作家でごはん!鍛練場
カラカラ

ウロボロスの刻印

 昔々、世界は今のような大地は存在せず、空も無く、無限に灰色の混沌が広がっていた。
 二人の神々は混沌に「光」と「闇」を生み出した。
 光と闇は混沌に「秩序」を生み出し、秩序は形を変えて「大地」が出来上がった。
 秩序はまたまた形を変えて「空」を作り上げた。
 空から一万年間雨が降ると「海」が生まれ、「世界」が形を成した。
 そして、神々は出来上がった世界に自らを模した「人間」と「魔人」二種類の「人形」を造り、放った。
 空の上には世界を管理できるよう「天」を創り出した――
 それから、人間と魔人は世界を半分に分け境界線引き、千年掛けてそれぞれ巨大な王国を幾つも創って繁栄していった。
 だが――
 突如、神々は人間と魔人に戦争を仕掛けた。空には幾万の雷の矢が放たれ、森は焼け、海は蒸発し、強大な神々の力によって栄えた王国は跡形もなく砕け散ちった。
 そして、ここは神々が造った人間のみを閉じ込めるための名も無き牢獄……いや牢獄というには余りにも粗雑すぎるため箱と呼ぼう。
 この箱は石の煉瓦とただの鉄格子で作られた巨大だけが取り柄の箱だ。
 厳重な見回りも余りある罰も無い。ここの存在が神々がどれだけ人間という種族を舐めているかを教えてくれる。なんなら、囲みといっても良いくらいだ。
 だが、なぜここまで粗雑な牢獄に入れるほど舐めている存在に戦いを仕掛け、そして閉じ込めなければならなかったのか。なぜ、「|輪廻の生《ウロボロス》の刻印」を与えたのか、それだけは分からない。 

 それこそ、「神のみぞ知る」――



 いつからここにいる?
 どれだけの時間が経った?
 出られるのはいつだ?
 早くここから出たい。
 早く死にたい――
 陽の当たらない冷たい鉄格子の中、服とはもはや呼べなくなったボロボロの布切れを体に纏って牢の隅でできるだけ小さく丸まる。
 ガリガリの体のせいで、たとえ丸まったとしても隙間ができてしまっているから寒いのは変わらないが……まぁ、気休めだ。
 周りから自分を失わんとする抵抗の呻き声が聞こえてくる。自分を失えばついに永遠の牢獄に閉じ込められる。だから連中は絶えず「うーうー」などと呻き声を上げる。
 もう、いつからここに居て何年経ったのかも分からない。「あなたは百年間閉じ込められました」と言われても容易に信じることができるほど時間感覚は狂っていた。
 初めの頃は日数を数えていたが、たった五日で飢餓に陥り、その日初めて僕は「死んだ」。そしてすぐに「生き返った」。馬鹿らしくなり数えるのを辞めた。
 この不可解な現象は左手の甲にある忌まわしき紋章……この「痣」のせいで繰り返される。
 ここの人間の手の甲には例外なく蛇が自らの尾の先を咥える「痣」が刻印されている。
 蛇は龍の成り損ないと神々に蔑まれ、空を飛べないのにも関わらず龍の特性である「不死」をだけを持ち、醜く腹を引きずって永遠の時を地で過ごす生き物だと言われている。
 神々の皮肉なのだろう。この痣は。
 「人間は我々と同じ形をしているが全くの別物だ。せいぜい地を這って牢獄の中で永遠に生きろ」と神々は言いたいのだろう。
 はっきりいって、この輪廻から解放されたかった。
 さっさと死んで天国でも地獄でもなんでもいいからここから出たかった。
 そこまでに僕は精神的に参っていた。そりゃそうさ。何も変わらない、変わりようが無い牢の中に何年も居ればどんなに屈強な精神を持っていようが、いつかは折れる。
 僕はとうの昔に心なんて折れていた。最初は死にたいと何度も思った。いや、実際何度も死んだ。死んだ死んだ死んだ。何度も何度も何度も。
 だが、すぐに生き返る。すぐさま襲ってくるのは空腹。そして、「ああ、また生き返ったんだな」という絶望。
 変わらない景色。
 空く腹。
 飢餓。
 死ぬ。
 生き返る。
 そして、また繰り返される。
 四百五十ニ回目に生き返ると、目が見えなくなっていた。死んだら元に戻ると思い、蹲ったまま静かに死んだ。
 生き返ると、真っ暗なままだった。いつも見える苔の生えた煉瓦と錆び付いた鉄格子が見えなかった。
 僕はそれから永遠に光を失った。それでも、まだ繰り返す。
 これは呪いなのだ。「永久」という一生の罰を与える神々の呪い――
 けれど、途方もない時間が流れようが、「自分」という存在だけは見失いたくなかった。
 ここでは自分を見失うと、死人のように無機質な存在へと変わる。一見、本物の死ではないかと思うが違う。それこそ、永遠の中に閉じ込められるのと同じだ。
 その証拠に、僕の向かいにある鉄格子の人間は横たわりピクリとも動かず死んだように見える。だが。幾年も涙を流し続けているのだ。止まることなく――
 精神が、自らが「もういいや」と諦めたことにより、体も諦めて死んだのだろう。だが、精神だけは神々の呪いによって現世に繋ぎ止められる。死んだ体に。
 そうなるともう終わりだ。永遠に動きもできず、体が死んでいるため睡眠も必要としないから寝れない。ただ一点を見つめることしかできないという最低最悪の牢獄の完成だ。
 けれど僕は、もう一生ここから出られない。どちらにしても終わりさ。
 けれど、最後にもう一度だけでも自由を味わってみたかった。
 そういえば、龍というのは空を飛んでいるけれどどんな気持ちなのだろうか。それこそ、広大な空を飛べるなんて本当に自由なんだろうなぁ。

 ああ、僕も。

「そ……ら、とん……で……、みた……い……なぁ」
 
 久しぶりに声を出した。
 そのせいで酷い掠れ声だったが、なんだか気持ちが良かった。声を出したことが気持ち良かったというか、希望を持つということが気持ちを少しだけ明るくしたのだと思う。

「ガゴッ」

 突如、頭上に何かをズラすような音が聞こえた。
 あり得ない。けれど、確かに聞こえた。今までで聞いたことのない音だから何かと間違ったというわけでもない。

「生きてる人間がいるのか?!」

 聞こえてきたのは老人の声。
 僕よりは掠れてないが、絞り出すようなしゃがれた声。
 もっと疑問にことはあるだろうに、この時僕は「どんな顔をしているのかな」なんて疑問を浮かべ、自分でも驚くような思考回路に思わず笑いそうになった。

「こ……こ……だ……」

 僕は最後にそう答えると「十二万五千四百十三回」目の死を迎えた。

ウロボロスの刻印

執筆の狙い

作者 カラカラ

神話風な話を書いてみました。感想を下さい。

コメント

加茂ミイル

文学的な雰囲気が出ていて、さすがカラカラさんだなって思いました。

どう足掻いても凡人

雰囲気や内容はわかるのですが、指摘点も結構あります。
指摘点は要改善、と、改善した方が良いと思われる部分、の2点に分けています

要改善点
・そこまでに僕は精神的に参っていた。 そこまでに、を変更した方が良い。例:そこまでに→それほどまでに
・変わりようが無い牢の中に何年も居ればどんなに屈強な精神を持っていようが、いつかは折れる 居れば、の後に読点を足して、持っていようが、の後の読点は消した方が良い

改善した方が良いと思われる部分
・最初の神話部分。もうちょっと説明や言葉が欲しかった。内容はわかるのですが、頭の中に具体的なイメージが浮かばない
・序は形を変えて「大地」が出来上がった。 説明不足。これ以降も以下同文
・陽の当たらない冷たい鉄格子の中、服とはもはや呼べなくなったボロボロの布切れを体に纏って牢の隅でできるだけ小さく丸まる。 纏って→くるまって 纏って、の後ろに読点が欲しい
・ガリガリの体のせいで、たとえ丸まったとしても隙間ができてしまっているから寒いのは変わらないが……まぁ、気休めだ。 この部分ですが、もっと改善できます。上手く書きましょう
・自分を失えばついに永遠の牢獄に閉じ込められる。 ついに、の使い方がおかしい
・すぐさま襲ってくるのは空腹。そして、「ああ、また生き返ったんだな」という絶望。 少し文章を改善した方が良い
・龍というのは空を飛んでいるけれどどんな気持ち けれど、がしつこい(改善する必要性は微妙)。けれど、の後に読点を入れて、一体、などの言葉を挟んだ方が良い
・それこそ、広大な空を飛べるなんて本当に自由なんだろうなぁ 文章が少しおかしい

見習いさんH

あらすじ……ですか?
聖書みたい。でした。

中野サル信長

上手くなりたいならご飯より学校ですよ
安いところを調べて先生につかないと
僕みたいにごはんで害が出ますよ

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