作家でごはん!鍛練場
峪明博

秘密の恋人

パシャッ、パシャッ。
カメラの音がする。
「いいよ。夏帆ちゃん。」
彼女はグラビアアイドルの信濃夏帆。
男子に人気のグラビアアイドルだ。
「なぁ。見てみろよ。勇二。この写真。」
彼は小林勇二。高校一年生。性格は温厚な普通のどこにでもいる高校生だ。
「おぉ、凄いなぁ。」
「だろ。この体が堪らない。」
「確かに。体つきがムチッとしてていい。」
「こういう女子と恋人にならないかなぁ。」
「まっ、それはなかなか叶わないな。」
「まっ、確かにな。」
「もう少し現実の恋愛を考えれば?」
そんな彼には気になる女子がいた。同じクラスの星野加奈。通称、地味子。彼女は物静かで、長い黒髪はそのままの状態。眼鏡を掛けて本を読んでいる。クラスでは目立たない感じだ。
「また、地味子を見てるのか。」
「えっ?まっ、まあな。」
「あの子のどこがいいんだ?」
「どこが良いというか、よく話しかけて来るから気になって。」
「ふ~ん。男ならもっと夢を持とうぜ。」
「そうか?悪くはないと思うけど。性格は魅力的だし。」
友達の増山はため息を付いた。
休み時間。
「あの、星野さん。」
「何?」
「今日は何の本を読んでいるの?」
「そうね。『暁の剣』ね。」
「へぇ。歴史小説読むんだ。」
星野と話をする男子は学校では小林くらいのものである。
また、小林も小説を読むのが好きで、星野と話す時間が心地よかった。彼女は愛嬌が良く、よく微笑むし、素直に感情を表に出す。
ある休み時間。女子達が星野に話しかけていた。
「星野さんって好きな人とかいるの?」
「ま、気になる人はいるかな。」
小林は彼女等の話に耳を傾けていた。
「え、どんな人なの?」
「優しくて、本が好きね。」
そして、小林は増山に言った。
「今日僕は星野さんに放課後告白しようと思う。」
「どうした急に。」
「女子達の話を偶々聞いたんだけど、星野さんの気になる人は、優しくて、本好きらしい。」
「ほう。」
「学校で男なら、多分僕のことじゃないかな。」
「確かに。」
「だから告白してみる。」
「そうか。男を見せる時が来たか。」
「あぁ。」
放課後。小林は星野を体育館裏に呼んだ。
「何?」
「あの、星野さん。」
「・・・。」
「好きです。僕と付き合ってください。」
「・・・。」
「私の何処が好きなの?」
「素朴な所かな。勿論、内面的な意味でだよ?」
「物静かで、ただ本を読んでいる私なんか魅力ないと思うんだけど。」
「そこがいいんじゃん。初めは話しかけられてビックリしたけど、君と本の話している時はとても楽しいんだ。」
「嬉しい。私もよ。」
「えっ、じゃあ。」
「けど、一つだけ約束して。」
「何?」
「私に秘密ごとが有っても嫌いにならないで。」
「勿論だよ。人間だから秘密ごとくらいあるよ。」
「良かったわ。有難う。宜しくお願いしますね。」
そして二人は無事に付き合うことになった。
とは言っても、別に変わること無く、教室で小説談義をするくらいだった。ただ星野の距離感はかなり近くなった。
ある放課後。
「ねぇ。小林君。」
「どうしたの?」
「『白壁の山』を読んだことある?」
「いや、ない。」
「これ、ファンタジー小説なんだけど、面白いのよ。」
「そうなんだ。ファンタジー小説はあんまり読まないから。」
ふふ、と言いながら、小林に寄り添った。
地味な女子と小林が仲良くなっても、別に妬かれることも無かった。
そして、付き合って一ヶ月が経つ時、小林は思った。
(星野さんとデートがしたい。)
小林は星野さんを今週の土曜日にデートに誘ったが、
「ゴメンなさい。その日は用事で。」
小林は星野に断られた。
「けど、来週なら大丈夫よ。」
で来週、二人は公園でデートをした。
相変わらず星野は服も地味だった。
「素朴な私服だね。」
「えぇ。」
二人はくっ付いて歩いた、と言うか星野がぐいぐい寄ってきた。
「星野さん、近い。」
「良いじゃない。恋人同士なんだし。」
星野は鼻歌を歌っていた。
腕が胸に当たっているのだが、まな板のような感じで、少し痛かった。
二人して幸せそうだった。
「ねぇ。ボート漕がない?」
「うん。いいよ。」
池にあるボートを小林が漕いだ。
池の真ん中辺りに差し掛かった時、
「ねぇ。私の秘密知りたい?」
「知りたくないって言うと嘘になるけど、星野さんが話したい時で良いよ。」
「有難う。小林君。」
小林は漕いでいたら、
「下の名前で呼びあわない?」
星野は言った。
「えっ?」
小林はドキッとした。
「えっ、良いけど・・・。」
「有難う。勇二君。」
「加奈さん。」
「私には加奈って呼んで。勇二君。」
「加・・・奈。」
小林、もとい勇二は赤面した。
「有難う。勇二君。」
加奈は微笑んだ。
喫茶店に行って、二人でご飯を食べた。まだ時間があったので、漫画雑誌を見ていると、
「あっ、えーと、信濃夏帆だ。」
勇二は言った。すると、加奈はドキッとしたが、勇二は気づかなかった。
「最新、男子の間で人気なんだよなぁ。」
勇二は独り言を言っていると、
「この子どう思う?」
加奈は勇二に聞いた。
「どう思うって?まぁ、可愛いとは思うけど?」
「へぇ。そうなんだ。」
加奈はしょぼくれた。
勇二は、?となった。
「どうしたの?」
「男はやっぱり顔を言うんだ。」
「えっ?」
勇二はドキッとした。
「可愛いけど、現実的じゃないというか、高嶺の花というか。」
何一つフォローになっていなかった。
「私は地味だもんね。」
勇二は引きつりながら、目を反らした。
「でも君は性格が魅力的だから、僕は外面より内面かなぁ。」
「そうね。勇二君はそういうタイプだもんね。」
「勿論、そうだよ!」
勇二は強く意志を持って言った。
「有難う。今日のデートは楽しかったわ。」
「家の近くまで送って行くよ。」
「本当?い・・・、ちょっと待ってね。」
加奈は暫く考えた。
「良いわ。お願い、送って。」
電車で二駅先の場所に二人は降りた。
「ここから近いの?」
「えぇ、まあね。」
ここにはタレントが住むと云われる高層マンションが建っている。
(まさかな。)
勇二は思った。
「じゃあ、ここでいいわ。有難う。」
「うん。了解また、学校で。」
「また、学校で。」
そして、日曜日の朝。勇二は加奈二Lineをした。
(暇だねぇ}
{今日も私暇なんだ)
(また、デートする?}
{ok~)
(やたーっ}
{美味しいクレープ屋さんがあるんだってー)
(良いね行こー}
{じゃあ、11時に○☆駅で集合ねーっ)
(了か~い}
二人は駅で集合し、クレープ屋に行った。
「美味しーっ。」
「うん。美味い。」
「甘いねぇ。けど、程よい甘さで、バナナも美味しいわ。」
「そうだねぇ。」
「勇二君。はい、あ~ん。」
「同じクレープなんですが。」
「もう、のり悪ーい。」
「はい、じゃあ下さい。」
「はい、あ~ん。」
「あ~ん。」
「美味しい?」
「同じ味がする。」
「ふふ、同じクレープ注文したからね。」
「別々の頼んだら良かったのに。」
「勇二君と同じの食べたかったの。」
勇二は頬を赤くして黙った。
その後、様々な所を散歩をした。
「そろそろ帰ろう。」
「そうね。」
「家の近くまで送っていくよ。」
「有難う。」
電車の中で。
「早く帰らないとお母さん心配するだろうし。」
「家に親は居ないの。」
勇二はぎくっとした。
「ゴメン。いけないこと聞いたね。」
「違うの。離れて暮らしているの。」
「えっ、どうして。」
「私、ここでやりたいことがあって来たから。」
「へぇ。そうなんだ。」
「うん。」
「凄いなぁ。夢を追いかけてるんだ。」
「まぁ、そうなのかな。だから、いつも家は独りなの。」
(えっ、それって・・・。)
勇二の心拍数が上がった。
「だからね。寂しいの。」
「うん。」
「だから・・・。」
「だから?」
「勇二君みたいな彼氏がいて良かった。」
「え、あっ、うん。」
(なんだ、家にお呼ばれじゃないのか~。)
勇二は落胆した。
「有難う。ここまでで良いわ。」
「うん・・・。」
「どうしたの?元気ないわ?」
「うんうん。何でも無い。」
「彼女の私に言えないこと?」
「だからね・・・。」
「だから?」
「その・・・。」
「うんうん。」
「家に行けたらなぁと思って・・・。」
加奈は赤面した。
「まだ少し早くないかしら?」
「そ、そうだよね。ゴメン。」
「じゃあね。」
勇二はため息をついた時、
「きゃっ。」
彼女は躓いた。
「大丈夫、加奈。」
「大丈夫。勇二君。痛っ。」
「あっ、膝から血が出てる。」
「大丈夫よ。これくらい。」
「ダメ。ほら肩貸して。」
「・・・はい。」
加奈は軽く足を捻挫していた。
そして、勇二が加奈を運んだ先は、
「なん・・・だと。」
そこは例の高層マンションだった。
「ビックリした?」
「うんうん。ビックリしとないよ。」
そして、部屋の前まで連れて行った。
「ちょっと待っててね。」
「う、うん。」
暫く待っていると、ドアがバタンと開いて、
「勇二君!!」
「どうしたの加・・・奈?」
「ゴ、ゴキが・・・出たの!ねぇ聞いてるの?勇二・・・君?」
「君は、確か信濃・・・夏帆?」
「えっ?」
「どうして、その名を・・・。」
加奈は唖然とした。そしてハッとする。
「眼鏡!」
部屋に入ったいつもの癖で眼鏡を外していた。
(しまった。いつもの癖で。)
「どういうこと?」
勇二は聞いた。
「そ、の・・・。」
(ばれた。)
「なんで加奈の部屋に信濃夏帆がいるんだい?」
「えっ?」
「それに加奈と同じ格好して。」
「・・・。」
「それに加奈と同じ声・・・あれ?」
「・・・。」
「どういうこと?まさか。」
「今気づいたの?」
「えっ?!もしかして。」
「そうよ。私は信濃夏帆として、グラビアアイドルしているわ。」
「えーっ。」
勇二は驚いた。
そして、二人は加奈の部屋に入った。
「驚いた。まさか、加奈がグラビアアイドルの信濃夏帆だなんて。」
「まあね。」
「どうして隠してるんだい?」
「それは、中学生の話なんだけど、私はよくもてたの。」
「まぁ、そんなに綺麗かったら。」
「有難う。それでよく女子から苛められてさ。」
「あぁ、よくある話だね。」
「それで実家から少し離れた場所に引っ越ししてこの高校に来たの。」
「成る程。グラビアアイドルは?」
「それは一度少し芸能界でデビューしてみたかったの。」
「成る程。」
「小遣い稼ぎにもなるし。」
「小遣い稼ぎどころじゃない気もするが。」
「それで男子って見た目良い女子が好きじゃない。」
「まぁね。」
「だから、地味に静かに暮らしてたの。」
「成る程。」
「けど、貴方は違った。」
「?」
「地味な私にも優しく接してくれた。」
「・・・。」
「それから初めて話しかけたら、話返してくれて、嬉しかった。」
「・・・。」
「暫く話しかけても、嫌がらず接してくれたから、この人は見た目で判断する人じゃない、と思ったわ。」
「・・・。」
「私は恋愛するなら、私の外見ではなく、中身と思っているの。」
「そ、そうだね・・・。」
「嫌いになった?」
「まさか!僕は君の内面に惚れたんだ。けどまさか胸の写真が加工だなんて・・・。」
「逆よ逆。さらしを巻いてるの。胸はあるわ。」
「あっ、そうなんだ。後、実は美人さんなんてビックリしたなぁ。ちょっぴり嬉しいけど・・・。」
「貴方に美人って言われるのは嫌いじゃないわね。寧ろ嬉しい・・・。」
「加奈・・・。」
「勇二君・・・。」
その時、着信音が鳴った。
「げっ、母さんからだ。」
「あら、もうこんな時間。」
「急いで帰らないと。」
「勇二君。」
「何?」
「私の秘密、周りには言わないで。」
「あ、うん。分かった。じゃあね。」
「うん。」
勇二は母と話し終わった後、ふと思った。
(加奈が信濃夏帆だなんて。学校でバレたら大騒動になる。)
翌日。月曜日。
学校に登校した二人は朝の挨拶をした。
「お早う。加奈。」
「お早う。勇二君。」
秘密を共有したことにより、二人は前よりも親密になった気がした。
「ねぇ。聞いた?最近信濃夏帆って言うグラビアアイドルが読者モデルもやり始めたんだって~。」
「へぇ。どれ見せて~。わーっ、可愛い~。」
「綺麗だよねぇ。」
女子の話を聞いて、勇二は吹いた。
「どうしたの?小林君?」
「いや、何でも無い。」
フィッと他所を向いた。
(加奈の奴、売れすぎだろーっ。)
昼休み。ご飯を食べた後、最近二人であんまり人が寄りつかない校舎で話すようにしていた。
「加奈売れすぎだよ。」
「そうなの。」
「一応聞くけど、信濃夏帆って芸名だよね。」
「勿論よ。」
「それにしても、仕事大丈夫?」
「社長が、売れている時に売らないとって。」
「そりゃあそうだけど、体が心配だよ。」
「有難う。体が大事だから、食生活は気を使ってるの。」
「そう。なら、良いけど。」
「一応、家政婦は雇っているから。」
「そ、そうなんだ。」
勇二は少し安心した。
「テレビ出演も決まっていて。」
「へぇ。そりゃ凄い。登り調子じゃないか。」
「まぁ、そうなんだけど。一応社長やマネージャーには学業優先って言っているから。」
「そうなんだ。」
「学業は疎かにしたくないから。」
「偉いじゃないか。加奈。」
勇二はしみじみと言った。
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン。
「予鈴が鳴ったわ。行きましょう。勇二君。」
二人は手を繋いで、教室に向かった。
放課後。
二人は帰りにデートをした。
「勇二君~。ふふっ。」
「どうしたの?」
「別に~。くっ付いてるのが幸せーっ。」
「有難う。だけど、くっつきすぎじゃないかな。」
「?」
「胸が平たいから腕が痛い。」
「ちょっと、本当は胸あるんだからねぇ。」
「わーっ声がデカいって。それに今外さなくていいから!」
「全く~。」
「けど、昼休みの時の話じゃあデートなかなか出来なくなるね。」
「そ・・・ね。今週も忙しいし・・・。」
「・・・そっか。」
「だから、こういう帰り時でないとデート出来ないの。」
「そっか。」
「心配しないで。時間は作るから。」
「体には気をつけてね。」
「有難う。勇二君。」
「いやいや。」
「後。」
加奈は勇二の鼻を摘まんだ。
「痛い?!何?」
「デートの時、美人さんや色気のある女性を見てたでしょ。」
「どうしてそれを!?」
「ちゃんと見てたんだから。」
「痛たたた。」
「全く、これだから男子は。」
「仕方ないよ。男子なんだから。目がいっちゃう。」
「ふん。H。」
「加奈だって、エロい服とか水着とか着てるじゃないか。」
「それは仕事だから仕方ないでしょ?」
「あれは男の性で稼いでるんじゃないか。」
「言ったわねーっ。勇二のこの~。」
「痛い痛い痛い。乳首はなし乳首はなしーっ。あーーーっ。」
学校一の美女にして、男女ともに憧れられている高校一年生桐谷響子は、高校生ミスコンの出場予定らしい。
学校内で知らぬ者はほとんどいない。
「私の憧れにして、打倒すべき人間は信濃夏帆よ。」
彼女はそう謳っている。
「将来私は芸能界に行くわ。」
彼女は自信を持って言う。
彼女の親衛隊もいる程だ。
「私は美人にしか興味ないの。」
だから友達は少ない。
「響子。」
桐谷の数少ない友達、山野和美が声をかける。
「今日も雑誌読んでるの?」
「えぇ、毎日自分を磨かないとね。」
桐谷は黙々と女性雑誌を読んでいた。
「信濃夏帆は写真を見る限り多分高校生なのよねぇ。」
「どうなんだろ。年非公開なんでしょ?」
「そうだけど、そんな気がするのよね。」
昼休み。ご飯を食べ終わった桐谷は珍しく校舎を一人でうろうろ歩いた。
「はぁ、信濃夏帆・・・。どこに居るのかしら。」
その時、加奈と勇二とすれ違った。
(あら、地味な・・・。)
「えっ。」
桐谷は振り返った。
「あなた!」
二人は振り返った。
「?」
「貴女よ。貴女。」
「私?」
「貴女。地味な格好しているけど、素顔は美人ね!しかもとびきりの!」
二人はドキッとした。
「まさか。何を根拠に?」
勇二は言ったが、
「貴方には聞いてないわ!」
桐谷は勇二を叱責した。
「私は美人にしか興味ないの。私と友達にならない?」
「結構です。私は学校を静かに暮らしたいので。行こ。勇二君。」
二人は逃げるようにスタスタと行った。
「諦めないわ。」
桐谷は燃えた。
桐谷はあれこれと調べ、加奈のクラスを突き止めた。
「見つけたわ。星野加奈。貴女を私の友達にするわ。」
加奈のクラスはざわついた。
「えっ?あれって、桐谷さんよね。」
「美人にしか興味ないあの桐谷さん?」
「星野さんって、隠れ美人?」
(やばい。)
と思った勇二は加奈を廊下に連れ出した。
「どうしたの。勇二君。」
「このままだといつか君が美人ってばれちゃうよ。」
「・・・。」
「友達になる代わりに、そのことは隠してって言うべきだ。」
「・・・そうね。分かったわ。そうするわ。」
加奈は桐谷に近づいて、
「私の友達になる気になった?」
「ちょっと来て。」
「何よ?」
加奈は桐谷を廊下に引き連れて二人で歩いた。
「友達になっても良いわ。」
「それじゃあ。」
「ただし、条件があるわ。」
「何かしら?」
「私は学校生活を静かに暮らしたいの。だから、目立ったことはしたくない。だから、貴女との関係は秘密ね。」
「私は秘密をしない主義なの。」
「~~~。」
「どうすればいい?」
「分かった。私は静かに暮らせればいいから、Lineは良いけど、学校ではからまないで。貴女は目立つから。」
「じゃあ、目立たない所なら良いわけ?」
「貴女いつも誰かしら引き連れてるじゃない。」
「・・・。」
「いい、友達になりたいなら、友達の要望も聞くべきよ。」
桐谷はため息をついて、
「分かったわ。学校では絡まないわ。」
桐谷は自分のクラスに戻った。
「おーい、加奈ーっ。」
「勇二君。」
「上手いこといったかい?」
「まぁね。」
「それは良かった。」
「勇二君。」
「何?」
「あの子なかなか鋭い観察眼を持っているわ。」
「確かに。」
「気をつけないと。」
翌日。朝。
朝から桐谷から沢山のLineが着ていた。
「・・・ブロックしたい。」
桐谷は問いを持っていた。
(星野加奈。綺麗にすると、何処まで化けるかしら?)
ふふふ、と一人で笑っていた。
とりあえず、約束通り学校に居る間は加奈は平穏に過ごせた。
しかし時々、
「星野さん。綺麗にしたら。」
とか、
「桐谷さんの見立てはそう外れてないんじゃない?」
と周りは言った。
(周りは良いわね。他人事で。)
加奈は周りに少なからず嫌気を感じた。
放課後。二人が帰っている途中で、
「待ちなさい。」
後ろから声が聞こえた。振り返ると桐谷が走ってきた。
「私が貴女を綺麗にしてあげるわ。」
加奈はムッとして、
「余計なお節介よ。間に合ってるわ。」
「なぜ綺麗にしないの?女子なんだから綺麗にあるべきだわ。」
「綺麗にしたら、静かに過ごせないじゃない。」
「綺麗にしたって、静かに過ごせるわ。」
「過ごせないから、嫌なの。」
「どうして?」
「それは・・・。」
「ちょっといいかな?」
「何よ、貴方。」
「一応加奈の彼氏です。」
「あぁ。で?」
「加奈は学校で綺麗にして、いい思い出がないんだ。だから無理にしなくていいじゃないか。」
「黙りなさい。この平均点顔。」
「平均・・・。」
「いい、私は美しいものに惹かれるの。貴方みたいな人ともあまり話したくないの。」
二人は無言で聞いていた。
「いい。綺麗な人には綺麗な人が釣り合っているの。綺麗な水に泥を混ぜちゃ駄目。」
桐谷は立て板に水状態だった。
「まだ星野加奈がこの状態だから周りからは一見釣り合っているように見えるけど、私の目から見れば貴方達は釣り合ってないわ。」
二人は黙ったままだった。
「貴方だって綺麗な彼女がいいでしょ?まっ、彼女が綺麗になったらもっと綺麗な男性が・・・。」
その時、パチンと空気中に響いた。桐谷は加奈に頬を叩かれたのだ。
「私のことならまだしも、私の好きな人を非難がましく言うのは許せない。」
「加奈。落ち着けって。」
「行こ。勇二君。」
「・・・何よ、二人して。ぐずっ。ぐずっっ。うわ~ん。」
桐谷は路上で赤子のように大きな声で泣いた。
加奈はため息をついて、
「ほら、みっともない。こっちに来なさい。」
ぐずぐず言いながら、桐谷は加奈の後を付いていった。
三人は喫茶店に行った。
「全く、ぼろっちぃ店ね。」
桐谷は泣きべそをかきながら言った。
「貴女、人の内面のことあまり考えないんじゃいの?」
加奈は桐谷に言った。
「そ、そんなことはないわ。けど、外を重点的ね。」
「人間は内面もあるんだから、そっちも見ないと駄目よ。いくら美形の男子だからって、性格が最悪なら、駄目よ。」
「うっ・・・。」
「それは、外面も大切だけど、内面も大切だわ。」
「・・・。」
「もういいかしら、もう貴女とは居たくないわ。」
「ちょっと待って。私との友達関係は?」
「ないわ。」
「そんな・・・。」
桐谷は愕然とした。
「それだけは、それだけは止めて。お願い。」
「私が貴女みたいな性格の人が嫌なの。」
「友達を止めるのだけは~。私、貴女との約束通りにしてるのにー。」
また桐谷は加奈に泣きついた。加奈はため息をつき、
「どうして貴女美に固執するの?」
「そりゃあ、女子に生まれたら、綺麗に有りたいって思うのは当たり前じゃない。」
「・・・。」
その気持ちは加奈にもよく分かった。
「貴女こそ変よ。綺麗な顔立ちしてるのに、わざわざ地味にいるなんて。綺麗な顔が勿体ないわ。」
桐谷は泣きべそかきながら言った。
「・・・。」
加奈は何も言わなかった。
「私は貴女の綺麗な姿を見たい。」
「分かったわ。けど一回見たら、もうその話は言わないで。」
「友達の縁切らない?」
「分かった。友達の縁は切らない。」
桐谷はこくんと頷き、加奈のマンションに連れて行った。
「このマンションって・・・。」
桐谷は呆然とした。そして、彼女の部屋に行き、眼鏡を外して、髪を整えた。桐谷は絶句した。
「貴女、信濃夏帆・・・。」
「そう。信濃夏帆の芸名で売っているわ。」
桐谷は立ち尽くした。
「ふふふ。あはは。」
桐谷は突然笑い出した。
「遂に宿敵の信濃夏帆を見つけたわ。」
無言になり、
「分かったわ。星野加奈とは絡まない。」
加奈はほっとした。ただし、と付け加えた。
「信濃夏帆とは絡むわ!それなら良いわね?」
「う、うん。まあ。」
「やっと、信濃夏帆と友達になったわ。“女は優雅たれ”よ!」
二人は、はぁと言って、桐谷は喜びながらそのまま帰った。
「嵐が去ったみたいだ。」
「今日は勇二君も巻き込んで、ごめんなさい。」
「いいよ。別に。気にしてないよ。」
「やっぱり綺麗な私がいい?」
「う~ん。君が明るくいる時の姿が一番かな?」
「勇君・・・。」
「加奈・・・。」
その時、桐谷からLineが来た。
{信濃夏帆の時は容赦しないんだから)
二人はため息をつきながら、笑った。
加奈の数少ない友達、皆沢晴美と加奈が二人で話していた。
皆沢は地味めだけど、明るく優しい女子である。
「ねぇ、加奈聞いてよ。うちの弟がね~、私にちょっかいだしてくるの~。」
「中二だっけ?」
「もう中学きて、思春期来てるのに、まだ姉ちゃん、姉ちゃん五月蠅いの。」
「あら、可愛いじゃない。」
「そうなんだけど、甘えん坊なの。」
満更でもなさそうに皆沢は言った。
「席に着けー。」
担任が来た。
「早速だが、転校生を紹介する。ほら入って来なさい。」
入って来た女子は綺麗な子だった。
「おー。」
「可愛い。」
と声が上がる一方で勇二はギョッとした。
「ま・・・円佳!」
「よっ!」
円佳こと、江森円佳が勇二に言った。周りはざわざわした。
「江森円佳です。宜しくお願いします。」
江森は席に着いた。
休み時間。
「小林君とはどういう関係なの?」
「親同士が同級生でさ、その関係で知ってるの。」
「どこから来たの?」
「徳島県。」
「遠いね。」
「四国だね。」
等と話しが盛り上がった。
「勇ちゃん。ちょっと来て。」
「どうした?」
(勇ちゃん?!)
「ここの校舎案内して。」
「ああ、いいよ。」
(いいの??)
江森と勇二が話終えた後勇二が席に戻ると睨みつける加奈の顔があった。
勇二はギクッとした。
(えっ、なんか悪いことしたかな。)
昼休み。勇二は江森を連れて校舎を案内した。
「これで終わり。」
「はい、有難う。」
「じゃあ、急いでクラスに戻ろう。昼ご飯食べないと。」
「ok。」
二人はクラスに戻った。
「どう一緒に昼ご飯食べる?」
「いや、時間ないから一人で食う。」
「えぇ、女子を一人で食わす気?」
「分かった、分かった。椅子貸すからそこで食え。」
「ちぇー、ケチ~。」
そして、二人は急いで食べた。一人地味な女子が本を読まず、じーっとその席の方を見ながら。

秘密の恋人

執筆の狙い

作者 峪明博
49.104.51.153

MF文庫に応募と、小説家になろうでptを稼ぐため。
まだ考え中
入選
小説家になろうと二重投稿

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