作家でごはん!鍛練場
昼野陽平

恋と孤独

 ペニスが二本あるのではなかった。ペニスは五本あった。早晩、十本になるのかもしれない。いや、そのうち千本くらいになるのかもしれない。小学生のころは一本しかなかった。中学一年のころに二本になった。そして初めての射精をした。ズリネタは少年誌に掲載されてるグラビア・アイドルだった。ビキニ姿のグラビア・アイドルだった。ネタにはしたが、しかし僕はビキニというものはあまり好きではなかった。露出が高くありさえすればエロいというわけではないと思う。一番、抜けるのは制服姿だった。短いスカートから伸びる足。僕は太ももが好きだった。白く輝く眩しい太ももが。僕の性癖なんて、そんな凡庸なものでしかない。鼻に劣情するとかいう性癖などは多少は面白いのかもしれない。鼻フックがどうとか。僕はしかし太ももが好きなのだった。しかしそんなことはどうでもいい。どうでも良くないかもしれない。僕は共学の都立高校に通っている。教室内では女子たちの短いスカートから伸びる太ももで溢れている。窓から差し込む光りを受けて輝くむすうの太ももは美しい。エロティックでもある。しかし僕はクラスメイトらに冷淡であった。僕は人に好かれるよりは嫌われる方に快感を覚えるのだった。嫌われるということに妙なロマンティシズムやヒロイズムを感じるのだった。僕は一種のロマンティストだったヒロイストだった。自分以外に誰もいない世界、というのをたびたび夢想したりした。そのことを、中学時代のかつての友人に言うと、引いていた。僕は彼の引きっぷりに快感を覚えた。ところで僕はイケメンだった。それで僕の冷淡さ、あからさまな人間嫌いを問題視せずに、言い寄ってくる女子が何人かいた。女は恋と復讐にかけては男より野蛮である、などという誰だったかの言葉を思い出したりした。それで僕は授業中に下痢を漏らした。わざとであった。教室中がひどい悪臭に満たされて、床には無惨な下痢が広がった。これで僕に言い寄ってくる女子はいなくなるだろうと思って、心のなかで笑った。しかし、一人だけいた。彼女は美人であった。冷淡であり人間嫌いであり授業中に下痢を漏らす僕に惚れるなどというのは、どれだけ無神経な女子だろうかと思った。しかし僕も彼女を好きになってしまった。恋というのはなんとも不条理なものだと思った。しかし僕は孤独を守りたかった。嫌われようと思ってペニスの一本をカッターで切断して、僕は一人だ今後も一人だ、という内容の手紙とともに、彼女の机に入れた。これはさすがに効いたようで、彼女はもう僕には言いよってこなくなった。それで僕は完全に一人になった。友達もなにもいなかった。ひどく寂しかったが、それはナルシスティックな快感に変換された。切断したペニスは再生して五本にもどった。高校二年生になるとペニスは百十三本になり、高校三年生になると四百五十六本になった。今後もどんどん増え続けるだろう。ペニスが増えるのと比例して僕は孤独になった。親兄弟に縁を切られた。今はバイトをしながら一人暮らしをしている。ペニスは千本ある。ペニスの数ばかりあって、しかし僕は童貞なのであった。童貞は、人間嫌いの生き様として、生涯、死守しようと思う。僕がいつか死ぬとき、それはペニスが千本あるのに童貞という人生が完結される。そのグロテスクな死を思うと、心が踊るのである。

恋と孤独

執筆の狙い

作者 昼野陽平
60.71.236.169

性的言語があります。苦手なかたはお控えください。
よろしくおねがいします。

コメント

秋田寒男
110.165.216.44

僕はペニスは一本しかありませんが
性格が僕かな?と思った。

僕にもモテ期があって、女の子に言い寄られてたときがあるのですが、わざと嫌われる言動して、ナルシズムを満たしてました。ヒロイズムも。

なぜペニスが増えるのか謎ですが(私の知能では)
異常性があっていいと思います。

大丘 忍
218.226.234.111

僕にはペニスは一本しかありませんが、その一本で充分でした。
ペニスが何本も、千本もあるのは何の象徴でしょうか。

49.98.152.210

私はペニスが一本もありませんよ!

夜の雨
118.18.72.209

読みました。

御作におけるペニスの数は「煩悩」ですね。
その煩悩のなかの「性的」な種類のものだと思います。

ウィキペディアより
>煩悩を要約すれば、自己を中心に据えて思考したときに起きる数々の心の働きである。他者や社会全体を思考の中心に据えれば煩悩は菩提となる。<

しかし煩悩は性的なものを含めてある一定の年齢を越すと、減ってくるものだと思います。
それは人間(人体)活動と関連しているのではないでしょうか。
そういう発想からすると個人によって違いはあると思いますが、四十歳あたりが境目かもしれません。
すなわち煩悩はある年齢に達するまでは増えるがそれ以降は減少する。
性的なものはおそらく子供を作る年齢と関係していると思います。
女性の場合は閉経で子供を作ることができなくなる。その年齢が40歳過ぎぐらいかな。
男性は女性と比べると子供を作る負担が体にはほとんどないので、かなりの年齢まで射精できる。しかし若いころと比べると格段に性能力は衰える。


で、御作はその煩悩の性的なものを「小学生の時は一本で中学一年のころに二本になった。そして初めての射精をした。ズリネタは少年誌に掲載されてるグラビア・アイドルだった。ビキニ姿のグラビア・アイドルだった。」と読み手が興味がわくように面白く書かれています。
主人公の生き方は孤独を愛するニヒリストで自己愛が強い。
自己完結型の人間。
その彼の生き方を書いたものだと思いました。
御作の中で主人公が言いよってきた美少女を好きになってしまうところがありますが、孤独を愛する主人公は自己を完結するために自分のペニスを切断して手紙と一緒に彼女の机に入れたとあります。

ペニスが増えるのと比例して僕は孤独になった。親兄弟に縁を切られた。 ←自分の生き方(煩悩、自己完結型)を完結しょうと思えば、当然周囲の者は離れていきますよね、変わった生き方をしていると、相手からすると迷惑になるので。

ラストまで読むと「僕がいつか死ぬとき、それはペニスが千本あるのに童貞という人生が完結される。そのグロテスクな死を思うと、心が踊るのである。」とありますが、上にも書きましたが、ある年齢を越えると煩悩は減るので、御作におけるペニスも数も減ると思います。
ただ童貞のまま人生を完結させることは可能です。


今回の御作は、「性にまつわる話」を書きながらも、人生の一端が描かれているように思います。
面白くするにはエピソードの数を増やしてドラマ性を高くすることだと思います。


お疲れさまでした。

大丘 忍
218.226.234.111

ペニスは一回に一本しか使えません。そして一本あれば何回も、何千回も使えます。千本あるのに童貞とは、いかに無駄な生き方をしてきたかを暗示しているのでしょう。
童貞のまま人生を終わらせることは可能でしょうが、哀れな人生ですね。

ラピス
49.104.27.133

今回は物語がなかったな、というのが第一印象です。でも昼野さんは無意味な話に意味を見出しておられるので、いいのかな。
今作は太宰治を連想しました。ナルシズム、自己憐憫、両想いなのに自ら壊してしまう自虐性。
嫌いではないです。10代の頃、太宰は癒しでした。
突き詰めて描写にもっと熱を入れる、丹念に主人公の心理を追う、ペニスの話を消す(→ああ、それだと昼野さんじゃなくなるかなあ)と純文学になるやも知れません。

49.98.139.71

>ペニスは一回に一本しか使えません

いいえ3Pなら二本使えますよ

49.98.139.71

大丘さんのペニスはまだ現役ですか?

大丘 忍
218.226.234.111

魂様

ペニスには二通りの使い道があります。尿の排泄器として、もう一つは生殖器として。
私は現在86歳で半年足らずで87歳になります。したがって排尿器としては使えますが、
肝心の生殖器としては、相手がいない(10年前に亡くなりました)ので使ってはおりま
せん。相手が居れば現役かどうかが分かるのですがね。残念です。

49.98.139.71

>相手が居れば現役かどうかが分かるのですがね。残念です。

大丘さんのことですから、相手がいればきっとビンビンでしょう。


昼野さん、横からすみません、申し訳ありませんでした。

昼野陽平
60.71.236.169

秋田寒男さん
感想をありがとうございます。
得意な例として書いたつもりでしたが、意外と思春期あるあるなのかもです。
ペニスが多いのは僕もよく考えてない感じですね。自己分析すると性欲の多さの象徴なのかなとも思います。
ありがとうございました。

昼野陽平
60.71.236.169

大丘 忍さん
感想をありがとうございます。
なんとも大丘さんらしい感想だなと思いましたが、あまりリアルに考えるような小説でもないかなと思います。
ありがとうございました。

昼野陽平
60.71.236.169

魂さん

感想をありがとうございます。
一本もないんじゃ面白くないですね。がんばってペニスの一、二本生やしましょう。
ありがとうございました。

昼野陽平
60.71.236.169

夜の雨さん
感想をありがとうございます。
詳細な分析をありがとうございます。なるほどそういう話だったかなと。
面白みはあまりないですね。ダダっと書いてしまう悪い癖です。
ありがとうございました。

昼野陽平
60.71.236.169

ラピスさん
感想をありがとうございます。
物語性の有無も個人的には面白さの必須条件ではないかなと思ってます。
太宰に似てるというのは指摘されてそうだなと。僕も太宰は昔から好きです。
描写と心理はもっと書くべきでした。悪い癖でさっさと書いてしまいます。
ありがとうございました。

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