作家でごはん!鍛練場
久方&(仮)

キーン(旧版&改訂版)

社内合宿中。
朝五時から朝礼がありました。
その後、社員によるかき氷の出店あって、皆様で食べてらっしゃいます……。


『キーン(旧版)』

 蝉が鳴いている。
 真夏の朝六時からかき氷を食べる一組の男女。先程から見ていると、男性は女性に気がある様子。
 さて、女性は……。

「暑いですね……」
 男性の呟きに、女性の返事は無い。
 男性が発した呟きは乾いた朝の空気の中に溶けた。

「暑いですね……」
 男性は健気にも、もう一度同じ呟きを発した。
 今度は女性の方を向いて発した。

「そうかしら……」
 女性は男性側を見ることもなく、かき氷のスプーンを削れた氷山に忍ばせた。
 女性のかき氷にかかっているシロップは赤い。先程、イチゴと注文したのを聞いた。

「夏って暑いですよね……」
「はあ、まあ……」

 男性が目を落とした先の氷山のシロップも赤い。先程、イチゴと注文したのを聞いた。
 ちなみに、女性より先にである。
 ちなみに、女性はご自身で注文をされた。

 二人に近寄る怪しい影……。
 手にはやはり、かき氷のカップ……。

「いやあ、部長。奇遇ですね。朝の体操の後のかき氷。僕も頂いています」
「おお、××君、君もか」
「ええ、僕はメロンを注文しました」

 男性はほっとしたように××君と呼ばれた男性を見ました。

「僕の氷、食べられます? まだ一口も食べていません」
 男性は少し悩み、ゆっくりとスプーンを××君の氷に進めた。
 緑色のシロップがかかった部分をすくう。

 一口、味わう。
「うっ……げほ、ごほ!」
「ひっかかりましたね! これ!」
 ××君が背中に隠した反対の手から出したのは、ハバネロソース。

「これを上の方に少しだけかけていたんですよ」
「君は……」

「アハハ!」
 女性が初めて笑い声を上げました。
「君も……なにを笑っとるんだ……!」

 女性はきょとんとして、男性の顔を初めて見ました。
「だって、部長。全然気を許して下さらないんですもの」
「しかし、君……」

「ですよねー、課長。僕もさっきから見ててハラハラしちゃって……」
「良いこと言うわね。いかがです、部長。わたしのイチゴ味。タバスコが入ってるかも……」
「いらん!!」

 男性は黙ってオフィスに入っていってしまいました。

 コピー機に向かいながら、男性は一人。
「今度はブルーハワイにしよう……」
「かけれる色にして下さいよぉ」

 慌てて振り向いたが、人影は見えず……。
「あーあ、クビにしてやりたい」

(了)



『キーン(改訂版)』

蝉が鳴いています。

真夏の朝六時に一組の男女が各々のかき氷を召し上がっています。さっきから拝見しておりますが、男性は女性にお熱なご様子。
さて、彼女は……。

「暑くないですか……?」
彼の囁き、しかし彼女からの返事はありません。
囁きは朝の乾いた空気の中に溶けました。

「暑くないですか……?」
彼からの勇気ある囁き、ふたたび。
今度は彼女の方を見ながら言いました。

「そうじゃないですか……?」
彼を見ることなく、彼女は彼女のかき氷の氷山にスプーンを差しました。
女性のかき氷のシロップは赤色。先程、イチゴと注文されたのを聞きました。

「夏は暑いですね」
「ああ、まあ……」

男性がうつむいた先の氷山のシロップも赤色。先程、イチゴと注文されたのを聞きました。
実際、彼女の注文より先でした。
その上、彼女は自分自身で注文されました。

二人に近寄る……怪しい影……。
手には……かき氷のカップ……。

「ああ、部長。奇遇ですね。朝の体操後のかき氷。僕も頂いています」
「ああ、××君、君もか」
「ええ、僕はメロンを注文しました」

男性は安心したように『××君』と呼ばれた男性を見ました。

「僕の氷を召し上がられますか? まだ食べていません」
男性は少し悩んだ後、ゆっくりとスプーンを彼のかき氷に近づけました。
そして緑色の部分をすくいました。

一口、味わいます。
「う……げほ、ごほ!」
「引っ掛かりましたね! これでーす!」
××君が背中から出したのは……ハバネロソースでした!

「てっぺんにこれをちょっとだけ掛けたんです」
「君は……」
「あはは!」
女性が初めて声を出して笑いました。
「君まで……何を笑っているんだ……!」

彼女はきょとんとして、それから彼の顔をやっと見ました。
「あら、部長。全然くつろいで下さらないんですもの」
「しかし、君ねぇ……」

「ですよね、課長! 見ててハラハラしちゃって」
「いいこと言うわね! 私のかき氷もいかがですか、部長? イチゴ味ですよ。タバスコがかかってたりしてね……」

男性は黙って、オフィスに入って行ってしまいました。

コピー機に向かって、彼は一人呟きます。
「次は……ブルーハワイにしよう」
「掛けられる色にして下さいよぉ……」

慌てて振り返りましたが、人影は見えず。
「ああ、首にしてやたい……」

終わり

キーン(旧版&改訂版)

執筆の狙い

作者 久方&(仮)
150.31.134.121

現在8面にある『キーン』の改訂版です。
一度、英語に直して、もう一度、日本語に戻しました。
内容は基本的に変わっておりません。
あまり気分の良い話ではありませんが、お読み頂けると嬉しいです。

リンク先の星空文庫様に英語版があります。『親友交歓NEO』の英語版もあるので、興味を持たれた方よろしくお願い致します!

コメント

久方&(仮)
150.31.134.121

星空文庫の方、削除させて頂きました~

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