作家でごはん!鍛練場
鯛茶漬け美味し

無職になったパパ

「ただいまー!あれ?パパ?もう帰って来てたの?」


ある日学校から帰るとパパはすでに会社から帰って来ていた


いつも夜の7時や8時くらいに帰ってくるのにどうしてだろう?


壁にかかった時計の針を見るとまだ3時を過ぎたばかりだ


なにやらパパとママは揉めているようだ


それに耳を立ててみると、パパは仕事を辞めちゃったみたいだ


「何でなにも言わずに勝手に仕事を辞めてきたの?来月の家賃や生活費はどうするの?涼太の塾の費用はどうするのよ!この年で無職になって、次にいい仕事が見つかるかもるなんて保証はないのよ!」


ママはとても困ったような声をしていた


そしてランドセルを自分の部屋に置いて、タブレットで「無職」という言葉を検索してみた


出てきたのは“定まった仕事に就いていない、または仕事がない人、フリーターや家事手伝いをしている人”などを指す言葉みたいだ


家賃やご飯が食べられないのは困るけど、もう塾に行かなくていいと考えればとちょっとだけ嬉しくなった


パパはネクタイを緩めながら、「失業保険が出るから、しばらくはだいじょうぶだよ、それと少しは貯金もあるじゃないか」と言ってソファーに座りテレビを点けた


すると時代劇のドラマがやっていて、ちょうど印籠を出した所だった


パパが「おおー!ナイスタイミング!」と言ってテレビに夢中になりだした


ママは不安になり台所へ行った


夕飯の前にパパと一緒にお風呂へ入った


パパはお風呂に浸かると、気持ちよさそうにすっきりした顔をしている


本当はパパにどうして仕事を辞めたのかを聞きたかったけれど、ぼくなりに気を使って聞くことができなかった


「やっぱ家の風呂は気持ちいいな!涼太、パパの人生は失敗しちゃったけど、次に生まれ変わるときは、異世界へ行って人生をやり直しておもいっきりエンジョイするからなー!」


そう言うとパパは手拭いで顔を拭いた


「でも、もしもすでに、今が生まれ変わっているやり直しの人生だったら?」


とぼくは小さな声で言った


するとパパは一瞬ハッとして、少し顔が青白くなった


お風呂から出て夕飯を食べていると、ママはまたさっきの話しの続きを始めた


「次の仕事の当てはあるの?貯金だって、いつかマイホームを買うためにコツコツ貯めてきたお金じゃないの?明日からあなたが家にいたら、団地の人たちが変に思うし、私や涼太が影で何て言われるか、あなたちゃんと聞いてるの?」


パパはカラアゲをほおばりながら「カラアゲって美味いよなー!カラアゲ屋さんて儲かるみたいだぞ、一層のことカラアゲ屋さんにでもなるか!」と言った


ママは真っ赤な顔をして「ふざけないでよー!!」と怒鳴ったので、パパもぼくも震え上がってしまった


夕飯の後、僕が自分の部屋で宿題をしていると、缶のフタを開ける音が聞こえた


パパが缶ビールを飲み始めたのだろう


さっきまでとは違う重い声のパパの声が聞こえてきた


「実はさ、一年前から担当をしている得意先の社長さんから、しょっちゅう小言を言われててさ、うちが業績不振なのも、おまえの会社のフォローが足らないからだとか、毎月の支払いだけはきっちり持っていきやがる、そのくせ必要なときには全く役に立たないじゃないか!なんて言われてさ、そしたら先月から毎日のように電話で、おまえじゃ役に立たねえんだよ、担当変われ!なんて言われて・・・」


「そうだったの」とママが応えた


「上司に散々相談したけど、みんなその客と関わりたくないのか、誰も取り合ってくれない、だからもうこんな会社になんていたくなくて、今日、課長に退職願を出してきた」


パパの寂しそうな声がわかった


「最近、異世界に行って人生をやり直した、なんていうような漫画を読んで、次の人生でエンジョイしようなんて現実逃避をしてたよ、そんなことあるわけないのに、本当にすまない、明日ハローワークに行って仕事を探すよ、おまえと涼太を路頭に迷わせるわけにいかないからな」


「もっと早くに相談してよ、私はあなたの妻なのよ、仕事が変わってもちゃんとあなたを支えるし、パートの時間も増やしてもらうから」とママがパパを励ました


するとパパの携帯電話が鳴った


パパが携帯電話に出ると「はい、もしもし?あ!課長!はい、え?本当ですか?はい、はい」と課長らしき人と電話を始めた


しばらくして「ありがとうございました、宜しくお願いします」とパパが電話を切った


「え?どういうこと?」


ママが心配そうにパパに聞いた


「課長が、オレが退職願を出したあと、直ぐに電話で得意先に電話をかけていろいろ確認したらしい、そしてその得意先との契約をこっちから断ったらしい、退職届はオレの所で止めてあるから、また明日から会社に来て欲しい、今まで本当に苦労かけさせて悪かった、会社には君が必要なんだと・・・」


ママは涙声で「よかったじゃないの、あなたは必要とされている人なのよ」と応えた


「うん、うん」とパパも涙声で頷き二人は寄り添った


ぼくは襖の影からそんな二人を覗いていた


部屋に戻り、宿題を急いで済ますと電気を消して眠りについた


次の日の朝、ママがパパにお弁当を渡すとき、少しテレたような薄いピンク色の顔をしていた


パパは「行ってきます」と言って、家を出て駅の方へと向かって行った


ママもぼくもパパが見えなくなるまで見送った


ぼくは何事もなかったように学校へ行った


パパもママもぼくもいつも通りの生活が一番幸せなんだと思った


そして学校から帰ってくると、ママはベランダで洗濯物を取り込んでいる


ぼくは喉が渇いたので、冷蔵庫から麦茶を取り出しコップに注いだ


するとそこへパパが「ただいまー」と言って帰ってきた


その声に驚いたママが急いでパパの元へ来た


「どうしたの?ずいぶん早くない?会社は?」とママは驚いていた


ぼくも驚いて喉の渇きなど忘れてしまった


パパは間を少し明けてから口を開いた


「それが会社を辞めてきた、宝くじが当たっちゃって・・・」


パパは無色な表情を浮かべていた

無職になったパパ

執筆の狙い

作者 鯛茶漬け美味し
14.133.31.133

一人称の小説を始めて書きました
自分の感覚と他人の感覚がわからないので、批評をいただけたらと思っております

コメント

からから
49.98.141.252

まだ視点が三人称ですね。

>もしもすでに、今が生まれ変わっているやり直しの人生だったら?

この発想は面白かったです。

偏差値45
219.182.80.182

>一人称の小説を始めて書きました
>自分の感覚と他人の感覚がわからないので、批評をいただけたらと思っております

普通に読めますし、普通に分かる。

>「それが会社を辞めてきた、宝くじが当たっちゃって・・・」

大きな金額だろう、と想像します。具体的にいくらだったのか、気になりますね。
ハッピーエンドで良いのだけれど、
もう少しラストは盛り上げても良かったような気がしますね。

鯛茶漬け美味し
14.133.31.133

からからさん

ありがとうございます!
そうですね
まだまだ視点が三人称で一人称が弱いですね!

鯛茶漬け美味し
14.133.31.133

偏差値45さん

読んでいただきありがとうございます
金額は想像してもらいたくて書きませんでした
たしかにラストはもっと盛り上がりが必要かもと思いました

中野信長
106.173.154.115

才能を感じる。無職。異世界。無色のセンス
ただ体裁がめちゃクチャ。
ごはんの執筆講座を読んで
行間を詰めること

鯛茶漬け美味し
14.133.31.133

中野信長さん

コメントありがとうございます!
体裁ですか?
それは失礼しました
それとごはんの執筆講座とはどこにあるのですか???

瀬尾辰治
49.96.17.112

鮭茶漬け上手しさん、
記号なんかはスタンダードじゃないけど、内面と見たままを書くのは、初めてにしては上手ですね。
自分がおるサイトでは、プロ作家の方が審査員なんですが。
本文のような書き方で、ノミネートされている作者は多いです。

確実に読んでいないけど、場面の違いで、「は」と「が」の書き分けもできているみたいですね。
ビールの箇所も、誰が開けたのか分からないから、書かれているとおり。
パパが……。で正確やろうと思います。

携帯電話の箇所ですが、こんなふうに考えてみてはどうですか。
向こうから、亀が歩いてきた。
亀は去っていった。

一人称と違うと思えた箇所は、
 ママは不安になり台所へ向かった。

誤字は気になりませんでした。

中野信長
106.173.154.115

作家でごはんのトップページにリンクがあります

鯛茶漬け美味し
14.133.31.133

瀬尾辰治さん
的確なアドバイス本当にありがとうございます
とてもよく分かりやすかったです
因みに鮭茶漬けではなく鯛茶漬けです
本当にありがとうございました
もっと勉強します!

中野信長
106.173.154.115

https://sakka.org/lesson/

鯛茶漬け美味し
14.133.31.133

中野信長さん
ありがとうございます
さっそく見てみます!

皐月
119.82.162.183

一番上にあったので読ませてもらいました。
うーん、笑っていいのやら情けないと哀れむべきなのか…。
パパはやっぱり根からダメ人間なんでしょうね。課長からあんな言葉を貰っておいてさっさと辞めるなんて…。きっと、来世ではバチがあたりますよ。

でもまぁ、楽しめました。
しかし、なにか足りない気がします。面白かったには面白かったのですが、きっとこのお話は一晩寝ると忘れてしまうのでしょう。それだけインパクトがない。短編だから仕方ないとは思いますが、やはりプロの短編は才能があると感じざるを得ません。試しに読んでみてください。オススメは『食料人類』の原作者である水谷健吾の「不幸になる権利」です。なろうの方に投稿されているので是非。

瀬尾辰治
49.96.17.112

鯛茶漬け美味さんでした。
大誤字でしたね。

夜の雨
118.18.72.209

御作で何が書かれているのかというと、「宝くじ」が当たると、さっさと会社(仕事)を辞めてしまうパパ(父親)と、一人称でパパを見つめる主人公の少年です。

●パパの行動の流れ。(本流)。
仕事先との軋轢が元で会社を辞めることになるが、妻などと話した結果、「明日ハローワークに行って仕事を探すよ、おまえと涼太を路頭に迷わせるわけにいかないからな」と「真面目路線」だが、翌日宝くじが当たると、会社を辞めてしまう「お気楽路線」の「オチ」。
●関連してママの対応。
●一人称でパパを見つめる主人公の少年。
その主人公の少年はパパが会社を辞めるということを聞き「家賃やご飯が食べられないのは困るけど、もう塾に行かなくていいと考えればとちょっとだけ嬉しくなった」と、他人事である。
こういう具合に主人公は父親が仕事を辞めても他人事のように感じているから緊迫感がないし、作品に深みとか奥行きがない。
まあ、御作はホームドラマのショートショート作品で「オチ」が命という具合ですけれど。
そういった意味では、よく書けていると思います。

>「執筆の狙い」で、一人称の小説を始めて書きました
自分の感覚と他人の感覚がわからないので、批評をいただけたらと思っております<

ということで、御作の内容よりも「一人称」の書き方がうまくいけているかどうかが軸なら、「書き方としての一人称」は、おおむね問題なしということになる。(ところどころ三人称みたいだというのはある)
「どうして一人称にしたのか」となると、問題はある。
一人称は主人公の内面を書くにはもってこいの文体だと思うが、御作では主人公の内面があまり書かれていない。
作品の内容を結構重いと見せかけて、軽くまとめているようなので、一人称でも三人称でも、変わらない作品だと思う。


お疲れさまでした。

偏差値45
126.140.207.200

子供だまし、ってつもりで書いているでしょ、あなた。

子供が見ても魅力は感じませんし、大人が見れば、幼稚、の一言です。

わけがわからないかな。

私は「文學界」「群像」の一次に残った、才能ある人間。「新潮」「すばる」には落ちたけどね。東大卒、でもこの程度なのだよ。

もっと、上を狙いなさいよ。

鯛茶漬け美味し
14.132.230.226

皐月さん

読んでいただきありがとうございました
そうですよね
ちょっとパンチが弱いですね
勉強させていただきます!

鯛茶漬け美味し
14.132.230.226

夜の雨さん

分析ありがとうございます!
自分てきには、どこまで遊びがあったり、突っ込んでいいのか、
ゆるい話程度の方がいいのかなどいろいろお試しみたいな感じで書きました
貴重なご意見ありがとうございました

鯛茶漬け美味し
14.132.230.226

偏差値45さん

他の方にも同じコメントをされてましたよね?
お馴染みの台詞のようなものでしょうか?

颯志
60.239.54.227

お父さんは家族を支えるために嫌な仕事を耐えてやってるんだなと思ったのと、そんなことをするくらいなら結婚して子どもなんか作らなければいいのにと思います。一人でいればどうしても嫌な仕事はすぐに辞めて他の仕事を見つけられるし、自分のやりたいことだって好きなだけやれるのに。どうして皆結婚するんだろう。結末の宝くじが当たったから仕事を辞めたっていうのは本当にくだらないなと思いました。そんなことで辞めるくらいならもっと早く辞めればいいのに。妻を捨ててでも子どもを捨ててでも。貴方の人生なんだから貴方の好きなように生きていいんだ。

小説としてはショートショートで話としてまとまっていると思いました。

それでは

鯛茶漬け美味し
14.132.214.6

颯志さん

感想ありがとうございます!

セージ
212.22.162.202

お涙頂戴展開からの切って捨てる落とし方が良かった。
空虚さが際立ってたと思う。

鯛茶漬け美味し
14.132.72.149

セージさん

ありがとうございます!
そこに気づいてもらえて嬉しいです

跳ね鳥
153.158.1.162

はじめまして、拝読いたしました。

面白く読みました。ユーモアがあり、世の中の世知辛さが詰まっている。

私なら、異世界転生というワードから、父親の自殺志願と、死の不吉な予感を描きます。子どもほどに父親の死の予感に敏感な生き物はいないので、その死にまつわる過剰不安くらいはあっても良いかなと、個人的には思いました。

穏やかな作風でも、毒は入れて良いのです。子ども向けの作品ほどに、きっつい毒味が教育的効果となるケースも多々見うけられますから。

失礼いたしました。

田中一郎
219.117.13.241

基本的にはユーモアがあって素晴らしいとは思います。
しかしながら、こんな一家の大黒柱で大丈夫なのかなと思います。
最後の宝くじもきっと、億単位なんでしょうね。

オステン工房
126.218.75.4

面白かったです。
最後どうするんだろうと思ったのですが、安易に会社に戻って終わりでも、結局また会社をクビになるでもなく。そこが良かったです。
そのまま書いたら寒いかもしれない「無色な表情」も、一回仕事を辞めて、戻ってまた辞めてとドラマがありましたから、ニヤリと笑えました。

R.N
1.75.239.155

今日初めてこのサイトを知り、初めて読んだ作品がこちらでした。
子供の視点なのに失業保険やらの会話を耳にしても理解できているのが気になりましたが、短いながらもオチのあるお話で読んでいる間読むこと以外のことを忘れました。

鯛茶漬け美味し
14.132.1.23

跳ね鳥さん

読んでいただきありがとうございます!
そうですね。毒があってもいいかもですね
どうもありがとうございました。

鯛茶漬け美味し
14.132.1.23

田中一郎さん

感想ありがとうございます!
田中さんの反応が書く側としてとても嬉しい反応です。
ありがとうございました。

鯛茶漬け美味し
14.132.1.23

オンステン工房さん

読んでいただきありがとうございます!
ニヤリとしてもらって本当に嬉しいです。
ありがとうございました。

鯛茶漬け美味し
14.132.1.23

R.Nさん

読んでいただきありがとうございます!
そうですね。
子供には失業保険などわからないですね。
オチに気付いてもらえてよかったです。
ありがとうございました。

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