作家でごはん!鍛練場
結木ユウキ

笑説

僕は君と触れ合うことができるだろうか。触れ合うことができるとしたら、いかようにしてだろうか。
確かに僕は君に触りさえすればいいのかもしれない。君の手に手を重ね、君の髪を触り、そして頬をさすればいいのかもしれない。だがそれではいっこうに触れ合ったという感じがまだないんだ。
それでもセックスのときは幾分か満足できるよ。君の肌と僕の肌が触れ合って、溶け合って、一つになろうかというとき、求めているのはこれかもしれないと思う。いや、実際それも事実なんだ。
だが、それは同時に恐怖でもある。僕はいつも最中には、まるで死んでいるんじゃないかと思うんだ。死ぬのは怖い。当たり前じゃないか。
それでも、触れ合っていたい。だから僕には服が必要なんだ。服があっても、君と触れ合えたらいいのに。しかし何かが足りない。僕は君を分からないし、君もそうだろう。
つまり、この世界はあまりにも広すぎるのかもしれない。この世界はあまりにも広過ぎて、裸でいるのは危険すぎる。無人島にでも行けたらいいのに。
あるいは、僕の体がダメなのかもしれない。服は硬すぎるし、皮膚は柔らかすぎる。僕に必要なのは、この僕の体じゃない、別の僕の体だ。
もしかしたら、君は、君の体に満足なのかもしれない。僕も満足になれるというかもしれない。でもね、どんなに小綺麗になっても、筋肉をつけたとしても、結局はそこまでかわらないんだよね。つまり、僕は僕自身なんだ。僕は一つの肉でしかないんだ。
僕が欲しいのは、そうだね、肉でもなく殻でもないもの。そしたらそれはやっぱり服なのかもしれないね。でも、やっぱりそうじゃないんだ。普通の服じゃだめだ。あまりにも硬過ぎたり、柔らか過ぎたりするんだもの。僕が欲しいのは、丁度いい塩梅の服なんだ。ないよね、そんなものは。
だからね、そう意味では君に憧れてるんだ。だって君は服なしでも美しいだろ?別に良さそうじゃないか服なしでも。まぁでも、少し物足りなかもしれないけどね。
そうだな。アルマジロなんかどうだろう。便利だよね、やつら。でもやっぱり硬すぎるんだよね。身を寄せ合えば、傷つきあう。そんな服が欲しい時もあったけれど、今ではそれほどでもない。
僕は結構馬は好きなんだ。毛はないようなあるような、触っていてあれほど心地がいい動物はいないよ。でも、馬になりたいかと言われたら違う。何しろ彼らは馬鹿なんだから。馬鹿にはなりたくないね。それに馬なんてどれも似たりよったりだろ? 白馬だったらいいけどさ。
そうしたら、猫なんかいいんじゃないかって思えてきたね。それなりに毛もあって身も守れるし、それでいて触り心地がいいときたもんだ。なにより猫だったら、孤独でも許されるだろうね。べつに僕は君とずっと一緒に居たいってわけじゃないんだ。着の身着のまま、たまに触れ合うくらいがいいのさ。夏目漱石もさ、単に猫になりたかっただけだと思うんだよね。
でもね、やっぱり猫そのものになりたいかっていうと違うんだ。ちゅ〜るとマタタビに理性を失う、ってことは避けたいんだよね。というか理性は持っていないだろうから。もし持っていたら、猫だって文明をもって国を作っていたはずだよ。
昔ドクター・フーに兎人間が出てきたよね。うんああいう感じだ。兎は気持ち悪いから、やっぱり猫がいい。猫人間。もしなれるとしたら猫人間がいいんじゃないかって思うよ。
でもこんなのは戯言だ。猫人間なんて存在しないだろう。仮に猫人間が発見されたとして、そいつは猫なのか、それとも人間なのか議論になるはずだ。猫のような人間か、人間のような猫か。でもそんなのなら、僕はどっちにもなりたくない。
それに今更、猫人間になんかなれないだろう。僕の体に猫の毛を移植すればなれるかもしれないけど、それじゃダメだ。根本から作り直さないと。
だからまるきり違う体を作って、それに僕の意識だけを移せばいいわけだね。うんいいじゃないか。
そのためには、まず、まるきり違う体を準備できないといけないね。ガワはよくても、動きもよくないとね。とにかく、今できることが出来なくなっちゃ、もとも子もないからね。
あとは意識を移せるかどうかだね。意識ってもんが、仮に魂の塊だとして、それを掃除機みたいなもんで吸い出せるならそれをまた入れてやるだけで済む。
でも、そう上手くはいかないんじゃないかな。魂は塊じゃないかもしれないし、だいいちどこにあるかわからないじゃないか。
そうだね、魂が脳にあるんだとしよう。わりとそう思える節もある。じゃあ脳だけ移せばいいんだろうか。まぁそれなりにうまくいくかもしれないね。
でも、まずどこまでが脳なんだろうか。大脳と小脳はいいとして、その下には脳幹ってのがあるらしいじゃないか。まぁこいつは脳って名前がついてるぐらいだし、脳だろう。でも脳幹ってのは脊髄とつながっているんだよ?そしたら脳ってのは脊髄も含めたシロモノになる。でもそしたら他の神経はどうなのさ。だからさ、僕がいいたいのはあんまり脳なんか当てにしないほうがいいってこと。
何だか行き詰まっちゃったね。僕には、新しい体を手に入れることは無理みたいだ。
僕にはやっぱり、この身体しかないみたいだ。こいつとやっていくしかないみたいだ。僕はこいつで、こいつは僕なんだ。こいつと言ってしまうことすらおこがましいことなんだから。
まぁでもね、少しくらい夢みてもいいじゃないかと。そりゃ僕にはこの身体しかないことはわかってるけど、すこしくらいそうじゃない可能性があってもいいじゃないかと。それは僕とこいつのためにもなるだろうし。
で思ったんだけど、それって僕と君みたいじゃないか。僕はもう君には会えないけれど、もし仮に会ったとしてそれはもう君ではないのだけれど、それでもこういうふうに君と会うことを願っているみたいにね。
笑っちゃうよね。

笑説

執筆の狙い

作者 結木ユウキ
150.100.253.218

久しぶりに書くことができました。2400字です。やはり短いのは否めないけども、もっと字数が足りないと思っていたので意外でした。風景描写で無理して字数を増やさずにこれぐらいかけるのだからいいのかもしれないし、思いつくことが詰まっているにしては少ないのかもしれない。ともかく、こういう語りなら書けるということがわかって収穫でした。こっから具体的な話にもっていければ、割とうまくいくかもしれない。
長く書いて失敗するのも嫌なので(笑)、みなさんの意見が聞きたいですね。かつてないほどに。それでは。

コメント

からから
49.98.141.252

そうですね、今の時点では自意識ダダ漏れってやつですね。

結木ユウキ
175.177.5.61

からからさん
コメントありがとうございます!
>>そうですね、今の時点では自意識ダダ漏れってやつですね。
そうですよね(笑)
長く書くとしたらその辺を上手く中和させる努力が必要ですね。肝に銘じるべきでしょう。

偏差値45
219.182.80.182

一人語り。話の核心部分が分からないかな。

>久しぶりに書くことができました。2400字です。やはり短いのは否めないけども、

長い文章は誰にでも書けるけど、面白い文章は誰にも書けない。
従って文字数は気にする必要もない気がしますね。

鯛茶漬け美味し
14.132.55.232

拝見させていただきました

これは純文学の部類になるのでしょうか?
これは一人称の自分だけの中でのやりとりなのか、
または相手がいて相手へ向けた文章なのかちょっとわかりにくい所を感じました

馬の話しがありましたが、途中で馬鹿と表現されていいたので、つい“鹿は?”と思ってしまいました

タイトルは「笑説」恋人から服や裸、馬、兎、猫人間、猫、魂、脳で短編なのに議題が多すぎるように感じました

もう少ししぼってそのことを掘り下げtり、比喩表現などを作り、オチに繋げる方がバランスとしてよくなるのではないでしょうか?

例えばスピッツの歌の歌詞は上手にバランスのとれた純文学だと思っています
方向性や比喩表現も面白いので読んでいて飽きない感じがします

しかし本当は純文学についてはよくわからないので、生意気な批評すみませんでした
これからもいいものを書いて下さい

セージ
94.23.49.201

よかったかよくなかったかで言うと、とてもよかった。どうにもならなくて笑うしかないって笑説?

穏当でない論理展開の中にだから住める小説があるんだな。面白かった。

でも作者さんにとっての「うまくいく」ってなんなんだろ?
これそのものはうまくいった感触あるのかな。長くできて初めてうまくいくもの?

結木ユウキ
175.177.5.51

偏差値45さん、コメントありがとうございます!
>>一人語り。話の核心部分が分からないかな。
あまりにも雑多としすぎている感は否めませんね…続けて書くならそこはある程度意識して絞らないといけないですよね
>>長い文章は誰にでも書けるけど、面白い文章は誰にも書けない。
>>従って文字数は気にする必要もない気がしますね。
そうですね、そうだと思います。ただ自分は長くすら書けないタイプなので、まずはそこからかなと思ってます。

結木ユウキ
175.177.5.2

鯛茶漬け美味しさん、コメントありがとうございます!
>>これは純文学の部類になるのでしょうか?
そうだと思います笑
>>これは一人称の自分だけの中でのやりとりなのか、
>>または相手がいて相手へ向けた文章なのかちょっとわかりにくい所を感じました
人称がわかりにくいですよね。最後の方は二人称のつもりだったんですが…違和感は無くさないとダメですね…
>>馬の話しがありましたが、途中で馬鹿と表現されていいたので、つい“鹿は?”と思ってしまいました
馬も鹿も同じようなもんだと思って省略しましたが省略するということを書いた方が良かったですね。こういう無駄な思考の省略はいらないと肝に命じていたつもりなのですが笑
>>タイトルは「笑説」恋人から服や裸、馬、兎、猫人間、猫、魂、脳で短編なのに議題が多すぎるように感じました
>>もう少ししぼってそのことを掘り下げtり、比喩表現などを作り、オチに繋げる方がバランスとしてよくなるのではないでしょうか?
長く作る時にはそうしてみます!
>>例えばスピッツの歌の歌詞は上手にバランスのとれた純文学だと思っています
>>方向性や比喩表現も面白いので読んでいて飽きない感じがします
スピッツさんは純文学だというのは面白いですね!たしかに口調は似ているかもしれません。今度きちんと読んでみます!
>>しかし本当は純文学についてはよくわからないので、生意気な批評すみませんでした
>>これからもいいものを書いて下さい
詳しいご感想ありがとうございました!すごく参考になりました!では。

結木ユウキ
175.177.5.2

セージさん、コメントありがとうございます!
>>よかったかよくなかったかで言うと、とてもよかった。
ありがとうございます!励みになります笑
>>どうにもならなくて笑うしかないって笑説?
ほとんどそうですね!
>>穏当でない論理展開の中にだから住める小説があるんだな。面白かった。
なるほど、「穏当でない論理展開」というのは素晴らしい形容ですね。もしこのスタイルで書き続けるとしたら、その言葉を念頭に置きながら書くべきでしょう!ありがとうございます。
>>でも作者さんにとっての「うまくいく」ってなんなんだろ?
>>これそのものはうまくいった感触あるのかな。長くできて初めてうまくいくもの?
そうですね。長くならないとうまくはいかないと思いますが、長くなってもうまくいく保証はないですね。長く書けて、書いたとしたら、そこに答えがないといけないですね。すごく長く書く意欲が湧いてきました!ありがとうございました!

オステン工房
126.218.75.4

面白いかどうかで言うと、私にとっては違う作品でした。
語り手が何を言いたいのかはわからないでもないんですが。


何が書きたいのかわからないまま書いていらっしゃるような印象を受けました。
よほど書き慣れている人でないと、つらつらと書いて素晴らしい名作になるという事はありません。
表現したい物だとか書きたい物が先にあって、始めて文章の構成や仕掛けができるのだと思います。

もっとも、これが文章芸術であるならば私は門外漢ですから、何も言える事はありません。

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