作家でごはん!鍛練場
ネガティブ

ビーストウォリアー

「ギャッハハ!! 逃げろ、逃げ惑うがいい人間共! そうすることで、我ら獣人の恐怖に晒される時間はさらに長くなるがな!!」

 時は西暦2013年。人々は、突如異世界から現れた異形の獣人達の組織「ビーストウォリアーズ」に蹂躙されていた。異世界の支配者たる彼らの首領が、支配下の獣人達にこの世界の存在を伝え侵攻してきたのだという。
 人間を滅ぼす。侵攻の際、支配下の獣人達に彼は言った。首領の言葉に従い、獣人達は人間の世界を無差別に襲い始めた。ある者は自らの超能力で、またある者は単純に自らの食糧にすることで人間の数を減らしていく。
 
「首領様の命令だ! この世界、手始めにまずはこの『二ホン』とか言う国を我らの手中に収める! さぁ戦闘員共、世界中の人間を殺して殺して殺し尽くせ!!」

 曇天の下、1人の大男が逃げ惑う人間達の流れに逆らい走っていた。男の近くでは、破壊され黒煙を上げ燃え続ける建物があり、人々の阿鼻叫喚も相俟って獣人の非道さを嫌というほど思い知らせている。
 戦場に向かい走り続けている男の傍を、悲鳴を上げ人間達が逃げ惑う。そんな人間達を、男はどこか軽蔑を感じさせる目で見ている。自分が追い詰められた時、人間は本当の姿、本性を見せる生き物だということを男は既に知っていた。だが、それでも多くの人間達が持つ脆弱な本性を目の当たりにするのは、いい気がしない。
 男が向かっている先の戦場では、全身黒タイツで目だけは人間を思わせる下級戦闘員達にワニのような獣人が指示を出している。

「しっかし、腹減ったなー! おっ、あの女のガキ、うまそうじゃねぇか! どうせ殺しちまうなら、1人くらい食糧にしちまってもいいよな!!」

 建物の瓦礫で足を痛めたらしい少女は、ワニ獣人への恐怖心から大声で泣き続ける。少女に対し鋭い牙の生えた口を開け、涎を垂らしながらワニ獣人が近づいていく。

「そこまでだ、ワニ野郎!!」

 怒号と共に少女の後ろから飛び出したその影は、ワニ獣人に強烈なドロップキックを浴びせる。ワニ獣人が数メートル単位で吹き飛ばされる。獣人を吹き飛ばした影は、少女とワニ獣人の間に降り立つとワニ獣人に対し咆哮する。その影の怒りの矛先はワニ獣人、だけではない。泣き喚くだけで自分で困難に立ち向かおうとしない少女の心の弱さに対しても苛立ちを感じずにはいられなかった。
 それでもその影は少女を脅威から救ったのだ。普通のヒーロー物ならば、助けられた少女は安堵するところであるが少女の顔は恐怖で引きつったままである。

「や、やだ! 獣人が、また増えた!!」

 背後から恐怖のこもった言葉を言われたその怪人は少女を一瞥した後、正面に向き直り自嘲の笑みを浮かべる。わかっていたことだった。それこそ、怪人からすれば何度も繰り返し言われ続けた内容だったのだから。

(そうだよな、誰が、こんな化け物を……)

 筋骨隆々の鍛え抜かれた裸の上半身に真紅のパンタロンと漆黒のシューズを下半身に履いている姿だけを見れば、一見すれば人間と変わらない。だが、一際目を引くのは首から上の、仮面ではない本物のライオンの獣頭であった。
 
「邪魔すんじゃねぇ!! この裏切り者が!! 半端者のてめぇが獣人を相手にしてかなうと思っているのか! 今からでも我ら獣人と首領様に許しをこえば、てめぇの居場所はあるかもしれねぇぞ?」
「……俺には、獣人側だろうが人間側だろうが居場所なんて元からねぇんだよ!!」
「ハッ、そうだったな半端者! てめぇは半獣人! 人間などという脆弱な存在の血を持つ、我ら獣人の面汚し!! そんな面汚しの半端者に居場所など、最初からあるわけなかったな!!」

 人間が脆弱な存在であるという事実は、先程の人間達やたった今救った少女を見ても否定はできなかった。それでも、脳裏に焼きついているあの出会いが、人間が脆弱な存在ではないという気持ちを強くさせる。居場所の無い自らが居場所を得たい世界、それが獣人と人間どちらなのかを明確にさせる。

「そうさ、俺は半獣人。居場所なんかねぇし、仲間もいねぇ。だがな、俺は俺が認めた人間を傷つけるてめぇら獣人共の中に、今更居場所なんて求めてねぇんだよ!!」
「言いやがったな、半端者! 気が変わったぜ、そこの女のガキの代わりにてめぇを食ってやる!!」

 そう叫んだワニ獣人とライオンの怪人は、怒りの感情を剥き出しにして激突する。

……

ポタ、ポタタ、ボタッ。

 胴体に風穴が開いているワニ獣人が、緑色の血液を流しながらうつ伏せの状態で絶命している。その一方で、ワニ獣人の鋭い牙と強靭な顎で左腕の上腕に噛みつかれたライオンの怪人は左腕から赤い血を流しながら息を切らせて立っていた。
 全身から汗を噴き出し息を切らせて立っている姿から容易に想像はできるが、彼は獣人との戦いに全く恐怖を感じていないわけではない。獣人達との戦いに恐怖を抱き、臆している自身の心を彼は内心笑った。だが、その一方で言い訳のように感じている事実もある。約束された勝利など、どこにも無い戦いをしている事実が彼の心にのしかかっていた。

ズキィ!!

 ワニ獣人への怒りで一時忘れていた左腕の上腕の激痛が彼の表情を歪ませる。

「ぐっ、痛ぇぇ……」

 傷口を強く押さえる。彼は少女の無事を確認した自分の心に安堵の気持ちが沸き起こることに、居場所を得たい世界がどちらなのかを改めて確信する。

(よかったな、女のガキ。だが、怯えて泣いてるだけじゃどうにもならねぇぞ……)

 彼が少女に声をかけようとすると、母親らしき女性が息を切らしながら駆けつけた。女性は彼に対し敵意の視線だけを向けると、少女を背負い走り去った。後には、深手を負い疲労した身体の、感謝もされず仲間もいない孤独なライオンの怪人だけが残る。

「ハハッ、また逃げられちまったな……」

 異形の怪人は、戦場となった街を1人寂しく立ち去る。そんな寂しげな怪人の背中をわずかな風が励ますように優しく撫でた。

……

 その夜の、とあるアパートの古びた一室、その浴室で1人の大男が逞しい身体にシャワーを浴びている。戦いの汗を流しているのだ。男は見たものを威圧するような鋭い目をしており、男にしては少々長めのボサボサの黒髪が特徴的である。裸の上半身は厚く大きな胸板、割れた硬い腹筋、盛り上がった肩、逆三角形の広い背中、下半身は太くどっしりとした脚など逞しいという言葉では表現しきれないほど鍛え抜かれていた。身体中には激しい戦いの代償とも言えるたくさんの傷痕が残っており、ワニ獣人に噛みつかれた左腕には厚く包帯が巻かれていた。だが、それ以外の傷にズキンと水がしみ、彼は顔をわずかに歪める。

「痛ぇ……」

 自分は一体、何のために、誰のために存在しているのか。古びたアパートに1人で過ごす日々の中で、何度自問自答したことか。自身が元々所属していた組織「ビーストウォリアーズ」の獣人達に何度も蔑みの感情と共に聞かされた話によれば、自分はライオン獣人の男と人間の間に生を受けた半獣人である。半獣人。たったそれだけの事実で、何度獣人達に傷つけられ罵倒されてきたかしれなかった。

「恨みはしねぇが……な」

 彼はその名を「ブレイブレオ」といった。顔も名前も自身の名に込められた意味も、ほとんどの記憶がない両親だが幼き日の記憶として自身の名だけは覚えていた。なぜ、自身が物心ついた時既に1人だったのか。それはわからない。顔も覚えていない両親については、憎しみに近い感情を抱いているのは事実だ。だが、自身が半獣人であることに対して恨みを抱くことはしなかった。

「それが、俺の生き方だからな」

 自身が獣人とは違う存在であることを知ってからは、必死に修行に明け暮れてきた。誰でもいい。認めてほしい、居場所が欲しい。その一心で必死に修行し、獣人と同等の力を得たことは自身の誇りだった。長年にわたる修行の日々の中、自身の境遇や物事から逃げないことは自身の確固たる信念となっていた。地道に力をつけた自身とは対照的に、初めから力を持つ獣人達に対しては「力を持つ者が戦えるのは当たり前」と考え次第に認めてほしいという感情は無くなっていった。気がつけば認めてほしい存在、居場所が欲しい世界は無くなっていたのだった。修行の末に得た常人の150倍の筋力を誇る鍛え上げた身体も、目的を失い意味をなさなかった。

(あいつに出会っていなければ、俺は一体どうなっていただろうか……)

 自身に目的を与えてくれたあの人間との出会いを思いだし、ふと彼はそう思う。異世界の獣人達からは半獣人であることから半端者扱いされ、人間側からは元々獣人達の先兵として現れたことから化け物扱いされる彼にとって、生きる目的があることはそれだけで救いだった。自身が強き者と認めた人間に受け入れられること、望みはただそれだけだった。

(仲間や友の存在。俺にはわからねぇことだが、きっといいもんなんだろうな)

 シャワーを浴び、タオルを腰に巻いて浴室を出ると洗面台にある端々がひび割れた鏡に自らの顔が映る。威圧感を感じる厳つい男の顔だが、紛れもなく人間の男の顔だ。

「……」

 しばらく己の顔を見つめ続けていた彼だが、両手で握り拳を作り、胸の前のぶつけると叫んだ。

「変身!!」

 彼の身体が赤い光に包まれ、姿が変わる。ライオンの獣頭、逞しい裸の上半身、下半身に真紅のパンタロンと漆黒のシューズを身につけた戦士としての姿に変わる。

「……」

 鏡に映る自身の獣頭を見つめる。自身の中に流れる赤い血、首から下の人間と同じ身体は自身の中の人間の存在を自覚させてくれる。だが、首から上の茶色いたてがみを持つ野蛮な肉食動物の顔は、自身が異形の存在であることをもありありと実感させてくる。彼は眉間に皺を寄せると、節くれだった太い指で己の獣頭を掴み、引き剥がそうとする。離れないことはわかっていた。だが、自身の存在に対する疎ましさが、その獣頭を引き剥がそうとする指の力を緩めさせない。
 しばらく、その獣頭に手をかけていた彼だが、やがてその手を離し変身を解く。元の厳つい外見をした、タオルを腰に巻いただけの裸の男に戻る。彼は一度だけ溜息をつくと部屋着を着て、別室のヘッドへ向かう。

「何くよくよしてやがる! 俺はあいつに誓ったじゃねぇか!」

 そう言いつつ、昼間の激闘で疲れ切っていた彼はベッドに倒れこむ。

「そう……あいつは……俺……の……」

 約束された勝利など無い戦いからくる心身の疲労から、次第に瞼が重くなることを感じていた。

ビーストウォリアー

執筆の狙い

作者 ネガティブ
14.9.72.32

URLのリンク先の文章の一部を改善したものです。リンク先の文章と比較して、こちらのサイトにのせている文章がある程度良い方向に改善されているかを見ていただきたいです。状況説明と台詞が主になってしまっているがために、小説というより台本やナレーションのようになってしまっている文章を改善したいです。

コメント

偏差値45
219.182.80.182

うーん、これって誰が読むのだろう?
という疑問がありますね。対象年齢を知りたいですね。

コメディにしては楽しくないし、シリアスにしては迫力がないので、
中途半端なような感じですね。

また、ストーリーとしてはありがちです。
工夫が必要ですよね。

>「ギャッハハ!! 逃げろ、逃げ惑うがいい人間共! そうすることで、我ら獣人の恐怖に晒される時間はさらに長くなるがな!!」
ここで、「そうすることで」という言葉は不要かな。説明臭くなる。

>時は西暦2013年。
もはや過去だし、、、。

>『二ホン』
うーん、どうかな?

>普通のヒーロー物ならば、
誰かの語りならば良いのだけれど、、、。

全体的に文章がカタイです。よりかるくにした方がいいかな。
これは個人の好みだけれども。

ネガティブ
106.180.32.136

子供向けだと思います。小、中学生くらいの。

田中一郎
219.117.13.241

うーん、過去の出来事だし、二ホンですか……。
そこでもう駄目でした。
すいません。
2113年でなくて?

ネガティブ
106.180.32.136

本編の出来事を経て、ちょうど2019年になればいいかと考え時代設定を2013年にしました。あまり時代設定に深い意味はありません。

オステン工房
126.218.75.4

一行目の台詞が、はっきり言って残念です。
作品世界へ読者を引き込まなくてはならないはずですが、別に誰が言ったって変わらないどうでもいい台詞から始めてしまうのは損ですよ。

小説の一番始めに来る文章ですから、「これしかない」というほど考え抜いて厳選した文章を置かなければいけません。
おそらく人間が獣人に襲われているシーンを最初に置きたくてこういう書き方をされているのだと思います。
確かに、一行目の台詞は、獣人が人間を襲っている事が分かる便利な台詞ですが、要するに説明してしまっているわけです。
「説明」してしまうと、読者がこの話は作り物の嘘なんだと感じて興ざめしてしまいます。勿論小説は虚構の世界ですが、それを現実のように見せることが小説を作る面白さですし、作者の腕の見せ所のはずです。

ワニ獣人はただのクズでバカに見えてしまいますが、そんなキャラクターを一番初めに登場させても面白くありません。
たとえ悪役だとしても、わざわざ最初に登場させる以上はキャラクターを作りこまなければ読者の興味を惹けません。

世界観はしっかり作ってありますし、キャラクターの内面にもっと踏み込んで、演出に気を使ったらこの作品が本来持っている良さを引き出せると思います。

以上、書いた事は私も自分の小説では出来ていません。それでも、思った事を書かせていただきました。

ネガティブ
14.9.72.32

地の文が説明になってしまっているという指摘を何度も受けて修正したものが本作だったのですが、台詞が説明になっていることは盲点でした。確かに台詞や敵獣人に関しても、あまり深く作り込んではいなかったと思います。敵キャラクターに関しても、多少キャラクターを作り込んでみようと思います。ありがとうございました。

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