作家でごはん!鍛練場
瀬尾 りん

夏の終わりに

 恒例の花火大会は、今年も無事に開催されたようだった。
 あたしはカーテンを閉め切った存分に空調が効いている部屋の中で、その音を忌々しく思いながら聞いている。テレビの音量を上げてみても、約一キロ先で上がる花火の衝撃音を消せるはずもなかった。こんな時ばかりは、河川敷の真下付近に住んでいるのが嫌になる。去年までは便利で大好きな場所だったのに。
「アイスでも食べよ……」
 小さな独り言は画面から聞こえる芸人の笑い声にかき消された。


 花火大会が、好きだった。七年付き合って結婚秒読み、とまで言われた男と去年までは一緒に見ていた。田舎の無駄に広いあたしの家に車を置いて、約一キロ先の会場までてくてくと、一緒に歩いて。あの時の湿気を含んだ風の匂いと、会場が近づくにつれて感じる人々の熱気が好きだった。あたしたちはお互いにズボラだったから、レジャーシートなんて持って行ったことがなく、コンビニで買うつまみとお酒が入っていたビニール袋をいつもお尻に敷いていた。もちろん面積が小さいから、はみ出たお尻にチクチクとした草の感触があった。
 それが今や、あたしは柔らかいベッドの上でアイスを食べている。とても快適なのに心はこの上なく、不便だった。あの座り心地の悪い草の上に、今でも帰りたいと思う。
 今日は花火を見るために従姉妹家族が来ていた。一緒に見に行こうと誘われたけど、あたしは断ってしまった。気を遣ってかそれ以上は誘ってこなかった彼らは、一時前に体中に虫よけスプレーをふりかけ出かけて行った。おそらく家に近い河川敷で見ているのだろう。会場近くまで行かなくても、花火は楽しめる。
 そこまで考えて、あたしはそっとカーテンを開けて外の様子を覗いてみた。隣の家越しに半分だけ、大きな花火が見えた。急いでカーテンを閉める。
 面白くもなんともないテレビを消して、ベッドに転がる。時間を確認したら花火は始まってまだ五分だった。あと一時間二十五分も、このドンドンと家まで震わす音を聞かないといけないのかと気が重くなった。
 とりあえずSNSでも確認しようかとスマホを手に取った瞬間、ラインが来た。誰かと思ったら友達のヨミちゃんだった。

『今、ひま?』

 ヨミちゃんのメッセージにはいつも色がない。悪い意味じゃなくて、ごまかしがない。気遣いとか、遠慮とか、ない。

『うん』

 だからあたしもシンプルに返せた。思いやりは相手の為ではなく、自分を守る手段になることを知っている。あの日の別れのラインがいい例だ。

『なんか仕事早く上がらしてもらった。今橋の上。花火よく見えるよ』

 ヨミちゃんは中学の同級生で、最近勤め先のショップで店長になったって聞いていた。休みは合わないけど、一ヵ月に一回は会うような仲だった。最近は忙しいのか、ラインの返信もまばらであたしからも連絡は控えていたのだが……。

『そっか。綺麗? てか橋ってどこの?』

『ナツんちの真ん前の橋。綺麗だからおいでよ。車全然動かねーの』

 暇なのは、あたしじゃなくてヨミちゃんじゃない。ふ、とため息に似た笑いが出たら、一気に体が軽くなった気がした。正直最初のラインが『ナツ、大丈夫?』だったらあたしはきっと返信しなかっただろう。あの日みたいに、ナツにはもっといい人がいるよと無遠慮に、無神経にあたしを壊したメッセージと一緒に心の中に沈めてしまっただろう。
 ベッドから飛び降りて財布とスマホをサコッシュに突っ込んだ。お風呂前でよかった、なんて思いながら崩れた化粧を少しだけ直してクロックスをひっかけて家を出る。橋までの道に出た途端、ものすごい渋滞だった。ひときわ大きな花火の音がして会場の方角へ目をやると、あたしが一番好きな花火があがっていた。開いた後に下に火花が流れ落ちていく花火だ。風が強く、熱風が頬をなでる。今は夏だったなぁ、なんて当たり前のことが頭をよぎった。
 橋のたもとにあるコンビニでペットボトルを買って、坂道を登った。それだけで、汗だくになった。
「ナツー、こっち」
 橋が中盤に差し掛かるころ、ヨミちゃんの車を見つけた。助手席に乗り込みペットボトルを渡すと、ヨミちゃんは目を丸くした。
「気が利く」
「でしょ」
「三ツ矢サイダーなとこがまた」
「花火に似合ってると思って」
 あたしたちは車内で乾杯してお互いの近況報告をした。アイドリングしっぱなしのヨミちゃんの車は寒いほどで、外の熱帯夜とは別世界みたいだった。
「店員の子たちが、店長後は任せておさきにどうぞ、って。おかげでこんな渋滞」
 ヨミちゃんは笑った。あたしはヨミちゃんの横顔を見ていた。
「ヨミちゃんって昔から花火に興味ないよね」
「暑いし会場人多いし、めんどうじゃん。それに——一緒に見る人がいないと、花火って」
 寂しいから、とテールランプで真っ赤になったヨミちゃんは言った。
「元気そうで、よかった」
「うん。ヨミちゃんも」
 どぉん、と音が車を揺らした。
「ナツんちは、花火が近いな」
 ヨミちゃんは、あたしが花火から逃げられないと思ったのかもしれない。あたしはサイダーを飲み干してしまった。絶え間なく上がる花火は、あと一時間ちょっとで終わる。車はのろのろと動いて、あたしの家の前の交差点まで来た。
「ねぇヨミちゃん、うちに車停めたら? 少し時間置いた方が車流れるよ」
 ヨミちゃんはちょっと考えて、いいの? と聞いてきたから頷いた。無駄に広い家の駐車場に感謝した。
「ナツんちからは花火、見えないんだね」
「音だけだね。ねぇ、会場まで歩かない?」
 は? とヨミちゃんは変な顔をした。あたしだって、いつまでも停滞してるわけじゃない。いつかは心に沈んだ言葉たちを引き上げて、向き合って、弔ってあげないといけないと思っている。ドアを開けて外に出たら、夏が戻ってきた。
「会場つく頃には花火終わりそうだけど」
「それでいーの」
 ヨミちゃんもあたしと一緒でもしかしたら、花火から逃げられなくて連絡してきたのかもしれなくて、誰でもいいから隣にいてほしくて、だから——思いやりなんかじゃなかった。ただ、似た者同士なだけで。それでも嫌な気がしないのは、ヨミちゃんが正直だからだ。自分の気持ちに。
「ほら行こう」
 車で来た道をまた戻り、土手に立った。花火終了まであと三十分。あたしとヨミちゃんは歩き出した。いくつも花火が上がっていく。あんなふうに、形とか、色とか大きさとか、全部分かればいいのに。そしたらチクチクしないで済むのに。でもそう言ったらヨミちゃんは呆れたみたいに笑う。

「本当にそう思ってる?」
 結局レジャーシートを持ってこなかったあたしは、正直者なんだろう。
 すい、と心の底から、花火と一緒に言葉が打ちあがって消えた。

夏の終わりに

執筆の狙い

作者 瀬尾 りん
110.54.112.89

いつも短いのにそれの更に半分です……。うまくまとまっているでしょうか。最近忙しくて、書きたいともあまり思わなかったんですが、やる気を取り戻しつつあるので書いてみました。
よろしくお願いします。——これがうまく変換できなくてイライラする~泣

コメント

カリファ
49.104.8.25

夏か……

夏なんだな……

花火見てないな最近

つまらん夏を過ごしてる僕は
不必要な言葉の打ち上げを上手く実行出来るかな……

沢山打ち上げたいものです

ラピス
49.104.45.88

上手くなっておられると思います。主人公の繊細な気持ちを丁寧に追ってあり、読んでて伝わるものがあります!
ただ、今ひとつ深みが足りないかも。主人公、花火に誘ってくれる身内もいて、孤独じゃないし幸せですよね。いや、幸せなのが悪いわけじゃなくて、描き方かなあ。
あと、
風が強く、熱風が頬をなでる。
って表現は、風が二回も出てきて微妙。でもラストの一文は良かったです。

余談ですが、米津玄師の打ち上げ花火って曲を知ってますか?歌詞聴いてると、なんか切なくなります。参考までに。

u
183.176.70.188

読ませていただきました。
瀬尾りん様らしい小品ですね。良いです。

セオリン様のものここで何作か読ませていただいているのですが、お上手だし、作品としては纏まっている。でも、なんか足りない。
何が足りないの? あたし考えた。 多分「毒」だろうか?(あくまでも個人的な意見です)。

作者さんって多分優しい人なんだろうなーって(その真逆もありうるかも? なんてネ)。

良かったです。御健筆を。
 

月野 夜
36.11.225.161

お疲れ様です。

彼女は恐らく二十代の後半か三十代前半でしょうか、甘酸っぱいお話ですね。

>ベッドから飛び降りて財布とスマホをサコッシュに突っ込んだ。お風呂前でよかった、なんて思いながら崩れた化粧を少しだけ直してクロックスをひっかけて家を出る。

ここの描写、テンポも良くて彼女の心境がよく現れてると思いました。
化粧は気にするけど、履いていくのはクロックスなんだ、と。
相手が男でもなければソコソコの身なりで十分なのかな、と読んでいて感心しました。

花火、結構長めですね。競技花火かなぁって気になりました。(笑)

これからも頑張ってください!

夏間釣
106.161.232.94

お気づきかどうかわかりませんが、私はでしょさんの作品が好きなんです。
のっけから気持ちの悪いことを言い出してしまってすいません。
以前に作者さんがあの方からこっぴどく指摘されていたことを思い出して鍛錬場を眺めてみたところ、まだ残っていました。
嫌なことを言ってすいません。
ですが、私はやはりなるほどと思わされたもので、覚えていました。


おかしな表現になってしまいますが、作者さんの作品を拝見するたびに毎回思わされることがあります。
この人、とりあえずYoutube観ることとJ-pop聴くのやめたほうがいいな、です。
失礼だったら謝ります。
あくまでも例えとしての言い方だと理解してください。
ですが、やはり私はこの物語に共感は出来ませんし、常に作者さんは停滞してしまう表現ばかりという結果に陥ってしまう人だと思っています。
狙ってそうしていらっしゃるということなら構いませんが、伝わってしまうこともあるということに油断してはいけない気がします。
作者さんは、自らアイデアのようにご自身で作り出す物語をひ弱に腐らせてしまう自家中毒みたいな症状があることにお気付きでしょうか。
気付いているならこの作品ももっと違う印象を得ているはずですから、愚問かもしれません。
でしょさんは、恐らくそういったことをおっしゃられていたのではないかと私は勝手に理解しています。
気持ちの悪い感想で申し訳ありません。

瀬尾 りん
110.54.112.89

カリファ様
夏ですよ……とても暑い夏なんですよ……!
私も今年は花火を見ていません。外に出るのもおっくうで笑
だけどつまらなくなんてないですよ!もう立秋という事で、冬が大嫌いな私は今から憂鬱です。

瀬尾 りん
110.54.112.89

ラピス様
確かに主人公は孤独ではないですね……書き方がへたくそなんですが、家族ではない、血のつながりがない他人でこそ、埋められる隣というものを表現したかったんです涙
風の部分は私も少しひっかかりました!でもいいや、とそのままにしてしまいました……こういう小さいポイントをないがしろにしてはダメですね汗 次回から気を付けます。
打ち上げ花火聞いてましたよ~!映画は見ていませんが、歌は好きです笑

瀬尾 りん
110.54.112.89

u 様
「毒」ですか……うっ、難しい!私が小説を書くとき、どうしても自分を救済する為に書いている節があるので「毒」を意識的に排除してしまうんですよね……小説なんだから読者サービスしなきゃいけないのに、常に自分にサービスしてばっかりいる。これが今の私の現状だと反省しきりです……。
良いと言っていただけてうれしいです。ありがとうございました。頑張ります!

瀬尾 りん
110.54.112.89

月野 夜様
うわー!彼女の年齢が当たりすぎてすごいです、エスパーの方ですか? 若くないけどそれほど年もいってない設定で書いてます。ていうかむしろそれ私の年齢なんですけども。
友達と遊びに行く(しかも夜)なら私だったらこうなる、という意識のもと書いてるのを見抜かれたようで恥ずかしい……
近所である花火大会がこれぐらいの時間なので、参考にしたのですが長めですかね?
頑張ります、ありがとうございました!

瀬尾 りん
110.54.112.89

夏間釣 様
作品を読ませていただきまして、でしょさんをリスペクトされているのはわかります!
私もでしょさんの強烈な一人称はマネ出来ないものだと思っているので、すごいなぁと感じている一人です。
とにかくありがち、という事をおっしゃりたいのかな?すいません、理解力が乏しいのでよくわからなくて……それか通り過ぎるだけのお話すぎて記憶に残らないということでしょうか。
前作は本当にひどい出来で(擁護してくれる方もいて救われましたが)自分で読んでもなにがなんだかな状態だったのですが、多分主人公が死んでるのが悪いのだ、という結論になり、此度は生かしてみようという意気で臨んだ次第です。
停滞してちゃいかんのです!次はもう少し前進できるような作品を考えてみます。ありがとうございました。

千織
111.87.58.64

ヨミちゃんとはあの日を境に疎遠になってたのかしら。
失恋からの立ち直りと友人との仲直りをさりげなく混ぜて書かれてあるのかしら。
そうだとしたら、上手いなって思いました。

個人的にはクロックスは嫌いです(笑)。ファッションとして許せないと思っています(笑)。

それはともかく。
良い小説は単に中身を読ませるだけでなく、その内容から読み手の経験を思い出させることだそうです。
そういう点では、読みながら、ああ、そうだな、こういう感じ、分かるな、とか、自分が見た花火の思い出を思い返したりしたので、そういう点も上手いなって思いました。
物語を物語っている感じも無く、それもとても良かったと思います。

主人公のファッションセンスは許し難い(しつこい)けど、小説自体はとても良かったし、こういう作品は好きだなあ、と思いました。

s
49.97.100.191

細かな描写までうまく書けているなと思いました。
家の中にいても聞こえる花火の音、失恋も相まって切ないですね。
ただ、皆さんも言われてるとおり私も少々物足りなさを感じました。
作中唯一のアクションが、友達が誘ってくるというのが予定調和というか、そこで読んでるこちらも悪い意味で安心してしまいます。
七年の失恋から立ち直る、というのは周りのサポートがあっても、やはり本人の相当な努力が必要だと思うので、もっと主人公に能動性を持たせた展開のほうが良いのではと思いました。

五月公英
60.44.15.214

はじめまして、になるのかな?
違ったらごめんなさい。

良くも悪くも、JDむけに描かれた少女マンガの印象でした。
こういった抒情的な読み切り作品、たまにあるでしょう?
月並みを避けたいなら、<少女マンガに描かれていないこと>を探ってみましょう。
ご健筆を。

ポキ星人
106.73.96.160

 この作品では何が書かれているのか、という問いは、この作品の中で何が起こっているか、とはどうやら違う問いらしく、往々にして前者ばかりが話題になるので私は困惑することが多いです。この作品の中で起こっていることは、親戚の家族が花火大会を見に来たのは、主人公の失恋の痛手を深める行為なので放っておいたのだが、ヨミちゃんという同性の友達が誘って来たらいい気分になったので一緒に花火を見に行った、ということでしかないはずです。私は主人公は不公正だと思いますが、それ自体が問題なのではなくて、作品のすべての要素が主人公の不公正さを覆い隠すために成り立っている感じが爽やかでないのだと思います。
 うざい親戚というのはいます。だったらそう書けばいいわけですが、そこは話題にもならず、ただ自分の心の傷だけが述べられます(作者の意図はともかく、ただ不義理の正当化のために使われていることは否定できないでしょう)。心地よい友人というのもいますが、こいつは正直だから認めてやるんだみたいな書き方が目立つのは単に偉そうだとか自己中心的に他人を値踏みしてる感じが不穏当だというだけでなく、親戚一家に不義理をしているが(おそらく主人公は別な日に同様な不義理を他の人にもしてきたのです)それをまともに扱ってないことを作者が意識下で気にしているせいではないかと私には感じられます。
 客観的な出来事がどうなのかはかなり明白なはずですが、主人公の独白による心理描写がずっと続けば、読者の目先を逸らす(なんなら作者も都合よく思考や描写を回避する)ことはできます。ただ、そういうことをしていれば読み手の心の中で、どこかおかしいという感じはどうしても出てくるのではないか(はっきり気づくかはともかくとして)と私は思っています。
 コメント欄見ても、全般に男性受けが悪い感じですが、この辺の不公正さの隠蔽が潔くないという感覚(こんな女このまま腐らせときゃいいんじゃないかという気がする)がどこかで影響しているのではないかと私は邪推します。
 私は作者が人間的に悪いわけではないと思いますが(むしろ作者が「人が悪い」人だった方がこの作品は良くなったでしょう)、おそらくは親戚一家というのを主人公の心の傷の深さを表現するただの道具として扱ったことで作品のゆがみが深まったのだろうと思います。端役の人格を書く必要はない(だからこそ端役なのですし)ですが、作者や読者にとって人格を欠く端役も、主人公から見たら人間なのですから、端役に対する主人公の心情や行動は、主人公の描写に影響するはずです(今まで述べた通り、この作品において、大きく影響している、と私は読みました)。だから、出さなくてもよい親戚一家を不用意に出してしまった、という問題にすぎないのも確かですけど、作者としては主人公の造形に思いが至らない点があったと捉えた方が生産的だろうと思います。

 厳しいことを先に書いてしまったのですが、私の最初の読後感というのはもうすこし素朴なもので、それはこれくらいの長さだったら、「ヨミちゃんが私に気を使ってくれたので花火を見に行った」くらいの素直な話じゃいけないんだろうか、ということです。
 たとえば、 > ヨミちゃんもあたしと一緒でもしかしたら、花火から逃げられなくて連絡してきたのかもしれなくて、誰でもいいから隣にいてほしくて、だから——思いやりなんかじゃなかった。ただ、似た者同士なだけで。それでも嫌な気がしないのは、ヨミちゃんが正直だからだ。自分の気持ちに。
 ということ(特に引用部の「だから——」以後)を書かないといけないでしょうか。心理をそのまま理屈で書いていることがつたなく感じられる、ということもありますし、なんだか主人公が全知な感じが出てくるのがどうも引っ掛かります。ヨミちゃんの気持ちはわからないけど、私のことを思いやってくれたんだ、ではだめでしょうか。他愛ないのはたしかですけど、今の作品も他愛なさでは大差ないように私には思えるので、素直な話でとめといた方が伝わりやすそうに感じます。
 この辺は作者が書きたかったのが何なのかにも関わるのであるいは譲れないところだったのかもしれません。ただもし仮に、同情とか思いやりとかより、ヨミちゃん自身の欲求の方が私には心地よいのだということ自体が書きたいのだというなら、それはヨミちゃんが自分に何があったのか今どんな気持ちなのかを自分の言葉や行動でほのめかし程度でも示していかないと作者の意図は伝わりがたいと思います(>お互いの近況報告をした。 ……そうですか)。ヨミちゃん本人が意味ある事をあまり言わないので、主人公がエスパー的な察し(決めつけにすら見えます)をしたり、なんだか上から目線で他人の値踏みをしているかのような印象を与えたりしているのではないでしょうか。ヨミちゃんのしたことを主人公が語ることによって主人公が癒されるので、主人公が癒されましたと申告するから癒されるわけではない、というのが小説のお約束かと思います。

 この主人公の全知感、というものが私は最近気になっているのですが、というのは、主人公や作者が知っていることを書いていく、というスタイルのものが最近ここで目立つように思うからです。小説は学術や実務の文章ではないのですから、作者や登場人物が何を知っているかを教えてほしいのではなくて、読者である私が何を知らないかに気づかせてほしいと私は思います。

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