作家でごはん!鍛練場
north

フルーツ・キャンディー

『フルーツ・キャンディー』


フルートの音は、蕩けるように甘く、仄かな酸味のようにあざとく、そしてどこかせつない。










「逃げるのか、そうやって」

顧問の高倉先生の視線が突き刺さる。

ヒュッと思わず息を吸い込んでしまう。

立つ足がかすかに震えたのを自覚する。

そんな私を嘲笑うかのように、メトロノームがカチカチとテンポを刻んだ。






吹奏楽コンクール中学の部B部門の三日前の今日、私は高倉先生に呼び出しをくらった。

なんの呼び出しかは予想がついている。昨日のホール練習だ。


椅子に腰かけた先生の視線が痛くて、思わず背後の時計に目を反らした。

小太りな男性の音楽教師。その体型にそのスーツは不似合いですよ、なんて。

時刻は既に四時をまわっている。

私と先生以外誰もいない音楽室。真夏の日光を浴び続けたこの部屋は、尋常じゃないくらい暑かった。

でも、暑さとは無関係な汗が私の頬を伝ったのを感じた。


「逃げてなんか、ないです」

絞り出した声はかすかに震えた。

「嘘だろう」

高倉先生の即答だ。

「…嘘じゃないです」

「嘘だな」

「…何でです?」

はあ、とため息をついて高倉先生はスーツのポケットから何かを取り出す。

かたんっと机の上におかれたのは、黒い録音機。これには昨日録音されたホール練習の演奏が入ってる。

かちりと音をたてて再生ボタンが押された。

曲が流れる。曲名は、斐伊川に流るるクシナダ姫の涙。

冒頭はフルートのソロで幕を明け、中間部でもフルートのソロや見せ場があり、いわゆるフルートにとって『美味しい』曲だ。

ソロは、3年である私が担当することになっていた。

流れてくる音を他人事のように聞き流す。




曲が終わった。

「どう思った?」

「いつも通りだったと思います」

なるべく平静を装って答える。に反して私の心臓はバクバクと音をならしていた。

私の隣の机の上で、誰かがとめ忘れたメトロノームが、カチカチとテンポを刻み続けていた。

「そうだな。いつも通りだ。いい意味でも、悪い意味でも、な。」

先生はトントントンと、指で机を叩く。高倉先生の癖だ。

「それはつまり、お前が成長してないということだ。確かに白井、お前には技術がある。フルートの才能だってある。中3にしては申し分ない。けどな、お前にはそれだけの音楽しかないんだ。何より…」

と、そこでメトロノームの音が消えた。ゼンマイが切れたのだ。

「それを一番わかっている、お前自身が改善しようとしてない。つまり…」

ガシャンッ

私は止まったメトロノームをひっつかんでいた。無意識の行動だった。

「すみません。塾があるので。失礼します」

嘘だ。塾なんてない。

とにかく一秒でもはやくここから出たかった。

体は合奏終わりのように火照っていた。たぶん、私は今イラついてる。何に?先生に対して?もしくは………自分自身に対して?

ここにいたら、すぐに感情が爆発してしまうだろう。何となく、そう思った。

早歩きで扉に向かう。音楽室の防音扉は、ドアノブが錆び付いていてすぐには思うように空いてくれない。

ガシャガシャと何度かドアノブを回し、なんとか扉を開け出ていこうとする。

でも後ろから声がかかる。

「その程度か。その程度なのか、白井晴香。」

私は高倉先生の顔も見ずに小さく会釈して、わざとらしくドアを音をたててしめ音楽室をあとにした。





私の通う緑桜中学校は、全校生徒632名の市立学校。そのなかでも、我らが吹奏楽部は部員49名で活動している、そこそこ部員の多い部活動だ。

一昨年、去年と県大会出場を決めているこの辺りではそこそこ強い学校。

そんな吹奏楽部を率いてきたのが、高倉先生というわけだ。

でも私は、先生が苦手だった。

理由は、とにかく部活ファーストなその考え。

悪いけど、私はそこまで部活に打ち込めるほど吹奏楽は好きではないのだ。もしかしたら嫌いなのかもしれない。
頑張ろうよ。みんなでコンクール目指そうよ。そんな綺麗事に溢れたこの部活が。

でも、フルートが嫌いか?そう聞かれると返答に困る。この2年と少し、私は驚くほどフルートを練習していたことは事実なのだ。





とにかく、私が今一番大切なのは、勉強だ。部活は二の次。中3になり高校受験を間近に控え、部活と塾の両立の大変さに翻弄される日々だ。


私はいわゆる優等生だった。名大卒の両親のもとに生まれた私は、常に結果を出すことを求められた。

吹奏楽に入った理由だって、音楽のテストがとりやすくなるからっていう理由だったし。



でも、私だって家でダラダラしたりもする。なんならゲームだって持ってる。

結果さえ出せば、両親は私が何をしても黙認してくれたから。

ときどきクラスメートに『晴香ちゃんは家でもちゃんと勉強してるんだよね。見習わなきゃ』何て言われると、多少のためらいを感じることもある。

でも、人間ってそんなもんだ。誰もが裏の顔を持って生きてるんだから。何より、中学校ってのは、自分がより有利な立場になるため、たくさんの人を蹴落としていく場所なのだ。

悪いと思ったことはない。

私は優等生でいなくてはならない。


けど、
『その程度か。その程度なのか、白井晴香』

高倉先生の声が頭に響く。

蒸し暑さを残す廊下を一人歩きながら、またふつふつと苛立ちが込み上げてきた。

手にしたメトロノームを部室に戻し、駆け足で階段を降り、そのままの勢いで校門まで走る。

イライラする。イライラする。何に?わからない。もどかしい感情がさらに私を苛立たせる。

校門を出た。そこからは少し速度を落とした。

俯きながらズンズン歩いていると、

ワンワンワンッ

「ひゃあ!」

口からみっともない声が漏れたことを恥じる前に、ズサァっと大きく退く。

犬だ。犬だ。犬がいる。

ごめんなさいね。と、犬のリードをもったお姉さんは軽く頭を下げて通りすぎていった。

バクバクと、ものすごい勢いで鼓動をうち始めた心臓を落ち着かせようと、深呼吸を繰り返す。

「おー。すっっっごーい逃げっぷり。そーいやお前、犬嫌いだったな。」

後ろから聞こえてきた聞きなれた声に、私は反応を示さずさっさと歩き出した。

「ぼっちで帰る羽目になるだろう晴香を、この暑い中待っててあげた俺に、お礼の言葉は?」

そいつはさも当然のようにいつのまにか横に並んでた。

背中に背負っているのは、サックスの入ったケース。サックスパート3年、霜崎佑樹。幼稚園のころからの幼馴染みだ。

こんなやつだけど、今回の曲、斐伊川に流るるクシナダ姫の涙のサックスソロを、オーディションで勝ち抜いていて、サックスの腕には目を見張るものがある。

「待っててなんて、言った覚えはないし」

「何で呼び出されたの?」

「急激に話を変えるな」


このよく分かんない思考回路をもったこいつは、配慮という言葉を知らない。

「コンクールのソロのことで、注意された」

あくまでめんどくさい、という感じを出しつつ、ぶっきらぼうに答える。

実際には、誰かに聴いてほしかったのかもしれない。

行き場のない感情に整理をつけるために。



「んで?その原因は?」


原因。そう原因だ。高倉先生のいう通り、私は改善すべき点を分かっているのだ。

「……私が、歌えないから」



『歌う』っていうのは当たり前だけど、楽器持ちながら声に出して歌う合唱のことではない。

ここでいう『歌う』っていうのは、楽器でメロディーを吹きながら、そのメロディーに抑揚をつけたり、フルートだったらビブラートをかけたりして、聴き手を曲に入り込ませる技術のこと。ざっくりいえば表現豊かな演奏。


「ええ?そうか?あんなに強弱つけて、ビブラートつけてんのに?あれ以上『歌え』って何すんの?」

佑樹は目を丸くした。

そうだ。できてるはずなのだ。『歌う』っていうこと事態は。

でも、先生がいうのはたぶん違う。強弱つけて、もっと滑らかに。そんな言葉で表せるものじゃなくて、何て言うか…もっと

「たぶん……。そうだな、ひょ、表現豊かに?いや、じゃなくて。う~ん。…」

「おいおい。何でそこに、『もっと感情込めて』が出てこないんだ?」

あきれたように佑樹は問う。

「具、具体的じゃないから」

しどろもどろになりながら答える私にたいし、佑樹は、はあっとわざとらしくため息をついた。

「そーんなかったくるしい考えしてたら一生楽器で『歌う』なんてできないね」

「…なによ。まるで私が歌えない理由分かったように」

思わずムッとして言い返す。

「お前、あれだろ。市内でトップの学校目指そうとしてるんだってな」

「はあ?」

何で進路の話に…イライラする気持ちを発散するかのように、足元の小石を蹴っ飛ばす。カァーンっと鉄のポールに当たって跳ね返った。

「いいじゃん。まさに優等生の鏡だろ。寝る間も惜しんで勉強して、先生へ媚を売るのも忘れない。端からみれば立派な優等生だ。いやあ、羨ましい。俺なんて一学期の内申……」

「もうどうでもいいから。なにが言いたいのよ」

隣の佑樹を睨み付ける。

次の瞬間、ワンワンッと散歩中の犬にまた吠えられた。うわあ。二回目。ついてない。びくつきながらささっと歩道の右側による。


「だからさ…」


祐樹は勿体ぶるように間を開けた。


「優等生だろ。勉強も普段の生活も」

一呼吸あってから、




「……フルートだって優等生じゃん。フルートの吹きかただって、お前が大好きな優等生だろ」

「えっ………」

まだ近くに犬がいるにも関わらず、思わず立ち止まってしまう。



優等生。ゆうとうせい。ユウトウセイ。

そうか。

ああ。そうだ。私は優等生だ。勉強だってフルートだって。

私は優等生だった。




生暖かい風が頬を撫でる。

ちょっと前にいる佑樹が、歩けよ、というように手招きする。

歩きながら私はポツポツ語り始めた。

「私さ、やっぱり吹奏楽は嫌い。」

「だろうな。」

「でも……フルートは好き」

「……へえ」


「気づかなかったけど……私、やっぱりフルートが好き。じゃないと、こんなにも頑張って色んな技を身に付けようとも思わない」


そうだ。私はフルートが好きだ。可憐で、かわいくて、澄んだ音色のするフルートが大好きだ。

だからこそたくさん練習した。色んな奏法を覚えた。けど、それが今回は仇になった。

私はまさに模範的なフルート奏者。そこそこの技術がある、けれど、音色に自分の感情はない。

正しい姿勢で、吹きかたで、リズムで。

私のフルートは、模範的な優等生そのものだった。


そして、その優等生を崩されそうになった。

歌えない。奏者としてはある意味致命的な欠陥。

なにかが劣ってる。優等生じゃなくなる。

どうすればいい?じゃあもっと技術を磨けばいい。そうすれば形としては、私は『歌えている』のだ。

みんなは私の音を聴いて、『歌う』のうまいね、という。優等生でいられたことに満足した私は、逃げた。

歌えないという事実から。私は逃げたんだ。優等生でいるために。




「佑樹のいう通りだね。フルートと同じくらい、優等生も大好きなんだ。逃げてた。自分から、ずっと」

驚くほどすんなり言葉が出てきた。

両親からの期待。それがいつからか私の当たり前となり、生き甲斐となっていたのかもしれない。


ちらりと佑樹の方をうかがう。なんとも読み取れないような表情だった。私はいたたまれなくなって、顔をうつむかせた。

「…大人はすぐに、逃げるな、とか自分を甘やかすなって言うけど、別に逃げたっていいんじゃないか?」

「え?」

弾かれたように顔を上げた。佑樹は私を見つめていった。

「そりゃあ逃げちゃいけないこともある。けど、どうしても苦しいとき、なんとなくやりたくないとき、逃げたっていいと思う。思う存分逃げて、自分を甘やかして現実から目をそらして見たっていい。」

そう話す佑樹の顔は、ちょっと大人っぽい。

出会ったときは同じくらいの背だったのに、今は私が見上げてる。

逃げていい、だなんて先生に言ったら絶対に怒られるよね。何となく。中学の教育って、諦めるな!とか仲間を信じろ!みたいなのばっかだし。

でも、佑樹の言葉はどんな熱血教師の言葉よりも、すんなり心に入ってきた。

「でも、もしも心の何処かで逃げちゃいけない、変わりたいって思ってるんなら、きっとどこかで逃げるのをやめて踏みとどまるだろ?逆になんの思い入れもなければ、キレイさっぱり忘れて新しいことをチャレンジすればいい話だし。逃げることでわかることだってある。逃げることにだって価値はあるよ。今のお前みたいに」

カア、カアとどこからかカラスが鳴いている。うすオレンジに染まり始めた空。そのなかで、眩しくて私は佑樹から目をそらした。


「そーやって中学生ってのは成り立ってんだよ。逃げるな、自分を甘やかすななんてお前は誰にも言われる筋合いはない。最終的に何するのか決めるのは自分だろ?ってのはうちの親父の受け売りだけどさ。」


「……そっか」

「そうそう。そうなんだよ。なんか俺すごいこといったよな。哲学者になった気分」

「何でこんなことになったんだっけ?」


「お前がヤバイ形相で走ってたからだろ」

「そうだっけ」

「物忘れ激しいなー。認知症始まってんじゃね?」

ははっと笑いながら帰路を歩く。足取りはさっきより軽い。

『この程度か。この程度なのか、白井晴香。』

高倉先生の言葉がよぎった。

ええ。そうです。この程度ですよ。白井晴香は。私はそんな超人じゃない。

何を期待してるか知りませんが、私は逃げます。これからも、優等生でいるために。でも、それを悪いことばかりだと思わない。

大切なのは、逃げたという事実じゃない。逃げたなかにある過程なのだ。




佑樹はふと思い出したかのようにズボンのポケットからなにか取り出す。

「ほらよ」

放物線を描きながら私の右手にすっぽりおさまったのは、赤いパッケージのフルーツキャンディー。

「…て、これ、校則違反でしょ」

「ちょっとなにいってるかわからないな~」

じとーっとした目線の先、佑樹は素知らぬ顔で口笛を吹く。だが、突然思い立ったかのようにくるりとこっちを見る。

「な、なに?」

佑樹のこげ茶色の瞳に自分が映りこむ。

思わずドキッとしてしまう自分に戸惑う。

「…お前の音、いつも聞いてて思ってたけどさ、



フルートってただ優雅なだけじゃないと思うぜ」

優雅。まさにフルートの音の模範解答。

「…そうだね」

ビリっと袋を破り、キャンディーを口に放り込む。

いちごだか、りんごだかわからない味が、仄かな酸味とともに広がった。

甘さの中に見え隠れする、あざとい酸味に、ふわっとクチの中に広がる爽やかな香り。

よくコンビニで売ってるような安物のアメ。

しばらくすると溶けて、跡形もなく消えてしまい、ちょっぴり切なさを感じる。

ふつうの飴なのだ。ただのキャンディーなのだ。それなのに、なぜだろう。

私はそのキャンディーの味を、きっと忘れることができないだろう。









コンクール当日。

まさに次に私たち緑桜中の出番の直前。

ステージ袖で待機しているとき、ふと部員たちの視線を感じる。それもそうだろう。今演奏中の学校はフルートの強豪校。

先程のフルートのソロは、ここからは見えないが、観客の心を鷲掴みにしているだろう。

そして、その次に演奏する私たち。

私に求められるのはこの中学校のソロ以上のソロだ。

相手に悪いけど、恐らく技術は私とどっこいどっこい。

あと、私が勝てる要素と言ったらなんだろう。

「おーおー。やばいね。どうするよ、優等生さん?」

にやにやしながら私を斜め後ろからからかってくる佑樹の足を、思いっきり踏んづけた。

イテッという声がしたが、無視だ無視。

フルートパートとサックスパート。ならび順はどうしたって近くなってしまう。

佑樹の言葉を頭の中で繰り返す。

優等生。優等生。いや、今日はちょっと違う。

「悪いけど、今日は優等生じゃないの。問題児になってやろうと思って」

私は佑樹に微笑み返す。

「ほお。じゃあ、楽しみにしてるよ。問題児さん」

周りの2、3年生は、私たちの会話を訳がわからない、というように首をかしげていた。

この人たちは、問題児の私のソロを聴いたらどう思うだろう。

しかも本番で、はじめて。

なんてことしたんだと、練習と違う!合わせられないじゃないか!そういって憤慨するだろうか。

それとも……素敵なソロだと、聞き惚れてくれるだろうか。

ふと列の後ろを見る。高倉先生がいた。先生は低音パートと最後の打ち合わせ中だった。



高倉先生。私はやっぱりあなたが苦手です。このコンクールが終わればあなたともきれいさっぱりお別れだ。

あなたのいうことは正しい。ソロを吹くものとして、逃げてはならないことから逃げた私を咎めるのは当たり前だ。

けど、私には逃げて、無様に逃げて、手にいれたものもあります。

同様に、やっぱり吹奏楽も嫌いです。綺麗事ばっか並べるこの部活が嫌いです。私はそんな、いい子ちゃんじゃないから。


でも、この7分間だけは、すべてを吹奏楽にかけます。

それは部のためでもなく、ましてや先生のためでもなく、自分のため。フルートが好きな自分が、これからも好きでいられるように。

「緑桜中のみなさん。ステージへ。」

係りの人から声がかかる。

私たち……いや、私はステージへ踏み出す。





フルートはただ優雅なだけではない。

フルートの音は、蕩けるように甘く、仄かな酸味のようにあざとく、そしてどこかせつない。

それはまるでキャンディーのように。


ああ。今日もフルートの音は空高く舞い上がる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【まったく吹奏楽を知らない方へ】
※メトロノーム
テンポを刻むための道具。

※吹奏楽コンクール中学の部B部門
A部門は50人編成。B部門は30人編成。

※フルート
横笛型の木管楽器。吹奏楽では花形楽器と呼ばれる部類にはいる。

※サックス(サクソフォン)
木管楽器。楽器は金色のものが主に多く、木管楽器では珍しく力強い音が出せる。

もし気になったら、調べた方が速いと思います。語彙力がなくて、すいません。

フルーツ・キャンディー

執筆の狙い

作者 north

はじめてなので、どうやったら思いが伝わるかな?とかなり長い間、試行錯誤しながら書きました。
私自身が中学校で吹奏楽部、フルートパートに所属しており、自分で書きやすいものを題材にしてみました。吹奏楽を全く知らない人でも伝わればいいな、と思い、技術的な面は詳しく描写しておりません。私の考え方、価値観が含まれているので話に偏りがあるかもしれないです。最後に、是非とも題名の意味を考えながら読んでいただけると嬉しいです。

コメント

群青ニブンノイチ

長い間の試行錯誤、お疲れさまでした。
作者が思うなりのゴールに辿り着けた、ということは何よりの成果に違いないと思います。


どのくらい読書に親しまれる作者なのかはわかりませんが、極端なものの言い方をすればこの作品には作品たるエピソードはないのかもしれない、というのが個人的な感想です。
実際に一つの作品として書き上げられているのですから、そんな感想はおかしい、と言われてしまうかもしれませんが、個人的にはそんなふうに感じさせられたということです。

主人公には、一つの作品の語り部として相応しい行動や貢献はありましたか。
始まりの主人公と、結末としての主人公に、作品たる何か効果的な変化はありましたか。
何も、主人公に吹奏楽を好きになれ、高倉先生に素直に従えと、それが変化という両極こそを示すのだ、などといったようなことを言いたいわけではないので勘違いしないでほしいです。
全くの理解者でしかない佑樹くんが、結果的には何の進歩もないように見える(すみません)主人公の願望の権化として存在させられたただの道具にすぎないように思えるのは、読み方として随分と意地悪な、穿った読み方でしょうか。

作者がこの作品を書くにあたって、何を目的と見て目指されたのか、一読者としては些かわかりかねるような気がしています。
初めての経験、という学びのつもりで一度作者自身の創作における意図やテーマのようなことを率直に観察されてみるといいような気がします。

千才森 万葉

 お邪魔します。
 このサイトには行を空けることを嫌う方が多いので、ここに持ってくる際は行を詰めた方がいいですね。まあ、わたしも他人様のことは言えませんけども。

 狙いとしては、フルーツ・キャンディとフルートの音を掛けたお話を書くことでしょうか。お話は、部活と勉強の両立・伸び悩みからの自己の解放・同級生との恋?などなどを混ぜてあり、面白かったんですが、やっぱりこれだけの要素を混ぜるのなら、もっと長い作品を読んでみたいなと思いました。伝えたいことをしっかりと持っていて、それを書こうという姿勢が作品に現れているのが好ましかったですね。等身大という言葉が似合う作品です。
 あと、経験者と言うことで、所々に興味深い言葉が出てくるんですよ。『その程度なのか』『歌う』『優等生のフルート』『もっと感情を込めてが出てこないんだ?』
 経験が混じるからなのでしょう、読んでいて固有の力を感じました。

 そうですね。問題は、上手に機能しなかった言葉があることでしょうか。それと、話をゆっくりと繋げていく技術かな。お話で読者を共感させるには、それなりの文章量が必要っていうのが持論です。その辺は、もう経験を積むしかない気がします。即座に上達する方法があるなら、わたしが教えて貰いたいぐらい。
 それで前者の、あまり機能していなかった言葉。
>フルートの音は、蕩けるように甘く、仄かな酸味のようにあざとく、そしてどこかせつない。
 この肝になる一文ですけども、冒頭に持ってくるにしては共感を呼びにくくて、作者だけが理解できている文章といった感じになっちゃってるんですよ。わたしの感覚だと、蕩けるような甘さと切なさは共感できるんですが、仄かな酸味がちょっとわかんなかったです。まあ、わたしがほとんど聞いたことが無いからかも知れませんけどね。具体的な感覚をもっと書き込むか、共感しやすい言葉に置き換えるかしないと、大勢には伝わりにくいかも?
 実のところ、冒頭の一行でインパクトを与える手法って、相当難しいんですよ。一撃で読者の胸を打つ必要がありますし。この作品でしたら、一行目は移動させてもいいかなって気がします。「逃げるのか、そうやって」この台詞もなかなか力がありますし、冒頭に使っても負けないと思います。もう少し読ませてからフルートの一文を置いた方がいいかなって感じました。
 心情の台詞と回想を、続けて冒頭に置くのもちょっと入りにくい気もしますし。

 お話自体は面白いと思います。やっぱり経験は武器ですね~。
 もっとシナリオがスムーズに流れるように書き込めたら、もっと評価されるはず。

u

よみました

↑2者様意見に似通ってるというか


先ずは王道パターンで描けばいい
中学とか高校の国語の教科書に載っているはずです
バナナとか角田とかその他

プロでも短編は(限りませんが)王道です(笑

狙いで見る限り作者様お若いんでしょ?

ガンバ 御健筆を

はるか

 northさま

 拝読しました。

 とても面白い、と感じました。

 話が自然に流れているところが、なによりもよい、読みやすかったし、いわゆる嘘がない。嘘がない、というのは、フィクションじゃない、という意味じゃなくて、フィクションに無理がない、という意味であり、書き手の中の深いところにある模様が上手に掬いあげられている、という意味です。試行錯誤して書いたとはとても思えない、推敲はもちろんしたのだろうけれども、原型は一筆書きのように、一気に書き下ろしたのでは? と思えるほどに、話がスムーズで、ぎくしゃくしておらず、つぎはぎの箇所も見当たらず、あざとさもなく、何よりなにより、白井晴香が生きていた、白井晴香ってフルネームが七回くらい(数えてません、適当なイメージでそのくらい)出てきたのもとてもよかった、フルーツキャンディの味も作品に似合っていて、いえ、これは貶してるのではなくて、全面的に称賛する意味で、似合っていてよかった、と、そう思いました。ほんと、嘘がない。

 文章、正しく、読みやすく、のみならずほのかな味付けもあり、つるつると読めて、そこも好きです。私、シンプルな文章が好きなんじゃなくて、
一、文法的に醜くなくて(つまり、つっかかりがなくて)、
二、リズムがよくて、
三、比喩やら、形容やらが適切で
四、文体としての、オリジナリティがあって、
五、日本語を大事に扱ってるような、
 そんな文章が好きなのですが、御作は、そんな私の趣味に合致する文章で紡がれていたからなのか、非常に好感が持てたのでありました。ほっとするし、のびやかな気持ちになれるし、話を読み続けたい気持ちにさせてもらえる。読み応えがないよりあったほうがいいとは思うけど、読み応え、というのは、のどごしでもあるから、難解だけど味わいのある文章が美味しいのと同じように、シンプルな文体も、その、のどごしのよさ、という点において美味しかったりするわけで、難解なものも、シンプルなものも、日本語の文法や響きが間違ってたり不整合だったりしなければ、どんどん読めていける、という意味で、美味しい文章なんだと私は思います。

 フルート、という題材も、フルーツキャンディという小道具も、無理なく、必然的に、これしかないでしょ、って配置で選択がなされているようで、読んでて嬉しくなるほどに響きあっていました。

 悪いとこ、は、ほぼなかったようにも思うのですが、行間をあけること、これは悪くないけど、むしろ読みやすいけれど、一方で行間なしで改行すらなく、きつきつの文面にも美しさがあり、読みにくいようだけど慣れればかえって読みやすい、という効能もあり、で、書き慣れてる方はどういうわけか、白めの紙面を稚拙に、黒めの紙面をその逆に捉える感性をお持ちになりがちのようなので、今作は、行間を詰めて書いても問題なさそうだし、詰めて書いたほうが、あるいは無難であるかも、とか思ってしまいました。そのほうが、このサイトでは、読んでもらいやすいかもしれない、とか。書き手の判断次第でありましょうけれども。

 爽やかな話をありがとうございました。あと、忙しいのかもしれないけれど、返信はまめに書くとよいですよ、たぶん、いろんな意味で、多少は無理しても。

あかね

好きなタイプのお話でした。
吹奏楽いいよね、中学生青春だね。文章の中にあった、中学生は他人を蹴落としていくための場所ていう主人公優等生の汚い考え方が好きです。部活とくに日本人てのは、みんなで一緒にがんばろうねと連帯感を求めるのが、優等生なのに自分は自分と孤高を貫いているのが美しいと思います。でも先生は苦手だし、親からは放置ぎみだし、なんとなく孤高の寂しさもあってなおよし。歌う、という表現はフルートを表現力豊かにさえずっている様子をよく表していると思います。歌えないことに葛藤する主人公。逃げることを良しとしたとき、吹っ切れる爽やかさ。フルーツキャンディの味も混ざりあっていい味出してたと思いました。

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