作家でごはん!鍛練場
在日の吉岡ニッケル

仕事

 鏡を見てもテメエのドクロは分かりゃしねえ。レントゲン撮られたしにゃ、放射能を浴びるだけサ。分かンねえモンを知ろうって事がどだい、ニンゲンの行為を逸脱してるわな。

           ―茗荷谷 鬼平次(ミョウガタニ キヘイジ)
          (一九四四年三月、治安維持法違反で検挙。釈放後、同年六月癲狂院にて自死)



 午後八時過ぎ『古田機関』の〈始末屋〉Qの儂と〈ご同僚〉Xは、新宿は成子天神近くにおった。むろん〈受注〉である。〈マト〉は〈広告代理店〉『株式会社A―プレス社』の専務だか副社長の肩書きを持つ、小林竹生と云う外道。写真を見せられたが、微笑んでおるが眼は三白眼で、口元が吊り上がった奴で、精一杯の作り笑いに儂は見えた。そいつの住まいは4階建てマンションの三階だった。新築とは云えぬが3LDKと聞いた。それでも場所は西新宿なので売って賃貸アパアトへ転居すらば安穏とした余生が過ごせるであろう。しかしそれは儂の如き貧困アパアトに独居しておる、じじいのやっかみ、と云うものじゃ。儂は京王バスと徒歩で来たが、ここにXはホンダのフィットとやらの、軽乗用車を大きくした様ないわば大衆車で来た。盗んだシロモノゆえ、むろんナンバアは変えておる。

 云うまでも無いが、儂らの稼業はいつ十三階段を上がっても文句は云えぬ所業であるが、官憲の手が及びそうにならば、各々は一切語らず死ぬ覚悟でおる。青酸カリじゃを用いて。各々隠し場所に工夫をしておる。儂は服用せず一切黙秘を続けるであろうが、死刑は明らかじゃ。いざ執行の時には看守の二、三人に、地獄へ堕ちる亡者の恐ろしさを見せつけてやるつもりでおるが。

 儂は古田銀次の〈御大〉を神が如く崇めておるのでは無いが感謝はしておる。このくだらない人生で好き勝手な事をさせてもらっているからじゃ。Xは御大の運転手を長年務めており〈証拠隠滅〉のプロ。〈古田鉄工所陰の実力者〉と、儂と同じ『古田機関』の者は云う。儂と齢はそう変わらぬはずであるが、聞いたことはない。



 数日前。〈依頼者〉である北條何某は『株式会社古田鉄工所』の会長室で、会長古田の御大に儂、Xの前で上ずった声で説明した。「社名と業種で惑わされておりました。我が國で屈指の販売部数と規模の新聞社たる〈A新聞〉の子会社であったと誤解したのが浅はかでした。『A―プレス社』は求人票に子会社とは記しておらず、百パーセント出資の会社と謳っていたのです。むろん嘘八百でした。仕事内容は『A新聞が毎週発行している〈Aフォト・プレス〉の構成、キャプションの編集』業種は『報道・広告代理業』とあり応募してしまいました。合格、入社したもののそれが嘘八百であったのが慙愧に耐えません。実際の業務は写真を貼る安手な〈専用ボード〉の電話セールスでした。テレアポをかけるのはボードを設置する学校では無く近隣の会社にです。内容は〈ボードの下に[寄贈・Y社]と御社のロゴを入れさせて頂きます。さすれば御社は地元に貢献する企業の賞賛を得る事が出来ます。弊社はA新聞の指揮がもと営業を行っておりますので、そう無下にされるとですなあ、社会的影響力、おっと言葉が。それでは良い返事をお待ちしております〉と、あの新聞社の下請けにしか過ぎないのに、まさに〈虎の皮を借りた狐〉で評判は最低です。ノルマは月二十件の契約で、達しないと小林の逆鱗に触れます。そしてパワー・ハラスメント、それも直接の暴力です。ダイレクト・メール作成は一日に二十通送付、テレアポは毎日百通前後。郵送先の企業はパソコンで検索するのですが、テレアポをしていなかった所を小林に見られた際は肩を掴まれ小林が占拠している場所へ連れて行かれます。そこで山本五十六元帥が仰った言葉、それが小林のデスク廻りに貼ってあるのですが、何十回も唱えさせます。小林は末端ではありますが極右思想団体の構成員として名を連ねており、事あるごとに〈テメエら、営業に根性入ってねえとこ見つけたら東京湾に沈めるぞ。覚悟しとけ〉と我々を脅します。過日、自殺未遂を起こした社員が三名おりました。僅か一ヶ月で退職する人間も多いのですが、A新聞社〈幻想〉に取り憑かれ入社する者が多いですから、何と云えば良いのか、ともかく我々は諦観しております。現在妻が妊娠中なので、わたしは腐れ会社と云えども無職となる訳には行かないのです。誠に勝手ですが」



〈元締め〉の御大もXも言葉を発しない。しょうがないので儂が口を開いた。
「お主の願い。それは、その小林竹生を殺すことであろう」儂は作務衣のポケットから缶〈ピイス〉を抜き咥え、マッチで火を点けた。
 北條何某はハンケチで額の汗を拭っておった。両眼を泳がせてじゃ。
 儂は無表情で北條の顔を見つめた。「消す、以外儂らに用は無い。古田の御大を謀るつもりで偽りを申すのであらば貴様を殺す」
「そ、それはマア偶然からですが古田会長の御面識を得て、小林の事をお話致しました。そうです、まさに犯罪者ですわたしは。消して、いえ殺して下さい、小林竹生を。奴が消えるのであれば我々、いえわたしは何でも致します」北條何某は力なくソファに座った。
 古田の御大はどこか道化師のようであった。「訊いた時にはわしのどす黒い血が騒いだわい」
「しかしですな。大企業であれ零細企業であれ社風と云うものがあります。私は北條様の会社が内情についての知識はございません。しかし、その腐れ会社を仕切っている小林竹生がどうなろうと、そこの社風が変わるかどうかが疑問なのですが」Xは好々爺然とした表情だった。
「わしが云うのも何であるが、カスそのものじゃ、小林竹生と云う奴は」御大はキュウバ産の高級葉巻〈モンテクリスト〉の口をパンチ・カッタアで切断した。一本五千円以上するシロモノじゃ。
「わしは神でも権力者でも、中央の人間でも無いが、ただチンケな会社を潰すのであらば朝飯前じゃ。しかし、そこがいくら当節で云う〈ブラック企業〉であっても、懸命に働いておる従業員がおる。北條君から話を色々伺ったが、会社が腐っておるのは小林が畜生のせいであって従業員の罪科では無い。そこでわしの思い上がりであるが、ド腐れ外道たる小林竹生さえ消さば、社の雰囲気と体質が変わると、楽観的であるがそう思うておるのじゃ。であるから、そこの副社長だか取締役だか知らぬが小林竹生を消すと同時に、拭い去ることが出来ぬ恥をかかせよ。それでもあすこが奴隷工場であらばわしは容赦せぬ。政治屋・役人・上場企業など各方面に悪評を吹聴しまくり、それら筋から『A―プレス社』に圧力をかけさせ廃業に追い込んでやる。加え儂はA新聞の社主とは懇意で、我が社は大口広告主であるから、A新聞社も素知らぬ顔をしてはいられまいて。愚劣で卑怯な手法じゃがのう。で」古田の御大はモンテクリストに卓上ライタアで火を点けた。「警察官僚たるAは京都へ研修に行っておる。FとHは新潟へ赴き〈任務〉中じゃ。悪徳探偵Jは金で転びかねん。Mは連日取材で身が空いておらぬ。であるから、消去法であって失礼であるがお前さんQとXに任せたい」
 儂はピイスを灰皿に押しつけ、再び加え火を点けた。「ま、それが良かろう。ところで北條氏、ここで見聞きした事、それに〈発注〉した事は」
「む、むろん墓の下まで、です。そ、それでは失礼致します」北條何某は立ち上がり一礼し、会長室から去った。
「古田の御大。お訊きしたいのじゃが」儂は紫煙を吐いた。
 古田の御大はモンテクリストに火を点けた。「何じゃ」
「あの若い者とは如何にして知り合ったのじゃ?」
 古田の御大は笑みを浮かべたが言葉を発する事は無かった。



 古田の御大は儂ら殺し屋に〈注文〉を与え、マトを消させる。御大の逆鱗に触れる悪党がおった時と〈相談〉を持ちかけられた時じゃ。悪党殺しの相談を受けたらじゃな、引き受けたり引き受けなかったりする。むろんタダの筈が無い。相応な報酬を得る。御大は慈善事業で行っているのではないからの。
引き受けても、自分を謀った事実が明白とならば残虐な報いを謀った依頼主に与える。
 
 最近は古田の御大を謀ろうとする〈自殺願望の持ち主〉なる者はほぼ居らぬが、かつては結構おった。そうした場合、大抵儂は御大から〈報復〉を命じられた。慈悲を乞う者でも容赦無く惨殺した。だがそうした者はそれなりに〈惡の大物〉であったので殺し甲斐があったのじゃが、近年では小物ばかりでさほど面白みが無い。故に最近の御大は殺すまでには及ばずと〈報復〉の指示を概ね、悪徳探偵Jに与える。Jは其奴らを脅しカネを巻き上げる。古田の御大はその〈強請りたかりが所業〉を大眼に見ておる。それなりに使えるからじゃ。ことにJは法的には意味を持たないであろう〈念書〉を書かせた上に金額を提示すると云う卑怯卑劣な肥満体で、Jは十万、取りあえず初回は指一本提示するのであるが脅された相手は怯えて一桁上げ、百万円を渡してしまう。それを何度も続けるのだ。殺す方が慈悲のある〈報復〉なのでは無かろうか、儂の柄では無いが考える時もある。
 御大の裏の顔は『古田機関』と云う組織の元締めで〈殺し屋〉七人を飼っておる。かつての進駐軍は〈ウィロビイ機関〉や〈キャノン機関〉ではあるまいに、何とも古臭い名称じゃ。命名者はむろん御大では無く、Fじゃ。いつの間にか定着してしもうた。
 
 所属するはA・F・H・J・M・X・そして儂Qと、安手のスパイ映画の様じゃがコオド・ネイムを持ち、皆凄腕じゃ。それぞれ自身を証明する符牒も持っておる。世間話や軽い身の上話をするのは構わんが、本名を問うたり喋る事は厳禁じゃ。



 Aは東大法学部出身、國家公務員上級総合職だか1種だかに合格し警視庁に入庁したエリイト公務員じゃ。警察官僚であり、まだ二十代後半であった筈じゃが階級は警部だったか警視だったかのお偉いさんじゃ。
 Fは無職。年中カネが無くともマリファナは欠かさぬ。拳銃狂で、必要もさほど無いのに使いたがる。であるが儂及び他の〈ご同僚〉とのつき合いは欠かさぬ愛想が良い男じゃ。加え、何の因果か儂とおなしアパアトに住んでおる。
 Hは文京区白山にてタバコ屋を一人で営んでおる。若かりし日の三船敏郎に酷似しており、御大にキュウバ産の高級葉巻〈モンテクリスト〉を納めておる。幕末発祥の〈根岸流〉と云う手裏剣術の達人じゃ。
 Jは先に述べたが神田にて悪徳探偵稼業を生業とする男じゃ。調査依頼者と対象者を騙くらかし両者からカネをせしめておる。自称は〈神田の狂犬〉であるが、身長は百六十一センチ程で体重は九十キロ以上。ようはメタボリックであるが、ボクシングの腕は確かである。
 Mは唯一の女殺し屋でライタア、記事を書き雑誌に寄稿するのが生業じゃ。御大が月刊誌に連載されているエッセイもフリイながら担当しておる。男運は無いのに同性、つまり女に云い寄られる事が多いらしく、本人は閉口しているとの事。ナイフ使いで、左腕に刃渡り十五センチのアル・マア社製ウォウフェア、右腕に刃渡り六・五センチの服部刃物社製1メダカと云うナイフを収めたホルスタアを装着しておる。
 Xは先に云った通り、儂同様のじいさまじゃて。
 そして儂Qは年金暮らしの博奕狂い、と来たもんじゃて。とにかく、儂は殺しにかけては手段を選ばぬ、もっとも残虐な人でなしなのじゃ。古田の御大から〈注文〉を受ける様になって何年経つかのう。忘れてしもうたわい。



 西新宿路上。儂は小林竹生を殺した。ありきたりの、まあ頚椎骨折じゃ。流血も吐瀉物も無かった。目撃者も、証拠もいささか自信過剰であるが無い筈。キイ・ケイスと財布を抜き、屍は新築中の住宅敷地奥へ運んだ。財布中身を確認すると、十九万八千円と小銭が少し入っておった。



 小林のマンション。儂はステンカラアのコオトにシャツ、焦げ茶色のズボン。加えて云わばロイド眼鏡をかけておった。Xは皺一つ無いバアバリイのコオト、内には臙脂のネクタイに濃紺色のヴエスト、下はブラウンのズボン。それにハンチング帽。時代遅れの〈刑事〉コント二人組と云った出で立ちだった。それに儂もXも、黒く薄いウレタン板を靴の底裏に貼り〈ゲソコン〉つまり足跡を官憲の記録に残さぬと云った、Xならではの用意周到な〈悪巧み〉じゃ。白手袋もむろんしておる。否、浅はかやも知れぬ。
「小林を殺しましたね。いつもですと私が屍を〈処分〉するのですが、旦那様からの御命令には〈恥をかかせる〉事も加わっておりますから放置します。野良犬に餌として呉れてやりましょう。ではさらに小林にとっては死しても〈恥〉として残る小細工を」Xは右手首にはめたセイコウの高級機種を見た。「では参りましょうか。Qさんに申し上げるのは無礼かと存じますが、住人にあっても平素を」
「お主の頭脳があらばこその『古田機関』じゃ。儂は従うほかあるまいて」三階にある小林竹生の部屋へ向かった。



 小林の部屋。どうでも良いので説明は省く。儂はオウク材だがマホガニイ材かは分からぬが、それで造られた箱を開けた。中には高級時計が7つ入っておった。「ふむ、ロレックスはコスモグラフ・デイトナ、サブマリイナ、デイトジャスト。オメガはスピイド・マスタア、シイ・マスタア。タグ・ホイヤアはカレラのクロノグラフ、キャリバアエイト。業つく張りのくせに良い趣味をしとるわい。もっとも強欲な腐れ外道だからこそやも知れぬ」
「Qさんは随分と高級時計の知識がお有りですね」Xは柔和な笑みを浮かべた。「私にとって、時計と云えばセイコーなのですが。昔から」
「別に興味なぞ無い。性能で云うならばお主が愛用するセイコウの腕時計が一番、と儂は思う」儂はXの顔を無表情で見つめた。「しかしセイコウの腕時計は最高機種とは云え國産、質屋には足元を見られ安く買い叩かれる。であるが海外メイカアのは別じゃ。自慢にはならぬが儂は博奕打ち。軍資金が尽きた場合に備え、質草のために高級腕時計を買うのじゃ。今まで数えきれぬ程のシロモノを買い、質に流して来たので幸か不幸か知識だけは身につけた。今はオメガ、長年使っておる」
 Xは微笑みながら、Herzと云う老舗メイカアの鞄から〈それら〉を取り出した。
「何じゃX、よくもまあ同じものを揃えたものじゃて」
「いやはや、北條様から頂いた〈社内報〉のおかげです。小林のワンマン報で、マア俗悪の一言。小林おのれの自慢話ばかりでした。比較するのは愚弄するも同然ですが植草甚一氏気取りだったのでしょうが、読むに足らぬ紙クズでした。一部千円。社員に購読を強制すると云った、やはりどうしようもない愚か者です、小林竹生は。その中に〈ぼくの愛用品。時計が僕を選ぶ〉と云う記述があり、それが高級腕時計自慢でした。持って来たのは香港産でひとつ二千円のニセモノ。拙き筋書きですが、豪語した自慢のシロモノが皆ニセモノであり、小林はそれを喧伝しておった。露見すらば小林は〈うんちくを述べてたくせに本物と贋作との区別がつかなかった似非ブランド礼賛者〉と云う汚名は返上出来ませんでしょうな。死んでおりますし。故にすり替えが最も容易い手段と考えた次第です。『A―プレス社』従業員の方々には伝わらなくとも、小林と別居中の妻に息子らは〈多大な〉遺品を手にしますが、それが総てまがい物とあらば彼らは呆れ果てるでしょう。もともと小林に愛想を尽かし出て行った家族ですから、たれも弔いませんでしょうな」Xは満面の笑みを浮かべ抜かした。
「やはり恐ろしい男じゃお主は」儂は無表情でXの顔を見つめた。「おんなし老いぼれと云え、友にはなりえんのう。否、友など過去にいた事は無いが」
「私も同様です」Xは紳士然の笑みを浮かべた。「旦那様は私があるじであり、友人ではございません」
 Xが〈本物〉の腕時計とデスクから帳面を取り出しHerzの鞄にしまうのを見て、儂は小林竹生の部屋を去った。多々ある銀行手帳と実印もXは盗んだ。口座から引き出せるかどうかなど儂の知った事では無い。Xなら何とでもなるのであろう。



 念の為にXが小林の屍に細工を施している間、儂はホンダ・フィットが車内におり、カア・オウヂオから流れるかつての流行歌を聴いておった。

  アカシアの雨にうたれて
  このまま死んでしまいたい
  夜があける 日がのぼる
  朝の光のその中で
  冷たくなった わたしをみつけて
  あの人は
  涙を流して くれるのでしょうか

 西田佐知子じゃった。
 Xはドアを開き運転席に座った。「金となるモノは総て奪いました。代わりに〈武蔵尽誠会〉幹部の名刺数枚と以前〈錦寿興業〉の枝である〈松平商会〉の三下を殺害し奪ったトカレフの中國産コピーを上衣に。加え小林はかなり酔っておりましたから、オールド・パーの瓶を握らせておきました。件の〈俺様報〉には〈ぼくはオールド・パーしか呑まない。それも氷無しのソーダ割だ。誠の男ならわかる筈だ〉との記述がございまして。格好が悪く下手くそな文章でしたが、時計がそうであった故に事実と判断いたしました。しかし今宵オールド・パーを呑んだかは分からず、胃の内容物を調べらば、ですが〈不審死〉なのは明らかなのでそれ以上の偽装は無意味です。Qさんに申し上げるのは失礼かと思いますが、防犯キャメラはございませんでした」
 武蔵尽誠会と錦寿興業は関東を二分する極道じゃ。当然敵対関係にある。
「失礼、では無い。儂も無い事を確認したが、念の為じゃ」
「そうですか」Xは微笑んだ。「これは『アカシアの雨がやむとき』ですな。ヒットしたのは確か一九六〇年頃でしたね。聴いたのは後の筈ですが、その時私は何をしていたのか思い出せません」
「おんなしじゃ」儂は目尻を押さえた。
「それでは参りますか」Xはアクセルを踏んだ。「やっぱり昭和歌謡は良いですね。私らを赦免する筈は無いのですが〈処分〉した後に聞くのは格別です」
「儂らを断罪しておるのでは無いだろうか」
 Xは歌詞を口ずさみながら車を走らせた。

10
 
 Xはホンダ・フィットを儂が住むH町のボロ・アパアトまで、二時間も走らせた。何と云う遠廻りじゃ。時刻は午後十一時前であった。
 儂は小林が持っていた財布を抜き十万円を取り出し、Xに渡した。
「いいえ、受け取れません。私には奴から奪った本物のブランド・ウォッチがあるのですから。現金は全額、あなたのモノです」Xは紙幣を儂に返した。「私は時計を裏の故買屋に流すので、儲けはあなた以上です。その売りさばいた額も折れ、つまり半額にしますか?」
「それには及ばず、じゃ。お主Xが今後の〈工作費用〉に廻して呉れ。であるが」儂は十万をコオトのポケットに押し込んだ。「時計はセイコウと云ったが、ひとつ呉れぬか?」
 前方を見つつXは口を開いた。「何が欲しいのですか」
「サブマリイナじゃ」
「お眼が高い」XはHerzからそれを取り出し儂に手渡した。
「すまぬな。ダアビイが際に売り飛ばし、一点張りの掛け金とする。否、儂が使用品になるやも」
「私は北條様が組合を立ち上げるならば一部、いや半額をカンパしますよ。直接では無く、住所は知っておりますので郵送で。蛇足ですが小林が最期にはめておった時計がパテック・フィリップでした。むろん奪い偽物にすりかえましたが。笑いを堪える事が出来ず、調子に乗って右手首にウブロの偽物をはめました」
 儂はサブマリイナを受け取りホンダ・フィットから降りた。「まあどうでも良いわ。御大にはよしなに、な」
「かしこまりました。ではお疲れ様でした」Xは頷き、車を走らせた。

仕事

執筆の狙い

作者 在日の吉岡ニッケル

久しぶりに惡口云われたくて投稿。ま、どうせ誰も読まねえだろうがな。
俺とはナゼか相性が合う「野性時代」の一次選考どまりの駄作や。取るに足らんわ。

コメント

どう足掻いても凡人

読みました。中々の作品だと思います。裏社会のドラマ、という感じが伝わってきました。
個人的にはブレードランナーのような重厚なイメージが欲しかったところです。
では、以下指摘です。三角マークの所は作者の裁量次第、という部分です


・新宿は成子天神近くにおった
…文章がおかしい
・写真を見せられたが、微笑んでおるが眼は三白眼で、口元が吊り上がった奴で、精一杯の作り笑いに儂は見えた。
…で、は一介にした方が良い。あと、文章構成的に、作り笑いに見えた、はおかしい。作り笑いをしたように見えた、とか、違和感のない書き方に変えた方が良い
・新築とは云えぬが3LDKと聞いた。それでも場所は
…それでも、の使い方がおかしい。それでも、を使うなら、前の文章は悪い事態にせねばならない。
・ここにXはホンダのフィットとやらの、軽乗用車を大きくした様ないわば大衆車で来た
…ここに、を最初に持ってきているから読みにくい
・文句は云えぬ所業であるが、
…読点よりも句点の方が読みやすい
・青酸カリじゃを用いて
…言葉が分からない。ミスかな
△見せつけてやるつもりでおるが
…おるが、は変えた方が良い
・〈古田鉄工所陰の実力者〉と、儂と同じ『古田機関』の者は云う。儂と齢はそう変わらぬはずであるが、聞いたことはない。
…誰のことをその二つ名で呼んでいるのか。何を聞いたことが無いのか。言葉が足りていない

△儂、Xの前で
…儂とXの前で
・我が國で屈指の販売部数と規模の新聞社たる〈A新聞〉の子会社であったと誤解したのが浅はかでした。
…『A-プレス社』の名前はこの分の最初に持ってきた方が分かりやすいと思う
・A新聞社〈幻想〉
…始め観た時、〈幻想〉がA新聞社の名前かと思いました。改善した方が良いと思います
3
・消す、以外儂らに用は無い。
…能はない、の間違いではないでしょうか。それと、もしそうなら倒置方にしない方が読みやすいと思います。倒置方にするにも、書き方を変えた方が良いです
・警察官僚たるA
…A新聞と紛らわしいので変更した方が良いかと思います
・であるから、消去法であって失礼であるがお前
…であるから、の少し後に、であるが、を使うのは良くない
・お前さんQとXに任せたい
…お前さん=QとXなので、繰り返しになっている。違和感がある
・再び加え火を点けた
…くわえる、の字が違う
4
・残虐な報いを謀った依頼主に与える
…言葉の順序を変えた方が良いです
・Jは十万、取りあえず初回は指一本提示するのであるが脅された相手は怯えて一桁上げ、百万円を渡してしまう
…十万、の後に接続詞が欲しい
・〈報復〉なのでは無かろうか、儂の柄では無いが
…無かろうか、の後に一言欲しい
5
△おなしアパアトに住んでおる
…意図的に誤字にしているのかもしれませんが、読みにくいので一応指摘します。同じ、が、おなし、になっています
・御大が月刊誌に連載されている
…されている、ではなくさせている、ではないでしょうか。もし、されている、が正しいのであれば、御大が、を、御大の、にする必要があります。読点が多くなり読みにくくなって申し訳ない
8
△十九万八千円と小銭が少し入っておった
…所持金は札の数で表現した方が味が出ると思います
・愚弄するも同然ですが植草甚一氏気取りだったのでしょうが
…ですが、のすぐ後に、でしょうが、はやめておいた方が良い
9
・儂はホンダ・フィットが車内
…Xが運転席に乗るので、ここでは座る席を明確にしておいた方が良い
・しかし今宵オールド・パーを呑んだかは分からず、胃の内容物を調べらば、ですが〈不審死〉なのは明らかなのでそれ以上の偽装は無意味です。
…文章がおかしい
10
・財布を抜き十万円を取り出し
…財布を抜き、という表現に少し違和感がありました
・廻して呉れ
…誤字です

在日の吉岡ニッケル

間違い、その通りじゃ。俺は好き勝手にドグサレモノを書いてるからな。参考になったわ。
このシロモノ、KADOKAWAの『第十一回小説野性時代新人賞」の一次選考に通った。一部抜粋。
2020年1月号、418ページ。名前とタイトルはださん。過去の惡行がバレるからな。

ブレードランナーは好きだけど、俺が目指したのは鈴木清順の『殺しの烙印」じゃ。あっちゃこっちゃ、のべつまくなし書きまくるんやったら、エンタテインメントの勉強せいや。この秀才。

ラピス

個性が売りですね。独特の語り口調は、初め癖があるなあと思ったのですが、慣れてみると味がある。
登場人物が多いのに混乱しません。日頃から人間観察をされてるのですな。
ただ改行が少ないので、読みにくかったです。
何が足りないのか考えました。…色気じゃないかなあ。いや、主人公に色気がなくもないのですがね。
女ですよ。同性受けのいい女もいいですが、男受けするナイスバディな姉ちゃん。真面目な話、映像化を狙うなら、必須です。
途中までの投稿だから、これからかも知れませんが。

しょーもない感想で失礼しました。

群青ニブンノイチ

あまり関わりたくないと思っていたのですが、他の状況があまりにもやるせなさに尽きる有り様なので、仕方なく立ち寄らせてもらいました。

完全に流し読みで、内容はほぼわかっていませんが、ヘタクソではないことは普通にわかります。
公募に苦戦されているそうですが、例えばどうしてわたしが流し読みで十分と判断したのかということと、作者が思いのほか突き抜けないらしいことの理由は、案外似たようなところにあるのではないかと、個人的には考えさせられています。

あらゆる条件において、水準以上であることは素人目にもほぼ明らかのように思います。
作者と違わず、わたしも自己評価はそうあるべきとした客観を濾した上でも高く持ちたがるタチで、結果方々で嫌われてばかりいるものなのですが、それにしてもこの場所で遭遇した書き手の中で、わたしが勝てそうな気がしない書き手というのは恐らく、作者以外には存在しないのではないか、という認識でいます。
わたしはケチではないつもりなので正直にお伝えするものなのですが、作者の創作という態度には概ね信頼出来るものを察しているつもりでいます。

ですが、皮肉なことに作者が作り上げる作品世界には基本的に興味がありません。
持てない、と言った方が正確かもしれません。
そもそも目指す世界が違うということに尽きますが、打算的な言い方をすれば、ラッキーなことなのかもしれません。

わたしがもし選考委員であったり、担当編集であったとしたら、作者の何を嫌うかと言えば恐らく、その面倒に乾いたような態度そのものに違いないはずと思います。
よくわかっていらっしゃる方と思うので、あまりお節介なことを言うのは避けるべきと理解してはいるつもりですが、要は、そんなヒマはない、ということのような気が少しばかり思い浮かびます。
わかるでしょうか。
作者の面倒に乾いた感じは、つまり面倒くさいということ、言い方を変えれば、世間にはとても非効率なんだと思います。
スマートじゃない、ということ。
けれど、それは作者にとって一も二もなく大切なものであろうことも何となくわかるので、大層気の毒なような気分も思いつかされないでもありません。

例えばわたしはそういった面倒さのようなこそを、書きたがる者が書きたがる者として、何よりも当然として携えるべき”矜持”のようなものとして、正しく認めて、然るべく支持したい心持ちにさせられるような気が、何となくしてしまうのです。

わたしはこの作品の内容にはほぼ興味がありません。
ですが、どこかでちゃんと価値を認められて、求められるような境遇が待ち受けてくれていることを望みたいような気はします。

あなたがあなたとして見通したがるものはきっと上等に違いないのですが、所詮気が短いことが何よりの疵のような気がします。
それは恐らく、作品という可能性にとってこその致命的な咎になりかねないもののように感じさせられているので、とても損な有り様を眺めさせられている気分です。

どうして気の短いようなことに出会ってしまうのか、そんな理由こそ飽き飽きするほどわかっていらっしゃることと思います。
ですが、それに気づかない、至りこそしない未熟者たちを眺めて、無駄なイラ立ちを思いつくことはもはや諦めるべきのように感じさせられています。
レベルの違う話ですから、仕方のないことだと思うのです。

わたしはここを眺めているとほぼほぼイライラしますが、あなたの思いつくことは恐らく、また一つ次元の違う薄暗い勝気さのようなものなのだろうと勝手に想像します。
味気なかろうと、やはり気の毒に思います。

わたしがあなたの担当編集だったなら、勇気を出して筆の向きを変えることを、やはり願ってしまうような気がします。
それが他でもないあなた自身の一番の抵抗であることを、例えば関わる人の多くが案外普通に察してしまうということも理解した上で、ということです。

本当に望みたいことは何なのか。
あなたはここにいる誰よりも、価値の濃い苦悩を与えられているように思いますし、個人的にはそれをとてもうらやましくも思います。

気の小さい人がわたしは嫌いなので、馬鹿な人だなあ、と思っています。

見習って、わたしも頑張りたいなあとも感じさせられます。

馬鹿を相手にするところは所詮馬鹿だなあとも、やはり思っています。

在日の吉岡ニッケル

>どう足掻いても凡人、さんよ


俺のゴミなんて忘れちまってくれた方がいいが、凡人とやらの頭が硬いので、反論する。

・新宿は成子天神近くにおった
…文章がおかしい

おかしかろうが、「新宿の鳴子天神にー」だと面白くねえだろ。「男はつらいよ」の虎さんが口上は「わたくし生まれも育ちも葛飾<は>柴又です」だぜ。山田洋次に文句言えんのか、あんた。

・「精一杯の作り笑いに儂は見えた」はおかしい。

ってよ、あんたの「作り笑いをしたように見えた」じゃくどいんだよ。マ、「儂には見えた」が正しいんだろうがな。

・新築とは云えぬが3LDKと聞いた。それでも場所は
…それでも、の使い方がおかしい。それでも、を使うなら、前の文章は悪い事態にせねばならない。

何でおかしいのよ。俺の価値観で、人様が知ったこっちゃねえが、「新築ではない3DKなら安値で叩かれるが、場所は人気の西新宿だから安くはない」って反語の意味で使ったんだよ。新宿の地価は高えからな。読みが足らねえよアンタ。


 ま、誤字脱字はあるし、打ち損なったところは認めるわ。


・〈古田鉄工所陰の実力者〉と、儂と同じ『古田機関』の者は云う。儂と齢はそう変わらぬはずであるが、聞いたことはない。
…誰のことをその二つ名で呼んでいるのか。何を聞いたことが無いのか。言葉が足りていない。

…あのよ、アンタ想像力が欠如してんな。流れで<実力者>と呼ばれてんのはXだと分かんだろ。他の人物が登場してんのに。<聞いたことはない>って、前の文読みゃ<齢>って分からねえのか?言葉が足りてない?上等だよ。こっちは説明的な台詞はでえっきれえなんだよ。

・消す、以外儂らに用は無い。
…能はない、の間違いではないでしょうか。それと、もしそうなら倒置方にしない方が読みやすいと思います。倒置方にするにも、書き方を変えた方が良いです。

 「用はない」だよ!会長室に呼ばれている以上、「用があるかないか」なんだよ!能無しなら呼ぶか!何のための<殺し屋組織>だと思ってんだよ!ボランチアじゃねえんよ!

・御大が月刊誌に連載されている
…されている、ではなくさせている、ではないでしょうか。もし、されている、が正しいのであれば、御大が、を、御大の、にする必要があります。読点が多くなり読みにくくなって申し訳ない

 <御大が月刊誌に連載させている>?それこそ意味不明だろうが。御大はゴリ押しで月刊誌に寄稿してんじゃねえんだよ。御大の月刊誌に連載されているエッセイ……ますます意味不明だろうが、てめえ!人様にエラそーに苦言できる語彙力かよ、バカヤロー!!!!

 確かに誤字脱字は多い。が、

「おんなし」「誰が=たれが」(司馬遼太郎の真似)、「回る=廻る」「体=躰」「団体=團躰」、「本当=本當」「気=氣」など、気に入った使い廻ししてんだよ!


いいか「読みやすい」「読みづらい」と云われて凡個性的、味のねえ文躰で書いたらな、トーシロならなおのこと終わりなんだよ馬鹿野郎!直すべきとこは直すが捨てられねえトコは譲らねえ、じゃねえと書く意味がねえだろうが、このヘタレ野郎が!

 と、キビチイこと云ったけど、小学館あたりの、毒にも薬にもならねえ小説目指して頑張ってねん。

ま。書くのはこれで終了、としてえんだがな。俺よりも間抜けなヤローに日教組のセンコーみてえにしたり顔で抜かされたのが腹に立ったので、以上。

在日の吉岡ニッケル
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群青、さんよ。

あんたが俺のクズを誉めようと貶そうと、別にかまやしねえよ。
ただ、俺は<売文の徒>を自認してるから、堅苦しいハナシとくどい評論は無視する。
俺は評論家になるつもりもねえし、その素質もねえ。

信じるも信じねえもあんたの勝手だが、俺の<師匠>にあたる人は、直木賞作家・北村薫さんだ。
ゼミで小説創作の指導を受けたし「ゼミ生の皆さんの中では異色だが、もっとも筋が良い」と
かつては云われたが、いまだに燻っている。

書いたクズは送っている。版元付、でだ。

が、「君の乾いた文章はいいが、内容に興味がもてない」と返事をもらう。葉書で。
評価以前、の問題。

俺も、先生の小説は読まねえ。おんなしに先生の小説内容に興味がもてないからな。
だが人柄はめちゃくちゃ良い。真似する気もねえし、ワナビーになるつもりも、売り込んでいる訳
でもねえ。

あんたも、こんなミニマムな世界で喚き散らしてるよか、たれぞ作家センセイに原稿送った方が
勉強になるぜ。黙殺されることが多いだろうが、北村さんみてえに返事をくれる先生もいるからな。

これについてナニか長ったらしい文章をあんたが書いても、俺は何も記さねえけど。

以上。

ニッケル
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あと誤解させ、妄想をでっかくさせちゃあいけねえから、付け加える。
あんたと北村さんが俺のゴミにおんなし印象を持ったからといって、
あんたが北村さんに匹敵する小説書きだ、と云ってるわけではない。

流し読みくらいで、「わたしが勝てそうな気がしない」だと?
なら「わたしの方が上」と断言しろや。

俺は勝ち負けなんぞに興味はねえ。

以上。

夢酔人
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最新の感想のところに名前が挙がっていたので遅まきながら読ませていただきました。
良い評判をちらほら見かけていましたので。
めっちゃ面白かったです。プロはだしだと思いました。

文章もテンポも展開のさせ方もストレスがなくグイグイ引っ張る牽引力があると思いました。退屈しなかったです。
良かったところはリアリティがあったところです。老練の殺し屋かつ人生のベテランがいかにも口にしそうなこと、考えそうなこと、扱いそうな道具、金銭に対する感覚、歌の趣味、違和感がなかったです。
何ならちょっと勉強になったほどでした。
固有名詞の頻出は作品に彩りやムード、リアリティを与えることに貢献していました。過去の流行歌の歌詞の引用も(意図は十全に読み取れなかったものの)作品に変化と深みを与えていたと思います。
褒めるばかりだと参考にならないと思いますので、問題点を指摘したいと思います。
まず物語に起伏がない。とても単調です。あとQとXは魅力的な人物ですが老人であり華がない。枯れています。それから仕事に卒がなく淡々としすぎています。仕事の新奇さ、物珍しさが読者の興味を引きますが、ずっとこの作風で通すつもりならすぐに飽きられてしまうでしょう。筋のヒネリが必要だと思います。A、F、H、M等の個人設定はとても興味を引きますが、個別のエピソードを描かないのに一通り紹介したのはどういう意図があってのことでしょうか? 無駄だと思うので省くか、登場させて本編に関与させた方が良いと思います。
主人公は別に正義の味方でなくてもいいわけですが、考えに彼なりの正義があり、一本筋が通っていること、この点はクリアしています。しかしスーパーマンすぎて読者の感情移入を阻むところがあります。優れた点と人間らしい弱点の同居によって、感情移入はスムーズになることがものの本には書かれていますし、自分もその通りだと思います。
「感情移入させる→主人公が苦境に立たされる→勝利する(ご都合主義にならないように伏線回収)」このようなパターンが鉄板なのですが、御作は感情移入させることに失敗していますし、主人公は仕事を苦労なくこなします。本作は主人公の一人称で語られますがエクスキューズが多くどこかスカしたところがあります。作者様本人も主人公の格好悪いところを描きたくないのではないかとお察ししますが、その美学がエンタメとしての完成度を下げているのかもしれません。
あと思ったのは
・作品に社会性が乏しく厚みに欠ける(社会や社会の成員たる我々が共有している問題意識と無関係な作品であるため読者に「私の物語」という印象を抱かせることができずこういった分野に興味のない人にとってはトコトン他人事になってしまう)。
・物語から二重三重の意味を読み取ることができず平板(エンタメ的)な作りであること。
こんなところでしょうか。エンタメ作品なので平板でいいんでしょうけど、痛快な読み物であるためにはカタルシスが弱いというか、復讐譚にカテゴライズされるのでしょうけどちょっと仕掛けが弱いと思いました。
リアリティ、この作品の良さはそれに尽きると思います。物語を面白いものするための手法はどこでも簡単に手に入ると思いますので、騙されたと思ってそういった手法を活用していくことで活路を見出せるのではないかと思いました。

夢酔人
mno5-ppp833.docomo.sannet.ne.jp

すみません、訂正です。

>・作品に社会性が乏しく厚みに欠ける(社会や社会の成員たる我々が共有している問題意識と無関係な作品であるため読者に「私の物語」という印象を抱かせることができずこういった分野に興味のない人にとってはトコトン他人事になってしまう)。

この箇所ですが、ブラック企業で苦しめられた経験のある人にとっては痛快な作品になり得ているかもしれません。私自身はそういった会社で働いたことがありませんのでピンと来なかっただけです。

ニッケル
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断っておくが、俺が反吐をはく「純文学」では決してない。
あとね、他の連中、ちゅうか、これは俺の連作なのよ。
ここではQが主人公だけど、他のゴミだとAとかF、Jが主人公となり、脇役になる。
バルザック「人間喜劇」を、一応意識しているんよ。

ありがとね。

夢酔人
mno5-ppp833.docomo.sannet.ne.jp

あ、素晴らしいです。
人間喜劇!
ポリフォニックな世界観の構築。遠大な、素晴らしい仕事です。
絶対的、単一的な声の否定、多様な価値観の並置、多様性の受容、それは平和的な価値観へと発展していきます。
人間、一枚皮を引っぺがせばみんな同じですからね。
応援しています。では!

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