作家でごはん!鍛練場
千才森 万葉

恋札めくり ~詩飾り小説の欠片~

序章 “序の口ならし”


 触れもなく
  雄叫びを上げる 山颪の声
 幽谷を渡り 人、また人が
  己の身体を腕に抱き
   小幅な歩みを急かし行き交う



 ゆけども果てぬ峠の道に、降りし積もった落ち葉の重ねが踏み出す度に舞いあがり、乾いた音でちいさく、ちいさく鳴くのです。
 染みる寒さに貴方は思わず、手を懐に忍ばせました。
 まだまだ先は長いのですから、今はまだ、力を抱えていて下さいな。峠を登っていくほどに、風は冷たく強さを増して、貴方の行く手を遮るでしょう。

 嫌われ者の、独り旅。
 この山に、
 世界の全てに、
 貴方は疎ましがられたのです。
 世界は未だ、その本性を貴方に明かす気はありませんよ?
 それでも行くというのなら、常識から外れるというのなら、人ならざるモノに好かれてしまうことでしょう。 



第一章 “恋札めくり”


 どのくらい登ってきたのか、もうわからなくなりました。山道へと入り込んでからは人の姿もなく、独り、無心に歩むのです。
 振り返り、遠くに目を凝らしてみても、麓の明かりが見えることはありません。日の巡りがわからなくなるほど登り続けて、季節は秋の名残を残すのみ。

 山を越えて吹き下ろす風は、来たる冬の匂いを一足早く、裾野に撒いては解けてゆきます。
 今冬もまた、寒さに震えることでしょう。冬を前にし、木々たちは、大地に埋めた根を温めるべく、赤々と燃える葉を必死になって落としていました。
 それはまるで、山々に住まう者達の、終焉を飾る散華のごとし。何とも美しいではありませんか。周りを眺める余裕ぐらい、あっても良いと思うのですよ。
 それでも貴方は脇目も振らず、体中の血を心臓と足の間で循環させ、ひたすら前へと進むのです。目にも脳にも内臓にすら、血潮の恵みを与えようともしないまま、空っぽになった頭を垂れて、ひたすら登ってゆくのです。

 恐ろしい、ですか?

 先の見えない景色というのは、それほどまでに恐ろしいものなのですね。変わらないように見える道、通ったはずと心に訴えかける道、小さな獣道と交わってはどちらが正しい道順なのかと、自分自身に問いかけるのです。

 カサカサ。
 カサカサ。

 鳴きつづける無数の枯れ葉が、次第に貴方の心をむしばみ、心身の感を崩してゆきます。
 夕陽を背負い、歩き続けた貴方の足が、とうとうぴたりと止まってしまいました。震える膝に両手を置くと、つぎはぎに繋いだ息を繰り返し、内に籠もった熱を吐き出します。
 この風の中でも、汗ばみ、じっとりと湿る体の気持ち悪さに舌を打ちました。そろそろ一息入れないと、体力が続かなくなりそうですね。進みを止めてしまえば、引き返してしまえば楽でしょうに、そんな考えは微塵も持ってはいない様子。

 体を休められる場所を探そうと顔を上げると、どういう不思議か、行く道の先に大きな楼閣がそびえているではありませんか。確かに、先ほどまでは存在していなかったかと。
 しかし、二階建てのその楼閣は、見間違いを疑う事さえ難しいほど、色華やかに飾られた、雅な造りをしているのです。

 目に刺さりそうな赤塗りの壁。緑石で拵えられた柱に強く彫られた獣の群れは、影の落ち方ひとつを取っても気の配られた趣を見せ、秋色に染まる森の風情に逆らうような黒瓦が、時の流れに攫われないよう楼の品格に重みを付けておりました。
 夕暮れの紅にも滲むことなく、それでいて、色香を放つ佇まいは、心に巣くった煩いごとを天へと返さんばかりの夢城。

 貴方はまるで、小波にたゆたう浮きん子のようにふらふらと、ゆらゆらと、楼の口へと吸われていきます。門に掛かった看板には『夢回楼』の金の文字。ごく控えめに宿場の文字も彫られていますが、どうやら妓楼のようですね。豪奢な造りも頷けます。

 近づけば近づくほどに、俗世離れの風情を醸す建物ですね。外観はもとより、窓の欄干その奥に誰の姿もかすめないこと、こういう場には付きものの呼び子の声が聞こえないことなど、一帯に人の気配というものをまるで感じられないのも、幻想を思わせる要因になっています。
 妓楼の様相を呈しているとはいえ、宿は宿。貴方は寸暇の寝床を求め、入り口に垂れた暖簾に手を掛けくぐります。

「いらっしゃいませ。ようこそ夢回楼(ゆめかいろう)へ」

 不意に沸き立つ生き物の気配、同時に響いた男の呼び声。驚いて声の方に顔を向けると、横に肥えた背の低い、二重顎の男が立っていました。銭を転がすような揉み手に、随分と低い腰を見せ、揚揚とした足取りのまま貴方の側に寄るのです。

「おや、若旦那。ここへのお越しは初めてですかな?」
「ああ、いや。上がりに来たのではない。足を休ませてもらいたくてな。隅にでも、少し座らせてはくれないか? 銀ならいくらか手持ちもある」

 右に左に目をやれば、掃き清められた広い三和土に、梁が交わる高い天井。奥へと繋がる廊下を仕切る屏風に流した花鳥絵図。格式を推し測った末、娘を買ってしまったら手持ちの路銀じゃ賄えないのではないかと、貴方は尻込みしてしまうのです。

 見上げた先の太い梁を、隻眼青躯のヤモリが走って行きました。お使いにでも行くのでしょうか。
 男がぐいっと顔を近づけます。

「おやおや! 四方八方、彼方に此方。国に名高い器量良しを、上から数えて、揃え集めたこの夢回楼。お立ち寄り下さった旦那様を、何のお構いもないまま帰したとなれば、楼の恥でございますよ。どの娘も手慣れた遊女でござい。ごゆっくりなさっていって下さいな」

 堂に入る誘い文句と、擦り揉み手。
 これだけ広い入り口に、笑顔の男が1人だけという異様な雰囲気は、まるで四方八方から貴方を飲み込もうとしているかのような圧迫感を感じます。本来であれば、お部屋を空かせている遊女達が、この入り口や二階から艶めかしい眼差しでお客を誘っているはずなのに、まるで世界から取り残されたかのような静けさに満ちています。
 もっとも、これだけ山深くにあっては、遊女の数も限られるのかもしれませんけどね。男の言葉に引き込まれかけながらも、貴方は右手を横に振ります。

「いや。持ち合わせがないもので。ただ、一息入れたかっただけなのだ。風をしのげる場所があれば、どこでも」

 すると男は、げっこうげっこうと頷きながら笑うのです。

「当楼では、初めてのお客様から揚げ代は戴きません。その心配は無用の長物にございますよ」

 揚げ代をむしり取られる話はよく聞きますが、取らないとなると驚天動地。不思議なことを聞いた、そんな心情を顔に浮かべ、貴方は理由を問いました。
 すると男は、相も変わらず軽妙に節を付けて歌い出します。

「初めましてはお導き。二度目の縁は言葉で結び、三度四度と盃かわせば、五つ何時しか居着くもの。私どもは、お金だけの縁を求めないのですよ。何度も足を運んでもらえるように、様々な趣向を凝らしております。良縁は金で買えぬもの。そうは思いませんか?」

 随分と耳当たりのよい台詞ですけど、その目の奥にはしたたかな光が、ちろちろと見え隠れしていますね。軽佻な口車に乗るのは危ない気もしますが。わかっているのかいないのか、貴方は懐から取りだした手で顎を撫でると、大きく頷くのでした。

「これはまた、洒落たことを仰いますね。一期一会なんて言葉もありますが、私は一度で離れてしまう縁を寂しいと思うのですよ」

 一期一会はすれ違うだけの縁という単純な意味ではないのですけども。それでも、男は我が意を得たりとばかりに、何度も首肯してみせました。

「まさにまさに。今夕は出会いに恵まれておりますな」

 嬉しそうにお腹を揺らして笑う顔は、まるで手軽の鴨がやってきたと言わんばかりに見えるのですが。男二人が向かい合い、まるで旧知の仲のように笑顔を見せるた後に、貴方は大きなあくびを漏らしました。それを見た男は、ポンと一つ手を打ちます。

「ああ、これは不作法を。旦那は休息をご所望でしたね。もちろん構いませんよ、では早速、こちらでお好きな娘を選んでいただきましょう」

 そう言われたので、隣の部屋で顔見せが行われるのかと付いていったのですが、部屋の中にあったの非毛氈が掛けられた長い縁台。縁台の上には、手の平ほどの大きさの、黒塗りの札が十数枚並べられています。
 紅の原に、寸分の狂いもなく並べられた黒い札。その札一枚一枚に彫り込まれた金の文字が、典雅に、そして妖しげに、出番を待って佇んでいます。
 書かれてるのは歌のよう。
 視線で男に問いかけます。

「当楼では顔見せを行わないのですよ。代わりに文を書き交わし、夜伽のお相手を選ぶんでいただいております。顔かたちで選ぶより、心を通じ合わせた方がしっくり重なるものですよ?」

 げっこうげっこうと、何とも品のない笑い声を挟んだ後に、こう続けたのです。

「お好きな歌をお選び下さいな。そして、その返歌をお書き下さい。書かれましたら遊女の元へとお運びし、返歌を気に入った者が一晩のお相手を致します」

 貴方は戸惑ってしました。歌なんて書く機会も無ければ、作法だって知りません。
 目があらぬ方へと泳ぎ始めた貴方に、男は心配ないと、笑って見せます。

「なにも、後世に残そうなどと申し上げるつもりはございませんよ? 傑作を綴っていただくことはないのです。思ったことをそのまま筆に乗せてもらいますれば、後は娘たちが上手に事を運びますゆえ」

 難しく考える必要は無さそうですね。
 何にしても、まずは札を選びませんと。

「玉響を鳴き競いしは 晩夏の蜩 草雄虫 仕舞えぬ恋に縋りて過ごす 夏の終わりの長きこと」
「赤砂(あかさ)な浜やら輪を閉じる 閉じぬ門扉に腰を掛け 春越え夏越え 待っています」
「なずむ茜に射された草木が 焔の芯よりさやかに燃える 一日千秋 焦がれてくすぶる 橋の欄干に罠を掛け」
「川面に跳ねた銀鱗が 夏の日差しにきらりと溶ける 下駄を揃えて爪先浸し 魚と遊んで 貴方を待つわ」  

 うんうん唸っていると、いつの間にやら横手に人の気配。背は貴方の胸ほどしかない11,2の女の子、妓楼であることを考えれば、禿(かむろ)でしょう。
 ひと目見た時に遊女かと見違えたのは、驚くほど端麗な容姿ゆえのこと。真っ直ぐ流れ落ちる御髪は、冷涼さを感じさせる銀色。前に垂らした一房を纏めた細い帯さえ、滑り落ちてしまいそうな光沢が、瑞々しい髪に上品さを与え、この年齢では持ち得ない色気を醸していました。

 銀の髪に包まれた顔(かんばせ)も、真珠を思わせる濃密な白い幼顔で、特に目を引くのが左右色違いの瞳です。
 片や金。気品高く、冴えた輝きを持つ鬱金色。
 もう片側は赤。心の深くに沈めてもなお、冷ましきれない情を映した赤銅色。

 赤や黄色、紫などの濃い色で拵えられた着物を着こなしてはいますが、異国の方かもしれませんね。
 見惚れてしまうほどの容姿に、我の強い存在感。瞬く間に惹き付けられた貴方の視界は、周囲から浮き上がるかのように映える彼女の姿に埋まり、視線は色違いの目から外せなくなりました。それは正に、天賦の配色。

 貴方の視線を正面から受け止め、その子は怖がるでもなく、逃げるでもなく。だからといって、貴方の瞳に興味を示すわけでもなく。黙って貴方を見つめているのです。
 まるで、そう。静止した時の中から、存在していた証を産み出そうとでもするかのように。落ちる一対の影が、一幅の壁画として描き止められ、平面としてでも後世に残ることを願うかのように。
 
 不意に沸き上がってきた熱の名は慕情。その制御できない衝動に、とりとめのない思考が追いついてしまい、貴方の心は空虚の中に置かれた音叉が独りでに鳴動を始めるかのごとく、震え、その音は徐々に大きな波を打つ本音に変わっていくのです。
 その流れに逆らえず、甘く痺れる情に負け、貴方の腕がその子に 
        伸びて
            指の先が求める――

 ――先に伸ばしきったのは彼女の方でした。
 すぅっと上げた手の、人差し指が微かに反って、貴方の胸を指し示します。その後に、つぃと横へと滑って指し示したのは、非毛氈に並べられた黒い札。
 最後に彼女が示すのは、紅を乗せた小さな唇。微かに開いた雪椿の花びらに、優しく指を押し当て、こくりと首をかしげた姿は、恋も知らない無垢な乙女の星願い。
 とでも、言ったところでしょうか。きっと遊女の皆様に仕草を教わったのでしょうね。

 細い指の伝えたいことが、『札を選んだら自分に渡して』という意味なのだと気が付いた時にはもう、貴方の心を捕らえようと迫っていた濃密な色気は霧散していました。
 夢から覚めたかのように慌てて瞬きをしてみると、掻き消えていた周囲の景色にも色が戻り、ふわりと視野が広がったのを感じとれます。どうやら雰囲気に飲まれていた様子。

「ああ、すまない。ぼうっとしていたみたいだ。札を選んで返事を書いたら、君に渡せば良いんだね」

 そう言うと、彼女はこっくり頷きます。
 その仕草に揺らされた髪の一房。その遊びを作っている小さな花を摸した髪飾りが、琴線に触れました。
 黄色い縁取り、芯は薄紅、ハートの形の花びらを四枚咲かせた円模様。


「可愛い髪飾りだね」

 その言葉を受け、彼女の唇が綻びました。年相応に可愛らしい表情が、貴方の興味をくすぐります。

「自分で選んだのかな?」

 こくり。
 容姿の可憐さを口に出して褒めるのには、少し恥ずかしかった貴方ですが、髪飾りならできそうだと、知恵を回してみるのです。

「この辺りじゃ見ない花だね。どこで摘んできたんだい? 銀のあぶくが煌めく天の、川に流れる星の裏かな? それとも南の孤島で鳥が、描いた虹の麓かな? 柔らかなまどろみの中にひっそりと乙女心を灯らせたような色使い。左右の瞳によく似合っているよ」

 不安定な言葉の編み物。
 それでも彼女は頬を染め、照れながら何度も髪飾りに手を伸ばしては引っ込めるのです。そんな仕草は年相応で、無垢な可愛らしさに満ちています。

 このまま入り口に留まって、彼女と戯れるのもいいのでしょうけど、貴方は札に向き直りました。一つ一つに目を通し、心を寄せて味わうものの、どれも総じて個性に富んで、チャリリと効かせた洒落っ気がくすぐったい脇に刺さるように、ほぅ、ほぅと唸るばかりで、なかなか絞りきれません。
 そんな中、一番左の上端に置かれた札に目が留まりました。

『嘘つき常の口つつき
 杵つき月まで連れ添うて』

 何だか語呂の良い歌ですね。札を手に取り、早速お返事を考え始めます。

『戻れぬ月は寂しかろうと
 泣きつ寝付きの浅き夢』

 金色の文字の左に書き添えると、ずっと待っていてくれた少女に渡します。彼女はじっと札を眺めると、しばらくして一つ頷き、トテトテと衝立の奥に引っ込んでいきました。階段を上っていく足音が聞こえます。
 この入り口で眠るのでもいいけど、どうせなら女性に沿われて眠りたいと、心中穏やかならざる面持ちで、大人しく結果を待つ貴方。

 一人きり。取り残されてしまえば、することもなく、誰の気配も残らない静かな三和土を見渡します。
 隅々まで気の配られた内装は、見ているだけで癒やされますね。玄関は丁寧に掃き清められ、壁に掛かった異国情緒を醸す湖畔も、海底に沈む古代都市の日常風景画も、日焼けのくすみさえ見られません。空気を持ち上げるかのような、緋毛氈の毛並みも豊か。

 四季の花々が彫り込まれた天井の梁、その陰にいたモノと目が合いました。隻眼青躯のヤモリです。4つの足を目まぐるしく動かして、梁を回っていましたが、やがて一つに落ち着くと、三角頭を左右に振って、縦横に目を巡らせます。
 そして、ぱかりと口を開けば、したたり続ける長い舌。どこまでも伸びていき、やがて、ふつりと根元から切れました。

 天井から落っこちてきたイモリの舌は、宙で丸まり、パチパチと目映い火花を散らせはじめました。その光は太陽のような包容力を持たず、雷のように唯々激しく怒るのです。
 散った火の粉が柱の陰に、壁の隙間に、机の裏に。部屋のあらゆる暗がりを目がけ、石火の速さで飛んでいきます。
 この光に驚いたのは、影に潜むもそもそ達です。黒黴にも似たもそもそは、姿形が定まらないまま。もそもそ這い出て彷徨います。

 或る小さなもそもそは老婆の姿に化けました。
 細く長いもそもそはヤマトシジミに化けました。
 柱に付いたもそもそは胡瓜のヘタに化けました。
 しかし、そんな子供騙しじゃ、イモリの舌はごまかせません。どれもこれも見破られ、門の外へと追い立てられます。部屋の隅まで綺麗になった頃にはすでに、イモリは別の部屋へと移っていました。

 今のは一体何だったのかと首をかしげた貴方の視界に、真新しい掛け軸が映り込みます。その掛け軸には、隻眼青躯のイモリが描かれていますね。どうやら楼の守り神のようですよ。イモリに、ムカデに、ヒキガエル。精緻な文字でかれらの特徴も添えられていました。
 その者、片目の掃除番。輝くベロに舐められた部屋は、穢れの住まう場所も無し。
 その者、赤い頭の始末番。楼に仇なす者あらば、地の巣穴より沸き起こり、瞬く間に咬み千切る。
 その者、肥えた帳簿番。人に金に日にちまで、楼の全てを記載しながら、来る日も来る日も客を呼ぶ。

 そうこうしているうちに、女の子が戻ってきました。笑顔と言って良いのかどうか、それでも柔らかな表情から、好ましい結果を携えてきたのだなと推測を立ててみる貴方。
 はい、正解しましたね。立ち上がって迎えた貴方の目の前に、手を差し伸べてくれました。
 さあ、手を取り行きましょう。
 ここはイロハの井の頭。
 ここから先が本番です。



第二章 “登楼ゆめりな”


 屏風の裏へとまわり、廊下の先の階段を小さな手に引かれながら上っていきます。途中の踊り場で一つ曲がって、更に登ると煌びやかな襖に突き当たりました。襖を開けて出た先は、二階の廊下のど真ん中。そこに広がる光景にびっくりして、貴方は言葉を失いました。
 廊下は左右へ長く伸び、どちらの先も緩やかに曲がっているため先が見えず、全体でどれほどの長さがあるのか全く想像できません。そして、廊下の両脇に無数の部屋があるのです。見える範囲だけ数えても、襖の数は四十を超えてしまいそう。
 外から見た感じでは、建物はこの様な形ではなかったはず。

 襖と言わず壁と言わず、至る所に壮麗な画が描かれています。

 山であれば、果てなくそびえる切り立ち峰がが。
 いかなる物にも代えがたい、至高を誇る不二独立山が。
 静謐な霧をまとった山紫水明の小さな山々が。
 熱い火口を抱えて広がる懐の深い活火山が。

 海であれば、地平の彼方に異国の大地が霞む海原が。
 荒れ狂う波間に見える、頑固な白の埠頭が。
 海鳥が騒ぎ立てる下、命のやりとりが繰り広げられる、自然の営みを育む洋が。

 獣であれば、牙を剥き血を流しながら雌雄を争う、血の気が多い二頭の羆が。
 草原に唯の独りで、星座の勇姿に吠えかかる若獅子が。
 人に馴らされ人に使われ、それでも牙を失わない、気高き犬の立ち姿が。
 天寿を全うして土へと還っていく、夫婦鹿の寄り添いあう姿が。

 花であれば、風に舞う黄色の花が人々を俯瞰しながら彼らの暮らしに溶け込んでいく、春の岬が。
 緑の大地に凛と咲く、染めることも染まることも嫌う一本の紫の華が。
 うち捨てられた家屋を覆った無数の蔓が付ける、真白な花が。
 雪深き山に落ちた深紅の一輪が。
 

 狂ったような緻密さで描き込まれた画の数々は、まるで大地を作り替えようとする波のように迫り、貴方の意識を揺さぶるのです。
 一目で心に情景を届ける絵画には、一切の共振を許さない言葉の行が添えられていました。
『平面を映す物こそ立体であり、立体こそが虚像の始まりであるなら、零次元に見る光点こそが星霜を意味し、彼の越境さえ望めないのだと悟るのならば、祖はやがて其方の業に宿りけり。』
 意味の通じない綴りに何故か、何故かとても惹き付けられるのです。

 ここだけ違う星に通じているかのよう。
 貴方はお上りさんよろしく、頭をきょろきょろ。
 大きく開いた眼もきょろきょろ。
 ついでに手足もきょろきょろ。
 上下左右もきょろきょろ。


 きょろきょろ。
 きょろきょろ。
 きょろきょろ。
 きょろ
      きょろ。


きょろ   
       きょろ。
        きょろ      きょろ。
     きょろ
 きょろ。

          きょろ
きょろ。


 襖に描かれた山や海、獣や花が語りかけてきました。

「汝《なんじ》はどこへ向かうのだ?」

 貴方は答えます。

「この先へ。山を越えて、未来へ進むため」
「何のために?」
「……わからない」

 襖はカタカタと笑います。

「左様か、左様か。人の身で、己の丈より高みへ登るのは苦しかろう。幼き頃に立てた望みも辛苦に紛れ、散り散りになったとしても不思議はない。もがく理由を見失ったのならば、良い、良い、この階段を上るが良いぞ」

 左手の襖は開かれていて、その先に上り階段がある事に、今更ながら気が付きました。

「独りきりでこの場所に居るのは寂しかろうて。誓いを忘れ、希望を見失っては、未来さえ苦しむだけの時となれり。いっとき、全てを忘れ、天上にておなご達と戯れるがいい」

 長く、果ての見えない廊下。行く道。
 ここにきて、華美な装飾が施されたこの場所に取り残され、ぽつんと立っている事が急に恐ろしくなってきました。
 どこを向いても立派な造形で、みすぼらしい自分の居場所なんて無いように思えてしまうのです。

「怖がることはない。ここは慰めの檻。寂しく感じる心さえ、溶けて揮発してしまう迄、ぬるく溺れさせてくれる牢である」

 そうなのかもしれないと、まるで天啓のように、脳裏を光がよぎります。ここは妓楼なのだと。
 肌の温もり湿る声、世を捨てた匂いに抱かれ、理性をぼかされ、安穏とした悦楽に溺れさせてくれる場所。

「汝の望む場所はここにはないぞ。其方の視界に未来など見えぬであろう。さあ、ここを離れて上へ登るがいい」

 貴方は思い出しました。
 本当の心が望んでいたのは、手の届かない高い望みなどではなく、高みから世間を見下ろす堕落した快楽の世界。
 何も考えなくてもいい、何も成さなくてもいい。ただただ本能に従って動ける場所だということを。


 望む場所は上にあるのだそうですよ。
 登ってみますか?


 一歩を踏み出し掛けた瞬間、思いっきり腕を引っ張られました。心臓がひっくり返りそうになって転びかけながらも、なんとか踏みとどまります。
 右腕を見ると、先導していた少女が、ぎゅっと腕にしがみついていました。
 銀の光を返す髪が目に飛び込んできた時、酩酊した意識は不可思議な束縛から逃れ、素直な景色を見ることが叶うようになりました。
 一方、彼女は悲しそうな、心配そうな顔で貴方のことを見上げています。

「ああ、すまない。ちょっと……これらの風景画に当てられていたようだ」

 あまりに沈んだ顔を見せるので、安心させようとしゃがみ込み、彼女と視線の高さを合わせます。貴方は髪にそっと触れて、落ち着かせるようになで下ろしました。
 それでも、彼女は唇を噛んだまま、目の色を変えることはないのです。

「もう、大丈夫だよ」

 声を掛けても、効果は無くて。
 彼女は首に掛かっている紐を手繰り、胸元から小さな袋を抜き出しました。お守り袋のようですね。それを貴方の目の前に持ってきます。
 何をさせたいのかわからずに首をかしげてみせると、彼女はお守り袋を自分の鼻に当てて、目を瞑りながら大きく息を吸いました。そうして見せてから、もう一度、膝を付いている貴方の前に掲げてみせます。
 どうやら匂いを嗅いで欲しいみたいですよ。

 一歩、膝を擦り前に出て、彼女の胸元のお守り袋に鼻を近づけます。目を瞑って深呼吸をすると、強く、甘い香りが肺を満たしてゆきました。
 何の匂いでしょう。
 食べられる限界まで熟させた果実の香り、人の手の入らない深い山腹に湧いた、泉の縁の苔むす匂い。
 手先がピリッと痺れてきました。意識が、危なっかしい ふわふわ した感覚に変じてゆきます。わかっていて、それでも離れがたい悩ましげな匂い。
 彼女は自らの内側に、こんな景色を隠し持っていたのでしょうか? こんな景色と共にいるなら、外の情景などに惑わされることはないでしょう。


 さらりと髪に触れられました。
 彼女は手櫛をかけるように、差し入れた指で貴方の髪を梳いていきます。
 浮きかけていた意識が鮮明になってきました。
 見ると、彼女の表情は穏やかなものに変わっていました。この顔をみるだけで、お守りの効果を信じられそうな気持ちになりますね。

 再び、手を引かれて長い廊下を歩いて行きます。
 襖を何枚過ぎたかわからないほどの先、一枚の襖の前で彼女は立ち止まり、小さな手が離れていきました。

 その襖に描かれている画は、石畳に赤い鳥居が立ち並ぶ、静かな参道を描いたもの。
 押しつけがましい我筆にならず、それ故、赤鳥居が本来持っている、清らかに引き締まった気配が伝わってきます。

「ここかい?」

 こくりと頷くと膝を付き、襖を微かに開きました。

 すぅ
 たしっ

 すぅ
 たしっ

 少女が小さな音を立てて開け閉めすると、中から艶のある声が返ってきました。

「はいな」

 小さな声ですが、静かなここではよく通ります。
 少女はそろりと襖をずらした後、一呼吸置いて、するすると引き開けていきました。

 茜の隠れ家。

 夕の赤が、部屋を満たしていました。
 十畳ほど、でしょうか。それほど広くない部屋の天井は低く、こざっぱりとした調度品でまとめられています。障子窓の奥に見えるのは、木々が生い茂る山。部屋の向きを考えればおかしな事だと、そんな事も ちら と頭をよぎりましたが、それらの考えは、すぐにどこかへ飛んで行ってしまいます。

 部屋の真ん中、三つ指を突いた遊女は、そっと顔を上げ、「お待ちしておりました。寝月姫《ねつき》、と申します」と、葛湯のようにとろりとした声で迎えてくれました。

 綺麗な一筆書きの鼻筋に、細められた目、蕩けるように下がった眦。柔らかそうな頬や耳たぶに、ふっくらとした唇には紅が乗り、思わず触れたくなるほど魅力的です。
 幾重にも重ねた着物は、内側ほど色が薄くなるよう仕立てられていて、一番外の金糸の刺繍が縫われた赤い着物から、鎖骨のあたりにちらりと覗く真白の薄着まで、実に見事な色の重なりを見せています。

 誘われて一歩踏み出すと、後ろで音もなく襖が閉まっていきます。それを見届ける間もなく、立ち上がった女性に手を引かれて、部屋の真ん中に腰を下ろしました。
 障子を閉めて風の音を塞いだ寝月姫さんは、貝細工の施されたお盆を手にして貴方の隣へ。目の前に、朱塗りの盃とお銚子が用意され、どうぞお一つと手渡されます。
 でも、貴方はもらい渋りました。
 今、お酒を呑んで眠ってしまっては、起きたときに夜になりかねないと危惧したのです。今日中にこの山を越えなければならない貴方にとって、盃は受け取りにくいものでした。

「でも、今日は床ではなく、お膝を所望なのでしょう?」

 渋る態度を見た寝月姫さんは、貴方があぐらに組んだ足の間へ差し入れた手を床に付き、迫ります。頬に唇が触れる距離で問いかけてくるのです。

「お酒も飲まずにわたくしの膝へ頭をお乗せになられては、眠りにくいのではありませんか?」

 確かに、目の前にこれだけ艶やかな肢体があっては仮眠でさえ取りにくいかもしれません。自信を隠そうともせず訊ねる声に、瞬きする間ぐらいの逡巡を見せた後で、貴方は盃を受け取りました。そもそも、間合いを盗まれた時点で、貴方に勝ち目はないのです。

 トクトクと鳴る透明な液体は、盃の底に描かれた蝶をひらりと舞わせます。おっと、と慌てて口を付ければ、鼻をくすぐる酒精の匂い。
 久しく飲んでいなかったお酒は、身体の隅まで流れ込み、懐かしい熱を呼び覚まします。
 一度口を付けてしまえば、引き返せなくなるのが上質なお酒の魔力。空けるたびに嬉しそうに微笑まれ、甘やかしの言葉で撫でられるのですから、更に引き返せなくなってしまいました。
 結局、銚子を1本、2本。

「旦那様のお名前をうかがってもよろしいですか?」

 ふうっ、と耳に入り込んでくる蜜に濡れた声。

「星摘実(ほしつみ)」

 稀なる偽名。
 答えると、何故か彼女は手を叩いて喜びました。

「まあ、お星様のお名前ですか。わたくしとはご縁がありそうですね。わたくしには月が入っていますもの」

 ご縁に幸がありますよう。手をそっと押さえられて、くちびるが重なります。

 祝福を擁する唇
 微かに解けては
 絡み合うしるべ
 濡れそぼつ吐息


 細い指先が、今重なったばかりの貴方のくちびるに伸びてきます。微かに触れた後、つい と横に流れました。

「お髭」

 最近は手入れをおろそかにしていましたから、顎は無精髭に覆われているはず。
 そんな感触を楽しむ指先が、やんわりと耳へと沿い上がります。頬を包む手の平に、くすぐったさと温もりを感じます。

「彫りの深いお顔にございます。輪郭は鋭さを持ち、まるで飢えた獣のよう。さぞかし腕の立つお方なのでしょうね」

 頬からするりと衣の合わせ目に伸びる手。
 その冷たさに、ぴくりと身体が反応します。
 
「隆起した胸板は逞しくて。お身体の芯に、硬い力が宿っているのを触れただけで感じられます」

 じっと、彼女と視線が密に交わります。

「太い眉毛の下で輝く黒い瞳は、まるで……」

 話の枝葉を途中で手折ってしまった彼女。
 そっと目を閉じ、過去を遡るかのような表情を見せました。
 もう戻ることのできない過去なのでしょう。辛く悲しそうで、本能的に優しく抱きしめたくなる顔を見せるのです。

「まるで黒水晶のよう」
「黒水晶?」

 貴方はまだ見たことはありませんね。とても光沢のある、真っ黒な水晶のことです。
 あやかしとの相性が良い石。

「はい。闇色の晶《しょう》の中でも特に光を返す石でございます。わたくしの故郷でも僅かながら採れましたが」

 懐かしい。そう呟いた彼女が再び目を開くと、黄色掛かった薄めの瞳は、初心な子供のような涙に潤みはじめます。
 胸を指でいじられたまま、互いの距離が縮まり、声なき思いをくみ取って、今度は一緒にくちびるを逢わせました。
 吸われるような口づけは、身体より先に心を解かれる、遊び心に富んだ大人の仕草。涙が見せた純朴さは、彼女にとって捨ててしまいたいものなのかもしれませんね。



第三章 “炙り出し”

 彼女は聞き上手でした。
 遊女というだけでなく、天から授かった才能なのでしょう、言葉扱いが巧みで抵抗無く心の内を引き出されてしまうのです。
 貴方は、生まれ故郷から、この山を登り始めたところまで、色んな話を溢しました。
 その度に、喜怒哀楽を浮かばせて、もっともっと、と誘うのです。

「どうしてこの峠へ?」
「この山を越えたいんだ。越えなければ、未来はない」

 そう答えると、彼女は、まあ、と驚いて目を見開きました。

「どうしてそのような事を仰るので? 日が沈み、月を迎えてしばらく経てば、未来など、必ず向こうからやってきますのに」
「いや、望むのなら、自らの手で取りに行かねばならないのだ。でなくば、私に将来はないだろう。いつまで経っても、誰かの後ろを這いつくばるのみ。そのような無様な姿を晒して生きるわけにも行かない」

 貴方は熱い言葉を吐き出しますが、彼女はそっと目を伏せ、もの悲しそうに囁くのです。

「そのような事。将来の善し悪しなど、誰がお決めになるのでしょう。他人は他人、ご自身が幸せであれば、それでよろしいではありませんか。幸せは、ここにもそこにもございます。お身体を酷使してまで他人と競い合うことはございませんよ」

 ここにずっといらして下さいな。

 甘い囁きと甘い価値観が、止まない霧雨となり、心を覆っていきました。
 本能を司る脊髄の警鐘。とは言え、寝月姫さんと二人きりでいれば、混濁する心地良さに浸る危うさへ危惧など、取るに足らない世迷い言だと言い切る自信が湧いてくるのです。止まった刻の中で、意識だけが流されていきます。
 快楽の何がいけないのでしょう。獣の時分から備わっている術だというのに。自問自答は答えを求めない遊戯に近しい。

 そろそろ横になりますか?
 尋ねられた貴方は、うつらうつらしながら、視線を脇へ移していました。
 さきほどから気になっていたのは、和紙で作られた灯籠。

「あら、そちらですか? それは走馬燈にございますよ。ご覧になりますか?」

 少々お待ち下さい。
 彼女は走馬燈を飾りのない壁の前に置きました。外側の六角形の和紙の枠を外して、中の蝋燭に燭台から火を移します。
 ぼおっと点いた灯火はゆらゆらと揺らめいて、次第に直立する火へと変わっていきました。でも、障子窓に夕日の入り込んでいるこの部屋では、走馬燈を走らせるのに、いささか明るすぎる気がします。

 と、寝月姫さんが着物の裾を摺らせながら、障子へと近づいていきました。障子に手を掛けると僅かに隙間をつくり、タンと音を立てて閉めました。
 乾いた音が響くと、部屋が すうっ と暗くなっていきます。二度、三度。繰り返す度に、見えるものが少なくなるほどの暗さに。

 とうとう蝋燭の明かりがなければ何も見えなくなるほどの闇が部屋を満たしました。そして走馬燈の脇に、そっと腰を落ち着けた彼女。暗い部屋に蝋燭の灯りを受け浮かび上がる姿は、現実離れの美しさを持ち、柔らかく崩した白い足が、着物の合わせ目から覗いています。
 おいで、撫でて、と誘うよう。

 誘蛾灯に引き寄せられる夜の虫のように。
 ふらふら、ふらふら。
 貴方の頭が良いところへ落ち着くと、寝月姫さんが走馬燈の蝋燭に、和紙で拵えられた外枠を慎重に被せます。
 襖に、白灯の馬が現れました。


 走馬燈は、彼女の指に従い、音もなく回り始めます。六角形の枠に、少しずつ動きをずらした馬の絵を切り抜いていて、中の蝋燭が絵を投影する光の玩具。静かに回せば、まるで走っているかのように見える幻想的な遊戯箱です。
 ゆっくりと走り出す白灯の馬に導かれ、貴方の意識は朦朧としてきました。

 過去は塗り固められた嘘で、未来は捉えることのできない偽り。
 今はどこぞの幻か。
 ここは誰ぞの夢の中。
 襖の景色は一面、緑の広がる草原へと変わっていきました。草いきれを吸い込んだ馬は、初めて呼吸をしたかのように、生き生きと走り出します。

 遠くに見える山並みは、雪を残した岩山で、裾野の木々と美しい色の違いを見せています。
 やがて筆で書き込まれたように風がながれ、空に水色の色水が流し込まれると、いよいよ馬の足が速くなっていきました。
 
 疾駆する栗毛の馬の後ろから、さらなる足音が聞こえてきました。
 後ろから追ってきたのは黒光りする優雅な馬。
 二頭が並ぶと、競うわけでもなく、だからといって足並みを揃えるわけでもなく。つかず離れずの距離を保ちながら走り続けるのです。
 それは、貴方が理想とする距離。
 誰も理解してくれなかった距離。

 触れあえずとも、近くに居なくとも、お互いを意識し続け合える関係。そんな二頭が草原を走り、やがて丘を蹴って、空へと駆け上がっていきました。
 全く重さを感じさせない透明な空に、どうして浮いているのかさえ説明できないほど巨大な雲が浮かぶ、不可思議な晴れの空。
 そんな場所に、二頭は揃って消えていったのです。


「おめでとう! 就職が決まったんだね!」

「これでみんな社会人か~。離れてもみんなのこと忘れないから。頑張ろう!」

「えー、入社一年目の君たちは、我が社にとっては金の卵であり――」


 貴方は確かに幸せでした。
 この変わりゆく星で、幸せを手に入れたのです。
 でも、長くは続きませんでしたね。


「おい! いつまで学生の気分でいるんだ?」

「こんな事も出来ないのに、この会社に入ってきたのか。今年の新人は不作だって話は本当みたいだな」

「女だからって、優遇されると思うなよ? これだから――」

「お前も馬鹿の仲間入りになりたいのか? 世の中の連中はみんな馬鹿だ。その馬鹿どもに馬鹿らしい商品を売りつけるのが俺らの仕事だろ。仕事をしたくないなら帰れ、馬鹿と同じ空気を吸ってろ」


 幸せな時間はやがて終わりを迎えます。
 何が悪かったのかさえ理解する暇のないまま、貴方にはどんどんレッテルが貼り付けられていきました。
 剥がそうとしては、上から貼られ、みっともないと笑われる。
 誰かが貴方に言いました。
 そっくりそのまま他人に移せばいいんだよ。そしたらあんたは救われる。 

 ほどなく、何も知らない後輩が入ってきました。
 そして貴方は……
 考えてしまった時、貴方の未来は潰えたのです。
 それは禁忌。少なくとも、この狭い、狭い世界においては、間違いなく悪行。



 革命を、望んだ。



 《貴方は頑張りました》
 《もう、お疲れでしょう?》
 《そろそろ、ゆるりとお休みになってはいかがですか?》
 《ここには求めてやまなかった安らぎがありますよ。》
 《幸せもあります》
 《今まで味わったことのない、甘い蜜も用意されています》
 《何も心配はいりません。ここでお眠り下さい》
 《いずれ、長い時を経た後に、幸せな人生だったと思い返せることでしょう――》



 こんなところにまで潜り込むとは、相当な妖力を持った者。どうやら、深く気に入られたようですね。ここで、全てを投げ出してみますか? きっと、肩の荷も下りて、いつまでも、いつまでも、安らぎの中に眠れるでしょう。
 瞬きする間に、日は落ちて。
 明けない夜が、世界に満ちる。



 なんて、ね。
 そのような安息の終焉を、世界が許してくれるはずはないでしょう? 貴方は英雄を示す星の下に生まれたのです。逃げる道も戻る道も、用意されてなどいないのですよ。
 その代わり、類い希なる人徳に、決して折れない精神を兼ね備えているのです。その証拠に、こうして、遙かな次元の彼方よりわたしが貴方を見ているでしょう?
 それにもう一人。
 後輩からもらった干支の置物を、今なお大事に持っていますね? その白い巳を象った陶器の置物も、今頃、大慌てで後輩の元へと走っていることでしょう。


 さあ、時間です。


 すぅ
 たしっ

 襖の微かに開いて閉まる音が、貴方の意識を呼び起こします。

 すう
 たしっ

 再び。
 意識が浮上してきました。貴方は酷く怠さの残るまぶたをこじ開けます。
 頭の下に置かれていた柔らかいものは、寝月姫さんの膝。
 見上げると彼女の横顔がありましたが、その顔は輝くような金色の毛並みに覆われ、口は端正な曲線を描き、獣のように前に突き出ています。ピンと張ったひげがピクピクと辺りの気配を探っていました。
 人型の時は潤んでいた可愛らしい目の色は、陽の光を受けて、今は淡い茶色へと変わっています。艶めいた肢体とは逆さまに、獣らしく純粋に鋭い瞳。
 何を思ってか、口の端をぺろりと舐めた舌は、扇情的な桃色でした。

 貴方が目を覚ましたことに気が付いたようです。

「あや、惜しや。起きてしまわれた」

 そう言って貴方の顔に視線を落としたときには、もう女性の顔に戻っていました。

「随分とあの子に好かれとうな。水を差されてしもうた」

 彼女が優しい手つきで髪を梳いてくれます。その感触に浸りながら、手を伸ばして、そっと彼女の頬に手を当てました。
 指は細い毛並みではなく、妙齢の女性らしい吸い付くような感触を伝えてきます。

「狐、だったのだな。このままだと私は食べられていたのかい?」

 そう問うと、闇の中に花のかんばせが開きました。

「食べてしまうにはもったいのう御心よ。お身体も十分に逞しそうゆえ、あちきが飼い慣らしていたことでしょうな」
「狐が人間を飼うのか?」
「昨今はもう、昔の様ではのうて。力の強いモノが上に立つ。正当な有様ではないのかえ」
「……そうか」

 悲しそうな声を出した貴方の額に手を当てられます。そして、指が……指が額にずぶりずぶりとめり込んでいきました。
 驚いた貴方でしたが、頭の中に指を入れられたことなどなく、動いていいものかどうかさえ見当が付かず、ひたすら目を見開いたまま固まってしまいます。

「抵抗なさらずに体の力を抜いて下されば。そのように硬くなられては、快楽へと落とすのが難しゅうございますよ」

 目の間を抜けて頭部へ。
 脳を、指で、撫でられている感触が、耳にも鼻にも、手足でさえ電気信号として伝えられます。原初の本能が持つ恐怖と、絶対的な強制快楽と、至高。

「現世《うつしよ》で味わえる、全ての快楽を餌に与えて進ぜよう」

 前頭葉の裏側を、指の腹でくすぐられました。
 全身を巡る悦楽因子が、体を細かく痙攣させ、たぎる熱を強引に引きずりだされます。
 目を覗き込まれた途端、視界から景色が消えて、思わず、しゃぶってしまったもう片方の指先は、とろりと溶けた後に喉の奥、身体の奥に忍び込み――


 すぅ
 たしっ

 すぅ
 たしっ

 一つ鳴ったら糸が切れ。
 二つ鳴ったら縁が切れ。


 不思議な気配が消えましたね。
 身じろぎをする貴方に、彼女が合わせました。

「難儀よのう。もう、起きられますか?」

 頭を支えられて身体を起こされると、座っているにもかかわらず頭の重さにふらついてしまいます。
 目が回り、自身の揺れを抑えられない貴方は寝月姫さんの胸に抱かれるようにして、息を整えました。術に酔ってしまったみたいですね。
 彼女が部屋の外へと声を掛けます。

「蛇緒、入りなさい」

 襖がそろりと滑り、貴方をここに連れてきた少女が姿を見せました。音を立てて貴方の意識を呼んでいたのはこの子なのでしょう。
 名前は『じゃお』というみたいですね。

 蛇緒は廊下で三つ指を突いてから、部屋の中に入ってきました。
 そして、そのまま貴方の背中に隠れてしまいます。

「おやおや、随分と。わらわの邪魔立てをするなど今まで無かったこと。懐かれてしもうたようで」

 声音とは裏腹に、彼女の目はなかなか鋭く、袖口で隠した口元には獲物を逃した悔しさが少なからず浮かんでいます。

「悪い気はしないさ。じゃおと言うのだな。可愛らしい女の子ではないか」

 貴方が本心を口にしたところ、後ろの蛇緒がピクリと跳ね上がりました。
 目の前の、少し不満気だった寝月姫さんの顔が綻び、クスクスと笑う声が響き始めます。

「なんだ、蛇緒。言うておらなかったのかえ? さあ、こちへ。誤解は解いて差し上げねば」

 蛇緒が、今度は大人しく寝月姫の下へと寄りました。寝月姫さんが蛇緒をくるりと反転させて、貴方と向かい合わせに立たせます。
 そして、彼の腰帯に手を掛けると、するりと紐解き、肩から着物を滑り落としました。肩から滑る着物が、腰の辺りで抱え込まれて止まります。
 蛇緒はその間、なすがまま。恥ずかしそうに俯く以外は、特に抵抗も見せません。
 そうして現れた上半身は、やや骨張っていて引き締まり、筋肉が所どころに付いていました。もちろん胸の膨らみなどありませんね。

「この子は男の子でございますよ?」

 勘違いをしていたようです。
 可愛らしい容姿をしていますから、見間違うのも仕方がありませんが、確かにこう見せつけられては、信じる他ありません。

「主様はこういう子がお好みで? 蛇緒はわたくしが手ずから仕込みましたゆえ、きっと満足のいくご奉仕を致しますでしょう」

 寝月姫さんが腰の下に回した手をもぞもぞさせるたびに、蛇緒の身体がぴくぴく反応を示します。
 二人の仲睦まじい様子を見て、貴方は首を横に振りました。

「私はそこまでに器用では無いさ」

 恥ずかしさからか、顔を赤らめる蛇緒を見ながら、籠絡の手をうまく躱してみせた貴方は、よっとという声と共に立ち上がりました。
 向かったのは障子窓。外の様子が気になる様子。

「陽は、沈んでしまっただろうか?」
「それほど慌てられずとも。ごゆっくりなさればよろしゅうに。もう、搦め手で攻めるような真似は致しませんし」

 蛇緒の着物の前を合わせ、帯を手早く締め直す寝月姫さん。衣擦れの音さえも淀みなく流れていきます。さすがに手慣れています。
 外の様子は、幸い、ここへ来たときと全く変わりがありません。時間の経過も見られません。

「主様が望まない限り、陽が沈むことはございませんよ? よくご存じでしょう」
「それはそうなのだろうが、如何せん私は自分を信じていないのだ。疑り深くもなる」
「左様ですか」

 気のない返事に、寝月姫の方を向くと、彼女は外の景色に目を奪われていました。
 一瞬浮かぶ狐の面《おもて》が、狭い部屋を幽玄の狭間へと変えるのです。

「実に綺麗な景色ではありませんか。夕日が全てを燃やし上げ、端から順に灰へと散らしていく季節。影に追いつかれてしまえばきっと、夕暮れの空と同化して、影も形も失ってしまうことでしょう」
「なかなか優雅な言葉を操るのだな」

 あら、と嬉しそうに笑った彼女は、深い胸元から一枚の札を取り出して見せました。

「主様には敵いませんよ」

 そう言って、こちらに向けたのはさっき貴方が綴った恋札。愛おしそうにじっと見つめては、再び懐へと戻しました。

 そんなやりとりをしている内に、蛇緒のお飾りが終わったようです。とてとてと寄ってきて、貴方の袖を取りました。
 そろそろ出なければ、本当に陽が堕ちてしまいます。

「……そうだな、もうお暇するよ」

 そうかえ、残念よの。
 心底、名残惜しそうに呟いては、振り分け荷物を差し出して、合羽を手渡してくれました。

「また、お越しになってくださいな。いつまでもお待ちもうしております」
「ありがとう。寝月姫の名前を告げれば通してもらえるのかな?」

 そう問うと、彼女は面白そうに笑い声を溢しました。

「いえ、それは叶いません。恋札をめくり、またわたくしを見つけて下さいませ。旦那様ならきっと見つけられましょう」


 丁寧な挨拶をもらい、彼女の部屋を後にしました。
 膝を付いてお辞儀をし、蛇緒が続いて出てきます。どこまで続いているのかわからないほど長い廊下は、彼女の手を借りなければ一階へ下りることさえ叶いませんね。
 蛇緒の小さな手に手を握られながら、いくつかの部屋の前を素通りしていきました。
 立ち止まったのは並んでいる部屋と特に変わることのない襖の前。描かれているのは空です。どこから見たのでしょう、貴方達の生きている青い星が遠くに見えます。

 蛇緒が音もなく、襖を引きます。
 奥は部屋ではなく、下がり階段になっていました。階段を下りながら、貴方は蛇緒に尋ねてみました。

「君のじゃおという名前には、漢字があるのかい?」

 すると、前を先導していた蛇緒は立ち止まって、掴んでいた貴方の手のひらを表に返しました。そこに指で、字をつらつらと流していきます。

『蛇緒』

 指文字で判別するには難しい漢字でしたが、不思議と迷うことはありません。
 蛇の緒。長寿を願掛けされたお名前です。
 貴方は彼女の手を取りながら、願を掛け直しました。

「蛇緒。どこまでも幸せが続きますように」

 蛇緒は、目を見開いた後に嬉しそうに顔を赤らめました。
 手を握って目を瞑り、言葉の想いに浸った後、貴方の後ろへと回り込みました。
 トントンと貴方の立つ段より二段上がると、目の高さが一緒になります。蛇緒の口が開きました。彼が口を開けるところを初めて見ましたね。

「~、~」

 声にならない息が漏れ出てきます。今度は喉に手を当てて、はあぁーと息を吐き出しました。
 何かを伝えたがっているのでしょう。しかし、声がうまく出てこない様子。

「いい、無理はしなくても。伝えたい気持ちがあれば、伝わるものだ」

 今のお二人のように手を握り合って見つめあえたなら、声にならない思いさえ真心として伝わりそう。
 蛇緒が綺麗な瞳に力を込めて、体から力を抜くと自然に声を発しました。

「ジャ」
「じゃ?」
「ジャ~」

 二つに割れた薄紅色の舌先。滑らかなそれとは裏腹に、聞こえてきたのはちょっとざらつきのある鳴き声。
 初めて聞いた声に、貴方は嬉しくなりました。もっと聞きたくて、催促を始めます。

「じゃ~」
「ジャッ、ジャ」
「じゃっ、じゃ」
「ジャ~、ジャ~」
「じゃ~、じゃ~」

 音は通じなくても、深いなにかが通じている様子。実に楽しそうなじゃれ合いです。二段分、二歩の距離が心地よくて、貴方はしばらくの間、彼の声を楽しんでいたのでした。

 しばらく。蛇緒が懐から、獣皮《じゅうひ》に包まれた薄いものを取り出して、手渡してきました。開こうとすると、蛇緒の手に止められます。

「開いてはいけないのかい?」
「ジャッ」
「そうか。お守りかなにかかな?」

 頷いた蛇緒にありがとう、と返して二人は階下へ下りていきました。



 玄関では楼閣の主人が、小さな椅子に窮屈そうに座りながら書き物をしていました。
 貴方に気が付いて、驚いた顔で近づいてきます。

「おや、お早いお帰りで」
「元々、仮眠を取るためだけに寄ったのだから、むしろ時間を過ごしすぎたぐらいだ」
「げっこうげっこう。それはようございました」

 どうやら、なにか粗相でもあったのだろうかと心配していたもよう。杞憂に終わったと知ると、太鼓腹を叩いて喜びました。

「ごゆっくりできましたかな」
「ああ、ゆっくりさせてもらったよ」

 袖口を引かれました。そちらを向くと、蛇緒がなにやら言いたげな目で見返します。
 気持ちを読み取って言葉を添えます。

「この子にも良くしてもらったからね」

 そう言って頭を撫でると、蛇緒は嬉しそうに微笑むのでした。
 不思議な縁ができましたね。

「おや? 蛇緒がお世話を? そうですか、そうですか」

 こちらも嬉しそう。
 身支度を整え、蛇緒に全身を見てもらいます。ねじれていた振り分け荷物の肩紐を直してもらいました。

「もう発たれるので?」

 主人の声に、貴方は頷きました。

「ええ、陽が堕ちる前にこの山を越えてしまいたい」

 すると、主人の大きな目が更に見開かれました。

「日が暮れる前に、でございますか?」
「ああ、日が暮れてしまえばこの山は越えられないのだろう?」

 貴方は視線で問いかけます。
 山は様々なモノが住まう場所。日暮れの後は、あやかしの時間。人間が動き回れる時間ではないのでしょう、と。

「まあ……そうでしょうな」

 いくらあやかしでも、陽の光の下では意識のある者を捕らえることはできないのでしょうけど、陽が堕ちてしまえばそれも容易にできてしまいます。
 貴方は今までの旅で、それを学んでいました。

「しかし、この山の陰には何があるというのだ? 未来があると信じて登ってきたものの、この陰にある景色を未だに思い描けない。それでも、登らなければいけないことだけは、魂が震え伝えてくるのだが」

 そうですね。諦めてはいけませんよ? あなたの背には、色々な人の思いが乗っているのです。投げ捨てるには、貴方の星は強すぎます。

「げっこう、げっこう。この山は、名も無い『奥の山』。向こうへ渡り帰ってきた人間はおりませんよ? それでも向かうと仰るのですか?」

 確認に、貴方は大きく頷きます。
 やれやれと首を振った男が言いました。

「この先にあるのは空白。それだけでございますよ?」
「空白? 白い大地と言うことかい?」
「いいえ、いいえ。空白は空白。何も――」


「ィジャッッ!!!」


 男の声を遮ったのは、貴方の隣に居た蛇緒。
 声は鋭く、まるで投げナイフを放ったかのような風切り音で、主人に突き刺さりました。蛇緒の身を覆う気配が濃密な意思を持ち始め、陽炎のように幽らりと立ち上がります。目には見えない不可視の力、触れば恐らく火傷をしてしまうほどの熱量を纏った視線。
 びたりと台詞を止めた主人は、太い腹をぶるぶると振るわせて、顔から脂汗を流し始めます。やがて震えが大きくなり、奥歯がカチカチと鳴り始めました。

 蛇緒の変質に驚いた貴方は、彼の顔を覗き込みます。視線を感じた蛇緒は顔を上げると、甘えるような表情を見せてくれました。

「ジャ~」

 心地よい声。蛇緒が甘い声を出したときには、恐ろしい気配が消え、再び元の空気に転じました。


「げっこう…………げっこう…………」


 主人が力なく鳴きました。
 そしてこちらも元に戻りました。

 最初に、戻ったのです。

「ようこそ、夢回楼へ。おや、旦那。ここへは初めてですかな?」

 ここへ入ったときと同じ台詞。違和感をみせることもなく、本当に初めましての対応。

「いや、ここへは道を尋ねに来たのだ。部屋は取らないでおく」
「左様ですか? 揚げ代の心配なら無用の長物。当楼は始めて見えられるお客様から――」

 どうやら、主人は繰りモノのようです。
 本当の主人は誰なのでしょう。


第四章 “歩兵”


 表に出ると、やはり夕暮れ。
 主人と蛇緒に見送られて、楼を後にします。後ろ髪を引かれる思いとはこのことですね。

 互い違いで色鮮やかに染まる木々は、来たときと変わらない景色を見せてくれています。
 世界から疎ましがられた者は、世界の理から外れてしまいます。貴方の時間を制するものはもういないのです。
 下がれば暮れる、進めば暮れない。気分次第で世界が進んでしまうのは恐ろしいものでしょう?
 まして、やり直しが利かないものですから、なお、さらに。

 吹き下ろしの風が、敷き詰められた木の葉をめくり、気まぐれに貴方の視界を奪いに来ます。
 それでなくても、草履は足との間に落ち葉を引っかけて歩きにくく、慣れない足では、なかなか前には進めません。さらに足下、表面こそ乾いた葉が敷かれていますけど、そのすぐ下には足を取りに来る濡れた葉が厚く積っているのです。
 秋の山風は寒いもの。合羽の前を手で押さえつけ、一歩一歩滑らないように足を出していきます。

 渦を巻いて襲ってくる落ち葉。
 ゴウと、今までで一番の風が吹きました。

 身体を後ろに戻されて、思わず倒れそうになります。目を瞑る一瞬に見えたのは、木の葉の色、色、色。

 恐ろしい色。

 生まれてから今まで見てきた、全ての色が襲ってきます。そのどれもが、貴方を置き去りにして後ろに流れていきました。
 流されてしまえば、転げ落ちてしまえば楽でしょうに。貴方は今までと同じように、踏ん張って流れに逆らい続けるのです。
 世界には流れがあって、逆らうものを許してはおきません。逆らってしまえば、嫌われるのは道理でしょう?

 身を切るような木の葉の群れが通りすぎれば、またひっそりとした森に落ち着きます。
 上げた足が地に着いたときに沸き上がる違和感。
 視線を落としました。履いているのは革の登山靴と丈夫なジーンズ。重ね着した上着は風を通さずに、温もりを抱え込んでいます。
 ようやく、あやかしの領域を抜けて本来の世界に戻りましたね。

 ふと、呼ばれた気がして振り返りました。
 あれほど大きかった楼閣が跡形もなく消えていました。
 その場所に立っていたのは、これまた大きな老木。アカガシでしょうか? 老いたとは言え、ねじれもなく天へと向かって伸ばした背筋は、ぶれることのない静謐な気配を漂わせています。
 周りの樹木より一回りも二回りも広く茂った葉の冠は、濃く伸びる影を作り出し、根元に集うモノ達に加護を与えているかのよう。これほど見事な大樹なら、寄ってみたくもなりますね。

 アカガシの根元に、平たい玄武岩が鎮座していました。その上に でん と乗っかっているのは、一匹の蟇《ひきがえる》。
 身を屈め、両手を突いて。
 顔を向けた先は虚空。その目は何も見てはいない様子。
 誰かに向けるわけでもなく。
 意味を知るわけでもなく。
 繰り返し、鳴き声を上げていました。

「月光、月光」

 月を呼ぶ蛙。
 アカガシの幹に、縞模様のある細い銀色の尾が見え、するりと後ろに隠れてしまいました。
 全ては幻。
 そんな言葉が胸中に、浮かんでは消えていきます。
 戻りますか?
 望めばまた、幽玄の楼閣が姿を現すことでしょう。
 歌を詠み合い、温もりを抱いて、今度は蕩けるように酔えるはずです。
 そして、瞬きする間に陽が堕ちる――


 寂しくなってしまった貴方は、ポケットに手を入れて、蛇緒から貰ったお守りを取り出しました。
 慎重に獣皮を開くと、中から現れたのは丁寧に折りたたまれた蛇の抜け殻。透明に近い白色の模様が入る、見たことの無い不思議な文様が浮いています。まるで切り子細工を施したかのような美しさ。
 陽に透かして見たくなりましたが、夕日に焼かれてしまいそうで、そっと獣皮に包み直しました。

 守りたいという想いの形。
 幻の中にも真はあるものです。

 貴方は前を向きました。
 踏み出した足は、もう迷いません。
 世界の果てを見に行くために。
 世界を作り替えるために。

 どこかで誰かの鳴く声に、貴方も声を合わせます。

「じゃあ」

 生き抜くために、望む世界を見るために。
 貴方は山を越えるのです。

 今日中に越えて下さいね。
 それまで見届けていますよ。


 ***


 匂い立つほど艶やかに
  開いた華さえいつかは散り逝く

 幸せをうそぶいた
  わたしも貴方も常は無し

 在るべくして永久に聳えし
  奥の深山や陽が暮れる
   前に越えて行きましょう

 夢に浸ることさえ出来ず
  酔うことさえも叶いはしない

 それでも歩む貴方を追って
  綴る言の葉 風に舞え

(いろは歌 独自解釈)


 ***



終章 “妖怪『狐憑き』”


 ココアの香りで目が覚めるのは、幸せだと思う。たとえ悪夢を見ていようとも。
 あえて音を立てて、机にマグカップを置いたのは一応、優しさからだった。
 もぞもぞと頭を上げた彼女は、虚ろな目をして、左右を見渡す。といっても、見えるのは何も代わり映えのしない、殺風景な社長室だが。
 目が合うと、不思議そうな顔をしてみせた。

「あれ、寝ちゃってた?」
「はい。昼休みでしたし、起こさないでおきました。疲れていませんか?」
「そんなことはないわ。いつも通りのはずなんだけど。今は……」
「45分です。もう15分で1時を迎えますよ」
「そう……。変な夢を見てたの」
「夢、ですか?」
「江戸時代ぐらい? 登山をしてたのよ。どうしても山を越えたくて、私は男になってた」
「社長が男にですか? 確かに変な夢ですね」
「うん。山の中に綺麗な女性が居て、男の子が居て、男の子が女性に着物を脱がされて裸にされてて」
「……は、はぁ?」
「あ! 違うの! 変な意味じゃないのよ? えっと、何もしてないんだからね?」
「まあ、夢ですから」
「もう、君が変な声を出すから全部忘れちゃったじゃない」
「夢は忘れるものですよ? その方が健全です」
「それはそうでしょうけど。はあ、何か大切なものを見てた気がするんだけど。ま、いっか。お化粧直してくるから。ファーファ化粧品との詰め協議は30分からだったわね」
「ええ。事前の打ち合わせが予定通り進みましたから、特に煮詰める議題もありません。それより、まだ時間はあります。何か召し上がりませんか? お体に触りますよ?」
「そうね、何か。何か。ああ、何だか頭の芯がぼうっとするわ。サンドイッチはあるかしら?」
「はい、いつものを買ってあります。大丈夫ですか? 僕が代役を務められたらいいんですが」
「だめよ、君は口下手だもの。ふらつくだけで、仕事が出来なくなるほどじゃないわ」
「そうですか。一応、カフェインも用意しておきましょう。……あっ」
「うん?」
「背中に毛糸が……黄色の……あれ、これは」
「何? 何か付いてる?」
「……いえ、ゴミでした。はい、綺麗になりましたよ。では、昼食を用意してお待ちしています」


 社長が奥に消えたのを確認してから、手の中の物に視線を落とす。糸ではなく、黄色の獣毛。
 じっと視線を浴びせると、やがてチリチリとかすかな煙を上げながら焦げていき、白い残滓と変わった。
 灰を窓の外へ、ふっと吹き飛ばす。

「どこから嗅ぎ付けたのかは知りませんが、彼女は僕の獲物ですよ? 手出し無用に願います、寝月姫様」

 遠くに見える山並みは、今なお緑が生い茂り、太古の息吹を抱えている。
 この世界の在り方を、人はまだ知るよしもない。
 それでこそ人間なのだと、今更ながら僕は思う。

恋札めくり ~詩飾り小説の欠片~

執筆の狙い

作者 千才森 万葉

前回持ってきた作品を、短編として読めるように書き直してみました。一人称にしようかとも考えたのですが、折角この形であらかた書いたので捨てるのも惜しくなり、ひとまず一つのお話として書き切ってみました。これだけでも読めるはず。
挑戦としては、人格を持たせた三人称神視点を、読みやすく面白く書けているかどうか。世界設定を排除し、禁忌と名高い手法も使っているので、面白さ的にはどうでしょうね。
上手な文章よりも旨い文章を書いていきたいです。

コメント

u

よみました

前回読んでいたのですが、どのように落とすか興味があり
読んだ部分はスルーしようとおもって、流し読み‥‥のつもりが
かなり書き換えたり、書き足したりしていらっしゃる

前回あいまいだった、あるいは非常に大きそうなテーマ(あたしが思っただけです)らしきものが、今回分はかなり絞られ、読みやすく(解りやすく)なっています

ですから、設定・エピがメタファとして成程と解釈しやすくなっていると思いました

今回と前回合わせみると作者様かなり広大なテーマとお話を企んでいそうな気がしました

落ちですが賛否両論ありそうな
しかし本作は作者さんのお上手なところが出ている

>社長が奥に消えたのを確認してから、手の中の物に視線を落とす。糸ではなく、黄色の獣毛。
 じっと視線を浴びせると、やがてチリチリとかすかな煙を上げながら焦げていき、白い残滓と変わった。
↑これで再び(夢の世界)に回帰しようとしている
だから単純な夢落ちにはならない

あと、少々疑念
夢部分 文体はともかくお話し内容 需要があるのかどうか?

ありがとうございました  御健筆を

千才森 万葉

 u さんへ

 前回に続き、お読みいただきましてありがとうございます。
 いつか使うかな~と思い伏線として残しておいた場面なんかをばっさりカットしてスリムにしたはずなのですが、最後を変えるために書き換えたら、なんやかんやで3000文字ほど増えてしまいました。
 設定等々解りやすくなっていたとのことで良かったです。反面、文章は難解にしてしまいました。今作品は完全にわたしの趣味ですね。

 最後のシーンが今回のメインになりそうですね、一応。そのシーンを決めるために夢を書いたという逆転現象が起きちゃってますけども、まあ、それはそれでいいかなと。もちろん、夢オチが嫌いな方もいるでしょうし、賛否が分かれるのは織り込み済みです。
 てか、この流れでは、夢オチ以外の落とし方ができなかったんですよね。わたしの工具箱にはこれしかなかった。

 多くの需要があったら、もう少しコメントが付くと思います(笑)
 自己分析を書くと、文章が異様なまでに硬いのに、世界観は浅めの単発ファンタジーで、内容がエロっぽいとか、何処の層にヒットさせようとしているのか全くの不明な作品。
 今回は赤字覚悟で書きましたし、前々から形にしたかったお話ですから、締めるところまで書けたことには満足しています。ただ、あまりに需要がなさ過ぎるようなら、困ってしまいますね。どうしようかな。

 まあ、今作品は一応出来上がりと言うことで、もう一カ所にも載せてアドバイスを戴いたら寝かせておきます。テーマ・お話の広大さはどうしましょうね。いつも広げすぎて回収できなくなるんですよ(笑)

 こちらこそありがとうございました。

はるか

 千才森 万葉さま

 拝読しました。

 悪くない、というより、たいそうよかった、と私は感じました。妖艶。障子のしまる音なんかもよい響きでありましたし。

 よろしくないのは、まず出だし。もってまわった書き方が、やってきた読み手を追い返してしまう、と、私は感じました。もっとあっさりと、水に石ころが着水するような感じで始まってほしいかと、そうすれば、先を読む読み手も増えるだろうのに、とも、私は感じました。話の中身は、奥に入ってなんぼ、みたいな話なので、入り口で引き返されちゃうのはとても惜しいですよね。

 次によろしくない、と感じたのは、過剰、ということ。この書き方、誰もが書けるわけもなく、すごいスキルだな、と感じましたが、ちょっと、というか、かなり過剰で、オナカイッパイのところにどんどんオカワリがつがれちゃって、くちくてくちくて、みたいな感じかなと。

> おめでとう! 就職が決まったんだね!

 と、そこで私は、いくらか救われた気がしました。夢の中身に食傷してたので。夢落ち、って言葉自体が手垢まみれでありますが、ともあれ夢落ち、これも、なんだか、むしろ悪くはなかったです。あれ? 貴方っていうのは女性なの? あ、夢だったの? やっぱり女性か、しかも女社長、ふうん、ちょっとねじれてて面白いかも、というような印象が快かったので、ユメオチハダメー! みたいなセオリーは、この作品については、無視して吉、と、私は感じることができました。

 さて、よかったところ、これは言うまでもなく、リズム、というか、節回し、というか、語呂合せというか。丁寧な語りで、こう懇ろに、語呂ごろしていただけちゃうと、したことないけど、遊廓遊びをしているかのよう、な気分にも浸れますし、妖しく深いとこに、ころころと招かれてゆけますから、気持ちがいいやら、雰囲気に酔えるやら。赤い、とか、紅い、とかじゃなくて、朱い、みたいな世界。遊廓の内部がもっと描写されてると、もっとよかったような。

 そして、二人称。三人称神視点って狙いに書かれてましたけど、これって、二人称、で、通せてますよね、八割がた。次元の違う高みにいる視点が貴方を見てる、みたいに、どっかで書いちゃってるし、夢から覚めたらああなるので、純然たる二人称ではないのかもしれないけれども。ともあれ、二人称、私も挑戦してみたいな、と思っちゃいました。二人称の話と、神視点の話、ってイコールなようでイコールじゃないわけで、純然たる二人称っていうのはどう書くべきなのか、ちょっとよくわからないんで、試しに何か書いてみようかと思ってしまいました。ともあれ、夢ですからね、神視点というか、夢を見ている女社長の無意識が起点だった、ってことでしょうかね。ちょっと面白いな、と感じました。夢を見ている主体による、夢の中の、異性であるところの客体、という自分。これってアニムスですよね。ユングの奥さまが書いていらしたアニムスについての論考を思い出しました。女社長の中にいる異性、これが女社長のアニムス、内的他者でありますね。

 と、書いて勝手に思い付いちゃったんですけど、村上春樹さんの『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』だったかな、みたいに、この話、女社長のリアルももっと書き込んで、貴方の夢の話、女社長の現実、貴方の夢の話、女社長の現実……、って章を順番にサンドイッチしていって、最後にまとめる、ないしは、まとめないまま終わる、みたいな構成にしたらすごくいいかも、とか、すみません、書いてみただけです、そんなこと簡単に言っちゃあ、垣根越えちゃいますよね。

 途中、ヤモリとイモリがごっちゃになってましたでしょうか? 両生類と爬虫類の違いがあったような。因みに、げっこうげっこうってないてたのは蟇だったんですね。私、ゲッコーかと思ってました。バリのビラ、その屋根にはいっぱいいるんですよ、ヤモリくんが。着いたその夜に、げっこうげっこうってなく声がしたもんだから、私、てっきりヤモリくんイコールゲッコーだと思ったんですけど、滞在中に知りました、ヤモリくんは、ちっちっ、って時計の秒針みたいな、あるいは舌打ちみたいな声でなくんですよ、じゃあ、げっこう、って野太く響く、あの大きな声はなんなんのさ、と宿のスタッフさんに訊いたら、それはアユンリバーにいるゲッコーだって言うんです、ゲッコーはヤモリよりずっと大きくて凶暴で、がぶりと噛みついてくるんですって。結局ゲッコーには会えなかったけど、私にとって、げっこう、ってなきごえは、ほとんど神さまの声なんですね、だから、げっこう、げっこう、って笑う主人はゲッコーなんだって思っちゃいました。だなんて脱線失礼しました。

 あやかしい夢を見た世俗的な?女社長の話、かなり面白く読めました、ちょっと夢の中身が過剰だったように感じたけれど、夢の中身から現実への唐突な推移は非常によかった、と私は感じました。夢もうつつも、次元をこえたとこで呼応してるみたいなのもいいかな、と。夢は現実を補償するのですよね。夢の中身がぎっしりつまってたぶんだけ、夢だったとわからされた読み手は裏切られたように感じるのかもしれないけど、夢の中身が魅力的でありますからね、そうですね、やっぱりもう少しだけ、夢の中身を絞るべき、ってことなのでありましょうか、あるいは、リアルのほうを負けないくらいに厚く描いてバランスする? 私にはよくわかりませんけれども、面白かったかと問われれば面白かったと応えるし、楽しめたかと問われれば楽しめたと応えるし、書き手さんのスキルも堪能できて、刺激も得られたし、読めてよかったな、と感じました。ありがとうございました。

千才森 万葉

 はるか さんへ

 おや、お読みいただきありがとうございます。はるかさんが他の方に書かれたコメントをいくつか読ませてもらっていたのですが、その際にシンプルで読みやすい文章を好まれる方なのかなと思ったのですよ。なので、わたしの文章はお口に合わないだろうなと勝手ながら考えていました。装飾過多になりますからね。
 なので、よかったとの感想をいただけて嬉しいです。とは言え、過剰は過剰。恐らく、明日は胸焼けになっていることでしょう(笑)

 今作品は「いろは歌」の解釈に挑戦している時に思いついたお話で、これを書くなら徹底的にくどく書き込んでやろうと当初から決めていました。そのため、過剰とのコメントは狙い通りとも言えます。そりゃあそうですよね、と。うん、もっと薄口にしなければ。

 水に石ころ、なるほど。そうですね~、中濃ソース並みにどろどろした始まりになってますから。『さあ! この世界に入ってくれ!』と言う方が無理なのかも。自分で書いておいて何ですが、書いている自分も酔うんですよね、この文章。時折加減がわかんなくなります。
 最後を現代に落とすのなら、いっそ、冒頭も現代から入っても良かったのかもしれません。数年前の、まだ社長になっていない時のエピソードをちょこっと。

 飽き防止のため、夢の中にも所々に現実のシーンを差し込んでも面白いかも。まー、リズム重視で書かれた文章を読んでいると、ぼうっとしますからね。いずれにしろ、夢オチが効果的に機能していたようでほっとしています。前回持ってきたのは、夢のまま終わっていまして、現代編は急遽付け加えたものでした。この落とし方しか思い浮かばなかったのですが、結果的に吉に転んだようですね。

 節回し? 語呂合わせ?
 懇ろ語呂ごろしていると したことないけどしているような
 深いところにころころ招かれ 気持ちいいやら酔えるやら。よいよい(笑)

 いいですねいいですね~遊んでますね~ありがとうございます。言葉遊びが好きなもので、こういうのは得意なんですよー。数少ない取り柄の一つです。
 遊郭の内部ですか。まず、内部の構造をある程度考えないといけないでしょう。ただ、文字数が増えるのが難点。

 二人称か三人称かは、わたしも曖昧なんです。今、2面(3面かも)に落ちている、前回持ってきたわたしの作品に、いくつかコメントを頂いたんですよ。そこにみなさんの二人称に対する考え方や例が挙げられているので、もしよろしければ読んでみてください。ただ、本編は読まれませんように(笑)内容はほぼ一緒ですし今作品のほうが面白いです。
 個人的には、読者に向かって呼びかけるのが二人称なのかなと思っていますけども、正確かどうかはちょっと。

 あー、女社長の無意識を起点とする神視点。はい、採用。単純に、神様か宇宙人としか考えてなかったです。もっと大きな話として書いた作品だったので、そのあたりは名残りですね。こういうのは本来書き換える時に潰さなきゃいけないんですけども。
 そうそう、内面の異性です。アニムスという言葉は始めて聞いたんですが、考え方はどこかで聞いていまして。山を登るために男性になったという考え方がしっくりきたので、こんな形にしてみました。

 夢のアニムス、社長までの道のり、いろは歌の解釈、妖怪、語呂遊び。これらの要素を取り入れながら、章サンドイッチに仕上げる。……これが出来たらわたしはきっと、すでにプロになっているでしょう(>_<) 今のわたしには荷が勝ちすぎますね~。申し訳ない。

 ……ゲッコー!? ヤモリがゲッコー!??
 うわぁ、知りませんでした。こんな所で英語の罠があったとは。何という偶然。てか、ダメじゃん。そのミスリードは狙ってなかったです。知ってる人は間違いなく勘違いするでしょうね。
 バリ、バリ島ですか!? 凄い! まさかわたしの作品へのコメントでバリの名前が出てくるとは。わたしも海外旅行とかしてみたいな。でも、噛みつかれるのはちょっと(笑)
 イモリとヤモリがごっちゃになってました? すみません。ちなみに、ヤモリって見たことないんですよね。イモリなら釣ったことがありますけども。

 うーん、多分、夢のシーンを短く区切って、現実世界を差し込みながら進めるのが良いのかなと思います。できれば、夢と現実世界の話の比率を同じぐらいに。書けたらな~。
 あ、でも、そうすると夢オチではなくなりますか。今作品のような、ラストのインパクトは無くなっちゃいますね。難しい。
 余談ですけど。海外の研究だったと思うのですが、猫は夢の中で、獲物を捕る練習をしていたそうですよ。
 こちらこそありがとうございました。

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