作家でごはん!鍛練場
舞茸

ジンクスなんて信じない

 ここで抱き合うと永遠に幸せになれるというジンクスはいつからできたんだろう。
 一級河川の貴重な水資源でもある山間のダム。元々ちょっとした観光地だったのが、ジンクスのおかげで爆発的に人が来るようになった。SNSで拡散されたせいだが、私はその前からダムには何度も訪れていた。だから、静かな景観が噂のせいで崩れることを快く思っていなかった。

 しかし流行りはいずれ廃れる。今となってはほぼ誰も来なくなった。たまに大きな連休に少しのカップルが訪れるぐらいで、道はすいている。
 私はダムから車で一時間ほどのそこそこの町に住んでいる。田舎で何もない街だ。
 私は週に一回しかない休日にダムに向かって車を走らせた。

 一番最初に来たのは、ジンクスが流行る前で、家族と一緒だった。
 次に来たのは大学時代だ。実家からだいぶ離れた県庁所在地の市に下宿をしたが、あまりなじめずホームシック気味だった。
 ジンクスが流行り出したのもこの時期で、当時付き合っていた彼氏と一緒に訪れたのだ。
 彼氏に私の実家に寄りたいと言われたが、私は断った。それがきっかけで少しずつ溝が深まり結局彼氏とは別れることになった。その時家族に紹介できる気分じゃなかったのだ。

 私は大学卒業後、実家の近くで仕事を始めた。都会の空気が肌に合わず、田舎でのんびりと暮らしながら、母に結婚しないのかと愚痴を言われる日々だ。

 でも、私は寂しくない。母に紹介はできないけれど、彼に会えた。

 ダムの水面を眺めながら私はひとりで、自分の体を抱きしめた。
 ジンクスなんか信じていないけれど、彼も同じ気持ちだったらいい。
 ダムの青い緑を午後の日差しとともに感じながら、抱き合うことが許されない、いずれ私の元から去ってしまう彼のことを考える。

「芹菜?」
 目が覚めた彼に「おはよう」と言うと、「おはよう。って今何時?」と返ってくる。
 午後の夕焼け空が出そうな頃合いだ。
「さあ。何時かな」
 と言って空を見上げる。きらきらと光る太陽がまぶしい。
「だいぶ遅いんじゃないか。寝坊したな」
「寝坊?」
 私はくすくすと笑う。寝坊も何もないと思う。
「笑うなよ」
「いつも眠ってるみたいなものじゃない」
「ずっと起きてることもできる。遠慮してるだけだからな」
 私は彼の気遣いを知っている。でも、私はどっちでも良かった。
「好きに使っていいのよ。戒のものでもあるんだし」
「それは違う。本気で言ってるのか?」
「本気よ」
 彼はきっと、眉間にしわを寄せたと思う。見えないけど、そう思う。

 その時私はふわっとした感触を味わった。魂が抜けていくような。気付いたら、自分を自分で見下ろしているような態勢になった。地に足がつかない。
 自分の体がひとりでに歩いているのを感じる。彼の仕業だ。彼はダムの柵に身を乗り出し、ダムの底を見つめている。
「このままダムに身を投げたらどうするんだ?」
 と彼は言う。私は泳げないし、間違いなく死ぬだろう。底は深そうだ。
「そうしたいならそうして」
「ふざけるな」
「私は本気よ。戒の望むとおりにすればいい」
 彼を試しているわけでもない。私はふと、このままこの体を彼に預けて永遠に眠ってもいい気がしてくる。
「芹菜」
「戒は自分に戻りたいと思わないの?」
「これはお前の体だ。それに、自分なんてものがなかったら?」
 私は答えられない。

 戒という名前は私が付けた。このダムで水面を眺めていた時に、ふと影のようなものが私の中に飛び込んできたのだ。それが戒だった。
 戒は自分の名前も、どこにいたのかも思い出せないという。川の流れに乗って、気付いたら私の中にいたらしい。

「上流まで行ってみたら何かわかるかも」
「お前の運転で?」
 戒は意地悪だ。確かに私の運転では細い道を通る自信はない。ここに来るのだっていつも苦労してる。
「でも、戒は免許持ってないでしょ」
「持ってなくてもだいたい覚えた」
「本当に大丈夫?」
「お前の運転よりはな」
「もう」
 戒に体を預けて、車に揺られる。戒の運転は私の運転より丁寧で安全だった。
「上流って場所わかる?」
「まあなんとなく。川に沿って行けばいずれ着くんじゃ」
「でも、もうすぐ暗くなるよ」
「そうだな」
 と言いながら、戒は運転をやめようとしない。
「ねえ、結構遠いよ。今度にしようよ」
「芹菜は怖がりだな」
「だって、山は怖いんだよ」
 戒は知らないだろうけど、夜に迷うと帰れなくなることもある。
「大丈夫。俺がついてる」
 もう。と思いながらも流される私も私だ。
「今日はここまでにするか」
 と戒が下りたのは、道がまだぎりぎり二車線の場所だった。有名な渓谷の観光案内の看板がある。
「良かった。まだぎりぎり真っ暗じゃなくて」
 観光地だというのに、時間帯のせいか人一人いない。
「ほら、見てみろよ」
「きれい」
 空は暗くなりかけていたけれど、青い透き通るような川面に私はくぎ付けになった。

「何か思い出した?」
「いや、全然」
「そもそも戒はどこから来たの?」
「それがわかれば苦労しないよ」
 聞き方が悪かったかもしれない。川から流れて来たのではなく、空から降ってきたかもしれない。何もわからない。ただ、今戒がこの私の中にいること以外は。
「帰るか」
 と戒は呟いた。帰りも運転してくれた。私の目を通して道は覚えてしまったと言う。もっと早くから代わればよかったと思う。

 家に帰って母に聞かれた。
「どこ行ってたの?」
「ダム」
「あんた好きね」
「いいでしょ。別に」
 そこまでは良かった。すると、母は
「いつになったら結婚」
 と話を続ける。何を話していても途中でそういう話になる。私はいい加減うんざりしている。
「聞きたくない」
 私はそう言って母の言葉を遮る。そしていつも口論になる。
 私は話の途中で部屋にもどってため息をつく。
「いつも大変だな」
「うん」
 戒が気を遣ってくれるから、嫌な気分がすっと抜けていく。
 でも、夕飯の時間は母と会話をしなかった。

 風呂の時間は今でも慣れない。最初に戒が私に入ってきたときは本当に困った。
 戒は私の視覚、聴覚、臭覚、触覚まで全て同じように感じてしまう。だから、私が目を開けていると裸も見られてしまうし、大事な部分を触ると感触がわかってしまう。
 戒はなるべく意識を向けないようにしてくれているけれど、それでも気になって仕方ない。何故か戒は男だという自覚はあるようだから。
 その日も「できればずっと眠っててね」とくぎを刺して風呂に入った。「はいはい」というやる気のない返事。本当に私の恥ずかしさをわかってるんだろうか。なるべく自分の体を見ないようにして風呂に入るしかなかった。

 仕事場までの運転も戒に任せようかなと思いながら私は眠りについた。

 明日からまた仕事だ。でも、戒が来てからは仕事中でも頭の中で話すことはできるので苦痛じゃない。
 ぼんやりしてたまに社員に怒られることもあるけれど、おおむね良好だ。
 母が余計なことを言いださない限りは平穏な日々なのだ。

 母がお見合いと言い出して、「絶対に嫌」と答えると、「残念だけど向こうから断られたわ」と言う。
「いい縁談だと思ったのよ。でもそれがね、近々入院したみたいで、相手のご両親に謝られてね」
 私はほっと胸をなでおろす。そのまま一生入院しててくれても構わない。ってさすがにそう思うのはひどいかな。

「お見舞いと称してご対面したらどう?」
「は?」
 母は何を言い出すのかと思う。
「向こうだって困るでしょ。そんな知らない人なのに」
「こっそりよ。白板病院だって。この辺はあそこしかないものね」
 いい加減にしてほしい。本当に母は言い出すと止まらない。
「芹菜、行ってみたら?」
「へ?」
 急に戒が言い出して私はつい変な声を出してしまった。母に変な顔をされる。
「なんとなくさ、ちょっと気になるっていうか」
 戒がそう言うなら仕方ない。次の週末にでも行ってみるか。
「部屋番号とか知ってるの?」
「いやーね。知らなくても看護婦さんに聞いてみなさいよ」
「それ不信がられるでしょ」
「沢田さんって人よ。そんなに何人もいないでしょ」
 母は本気なんだろうか。
「もしかしたら俺の手掛かりがつかめるかもしれないし、念のためな」
 と戒が言うので、私は適当に母に返事をして行くことにした。

 私は例の白坂病院に来ていた。
「どうして、ここに何かあるの?」
「まあ一つの可能性としてさ、寝たきりで、意識だけ芹菜の中に入ったってこともあるだろ」
「確かに」
 でも、本当にそんなことがあるだろうか。もし、戒がもう生きていなかったら。私はそう思った言葉を飲み込む。戒を不安にさせちゃいけない。

 その病室のネームプレートを見た時、パチッと何かがはじけた音がした。
「戒?」
「わからない。何か変な気が」
 まさか本当に戒の正体がこの人とか。「沢田邦洋」と書いてある名前の。

 病室の前には「お見舞いの方は看護師等にお尋ねください」と張り紙があった。
 勝手に入ってはいけないんだろうか。
 私は躊躇する。
 しかし私の足は勝手に動き出していた。もしかして戒?
「勝手に入って平気なの?」
 戒は答えない。何かとてつもない嫌な予感が私を襲った。

 病室では男性が寝ている。間違いなく見たこともない。身長がかなり高くて、結構かっこいい。イケメンだ。男の人の割には髪が少し伸びている。
「芹菜」
「戒?」
「なんか気持ち悪い。出よう」

 戒がそういうので私は病室を出る。

「ちょっと勝手に入ってはいけませんよ」
 と看護師さんに注意された。
「すみません。知り合いの方かと思って」
 と私はとっさに言うが、「知り合い?」と不審な目で見られる。
「芹菜」
 と戒は呼ぶが、今だけは無視した。
「あの、どういう病気で入院しているんですか?」
「その、植物状態でして」
「植物状態?」
 確かによく考えてみたら、酸素ボンベや点滴が付けられていた。ただ寝ているのかと思ったけど違うのか。
「ご家族の方ですか?」
「いえ、その婚約者」
 あまりにも適当に言い過ぎたかもしれない。
「まあ。お気の毒に」
 そう言ったらべらべらと患者のプライベートをしゃべりだした。
 女性を助けようとして、川に流され、死ぬところだったとか。その女性は亡くなったらしい。亡くなった? 聞いてはいけないことを聞いた気がする。
「あら、でもその女性の方と付き合っていたんではなかったかしら」
 私はとっさに、
「お見合いで無理矢理結婚させられそうになって。彼女がいることも知らなかったんです」
 とごまかす。半分は本当だ。
「そう。それは大変でしたわね」
「その、女性の方って……」
「やめろ!」
 私が看護師さんに聞こうとすると、戒が大きな声で遮る。
「どうしたの?」
 と、頭の中で戒に聞いても答えない。
 看護師さんに名前を聞いた。西森小百合さんというらしい。全く聞き覚えはなかったし、私には関係ないと思った。

 私はそのまま病院を後にして、お母さんに報告した。
「お母さん」
「どうだった?」
「眠っているだけよ。植物状態だって」
「あんたが呼び掛けて目が覚めたりしたら素敵じゃない。無理だったのね。残念」
 母は何を夢見ちゃってるんだろう。
「じゃあ知ってたの?」
「だからお断りが入ったんじゃない。何言ってるの」
 だから私は聞いてないっつうの。母の独りよがりの行動がいつも私をいらいらさせる。

 そういえば病院からずっと戒の声を聞いていない。
「戒?」
 恐る恐る話しかけると、急に言い出す。
「もうあの病院に行くのはやめろ」
「どうして?」
 私は戒が変わってしまったようで怖かった。
「病院なんて行って楽しい物じゃないだろ」
 戒は何かを隠している気がした。

 その日から戒は私に必要以上に優しくする。
 明らかに今までと態度が違う。まるで何かをごまかしたがっているように。

 仕事で重い物を持たされそうになった時も、さりげなく交代する。実際は私の体が持っているから同じなんだろうけど、変な感じだ。
 車の運転もずっとしてくれてる。私よりスムーズでうまい彼の運転する車に揺られながら考える。一体いつまでこの状況は続くのか。

 今までのぶっきらぼうな戒も良かったんだけどな。って私は何を考えているんだろう。どこの誰かもわからない人にこんな感情を抱くなんてどうかしてる。でも、もし、私の想像通り戒の正体があの人だったら、私はどうなるんだろう。
 戒はどうして忘れてるの? 死んだという西森小百合さんのことが知りたくなった。本当にその人は亡くなったのか。どうして川に流されていたのか。戒と初めて会ったダム。あそこに秘密があるんだろうか。

 戒の手前、興味がある風には見せられなかった。戒が寝ている間にこっそり小百合さんのことを調べる。この前会った看護師さんに頼み込むと、少しだけ教えてくれた。小百合さんは自殺したらしく、遺書が残っていたとか。
 沢田さんという人は、もしかして自殺を止められなかったことを後悔しているんだろうか。だから目が覚めないとか。なんて妄想でしかない。本当に戒だったりしないよね?
 そうは思っても、懸念はなかなか拭えなかった。

「戒?」
「なんだ?」
「戒はもとの体に戻りたくないの?」
「最近このままいてもいいかなって思うんだ」
 そんなことを言う戒はおかしい。
「嘘。だってそしたら戒は」
「もう死んでるかもしれない。誰だかもわからない。人間かどうかも。だから、考えたって無駄だろ」
「逃げてるだけよ。本当のことと向き合うのが怖いから、逃げてるんでしょ」
 言ってしまった。
「芹菜」
「あの病院に行った時、何か感じたんでしょ? どうしてそのことから目をそらすの? あの男の人が戒の正体だったら」
「それはない」
「逃げないでよ。私だって、私だって」
 泣きそうになってくるのを必死でこらえる。
「いやよ。本当はずっとこのままがいい。戒がずっと側にいてくれた方が。でもそんなの長く続かないのはわかってる。はっきりさせたいの。戒がどこの誰だか。もし違っても、また新しく探せばいいじゃない」
「芹菜……。わかった」

「嫌な感じがしてしょうがない。できればはっきりさせたくない。でも、芹菜がそこまで言うならわかったよ」

「戒、あのね」
 最後にもう一度ダムに行きたいと言うと、
「最後かどうかわかんねえだろ」
 とぶっきらぼうに言う戒が懐かしく感じる。まだたったの一か月なのに。
「戒、私戒のことが」
 結局言葉にできなかった。
「芹菜」
 戒も何かを言いかけたようだが、何も言わなかった。

 二人でただダムの揺れる水面を見ている。お互い言葉が出てこない。これが最後かもしれない。いや、多分最後だ。戒はきっと、自分の体に戻ったら、私のことを思い出すこともないだろう。そんな気がする。

 戒はぽつりと言った。
「思い出した。何もかも」
「え?」
「俺は彼女の、小百合の足を掴もうと手を伸ばした。でも届かない。そのまま流されていく彼女を止められなかった。俺は生きる気力をなくした。もう意味がないと思って、もがくのをやめたんだ。そしたら逆に中州に引っかかって、一命をとりとめた。皮肉だよな」
「戒?」
「どうしても自分の体に戻りたくなかった。現実を受け止めきれなかった。その時お前の体を見つけた。すっと中に入れたんだ。でも、記憶はこの川の中に置いてきた」
「ダムだよ」
 私はとんちんかんな返答をする。
「ずっと上流から繋がってる。彼女が飛び降りたのは、上流の流れが速い場所だ」
 ああ、彼は私のもとから去ってしまう。ただそう思った。

「戒」と呼びかけると、
「病院に連れてってくれ」と一言言った。
「うん」
 その後は終始無言だった。私たちはもう語る言葉をなくしてしまった。

 看護師さんに内緒でこっそり病室に入って、戒は突然言い出した。
「これ、小百合の写真」
 戒は私の体で指を差す。男性の横に写真が飾られていた。
 小百合さんは写真で見る限りきれいな人だった。スレンダーで私とは180度違う。私は太ってるわけじゃないけど、腕とか太ももに肉がむっちりついている。目が大きいのだけが取り柄。団子っ鼻で、おちょぼ口、コンプレックスの塊だ。
 戒はこういう人の方が好みなんだなと思った。
「なんか変なこと考えただろ」
「戒?」
「ありがとう」
 戒は私の言葉には答えず、ただそう言った。

 戒は寝ている男の人に私のまま触れた。何かがはじけるような感触がした。戒が私の中から抜けていくようなそんな感覚を味わった。気のせいかもしれない。でもなんとなく、そう思った。

 私は戒がいなくなった体を病室の外に向けた。振り返らない。戒が自分の体で目を覚ますのはもう少し時間がかかるだろう。

 その日以来、戒の片りんも私の中には残っていなかった。夢だったのではないかと思う。それぐらい何もない。
 私はただ彼に出会ったダムに行き続けるのだ。

 毎週の休みにダムに行っていたら、運転がうまくなった。戒にももう馬鹿にされたりしない。でも、「まだまだだろ」と答える声はもういない。

 いつものようにダムを見ていた。近くに止まる車の音。誰か私以外に人が来たんだろうか。週一回の憩いの時間を汚さないでほしいと思う。
「芹菜?」
 私はそこで初めて振り返る。男の人が近付いてきた。見覚えがある男の人。
「戒?」
 私はふとつぶやくが、否定されてしまう。
「戒じゃない」
「邦洋?」
 彼は私を強く抱きしめる。まるで彼女にするように。私はきっと彼女の代わりだ。彼は私を通して死んだ彼女を見ている。
 やっと抱き合えると思った時は、彼が私の知る彼じゃなかった。

「芹菜」
 戒はやっと口を開いた。
「また会える?」
「わからない」
 どうして彼ははっきり否定しなかったのか。
「俺は小百合の両親に会ってくる。ちゃんと終わらせてこないと。もし……」
 彼は言いかけてやめた。
「いや、なんでもない」
「戒」
「戒はもういない。芹菜、俺は」
「わかった。さようなら邦洋」
「せり……。じゃあな」
 戒、いや、邦洋は車に戻っていった。私も車に乗る。彼とは別の方向に車を走らせる。もう二度と会うことのない彼との別れだった。

ジンクスなんて信じない

執筆の狙い

作者 舞茸

普段は純文学的なものを書いているのですが、久しぶりに恋愛がメインの作品を書いてみました。
WEB小説の賞に向けて書いたため、8000字以内の短編になっております。
この文字数で内容が読者に伝わるように書けているのか知りたいと思います。
評価をよろしくお願いいたします。

コメント

はるか

 舞茸さま

 拝読しました。
 内容、ちゃんと伝わりました。?、?、?と思わせられながら、!、!、!と解けてゆく謎が心地よかったです。作品の長さに応じた文体も、安定していて、乱れがなく、読みやすく、軽すぎもしなくて、もちろん重くはなく、気取りがなくて、しかし味わいもある、端正なものでした。例えばここ、

>午後の夕焼け空が出そうな頃合いだ。

 だなんて、さらりと。いいですね。

 内容、なんとなく『君の名は。』を連想しました。ギミックとしては、古くからあるギミックで、アイディアが斬新であったとは思えないのですが、筆力があるからでしょうか、展開が自然で、するするとほどけてゆく紐が心地よく、そう、リズミカルでもあるので、作品世界にすんなり入れるし、そのままエンディングまで連れていってもらえます。読ませる技があるのでしょう、読み手としては力を込めずに読めました、ノンストレスで読めました、面白く読めました。
 一点、まごついた箇所がありました。戒、という名前が最初に登場したところです。人名であることがわからず、?となりました。すぐに、!となりましたが。?のち!、な作りをされているようなので、ここも、あるいは演出なのかもしれませんね、でも、ほかの?のち!に比べると、ここの?のち!は少しだけストレスを感じたかも。
 作者さんの筆なら、題材が何であれ、きっと上手に作品化できるんだろうな、とお見受けしました。今作のアイディアは斬新であったとはいえないかもしれませんが、作家の武器は文体であるように私には思われます。漫画だって、アイディアやストーリーは編集さんと打ち合わせしながら練ることができるけど、画力は補ってもらえません。小説家も、アイディアやテーマは、望みさえすれば、それこそいやというほど与えられるんじゃないかと思うけど、編集さんだろうが、校閲さんだろうが、単純ミスには赤を入れてくれるでしょうけれども、文体を直してはくれないでしょう、というか、直せるものじゃない。筆を握るのは作家であり、編集でも校閲でもないってことです。その意味で、作者さんには、筆力があるので、斬新なアイディアを与えられたら、それだけでもう十分に素晴らしい作品が書けるのだろうな、って思えます、思えますので、今作での受賞を逃しても、アイディアに恵まれたあかつきには、きっと受賞できるんじゃないかな、って私には思えました。
 既視感のあるアイディアは、コンテストでは不利なような気もしますが、よしんば(?)作家になってしまったあかつきには、さまざまな掩護射撃が得られることでしょうから、コンテストに通すための斬新なアイディアをひとつ、今は見つける、それが有効な対策ではないか、だなんて、すみません、わかったようなこと書いちゃいました。
 面白い作品を読ませていただきました、たぶん作者さんは、面白い、の上を狙っておられるのだと思いますが、ともあれ面白いものを読ませていただき、ありがとうございました。

ラピス

すみません、辛口になります。
純文学志向にしては圧倒的に地の文が足りてません。スカスカです。WEB応募との事だから、故意にされてるのでしょうか?
台詞も短すぎて、良くない。母親も掘り下げが甘い。
ただ、内容が少女漫画風で好みだったから、最後まで読めました。

舞茸

>はるか様

お読みくださりありがとうございます。
文体や内容などお褒めいただきうれしいです。
とても励みになります。

おっしゃる通りネタはありきたりかもしれません。
短編の場合は、ネタより筆が回る作品を重視しているために、あまりネタについて推敲していませんでした。
もっと面白いネタがあるといいですよね。
ネタはたくさんあっても、書けるもの(筆が進むもの)が限られていていつももどかしい思いをしています。
どうしても、読者を楽しませることより自分が楽しんで書くことを優先してしまうためだと思います。
だからエンターテイメントは自分には難しく感じ、最近は純文学に傾倒していました。

恋愛物はありきたりな設定になりがちなので、他の作品と飛びぬける何かがやはり必要ですね。
勉強になります。
また考えてみます。
「君の名は」は実は見たことなくて、似ているんですね。

プロになった先のことまで考えていただけて。なりたいです。がんばります!

舞茸

>ラピス様

お読みくださりありがとうございます。

この話は純文学仕様ではありません。説明がわかりにくくてすみません。
純文学向けの作品はセリフほとんどなしで、地の文多めで書いています。
今回は恋愛というジャンルで挑戦してみました。

少女漫画といわれると、意識はしてなかったのですが、一時的読みあさったからかもしれません。
文章は稚拙な部分があると思うので、修正していきたいと思います。
母親の掘り下げなども短編なのであまり意識しておりませんでした。参考にさせていただきます。

ラピス

いえ、この物語が純文学でないのは、わかっております。日頃、純文学を書いているわりには、って意味です。
エンタメでも地の文は重要です。試しに何かの受賞作と自作を比較してみて下さい。描写不足や説明不足で、雑です。
これは、あなただけじゃなく、ごはんに投稿されてる多くの方に言えることです。私も含めてですが。。

そうげん

安易にラストで二人を結ばなかった英断に、そう短くはない一編を読んだ労の報われた気がしました。自分の中に戒として交流を保ってくれていたときにだけ、芹菜は彼と対等に向かい合っていた。戒として接してくれているからこそ、身近にも感じ、ある意味、無二のパートナーであるように感じていた。

これが世知にたけた女性であれば、たとえかつてひも付きであったにせよ、邦洋として再び現れたかれに対して、心を折って、ともに手を取り合う道を選んだように思います。

この純粋性は、穢れを知らない無垢の存在として、自分をかたくなに守る貞潔のあらわれとして、ある意味潔癖ともいえるような底根が透けるようでした。

植物状態になった男の魂だけが、ほかの肉体に同居するというのは、たぶん、よくある話の一例なのでしょうが、のちの展開を考えながら読みつつ、寝たきりになっている邦洋に会いに行くあたりから、自分の予想からは見事に離れて行って、そのあとは、作者様の筆の赴くままに任せて、こちらも楽しませていただきました。

>戒、いや、邦洋は車に戻っていった。私も車に乗る。彼とは別の方向に車を走らせる。もう二度と会うことのない彼との別れだった。

ラストの一段落が備える格調がわたしには心地よく感じられました。とてもいまらしい。いまどきらしい別れのように感じたからです。こういう女性はまだまだたくさんいる気がしました。面白かったです。ありがとうございました。

舞茸

ラピス様

確かに雑な部分があるのは否めないと思います。
短編だとどうしても直しを少なめにしてしまうので。また、描写については最近意識して直すようにしていますが、まだまだ発展途上なので、もう少し勉強してきます。
ご指摘ありがとうございました。

舞茸

>そうげん様

お読みくださりありがとうございます。
ラストについては、安易なハッピーエンドの択も考えたのですが、ご都合過ぎる展開に嫌気がさしたため、自然にあの形になりました。

小説を書くとき、登場人物のそれぞれの思いや行動を重視しているため、彼女なら、彼ならこうするだろうと、考えて書いています。
物語の流れの中で自然に登場人物の行動が決まってくる時がたまにあって、そういう時は何かが降りてきたように筆が進みます。
この作品に何かを感じていただけたならうれしい限りです。

長文の感想をありがとうございました。

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