作家でごはん!鍛練場
加茂ミイル

半分コーヒー

 誰の心にも、憧れの想いは宿る。
 村田克己が中学時代、クラスメートの堀江ゆうじの背中にたえず投げかけていた恍惚とした視線も、息詰まるほど切ない憧れの一形態だった。
 堀江は飛び抜けた秀才だった。それゆえ、彼に憧れを抱いているのは何も村田一人ではなかったかもしれない。それでも、村田は自分ほど情熱的に堀江に憧れている人間が他にいるはずがないという独りよがりな確信を抱き、自分にとって堀江が特別な存在であるように、自分もまた堀江にとって特別な存在なのだという錯覚に陥っていた。
 村田と堀江はクラスメートではあったが、常に一緒に行動するほど親しい間柄でもなく、休み時間たまたまそばにいた場合などに短い会話を交わす程度の関係だった。
 この学校では、定期テストの度に、成績上位50名の生徒の名前を紙に書いて廊下の壁に貼ることになっている。入学してからの3年間、堀江が一番の座を奪われることは一度としてなかった。
 廊下の窓からセピア色の光が差し込む放課後、村田は壁に寄りかかりながら、いつまでも成績上位者の一番右側にある堀江の名前をまるで自分のことのように誇らしく見上げるのだった。まるで堀江の栄光は自分の栄光でもあるとでも言うかのように。もちろん、勉強嫌いの村田の名前がそこに載ることは一度もなかった。
 中学の3年間、振り返ってみると、村田は自分が心の中でずっと堀江の背中ばかり追いかけながら過ごして来たことを、奇妙なことのように思いながらも、それ以上に素晴らしい青春はないようにも思えていた。
 それは、まるで内気な乙女の片思いのようであったが、だが恋ほどには心は乱れなかった。恋などという浮ついたものよりも、もっと信念に近いものがあった。それは、恋というにはあまりに精神的だった。同性に対する性的な欲求はそこにはなかった。純粋に優れた者に対する尊敬の思いが結晶したものだった。
 堀江は県内屈指の進学校に進み、村田は県内屈指の低偏差値高校に進んだ。これと言って特に感慨深いものもない卒業式の日を境に、二人には何の接点もなくなった。
 村田は堀江と毎日顔を合わさなくなる生活が始まることに対して、寂しさも覚えたが、何か心から重荷が一つ取り去られたような安堵も覚えていた。それは憧れの感情に常に付きまとうジェラシーからの解放を意味しているということを、彼は自分でも気づいていた。
 高校での生活は平凡だったが、平凡以上の何も望んでいない村田にとって、それは何の障害にもならなかった。堀江という大きすぎて自分を圧迫していた存在が自分の生活から消えたことで、本来の自分を取り戻したような気分がした。それは、もうがむしゃらに追いかける目標がなくなったことで、息を切らす必要も転ぶ危険もなくなったということだった。
 県内でも稀にみるほどの低偏差値校では堀江のように優秀な人間は一人もいなかった。村田にとって、それは本当の意味で幸せなことだった。高く聳える峰を見上げて首が痛くならずに済んだ。自分と同じ目線の人間たちと、その日その日を楽しく過ごした。
 ただ、時々地元の友人との会話の中で、中学時代のクラスメートのことが話題に上ると、堀江の活躍ぶりが嫌でも耳に入って来る。
「あいつ山形県内で常にトップの成績らしい」
「手を抜いても東大に入れるレベル」
 そんな噂を聞くたび、堀江への強い憧憬の光が再び村田の胸に差し込んでは、心をかき乱すのだった。
 村田は部屋の押し入れから、中学時代のアルバムを取り出した。
 クラスの集合写真のページを開く。そこには背筋をぴんと伸ばしたりりしい表情の堀江が写っている。その背筋がまた、無理に気負って伸ばしているという感じではなく、あまりにも自然で、優雅なまでに様になっていて、村田には怖いほど美しく見えた。村田はその顔の輪郭をそっと人差し指でなぞった。
「俺は、お前になりたかったよ」
 そう小さく呟いた後、今度は堀江の斜め下に座っている自分を見た。堀江は、重い溜息をつかずにいられなかった。
 そこに映っている貧相なまでに華奢な体形の少年は、猫背で、いかにも覇気がなく、ひとかけらの個性も特徴も感じられなかった。その隣に座っている笑顔が健康的な男子生徒は真っ黒に日焼けしていて、体も丈夫で、しまりのある表情をしていて、もしかしたら野球でもやってるのかな、という想像を見る者の心に掻き立てる。実際、彼は野球部員だった。そんな事実は他人にとってどうでもいいことであるにしても、少なくとも彼には見る者の心に何がしかのイメージを抱かせるくらいのはっきりとした特徴があるということだ。
 しかし、自分の外見からは、何も連想するところがない。この世界に何の影響も及ぼさず、かすかな足跡すら残さない、一瞬ですぐに忘れ去られる人間の顔。この顔が自分のこれからの残酷なまでに平凡すぎる未来を暗示しているように見えた。
 彼は暗澹たる孤独に苛まれた。胸が暗く押しつぶされるような思いがした。誰からも関心を持ってもらえない事への恐怖。
 彼は机の引き出しからカッターを取り出し、その刃で集合写真の自分の顔の部分を切り刻んだ。やってしまった後で、後悔した。誰かにこのアルバムを見られたらどうしようと焦った。迷ったあげく、彼は物置小屋からシャベルを持ち出し、アルバムを庭の土中深くに埋めた。
 
 10年後。
 村田は東京に出て、健康食品を販売する会社で契約社員として働いていた。時給は1000円だった。彼は同じ職場で知り合った2歳年下のアルバイトの女性と結婚した。 
 お互い、経済的にまだ不安定な中での結婚だったが、彼は自分の人生において誇れるものを手に入れかった。それは恋愛であり、結婚であり、家庭であった。
 それを手に入れた村田は人生の絶頂にあった。自分がリア充になれたことを、かつての知人に見せびらかしたかった。記憶にある限りの知人友人に結婚式の招待状を送った。東京の披露宴会場に高校時代の友人たちが駆けつけた。
 多くの関係者が見守る中、披露宴の壇上に立っている時、明らかに自分がこの空間の中の主役であること確信できた。少なくともこの瞬間においては、自分がこの世界で最高に幸せな男なのだと思えた。まだ結婚していない友人に同情し、憐れんだ。「お前も早くいい人見つけろよ」なんてセリフをかけた時には、有り余るほどの余裕に満たされている自分が怖いくらいだった。
 しかし彼は二次会でやらかしてしまった。浴びるほど酒を飲んだ彼は、突然大声を出して暴れ、何か新婦を怖がらせるような荒っぽい振舞いに出たらしい。その時の記憶が彼にはなかった。高校時代の友人が何とか彼を抑えて静まらせたが、彼の言動はまるでこの結婚を心の底では喜んでいないかのようなものだったらしい。彼自身、どんなことを言ったのかと聞く勇気もなかったし、友人たちも口にしたくなかったようだった。妻の表情は、あの時のことは許しますと囁いているようだった。これからしっかりしてくれれば、と。しかし、彼は、覚えていないようで、実は全て分かっていたような気が自分でもしていた。だが、それは決して直視していはいけない自分の根幹に潜む闇だった。
 彼はその時の失態を今後の夫婦生活の中で取り戻そうと思った。一生懸命働き、そして、妻を幸せにしよう。誰もがうらやむほどの完璧な家庭を気づこう。そう心に誓った。
 ところが、彼が当初全く予期しなかったほどに、新婚生活の新鮮さはあっという間に色あせて行き、一年もしないうちに二人の間には倦怠感がみなぎり始めていた。
 村田は生活のすべてに疲れていた。相手に何か不満があったわけではない。結婚生活に疲れているというわけではなく、それ以前の、ただ生きるための生活それ自体に疲れを感じていた。その疲れは、独身時代には感じられなかったものだった。それは体力的なものよりも精神的なものから来るもののように思えた。しかし、会社でパワハラを受けたわけでもなく、哲学的な難問に取り掛かっているわけでもなく、精神的な疲れの原因が思い当たらない。そして何より問題なのが、彼が妻の肉体にあまり興奮しなくなっていたということである。二人はまるで、互いに何か気まずい思いを抱えたルームメイトだった。夜を共にしないなら、夫婦である意味がないのである。妻はそのことを悲しみ、苛立った。それでも彼は、仕事で疲れていることを言い訳にしてセックスから遠ざかっていた。
 妻は子供を欲しがっていた。しかし、村田は子供が欲しくなかった。彼が子供を作りたがらない理由として、表向きには経済的な基盤がまだ盤石でないこともあるが、村田にはそもそも本能的に子供を可愛いと感じる人間的に自然な感情が欠けていたという問題があった。それは人として、社会人として、たぶん間違ったことなのだろうと彼自身悩むところもあった。
 これらのことを他人には相談出来なかった。
 さんざん悩んだあげく、彼は心療内科を受診した。医師の見解によると、彼のインポテンツは主に精神的な部分に原因があるということだった。
 村田はそのクリニックで月に一回、カウンセリングを受けることにした。
 半年間に渡る診療とカウンセリングの結果、白日の下にさらされたのは、彼の心の奥底に潜むコンプレクスという闇だった。
「なたの感情は、かなり歪んだ劣等コンプレクスに抑圧されているようです。あなたは現在の自分に自信を全く持てていないようですね。インポテンツの原因もそこにあります。その一方で、あなたは理想の男性像を自分に重ねようと努力している。あなたの心身はそこに無理を感じていて、あなたの顕在意識に何らかのサインを送っているのです」
 そう医師から告げられた時、これまで隠し続けて来た自分の恥部を白日の下にさらされた気分だった。
 そして、彼はこうも思った。自分は本当は最初からそのことを分かっていたんだ、と。
 カウンセラーは劣等コンプレクスについて、村田に説明をした。
「10代の頃の経験が、あなたのコンプレクスの主要な部分を形成したと思われます。あなたが現在抱えている社会への怒りと憎悪、それらも含めて」
 その話を聞いた時、村田は、高校生の時、自分の部屋で中学時代のアルバムを切り刻み、庭に埋めた場面を回想した。あの時自分を突き動かしていたのは、堀江への怒りや嫉妬ではなく、自分に対する悲憤だったと思う。だが、今になって思えば、本当にあの時、堀江に対して怒りや嫉妬を抱いていなかったと言えるだろうか?
 劣等コンプレクス。その言葉を自分の現在の状況にに照らし合わせて考えた時、どうしても堀江のことを思い出してしまう。それは、彼は心のどこかで、堀江への憧れの中に激しい劣等感が憎悪に近い形で潜んでいることに気づいていたからだ。
 彼は、高校でのまったりした日々の中で、堀江のことはもうすっかり忘れたものとばかり思い込んでいた。だが、実際は違った。
 彼は中学を卒業してから20代後半になった今に至るまで、ずっと堀江のことを忘れたことがなかったのだ。中学卒業とともに、堀江への憧れが明るい華やかなものから、穏やかでひそやかな形に姿を変えていただけだった。
 何かある度に、堀江だったら上手くやれるだろうなとか、堀江は今頃エリート街道を進んでいるんだろうか、などと堀江のことを思い出す。しかし、それはぱっと頭に思い浮かぶだけで、記憶としてとどめることはない。
 彼は、自分でも何をそんなに引きずっているのか分からなかったが、もしかしたら、自分の堀江への関心は病的なものなのかもしれないと今になって少し真剣に考え始めるようになった。
 自分と堀江の本質的な違いは一体何なのだろうと彼は考える。
 彼は、中学の卒業文集に堀江が書いた好きな言葉を今でも覚えている。それは何ということもない、ありきたりな言葉だった。それは、「努力」だった。しかし、それが、村田の心には深く突き刺さっていた。
 だが、よくよく考えてみれば、他のクラスメートで好きな言葉に「努力」なんて書いた奴が他にいただろうか。いたかもしれない。だが、堀江のような人間が書く努力という言葉には重みがある。自分だったら書けない。自分には努力が縁遠いものだと知っているから。だが、堀江にとっては日常的な言葉だったのだろう。努力なんて、そんな汗臭い時代遅れな言葉をさらっと書けてしまう堀江はやはり、生まれた時から自分のような人間とは何かが根本的に違うのだ。
 
「努力か……」
 彼は日々の疲れと反省と自分への慰めの思いから、そんな溜息をつくことが多くなった。
 もちろん、自分だって日々の仕事で努力はしている。毎日、毎日、業務に追われて疲れている。賃金はバイトよりは数十円ほど高いが、一年ごとに更新があるから正社員に比べると不安定だ。来年もまた雇ってもらえるかは分からない。会社の売り上げも年々減少している。正社員だからと言って安泰でもなさそうだ。やる気のない社員は突然解雇されたりもする。そんな中で自分は契約社員として自分なりに努力している。
 だが、その努力と、堀江の努力は本質的に違う努力のような気もした。堀江の努力は輝かしい栄光につながるものだが、自分の努力は塵芥にまみれて未来がしぼんでいく。
 俺の人生って何なんだろうな、と切なくむなしく思う。
 自分の人生にはっきりとした意味を与えるために築き上げた結婚生活も、一年を経過し、恋愛していた頃のあの胸の高揚感は日常の殺伐とした時間の淀みに飲み込まれて行った。
 妻を愛していないわけではない。今も妻を心から愛しているし、自分の命以上に守りたいと思っている。
 だが、その使命感にさえ影を差す何かが、自分の心の奥底から沸き起こって来る。医師は自分を鬱ぎみになっていると診断した。それで、処方された薬を飲むようにしている。
 やはり子供を作るべきか、と自問する。子供を作ればまた夫婦の間に新たな共通の目標が生まれるだろう。だが、今の自分の精神状態で、誰かの父親になるべきではないとも思う。どんな精神状態だろうと、快楽に流され、先のことをよく考えずに子供を作れる人間も世の中にはいる。そういう行動力のある人がいなければ、国の人口はなかなか維持出来ないだろう。村田は、父親としての心の準備が完全に出来ていない状態で子供を作ることが怖かった。快楽に流されるままに新たな生命を作るほどの奔放さが彼にはなかった。
 自分のそんな弱さを知っているからこそ、村田はもっと強くならなければ、と自分に言い聞かせる。時々、根拠のない勇気や自信がどこからともなく湧き起こる瞬間もある。
 村田はの心は人生の様々な要因によって圧迫されていたが、彼の生存本能はそれに打ち勝とうとしていた。コンクリートに覆われた若い芽のように。だが、いつかそのコンクリートがひび割れて、花を咲かそうとしている、そんなたくましさが彼の未来を切り開く。
 俺だってやれる。何かやれる。他人とは違うことを。
 半ば狂気に似た、いてもたってもいられない焦燥と興奮に急き立てられる思い。
 そんな悶々とした精神的格闘の日々の中で、彼が仕事の合間に立ち寄ったカフェで、彼は人生で初めての体験をする。
 どこの街にも一つや二つはありそうな、昭和の雰囲気を今に残すレトロな喫茶店だった。  
 何気なく出されたコーヒーを彼は、何気なく口に流し込んだ。
 その瞬間、彼を襲った突然の驚き。それは、次の瞬間、感動と幸福感に変わった。そして、口いっぱいに広がって消え去ることのない安堵感。
 彼は、自分の身に生じた出来事に思わずまばたきをし、それからもう一度しっかりと目を見開いて、店内を眺めた。客たちの談笑。スピーカーから流れる上品なクラシック音楽。
 一瞬で、世界が変わった。
 これだ。これを俺はずっと探し続けていたんだ。
 彼は叫びだしたくなった。ずっと、長い間、求め続けていた扉が、目の前に提示された。
 明るい。この世界は何て明るく、そして、温かく、優しいのだろうか。
 その感動とともに、胸にしたたり落ちる静謐なアロマ。
 店員のはつらつとした仕事ぶり。言葉遣いや身振りなどのマナーも行き届いている。
 コーヒーを淹れる店長の、この仕事にこの上ないやりがいを感じているといったような誇らしい微笑。
 そして、何よりも、この極上のコーヒーの味。この味を出すために、一体どれほどの店長や店員たちの熱意と努力があったのだろう。努力。自分も努力してみたい。堀江に追いつきたい。いや、追い越したい。そして、その努力の成果として、人々にささやかな安らぎを与えられたら。そうやって、俺の中に息づいている愛が、世の中の人々とつながる。そこにこそ、自分がこれまで求め続けて来た本当の生きがいがあるはずなのだ。そこにこそ、この世にたった一人である俺の、人生の意味が。この俺の、生まれてきた理由が。
 俺は、そうだ、ただ、ここにたどり着きたかったんだ。そのためにこれまでずっと苦しみ続けてきたんだ。いま、ようやく、見つけた。
 彼はこれまで聞いたどんな名曲りも甘美な調べが胸の中で鳴り響いているのを感じていた。そして、彼は混沌の渦の中で気が狂いそうにもなっていた。それはこれまでのような不安や苛立ちのためではなく、彼の心の底にずっと眠り続けていた喜びと愛が覚醒したためだった。
 彼は店を出る時、滝のような涙を流しながら、店員と店長に「ありがとう」と感謝の言葉を述べた。彼があまりにも興奮しすぎていたので、店員も店長も、ちょっと頭のおかしな客なのだろうと思い、哀れみむようなまなざしを彼に向けながら「またお越しください」と丁重に見送った。

 村田にとって唯一の救いだったのは、妻の実家が裕福だったことである。
 彼は恥を忍んで、カフェの開店資金を妻の実家から援助してもらうことになった。村田一人がいくら頼んでも、妻の両親は金を出さなかったかもしれない。だが、彼らが手塩にかけて育てた一人娘が、命がけと言っていいくらいの必死さで両親を説得したおかげで、300万の資金を提供してもらえることになった。彼女はカフェ経営への情熱で生まれ変わったように明るくなった夫を支えたかったのである。
 彼女は、もしこの話が立ち消えになったら、夫はますます心を病んでしまうのではないかと恐れた。夫婦が一心同体となってこのカフェの経営に打ち込むことで、二人の絆が揺るぎないものになることを期待したのだ。 
 開店を1週間前に控えて、村田はどうしてもある人物に会っておきたかった。
 その人物とは、堀江であった。
 村田は新幹線で山形に向かった。
 彼は車中でビジネス誌を開いた。そこに記載されている記事の中で堀江がインタビューに答えていた。
 堀江は東大を卒業し、大企業に就職して2年で独立し、地元の山形でベンチャー企業を立ち上げた。
 AI技術で野菜と果物の品質を管理し、安価な値段で高級な商品を世界中に輸出し大成功していた。
 特に中国での売れ行きはすさまじく、供給が追い付かないまでに注文が殺到した。
 会社は急スピードで成長し、年商1000億を超えようとしていた。
 彼は若干20代で山形の長者番付にその名を馳せることとなった。
 その堀江の活躍ぶりを読みながら、村田は無意識に歯ぎしりをしている自分に気づかなかった。

 山形駅前にあるカフェで村田は堀江に再会した。
 堀江の方も、村田のことを覚えていてくれた。村田はそれだけでも嬉しかった。
「お前のこと、忘れられないよ」
 と堀江が言ってくれた時、村田はあまりの感激に彼を抱きしめそうになった。
 だが、その忘れられないエピソードというものを聞いた時、村田は危うく堀江に殺意を抱きそうになった。
 堀江によると、中学っ港の体育の時に、村田がわざと跳び箱に失敗して、大げさにずっこけたことがあったという。そのあまりにわざとらしい仕草からして、誰から見ても村田が受け狙いでやったのは分かっていたが、男子の一人が、「あいつわざとだろ」と言った時の、村田の驚愕した表情が面白すぎて忘れられないというのである。
 その時のことを思い出しながら、堀江は、
「だって、人間失格そのまんまじゃんか。衝撃的だったなあ」
 とさもおかしそうに体を前後に揺らして笑った。
 感動の再会が台無しである。
 人間失格。その言葉を自分の向けて使う堀江のその神経を村田は疑った。人間、栄華を極めると、人を平気でこんな風に侮辱するものだろうか。堀江のその無邪気な態度には、自分を傷つけようとすることさらな悪意は感じられなかった。だが、悪意もなく、中学時代のクラスメートの恥ずかしい過去をさらりと口にして笑いものに出来るその堀井の天然の傲慢さが、村田にはかえっておぞましいものに感じられてならなかった。
 だが、ここは耐えなければ、と村田は思った。自分は明確な目的を持ってここに来たのだから。1週間後に事業を開始するこの緊迫した時期に、カッとなって事を荒立てるわけにはいかなかった。今はこっちが大人になって、あくまでも下手に出て、冷静さを保とう。
 ただ、かつての憧れの的であった秀才堀江の人間的な欠陥を垣間見たような思いがして少し残念ではあったが。
「実はさ、俺、今度カフェを開店することになったんだ」
 と村田は話を切り出した。
「お前が? やるなあ」
 と堀江は素直に感心した。さっきまでは下等動物を見るようだった目つきが、少し改善されたようだった。
「それで、今、俺は不安でいっぱいなんだ。結構、思いつきで始めたところもあるし、その、ノウハウっていうの? そういうのが全然なくて、直感でいろいろ決めてるところもあって、インテリアとか、メニューとか。でも、他の人たちと同じことやって、生き残っていけるのかなって。何か、他の人と違うことやらなきゃ客からも飽きられるだろうし、流行も取り入れていかなきゃって思うんだ」
「うん。それは、いい心掛けだよ」
「それで、お前の活躍を日頃から聞いていたしさ、実業家として成功しているお前から何かアドバイスをもらいたいなって思って、山形まで来たんだ」
「そうだったのか。わざわざこんな田舎まで足を運んでくれて嬉しいよ。俺からアドバイスすることと言っても、畑違いだし適確なアドバイスは出来るかどうか自信はないんだけど」
「何でもいいんだ。お前から直々のアドバイスを受けられるっていうだけで俺には励みになるんだ」
「そうか。そうだな。まあ、ありきたりなことを言ってもしょうがないから、俺自身の経験から言わせてもらおうか」
「頼む」
「俺の場合、何に関することでも、物事を半分ずつで考えるようにしている」
「半分?」
「ああ。つまり、ハイブリットていうかな。そうそう、昨年我が社で開発した半分ティーっていう商品がヨーロッパで爆発的に売れてね」
「半分ティー。知ってる。あれ、お前の会社が開発したのか?」
 半分ティーと言えば、今東京の女性の間で大流行していて社会現象になっているほどなのである。
 半分ティーは、抹茶とそれ以外のトッピングを半分の割合で混合した飲料なのだが、独自の技術で、それぞれの素材の味が最高に際立つような効果を生み出している。それまでの飲料では別々の素材を混ぜると、中間の味になってしまい、もともとの味があいまいになってしまうのが普通だった。しかし、半分ティーは混合して中間の味が生まれると同時に、それぞれの味が混ぜ合わされる前よりもさらにいっそうその本来の特徴ばかりか、隠されていたうまみの可能性までをも引き出すという不思議な効果を生み出しているのである。それは脳に良い刺激を与え、一か月以上日常的に飲み続けた子供はIQが5ほど上昇したとの研究結果すら公表されている。鬱患者に飲ませると、かなりの割合で、症状が快方に向かった。半分ティーは副作用のない精神安定剤としても活用され始めている。業界や評論家たちは、半分ティーを全く新しいスタイルの飲み物と絶賛している。
 すげえ、堀江はやっぱり、すげえよ……と、村田は心の中で賞賛しながらも圧倒的な敗北感に打ちのめされた。何をやってもこいつには勝てねえ。だが、そんなことは最初から分かりきっていることだ。今はそんなことにこだわっていても仕方ない。彼の足元にも及ばないのは当然のことだし、はなから競うつもりもない。ここはただひたすら彼に教えを請うて、自分のこれからの事業に役立てることだけを考えるのだ。
「全てには陰と陽の側面がある」
 と堀江は言った。そして続けた。
「半分ティーは、その二つの相対する性質を自然界の法則に従って、最大限に人間の生活に資する形で活用した成果なんだ」
 それから堀江は哲学的な、こみいった話を長々と続けた。テクノロジーと精神の融合とか、第六感とサイバネティクスの有機的結合何とか。
 村田は心して聞いていたつもりが、だんだん内容が分からなくなって来た。彼は堀江の話をさえぎって、
「つまり、食材を半分づつ混ぜればいいってこと?」 
 と訪ねると、堀江は嘲笑を露わにした。
「そうじゃないんだなあ」
 と堀江は頭をぽりぽりと掻いた。村田は自分が堀江のレベルについていけていないことを恥じた。
 それからも堀江は話を続けたが、だんだん専門的な用語が出てきたり、意味の分からない英語をネイティブの発音でさらっと織り交ぜたりなどして、村田は全くついて行けなくなった。
 ひょっとしたら、堀江はわざと自分の教養レベルでは分からない話し方をして、自分をうまく遠ざけようとしているのではないかとも、村田には思えた。
 そうしているうちに、時間がただ無意味に過ぎて行ってしまった。堀江は腕時計を見て、そろそろ仕事の時間だと言って、千円札をテーブルの上に置いて、急ぎ足で立ち去ってしまった。
 一人残された村田はみじめな思いで放心していた。
 やっぱり、堀江はどうせ自分が彼の話について行けないと軽く見て、こちらが理解しようがしまいが自分の話したい内容を独り言のようにまくしたてていただけだったのかもしれない。
 そう考えると、自分がひどく馬鹿にされた気がして、じわじわと腹の底から怒りが湧いて来た。
 彼はコーヒーの最後の一口を飲み干しながら、ほとんどその味が分からなくなるくらい、堀江に苛立っていた。
 彼は空になったコーヒーカップを荒っぽくソーサの上に置いて、
「全然おいしくないぞ、このコーヒー」
 とそばを通りかかった店員に八つ当たりした。若いその女性店員は頭のおかしい客への対応には慣れているらしい。聞こえないふりをして通り過ぎて行った。
 村田はその日のうちに新幹線に乗って、東京に戻った。

 そして、一週間が過ぎた。
 堀江のアドバイスを何らかの形で取り入れようとした結果、「半分コーヒー」という店名がつけられた村田のカフェはついにオープンした。住宅街の一角にある5階建ビルの1階のこじんまりとしたテナントに、最大で20名ほど入れるくらいの数のテーブルとカウンターが設置されていた。壁には印象派の油絵が飾られていた。当面の間は、村田夫妻と、アルバイト店員一名で切り盛りしていくこととなった。
 最初のうちは、それなりに客が入った。
「半分コーヒー?」
「何が半分なんだろう」
 そんな疑問を口にしながら入って来る客が多かった。
 半分コーヒーという店名が人の興味を引いたのは成功だった。
 提供されるコーヒーも、全て半分コーヒーシリーズで、コーヒーと他の原料が半分ずつ混ぜ合わされたものだった。
 とは言ってもミルクを混ぜてもそれは従来のカフェオレと同じでオリジナリティがないので、彼はいろいろな商品を考えた。
 ニンジンコーヒー、キムチコーヒー、味噌コーヒーなどなど。
 しかし、これらが大失敗であることが明らかになるまでにそれほど長い時間は要しなかった。村田自身、これらのメニューの発想があまりにも奇抜すぎると認識していたにも関わらず、話題づくりのために、冒険してしまったのだ。
 客の反応はシビアだった。まずい。きもい。吐き出した。とんでもない飲み物を飲ませられて怒り心頭に発した客たちの悪意のこもったコメントがSNSを通して巷に広がって行った。
 興味半分で来店した客たちがリピーターになることは決してなく、店の経営も傾いて行った。
「堀江のアドバイスの通りに実行したおかげで、大繁盛してる。もしこっちに来る用事があったら、是非うちの店に立ち寄ってほしい」
 村田は暇に飽かせて、そんな嘘のメールを時々堀江に送っていた。虚構の自分を作り上げることで、現実逃避していたのだった。
 
 玄関の呼び鈴がカランコロンと鳴った。来客があるのは実に3週間ぶりだった。開店休業状態だったので、営業時間を短くし、アルバイト店員には暇を取らせていた。
 一人、絶望のカウンターの淵で半分眠りかけていた村田ははっと目を覚ました。
「いらっしゃいませ」
 と慌てて立ち上がると、目の前に現れたのは高級スーツに身を包んだ堀江だった。
「堀江! 来てくれたのか」
「東京でレストランを開店する計画があってね。意外とお前の店が近くだってことに気づいて、立ち寄ったんだ」
 それから、堀江は店内を見回して、
「今、ランチタイムだよな?」
 12時半であるにも関わらず、客が1人もいない様子を怪訝に眺めた。
「見ての通り。不景気でね」
 と村田は苦笑した。もうどうにでもなれと言ったどこか吹っ切れたような態度だったが、やせこけた頬と目の下の真っ黒な隈は彼の現実をありありと伝えていた。
「上手く行ってないのか?」
 と堀江は心配する。
「だから、見ての通りだよ」
 村田がそう畳みかけたので、堀江はこれ以上何と言っていいいか分からなかった。
 堀江は何も言わず、窓際のテーブルにとりあえず腰掛けた。
 村田はお冷を用意して、堀江の前に置き、それからまた厨房に戻って行った。
「お前が教えてくれた半分何とかってやつを実行してみたんだけどさ、どれも大失敗」
 という村田の言葉に自分を責めるニュアンスがあるのを感じた堀江は、話題をそらそうとしてメニューを開いた。そこに書かれているのは、ニンジンコーヒー、キムチコーヒー、味噌コーヒー、納豆コーヒー、マヨコーンコーヒー……どれも目を覆いたくなるものばかりである。
「これ、本気でやってるのか?」
 と堀江は思わずなじるような勢いで尋ねた。
「ああ。妻には反対された。でも、俺はやってみたかったんだ。オリジナリティってやつを商品にこめたかったんだ」
「オ、オリジナリティって……これは、ちょっと違うんじゃないかな」
「俺もそう思う。気づくのが遅かったけどな」
「もっと早く、様子を見に来れば良かったかもな」
「もう遅いけどな」
 と村田はため息をつきながら、厨房から出てきた。その手には銀色の盆を持っていた。盆の上には、ナイフやフォークなどの食器類とナプキン、それから花柄の手ぬぐいが雑然と載せられている。
 堀江はそれを見て、
「そういうのはちゃんと揃えた状態で客に見せたがいいと思うよ。あと、そのやたらでかい手ぬぐい何なんだよ。変に目につくから余計な物は載せない方がいいと思うけど」
 と堀江は半ば怒るような口調で忠告した。
「ああ、これは、俺のオリジナリティなんだ」
 と何でもかんでもオリジナリティに結び付けようとする村田に、堀江は不快感を覚えた。
「何かよく分からないけど。まあ、あなたの好きにすればいいよ」
 と村田が馬鹿にしたような笑いを浮かべながら、突き放したような感じで言うと、
「分からなくていいよ!」
 と突然村田は切れ気味になる。
 堀江は予想していた以上の村田の経験不足と手際の悪さ、それから常識の無さにただ呆れ返るばかりである。
 少し険悪になりかけたムードを立ち直らせようとするかのように、村田は親し気な微笑を浮かべる。
「これまでのところ、正直、俺、失敗続きだったよ。でも、俺、一生懸命考えて、起死回生、一発逆転のアイデアを思い付いたんだ。それをお前に見せたくて、ずっとお前が来るのを待っていたんだ。だから、今日、こうしてお前が来てくれたことが、俺、すごく嬉しくて」
 と村田は言いながら、テーブルの上に、ナプキンを斜めに置き、その上にナイフとフォークをばらばらの方向に向けて置いた。
「だから、何度言わせれば気が済むんだよ。そういう基本的なところをもっとちゃんとしなきゃダメだろ。人より優れたところのないお前が人並みに何かやるんだったらなおさらだ」
 堀江が何気なく言ったその言葉が、村田の深いところに突き刺さった。村田の顔は一瞬蒼白に変わった。
「どうした。具合でも悪いのか?」
 と堀江が様子を窺うと、
「いや、何でもない」
 と村田は平静を装う。
「俺は何もそんな厳しいこと言ってるわけじゃないんだぞ。基本を大事にしろと言っているんだ」
「ごめん。でも、基本なんてもうどうでもよくなるくらい、すげえアイデアが浮かんだんだよ。それをお前に知ってもらいたくて」
「何だよ、それ?」
 自分の忠告をどうでもいいとあしらう村田に堀江が訝し気な視線を向ける。
「人生の大逆転だ……これまでの俺の惨めな人生に大輪を咲かせる敗者復活戦。そして、その花は、きっと、こんな色をしている。この手ぬぐいから目を離さないで」
「手ぬぐい?」
「一種のエンターテイメントさ」
 村田は盆の上に載せている花柄の手ぬぐいを優雅なしぐさでつまんだ。まるで一流の手品師にでもなりきっているかのように。そして、それを宙に放り投げた。堀江は言われた通りに視線をその手ぬぐいに向けた。その瞬間、村田はそれまで手ぬぐいの下に隠してあった包丁を右手に持ち、その鋭利な刃を堀江の頸動脈に深く突き刺した。真っ赤な血しぶきが飛び散り、壁に赤い花の模様を描く。
 堀江はあまりに突然の出来事に、叫び声すら出なかった。ただ、身に迫った恐怖から必死に逃げようと椅子から転げ落ち、首の傷口を手で押さえた。
 堀江は右も左も分からないような混乱の中で、何とか立ち上がろうとするが、気が動転していて、足がもつれる。
 村田は床の上でもがいている堀江の背中を何度も同じ包丁で突き刺す。15回は突き刺しただろう。村田はとうとう動かなくなった。
「結局、俺みたいな人間がお前に勝つための方法と言ったら、これしかないんだよな」
 村田は冷たい口調でそう言いながら、堀江の頭を足で踏みつけた。
 玄関のドアが開く。食材の買い出しから戻って来た妻が血の海になった店内を見て絶叫する。
「あなた、何をしたの?」
 妻は恐る恐る堀江のそばに近寄るが、直視出来ない。それから、村田の胸元に乱暴にしがみついた。
「何これ。ねえ、これは何なの? 説明して!」
「もとはと言えばこいつのせいなんだ。こいつが半分ティーがどうたらこうたらと、ご高説を述べて、俺の事業を混乱させたんだ。いや、それだけじゃない。それ以前から、もうずっと昔から、俺が子供の頃から、こいつは俺を苦しめて来たんだ。こいつがいたせいで、俺はいつも、自分を愛せなかった。ありのままの自分を受け入れられなかった。劣等感に苦しめられ続けた俺はとうとうこんなところまで追い詰められてしまった。全部こいつのせいなんだ」
 村田はふらつく足取りで、厨房に入った。彼は突然カップをかちゃかちゃ言わせながら調理を始めた。妻は夫の不可解な行動に唖然としながら、壁にもたれ、床にしゃがみこんで、放心状態になった。
 10分ほどして、村田がコーヒーカップを手にして妻のもとに戻って来た。
「これまで、俺が考えた半分コーヒーは全部ダメだったけど、今回考えたこの新商品は、絶対に自信がある。この半分コーヒーはこれまでのものとは違う。画期的なんだ」
 そう言って、村田はその新商品を口に入れた。少量を口に入れ……それからもう一口……三口目は結構な量を飲み込んだ。
 村田はカウンターの上にカップを置いた。
「お前にはいろいろと迷惑をかけたな……」
 そう言って、妻の髪を撫でた。妻は村田を見て、この人は一体誰だろう、という顔つきをしていた。
 それから村田は堀江のそばに座って、動かない堀江に語りかけた。
「俺の心の中にはずっとお前がいた。俺の心の半分はお前だった。そして、今、その俺の半分であるお前がいなくなった。もう半分だけの俺が生きていても、それは俺であって俺ではないんだ。どちらか半分が欠けても、俺は俺じゃなくなる。そんな状態で生き続けることに何の意味があるだろう。だから、俺は今からお前のいる所に行く。そして、ずっと、お前のそばにいる。お前が拒むなら拒むだけ、俺はお前を追いかける。何度生まれ変わっても、俺は、身も悶えるほどの憧れにかられて、お前のことを求め続けるだろう。何故なら、お前は俺が失った半身だからだ」
 スローモーションのような沈黙がしばらく続いた。
 突然、村田は顔を歪め、手で胸のあたりを掻きむしった。それから両手で喉を押さえ、何かを吐き出しそうに口を開いて、前かがみになり、また起き上がっては激しく息を吸い込んだり、吐き出したりした。口から大量の涎があふれ出していた。彼は堀江の隣でうめき声を上げつつ、床の上を激しく転げ回った。次第にその動きは弱弱しくなり、最後にはうずくまった姿勢で動きを止めた。彼は顔を堀江の胸の上に埋めるように倒れていた。
 完全な沈黙が部屋を支配する中、妻は息も詰まるような恐怖の中、四つん這いで前に進み出て、村田の胸ポケットを探った。メモが入っていた。そこには、村田がとっさに思いついた新商品のアイデアが何十ページにも渡って書き綴られていた。
 彼女は震える指先でページをめくって、最後のページを開いた。
 そこには上から順番にこう書かれていた。

 あんかけコーヒー
 シーフードコーヒー
 唐揚げコーヒー
 幕ノ内コーヒー
 唾液コーヒー
 カビコーヒー
 人肉コーヒー
 青酸コーヒー

半分コーヒー

執筆の狙い

作者 加茂ミイル
114.180.63.23

最近は子供向けの作品に挑戦していたのですが、今回は大人向けの文学作品を書きたいと思いました。

コメント

はるか
106.154.131.196

 加茂ミイルさま

 拝読しました。
 素敵なタイトルでした。
 読みやすい文章でした(誤字が一ヶ所、脱字が二ヶ所ほど目につきましたが)。
 破綻のない筋でした(ロジカルに過ぎるほど、しっかりしていると感じました)。
 半分ティーが登場したくらいからは、文章に息遣いのようなものも生じてきて、よくなるのかな、と思ったところで、グサリ、は少し興醒めでしたが、おしまいの字面は新鮮な感じがしてとてもよいと思いました。

 御作の一番よろしくないと感じたところは、すべてが説明されてしまっているところです、頭から終わりまで、書き手により、すべてが、理性的に、客観的に、整合的に説明されているのです、というか、説明しかされていません、なので、あらすじを読まされている、とてもよくできているのであろう小説のあらすじを読まされている、ような気分に私はなりました、つまり御作に欠けているのは、具体的なエピソードなのだと思います、血肉の感じられるエピソード、あと、感情、でしょうか。と、いうようなこともあって、面白い、と思える箇所がちらほらあったけれども、作品全体としては、あまり面白いと感じませんでした、自分の半分が彼なのであった、というところにも、あっ、という気づきを感じられなかったのは、説明による回答であったからだと思います、あまりにも図式的なのでありました。でもでも、端正な文章が書けて羨ましいな、と感じました。

 以上、的外れな指摘であったらスルーしてしまってください、失礼いたしました。

加茂ミイル
60.35.97.76

>はるか様

感想ありがとうございます。

>つまり御作に欠けているのは、具体的なエピソードなのだと思います、血肉の感じられるエピソード、あと、感情、でしょうか。
>あまりにも図式的

自分でもその点は感じていて、あまり感情的に豊かではない方で、
文学にしても音楽にしても、論理とか理屈とかで楽しんだり考えたりする方なので、
文章を書いていても説明調になってしまうところがあります。

>すべてが説明されてしまっているところです、頭から終わりまで、書き手により、すべてが、理性的に、客観的に、整合的に説明されているのです

まさにはるか様にそのところを完全に見透かされてしまい恥ずかしい限りです。
そういう感情的な部分というのは、なかなか計算して表現出来るところではなく、
むしろ、整合性がないくらいでちょうどいいのかもしれません。
そういう、微妙な人間的なものは、なかなか思考の結果得られるものではないので、
そこは、もう少しメンタル的に視野を広げなければならないのかもしれません。
何も考えずに、ただ心で感じてみるという経験が自分には必要なのだと思いました。

かもみー
1.75.241.10

あんたはこのサイトで唯一、大きなテーマを抱えてるよね
しかも劣等感っていう、普遍的で克服の困難なもの
そんなテーマを抱えていることだけで、あんたには可能性を感じるんだよね

で、今作、村田は堀江を殺して何か得たのだろうか? 劣等感を克服した?

あんたは昔から尻切れとんぼばかりで、それはあんたの考える小説ってのが私と違うからかもしれない
このサイトでは綺麗にまとまった起承転結が好まれていて、あんたもその傾向が強い
決して悪いことではないし、それは大多数の人にとっては小説として正しいのだろう
でもあんたはどうだろう?
壮大なテーマに対して、起承転結なんていう方法で太刀打ちできるだろうか?
たぶん無理だ、額縁としておさまらない

とりあえず次に書くべきなのはこの話の続き、つまり次の一行だと思う
書くことを繋げることによって、思考が波打ち、テーマの深淵に近づいたり遠のいたりと、文章による運動がみられるようになれば良いのだけれども

中野サル信長
106.173.154.115

なるほどなるほど
拝読いたしました。
それでまずこちらの条件として全力の感想をつけますので
あなたも必ず感想をつけていただくことをお願いします。
さてまず縦書きが公募の主戦場ですので御作は横書きですが
数字は漢数字に統一されるといいかと思います。
これで気分が公募に盛り上がるわけですね。
構成はまずまずとして気になったのはディティールです。
まず派遣労働どうしの結婚で子供は難しいですよ。
大学はF欄大学だが国家公務員試験を受け公務員のノンキャリアになった。
に変えます。これは大学は違いますが僕もノンキャリアだったんでそういう人(F欄大学出身のノンキャリア)をいっぱい見ました。これなら子供を持つこともどこか底辺感もありますね。
しかしイジメの多い公務員なので職場ではいじめられていたというと底辺でメンヘラ感もグッと出ます。F欄出身でも出世する人はすごいのに俺ってどうしてというわけですね。
それが思い出した東大に行った友人。これも財務省主計局のバリバリのキャリアとします。どうしても叶わない相手ですね。ここら辺のディティールはテリー伊藤の官僚本で研究してください。でコンプレックスがこうじて変なコーヒー屋を始めたって話も公務員時代、店をやる人は実際いたし、公務員くらいの財力がないと無理ですよ。派遣労働者に店持つとか無理ですよ。派遣労働者の暗黒を描きたいんならもっと資料を集めましょう。悲惨な話がいっぱいあります。派遣切りとかホームレスとか炊き出しとか。で財務省主計局キャリアか民間だったら銀行ですね。銀行もいやらしいところでこういうエリートはいます。
で人間失格のようなことがあって、変なコーヒーで締めと。
構成力はなかなかだと思いましたが細部が嘘くさかったです。

カリフラワーの存在価値について考える人
194.102.58.6

 暗澹たるルサンチマンを描こうとしながらも、その闇の深淵をなぞるのみでその闇には決して踏み込まないとする反作用でできているテキストだと思います。だから、表面的でどこか嘘くさい。この側面は作品の魅力でもある一方で、欠点にもなりうるところなので、判断しづらいところなのですが、この手のものを題材とした作品のフィクションが持つ嘘くささとは、元来、どうやってもそういうものに踏み込むことを避けられないことから生じるものなのだと思います。

 その点からしても、表層的な嘘くささがまだ残っているような印象を受けました。暗黒を探り当てた作者の慧眼が無意識レベルで捉えようとしていることを、意識レベルでは踏み込むのを避けるように書いてしまっているのと、それから、筋書きに合わせようとする作者の作為的調整とが、望ましくないタイプの表層的嘘くささを強調するのに一役買っているのではと思いました。構成力は高いと思います、テキストが良くも悪くも表層で構造化されすぎているというだけで。読む側の可読性ということもありますから、必ずしも、ここで言う表層的構想力が欠点であると言い切れないのが文章作品の難しさなのですが、蓋し、言葉は悪いですが、このテキストが作者様にとってのご都合主義から離れられたときに、非常に面白いものに化ける予感はあります。

 ところで、半分コーヒー、特に、幕の内コーヒーという発想は只者でないと思います。

精神異常
49.97.111.18

私はまだ人に読ませるほどのものを書くレベルに達していませんでした。
だから、執筆はいったんやめることにしました。
これまで私の作品を読んでくださった方にはただ感謝するばかりです。
そして、プロを目指して頑張ってください。
みなさんの活躍を楽しみにしています。

2019/10/13(Sun) 13:12


きちがいだなwww

加茂ミイル
60.35.86.21

>かもみー様

書くことは自分探しの旅なのでしょうか。
深いよね。
劣等感を感じなければ、人生だいぶ楽になるかもしれない。
劣等感感じるのは、理想が高いからなのかな。
競うのは面倒臭い方だけど、気が付いたら競っていた時期があった。
でも何のために競ってたか分からなかったんだよね。
競争勝ち抜くんだったら、とことん勝負した方がいいと思った。
中途半端が自分のその後にとっても一番よくないと思う。
やりきったって気分になれれば、劣等感にそんなに苦しまないんじゃないかな。どうなんだろう。
勝った負けたと騒いで楽しめるのが一番気楽で健康的かもしれない。
自分の中で勝ち負けの基準がはっきりしないまま、何だかぐつぐつと感情が沸き立つ感じが一番悩ましい。

加茂ミイル
60.35.86.21

>中野サル信長様

この作品で堀江が公務員というのは思いつきませんでした。
同じ職種にすれば、二人の登場人物の差のようなものが分かりやすかったかもしれませんね。

公務員試験の1種は難しいのでしょうね。
2種も難しいと思いますが。

中野さんは公務員をご経験されたのでしょうか?

加茂ミイル
60.35.86.21

>カリフラワーの存在価値について考える人様

無意識をもっと解放した方がいいのでしょうか?
でも、どうなっちゃうんだろう。
カオスが渦巻いていそうな気がします。

でも、それが出来たら、説明臭くなくなるのかな。

>表層で構造化されすぎている

理知的ってこと?

加茂ミイル
60.35.86.21

>精神異常様

え?
それ、作品に対する感想?

カリフラワーの存在価値について考える人
194.102.58.6

 表層で構造化されすぎているというのは、作者や物語の都合で登場人物が動かされている側面が強いということです。構造化できること自体は作者の構想力ゆえだと思いますからそれもひとつの実力なのですが、表面的にまとまっているため、作者の都合の方が際立ってみえる気がするのです。現状、作品の主張と筋書きの両面において、主人公は作者の代弁者そして駒としての役割を演じているに過ぎないように思えるのです。ルサンチマンはちゃんと描けていると思いますが、それを物語へ落とし込むところに努力が必要なのではと思います。参考になれば幸いです。

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