作家でごはん!鍛練場
跳ね鳥

提灯下の契り

1.我々は孝明天皇のご威光の元に集う、この国の真実の神のために輪を作った、善なる正義の志士だ。しかしなぜ、神のために尽くす我々に、かような地獄と殺戮と、理不尽な絶望ばかりが立ち現れるのだろうか。我々は悲しみ、怒りそれでも魂捧げて、ただひとつの神たる孝明天皇のために、血を捧げるのだ。


先日の下関事件で、私も高杉も、一番大切な親友を失い、明るく闊達な凄腕の剣士も、誠実で朴訥な好青年も、大事な女も、かわいい赤子も、全て失ってしまった。犠牲者数は40名を超え、私は初めて攘夷思想での異国への憎悪と復讐に、後悔と畏れを抱いた。私も高杉も苦悩のどん底の恨みの渦中にいた。


今宵は、慰霊の提灯祭りだ。実は祭り好きである高杉を引っ張って、2人で無理やり祭りの街へと踊り出た。祭りの高揚した空気の中に、我々はひやりとした冷たく凍える殺気をひしひしと感じていた。それでも浴衣姿の我々は、縁日の店主から、しょっちゅう招かれたし、橙色にぼんやり灯る提灯は心温める


空中に浮遊するかのごとく、無限に近しい橙色の灯ははるか遠くまで、続き、まるでそれは、山中の洞門の如く、我々の前に失った数々の愛おしい人の明るい魂を見せつけるようだった。連綿と続く過去の歴史からの、素晴らしい明るい魂の炎は、私の身体にもまた灯っているのだと気づいた。もちろん高杉にも。




2.「なあ、高杉」
「なんだよヅラ?」
「ヅラじゃねえだろ、桂さんと呼べ」
「ああ? かつら取って禿頭見せやがれよヅラ」
「っ、この馬鹿坊ちゃんが」
「坊ちゃん言うなし」
「いいとこのおぼっちゃまのボンボンにヅラとか言われたくあ、り、ま、せ、ん?」
「カッチーん」
私と高杉は眼光鋭く睨み合う


「ところで高杉、真面目な話だ」
「ああ、なんだ?」
「俺のお気に入りの、大砲使いを覚えているか?」
「ああ、中島だろ。暗殺された」
「ああ、酷い最後だった。あいつの形見に、凄い酒をもらってるんだ」
「まあ、中島なら桂に形見を残すと思っていた」
「なんでも土佐の坂本からの土産らしい」


「ほう、土佐の銘酒か?」
「ああ、中島はそれを俺に残したんだ」
「あいつらしいな」
「高杉、頼みがある。一緒にその土佐の銘酒を飲み交わして、中島の最後の弔い、させてくれないか」
「桂の頼みなら聞いてやるよ。俺もあの長州の誇りの砲台には、大きな恩があるからな。引き受けてやるとも」


3,私と高杉は、ともに連れ立って高杉の家へと向かい、土佐の銘酒を飲み交わしながら、夜更けまで、砲台作りの中島と、下関で失ってしまった、もう帰らぬ大切な人々について、熱く思い出話をした。涙を流し、時に笑い、次第に酔いが回って、私と高杉は、長年秘めていた、お互いの熱き友情と愛を解き放った。純米大吟醸原酒酒家長春萬壽亀泉。坂本が愛した土佐の銘酒だ。


我々は、激動の時代に生きる熱き攘夷の志士。多くの異人の血を流し、多くの命を奪った、殺人者の正義の悪人だ。この憎しみと憎悪に満ちた我が生涯は、血に濡れていて、いつか私は、憎しみに呪い殺されて、狂い死ぬだろう。激動の時代の死と隣り合わせの日々にもう疲れ果てた。せめてこの儚き命の焔を、我々の儚き命をば、今宵一夜限り、激しく燃え尽きるまでに、煌々と燃やし尽くそうじゃないか。


我々は、日頃夢の中で交わり、私は女として、高杉は男として、汗だくに濡れながら、夜な夜な激しく交わり求めあってきた。だがしかし今高杉の腕の中で羽交い締めにされる私の肉体の、なんと硬くこわばって


鍛え抜いた肉体の、なんと醜いことか。私は高杉の眼差しに顔を赤らめて涙する。しかしもう心の箍が外れて、勢いよく、私は高杉を逆に押し倒して、こちらから、激しく愛した。侵される時の高杉の驚愕の瞳を、私は生涯忘れはしない。その恐れと、初々しい乙女の高揚を、私は見逃しはしなかった。決して。


真夜中の提灯祭りの橙の命の灯はまだ燃え、閨の中の、我々の命も、今はまだ煌々と激しく熱く燃え、その炎の中の喘ぎと嬌声と高まりは、私は、未来永劫忘れは、しない。土佐の坂本の銘酒のくれた私たちへの究極の救済と、この密かな御恩、長州は決して忘れることはしないのだ。この誓いは未来永劫にあり。

提灯下の契り

執筆の狙い

作者 跳ね鳥
153.158.1.162

お読み下さりありがとうございます。

司馬龍太郎の「花神」等を参考に、長州藩攘夷ものの掌編を書きました。

友人のリクエストで書きましたが、桂と高杉という表記で、二次創作ではないオリジナルとしても読める書き方をしておりますので、投稿させて頂きます。よろしくお願いします。

コメント

鯛茶漬け美味し
14.132.72.149

拝見させていただきました
一人称が誰なのか、途中で変わったのか?など分かりにくいと思いました
時代背景をよく知っている人じゃないと伝わらない内容かと思いました
せっかく言葉の表現が出来ているのに、説明も不十分で、筆に酔っているのか起承転結が見受けられないように感じました
偉そうなことを言って申し訳ありませんでした
ぜひこの次の作品も頑張って下さい

偏差値45
219.182.80.182

物語としての統一性に欠けるかな。
また、キャラクターを作り上げていないので、
作品の面白味に欠けます。

>司馬龍太郎の「花神」等を参考に、
司馬遼太郎?

跳ね鳥
153.158.1.162

すみません司馬遼太郎でした。誤記ご指摘ありがとうございます。

失礼します。また後ほどきちんと返信いたします。少々お待ち下さい。

跳ね鳥
153.158.1.162

〉鯛茶漬け美味し様


コメントありがとうございます。
一人称はずっと桂なのですが、やはり主人公に名乗らせた方がわかりやすくなるのですかね。

時代は長州藩攘夷の、桂小五郎と高杉晋作ですが、たしかに、もう少し歴史的記述があると親切でしたね。


たしかに、即興小説のため、構成への留意に欠けていたかもしれません。


貴重なご意見ありがとうございました。

跳ね鳥
153.158.1.162

〉偏差値45様

続けての拙作へのご感想、誠にありがとうございます。


やはり鍛錬者たるもの、飴より鞭を求めておりますので、ご意見大変有難いものです。感謝いたします。


いつか、貴君にも認められる作品が書けるよう精進いたします。貴重なご意見ありがとうございました。

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