような正義の味方ヅラした人間を、偽善者と言うのです。しっかり自覚しなさい。

>もう少し言葉を選んでください。
作品を読みにきただけなのに、目に入ったコチラが不愉快な気持ちになります。

 言葉に気を付けなさい。無関係な偽善者に口出しされて、こっちが不愉快です。わきまえなさい。

そうげん
121-83-151-235f1.shg1.eonet.ne.jp

すでに仕上がっていてかわいそう>松岡様へ

新人・A
p2990198-ipngn201010osakachuo.osaka.ocn.ne.jp

「拾った女」拝読させて頂きました。

・作品に目を通してみると、艶歌の世界が広がっているように感じられました。
・大阪弁の台詞については、あまり違和感はありませんでした。
・冒頭は品のある文章で良かったと思います。
・冒頭の女・エミ。十八歳の設定になっていますが、現代の十八歳女性のイメージは湧かず、終戦後のパンパン・ガールが浮かびました。しかし後半のエミの情景描写、あるいは心理描写は、わりあい自然に受け止めることができました。
・「エミが小学生のころ、両親は離婚した。父親が女を作ってエミと母親を捨てて家出したからである~私との生活は始めて経験した平穏なものだったのだろう。」のくだりですが、一人称視点からぶれているように感じられます。再考されてみては如何でしょうか。
・小説の構成としては、良くできていると思います。最後まで読める小説でした。ただ、内容については、個々人の好みがありますので、評価には触れないことにします。

コメントを読ませていただきました。ご高齢にもかかわらず、原稿用紙50枚の分量の小説を書くことは、相当な熱意がなければ成し遂げられるものではありません。その行為は、感嘆に値するものだろうと思います。これからも、ご活躍されることを望みます。

大丘 忍
p1611005-ipngn200303osakachuo.osaka.ocn.ne.jp

読者同士の論争の感がありますのでそれには触れません。

エミの過去についての説明が視点のブレと指摘されております。これはエミがエミの過去を語ったのですから、視点はエミにあるのですが、ご指摘のようにこのエミの身の上話は一行空けにしておけば間違うことはなかったですね。

大阪弁については、日常我々が使っている言葉ですから、エミも含めてこれでいいと思いました。方言をあまりきちんと使わないで、語尾だけを方言にして、方言と言う感じを出すことが、ドラマや小説には必要であると教えられたことがありましたので。

新人・A様、読んで頂き感想を有難うございます。ご指摘のエミの18歳の件ですが、私が18歳の頃は戦後間無しですから、最近の18歳とは違うかもしれません。いずれにしても、まだ大人になりきっていない少女時代なのですが、現在では何歳くらいに相当するのでしょうかね。

荻野式理論は、月経周期から排卵日を予測する理論で、本来は避妊のためより妊娠を希望する方のための理論でした。従って、避妊法としてはそれほど確実性が高いわけではありませんが、手軽な避妊法として行われていたことは事実です。

松岡修子
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>語尾だけを方言にして、方言と言う感じを出すことが、ドラマや小説には必要であると教えられたことがありましたので。

 残念ながらそうなってませんよ?


>避妊法としてはそれほど確実性が高いわけではありませんが、手軽な避妊法として行われていたことは事実です。

 それがどうかしましたか? 医学部卒という設定の男が、そんないい加減な避妊法を採用していたことが問題なのです。なぜ採用したかと言うと、生挿入中出ししたかったからです。相手の女性の都合も考えず、『生挿入中出ししたい』という身勝手な欲望を満たそうとしていたからです。
「医は仁術なり」と言います。こんな男がまともな医者になれるはずがありません。
 こんな身勝手な男が、真実の愛に目覚めるわけがありません。生挿入中出ししたいだけのサルです。だからまた売春婦に生挿入中出しという愚行を繰り返しているのです。
この男は何度愚行を犯しても決して反省することができない学習能力のない馬鹿男です。

 これを感動物語に仕上げようとしても無駄です。あらすじを変えたくないなら、医者ではない馬鹿男のピカレスクロマンにするしか方法はないでしょう。
 ピントのボケた反論ばかりするのはやめなさい。反論が反論として成立していません。往生際が悪すぎます。見苦しい。

大丘 忍
p1611005-ipngn200303osakachuo.osaka.ocn.ne.jp

たかが素人小説なのに、なんでこんなにイキリタッテいるのだろう?

松岡修子
237.209.49.163.rev.vmobile.jp

 私は別にいきり立ってなどいません。あなたが物事を正面から捉えようとせず、のらりくらりと論点をずらして自分を正当化しようとしているから説諭してるのです。このようなあなたの態度を【卑怯】と言います。しっかり自覚して猛省しなさい。それとも一生、卑怯者として生きていくつもりですか?

π
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ファシストではない?
そのジブン正しく余人はクズばかりて撲滅せよ、考えはどこから?
あなたは素人でもいずれはプロになるのでしゅ。
文壇でもその態度を続けるね?

御廚年成
M014011161224.v4.enabler.ne.jp

大丘忍 殿

拝読いたしました。
大兄の御健筆を心よりお慶び申し上げます。

さて、御作は心に傷を負う者同士の触れ合いと解釈いたしました。
苦学のはてにエリートの道を断たれた医師と不遇な家庭環境の娘が、セックスを接点としてお互いをよりどころとして結ばれる、人の縁の不思議さを描かれたものと思います。

論議になっている点についてですが

1.方言の表記
  私は東京生まれの東京育ちで、いかにテレビ等で関西弁が伝わってこようが、それを明確にどの地方と認識できません。その為、「ああ、大阪っぽい」であれば十分と思います。

2.コンドームについて
  使用目的は、「避妊」「性感染症の防止」の2点ですから、御作においてその目的がどちらであるかは、主人公の過去から明白でしょう。つまりコンドームは主人公の過去との決別を意味するものと解釈しました。

益も無い事を縷々申し上げましたこと御寛恕下さい。
寒さ厳しき折、何卒御自愛下さい。
大兄の御健勝と御健筆を心より祈念申し上げます。
  

大丘 忍
ntoska043001.oska.nt.ngn2.ppp.infoweb.ne.jp

御廚年成様

 私の意図をきちんと読み取って頂き有り難うございます。

 センター試験の国語の採点ではありませんから、方言の使い方も作者の考え方で決めたらいいと思います。

 貴兄の今後の作品を楽しみにしております。

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