作家でごはん!鍛練場
フレディ

熟女大全集(後)

                7
「社長さんからよ」という妻の声で目が覚めた。
「昨日はすいませんでした」頭蓋骨の中で脳みそがシャッフルされているのを感じながら必死で言葉を絞り出す。
「だいぶお疲れのようだな」
「久しぶりに帰ったんで」時計を見るともう少しで午前中が終わるところだった。「周りの親戚の人たちが出てきちゃって昼間から飲みすぎました」
「もう一日休んでもいいよ」
「ほんとですか?」
「ああ。
 その代り、明日、朝八時からミーティングだ」
「藤堂さんですか?」
「正解。
 この間の付き人の小僧が言っただろ。
 あれで行くって決まったらしいぞ」
「わかりました」と言って俊夫は電話を切ったが、社長の言葉など全く頭には入っておらず、再び深い眠りに落ちた。

「携帯鳴ってるわよ」この日二度目の目覚めはまたしても妻の声だった。
 間子からだった。
「今日、誕生日でしたよね」
 部屋のカレンダーを目をしょぼめて見ると、確かに四十三回目の誕生日だった。
「会えますか?」
「あぁ・・」
「じゃあ、このあいだの喫茶店で」
 歯を磨き髭を剃り服を着替えると「晩飯いらないから」と家を出た。
「あら、あなた、今日誕生日よ」という妻の声を期待したが何もなかった。
 喫茶店に入ると間子は既に来て待っていた。
「すいません、急に」
「いいよ、どうせ暇だったから」
「お疲れのようですけど」
「昼間の酒は効くよ」
「お父さんとお母さんはお元気でしたか」
「俺よりはな」
 ウエイトレスが注文を聞きに来たのでビールを頼んだ。
「あのうこれ」間子が突然、足元に置いていたバッグから有名百貨店の包装紙に包まれた封筒くらいの大きさの包みをくれた。「お誕生日おめでとうございます」
「おぅ、悪いなぁ」
「何を買っていいのか分からなかったので
・・」
 俊夫ははにかんだ間子を初めて見た。
「誕生日プレゼントをもらったなんてほんと久しぶりだよ」
「そうなんですか?」
「俺もお前と一緒で友達なんてほとんどいないんだ。
 ただ大きな違いは、お前は自分から友達を作ろうとせずに結果いないだけで、俺は友達をつくろうとしたんだけど結果できなかったんだ」
 ウエイトレスがビールと付き出しのピーナッツを持ってきた。
「今日はケーキ食べないのか。イチゴののっていない」
 俊夫の声を聞いて戻りかけたウエイトレスがどうするんですかという表情を間子に向けた。
「じゃあ、チーズケーキにします」
「チーズは抜いてもらわなくていいのか?」
 ウエイトレスは??という顔をしたが間子が「チーズケーキお願いします」と言うと戻っていった。
「明日の打ち合わせは聞いてるか」ビールの泡を口の周りに付けて俊夫は聞いた。
「はい」
「内容とかは何か社長言ってた?」
「今度は何か水着を着て撮影があるかとか」
「そうなのか。
 今度はお尻はするのか?」ピーナッツを口に放り込みながら俊夫はビールを傾ける。
「いえ」
「どうしてだ。
 ギャラはそっちの方がいいだろう」
「だめなんです」
「なにがだめなんだ?」
「いえ、その、何かが違うかなって・・・」
「まさか痔になったってことはないだろうなぁ」
「そんなことありません」
 
 間子がチーズケーキを食べ終えると喫茶店を出た。
「プレゼントの代わりに何かおごるよ。
 もつ鍋以外で何か食べたいものないか」
「え?」
「なにかあっさりしたもの食べよう」
「お鮨なんかは?」
「それにしよう。
 今の俺の胃にはそれが限界だ」
 繁華街に出て一番最初に目にとまった鮨屋の暖簾をくぐった。
 カウンターだけの店だったが小ぎれいで小ざっぱりとしていて、お手拭きを出してくれたおかみさんの笑顔が最高だった。
 俊夫はお造りの盛り合わせをあてに熱燗を呑み、その横で間子は黙々と鮨を食った。
「少し呑むか」俊夫はお猪口を間子に差し出した。
「いえ、明日早いんで」
「そうか」
「久しぶりの里帰りはどうでしたか?」間子はきゅうり巻きのきゅうりをウサギのように齧りながら俊夫に聞いた。
「別にどうってことなかったよ。
 あっ、そうだ、帰りの列車の中で・・」
 俊夫は白い手袋の話をした。
「その子にはすごく印象に残っているんでしょうねぇ、その白い手袋が」
「そうなのかなぁ。
 列車の中でずっと連呼してたよ」
「白い手袋は白い手袋なんです」
「そんなの当たり前じゃないか」言うと俊夫はおかみさんに熱燗のお代わりをたのんだ。
「白い手袋以外の何ものでもないんです。
 言いかえればそこにはそれ以外なにもないんです、なにも・・・」
「なにもない・・・Nothing・・・か・・・」
 
 お造りの盛り合わせだけで三合の酒を呑んで店を出ると、俊夫にはとても間子を抱くだけの力は残っていなかった。
「プレゼントありがとうな」俊夫は手を上げ流しのタクシーを止めると間子に一万円札を渡した。
「すいません。
 かえって悪かったみたいで」
「明日早いから遅刻しないように」
 タクシーの扉がどうぞと口を開けた。
「間子ちゃんさぁ、俺って、俺ってさぁ、お前の何なんだ?」
 後ろの車が早く出ろとクラクションを鳴らす。
「白い手袋です」
 言うと間子は「じゃあ、おやすみなさい」と滅多に見せない微笑みを言葉に添え、タクシーはそっと扉を閉めたかと思うと夜の帳の中をスローモーションのように走り去っていった。

                   8
 社長の笑い声がこめかみに響く。
「俺も長い間生きてきたけどさぁ、誕生日のプレゼントに女から“おこめ券”をもらった奴なんて初めて聞いたよ」
「てっきり、箱の形と大きさからライターかなって思ったんですよ。昔、付き合っていた彼女にもらったことがあったんで。
 まさか“おこめ券”だとは夢にも思いませんでしたよ」
「だけど・・」社長はまた大笑いして言葉にならなかった。「だけど、やっぱりあの子は優しいんだよ。お前は結婚してる。だけどどうみても安月給だ。奥さんもいてお子さんもいて、きっと暮らしていくのがたいへんなんだろうなぁ、ってそこまで考えてくれてその結果が“おこめ券”だったんだよ」社長は自分が吐いた言葉に再び大笑いした。
「それなら給料上げてくださいよ」俊夫は鼻を膨らませて言った。
「それとこれとは話が別だよ」社長は笑いすぎて濡れた目を手でぬぐいながら言った。
「なにか楽しそうだな」藤堂が店に入ってきた。
 いつも打ち合わせがある時は、藤堂の会社が入っているビルの斜向かいにある喫茶店で、俊夫と海田はモーニングを食べていた。
「八時になったら始めるからね」それだけを言うと藤堂は踵を返し店から出ていった。
「藤堂さんいつもと違ってえらく真剣でしたよね」俊夫は苦いコーヒーを喉に流し込みながら言った。
「そらそうだろう。
 今回、たまたま間子ちゃんがさぁ、ああいう形で売れたけど、AV業界全体で見るとかなり厳しいからな。
 ネットでいくらでもただで無修正が見られる時代だぜ。若い奴らが、わざわざ金出してボカシの掛かってるAVなんか買うわけないだろ。
 この間、あるポルノショップの小売店の購入者年齢のデータを見せてもらったけど、メインの層が二十代から四十代、五十代に移ってきて、特に六十歳以上が無茶苦茶増えてきているんだって。
 パソコンをうまく操れない世代が店に夜な夜な通ってきてるってことだよ」
「なるほど」言うと俊夫は店の時計を見た。「そろそろ行きましょうか。遅れるとまた訳の分からないこと言いだしそうですから」
「そうだな。で、間子ちゃんは?」
「直接行っていると思いますよ」
「そうか、それならいいんだけど。
 いや、ひょっとして、おこめ券を贈ったことに対してすごい罪悪感を感じて『ああ、せめてデパートの商品券にしておけば良かったわ』って部屋の片隅で肩を落とし泣いてんのかなと思って」
 社長と二人けたけたと笑いながら店を出て斜向かいのビルの会議室に入ると、間子はまだ来ていなかった。
「どうしたのかな?」俊夫は携帯の番号を押したが間子は出てこなかった。
「間子だけに“ま”が差してどっか行っちゃったんじゃないのか」海田は自分の冗談に受け独り笑う。
「さあ、始めようか」藤堂が入ってきた。「あれ、間子ちゃんは?」
「すいません、少し遅れてまして」俊夫が答える。
「じゃあ、時間がないから先に始めようか」
 藤堂が言うと、一緒に入ってきた、前回の打ち合わせにもいたスキンヘッドの付き人が立ち上がり「それでは手元の資料に沿って進めていきたいと思います」と言ってホワイトボードの前に進み出た。
「おい、あいつ殺されなかったんだ、良かったよな」海田は俊夫の足を蹴ると小さな声で言って笑った。
 スキンヘッドはじろっと海田を睨み、「それではまず今回の作品のコンセブトですが、それは“水”です。この間の会議でお話ししました通りプールの中でのプレイを中心とした作品にしたいと考えております」と少し緊張した声で話した。
「プールの中でのプレイってありきたりじゃないですか」海田が手を挙げてスキンヘッドに言った。「どうせなら海で波にもまれながらやるとか、川のせせらぎを聞きながらやたら激しい男3女1の4Pをやるとか、結構アオカンのジャンルは根強いファンが多いですから」
「川か」藤堂が突然立ち上がった。「いいよ。社長それいいよ。川だろ川っ」藤堂はホワイトボードの前まで駆けていくとマーカーで波線を何本も書いた。「いいよっいいよっ、川だーっ!!」ホワイトボードは藤堂の書いた波線で埋め尽くされていった。
「川ね」ポツリと俊夫は吐いた。が、その言葉に突然深く眠っていた記憶が蘇った。
 記憶のスクリーンに出てきたのは、間子の父親だった。
「ほんとにいい子で勉強もすごく出来たんだけど、唯一水泳だけが苦手だっだなぁ。まあ、しがたないんんだけどなぁ。生まれてすぐに水の中に捨でられて、どえらい目に遭っだんからなぁ」
「俊ちゃん」藤堂の声で俊夫は我に帰った。「間子ちゃんはどうしたんだ?」
「いえ、それが連絡が取れなくって」
「部屋で手首切って死んでるわけないよね。彼女以外の関係者が死んでくれるとかえって作品に箔が付いていいんだけど、彼女本人に死なれるとちょっとねぇ」
「見てきます」俊夫が立ち上がると、海田も連れて立ちあがり、二人で藤堂に一礼すると会議室を出た。
「携帯出ないのか?」乗り込んだタクシーの中で海田は俊夫に聞いた。
「たぶん出ませんよ」
「どうしてわかるんだ」海田が俊夫に聞く。
「なんとなくです。
 ただ、いる所はだいたい目星が付いているんで、私一人で行ってきていいですか?」
「ああ、頼むよ。
 俺は戻っても藤堂さんの愚痴を聞くだけだから、携帯の電源を切って安酒でも呑んでるよ。間子ちゃんと連絡が取れたら留守電に入れといてくれ」
「わかりました」
 止めたタクシーに一人乗り込むと、行き先を告げ、携帯でさっきの番号をリダイアルする。
 しかし、十回目のコールまで待っても彼女は出てこなかった。
 タクシーを降りるとマンションの前に立つ。
 郵便受けから新聞ははみ出ていなかった。
 狭いエレベーターから降り、廊下を歩くが、向こうから彼女はやってこなかった。
 呼び鈴を鳴らす。
 暫く待つが、扉の向こうからは何の気配も伝わってこなかった。
 マンションを辞すると、もう一度携帯でリダイアルする。
 諦めて切ろうとした時「間子です」と彼女の声がした。
「今どこだ?」
 聞くと、いつもの喫茶店だった。
「すぐ行くから」
 大通りに出てタクシーを拾うと、十分もしないうちに、その店の前のスクランブル交差点に着いた。
 中に入るとすぐに彼女を見つけた。
 体全体から負のオーラが出ていた。
「おっ、今日もイチゴは返納したのか?」
「はい。イチゴはやっぱりダメです」
 ウェイトレスを呼び、コーヒーを注文する。
「今日はどうした?」
「行きたくなくて」
「出社拒否か?」
 間子は何も言わず、イチゴの乗っていないショートケーキにフォークを入れた。
「みんな待っていたんだぞ、社長も、藤堂さんも」
 間子は何も答えずショートケーキの欠片を口に入れる。
 さっきのウェイトレスがコーヒーを持ってきて、何も言わずに去っていく。
「私、泳げないんです」
 フォークをショートケーキの脇に置いて間子が言った。
「え、お前、ひょっとして、かなづちなのか?」
「水が、恐いんです」
 そんなことはわかっていた。
「そうなのか。
 それなら、この間、水着になるストーリーになるって聞いたときに社長に言えばよかったじゃないか」
 間子は何も言わず、コクンと頷いた。
「じゃあ、とりあえず社長から藤堂さんに言ってはもらうけど、藤堂さんもああいう人だからな、一度言い出すと聞かないかもしれない。
 お風呂に入っているつもりでもいやなのか?」
 コクリと、又、間子は頷く。
「川でやるって言っても、まだ細かい演出は決まっていないし、まさか肩まで入ってやるはずはないと思うし、膝上くらいでもダメか?」
 コクリ。
「藤堂さんにお願いして、最初だけ少し我慢して足の先を少し浸けて、あとは全部、川辺でのプレイにしてもらってもダメか?」
「どうしてもダメなら、もうやめます。
 田舎に帰って父と暮らします」
「それは無理だ。
 うちの会社と藤堂さんとこで契約を結んでいる。
 あの人のことだ、断ると、契約違反だとか何だとか言って大騒ぎするだろう。違約金を払えとか言ってな」
「私が払います」
「ばか。
 そんな陳腐な金額じゃないんだぞ。
 とにかく社長に相談してみるよ。
 今日は急に体調を崩したってことにしとくから、又、連絡するよ」
 間子と別れると、社長といつものバーで落ち合った。
 店は、五百円でスープまでついているワンコインランチ目当ての、小遣いの少ないサラリーマンで賑わっていた。
「なんだ、そうだったのか」
 言った社長の顔はいい赤色をしていた。
「藤堂さんから何か連絡は・・・」
「知らねえよ。ずっと電話切ってたんだから」
 言いながら差し出した社長のガラ携の液晶画面は真っ暗だった。
「本当に切っていたんですか?」
「当たり前だよ。
 あんなおっさんと真剣に付き合ってたら本当に頭がおかしくなっちゃうよ」
「まさか、私のところに掛かってこないでしょうね」
 俊介が言った時、本当に携帯が鳴った。
「わっ」声を上げた俊介が液晶の画面を見る。
「藤堂さんですっ!
 本当に掛かってきたじゃないですかっ、どうしますっ、出ますっ? ほっときますっ?」
「ばかっ、出るにきまってるだろ」社長が口から泡を飛ばして言う。
「決まってるだろって、社長が電源切ってるからこっちにきたんですよ」
「わかってるよ。
 とにかく早く出ろっ、あっ、俺は横にいないって言ってくれっ」
「そ、そんな・・・」
 泣きべそをかいたような顔をして俊介は電話に出る。
「は、はいっ、申し訳ございません。え、ええ、連絡は取れました。急に体調を崩したということで、ええ、誠に申し訳ございません。はいっ、もう大丈夫です。えっ、今日と同じ時間で、はい、承知しました。必ず行くように致します。えっ、いえ、おりません。途中で別れまして、何かお父様の具合が悪いかと仰ってましたので、ええ、わかりました、ちゃんと伝えます」
 社長は俊介に手を合わせて頭を垂れた。
「はいっ、あっ、そうですか、わかりました、ええ、じゃあ、本人にも伝えておきます、同じ時間ですね、今日と、承知しました、ええ、よろしくお願いいたします」
 電話を切った俊介はフーっと大きく息を吐いた。
「すまない」社長が頭を下げる。
 隣のサラリーマンが、なんだこいつら、といった目を向ける。
「本当、頼みますよ、社長」
「何か冷たいものか、腹が減っていたらランチでも食ってくれ。ここはおごるからさ。
 で、おっさん、何て?」
「明日、今日と同じ時間に来いと。だいたい話は煮詰まったけど、細かい打ち合わせをしたいからと」
「やっぱり、俺が余計なことを言った“川”で決まったのか?」
「ええ、そのようです。彼女にも伝えておくようにと言われました」
「そうか、じゃあ、言っといてくれるか」
「いえ、言いませんよ」
「なんでだよっ」社長が赤い顔をさらに赤くして言う。
「そんなこと言ったら、あの子、本当にいなくなりますよ。そういう子ですから」
「そうか。じゃあ、任せるよ。
 で、俺のことは何も言っていなかったか?」
「ええ、特には何も」
「そうか」言うと社長は席を立った。「昼間から呑んじゃったんで酔っちゃったよ。明日よろしくな。領収書だけもらっておいてくれ」
 一万円札をテーブルに置いた社長は背を向けたかと思うと顔だけを俊介に向けた。
「悪いけど、親父もおふくろも、もうとっくに死んでいないから」

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「昨日はご迷惑をお掛けしました」
 社長の隣で間子と頭を下げる。
「社長さぁ、終わったことはもうどうでもいいから、今日からどうやっていこうかだけを考えようよ」
 藤堂の言葉に社長はもう一度深く頭を垂れた。
「で、俊ちゃんさぁ、ストーリーは社長が提案してくれた“川”でやることに決めたからさぁ、細かいところは今からこの天才が説明するから、分からないことや、もっとこうすればいいとかいうのがあればどんどん言ってくれる。
 間子ちゃんも何かあれば言ってね。二人でやるよりは三人の方が私も感じて、見ている人も感じる、ウィンウィンの関係はこうすれば作れますよっていうのがあればね」
 間子は無表情でコクリと頷いた。
「じゃあ、天才、説明していってくれるか」
「はい」と言ってスキンヘッド改め天才が立ち上がった。
「それではお手元の資料を・・・」
 A4の紙一枚の資料に視線を落とす。
「舞台は先ほど藤堂さんが仰った“川”です。話の設定としては、間子ちゃんが会社の同僚三人と川でバーベキューを行います。もちろん同僚はみんな男性です。そして、その一人が間子ちゃんに恋心を寄せていて、他の二人が川遊びに行った隙に、間子ちゃんに迫り、行為を致すことになります。
「行為を致すか・・・」社長が隣で一人ごちる。
「そして、その最中に、川で遊んでいた二人が戻ってきて、やがて、四人で川の中で激しくまぐわってしまうという流れです」
「まぐわうか・・・」もう一度社長が一人ごちた。
「おい、天才」藤堂が声を上げる。「今回はお尻はやるのか?」
「いえ、特には考えていません」天才が冷静に答える。
「社長、どうする?やる?やらない?」
「いえ、やりません」社長の代わりに答える。
「間子ちゃん、どうする?ギャラははずむよ」
 藤堂が俊介の言葉を無視して間子に聞いた。
 間子は、やはり無表情で首を横に振る。
「わかった。すまない天才、続けてくれ」藤堂が言った。
「えー、簡単ですが、以上です。なにか質問はございませんか」
「どこの川でやるのかはだいたい決まっているの?」社長が天才に聞く。
「いえ、まだ、これからです。
 ただ、昨日、社長さんが仰った、静かな川べりでとてつもなく激しい行為を致すというコンセプトにしていますので、人が立ち入ったことのないような、清流っていうんですかね、そんなとこを考えています」
「あまり辺鄙なとこはやめとこうよ。
 今、流行りの熊でもでてきたら洒落んなんないよ」
 社長の冗談に天才はピクリとも反応しなかった。
「社長さぁ、それはそれでいいじゃん」藤堂が間に入る。「間子ちゃんのDVDにはいつも何か出るから、熊が出たっていいじゃん。なっ、間子ちゃん」
 間子は、持ち合わせている数少ない表情の中から“?”の表情を藤堂に向けた。
 間子は自分が出演している作品がどうなっているのかどうも知らないようだ。
「そうかそうか、おっ、何回も悪い、天才、続けてくれ」藤堂が言うと天才が「他には何かございませんか」と聞いた。
「川の中での行為ですが、それは必要ですか?」
 視界の隅で、間子の右手の人差し指がピクリと動くのが見え、天才がはぁ?と目を丸く大きくした。
「必要ですかって、せっかくそこに川があるんですから、必然的にそうなるでしょ」
 これまでの説明よりは少し尖った声で天才が返してきた。
「いえ、実は彼女、泳げないんです」
「そんなに深いところにいくことは考えていませんので大丈夫です」
「水そのものが、彼女は、恐いんですよ」
「と言って、裸の体に命綱巻き付けてやるわけにいかないでしょ。
 あっ、そうだ、いっそのこと体中に命綱じゃないですけど、縄巻き付けてSMやっちゃいましょうか」
「ハハ、やっぱりお前は天才だよ」藤堂が手を叩きながら言う。
「川の水で浣腸して、清らかなせせらぎの中で思いっきり噴射してもらいましょうか、ハハっ」天才が薄い笑い顔で言った。
「てめぇ、いい加減にしろよっ!」言葉が勝手に出た。「彼女は水が恐いって言ってんだろがっ!!」
 社長が慌てて立ち上がり俊介の肩を抑える。
「俊ちゃん、どうしたんだよ。たまってんじゃないの。
 社長とソープでも行ってきなよ、ほら、軍資金だ」
 藤堂は机の上に十枚ばかりの一万円札をばら撒くと「天才、あとは任せておくから」と言って部屋を出ていった。

                  10
「そんなに怒るなよ」
 前に一度来たことのある定食屋でビールを煽りながら海田は俊介を諭した。
「いや、怒ってなんかないですよ」
 本当に怒ってはいなかった。
 言葉が勝手に出ただけだった。
「あっ、ビールもう一本」
 通りすがった女性店員に注文する。
 定食屋に入ってから、ずっと彼女のお父さんのことが頭から離れなかった。
 あの、片腕のないお父さんのことが。血走った眼で娘のことを話すお父さんのことが。
 何かの電子音で我に帰る。
「ちぇっ、藤堂のおっさんだ」
 社長の携帯が奏でた音だった。
「えーっ、はい、いえいえ、もうそんな元気はないです。ははっ、藤堂さんとは違いますから、ええ、あっ、そうですか、わかりました。はい、二人にはちゃんと言っておきます。ええ、わかりました、それでは失礼致します」
 携帯を切りテーブルの上に置くと社長は「はーっ」と大きく息を吐き、残っていたコップのビールを一気に呑み干した。
「藤堂さん、怒ってましたか?」
「いや、全然。
 撮影の日が決まったってよ。再来週の火曜日だ」
「場所はどこですか。
 天才が宣っていた清流ってどこですか」
「人無川って言ってな、すごい辺鄙なとこにあるらしい。
 集合の駅が・・・」
 社長が発した言葉に、出し巻を取ろうと伸ばした手が止まった。
「そこから、内地に向かって何とか言う温泉街を通り過ぎてさらに奥に行くらしい。
 ものすごい過疎が進んでいて、若い人どころか人自体が皆無だって」
「そ、そうですか」宙で止まった手を引っ込めたが、その後、社長が話す言葉は全く耳に入ってこなかった。
 定食屋を出ると社長に「間子ちゃんに伝えておいてくれ」と言われ「わかりました」と言って別れた後すぐに間子に電話を入れた。

 待ち合わせの居酒屋に約束の五分前に着くと、間子はすでにカウンターで、付きだしの玉子豆腐をウーロン茶片手につついていた。
「あの後、何してたんだ?」生ビールの泡を口に付け聞く。
「帰って、ずっと寝てました」
「そうか。
 いや、藤堂さんから社長に連絡があって、撮影の日が再来週の火曜日に決まった。
 場所は・・・」
 想像した通りの表情を間子はした。
「それ、私の実家のすぐ近くの川です」
「へーっ、そうなのか」とワザとらしく反応する。
「人はほとんどいません」
「社長もそう言ってたよ」
「コンビニなんかないですから、必要なものはこっちで揃えていかないとだめです」
「社長にそう言っておくよ」
「私もビール呑んでもいいですか?」
「ああ。呑もう呑もう、たまには」
 注文した生ビールをカウンターの向こうから受け取り間子に手渡すと、間子は乾杯もせずにぐびぐびとジョッキの約半分を空にした。
「どうしたんだよ、すごい呑みっぷりじゃないか」
「喉が渇いてたんです」
 その後、枝豆と軟骨のから揚げで間子は生ビールを三杯呑み干した。
 喋った言葉は「おかわり」「塩掛けていいですか」「おトイレ行ってきます」だけだった。
「やっぱり、嫌なのか?」
 枝豆をプチッと口に放り込みながら間子は首を縦に振る。
「全く泳げないのか?」
 プチっ。
「水に顔くらいは浸けられんだろ?」
 プチっプチっ。
「水そのものが恐いのか?」
 プチっ。
「そうか」
 そらそうだろう。九死に一生を得たんだから。
「よしっ、次行こう」
 急いで勘定を済ませると、店の前で流しのタクシーに二人で飛び乗った。

 平日であることと、まだ“ご利用時間”には少し早いこともあって、お目当ての部屋のタッチパネルは煌々と明かりを灯していた。
 しょぼいシティホテルのセミスゥィート並みの金額に一瞬戸惑ったが、赤いボタンを押し、タッチパネルの明かりを消した。
 部屋に入ると間子は「あっ」と短い声を発した。
 部屋の広さと、目の前に拡がる夜景と、バルコニーに鎮座するプール、に対する称賛の「あっ」だった。
 一か月ほど前、テレビのバラエティ番組に一度だけチョイ役で出演した女の子を“元タレント 淫らな一夜”と言う題名のDVDで売り出そうと藤堂さんが企画した話に巻き込まれ、撮影に立ち会った部屋だった。
「さっ、練習だ」言うと、あっという間に裸になる。
 間子は下着姿になってきょろきょろと部屋の中を見回していた。
「どうしたんだ?」
「バスローブはあるんですけど、水着が無くて・・・」
「バカかよ、お前。
 こんな所へ来る奴らがどうして二人で水着に着替えてプールに浸かるんだよ。
 裸に決まってるだろ、裸に」
 腹が千切れるのではと思うくらい笑った後、バルコニーに出る。
 夏の夜とはいえ風は冷たく、足を浸けたプールの水はさらに冷たかった。
 サウナの水風呂ほどではなかったが、体全体を浸けた時は、心臓が、ズン、と鳴った。
 プールと言っても、大して泳ぎが得意ではない自分でも、息継ぎせずに端から端まで泳ぎ切れる程度の大きさだった。
 水の冷たさを体が感じなくなってきた頃、間子がバルコニーに出てきた。
 恐る恐る足を水に浸け、一瞬、冷たさに驚いた表情を見せたが、すぐに、プールの縁をしっかりと掴むと、ゆっくりゆっくりと体を沈め、底に足が着くと、少しほっとした表情をこっちに向けた。
 月を浮かべた水面の向こうに間子の薄い茂みがゆらゆらと揺れている。
「よしっ、まず、顔を水に浸ける練習だ。
 最初は目を瞑っててもいいから」
 ウンと頷くと、間子はゆっくりと近づいてきて、両手を取る。
「安心しろ、絶対に離さないから」
 ウンともう一度、間子は頷く。
「じゃあいくぞっ、せいのーっ」
 間子はそーっと顔を水に浸けた。
 しかし、五秒も経たないうちに顔を水から上げ、繋いでいた両手を離すと、顔に付いた水を猛烈に拭いた。
「ははっ、お前、それじゃ、水から上がった犬と同じじゃないか」
 間子は無表情でこっちを見る。
「やっぱり恐いか?」
 ウンと頷く。
「少しずつ慣らしていけば顔なんかすぐに浸けられるようになるよ。
 よしっ、もう一度だっ」
 それから、十回試み、十一回目でやっと二十秒ほど顔を水に浸けることができた。
「なっ、簡単だろ。
 恐いっていう気持ちが強すぎるんだよ」
 当たり前だろ、何度も言うが、死にかけたんだ、生まれてすぐに。そんな記憶が簡単に無くなるわけがない。
「よしっ、次は潜水だ。
 頭の先まですっぽりと水の中に潜る。目は瞑っていてもいい」
 それは無理、と間子は首を横に振る。
「大丈夫だ。
 さっきみたいに、ちゃんと手を繋いで、俺も一緒に潜るから」
 考える時間を与えず、すぐに間子の両手を取ると「せいのーっ」と水に潜る。
 しかし、水に入る直前で間子は繋いでいた両手を離し、一人だけ水にドボンと潜ってしまうことになった。
 水面から顔を出すと、水を垂らす前髪の向こうに、今にも泣き出しそうな間子がいた。
「やっぱり無理か?」
 ウンと頷く間子。
「そうだな。
 そう簡単にはいかないよな。
 恐怖心を剥がすのはそう簡単なことじゃないよな。
 よしっ、社長には俺から言うよ。企画を変えてくれって。藤堂さんは怒るかもしれないけどしょうがないよ」
 もう一度ウンと頷くと間子は体を寄せてきて、両手を背中に回した。
 性器が間子のお腹に触れる。
 背中に回っている両手の力がだんだんと強くなり、間子は少し背伸びしたかと思うと、お腹に触れていた性器をツルリと自分の性器で飲み込んだ。
 と、どこからか、ゴーっという音が聞こえてきた。
 間子は激しく腰を振り、性器に体全体が吸い込まれそうになる。
 水の中で必死に足を踏ん張る。
 と、今度は、プールの水が突然泡立ち始めた。
 片方の足が床から剥がれる。
 性器は完全に間子の性器に飲み込まれ、腰と浮いた片足が持って行かれそうになる。
 間子が顔を向ける。
 血走って見開かれた目が、あの時、お父さんから聞いた、川の上流から流れてきた生まれたばかりの間子の死の恐怖に怯えた目を連想させる。
 いつの間にかプールには大きな渦が出来ていた。
 そして、踏ん張っていたもう片方の足が床を離れ、やがて、間子の性器に体全体がすっぽりと吸い込まれていった。

                11
“えーっ、どういうことだよっ”
 携帯の向こうから社長の大きな声が飛んできた。
「あの子には私が必要です。と言うか、私以外とは今回の水の中での撮影には応じないと思います」
“そ、そんなこと、お前、今更、藤堂さんに言えないよ。
 全部もう決まってんだから、それをこれから・・・“
「藤堂さんには私から言います。
 どうしてもダメだって言われたら、あの子は本当に姿を消しますよ。
 何度も言いますけど、そういう子なんですよ、あの子は」
“おいおい、脅すのかよ”
「脅しじゃないです、本当のことです」
“だけど、藤堂さんのことだ、ヘタすれば裁判だなんだって言いかねないぞ”
「だから、私の口から言います。あの子のことを一番わかっているのは私だということを強く言います。
 それでもわかってもらえない時は、社長っ」
“何だよ”
「よろしくお願いします」
“バカっ、うちなんか知っている通り超零細企業なんだぞ。訴えられてみろ、あっという間に吹き飛んじゃうよ”
「冗談です。背水の陣で藤堂さんになんとか分かってもらえるように訴えますよ」
“わかったよ、俺から言うよ。
 一応、藤堂さんとこのレーベルじゃあ、間子ちゃんは売れっ子だから、無下にダメだとは言わないと思うよ。
 そんなことより、あんた、面が割れても大丈夫なのかよ。
 藤堂さんのことだ、又きっと“何か”を出すぞ。
 三作目だからもうそれほどインパクトは無いだろうけど、多少はマスコミも噛んでくるだろう。その時に何かの拍子であんたの顔が表に出たら・・・“
「その時はその時です。
 もしそうなったら、娘にはさらに毛嫌いされるでしょうし、さすがに今度は妻も・・・」
“本当にいいのか?”
「ええ、もう覚悟はできています。
 前の会社を辞めた時点で私は終わっていたんです。
 この国はチャンスのない国だってことがよくわかりました」
“そうか、まあ、あんたがそこまで言うんならわかったよ。明日、藤堂さんに会って話すよ”
「私も一緒に行きます」

 応接室に通され暫くすると、藤堂さんが天才を連れて入ってきた。
「どしたの俊ちゃん、話はだいたい社長から聞いたけど、最近おかしいよ。
 急にキレたりさぁ、あっそうだ、俊ちゃんの年齢からすると、更年期障害じゃないか。すごく怒りっぽくなるっていうからさぁ」
「かもしれませんね」無表情で答える。
「で、藤堂さん、この件ですけど如何でしょうか?」社長が話を元に戻す。
「まあ、間子ちゃんがそう言ってるんならしょうがないけど、ただ、俊ちゃんはちゃんとできるの?大変だよAV男優ってのは。
 モノはそこそこのモノ持ってなきゃダメだし、持久力はいる。早漏なんかもってのほかだ。
 それに求められれば、いつでもどこでも起立して、発射しなければいけない。
『はいカット、三十分後にまたお願いします』って言われても対応しないといけないんだ。
 周りには撮影スタッフがたくさんいる。その中でちゃんとしたパフォーマンスが俊ちゃんに出来るのか?」
「それに」天才が間に入ってきた。「今回のコンセプトは何度も言いますけど、清らかな川で、こわいほど激しくまぐわる、です。美川さん、失礼ですけど、お一人でその激しさを間子ちゃんと表現できますか?」
「そうだよ俊ちゃん、天才の言う通りだよ。
 だから、こうしよう。
 設定は、俊ちゃんは間子ちゃんの上司だ。あとはこの間話した通り、間子ちゃんに思いを寄せていた男が、俊ちゃんともう一人の同僚が川に遊びに行っている間に、我慢できなくなり、天才の言葉を借りると、間子ちゃんとまぐわってしまう。そこへ戻ってきた俊ちゃんと同僚、そしてまぐわっていた二人が一つになって清らかな川の中で激しくまぐわう。
 これでいいだろ。俺たちも妥協したんだから俊ちゃんも妥協してくれよ」
「わかりました」と社長。「なっ、これでいいよな」
「だめです」
 自分以外の三人の目が同時に丸くなった。
「おい、お前」言いながら立ち上がろうとした社長を制し自ら立ち上がった。
「水の中では私と彼女だけです。他の人は必要ありません」
「おいっ、あんたっ」天才がとうとう本性を現した。「黙って聞いてりゃなめてんじゃねえぞっ」すごい剣幕で言葉を吐き、視線の高さを合わせてきた。
「私以外の男と彼女は川の中には絶対に入りません。どうしてもってなれば、彼女は撮影には来ません。そういう子です。私が一番わかっているんです、彼女のことは」
「やかましいっ! 藤堂さんがこれだけ譲歩してくださってるんだぞっ。調子こいて喋っているとしまいには・・・」
「しまいには何ですか?
 あまり無理を言うとこの話はなくなってしまいますよ」
 天才が右の拳を振り上げた時、藤堂さんが立ち上がった。
「俊ちゃん、わかったよ。じゃあ、こうしよう。
 かなり無理な設定だけど、俊ちゃんは小さな会社の社長だ。たった二人の社員、間子ちゃんと、間子ちゃんに気持ちを寄せている男の社員の三人で川へバーベキューに来る。
 お肉が焼けるまでの間、俊ちゃん、子供の頃に育った故郷の川を思い出すんだ。懐かしい。二人を置いて一人で川遊びに興じるんだ。少しでも平らな石を探す。サイドスローで投じられた石は川面を切るようにしてどこまでも突き進んでいく。
 もちろん間子ちゃんと男は激しくまぐわる。二人のことを思って買った高級肉は真っ黒焦げだ。
 気の済むまで石を投げた俊ちゃんは二人の元に戻る。
 二人は何食わぬ顔で酒を呑み、焼き直した高級肉をつまむ。
『いつも悪いなぁ、二人には無理ばかり言って、さあ、今日はどんどんやってよ』と俊ちゃんは二人を労う。川での石投げの話をしてみんなで盛り上がる。『あとでみんなで川に行きましょう』間子ちゃんの唯一の台詞だ。酒も入って宴たけなわの頃、俊ちゃんは『先に行っていい石を集めとくよ』と言って一人先に川に向かう。ここからがみそだ。残った男は酒が弱かった。間子ちゃんを前にして眠ってしまった。そして、間子ちゃんは恋多き女。俊ちゃんにも実は少し気があったんだ。俊ちゃんを追いかけて川へ向かう。俊ちゃんは石を集め終え、酔った勢いもあって川の中に入っていく。冷たくて気持ちいい。火照った体が清らかな川の水で包まれる。そこへ俊ちゃんを追って間子ちゃんが川の中を歩いてくる。どんぶらこどんぶらこと桃太郎のように。その桃太郎の桃尻を俊ちゃんは激しく突くんだ。
 お尻やってくれ。俺もここまで折れたんだ。なっ、これで手打ちだ」
 言うと藤堂は「俊ちゃん、もう時間がないから、しっかりと鍛えといてくれよ。間違ってもキャントエレクトだけはやめてくれよ。これ渡しておくよ」と続けて言って、二枚の名刺を差し出した。
「一枚はお尻専門の店だ。俺の名前を出せば全部タダだから。じゃあ、あと、よろしく」
 言うと藤堂は応接室を出ていった。
「と、いうことですので、よろしくお願いします」
 威圧的に言葉を吐いた天才も続いて出ていった。
「おい、えらいことになったな。大丈夫か?」
 社長の言葉は耳に入ってこなかった。ただ、このことを早く彼女に伝えなければ、そう思うだけだった。

                 12
「お、お前、なんだ、その髪はっ」
 思わず声を上げてしまった。
「美容院へ行ったんです」
「そんなことわかってるよ。どうしてそんなにしたのかを聞いてるんだ」
 彼女の髪は茶色、いや、ほとんど、金髪だった。
「お父さんにばれたらまずいと思って」
「ばれちゃまずいって、お前、それはわかるんだけど、もうDVDの題名も決まってるんだぞ。確か“元一流商社OL”という言葉がまだ残っていたはずだ。
 その髪じゃあ、“元ヤンキー”とか“元レディース”だよ。まあ、社長経由で藤堂さんには伝えておくけど。
 それより、ちゃんと水着は買ってきたのか?」
「はい」
 しかし、この「はい」は、ただ買ってきただけの「はい」で「ちゃんと」は含まれていなかった。
 先に着替えて待っていると彼女はひょこひょこと更衣室から出てきた。
 ほとんど、スクール水着、だった。
「その水着、どこで買ったんだ?」
「スポーツショップです。高校生以来です、水着なんか買ったのは」
 金髪の頭に、全く色気のないスクール水着。
 夏休みに入って、親に連れられて来ている子供たちが不思議な目で彼女を見る。
 そして、そんな彼女と、二回りは年の違うおっさんが手を繋いで平日の昼間に“流れるプール”に浸かり、泳ぐわけでもなく、ただただ歩いている姿を見て、やっと取れた有給休暇で子供たちを連れてきているお父様方は、羨ましさを全く含まない目を丸くさせた。
 藤堂さんが即興で語った脚本を言って聞かせた時、桃尻については何も言わなかった彼女が“川の中を歩く”だけにこだわった。
 本当に穏やかな川のようだよ、と言っても不安な表情が消えなかったので、急遽、今日ここにやって来た。
「なっ、大丈夫だろ。
 実際の深さはこんなに深くはないし、流れもせいぜいこんなもんだよ」
 十周ほど回るとプールから上がり、ビールを飲んだ。
「ただ水の中を歩いてるだけど結構疲れるよな」
 間子は頷き「お腹減りませんか」と聞いてきた。
「何か買ってこいよ」と一万円札を渡し「ビールをもう一つ買ってきてくれ」と頼んだ。
 どうしても周りの視線が気になるので、早く酔いたかった。
 暫くすると間子はビールの入った長い紙コップと、白い長方形の容器を手にして戻ってきた。
「なんだ、たこ焼きか?」
 聞くと間子は首を横に振り、容器の蓋を開けると、具がほとんど入っていない焼きそばが姿を現した。
「まだ撮影までは時間があるんだから慌てて食べなくてもいいぞ」
 間子は珍しく少しだけ微笑んだ。
「あの時のお前の慌てた顔は面白かったよな。
 そんなに焼きそばが好きなのか」
「はい。母はあまり料理が得意ではなかったんですけど、唯一、焼きそばだけは」
「そうか。
 そんなに好きならたまには自分で作ったりするのか」
「いえ。料理はほとんどしません」
「いつかは田舎に帰ってお父さんと暮らすんだろ。少しはやっとかないとまずいんじゃないのか」
「父はお酒ばかり呑んでほとんど食べないですから」
「だけど、お前は食べるだろ。
 それに、いつか結婚した時に、旦那さんとか子供のために作らないと・・・」
「その時はその時でまた考えます」
「そうか」言って紙コップを煽る。
「その紅ショウガくれないか。俺、紅ショウガには目がないんだ。お前の焼きそばと同じ。最後の晩餐には迷わずこれを選ぶよ」
 結局、もう一杯ビールを飲んでかなりいい気分になり、もう一度プールの生温い水に浸かった。
 赤ら顔のおっさんと、全く色気のないスクール水着を着た金髪の若い女が手を繋いで“流れるプール”を歩く姿に周りのみんなの視線を感じたが全く気にならなかった。
 酒の力は有り難い。
「この間やったやつ、もう一回やってみるか?」
「はい」と間子は頷いた。
「いくぞ」
 手を取ると間子は顔を水に浸けた。
 たった二、三秒だったが、浸けた顔を水から離すと「よっしゃー」とガッツポーズ。
 流れている人のことなど全く気にせず何度も繰り返す。
 気が付くと、周りには誰もいなくなり、陽もいつの間にか傾いていた。
「よしっ、最後にこの間出来なかった潜水をやろう。
 今日は絶対に手を離すなよ」
 言うやいなや、間子の手を取ると、無理やり水の中に彼女を引っ張り込んだ。
 初めはしかめっ面をして目を瞑っていたが、やがて間子は目を開け、鼻の穴から丸い泡を一つ浮き上がらせると、焼きそばを食べている時の、少し夢中で、そして、少し嬉しそうな表情をこっちに向けた。

「腹減ったよな」
 考えてみると、朝から胃に入った固形物は紅ショウガだけだった。
「メシでも食べて帰ろうか」と聞くと間子は「はい」と答えた。
 小学校のプールの授業の後のような体のだるさを感じながら店に入ると、時間がまだ少し早いせいか、客の姿はまばらだった。
「焼肉って珍しいですよね」
 間子の言う通りだった。
 元々、若いころから、あまり肉を食べたいと思うことがなく、ましてや年を取ってから酒を呑むのに焼肉屋へ行くという選択肢が脳みそに組み込まれていなかった。
「お待ち」
 カウンターの向こうから生ビールが二つ出てきた。
 焼肉屋といっても、席はカウンター席だけで、ガスのロースターでリーズナブルなお肉を焼いて食べる、ほとんが一人客の店だった。
「久しぶりに長い間水に浸かって疲れたし、それに、来る日に備えて精力を蓄えとかなくちゃいけないからな。
値段の割には美味いから、どんどん頼めよ」
と言ったものの、いざ、ロースターの上で肉がジュウジュウと音を立て始めると、箸が進まず、結局、いつもの通り、キムチともやしナムルをあてに生ビールを呑んだ。
「美味しいです」間子が嬉しそうに言う。
「そうだろ、いっぱい食えよ。焼きそばだけじゃ体がもたないぞ。まだ若いんだから。食べたいのがあればどんどん注文しろ」と言って生ビールを注文するために店員を呼ぶと「ホルモン、注文していいですか?」と間子が聞いてきた。
「いいよいいよ。どんどん食えよ」
「さっきからあまり食べてないですけど、何か一緒に注文しましょうか」
「俺はいいよ。
 やっぱり俺は菜食主義者だよ。肉より野菜がいい。それに、動物愛護協会の会員でもあるからな
「本当ですか?」珍しく間子が目を丸くする。
「嘘に決まってるだろ。俺のことは気にしないでたくさん食え」
 やって来た店員に間子はこれまで聞いたことのない肉なのか何なのかわからないものを注文した。
 そして、暫くすると、これまで見たことのない、やはり肉なのか何なのかわからないものが皿に盛られてカウンターの向こうから出てきた。
「よく子供の頃に食べたんです。
 すごい田舎ですから、あまりお肉なんかもなくて、生活も楽でなかったですから。
 あまり食べない父もこれだけはいつも美味しそうにつまんでお酒を呑んでいました。
 プールの時に言いましたけど、母はあまり料理が得意じゃないので、焼くだけですみますから」
「そうか。まあ、食い物って、色々と人の思いが詰まっているからな」
「その父から、この間、手紙が来たんです」
「へえー、そうなのか」
「たぶん、酔っぱらっていたのと、利き腕を落としてしまったんで、何を書いているのかあまりわからなかったんですけど」
「右腕だったよな」
「そうです」
「で、何て書いてあったんだ?」
「前に頂いたDVD、すごく良かったって」
「ああ、あの『熟女大全集』か?」
「そうです。
 久しぶりに、良かったって」
「久しぶりに・・か・・」
 畳の上に積もったごみの中で埋もれていた『熟女大全集』を思い浮かべた。
「他には何て?」
「やっぱり、寂しいみたいです。早く帰って来て欲しいって」
「そうか」
 生ビールに飽きたのでマッコリを注文する。
「私も同じものもらっていいですか?」
 間子はずっとウーロン茶を飲んでいた。
「ああ」
 すぐに陶器のグラスに入ったマッコリが二つ、カウンターの向こうからやってきた。
「あっ、美味しいです」ひとくち口を付け、間子が言った。
「油っこいものと結構合うだろ」
 ウン、と浅く頷いた間子が「あのぅ」と小さな声を出した。
「何だよ?」
「私、今回の作品でこの仕事、やめようと思っているんです」
「そうか」言ってマッコリを舐める。
「やめてどうするんだ。
 お父さんと暮らすのか?」
「はい」
「働くあてはあるのか?」
「まだ考えていません」
「そうか。
 いや、実は、俺もやめようと思っているんだ。
 お前には悪いんだけど、こんな仕事、何もこの俺がしなくてもいいと思うんだ。藤堂のような頭の狂ったやつにやらせておけばいいと思うんだ」
「やめてどうするんですか?」
「お前と同じだ。まだ考えていません、だ。
 まあ、この齢だから、もう転職は無理だろうから、何かろくでもない、今の業種以外の仕事を探すよ。いよいよ、嫁さんにも見限られるんだろうなぁ。
 よしっ、今日は呑もうっ」
 マッコリを三杯ずつ呑むと珍しく間子の顔が赤くなった。
「そろそろ行こうか。
 さっきのことは社長に言っとくよ。
 遅くまで悪かったな」
「いえ。
 練習に付き合ってくれて有難うございました。
 それより、あの練習はいいですか?」
「あれって?」
「おしりです」
 間子より顔が赤くなる。
「ばかっ、そんなのいいよ」
 店を出て、流しのタクシーを拾って間子を帰らせ、暫く夏の生温い夜風にあたって歩いていると携帯が震えた。
 妻からのメールだった。
“相談したいことがあるので”
 返信の代わりに、財布の中から藤堂さんにもらった名刺を取り出し、書かれた住所を確認すると、客待ちしているタクシーの扉を叩いた。

                  13
 一年ぶりに見る光景だった。
 新幹線を降り、駅を出ると、目の前にバスターミナルが現れた。
 スタッフ達はすでに到着していて、夏の盛りなのに肌寒い気候に、手を擦ったり、コンビニで買ってきた温かいコーヒーを口にしていた。
「あっ、間子さん、イメチェン」スタッフの一人が声を上げた。
 間子は少し照れた表情をして少しだけ頷く。
「どうしたんですか、何かあったんですか」別のスタッフが聞く。
「当たり前だよ」社長が間子の代わりに口を開く。
「女が髪をさわる時は、何かの決意の表れだからな」
 社長には、彼女が今回の撮影を最後にやめようと思っていることは、まだ、伝えていなかった。
「だから、きょうの間子ちゃんはすごいかもしれないぞ」
 スタッフのみんなが興奮して歓声を上げる。
「あと、まだ来ていない奴いるのか?」社長が聞く。
「天才です」スタッフの一人が答える。
「ああ、あいつな。
 来たってしょうがないんだけど、藤堂さんに『俺の代理として』と言われたから断れなかったんだよ」
 言っていると天才がやって来た。
 ベンツの黒塗りEタイプワゴンから降りると「お待たせしました、今日はよろしくお願いします」とスキンヘッドを下げた。
「いえいえ、こちらこそよろしくお願い致します。みんなで力を合わせていい作品を作りますので。
 まだ、ここから二時間ほど掛かります。我々が先導しますので気を付けてついてきてください」
 社長の社交辞令に天才はもう一度「よろしくお願いします」と言ってもう一度スキンヘッドを下げた。
 スタッフが乗ってきていたかなりくたびれたバンに乗り込み、駅を発つ。
 一年前に電車で走った在来線に沿ってバンは進み、三十分ほどで、電車を降りバスに乗り換えた温泉街のある駅を通り過ぎた。
 ここからまだ一時間半ほど。目的の、清らかな川、は、間子のお父さんが暮らす家のまだ先のようだ。
 温泉街のある駅を過ぎたころから、間子は窓の外にやっていた視線を、バンの床に移した。
 自分が育った街にAV嬢として凱旋したことに恥ずかしさを覚えているのか、それとも本気で父親に顔が見られるとまずいと思って顔を伏せているのか。
 終点のバス停を通過する。
 相変わらず、人の気配は全くない。
 たった一年のうちにさらに過疎が進んだようで、雪ではないが、何か白い霞のようなものが目に見える景色すべてに降り注がれていた。
 道がどんどん細くなり、バンの揺れもひどくなる。
「社長、マジで熊でも出てくるんじゃないですか」スタッフの一人が声を上げる。
「大丈夫だ。
 そんな時の為にあの天才を呼んでいるんだ。単に藤堂さんのお願いを鵜呑みにしたんじゃないんだ」
「それ、どういう意味ですか」同じスタッフが聞く。
「見ればわかるだろう。
 あの風貌、どう見たって堅気じゃないだろう。
 藤堂さんには絶対に言うなって言われてるけどお前たちには言ってやるよ。よそに行って絶対に言うんじゃないぞ」
 皆一斉にコクリと頷く。
「あいつ、若い時、まだ未成年の時だ。一人、殺っているんだ。いわゆる鉄砲玉ってやつだ。
 藤堂さん、あの人も見ればわかるだろうけど、堅気じゃない。あの人が懇意にしていたあっちの世界の人が、ある同じ世界の奴に殺られた。その仇を藤堂さんは天才に依頼した。だから、藤堂さんは天才の面倒を見ているんだ。
 ピストルの一つや二つ、当たり前のようにして持っているよ。なんなら、散弾銃くらい持っていてもおかしくないだろうな。ひょっとしたらダイナマイト、いや、プラスチック爆弾も持っているかもなぁ・・・」
 バンの中の空気が固まった。
「だから、もし熊が出たり見かけたりしたらすぐに天才に言うんだ」
「わかりました」スタッフが口を揃えて言った。
「ただ、一つだけ問題があるんだ」社長が少し困ったような、笑ったような顔をして言った。
「何なんですか問題って」とぼけた顔をしてスタッフの代わりに聞く。
「天才、動物が苦手なんだよ。人間以外の生き物を触ることができないんだ」
 暫くの沈黙の後、スタッフの一人が小さな声で社長に聞いた。
「社長、今の話、全部作り話ですよね?」
「ああ」
 社長の一言で、安堵のため息と、続いて、笑いの渦がバンの中を占拠した。
「やめてくださいよ社長、それに美川さんまでとぼけた顔をして、もう勘弁してくださいよ」
「ばーか、よく考えてみろ、そんなことありえるわけないだろっ。
 藤堂さんが世話になった人のドラ息子というかバカ息子で、それは見たまんまだ。つまらない大学を出たのはいいけど、就職先が見つからず困っていたところ、相談を受けて面倒を見ているだけだ」
「なんだ、そうなんですか」スタッフの一人が言った。
「だけど、一つだけ本当の話があるんだ。あいつ、マジで動物が苦手なんだよ。ある時、藤堂さんのタワーマンションに呼ばれて三人ですき焼きを食っているときに何か足元に気配を感じたんだ。見てみると藤堂さんがかわいがっているシャムネコがしっぽをおっ立てて優雅に歩いていたんだ。あいつ、そのシャムネコを見た途端、肉を口にくわえたまま卒倒したんだよ」
 バンの中の固まった空気はあっという間に粉々に砕けた。
 ただ一人、間子だけはずっと床を見続けていた。

 目的地にやっと着いた。
 生い茂る草と葉の向こうに川が見える。
「よくこんなところ見つけましたよね」社長に言う。
「ああ。
 そういう点ではあいつはある意味“天才”だよ」社長は無精ひげを撫でながら言った。
 スタッフが撮影機材をバンから降ろしている間に、社長と間子と三人で川原に出る。
“清らか”という表現がピッタリとあてはまる川だった。
 流れは緩く、というか、ほとんど止まっているように見えた。
 もちろん周りに人影などなく、トンビが一羽空を舞っているだけだった。
 川の水に手を浸す。
 冷たいっ、と思った瞬間に横で社長が「うわっ」と声を上げた。
「こいつは無理だよ。
 ウエットスーツかなんか着ないと死んじゃうぞ」
 横に並んで水に手を浸けていた間子も「本当ですよね」と言って川から手を抜いた。
「間子ちゃんは若いから命の危険はないけど、お前はやばいぞ。
 撮影隊に言ってワンカットを短くしてもらって、編集でうまく繋げてもらった方がいいぞ」
 社長の言葉に「いえ、大丈夫です。すぐに終わりますから」とくだらない冗談を返した時、スタッフ達と天才が川原にやって来た。
「水がシャレにならないくらい冷たいぞ」
 社長が言うと、スタッフの一人が川辺に走り、水に手を浸けた。
「うわっ、本当だ。これはキツイっすよ」
「そうだろ。
 おい、たき火の準備だ。木を集めてこい。あと、ワセリンを持っているやついないか。体に塗ると体温の低下を抑えられるんだ」
「社長、木って言ったって川原だからそんなに落ちてませんし、それに湿気ってますから火を起こすのは結構大変だと思うんですよ。
 あと、ワセリンなんて、ボクサーじゃないんですから誰も持っていないと思うんです。なあ、そうだろ」
 スタッフの全員が申し訳なさそうに首を縦に振る。
「大丈夫ですよ」
 天才だった。
「スタッフの方が言う通り、この辺りの木を拾ってたき火をするのは難しいというか、おそらく無理でしょう。
 車の中に、キャンプファイヤー用の薪と着火剤があります。それにワセリンもありますので取ってきます。少し待っていてください」
 言うと天才は車の方へ戻って行った。
「おい、お前ら、俺がバンの中で言ったことはまんざら嘘でもないだろ。
 キャンプファイヤー用とか言ってるけど、本当は何かの証拠を焼き消すために常時持っているかもしれない。何かってのは、お前達がそれぞれ想像してくれ。それに、ワセリンを持っているのはもっと怪しいぞ。一体何に使うんだろうなぁ。
 まあ、そんなことはどうでもいいから、陽の高いうちに早くやっつけてしまおう。陽が暮れてきたら俺たちまで天才のワセリンのお世話になってしまうぞ」
 スタッフが散らばり一斉に撮影の準備に取り掛かる。
「お前、本当に大丈夫か?」
 社長がいつにもなく神妙な顔つきで聞いてくる。
「大丈夫です。
 心配なのは水が冷たすぎて、あっちが縮こまらないかだけです」
「まあ、そんなんで済めばいいんだけど、万が一、心臓発作でも起こして死なれてみろ、うちの入っている保険なんか微々たるものだから奥さんに訴えられても全部は払えないよ」
「そんなことはしませんよ、うちの嫁は。
 なんなら一筆書きましょうか。万が一のことがあっても全ての責は私にあるって」
「ああ、マジでお願いするよ」
 言った社長が苦笑いを収めようとした時「すいませーん」と唯一の女性スタッフがやって来た。
「間子さん、そろそろメイクの方、お願いしまーす」
 ハイ、と首を縦に振ると間子は小さく二人にバイバイをして女性スタッフと止めてあるバンに向かって歩いて行った。
「社長ねえ」去っていく間子を視界の隅に入れて言う。
「なんだよ。神妙な顔して」
「あの子、今回の作品で辞めますって」
「えっ、本当かよ」驚いた顔を社長が向ける。
「ええ」
「辞めてどうするんだ。悪いけどあの愛想の無さと美貌では芸能界への転身は無理だぞ」
「田舎に帰って、父親と暮らすそうです」
「そうなのか。
 でも、どうして、また?」
「私にもわかりません。未だにあの子が何を考えているのかわかりません」
「藤堂さんには言っておいた方がいいか?」
「いえ、よしたほうがいいでしょ」
「だろうなぁ。あの人のことだ。最後の作品だとわかると何をしでかすかわからない。本当に今度こそ、天才の奴、殺されるかもしれないぞ。体中に鰹節を塗りたくられ、柱に縛られ、シャムネコに嘗め尽くされてな」
「お待たせしました」
 その天才がやって来た。
 両手で大きな鉄のバケツを持ち、そのバケツの中には薪が山盛り入っていた。
「すぐに作りますから」
 天才は手際よくバケツの中に木を組むと、着火剤を放り込み、火のついたタバコを放り込むと、あっという間にたき火が完成した。
「見事なものですよねぇ」社長が感心して言う。
「よく行くんですよ、バーベキューとかキャンプファイヤーに」天才が少し表情を崩して言う。
「お子さんとですか?」
「いえ、私まだチョンガーなんです。早く結婚したいんですけど、何せこのナリなんで、なかなか彼女が出来なくて」
「そうですか」社長が薄い笑みを浮かべて言う。
「すいません、ちょっと電話掛けてきますので。火が弱くなったら薪をくべてください」
 言うと天才は、又、車の方に戻って行った。
「意外といい奴じゃないか」
「そうですね。人は見た目で判断しちゃだめだってことですね」
「そういうことだな」
「社長、スタンバイできました」スタッフの一人が声を上げながらやって来た。
「おぅ、行くよ。
 あんたどうする?」
 社長に聞かれたが「いえ、ここで石でも投げています」と言って断った。
「そうか、まあ、出番まではまだ時間があるからな」
 言うと社長はスタッフと、いつの間にか出来上がっていた運動会でよく見かける大きなテントの方へ向かって歩いて行った。
 最初のシーンの撮影がこれから始まる。
 テントの下には大きな網が乗ったバーベキューセットと、簡易テーブル、そして、華奢な背もたれの付いた折り畳み式の丸椅子が四脚、テーブルの周りを囲んでいた。
 メイクを終えた間子が、スタッフと何かを話し合っている。
 隣には、長身で茶色い髪をした、胸板の厚い男が立っていた。
 相手だろう。
 それらの光景に背を向けると、足元の石を拾い、サイドスローで思い切り清らかな川に向かって腕を振る。
 撮影が始まったのだろう、 いつもみんなから「監督さん」と呼ばれている男性の「ハイっ、スタートっ」と言う声がして、続いてカチンコの音がする。
 足元の石を掻き集め、投げ続ける。
 たまに男なのか女なのかわからない声がテントの方向から聞こえてくる。
 空にはさっきのトンビが人を馬鹿にするかのように輪を描いている。
「美川さん」男の声が背後からした。
 振り向くと、小さなハンディタイプのビデオカメラを手にした若い男性がいた。
「先に川原で石を投げているシーンを撮らせて頂けますか」
「あっ、はい」
 もちろん“俳優”の経験などない。
「じゃあ、自然な感じで川に向かって投げて頂けますか」
 川原で“自然な感じ”で石を投げる“自然な感じ”とは、一体どんな“感じ”なのかわからなかったが、とりあえず足元の石を拾い、投げた。
「美川さん、すいません、もう少し表情を柔らかく・・・」
 知らないうちに顔が強張っていたみたいだ。
 テントの方から又声が聞こえてきた。
 今度は間違いなく女性の声、紛れもない、間子の声だった。
 見ると、胸板の厚い男が簡易テーブルに間子に手をつかせ背後から体を揺すっていた。
「美川さん、じゃあ、もう一度お願いします」
 結局、五回目の撮影でやっとオーケーが出た。
「お疲れさまでした」若い男性は少し苦笑いを浮かべてテントの方へ戻って行った。
その後姿の向こうに間子が見える。
胸板の厚い男の前で膝間づき、頭を激しく動かしている。
踵を返すと、うおっ、と、低く重い声を発して川に飛び込んだ。

「俊ちゃん、一体どうしたんだよ」
 天才が作ったたき火の前でずぶ濡れの体を乾かしていると社長がやって来て聞いた。
「いや、どれだけ冷たいか試してやろうと思って」
「それはいいんだけど、まだ、食事のシーンも撮らないといけないんだから」
「すいません」
 頭を垂れると、大きなバスタオルを五、六枚わきに抱えたスタッフを連れて監督さんがやって来た。
「とりあえず、頭だけでも乾かして、あと、服だけど、おいっ、誰か、美川さんと同じくらいの体型のやつ、服を貸してくれっ」
 スタッフに濡れた体をバスタオルで拭いてもらっていると一人の若いスタッフがやって来て「Tシャツとジーンズですけどいいですか」と監督に聞いた。
「もうちょっといいもの着ろよ、まっ、いいか、もう時間もないし」
 その若いスタッフはあっという間に下着姿になった。
「申し訳ない」
 サイズが少し小さかったが何とか着ると「じゃあ次のシーン行きましょう」と監督に連れられテントに向かう。
 テントの中は人の熱気のせいか、川原よりは少しだけ温かかった。
 間子は、フードのついたロングのダウンジャケットを着せてもらい、華奢な背もたれがついた丸椅子に座ってじっと虚空を見つめていた。
「じゃあ、食事のシーンいきまーす」
 監督の声で、スタッフは自分の持ち場へと散らばる。
 気が付かなかったが、簡易テーブルの脇ではバーベキューセットに乗せられた網の上で本当にお肉が焼かれていた。
 向かいに胸板の厚い男と間子が並んで座る。
 間子は決して視線を合わせようとしない。
「スタートっ」
 監督さんの声で、テーブルの上の紙皿に盛られたソーセージやサラダに手を伸ばす。ビールは本物のようだ。手に取り喉に流し込む。朝から何も食べていない胃にじわーっと染み込んでいく。隣で焼かれている肉のいい匂いを感じる。
「はい、カット」監督さんの声で手を止める。
「じゃあ、次は会話のシーンです。食事しながら自然な感じでお話をしてください。内容はアドリブで結構です」
「アドリブですか?」
「俊ちゃんさぁ」社長だった。「あんた、この二人が勤める会社の社長っていう設定だからさ、藤堂さんの会話の中にもあったように、普段の仕事を労う言葉を二人に適当に掛けてあげればいいんだよ。こう言っちゃなんだけど、こんなシーン、どうでもいいんだよ。このDVDを買う奴らはこの次のシーンに興味があるんだから、本当に適当でいいんだ」
 再び撮影が始まった。
 抑揚のない台詞を吐き、ビールに手を伸ばし、三人で、ハハハと笑う。
 間子は決して視線を合わさず、胸板の厚い男の目ばかり見て、たまに、テーブルの上の料理に手を伸ばす。
「はい、カット」監督の声。
「美川さん、表情がちょっと固いなぁ。かわいい部下を連れてバーベキューに来た。いつも無理ばかり言って悪いな、今日はゆっくり楽しんでいってくれ、そういう設定の表情じゃないんですよ」
「おい監督、それを俊ちゃんに要求するのは
酷だよ。素人なんだから、多めに見てあげて
よ」
「わかりました」
しょうがないなぁといった表情で監督が言
うと撮影が再開する。
 言葉を吐くが自分の口から発せられた言葉
という感覚がない。ビールに手を伸ばす。 
間子が、スタッフの指示からか、たまに胸
板の厚い男にしなだれるしぐさを見せる。
 ビールに手を伸ばす頻度がどんどん増えて
いく。言葉がもうほとんど出なくなった。
テーブルの上にウィスキーのボトルを見つ
ける。
「さっ、今日は呑もう呑もう」
 初めてアドリブが出た。
 ドボドボと新しい紙コップに注ぐと一気に喉に流し込む。
「お前も呑めよ」立ち上がって胸板の厚い男の肩を叩き、自分が呑んでいた紙コップを差し出した。

「いくらなんでも呑みすぎだよ」社長に肩を叩かれる。
「だけど、そういう設定でしょ」
「そらそうだけど、顔が赤いじゃねぇか。ちょっとメイクさんに顔塗ってもらえよ」
「わかりました」と言ってメイクさんの女性を探していると監督さんがやって来た。
「やあぁ、美川さん、良かったですよ、あの酒の呑み方、すごくリアルでよかったです」
 ねっ、と言う顔を社長に向けると「さっ、最後のシーン行こう、時間がないぞっ」と少し苦笑いを浮かべて社長は声を上げた。
 メイクさんに顔の赤さを消してもらいながら、若い男性のスタッフにワセリンを体全体に塗ってもらう。
 陽はまだ高かったが、空気は間違いなく冷たくなってきていた。
「スタンバイできましたっ」スタッフの声が響く。
「あまり無理するなよ」声を掛けてくれた社長と川辺に向かって歩く。
「社長」
「何だよ」
「私、今回の撮影で辞めようと思っているんです」
「アイドルとマネージャーの愛の逃避行か?」
「いえ、そんなんじゃないんですけど」
「わかったよ。
 デビュー作が引退作か。何かの映画に出来そうだな。演技が上手いって監督が褒めてたじゃないか。真剣に俳優でも目指せよ」
「いえいえ、そんなの無理なのわかっています。わがままを言って申し訳ありません。せっかく拾って頂いたのに」
「そんなこと気にすることないよ。それぞれ人生があるんだから。
最後の花道、パッと飾ってくれよ、期待してるぜ」
 撮影が始まる。
 水の中に入ると酔いが一気に飛んでいった。
 社長が言っていたワセリンの効果を疑う。
 体の震えが止まらない。
「間子さん入りまーす」
 事前に情報が入っていたのか、二人のスタッフに手を取ってもらいながらゆっくりと川に入ってくる。
 相変わらず、顔に表情は無い。
「じゃあ、行きまーす、スタートっ」
 カチンコの音が、透き通ってまぎれの全くない青い空に向かって響く。
 間子がこっちに向かってゆっくりと歩いてくる。
 川の流れが思ったより早いというか重い。
 見た目には止まっているようだったが、少し踏ん張らないと、体が持って行かれそうになる。
 間子の体が左右に揺れる。
 あと十メートル、あと五メートル。
 がっちりと間子の体を受け止める。
 目が、お父さんの話に出てきた、川の中を流されてきた生まれたばかりの赤子が必死に生きようとする目、になっていた。
 唇を合わせる。
 これまで何度も体を合わせてきたが、こんなに厚く唇を合わせたのは初めてだった。
 激しく抱き合い、一度だけ彼女の唇にペニスが吸い込まれた。
 体の震えはいつの間にか止まり、体全体に血が滾る。
 いよいよ間子のお尻に手を添える。
 水の冷たさから、彼女のアナルにはたくさんの皺が放射線状に作られていた。
 お尻に添えた手に力を入れ、腰を前に突き動かそうとした時、誰かが後ろから体を掴んだ。
 そんなわけはない。
 もう一度同じ動作を繰り返す。
 しかし、誰かが体を・・と思った時「ギャーッ」と川辺から声が上がった。
「霊だっ!」
「わっ、なんだっ、あれっ!」
 スタッフがパニックになっている。
 中には自分の持ち場を離れ、走って逃げ出すものまでいる。
 訳が分からず、とりあえず視線を戻し、もう一度、間子のお尻に添えた手に力を入れ腰を前に突き出したとき、左の腰に人の腕が絡みついた。
 青い血管がその腕に浮き上がっているのがはっきりと見える。
 川辺ではスタッフ達が狂った声を上げて走り回っている。
 絡みついた腕を振りほどこうと、その青い血管が浮き上がった腕を掴もうとした時、ぬーっと、人の顔が右腕の脇から現れた。
 間子の、お父さんだった。
「やめでぐれ」と言った声が聞こえたかと思うと、あるはずのないお父さんの右腕にペニスを掴まれ、やがて、清らかな川面に白い放物線を描いた。

                    14
 間子の最後の作品は爆発的に売れた。
 ゴールデンタイムのバラエティ番組にも何度か取り上げられ、レーベルの代表者として藤堂さんも時の人となった。
 一度だけ作品を見たが、確かに人のようなものが腰に纏わりつくようにして映っていた。
 しかし、顔までは、彼女のお父さんかどうかはわからなかった。
 ペニスを掴まれたことは、川辺から見て川は右から左に流れ、下流に向かって間子と体を合わせていたのを川辺から一台のカメラだけで撮っていたので、あるはずがないお父さんの右腕は重なろうとする二人の体がブラインドとなり、編集の段階ででも誰一人気づいた者はいなかった。
 間子と一緒にこの業界から去ることを社長が藤堂さんに告げた時『何とかならないのか』と藤堂さんは法外な契約金を提示してきたが、社長がなんとか断ってくれた。そして、藤堂さんは最後に『あの二人に餞別だ』と言って一万円札の束を数束、社長に渡した。
 その札束を持って駅で間子を待っていると彼女がやって来た。
 髪の色が黒色に戻っている。
「なんだ、戻したのか?」
「はい、もう父にばれることを心配する必要がなくなったので」
「そうか。
 あっ、これ電車の中で食えよ」
 駅弁とペットボトルのお茶が入ったレジ袋を渡す。
「あと、これは、藤堂さんからの餞別だ。すごく、おっさん残念がってたらしいよ、社長が言っていた」
 渡した小さな紙袋の中を覗くと、間子は「えっ」と少し驚いた顔をした。
「こんなの頂いていいんですか。今度はたくさんもらいましたから」
 確かに爆発的にDVDが売れたおかげで、間子の取り分は、これまでの、おそらく数倍にはなっていた。
「いいよ。せっかくあの藤堂さんがくれたんだから遠慮せずもらっておけよ。
 どうせ、あんな田舎じゃあ働くとこなんかなかなか見つからないだろうから、それまでの蓄えにしておけよ」
「そうですか、じゃあ」と言って間子は紙袋を受け取った。
「そろそろ行こうか。時間がもうあまりないぞ」
 平日の昼間のせいか、北に向かう新幹線のホームは閑散としていた。
「元気でな。
体に気をつけて、お父さんと仲良く暮らしてくれ」
「ありがとうございます」表情を変えずに間子が言った。
「おい、一つお願いがあるんだけど、聞いてくれるか?」
「何ですか、お願いって?」
「一緒に行っちゃダメか。
 俺、嫁に捨てられちゃって」
 間子と流れるプールに行った後の妻からのメールはやはり離婚を匂わせるものだった。
 そして、今回の件で、妻のママ友が、噂のDVDをたまたま目にする機会があり、その時「あっ、この人まさか・・・」となり、あっという間に妻の耳に入って、離婚届に印鑑を押されてしまった。
 マンションは慰謝料の代わりに妻に譲った。
 最後の夜、娘に「最低」と言われたのだけが、辛かった。
「無理です」
最後まで間子は冷静な女の子だった。
「そらそうだよな、こんなおっさんが一緒に行ったら足手まといになるのは目に見えてるもんな」
 出発を知らせるベルが鳴る。
「あのう、これ」と間子がデパートの包装紙に包まれた薄い四角い箱をくれた。
「なんだ、また、おこめ券か」
「違います。
 Yシャツの仕立券です。
 就活しないといけないと思って。
 ただ、婚活もしないといけなくなったから、ちょうど良かったです」
「はは、大きなお世話だ」言って間子の頭にやさしく拳を落とす。
「楽しかったよ。本当に」
 間子が新幹線に乗り込むと、待ちわびていたかのように扉はすぐに二人の間に線を引いた。
 小さく手を振る間子。
 初めて見た、いたずらそうな笑顔だった。

                    了

熟女大全集(後)

執筆の狙い

作者 フレディ
49.250.194.40

7/22に投稿した前編の続きです。よろしければ前編含めお読みください。

コメント

アフリカ
49.106.202.115

拝読しました

なんだか少しだけ残念です

フレディさんが書きたいこと?伝えたいことがどんなことなのか理解出来なくなってしまいました。

前回で、求めても与えられないとか
与えても理解されないとか、そんな雰囲気を勝手に感じていたのですが

今回、それが、AVの内容を書きたかっただけのかな?なんてなんだかそんな風に感じてしまいました。

勝手に思うのですが、今回、書く側の瞑想があったのではないかと感じました。
そう思うと、台詞中心の書き方も、描写が極小のあり方も疑問が湧いてきて、ごめんなさい

今回はあまり
わくわく出来ませんでした。

ありがとうございました

フレディ
49.250.194.40

アフリカ さん

ありがとうございます。おっしゃる通り、無理やりオチをつくった感はぬぐえません。
元の方がよかったかなと自分でも思っていました。
難しいですよね。小説を書くということは。
だいたい、付け足し、の”足し”というものはいい結果を招きません。
私、競馬が趣味なのですが、これで行こう、と買った馬券に買い”足し”するとまあ、
来ないです。自分が初めに考えたストーリーでいいんでしょうね。
ちなみに短編が書けないので長編ばかり書いています。
また投稿しますので、忌憚なきご意見をお願いします。

瀬尾 りん
110.54.112.89

前編後編と読ませていただきました。うーん、後半が…オチが……!残念です!!でもどうやったらしっくりくるのか?と言われたら、私の作る世界と違いすぎるので思いつきません汗
あと一番言いたいのが、タイトルが勿体なさすぎます。
このタイトルだと読者を選んでしまうと思います。あんまり本編ではそのビデオが生かされてない気がするし…
キャラは主人公以外ぶっ飛んでるし、まこちゃんとかほんと頭のネジ何本抜けてるの?と読んでてハラハラするぐらいなんですけど私は好きです。
鰹節塗りたくられて、シャム猫に舐め回されて死亡というパワーワードにやられました。
面白い作品をありがとうございました!

フレディ
49.250.194.40

瀬尾 りん 様

拙作をお読み頂き誠にありがとうございます。
ほんまにオチは難しいですよね。私ら大阪人は特にオチには敏感なんで余計に力が入ります。
やっぱり無理くり落とすのはよくないんでしょうね。自然体で。この作品も普段非常に筆が遅いにも
かかわらず、珍しくすらすらと書けたことを思い出しました。
ある方には立派な純文学だと評され、ある方には純文学ではない、ファンタジーだと評され。
それでオチを書き変えた次第です。川の中でのAFのどこがファンタジーなんかはわかりませんけど(笑)
また、長いやつを投稿しますのでよければお読みくださいませ。

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