作家でごはん!鍛練場
井原美雨

葬送

「烏瓜がオレンジなのは、夕焼けの色を吸ったからなんだよ」
 幼い頃の記憶。背は家の垣根の半分にも満たない。
幼馴染の藤太くんの表情が夕焼けに焦げ付いて見えなくて怖い。藤太くんは短く刈り上げた髪型で髪で顔が見えないなんてことはなかった。
それなのにどうしたことか、思い出の彼には表情がなかった。
幼い彼は、家の壁を伝う烏瓜をちぎって私に見せつける。私は彼の憂鬱そうにでたらめを吐くその姿が嫌いだった。烏瓜の蔦がぐるぐると縋るように絡まった家の壁。私も一つ、残酷にも引きちぎってみる。
 秋を知らせる烏瓜は、幼い頃から大嫌いだった。季節が移り替わり告げるその色も毒々しいオレンジ色で、まるで何かの危険信号でも知らせているみたいに派手な色。これから来る冬のもの悲しさを告げるように、烏瓜は毒を知らせる。
「嘘つき。色なんか吸い取れるわけないじゃない」
 ちぎった烏瓜から視線を外して、幼馴染の藤太くんに視線を移す。息が荒く、熱に犯されたように頬が赤らんでうざったいような熱さが伝染していた。嫌な熱だ。憂いを帯び、うなされるように私を見ている。
「嘘じゃないよ。試してみる?」
 ぎこちなく頬に添えられた手が、みっともなく震えている。私はそっと彼の瞳を見た。その瞬間、背筋がぞくりと震える。首を舌で這われたようなねっとりとした視線。感じたことのな湿った視線の生々しい感覚が足を震わせる。
その食いちぎられそうな獰猛な目。お腹がすいてたまらないような切ない顔をしているのに……。
そこから、あふれ出ていたのは寂しさだったのが不思議だった。
涙が出るほど誰かを求める切ない色をしている。私は視線を外すようにうつむいて呟く。
「離して」
触れた手が熱くて頬が赤くなる。あてられただけ、相手の熱にあてられただけだよ。何度も言い聞かせた。
「嫌だ」
「はなし……」
思わず顔を上げると、そのままその熱情に犯された瞳に魅入られた。目の奥の感情の熱量に驚き、そして吸い込まれ、頬が染められる。この目怖い、私を食い漁りそうな飢えた目。それなのに、どこかそれを望んでいる自分がいることに気づく。その時、初めて二つの感情が私を包んだ。
 怖い、うれしい。
夕焼けが焦げ付く、頬は烏瓜の色をして皮膚にしみこんでいく。
噛みつくように擦り付けられた唇があまりにも心地よかった。なめらかで、柔くて何度も何度も気が付いたらすり合わせていた。恍惚とした感覚に思わず薄目を開けてしまうけど、その度、怖くなって閉じた。
酷い目だ。真っ暗な顔に目だけぎらついて、重たい感情を押し付けるように飢えた獣が寂しさを私にこすりつけている。その度、赤い熱のような色が私の頬にしみこんで悶えるほどに苦しく、熱くて逃げたいのに、満たされるような感覚にためらった。もう戻れなくなるぐらい恍惚とした心地よさ。
唾液の糸が引く。舌を重ねて内部を舐めあってキスは深くなる。耳の中の血液が駆け巡る音がする。心臓が早鐘のように警告する。
藤太くんは幸せそうに笑って言った。
「知ってた? 俺、絵菜のこと好きなんだ」

藤太くんには口癖がある。
「誰にも愛されないから、絵菜ちゃんだけは俺を好きになってね」
 それは呪いのように私に染みついて、愛さなくはいけない人という重たい認識を私に受け付けたのに、それが逆に辛く圧し掛かって、一番嫌いな人になってしまったようだ。
 藤太くんには家族らしい人がいない。ご両親はお医者さんをしているみたいだけど、藤太くんのお母さんの親友である私の母に預け切りで、17年間一緒に住んでいるけど、ご両親に会ったことは一度だってない。
「俺、この家の子じゃないんだっけ?」
 幼い頃、突然言われたことを私は当然のことなのに、何を言っているんだと思った。
「藤太くんはこの家の子じゃないけど、だからどうしたの?」
 仲が良ければそれでいい。稚拙な考えだ。私のバカな脳はデリケートな問題を簡単に口にしてしまう。
「絵菜と藤太くんは仲良しだよ。家族ってそんなに大事なの? 仲良しじゃない家族と一緒にいて幸せなの? そんなの絵菜は寂しいから嫌だよ」
 無神経なことを延々と口にして、私は言うのだ。
「仲良しなら幸せだ」だって。
 藤太くんは泣いた。その寂しさに私は延々と気づかず、頭を撫ぜてあげることしかできなかった。執着と欲が彼を蝕んだのはそれからだったと思う。
 彼は変わっていった。私がいなくなることを極端に怖がるようになった。
 私は彼と一緒にいると一語一句見張られているような緊張で冷や汗が出る。望むことを言わないと失望を露わにする瞳が嫌悪感という針を刺し、心をさらに痛がりにさせる。苦痛でしかない。そんな時間に変わり、彼を心から拒絶してしまうようになった。

「園崎先輩、今日は加奈子いないのにお邪魔しちゃってごめんなさい」
 私は友達の加奈子と文芸部でお昼を食べる。加奈子は文芸部員で、一緒に食事をしたいからと無理を言って、部外者である私も部室で食事をとらせていただいている。彼と四六時中一緒にいるなんて考えられなかった。それが唯一自分にとっての安らぎの時間だったから。
 部長の園崎硝子先輩は、雰囲気が柔らかく、それでいてミステリアスな人で、何を言っても冗談にも本当にも感じてしまうような、そんな不思議な人だった。
「木本さんはどうしてこの部室に来るの?」
 彼女が卵焼きをほうばりながら言う言葉の意図を、一瞬考えて、生唾を飲み込んだ。園崎先輩に映る瞳の色は優しいままだけれど、その言葉の意図が私の心臓を射抜くように、息を忘れさせてしまった。
ドライフラワーのような人だ。人柄の輪郭が冷たく固まって心がのぞけない。表情さえ嘘なのがわかりきっているのに、彼女は乾いた花。
 美しさ以外を相手に見せない。それさえも魅力にする魔性を持っている。
「……ここにいてはいけないと、言うことでしょうか?」
 緑に着せられた黒髪は艶やかに私の視線を奪う。サラサラの長い髪を耳にかけてこちらを見て言う。
 人を食ったような笑顔で。
「逃げてるんでしょ?」
 底の見えないその不確かさの意図がぶれる。それは、彼の事だろうか? 見つめあったまま、先輩はおどけたように笑うが、その目は笑っていない。
「彼氏さんのこと怖いんでしょう?」
 輪郭がくっきりとした言葉だ。それは凛とした優しさを含み、発せられている。
「……はい。でも、どうして?」
「木本さんがお気に入りだから、見てたの。大変ね」
 園崎先輩は窓を開けた。夏の熱の冷めた匂いが秋を知らせている。紅葉はまだでもやってくるのだ。私の嫌いな秋が。
 園崎先輩は私の頬に手を当てる。細めたその目が、張りぼての笑顔が、それでも何故だかひどく安らいだ。きっとそれは彼女の小説を読んだことがあるからだろう。
 彼女の小説は寂しさの中に泣きたくなるほどの優しさがあふれている。世界は冷たくない。冷たいのは感じる方。世界を拒絶する自分の方だとそういうメッセージを感じた。
 だからこの人の中にあるものが温かいものだと信じることができた。
 嘘では繕えないほどの説得力とぬくもりが彼女にはあったのだ。
 その優しく温かな手の感触に、うっと息が詰まり涙が出た。ごめんなさいと無意味に呟きながら、彼女はただ頭を撫ぜてくれた。
「なんで謝るの?」
ふいに言った言葉に私の目が丸くなる。
「……先輩を困らせてしまうから」
 園崎先輩は花が咲いたように笑った。初めて彼女の優しい微笑みをみた。……この人はこんなふうに笑うこともできるんだと無意識に感動してしまった。その初めて見せた微笑みは紛れもなく自分に向けられたものだということに、うれしささえ感じる。
「バカね、私は困ってない。それに……つらいときは泣かないといけないのよ。ちゃんと泣かないと、涙腺は詰まると厄介よ」
 私はさらに目をまん丸にして彼女の笑顔を見て、浮かび上がった疑問を口にする。
「えっ? 涙腺って詰まるんですか?」
 その瞬間、園崎先輩は小さく笑いだした。幸せそうな笑顔で、くすくすと小さく笑う。
「ふふっ。詰まるのよ。だからちゃんと泣かないといけないの。……加奈子がいなくてよかったね」
 目を丸くした私を園崎先輩はふいに抱きしめた。柔らかく細い体にぎゅっと抱きしめられて私の頬は思わず紅潮して、我に返る。
 それは藤太くんとの思い出を、生々しくたどるように思い出していた。気持ち悪く心地のいい二つのアンビバレントな感情を私はすっかり当たり前のように受け入れていた。
 それでも先輩とは違うんだ。
「ねぇ、木本さん。金川藤太と別れたい?」
 それは私にとっての希望のはずなのに、何故か心のどこかが痛むような感覚に陥った。
「……わかりません」
 何とか口にできたのはそれだけの言葉。やけに冷めた風が肌をなでる感覚が生々しく、ざわめく木々の葉が重なる音が耳障りで。
 園崎先輩はまっすぐな瞳で私を射抜く。
「……誰も傷つけない幸せなんて一つだってないわ。あなたは、金川藤太に同情しているんでしょう? だからあなたは動けないんでしょう」
 射抜かれた先輩の瞳に映っているのは、セピア色のような懐かしむ哀しさ。憂鬱になる。その全てが彼と私の結末を告げているようで、見たくないのに覗き込んでしまいそうになる。
「園崎先輩は……なんでそんなことを言うんですか?」
 先輩は悲しく笑うだけだった。答えることもなく、訴えることもしない彼女の意図は読み取れず、私は口をつぐんだ。
 それでも彼女と一緒にいる時間はあまりに穏やかで苦にならず、相手の顔色をうかがうことは何一つなかった。それが楽で居心地よく幸せと呼ぶにはあまりに穏やかで、何と呼んでいいかすらわからない。それでもほのかな明かりのような時間だった。
「先輩はどうして文章を書くんですか?」
 園崎先輩の目は憂鬱に優しく歪んで、笑って見せる。そのあまりに優しい日差しのような表情に魅せられる。綺麗な人だと思う。感情の見せ方、感性の鋭さ、柔らかく心地いい雰囲気も、憂鬱な瞳の歪んだ笑顔でさえも私を包んでくれる。
「私はそれしかできないの」
 不器用さそのものも、彼女の輪郭をなぞる慈雨のように、自らの哀しみさえも優しくつつんでしまうのだ。
放課後になって藤太くんの顔色を窺う時間になった。彼の瞳はいつもように寂しさを私になすり付けるように触れてくる。
手を握るその指のごつごつした感触にさえ背筋が冷たくなる。今日は特に力が強くて指先が震えている。先ほどから歩いている長い銀杏並木の歩道が終わろうとしているというのに、一言も声を発することはない。
 声をかけたほうがいいのか、それともこのまま黙っていた方が楽なのか自分でもわからなかった。それに私には、声をかける勇気もない。このまま、息が止まってしまえばこの苦痛から逃れられるんだろうかと、ふいにそんなことがよぎった。どうしてなんだろう? 昔は大好きだった。それなのに、いつからこんな風になってしまったんだろう。
 私は銀杏の葉をわざと踏んだ。カサカサした音が乾いた葉っぱに亀裂を生み、バラバラになる。
 息を吸い込めば、ピリピリとした空気と一緒に冷たさも感じる。冬が迫ってきている。
「……昔、絵菜言ってたよね。仲良しじゃない人と一緒にいるのは幸せじゃないよって」
 私は突然発せられた藤太くんの声にぎくりとした。体の血が一気に逆流するように心臓が内側を叩く。破られそうな皮膚と骨が痛いぐらいに、藤太くんの言葉が体をめぐるように怖くなる。
「私たちの関係の事?」
 それでも言葉を話すことができたのは開放してもらえるという喜びもあったからだ。
「俺は……絵菜にとっていない方がいい存在?」
「そんなこと!」
 それはほぼ反射だった。同情が愛になればいいと何度も思った。彼に向けるその憐れみが彼にとって望むものに変われば、私たちは一緒にいて幸せだったのかもしれない。
 曖昧な線引き。恋人なのか、違うのか。それはきっと彼の中ではイエスで、私の中ではノーであることがかみ合ってない一因だった。
 視線が泳いだまま消え入りそうな声でいった。
「……そんなことない」
 嘘ついてばっかりだ。どうしてこんなに苦しい関係を続けているのかわからない。終わりたい。終わりたいのに、終われないんだ。
「絵菜は俺のことが好き?」
 目頭が赤く点滅する。動悸がする。身勝手だな。どうしてそんな「いいえ」としか言えないことを言うんだろう。そして求めている言葉は、嘘であるとわかっているのに、どうして嘘を欲しがるのだろう。
 あなたは私に好かれるようなことをしたのか? と問いただしたくなる。
求めるばっかりで疲れさせるばかりで、私から「はい」以外の選択肢をなくさせるくせにどうして?
生まれた反発を押し殺す。そうやっているうちに私は腐っていく。指先からだんだんと腐り落ちていくように自分の本当の気持ちを、何度もかみ砕いてきた。
ねぇ、もう冬になるよ。こんなに寒いのに、心まで寒いのなんか嫌だ。心の中で私が呟いた瞬間、頭の線がぷつんと切れた。
「好きなの?」
「……っ嫌い!」
 初めて口にした本当の言葉。何故だか園崎先輩が頭に浮かんでいた。
 あの人は優しい、あの人は包んでくれる。言葉を待ってくれる。わかってくれる。それなのになんであなたにはそれができないのかと思ったら、言葉が止まらなくなった。
「なんで自分を人質にとるような言い方ばっかりするの? なんで私を自由にしてくれないの? 言葉を待ってくれないの? 私の事好きじゃないのは藤太くんじゃないの?」
 言葉は時折ナイフになる。彼は大きく目を見開いて私の手を引っ張った。
「嫌い! 離して!」
 一度あふれ出した感情は暴走している。私は狂ったように嫌いという言葉を言い続けた。人が少ない場所まで行くと、壁に際に追い込まれて藤太くんは私を見下すように眺めた。
「絵菜が、俺を嫌いなのは知ってたよ」
 凍り付いたように心臓が止まった。その瞳が昔の藤太くんに戻っていた。誰かに自分を押し付けようとするんじゃなく、ただ自分でいっぱいいっぱいになっているときの臆病な目。
「どうしたら好きになってくれるの?」
 縋っている。私に縋りつくようにその大きな体にすっぽりと抱きしめられた。
「絵菜。ずっと一緒にいたいのに。俺も苦しいのに、幸せじゃないのに。ずっと一緒にいたいのはどうしてなんだ? こんなの、報われない……」
 そんなこと私が知るわけがない。
「私の方が報われない!」
 気が付いたら、叫んでいた。
「自分の事ばっかり! 私の幸せなんてどうだっていいんでしょ?」
 夕焼けが深い藍を夕焼けににじませる。藤太くんの顔が見えないのは、涙のせいだけじゃない。
 見えないから言える。言葉にできる。
「私が不幸でもいいの? みんな幸せじゃなくちゃ意味ないよ!」
 焼けつくように闇に食われた藤太くんの表情は何を教えてくれない。黙っている。黙って静かに言った。
「好きってなに? 相手の幸せを祈れなきゃ、好きでもいさせてくれないの?」
 静かに言って私の顔をしっかりとつかんだ。暗闇に食い殺されるように、真っ暗な路地裏でキスをした。
 何も見えないのに、心臓が破裂しそうなほどに高鳴っている。……好きって何だろう?
 唾液と唾液を交わすことになんの意味があるんだろう? 唇をこすり合わせうことに意味なんかあるの?
 それでも心地いいのが悔しくて、いつの間にか応えていた自分にひどく裏切られた気分だ。見えないまま、抱きしめられた。
 このまま闇に殺されてしまって、溶け込んでしまいたいのに鼓動の音が耳障りで、自分の存在を消してまえないよ。
「ねぇ、絵菜。寂しいよ。昔みたいに好きって言って」
 二人とも昔に戻りたいことはきっと嘘じゃない。
 頬を流れる涙が凍り付いた気がした。

 家に帰ると私たちは黙ったまま、同じベッドで眠った。手をぎゅっと握ってそれ以上のことはしなかった。
 夜眠れば、朝にはウィンナーと目玉焼きとあったかいご飯が待っている。私たちはそれだけで幸せだと感じられた。母と藤太くんと食べるご飯はおいしかった。
 いつからだろう? 私にそれ以上を藤太くんが求めるようになったのは、どうして求めてしまうのかわからなかった。応えてしまう自分さえ理解できなかった。
 大人になっていろんな欲が出てきた。きっと恋人にでもならないと二人は一緒にいられないから恋人という関係性を望んでしまうのか?
 理解できないのは私がバカだからなのか?
 薄目を開けて藤太くんをみた。瞳を閉じて眠っているように憑物が落ちたように安心して眠っている。まつ毛に水滴が乗りそうなほど長くて、少し濡れていた。
「……起きてる?」
「起きてる」
 びっくりするほど早い返事に驚いて、少し笑ってしまった。
「狸寝入りしてたんだ」
「……うん。ねぇ、絵菜」
 初めてあだ名じゃない呼ばれ方をして驚いていると、抱きしめられて嗚咽交じりでささやかれた。――大人にならないで。
 抱きしめる力が強くて一瞬ひるんだけれど、私はそっと藤太くんの背中に手を伸ばした。
「私も、なりたくないよ」
 肩が温かい何かで濡れていく。
「こんなに自分勝手な人間になりたかったわけじゃないんだ。きっと俺は絵菜を傷つけたかったわけじゃないんだ。それなのに、どうして自分の事ばっかりなんだろう? どうして俺は好きって気持ちを大事にしてあげられないんだろう」
 泣けなかった。藤太くんはきっと変わってなかったんだと思う。
 悲しかったのは拒絶してしまっていた自分、ただそれだけだった。
「私の何がそんなに好きなの?」
 暗闇の中、わかるのは互いの心臓の鼓動だけ。
「絵菜は、いつも俺の手を引っ張って綺麗なところに連れて行ってくれるんだ。昔からそう。覚えてるかわからないけど、父さんと母さんが家に帰らなくなって誰も頼る人がいなくて、一人で家でお腹を空かせてたら、絵菜が手を引いてこの家に入れてくれた。絵菜にはわかるかな? 寂しくて悲しくてお腹空いて、このまま死んでしまっても悲しんでくれる人さえいないと思った時に、当たり前みたいに手を差し伸べてくれる存在が俺の目にどう映ったか?」
 私は彼の肩をぎゅっと抱きしめた。それは大丈夫の合図だった。
「絵菜はわからないかもしれないけど、それから絵菜はあたたかさをいつもくれた。いつもだよ。寒いって言ったら屈託もなく笑って手を握ってくれる。そこに他意はない。好意さえない。ただそこにあるのは、優しさなんだよ。困らせてしまってからも、俺を傷つけないように守ってくれた。自分を犠牲にしても。言いたいこと我慢しても、守ってくれてるのわかってたんだよ。甘えてごめん。……ずっと俺は絵菜に甘えてきたんだよ」
 涙が出た。なんでこんなに涙が出るのかわからなかった。
 心臓が唸るように鳴る。はっきりいって同情だった。今までこんなに同情だけで藤太くんに優しくしていた。
 けれど初めてうれしいと同時に好きになれる気がした。
「絵菜。もう触らないから。もう甘えないから。だからもう一度だけ好きって言って」
 私はそっと起き上がって彼に覆いかぶさった。
「藤太くん、大丈夫。もう、大丈夫だよ」
 これが恋じゃなくても、ただの同情でも彼が幸せそうに笑ってくれるなら、それでいいとさえ思った。
「さみしくさせないよ。私たち、ずっと一緒にいよう」
 初めて自分から藤太くんにキスをした。
 慰めるように、悲しくないように、彼が泣かないように、祈るようなキスをした。 
 同情が、憐みが誰かを愛する原動力になればいいと思った。誰かを救える愛情になればいいと心から思うしかなかった。
 心が別の人を求めているのを、私は知らないふりをしている。きっと蓋をすればいつか見えなくなるって願いながら。

 昼休みの文芸部で、私は食事をする。先輩は優しく微笑んで迎え入れてくれる。しっとりと湿る雨に濡れた髪をハンカチで抑えている姿さえ、あまりにも幻想的に見えて目を奪われている。
「先輩、なんで濡れてるんですか?」
 加奈子は先輩を心配そうに見つめて聞く。先輩は目を細めて幸せそうに笑って応えて見せる。幸せそうなのに、どこか憂いを帯びていて暗いグラウンドが見える窓のふちに座っている彼女がぼんやりと陰る薄明かりに照らされて、白い肌が青白く光って見えた。
「これ」
そういってスマホに映し出されていたのは、月下美人だった。
「月下美人? 一年に一回しか咲かないって花ですよね」
 先輩はうれしそうに、写真を眺めて頬を染めてうなずいた。珍しく先輩が可愛くみえるぐらい人間らしく幼く見えて綺麗な月下美人を私も覗き込んだ。
 私に気づいた先輩は、そっと私の方にスマホを向けてくれた。湿った髪が艶やかに揺れる。ふんわりとシャンプーの香りが漂って、そのりんごと何かのみずみずしい花の香りにうろたえた。心臓が掴まれるようにドクドクと苦しみにもがいている。それなのに、ちっとも嫌じゃないことが不思議でたまらない。
「木本さん。月下美人の花言葉知ってる?」
 先輩はいつも違う笑顔で私に聞いたけど、私が花言葉なんて知るわけがない。
「花言葉……私はあまり知らなくて」
 そむけた頬から赤くなり、熱をもって腫れるようだ。この腫れた頬を見られたくない。なんだか見透かされそうで怖いと思う。
「花言葉、私結構好きなの。暗号みたいで、でも確かにそこに意味があって素敵でしょ。知られたくないけど知られたいことっていっぱいあるし、そういう気持ちを上手に消化してくれる。だから私は花言葉って好きなの」
 その言葉が水滴のように心に落ちて波紋を起こす。それは隠さなければならない情熱であって、知られてはいけない知られたいこと。
 先輩はゆっくりと優しく微笑んで私を見る。その表情、しぐさ、全てが伝えてくる。先輩の霧雨のような柔く心地いい雰囲気が好きだと。
 霧雨は生ぬるく、優しい春風のようで先輩に愚かしくも私は好意を抱いている。
 好意はどういう好意なのか私は知らないでいる。いいや。知りたくないのだ。これ以上、面倒な感情を持て余すのが怖いんだ。
 私は文芸部での昼食をやめることにした。これ以上、近づくと抑えきれないほどに膨らんでいつか破裂して制御できなくなってしまう。そう思ったから。
 加奈子が委員会で一足早く部室を出たのを見計らって私は先輩に声をかけた。
 湿った先輩の髪からふわりと香るシャンプーがあまりにいい匂いで、頭がくらくらと回る感覚がする。
「ん? なあに」
「あの、えと」
 言葉が出てこなかった。戸惑いを隠せないほど、私は心が揺らいでいる。先輩とはお昼を一緒に食べているだけ、だからこの時間が無くなれば、関わりがなくなってしまう。
 それでいいとわかっているのに、関わりを失くしたくない自分がいる。芳香する匂いがシャンプーだけではないことに気づいている。
 先輩の匂い。先輩の優しい肌の匂い。生唾をごくりと飲み込んだ。
 言いよどむ私を見かねて先輩は優しく私の頭を撫でる。
「……絵菜」
 名前を呼ばれた瞬間、心臓が可哀そうなくらい高鳴った。全身の血が顔に集まって恥ずかしくてたまらない。
「月光美人の花言葉教えてあげる」
 私は赤くなった顔を上げて、先輩を見た瞬間、先輩の顔が目の前に迫って私の唇に何かがふれた。
 先輩は涙で潤んだ瞳を私にまっすぐ向けていった。
「秘めた情熱」
 その瞬間、私の中での理性が飛んだ。ポロポロと零れる涙を止めることもしないで、息を止めて先輩を見ることしかできなかった。
「私、私は……」
「絵菜、あなたが好き」
 唇がわなわなと震えて上手く言葉を口にできなかった。体の震えがこみ上げる。殺していた感情がとめどなくあふれ出して私から言葉を奪う。
 きっと愛情の意味なんかわからなくていい。きっとそれは本能だ。
 彼女の全てを飲み込んで受け入れるその心が好きだ。一つと一つを宝物のように大事に触れるその手が好きだ。でもその好きや好意に意味なんか一つだってない。
 本能が告げるのだ。彼女が必要だと。
「先輩、園崎、先輩」
 彼女の呼び名を何度も告げる。どうしてか息ができなくなる。鼓動が、薄い皮膚に流れる血流の音さえ耳を澄まさなくても聞こえる。まるで毒に犯された人のように助けを求めるように何度も呼ぶ。
「うん……、大丈夫よ。大丈夫なんだよ」
 流れ星のような涙が流れる。それは初めての希望じみた涙だった。
 彼女と私は初めてお互いの肌に触る。頬に添えた手がみっともなく震える。その瞬間、藤太くんとの思い出がよみがえった。
 烏瓜を引きちぎった藤太くんの私を触れる手は、震えていてその熱に浮かされた表情が、彼が抱く私には処理しきれないほどの熱量が、怖かったんだ。
 一瞬、こわばったその表情を園崎先輩は見逃さなかった。
「あなたは金川が怖いのね」
 この声色は張りつめていたのに、どこか脆く泣きそうだった。触れてしまうほど脆くなっていく砂の城のように、彼女は緻密で繊細で、そして壊れやすいことに私はその時初めて気づいた。
「内緒にしよう?」
 先輩はそう言って私の額に触れた。優しく髪をどかしすその指の滑らかさを額ごしに感じて、あまりにその生ぬるい体温が心地よく、私は瞳を閉じた瞬間、額にそっと口づけられた。
 それは初めて感じる優しい感覚で、ふわふわとどこか浮遊しているように足がつかない幸せだった。キスを幸せだと感じたのは初めてだった。
「内緒……?」
 うっとりとしたキスの余韻に浸り、頭の中がぼやける。
「うん、二人だけの秘密」
 その言葉があまりにも甘美だった。けれど、さっと血液が逆流して頭が次第にはっきりとする。
「だめです」
 声が震えた。なんでだめかなんて知っている。藤太くんが傷つく。それだけじゃない、先輩も私もみんな傷ついていいことなんて一つだってない。先輩は悲しそうに笑った。
「そこは……流されてほしかったな」
「誰も幸せになれないのは、ダメなんです」
 私は唇を血が出るほど噛んだ。鈍痛が唇から伝わって痛みに縋るように流されないように自分を繋ぎとめる。
「私が……、選びます」
 誰を幸せにして、誰を不幸にするのかを。浅はかで頭の悪い私がその選択権を持っているなんて本当に不幸なことだと思った。
「……ごめんなさい。私、本当に最低だ」
 言葉にした瞬間、余計に人を傷つけてばかりの自分を自覚して涙が滲んだ。でも、泣かなかった。泣いたところでどうしようもない。私は間違わないように選択しなければならない。じゃなきゃ私は、いつも藤太くんも自分も先輩も不幸にしてしまう。
 震えを押し込めるように唇に力を入れる。
 それを見て先輩は消えそうな声で話し出した。
「傷つけないで。あなたが辛い選択をしなくちゃいけないなら、私は消えたっていいの」
 我に返り、先輩を見ると先輩の表情は悲痛な声にならない叫びをあげているように、初めてはっきりとした感情が見えた。
 本当は消えなくないって言っていた。悲しい、寂しい、辛いって言っていた。それを非力な力で無理やり殺している。けれど殺しきれずあふれ出す。
 行かないでという言葉を決して口にしないから余計に私には刺さった。
「園崎先輩……」
 名前しか呼べなかった。外の雨が降り急ぐように強くなる。雨音を遮断しきれずガラス窓に通過する音と先輩の嗚咽に似た静かな涙が初めて流れた。息をのむほどに、それは美しくて、それでいて悲痛すぎて痛かった。
「先輩、泣かないで。泣かないでください」
 整った顔から滴る涙を必死に殺そうと先輩は華奢な体を震わせる。
「先輩、どうして?」
 雨音が消えそうなほど自分の感覚でいっぱいだ。この人が泣くことがこんなにも悲しく辛い。優しくてなんでも受け入れる彼女が泣くのが、死んでしまいたくなるほど――苦しい。
「どうしてそんなに、私なんか……」
「私はずっとあなたに会いたかったの。私は――」
 その瞬間、雨音が止んだ。
「藤太の姉なの」
 時間が止まったように感じた。私が園崎硝子を知らないわけがなかったのだ。
「ガラスちゃん」
 先輩は泣きそうな顔で話し出した。
「絵菜はいつも私のことそう呼んでたね。ガラスって書いてしょうこって読むんだよって何回も言ってたのに。」
「ガラスちゃん、ずっと何処にいたの? なんでずっと黙っていたの? それに、どうして私、こんな大切なことを忘れていたの……?」
 全てに裏切られた感覚、地面がぐらついて立っていられなくなる。私はそっと文学部の部室の床に座り込んだ。
「私の記憶は、どこからどこまで本当のことなの?」
 ガラスちゃんはそっと壊れそうな笑顔で笑う。
「絵菜、私は何があっても、ずっと絵菜が好きだよ」
 ガラスちゃんはそれ以上何も言わなかった。
 私はガラスちゃんを責めることもできず、問いただすこともできず、ただ会えたことの喜びと信じられない自分の記憶とでぐちゃぐちゃになって、部室を飛び出した。
 私が秋が嫌いな理由、冬が嫌いな理由。それは私にとって大事な人が死んでしまった季節だから。

 幼い頃の私は、ガラスちゃんと藤太くんが大好きだった。好きだと感じるから好き。そこに理由なんかなかった。
 手を繋いで、彼らを外に連れ出して冒険するのが楽しかった。夏は蝉の抜け殻を集めて、公園で走り回って、夜がくるのが遅くて、いつまでも子供でいられると思っていた。
 それは見ないようにしてきたガラスちゃんと藤太くんの体中の痣と一緒で、ないことにできない事実だということに、そのときの私は気づかなかった。
「絵菜は、俺の痣のこと聞かないね」
 藤太くんはこちらを見ずに聞いてきた。その言葉が釘になって地面に打ち付けられたように立ち尽くしてしまう。
「絵菜は俺を助けてくれないんだ」
 先を歩く藤太くんが振り返った時、顔が夕焼けで焼き付いて真っ黒に塗りつぶされたように表情が見えなかった。顔が見えないのに、声だって泣いているわけではないのに、どうしてか苦しいのがわかった。悲しいのが痛いほどに伝わったんだ。
 空気がピリピリする。その空気に圧倒されて、涙が詰まってしまったように藤太くんの辛さに泣いてあげられなかった。
「せめて俺が死んだら、泣いてね」
 その時かすかに見えた表情が息が止まるほどに悲しかったのを覚えている。否定したかった。その悲しさから救いたかった。言い募る様に私は叫ぶ。
「泣かないよ。泣かないから……死なないでよ」
 つまりそうな息を必死に吸って、声に出せたのはこれだけ。藤太くんは幸せそうに笑って言った。
「知ってた? 俺、絵菜のこと好きなんだ」
 それからしばらくして、彼は虐待による死を迎えた。
 それを発見したのは、遊びにチャイムを鳴らした私だった。
「ガラスちゃん? 藤太くん?」
 雪が積もる朝、がくがくと歯を鳴らして震えているガラスちゃんと息のしていない藤太くんを見つけた。
「ガラスちゃ、とう……たくん」
 私がそっとその手を握ると、信じられないくらい冷たくて、私は叫ぶしかなかった。
 それはもう発狂に近い悲鳴だった。私は気づいていたのに、知っていたのに、自分の大事な存在が消えてしまう絶望感、じわじわと襲われる罪悪感。
 脳裏でちらつく悲しさそうな顔をしている藤太くんの残像が私の首を絞めるようだった。
「絵菜は俺を助けてくれないんだ」
「ごめんなさい」
 私はうわ言の様に呟いていた。悲しくて表情が作れないのに涙だけが垂れ流れていくのが不思議だった。その頃から、私は藤太くんの幻覚を見るようになった。
 ガラスちゃんは助かった。けれど、藤太くんは助からなかった。
「ガラスちゃん、病気早くよくなってね」
「……病気?」
「藤太くんおうちで待ってるよ?」
 そういう私を彼女は悲しそうな顔で見ている。そんな目でみないで。心の中は正気だった。
 藤太くんは死んでいる。だからなんだというのだ。
 私は私をだまし続ける。だまして、本当は生きてるって思い続ければ、私の中では藤太くんは生き続ける。だから嘘だって本当になるんだって思い込んでいた。
「絵菜、悲しまないで。あの子を悲しまないで」
 作った笑顔から涙が垂れ流れる。
「なんのこと? 藤太くんはいるよ? おうちにいるんだよ」
 ガラスちゃんは泣いていた。きっとガラスちゃんの方が何倍も哀しいのに。            
「絵菜が私たちを悲しまなくていいの」
「……三人がずっと幸せでいられるように私はずっと藤太くんを忘れないの」
 それからガラスちゃんと藤太くんの両親はガラスちゃんを祖父母宅に預け、そして罰を受けることとなった。
 母は私が藤太くんの幻覚を見ていることに今まで付き合っていたのだ。思えばおかしいことだらけだ。子供を親友に預けたまま連絡がないのもそれを当然のように受け入れている母も、本当はおかしいことだらけだったんだ。

 私は足を止めた。
「藤太くん、いるんでしょう?」
「俺は、どこにでもいるよ。絵菜のそばなら何処にだっているんだよ」
「もう……、死んでいるのに?」
 藤太くんは泣きそうな顔で言った。
「そうだよ」
 砂の城のようにもろく、壊れそうな笑顔で言うんだ。藤太くんはもういないのに。私の罪悪感が作った幻覚なのに。
「私と藤太くんが喧嘩ばっかりだったのはどうして?」
 そういうと、藤太くんは笑ったまま言った。
「絵菜が、本当の俺が死んでいることに気づき始めたからかな? よく考えてみろよ。俺は絵菜が一人の時にしか絵菜の前に現れない。絵菜が誰かと一緒にいるときに俺がいたことはないだろ? 俺はいないんだよ」
「違う!」
 気づいたら叫んでいた。
「違う……ごめんなさい。行かないで、私がもっと、もっと早く見つけていれば、こんなことにならなかったのに」
「謝らないで。泣かないでよ」
「ごめんなさ」
 涙で詰まる言葉を藤太くんはしっかり聞きながら、私の涙をぬぐった。
「絵菜。君が幸せでいてくれないと、本当の俺が救われないんだ。だから君が俺を救ってく れ、どうしたらいいかわかるだろ?」
 私は涙で視界を歪ませながら、いった。
「幸せってみんなでならないと意味がないのに。藤太くんがいないのに」
「なれるよ。だって、俺を想って忘れないでくれるんだろ?」
 たぶん、その時の藤太くんだけは本物だった気がした。
「忘れない。忘れられない。だって私は」
 言葉を遮るようにして藤太くんは幸せそうに笑っていった。
「絵菜、好きだよ」
 そういって私の幻覚は最初からいなかったように消えてしまった。その場で泣き崩れた私はまた大事な人を失くした。それでも生きていかなくてはいけないんだろう。
 どれだけの哀しみが襲ってきても、苦しくて死んだ方がましだと思っても、生きなくちゃいけないんだろう。
「さようなら」

葬送

執筆の狙い

作者 井原美雨
zaq7d04143d.zaq.ne.jp

この小説を書いたきっかけは、自分なりの死別の経験を昇華することができないかと思ったのがきっかけです。

コメント

松岡修子
84.125.148.210.rev.vmobile.jp

以下の文を適切な文に書き直しましょう。

>【季節が移り替わり告げるその色】も毒々しいオレンジ色で、まるで何かの危険信号でも知らせているみたいに派手な色。

>息が荒く、【熱に犯されたように】頬が赤らんでうざったいような熱さが伝染していた。

熱さがどこからどこへ伝染?

>ぎこちなく頬に添えられた手が、みっともなく震えている。
誰の頬なのかわかるように。続く文章を読まなければわからないような文章は悪文です。

>思わず顔を上げると、そのままその【熱情に犯された瞳】に魅入られた。

>【私を食い漁りそうな】飢えた目。

ここまでしか読めませんでした。
独りよがりな文章を書くのはやめましょう。書いてる本人だけは理解できていても、読者にはついて行けません。いろいろと言葉足らずですし、使っている語句も不適切です。
何より自分の文章に酔ってる感じが鼻につきます。

井原美雨
zaq7d04143d.zaq.ne.jp

松岡修子様

ご指摘いただいてありがとうございます。
わざわざ抜き出して書いていただいて感謝いたします。
お手間をかけさせてしまい、申し訳ありません。
ですが、とても助かります。
独りよがりな文章にお目汚しさせてしまってすみません。
人を惹きつけるような文章を目指しているのですが、なかなか独りよがりになってしまいがちでして。
ご指摘ありがとうございました。
日々、精進して小説として成り立つものを書けるように頑張ります。

群青ニブンノイチ
softbank221022130005.bbtec.net

読みだして読み進めて読み終えるまで、ほとんど一切わけがわからないというか、そんな言い方も今一つ適切ではないようなとにかく不可解な文章が、かなり風変りな単語センスでひたすらに埋め尽くされているといった印象なのですが、ただ一つ読み終えてみてわかったのは、行き当たりばったりというわけではどうやらなさそうで、むしろ作者なりに作品世界をちゃんと設計した上で書かれているらしい、ということでした。

とにかく表現が独特というか、読書という目的に照らすと決して上等とは言い難いような支離滅裂に近い表現もありそうで、端的にこの作者は小説的な表現を意識しすぎるばかりの人で、それが過ぎるばかりに勘違いのようなおかしなことにばかり辿り着いてしまう人なのかと思ったのですが、実は言葉以上に表現したいストーリーにこそ憧れが強い人なのかもしれないなあ、と読み終えてみてからそんな印象も加わったような気がしています。


せっかく思い浮かぶストーリーがあるなら、出来るだけ正確に表現しなければもったいない気がします。
わたしは口が悪いので正直に言ってしまいますが、作品全体が安っぽいJ-POPの歌詞で切り貼りした暗号文書か何かみたいだと思っています。
極端な話、日本語としての修飾センスがかなり深刻にぶっ壊れている気がするし、作者が思い描いたなりの表現には恐らく向かっていない気がするし、単純に読書向きの表現のセンスではない気がします。
かつて流行ったケータイ小説と呼ばれる中でも初期のモノでこういった単語イメージだけに偏ったようなスッカスカ文章がよく見受けられた印象がありますが、そんな悪しき遺産を未だに真に受けているみたいで、誤解だとしても何だか危うい印象を受けます。
単純に、古臭い印象。

日記を普通に書くとか、とりあえず一人称からしばらく離れてみる。
読みながら感じさせられた矯正法は一先ずそんなことのような気がして、つまりそれは落ち着いて客観的に感じたり読んだりすることだと思うのですが、恐らくは三人称にしてみたところで同じような言葉を選んでしまうことには違いないとは思いますが、たぶん今よりは不便で、気持ち悪くなってくるはずのような気がします。
大切なのはたぶんそんな不便さのようなことで、つまりそれは恐らくは今の作者が知らない言葉の不便さという正常さみたいなことのような気がするということです。
もちろんそれも、感じ方次第ということには変わりないのですが。
感情をすべて言葉にあずけられたら、どんなにか快適なことだろうとはわたしも思います。
ですが、そうしたがるあまりにこの作品の言葉が珍妙にぶっ壊れているらしいこともわからないでもない気がするものですからやはり、だからこそと言ったような文章表現という不便な楽しみはあるはずのような気が個人的にはするのですが、どうなのでしょうか。

あと、肝心な部分こそセリフが完全に下手糞のような気がします。
それもやはり、作者の感情問題だとは思うのですが、そのコントロールがあまり魅力的でないことが結論として用いたがる言葉にこそ現れているのだと個人的には感じさせられています。
人間の言葉とは思えない。
それは小説だからと言って別ごとのように許されることとは、文字通り別ごとのような気がします。

一番の問題点は、作者自身の創作熱のコントロールの悪さ、客観性の低さ、読者という存在への意識の低さ、ということだと、それが結局のところ奔放すぎてぶっ壊れたような日本語の用い方として無邪気に晒されてしまう根本ような気がしてしまうのですが、どうなのでしょうか。

勘違いしてほしくないのは、それは決して悪いことばかりではない、ということで、コントロールが悪いばかりに作者自身の良い部分までも食い潰すようにぶっ壊している、ということを言っているつもりなのですが、わかりますか。

熱心な気持ちがあるらしいことは、ちゃんと伝わってきます。

秋口遊作
ngn2-ppp739.saitama.sannet.ne.jp

まるで主人公が自分の想いを純粋に表現した様な文体に、惹きつけられてしまいました。
その表現力も豊富なもので飽きることが無く『この先に起こる出来事に対して、主人公はどんな言葉で想いを表現してくれるのだろう』と次の場面への期待が自然と沸き起こり、新鮮で楽しく拝読することが出来ました。

私自身他人にアドバイス出来る程の力量は持っていないので、一読者としての感想とさせて頂きます。
頑張って下さい。

井原美雨
zaq7d04143d.zaq.ne.jp

群青ニブンノイチ様

ご指摘いただいてありがとうございます。
ご指摘を十分に咀嚼して、ご返答したいので長くなります。すみません。

・一つ適切ではないようなとにかく不可解な文章が、かなり風変りな単語センスでひたすらに埋め尽くされているといった印象

これは皆さんおっしゃられている通りなので、いろんな方の文章を拝読し、勉強させていただこうと思います。

・作品全体が安っぽいJ-POPの歌詞で切り貼りした暗号文書

これも個人的な趣味で作曲家さんに歌詞を提供しているせいかなとも思いました。最近はそちらの方に重きを置きすぎているのかもしれません。もう少し考えて小説を書いてみようと思います。

・肝心な部分こそセリフが完全に下手糞

これは自分でも自覚があるので、ご指摘いただいて助かりました。
このご指摘をいただいたことでセリフにもっと興味を持って書くことができると思います。

・作者自身の創作熱のコントロールの悪さ、客観性の低さ、読者という存在への意識の低さ

これは本当にごもっともです。創作熱はほとんどありません。だからこそ、言葉が変な方向に走っているのかもしれません。なんというか、自分自身が小説の中の登場人物の感情がわからないというのもわけのわからない言葉になっている一つの要因なのかもしれません。
客観性も低いと思います。自分が入っていけない世界を書くものではないのかもしれません。
主観も客観性も見失っているというのが、一番だめなのかもしれません。
おっしゃられるように、まずは日記を書いてみようと思います。

ご指摘いただけてとてもうれしかったです。
こんなにたくさんご指摘を書いていただく労力に報いるためにももう少し頑張って書こうと思います!ありがとうございました!

井原美雨
zaq7d04143d.zaq.ne.jp

秋口遊作様

ご意見いただきありがとうございました!
新鮮で楽しく拝読することが出来ましたとのうれしいお言葉をいただいけて本当にうれしいです。他の方がおっしゃられているように、私も文章が支離滅裂な部分が多いので、もっと適切な表現ができるように頑張ります!
ありがとうございました!

放浪マック
202.190.27.22

 そんなに酷いですかね? 確かにセリフが効果を発揮していない印象はありますが、地の文は面白いと思いながら読みました。
 どなたかがどこかで、『普通の物語を普通の文章で書いて、それが面白いですか? 没個性で勝負して、勝てますか?』 と問い掛けていました。
 一理あると思います。ストーリーもセリフも地の文も、個性的で面白いに越したことはありませんが、完璧ならばこんな場所でくすぶることなく、もうプロになってますよ。
 この作者には、荒削りながら、不思議な匂いがあるように思いました。つまり雰囲気というか、味というか、プロが持つプラスαの気配(あくまでも、片鱗的気配の段階)があるように思います。
 どなたかが壊れているという表現を使っていて、言い得て妙な気がしたのですが、認められる作家は何か壊れているというケースも珍しくありません。
 ここで指摘したある種の匂いは、意識して出すのは難しいものです。折角の個性ですから、それを壊すことなく磨き上げたら良いのではないかと思い、コメントを残しました。
 全体的には褒めているつもりです。分かりにくく具体的アドバイスもできずに申し訳ありませんが、興味深く読めたということを最後に申し添えます。またの掲載を期待致します。
 

放浪マック
202.190.27.22

 そうそう、自分は独りよがりな文章だとは思いませんでしたが、独りよがりも、言葉足らずも不適切な語句も、突き抜ければ武器になります。
 群青さんが言わんとすることに、自分も同意です。良いところがあるけど、惜しいなあ、みたいな感じ?
 応援しています。頑張って下さい。

井原美雨
zaq7d04143d.zaq.ne.jp

放浪マック様

ご拝読いただきありがとうございました。
・折角の個性ですから、それを壊すことなく磨き上げたら良いのではないかと思い、コメントを残しました。
本当にありがとうございます。そういっていただけると、自分にも持ち味があるんだと思えてとてもうれしく感じました。
これからはセリフや自分の個性をわかりやすく、客観的にも自分的にももっと伝わりやすく伝わる様に磨き続けようと思います。
コメントいただいて勇気になりました。
本当にありがとうございます!

松岡修子
18.252.149.210.rev.vmobile.jp

なるほど、歌詞を書いてらっしゃるんですね。歌詞だと思って読めばあまり違和感なく読める部分はあります。歌詞なら抽象的で聞き手にとって意味不明なことを書いても許されますしね。それを謎解きのように考える楽しさもあります。
ですが、小説と歌詞は別物ですから、書き分けましょう。

歌詞は限られた字数内で表現する必要があるため、助詞を省略したり、○○が、○○に、○○を、○○の、という部分も省略することが多いですが、それを小説でもやってしまうと、読者に対して不親切な文章になってしまいます。
歌詞を書くときと小説を書くときは頭を切り替えましょう。 

全然別の話をします。あなたにはストーリーを必要とする短編よりも、あるワンシーンを切り取ったような掌編が向いてるのではないかと思います。何気ないワンシーンでも叙情的で印象的な詩的な掌編が書けるのではないでしょうか。詩心がない人がやると退屈な日記のようになってしまいますが(今、1面にあります)。あなたならあの作品の主人公を女性に変えて詩的に表現できるのでは?

「今朝は小鳥のさえずりで目が覚めた。カーテンのすき間から差し込む光がいつもと違って見える。今日から何かが変わりそうな気がする」
例えばこんな短いワンシーンでも、素敵な掌編として完成させられるなら、あなたの強みになります。あなたにしか書けない作品で個性を打ち出すと良いと思います。

井原美雨
zaq7d04143d.zaq.ne.jp

松岡修子様

小説と歌詞、両方書いていると頭の中での切り替えが難しく混ざってましたが、これから気を付けつつ書こうと思います。
初めて掌編が向いているのではと言われましたので、一度、掌編も挑戦しようと思います。
これから時間をかけて試行錯誤し、自分の強みを活かせるようにしていこうと思います。
たくさんご意見くださってとてもうれしかったです。
ありがとうございました。

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