作家でごはん!鍛練場
からくれ

神殺しの白蛇は、何れ龍と成る

 いつからここにいる?

 どれだけの時間が経った?

 出られるのはいつだ?

 早くここから出たい。

 早く死にたい――

 陽の当たらない冷たい鉄格子の中、服とはもはや呼べなくなったボロボロの布切れを体に纏って牢の隅でできるだけ小さく丸まる。
 ガリガリの体のせいで、たとえ丸まったとしても隙間ができてしまっているから寒いのは変わらないが……まぁ、気休めだ。
 周りから自分を失わんとする抵抗の呻き声が聞こえてくる。自分を失えばついに永遠の牢獄に閉じ込められる。だから連中は絶えず「うーうー」などと呻き声を上げる。
 もう、いつからここに居て何年経ったのかも分からない。「あなたは百年間閉じ込められました」と言われても容易に信じることができるほど時間感覚は狂っていた。
 ここは人間を収容している牢獄だ。神々との戦争に敗北し、全ての人間がこの牢獄に入れられた。
 なぜ人間と神々が戦争をしたのかなんて分かるはずもなく、知る必要も全く無い。
 どうせここからは出られないのだから。
 初めの頃は日数を数えていたが、たった五日で飢餓に陥り、その日初めて僕は「死んだ」。そしてすぐに「生き返った」。馬鹿らしくなり数えるのを辞めた。
 この不可解な現象は左手の甲にある忌まわしき痣……この「ウロボロス」のせいで繰り返される。
 ここの人間の手の甲には例外なく蛇が自らの尾の先を咥える「ウロボロス」が刻印されている。
 蛇は龍の成り損ないと神々に蔑まれ、空を飛べないのにも関わらず龍の特性である「不死」をだけを持ち、醜く腹を引きずって永遠の時を地で過ごす生き物だと言われている。
 神々の皮肉なのだろう。この痣は。
 「人間は我々と同じ形をしているが全くの別物だ。せいぜい地を這って牢獄の中で永遠に生きろ」と神々は言いたいのだろう。
 はっきりいって、この輪廻から解放されたかった。
 さっさと死んで天国でも地獄でもなんでもいいからここから出たかった。
 そこまでに僕は精神的に参っていた。そりゃそうさ。何も変わらない、変わりようが無い牢の中に何年も居ればどんなに屈強な精神を持っていようが、いつかは折れる。
 僕はとうの昔に心なんて折れていた。最初は死にたいと何度も思った。
 いや、実際何度も死んだ。死んだ死んだ死んだ。何度も何度も何度も。だが、すぐに生き返る。すぐさま襲ってくるのは空腹。そして、「ああ、また生き返ったんだな」という絶望。
 変わらない景色。
 空く腹。
 飢餓。
 死ぬ。
 生き返る。
 また、繰り返される。 
 四百五十ニ回目に生き返ると、目が見えなくなっていた。死んだら元に戻ると思い、蹲ったまま静かに死んだ。
 生き返ると、真っ暗なままだった。いつも見える苔の生えた煉瓦と錆び付いた鉄格子が見えなかった。
 僕はそれから永遠に光を失った。それでも、まだ繰り返す。これは呪いなのだ。「永久」という一生の罰を与える神々の呪い―― 
 けれど、途方もない時間が流れようが、「自分」という存在だけは見失いたくなかった。
 ここでは自分を見失うと、死人のように無機質な存在へと変わる。一見、本物の死ではないかと思うが違う。それこそ、永遠の中に閉じ込められるのと同じだ。
 その証拠に、僕の向かいにある鉄格子の人間は横たわりピクリとも動かず死んだように見える。だが。
 幾年も涙を流し続けているのだ。止まることなく――
 精神が、自らが「もういいや」と諦めたことにより、体も諦めて死んだのだろう。だが、精神だけは神々の呪いによって現世に繋ぎ止められる。死んだ体に。
 そうなるともう終わりだ。永遠に動きもできず、体が死んでいるため睡眠も必要としないから寝れない。ただ一点を見つめることしかできないという最低最悪の牢獄の完成だ。 
 僕は、もう一生ここから出られない。
 どちらにしても終わりさ。
 けれど、最後にもう一度だけでも自由を味わってみたかった。
 そういえば、龍というのは空を飛んでいるけれどどんな気持ちなのだろうか。それこそ、広大な空を飛べるなんて本当に自由なんだろうなぁ。
 ああ、僕も。

「そ……ら、とん……で……、みた……い……なぁ」
 
 久しぶりに声を出した。そのせいで酷い掠れ声だったが、なんだか気持ちが良かった。声を出したことが気持ち良かったというか、希望を持つということが気持ちを少しだけ明るくしたのだと思う。

「ガゴッ」

 突如、頭上に何かをズラすような音が聞こえた。あり得ない。けれど、確かに聞こえた。今までで聞いたことのない音だから何かと間違ったというわけでもない。

「生きてる人間がいるのか?!」

 聞こえてきたのは老人の声。
 僕よりは掠れてないが、絞り出すようなしゃがれた声。
 もっと疑問に思うことははあるだろうに、この時僕は「どんな顔をしているのかな」なんてことを考え、自分でも驚くような思考回路に思わず笑いそうになった。
 とりあえず、老人に返答しなければ。

「こ……こ……だ……」

 僕は力を振り絞って答えると、命尽きた。計「十二万五千四百十三回」目の死だった。

神殺しの白蛇は、何れ龍と成る

執筆の狙い

作者 からくれ

神話のような物語が好きで書きました。
感想など聞かせてください!

コメント

\(^o^)/

 飽きずに最後まで読めました。

「はっきり言って」、「寝れない」
 この二語が世界観をぶち壊しています。

 オチが弱いですね。ここは「やっと救われる!」という希望や喜びをしっかり描写しましょう。それでこそバッドエンドが生きてきます。

あのにます

えっと、、、、、、、、、、


ジョジョ5部のディアボロやんw
それが元ネタじゃないとしたら、どういう心境でこれ書いたのかなあ。
疲れてるのかなあとか、考えちゃうな。

からくれ

ジョジョ好きです。特に2部が好きです。
けど、別にパクったつもりはありませんけどね。
そんなこと言ったら「オール・ユー・ニード・イズ・キル」とか「バタフライエフェクト」などなど...有名な作品たちが何かしらパクってるんじゃないかと言ってるようなもんですよね笑
なぜ、疲れてると思ったのですかね。そんなこと言ったら、この作品と設定がちょっと似ている「オール・ユー・ニード・イズ・キル」とか「バタフライエフェクト」(以下省略。

ということで、貴方の意見はちょっと自分勝手過ぎる!

あのにます

>貴方の意見はちょっと自分勝手過ぎる!
レビューってそういうもんですよ。
感想は読んで感じた事を述べているだけなので
(最低限のマナー守った上で)別に作者や作品に忖度する必要なんて皆無ですから。

そうげん
121-83-151-235f1.shg1.eonet.ne.jp

往生要集にでもありそうな、無間地獄みたいなものを感じました。
永遠に近いような時間の中、牢獄に閉じこめられて、ひたすら死の苦しみを繰り返す。
おなじ蘇りをするのでなく、目は次第に光を失い、手足は活発に動くことがなくなり、諦めの気持ちが徐々に全体を覆い始める。タイトルには「神殺しの白蛇」とあります、いずれなんらかの試練ののちに、「龍と成る」世があらわれるのなら、この暗いなかで耐え忍ぶだけの部分だけでは、これから先を期待するにも、十分に期待を抱くことができないままであります。

設定だったり、雰囲気だったりは、よくなっていく可能性が見えるからこそ、この先にもし希望があるのならそれもこみで、読んでみたいななんて感じました。神話のような世界を描くことを目標にされているとのことですね。何万回も生死を繰り返すというのが、わたしはちょっと仏教教理のようにも感じました。弥勒信仰のようなものなんかを。では、ありがとうございました。

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