作家でごはん!鍛練場
五月公英

足音。 他二編。

『足音』

 さっきから背後に人の気配。停電をいいことに座敷角の暗闇から俺の隙をうかがっている様子。ふり返ったらたちまち襲われそうだ。
 とっさの判断で女の悲鳴にも似た甲高い奇声を発し、丸腰の自分にできるせいいっぱいの威嚇を試みた。すぐさま二メートルほど横っ飛び。左肩に当たった唐紙を勢いで圧し倒して板敷の廊下に転がり出た。
 そこから中腰の手探りで玄関へ。誰のものとも知れぬ草履を引っかけてきしむ引き戸を力まかせに開け放ち、中秋の名月を愛でる間もなく南方向にあるはずの駐在所を目指した。
 浴衣の前がはだけてふんどしが丸出しだ。足元が砂利だらけで歩がはかどらないから焦燥ばかりが加速する。
 数十秒駆けたところで進行方向を見すえたまま耳をそばだてた。
 追ってくる足音はない。どうやらあきらめたようだ。
 歩をゆるめつつ帯を締め直し、しばしきょろついてみる。さっきまで呑んでいた旅館の建物がはるか後方にぽつん。周囲は刈り取り前の田んぼで道脇には青味を残したススキがざわつくばかり。
 腕組みをして寒々しさに首を縮め、視線を前にもどす。と、雑草が盛大に茂ったところからどす黒い人影がぞろぞろ出た。
 先頭の男は白い箱を胸に抱えている。続く女も位牌のようなものを抱いている。十数名の男女のほとんどが喪服姿だ。ねずみ色の背広に喪章をつけた爺もいる。
 お弔いの列らしいのだが、なんでまたこんな夜中に?
 やつらが無言のまま正面まできやがったから路肩へ退いて道をゆずってやった。誰ひとりとして礼を述べる者はいない。生気の失せたうつむきかげんの横顔が右から左へと通り過ぎてゆく。
 気味が悪いにもほどがある、と胸中でつぶやいてふと気づいた。
 足音がしていない。
 とたん、全身が筋張って呼吸が困難になった。
 さては物の怪の類に憑かれたか?
 列の最後尾が横切った機にすがる思いで念仏を唱えかけた。すると、急に己の目線が高くなった。
 見下ろせば、二メートルほど真下に俺の両肩がある。その中央には切り株のような首。
 なにがどうなっているのかわからない。混乱を極めて頭がおかしくなりそうだ。
 頭?
 この景色をそのまま受け取れば――頭が胴体から離れて地上三メートルほどの上空を浮遊していることになる……。
 突然、なにやら強い力に吊り上げられたかのごとく眼下の風景がしぼんだ。俺の頭は――というより、頭部のみとなった俺は、屋根よりも高いところを軽やかに舞いはじめた。
 失神してもおかしくない異常事態なのに、鳥にでもなったような感覚で滑空しているから爽快ではある。
 駐在所の屋根をかすめ、続け様に山の尾根を越えて南の農村へと下る。
 それから徐々に低空へと移り、集落を縦横に区切る路地の道端にぽとりと落ちた。
 正面に農家の板壁、背後には高い生垣が視界をさえぎっている。
 どこかでか細い音が調子よく鳴っている。 
 鳥の鳴き声か? あるいは誰かが口笛を吹いているような……。
 右にそびえる竹藪の方から十二ほどの小僧がひとり、横笛をぴらぴら吹きながらやってくる。寸足らずの茶ばんだ着物に下駄履きだ。丸顔の坊主頭で目元口元がはっきりしない。
 足音をたてずに近づいてきたやつを目をこらして見上げれば、涙を流しているようでもあり、薄っすらと笑っているようでもある。

 おしまい。




『どうせくだらない話でしょ?』(改)

 ホラーマンガなんか読むんじゃなかった。
 明るいうちは自宅二階の勉強部屋にこもって高校受験用の参考書をあたっていたが、根をつめていたというわけではない。勉強の合間に、同級のリナが貸してくれた少女マンガ雑誌のページをめくるなどして気楽に過ごしていたのだけれど、これがいけなかった。マンガは和製ホラーのオムニバスだ。そのせいで夕刻を迎えてからどうにも落ちつかない。
 両親は他県の某温泉郷に遊んでいる。山奥らしい。秋の連休を利用した二泊三日の観光旅行だ。
 タツヤひとりで大丈夫? ちゃんとごはん食べられるよね。戸締りしろよ。などと気づかいながら朝早くに出て行った。
 日が傾いて室内が暗くなってくると耳が冴えてきたのか、ノートパソコンに付いている冷却ファンの回転音や自分でひった屁の湿った音までもが気になりだした。
 ひとりの夜は寂しすぎる。やるべきことをやってさっさと寝ちまおうと、いつもより早めに夕食と入浴をすませ、ネイビーがあせたジャージの上下に着がえた。
 自室に戻ってガラス・テーブルの前にあぐらをかき、ホット・カーペットと座布団で尻を温めながら課題をかたづけてゆく。
 午後十時をまわったところで一段落ついたから天井から垂れている細ひもを引いて灯りを小さいのに落とした。
 ジャージのまま南窓際のベッドにのぼる。毛布と布団を顔が半分かくれるくらいまでかぶり、頭の重みを枕にまかせて目を閉じる。
 そこへ、どんっ、どんっ、ときた。まどろむ間もなく、どんっ、どんっ。
 首筋を違えたかと思うほどにびくついて目を見開いた。
 首から上だけを起こし、豆電球のオレンジを見つめて耳をすます。
 地震を疑ったがどうも違う。家全体が揺れるような大ぶりの振動ではない。
 不快な音は階下から響いてくる。
 少し間をおいて激しく鳴った。
 跳ねるように飛び起きてベッドの上にペタリと座る。心臓がけたたましく脈打っている。
 しばらくして、また、どんっ、がん、がん。誰かがアルミ製のドアを叩いているようだ。
 身を硬くしながら立ち上がって電灯をつける。
 なに者だ? インターホンがあるのになにやってんだ? 酔っぱらいか? 
 こんな時にかぎって誰もいない。自分でなんとかするしかない。
 クローゼットとカーテンレールの間に物干し竿代わりのツッパリ棒が斜にかかっている。
 背伸びをしてそいつを手に取ると、別の手で開き戸を開け、部屋を出てからスリッパを履いて階段の電灯をつけた。
 階段を下りきったところで廊下の照明を点灯。そこから数歩で玄関まで行く。
 板壁のスイッチを押したらLEDの室内灯と外灯が同時に点いた。
 ノック音が止んでいる。
 恐ろしくてかなわないが、なに者の仕業なのか気にかかる。
 ドアを開けなきゃいいんだ。いざとなったら警察を呼ぶまでだ。
 自分は覚悟を決めた。
 息を殺してスリッパのままタイルの床に降り、不機嫌をあらわにして扉越しに呼びかけてみた。
「どなたですかぁ?」
「あたしぃ」
 かろうじて聞き取れるほどの細い声が返ってきた。けれど、あたしぃでは分からない。
 ドアに鼻柱をくっつけて穴からのぞくと、淡い明かりの中、小学五年生ほどの女の子がうつむき加減で立っている。片手の、丸めた人差し指の背で目をこするような仕草をくり返している。他に人影はない。
 こんなちっこいやつがあんな大きな音を? 
 不可解ではあったが、相手が子供と知れたから張っていた気を半分ほどゆるめ、解錠して外へ開ける。すぐに冷たい風が吹き込んできた。
 彼女は、スウェット地らしきグレーのジップアップ・ジャケットに真っ赤なジャージをはいている。頭のてっぺんが僕の肩くらいだ。
「君、だあれ?」
 穏やかに問いかけてみたけれど、下をむいたままで答えない。
 背を曲げ、頭を傾げて顔つきを確かめる。
 鼻が低いせいか小さな両眼が離れて見える。紫がかった厚めの唇が口笛を吹く形で尖っている。髪は耳が隠れるくらいのショート。前髪は眉のラインでパッツン。黒いニット・キャップをかぶった小鳥みたいだ。
 よくよく見れば心当たりが。従兄妹のミナコのような気がする。
 たずねたら無言でうなづいた。
 それにしてもこんな夜中に来るのは変だ。
「ミナちゃん、泣いてたんじゃわからんよ。どうした? 話してみれ」
 すると、ようやく顔を上げて、「お爺さんが死んだ。だから、呼びにきた」と言う。
「マジでっ?」
「うん」
 彼女の祖父に覚えはないが、親戚の一大事ということで驚いた。
「えっ、えっ? いつ? いつ頃亡くなったの?」
「はあ?」
「お爺さん、亡くなったの、いつ?」
「えっ? お爺さん?」
「あり? お爺さんが亡くなったんじゃないの?」
「お爺さんが死んだ。それで、呼びにきた」
「そうだろ。……だから、いつ亡くなったのさ?」
「知らん」
 むこうの気が動転しているのか、なんなのか、まるでかみ合わない。
「まあ、いいや。ちょっと待ってて」
 ツッパリ棒をその辺に置いて自室に戻り、テーブルのスマホを取って母への連絡を試みた。
 ところが、圏外。父も同様。宅電からかけてもだめ。宿泊先も聞いていないからどうにもならない。
 気を静める間もなくボトムだけデニムにはきかえ、ジャージの上からマウンテンパーカーを羽織り、施錠をして家を出た。
  葬式というわけではないから自分が出向くことはないのだけれど、親が不在だからしかたがない。夜中に駆けつけることもないはずだが、なんだか行かなくては ならないような気分になってきた。目を泣きはらした女の子をひとりで帰すのも胸が痛む。それで送りがてら招きに応じることにした。
 
 ミナコ一家が町内に暮らしていることは知ってるつもりだったけれど、宅を訪れた記憶がない。お爺さんはおろか両親の顔すら思い出せない。
 小型ライトを手にした彼女に先導されるかたちで街灯のない農道を歩いてゆく。田畑を貫いた、軽トラックが辛うじて通行できる程度の舗装路だ。乾いた風が堆肥のにおいを運んでくる。
 月が出ている間は神社の森やら建ち並ぶビニールハウスやらがはっきり見えて安気だったが、雲に隠れきってしまうとそれらが闇に沈んで不安をあおった。
 神社の手前で西の高台に続く細道に入る。
 勾配はゆるいが、サーキットみたいに蛇行している。時折コーナー内側に堆積した落ち葉や路肩からせり出した雑草を踏む。両脇は果樹園を囲む高い生垣とコンクリート・ブロックのブラインド。3Dのダンジョンを想わせる。
 冷たい風が顔に当たるたびに長めにすいた前髪の毛先が下のまぶたをくすぐる。フードをかぶるが、すぐに押し戻されそうになる。マフラーを巻いてくればよかった。
 パーカーのポケットに両手をつっこみ、単調に歩を進めつつ気になっていたことを問いかけてみた。
「ミナちゃん、なんでわざわざ来たの?」
 彼女はふり返らずに、「えっ?」
「電話でもよかったのに」
「あのぅ、お母さんに行ってこいって言われた」
「なんでそんなこと言ったんだろうね? 電話でいいのに」
「お母さんに行ってこいって言われた」
「だぁから……まあ、いいや。じゃあさ、お爺さん、なんで亡くなったの?」
「えっ?」
「どうして亡くなったの? 病気?」
「ええっと、あのぉ」
 ミナコは、気がついたら死んでたとかなんとか、もごもご。
 要領を得ない返答にイラつきながら二十分ほど歩いた気がする。

 再び月が出た。
 行く手にそびえる竹林が北風を受けてざあざあうるさい。その間に瓦屋根が見えた。日本昔話しに出てきそうな平屋の古民家だ。
 家屋のそばに松かなにかの巨木があって黒い枝葉が屋根の端にもっさりとかぶさっている。
 西山から吹き降ろしてきた風がこの辺りでうずを巻いているらしい。樹木の臭いがやたらと鼻につく。
 竹を編んだ垣根の継ぎ目らしきところを抜けて裏手から敷地内に入った。
 ミナコに続いて勝手口のようなところから上がり、合板らしき床をきしませて殺風景な台所を横切る。
 照明が灯っているのにもかかわらず、ところどころヤニがこびりついたベニヤの壁や、年季の入った安っぽいこげ茶のダイニングテーブルや、その上に転がる蝿の死骸が足取りを重くさせる。
 出たところがこれまた暗い板廊下。どこから漂ってくるのか、おっさんが履き古したくつ下のような臭いが呼吸をさまたげる。
 突き当たりまで行き、引き戸が開く気配がしたと思ったらカチっと音がして蛍光灯の明かりが八畳の居間と奥の仏間を照らし出した。
 両室を仕切っていたはずの ふすまは通夜のためにか全て取り外されていて、敷居を隔てたむこうにすすけたような仏壇と茶ばんだ布団の丘がすぅっと浮かび上がった。白い布で顔をおおわれた遺体が横たわっている。
 うげっ、すげぇ帰りてぇ。
 口をついて出そうになって、あわてて吞みこんだ。
 親類とはいえ夜中にこのようなものを見るのはごめんだ。
 しかし、ミナコの手前そうも言ってはいられない。自分には気味の悪い屍にすぎないが彼女にしてみればこの世にひとりのお爺様だ。
 相変わらず鼻をすすっている。すすりながら居間の入り口にたたずむ僕に、どうぞと美少女アニメキャラのイラストが描かれたマグカップを持ってくる。絵面の痛さが健気という言葉を呼び込んでもらい泣きしそうになる。
 コーヒーが注がれたカップを一旦貧相な和机の上に置き、やけにふかふかする畳の上をひとり這うようにして仏間へと進む。
 お年寄りが法事でするように遺体のそばにあった香炉に線香を立てて手を合わせてみる。お経の文句も浮かばないから無心で頭を垂れてすぐに居間へと引き下がる。
 角に古びた座布団が積んである。一枚取ってあぐらをかいた。
 寒い中を歩きづめでのどが痛んだからウーロン茶みたいなど薄いコーヒーをすすってひと息入れる。
 ここで、んん? っとなった。 両親の姿が見えない。
「ねえ、お父さんとお母さんは?」
「えっ?」
「どっか行ったの?」
「あのぅ……」
 葬儀の相談だかで隣市の親類宅を訪ねているというから、それじゃあひとりで寂しかったねぇ、帰ってくるまで一緒にいてあげるから安心しな、そんな言葉をかけてやった。
 彼女は机のむこうに尻をついてしょんぼり。
 なんとかしてなぐさめてやりたいのだが、こっちの気がそわついて言葉が出てこない。
 陰気な沈黙が続く。
 自分の左側、三メートルほど先に遺体がある。いつかバラエティ番組で観たホラードッキリ企画を想い出す。たまらん。
 サッシ枠の建てつけが悪いのか、すき間から風が入ってくるらしい。妙にすうすうする。
 心が寒いときは体だけでも温めたい。
「ミナちゃん、悪いけど暖房つけてよ」
「はっ?」
「エアコンつけてくんない?」
「壊れてるし」
「えぇ? じゃあ、温風ファン・ヒーターとかでもいいけど」
「どこにあるか分からん」
「ミナちゃんの部屋にないの?」
「ないよ」
「使い捨てカイロは?」
「ない」
「そうですかぁ」
「コーヒー、もう一杯飲む?」
「あぁ、ありがと」
 寒いやら気味が悪いやらで胸の奥まで冷んやりとして、いたたまれずに手渡されたプラスチックのカップに口をつける。
 げほっ。
 異様に濃い。泥湯のよう。薄めてもらって、すする。
 と、机のむこうに座りかけたミナコがすっと立ち上がった。
「お風呂入る? 沸かしてあげよっか?」
「今から?」
「うん」
「お風呂って、どこ?」
 台所の奥にあるという。沸かすというからにはガスだろう。
 家で入ってはいたが、浸かれば体が温まるし気晴らしにもなる。
「じゃあ、たのむわ」
「うん」
 彼女が出て行ってしまうとお爺さんと二人きりになった。二人というのはおかしい。やつは死んでいる。もはや人ではない。僕ひとりと死体がひとつだ。いよいよ気が沈んだ。
 極力見ないようにと努めるけれど、ついちらちらと視線を送ってしまう。帰りたい。
 気味が悪すぎてやってられないから、ゲームでも、とパーカのポケットに手を突っ込んだ。スマホがない。家に忘れてきたらしい。持って来たつもりでいたのだが。
 ならテレビは、と周囲を探ったが見当たらない。ゲーム機、パソコンもない。
 親に連絡したい。ここからなら通じるかも知れない。
 宅電を探しに廊下へ出た。暗くてよく分からない。不気味すぎて探索する勇気が出ない。まあ風呂あがりに、ということにして居間に戻る。
 香炉に線香がくすぶっている。煙が天井に達して霧のようにもやついている。
 外で物干し竿か何かがかたかたと鳴く。乾いた音がしいんとした室内に反響している。
 パンツのゴムのあたりがもぞもぞすると思っていたら、ジンマシンが出た。
 体のあちこちがかゆい。爪を立てて脇腹や尻のあたりをボリボリかいていたら腹がうなりだした。寒い中を歩きまわった末にコーヒー汁を二杯飲んだせいかずいぶん張っている。
 苦しくなって脚を組みかえようとひざを崩した。その拍子にひっくり返って柱の角で右肩を打った。具合が悪くなりそうだ。
「沸いたよ」
 ようやくお呼びがかかった。
 繊維がほつれかけたボロタオルを手渡しで与えられる。臭ってきそう。
 ミナコに続いて台所へ。浴室は奥。勝手口の反対側。
 ミナコが木製のドアを手前に引くと、そこが一畳ほどしかない脱衣所で、コンパクトな蛍光灯がついている。
 明かりの下、小窓の片側が開いていてくそ寒い。
「じゃあ」
「あぁ、どうも」
 彼女はドアを閉めて出て行った。
 足元にあった籐の籠に衣服を脱ぎ捨てる。
 さぶっ、さぶっ。
 勇み手でガラスが入ったサッシの引き戸を開け、狭苦しい浴室に踏み入った。
 床一面と壁の下半分がベージュのタイル貼りで、暖色の明かりが壁の高いところにぼんやり。
 脱衣所よりも暗い。でも石けんの香りが鼻に優しいから少し落ちつく。
 ねばつく床に右ひざをついてプラスチックの青いふたをどけた。湯気がもうもうと立ちのぼった。それを浴びただけて生き返ったような気分になる。
 外したふたをカビで黒ずんだ壁に立てかけてから、右手の先をちょいと浸けて湯かげんを確かめた。やや熱めだが大丈夫そうだ。
 ニヤケながら樹脂の桶(おけ)で軽くかきまぜ、すくい上げたやつを左肩からザブリ。直後、なにやら叫んで立ち上がった。
 「水、水っ」
 息が止まりそうだ。
 目の前に水道の蛇口がある。しかし、肝心のノブが外れている。どこへ行ったのか見つからない。
 湯船の上にある小窓を開けようと試みたが、枠の外側になにかが引っかかっているらしくがたつくばかり。
 しかたなしに震える左手で出入り口のサッシを開け放って脱衣所経由で外気を取り込む。
 どうなってんだ? 手の感覚が麻痺してたのか?
 股間にタオルをあてがってキョロついていたら脱衣所からミナコがとぼけたツラをつき出した。
「どうした?」
「どうしたも、こうしたも……熱湯やんかっ。てめぇ、俺を煮る気かっ」
 激情にまかせ、女みたいな裏返った声で怒鳴りつけてしまった。
 ところが彼女は変に落ちついている。
「ふうん」
 他人事のようにほざくからよけいに腹が立つ。
「ぼうっとしとらんで水を足してくれよ。早くっ」
 やつは、あい、あい、といった感じで調子よくうなづくと、台所の方からホースを伸ばしてきて湯船に注ぎだした。
 自分は立ったままタイルの壁に尻をくっつけ、空いた手でジンマシンをかいている。
 熱湯をかぶった部分がヒリついている。他は冷たい夜気に鳥肌が立って気が変になる一歩手前だ。
 頃合を見計らって注水を止めさせ、今度は慎重にかげんをみる。熱くはないからミナコを帰した。
 大丈夫だろうとは思ったが、念のためスローモーションのようにゆっくり浸かる。
 少しぬるいが、まあ、いい。
 そのうちに肌のヒリつきもジンマシンも気にならなくなって、ようやく和んできた。これまで、寒いやら、怖いやら、熱いやらで目まぐるしかったものだからこの安らぎがうれしい。
 まぶたを閉じて深い呼吸を繰り返しているうちに寝入ってしまった。

 背筋だか首筋だかがゾゾッとなって目を開けた。
 ぬかるんだ地面と緑気のとぼしい低い雑草が見える。
 視線を上げると見事に紅葉した山腹――。
 風呂の壁が見当たらない。風呂自体がなくなっている。家屋もだ。
 僕は原っぱの水たまりにひざを抱えて座っていた。
 西山の尾根の形と、神社の森と、竹林と、角ばった煙突の位置から察するに火葬場裏の空き地らしい。
 いつの間にやら夜が明けてスカッとした青空が山のむこうまで続いている。
 驚いた、なんてものではない。錯乱しすぎて立ち上がることすらかなわない。
 パーカー、ジャージ、スニーカーはどこへやら、素っ裸で泥水に浸っている。
 思えば、ミナコなどという娘は知らない。そのような従兄妹はハナからいない。
 見事にハメられたわけだが、今時、狐や狸がいたずらに人を化かすとも思えない。
 相手の正体も、だまされた理由も、なにひとつとして分からないまま、みっともないことになっている。
 悔しいやら情けないやらで涙が止まらない。
 脱力しすぎて小便をもらした。
 なにがどうしてこうなったのかさっぱり分からないが、いつまでも泣いているわけにはゆかない。帰らねば。けれど道中全裸は危険だ。ワイセツ物なんとか罪で捕まったら大変。
 なにか身を包むもの、せめて下だけでも。
 ぐりぐり見まわしていたら、あった。ライトグレーのボクサー・パンツが一枚、数メートル先の細い松枝にぶら下がっている。これをはき給え、と言わんばかりに前後にゆれている。
 んっ、俺のやんか。
 ご都合主義のアニメみたいな展開に喜びかけた。が甘かった。
 起ってたぐり寄せてみればフロント部分が怖ろしく黄ばんでいる。尿臭がひどく、人間のものとは思えない。けれど、ぜいたくを言っている場合ではないから渋々水たまりで洗って身に着けた。

 平常時の三割程度まで気を持ちなおした僕は人目をさけて未舗装の裏道に足をむけた。
 素足だけに小石を踏むと痛むけれど、他人様の履物を盗むわけにはゆかない。自分は泥棒ではない。高校受験がひかえている。ローペースでも十五分走れば家に着く。
 誰かに援助を求めようとも考えたが付近に知人宅はない。
 コンビニ店員にすがるのも格好が格好だけに気が引ける。通報されかねない。警官に問われてなんと答える? 「いやぁ、狐かなにかに化かされちゃって、テヘッ」などと笑っていたら脳を疑われる。病院送りにされたら取り返しがつかないことになる。このまま我が家を目指すしかないようだ。
 僕は日陰の細道を急いだ。
 墓地を過ぎたところで仏花の束を提げた白髪の老婆とすれ違った。
 おびえたように眼を見開き、大げさに身をかわして道をゆずってくれた。当然の反応だ。気持ちは分かる。
 どこから現れたのか野良犬が四匹、尾をふりふり寄ってきた。黒いのやら、茶色いのやら、でかいのやら、ちっこいのやら。
 このような状況でなつかれたら大迷惑。よけいに目立ってしまう。しっ、しっ、と追いたててみたが後から後からぞろぞろついてくる。おもしろがっているらしい。
 先の民家のベランダに主婦らしき女性が立っている。洗濯物を干しているご様子。犬の鳴き声が届いたらしく竿に両腕を伸ばしたまま頭だけをこちらにむけた。
 目が合った。
 いたたまれずに製材所裏の脇道にそれる。
 とたん、水たまりの泥に足をとられて尻もちをついた。同時に鋭い痛みを覚え、はうっと叫んで、ビクンッとえび反って、身もだえた。
 見れば尻に近い右太ももの裏側に画びょうほどの釘だかネジだかが刺さっている。
 腕をまわし、爪を立てて抜こうと試みたけれど、深くまでめり込んでいるし、指先はすべるし、見えづらいしで手の施しようがない。
 かなり痛んだが、どうにもならないから帰宅後に処理することにして刺したまま歩き出した。
 果樹園を迂回する曲がりくねった坂を惰性で下っていると、後方が騒々しい。犬が七八匹に増えている。
 あせって神社の裏手へまわり込んだ。
 境内の端に置かれた木製のベンチに小学生の高学年らしき男子が数人、あっちをむいて休んでいる。
 その様を横目で流しながら背後を抜けかけた。
 やつらが一斉にこちらを見た。ペタペタという足音が耳に届いたらしい。皆、目を丸くしている。
 沈黙を破ってひとりが叫んだ。
「おおっ、変なのが通る。裸だっ」
 他の者らも変態だのなんだのと騒ぎだし、図体のでかいやつがベンチに立てかけてあった竹ぼうきに手をかけた。
 危険を察した自分は全力で加速した。けれど、あっという間に追いつかれ、背や尻を数回はたかれた。
 抗戦しようにも負傷しているうえに体力を消耗しすぎている。へたに顔を覚えられて後々変なウワサを立てられでもしたら悲惨なことになる。クソムカつくがここは逃げるにかぎる。
 つんのめるようにして刈田に転がり込んだ。
 ガキと犬の集団に追われながら短い草に覆われたあぜ道をひたすら駆ける。
 地面を蹴るたびに、ももがズキンと痛む。
 涙で目がかすんで足元が見えない。
 短い橋を渡ったところでふらっとよろめき、なにか軟らかいものを踏んだ弾みに足をすべらせて用水路に転がり落ちた。
 冷てぇ。
 あえぎながら水をかき、草をつかみ、トカゲのように対岸の土手をはい上がる。
 ここでようやくうぜぇやつらをふり切った。

 ビニールハウスの裏側を駆け抜け、近所の人と出会うこともなく自宅玄関にたどり着いてはみたものの、鍵を失くしているから入れない。
 裏口の窓に投石してガラスを割り、空いたところに腕を突っ込んで内からロックを外す。
 つま先立ちで破片をよけつつ進入し、パンツを脱いでキッチンのゴミ箱に捨てる。そのまま階段を上がって自室に直行。カーペットに倒れ込んだ。
 スマホはテーブルの上にあった。財布もだ。
 時計の針は午前九時をまわっている。
 早いとこ抜いちまおう。
 首をねじって見れば、もものつけ根あたりが赤紫にはれて血がにじんでいる。泥やら血液やらでぐちゃぐちゃしていて突起物の正確な位置がつかめない。肉の中に埋もれてしまったらしい。
 温いシャワーを浴びて汚れを落とし、オリーブグリーンのスウェット上下を着てから薬箱を探した。
 母が不在だからさっぱり分からない。
 携帯もパソコンからも宅電すらつながらない。
 怪しいところを引っかきまわしてトゲ抜きだけは確保したが、ミニサイズのうえ先が甘くなっていて役に立ちそうもない。
 ふらふらと自室に戻る。
 ベッドにうつ伏 せて患部を気にしながら首をねじっていたら、なにかの拍子に筋がギクッとなって激痛が。それきり右をむいた状態で固まってしまった。
 もう、どうにもならない。放っておいたらそのうちに出てくるんじゃねぇの? と投げやりになって、そのまま眠った。

 尿意を覚えて目覚めた。
 首は治っていたが脚の方が悪化している。直径五センチほどの円状にこんもりしている。熱を帯びてじくじく痛む。
 用を足した後、キッチンに寄って軽い食事をとった。
 壁の時計を見れば午後二時。
 菓子パンをインスタント・コーヒーで流し込む。
 イテェなぁ、ちくしょう。ミナコ、なにもんやろか?
 俺、呪われてんのか? 前世の因縁とか、そういうことなのか? そうなのか? だとしたら知ったこっちゃねぇよ。身に覚えのないことで怨まれたらたまらんぞ。文句があるんなら先に理由を言えってんだ。ああ……ムカつくなぁ。
 少女漫画のホラー特集なんか二度と読むかっ。捨ててやる。……しかし、女ってのは怖がりのくせにどろどろしたおっかない話が好きだよなぁ。アホなのか?
 念のためにお守り買ってこようかなぁ。あっ、その前にトゲみたいなもんをなんとかしなきゃ。薬 と、トゲ抜きと、念のためペンチと、食い物と……。
 パーカー失くしちゃったからクローゼットからツイードのコートを出して……。
 などと考えているところへ、玄関の方から聞き覚えのある音が、どんっ、どんっ。
 やっ、ミナコの野郎、また出やがったか? ようし、とっつかまえてボコボコにしてやる。
 世の中には赦せることとそうでないことがあるという。今回は明らかに後者だ。痛い目にあわせてやらねば気がすまない。
 プロボクサー気取りでシャドウをくり返しつつ玄関まで行ってみた。
 ドアの穴からのぞくと、オレンジのニットを着、タイトなデニムをはいた少女が白い自転車を背にしてひょろっと立っている。ミナコではない。
 あの重ったるいロングの黒髪は……リナだ。
 ドアを開けてやると、ひまだったから来てあげたんよと、小さな目を細めて発情期の柴犬みたいに笑う。
 愛しの彼女というほどではない。友達以上恋人未満ってやつだ。
 そういえば、親が出かけるから遊びに来いと誘っていたような気がする。
「いいとこに来た。まあ、上がれ」
 大喜びして招き入れた。
「でさ、ドアを叩くなよ。びっくりしたやんか。インターホンがあるんだからさ」
 彼女は、ボタンを何度か押したが反応がなかったという。やはり故障しているらしい。
「そういうときはスマホを使え」
「今度からそうする」

 自室に通し、テーブルをはさむ形で向き合って腰を下ろした。
「ああ、太ももが痛てぇ」
「どしたん?」
「俺、とんでもねぇ目に遭ってよう。長くなるけど、聴いてちょうだい」
「なんだ? どうせくだらない話でしょ?」
 ひとつひとつ思い出しながら時間軸にそって語り聞かせていたらリナが笑い出した。
「アホか。ありえんわ。もうちょっとマシなうそつきなよ」
 地獄の恐怖体験をうそ呼ばわりされてムキになった僕はテーブル上に身を乗り出してひときわ大きな声で訴えた。
「うそじゃねぇって。ホントに化かされたんだってばっ」
「はあ? なにに?」
「わかんね。狐か、狸か……妖怪かも知れん」
「もう、冗談はいいから、ホントのことを言えっての」
 もどかしすぎて腹が立つ。
「マジだってばっ。ホントのガチのリアルやんかっ。信じろっ」
「寝ぼけてたんじゃないの?」
「寝ぼけて火葬場まで行くかよっ」
 信じろというほうが無理な話だった。
 悔しいけれどパワフルに寝ぼけたということにして、道具と消毒薬を彼女の自宅まで取りに行ってもらった。
 このすきにと、患部が見やすいようショートパンツにはきかえる。
 リナは十分ほどで戻ってきた。
 トゲ抜きは盛り上がって硬くなった皮膚に阻まれてダメだったが、精密機械用の先が細いペンチでトライしてもらったら小さなネジがぬるっと外れた。けれど、はれが引かない。
「タツヤ、ちゃんとした薬をつけた方がいいよ。はれもの専用のやつを」
「そうだよなぁ」
 二千円ばかり渡して使いにやったが、ほんじゃあ行ってくる、と言って出て行ったなり帰ってこない。
 コンビニで立ち読みでもしとるんか? 
 いら立ちが募ってスマホを手にしかけたが、自分同様キレやすいお年頃。下手に急かして機嫌を損ねてもまずい。今は彼女だけがたよりだ。カーペットに転がって気長に待つことにした。
 患部が熱い。体もだるい。
 遠くにサイレンを聞いたような気がする。
 明るかった窓が暗転して冷え込んできた。

 スマホがブルついて目が覚めた。
 一時間ほど寝ていたらしい。リナだ。
「おせぇよ。なにやっとるん?」
 怒鳴りつけたいのをおさえて問いかけると意外な言葉が早口で返ってきた。
「ごめん。そっちに行けなくなった」
「はぁ? なんで?」
 ドラッグ・ストアを出たところで母親から連絡が入り、お婆さんが起きて来ないから見に行ったら息をしていない、びっくりして救急車を呼んだ、と騒ぐから急いで帰ったという。
「家に着いたら救急車がいてさ。それから警察とか近所の人とかが来ちゃって大騒ぎ」
「で、で、お婆さん、どうなったん?」
「だから、亡くなっとったやん、夜中に。……病院にも連れて行ってもらえんかっただよ。時間が経っとるからどうのこうので。今……畳の部屋に寝かせてある」
 説明の間に間に嗚咽がまじる。こちらも言葉につまった。
「そりゃ……なんつったらいいか……大変だったなぁ。でも、そんなことになってたんなら、もっと早く教えろよ」
「ごめん。なんか、あせっちゃって……タツヤのこと忘れてた」
「じゃあ、今、家におるんか?」
「うん。親に、お寺と市役所に行ってくるから留守番しとけって言われて。だから、今日、行けそうもない」
「そんなら、しょうがねぇなぁ。まあ元気出して、つっても無理か……辛いとは思うけど、気をしっかり持てよ」
「ありがと。でもさぁ、あたしだめだわ。ひとりぼっちで心細いやん。すっごい不安やん。だから、タツヤ、ちょっと来てくんない? 薬、買っといてあげたからさ、取りにおいでよ」
 冗談じゃない。気の毒だとは思うが、絶対に嫌だ。
「悪いけど……俺、無理だわ。脚が痛くて……あ……それと……して……」
 電波の状態が悪化したことにしてブチ切った。
 そのままカーペットにへたり込む。
 あの線香の匂いと湿っぽい雰囲気――二度とゴメンだ。
 とはいえ、彼女が気がかりではある。
 あいつ、大丈夫だろうか? 今頃、号泣してんじゃないか? 
 心配していたら行かなくてはならないような気分になってきた。やたらと胸がさわぐ。
 僕は発作的に立ち上がってスウェットパンツをはいていた。
 右手がひとりでに動いてテーブル上にスマホと財布を置いたと思ったら、クローゼットの扉を開けてコートを取り出そうとしている。        
 
  おしまい。       





『細歯の櫛(くし)』(改稿)

 道行く姐さんの背後に忍び寄り、片手を尻へとのばした拍子にドブ板を派手に踏み割って前のめりにすっ転んだと聞いた。その際、勢いあまって額を石垣の角にぶつけたらしい。
 これが四五日前のことで、以来源三爺さんは寝込みがちになった。
 現場に居合わせて介抱にあたった長屋のガキにそう教えられた当初は、なにかと口うるさい爺さんが宅でへばっていると知って喜んだものだが、翌日から寝床に呼ばれては雑用を言いつけられるようになって困った。
 金目鯛のようなどこを見ているのか分らないツラで、あれをやっておけ、ついでにこれもと長屋の差配人(管理人)を笠に着て指示してくる。断るそぶりを見せようものなら、小五郎はぐうたらだの、そんなことだから嫁のきてがないだのとまくしたてやがる。
 落ち葉焚きや草むしりといった敷地内ですむ単純作業ならまだしも、まる一日を費やす外まわりには参る。
 さっきも、三里(約12km)向こうの東村まで行って法話を聴き取ってこいときた。七縁寺の住職がありがたいお話を聴かせてくれるという。
 爺さん、あの世が薄っすら見え始めて焼きがまわったようだが、こっちは知ったこっちゃない。俺は三途の川を渡る予定も気もない。欲しい女を抱いて好き勝手に生きてゆくつもりでいるから、しぶとく生き残った藪蚊に血を吸われながら辛気臭い法話を聴かされるのはごめんだ。
 それだけでも迷惑なのに、用件にいちいちいらぬ尻尾がつくから癇に障る。
 おまえはこの辺りにくすぶってばかりいやがるから大工の腕も半人前なんだ、そんなことじゃ郷里の親が泣くぞ、ちったあ外へ出て見分を広げてこい、などと生意気ぬかし、まばらに残った前歯の隙間からたくあん臭いつばを飛ばす。さらには説教の途中で体調をくずし、血膿色のコブをくっつけた頭を枕元の浅桶に突っ込んでゲェッとやる。目を背ける暇もない。
 ちょいとした労働ならともかく、法話の件だけはなんとかならぬものかと渋っていたら、滞納している二ヶ月ぶんの店賃(家賃)を免除してもらえるよう家主にかけあってやってもよいがどうだ? ともちかけられた。それなら断る道理はない。つい先日、普請(建築)を一件片づけた。次まで何日か間があるから都合がいい。   
   
 ヒヨドリのけたたましい金切り声に起こされた勢いで朝っぱらから鳥肌立てて出かけてきた。
 急勾配の峠を越え、あぜ道の水たまりに足をとられ、百を数える石段を上ってずいぶんくたびれた。
 縦縞の端折り忘れた裾がはねた泥水で染みになってやがる。
 足の親指のつけ根もじくじく痛む。すれて赤くなっている。
 なんでまた下駄なんかつっかけてきたんだ? 峠を下りかけたところでかまぼこ板を薄くしたような木片を踏むまでは草鞋(わらじ)を履いていたような――いや、いや、気のせいだろう。――そいつを踏んだ後、カラコロ歩きながらちらっと振り向き、土にまみれた木っ端に目をやったら、誰かが落としたお守り札のように思え、気がとがめて、胸が冷たくなったから、見なかったことにして、立ち止まらずにさっさと下りてきた。
 藁ぶき屋根をのせた山門をくぐると右手に石をくり抜いた手水鉢(ちょうずばち)があった。途中で立ち寄ろうと思っていた茶店が閉まっていて難儀したせいか柄杓(ひしゃく)でいただく湧き水が美味い。雑味がないからすうすう喉を通る。
 奥の知れぬ黒々とした杉林を背に民家ほどの本堂がちょこんとある。柱は貧弱で縁がわずかながら波打っている。お堂というより草庵といった風情だ。
 左右に開け放たれた障子は日に焼け、間に幾人かの爺婆がねずみ色の背を並べている。その右隣には板ぶきの粗末な小屋がひっついている。庫裡(僧侶の住まい)のようだ。
 のんびりと口をすすいでいたら木魚が鳴りだした。あわてて駆けて行って沓脱ぎ石で下駄をぱっぱっと脱ぎ、裸足で上がる。     
 窓が西側にも開いているせいか祭壇部分を除く八畳の堂内は思ったほど暗くない。
 祭壇は粗削りな一枚板で、奥の一段高いところに童ほどの仏像が鎮座している。本尊は――なんだか判らぬ。それにしても香炉に立つ煙の細いこと。ろうそくもちびて消えかけている。
 住職は仏像に対面する形でこちらに背を向けている。低くうなりながら墨染めの袖を震わせてポクポク。
 姿勢を低くして壁際を伝い、和尚から見て右の端に控えた。座布団が見あたらぬが、まあ、いい。裾をそろえ、けば立った畳にかしこまる。  
 読経はすぐに終わった。やけに早かった。実にありがたい。  
 住職が座り直して檀家衆へ柔和な顔を向けた。ナマズのようなどんよりとした眼を細めてにっこり。本日はようこそいらっしゃいました云々とかほざいてつるつるの頭頂を披露する。五十は過ぎていると思われるのだが皮に張りがある。けれど、血色は青黒い。
 頃合いを見計らったように痩せた小僧が盆に湯飲み茶碗を載せてきた。隅々までゆき渡ったところで住職にうながされ、いただく。温い。しかも薄い。ほとんど白湯だ。
「さあて、そろそろ、よろしいかな」
 飛び込みの無礼を詫びようと腰を浮かせたところへ住職が口を開いた。気にしていないようだ。座り直してひざをそろえる。 
「これは、とある尼僧にまつわる話なのですが……」
 さっそく切り出しやがった。ややしゃがれてはいるが滑舌がいいから聴き取りやすい。   
「尼ともうしましても、出家する前は佐吉ともうす売薬を生業とする男でして。この者が何故に尼となったか、その顛末をこれからゆるゆるお伝えして参りたいと存じますんで、どうぞ、おつきあいのほどを……」
 なんだと? 男が尼に? 俺は両のてのひらをひざに当てがって丸っこい横顔を見すえた。
「佐吉は生まれも育ちも遠江国(静岡県西部)でございまして、幼い時分から父親の行商に同行し、細々と手伝いながら仕事を覚えていったともうします。
 十九の夏に流行り病でふた親を亡くした後は貧しい長屋にひとり住まい、万金丹だの反魂丹だのを仕込んだ包みを背負っては薬箱を備えた宅をまわっておりました。 
 二十五の秋のことでございます。得意先の宴にいち出入り業者として招かれました。分家して落成式が済んだばかりの贅をつくしたお屋敷です。
 若いいぐさと檜の香りに満ちた豪奢な座敷に通され、最末端の座にてさほど歳の違わぬ若旦那の自慢話につき合わされまして、祝い酒をいただき、思いつきの世辞を吐いているうちに灯ともし時となりました。
 屋敷を後にしてからは彼岸過ぎの月を雲が覆ったりかすめたりで足元のおぼつかぬ砂利道をぶつくさ愚痴をたれつつ参りまして、神社の裏にさしかかったところで草履がけの足を止めました。 
 行く手の細道と境内を区切る竹垣のそばに何者かがうずくまっております。間合いをつめ、提灯を掲げてみれば、髪は結綿(ゆいわた)、黒襟に黄色い縦縞の着物、素足に下駄と、町娘のようでございますが、垣根の方を向いているので肝心のお顔は陰の中。
 こんな夜更けにどこの娘さんだろう? 
 不審に思っていたところ、灯に気づいたらしく娘が頭だけで振り返りました。広い額に薄い眉。一重のまぶたが左右に濃い影をつくり、高すぎず低すぎずといった鼻と小ぶりの受け口が愛らしい。歳のころは十四五と思われます。 
 佐吉は見慣れぬ顔つきに戸惑いつつも『どうかなされましたかな?』と声をかけました。患っているのなら手持ちの薬でもくれてやろうという心づもりでございます。
 ですが娘に病んでいる気色はなく、すうっと起ち上がって深々と会釈。     
『この辺りですげの櫛(くし)を失くしまして……おっ母さんの形見なので困じ果てております』
 訊けば、遠方の村で商いをしながら母ひとり子ひとりでつつましく暮らしていたけれど病弱だった母親が他界したので縁者をたよりに出てきたともうします。
 佐吉は己の身の上を重ねて胸を痛め、思わず知らず涙をこぼしかけました。が、なんとなしに周囲を見やってふと思い至りました。ここは人家の明かりも届かぬ裏道。すすきや萩の叢々も闇にまぎれて判別がつかぬほど。こんな寂しいところで灯も持たずに櫛探しとは、怪しい。道に不慣れとはいえ娘のひとり歩きも妙だ。森には狐狸が棲むという。ちょうどひと暴れしたかったところだ、ようしふん捕まえてやろう。こう考えまして、『それはお気の毒に。どれどれ、手前も探してみましょう』などと情に打たれた素振りで近づきました。 
 竹垣の際に並んでしゃがみ、つかず離れず様子をうかがいます。
 気どられて逃げられぬよう、それらしく左手の灯をたよりに別の手で短い草をかきわけておりましたら、なにかの拍子に娘がしゃがんだままあっちを向きました。下駄からかかとだけを浮かせたつま先立ちで丸い尻をこちらへさらしております。
 佐吉はこの機を逃すものかと起ち上がって提灯を投げ捨てるや右足に渾身の力を集めて蹴り倒しました。
 うきゃっ、と鳴いたのを耳にも入れず、飛ぶように前にのめって横っ面を地面に打ちつけた奴の背に覆いかぶさり、左手首をとってぐいっとねじ上げる。間をおかずにうつ伏せの上へ馬乗りになって両の手首を帯のところで交差させ、自前の手ぬぐいで縛りつける――。
 後ろ手に押さえつけられた娘は黒髪を無残に振り乱し、砂地に身をよじって泣き叫びます。 
『ひゃぁ、なにをなさいます。痛い、痛い。情けなや』
 けれども佐吉は動じません。野武士のごとき威勢で、『だまれ、くそ狸めが。それとも狐か? 正体を現せ』さらには横倒しで燃え上がる提灯を指して『火あぶりにされたいかっ』
 これで娘は観念したらしく、荒れた息を抑えるようにして白状しました。     
『おそれいりました。おっしゃるっとおり狐でございます。なにとぞお赦しを』    
 男は、ふん思ったとおりだ、危うくたぶらかされるところだった、二度と悪さができぬようこらしめてやる、と拳を振り上げました。 
 動きを察したのか狐は首をぐるりとねじり、潤んだ横目で男を見上げてさも苦し気に訴えます。      
『お待ちをっ。打つおつもりならば末代までお恨みすることになります。見逃してくださるのなら影となって末永くお守りいたします』
 柔らかい腰の上でふんぞり返っていた佐吉は、所詮獣のほざくことゆえ聞き捨ててもかまわぬが……と思いかけましたが、いや用心に越したことはない、こんなことで孫の代まで祟られてはかなわぬ、こう改めまして『見逃してやったら守ってくれるというのは、本当か?』と問いかけました。 
 すると狐はひときわ大きな声できっぱりと。
『はい。神仏に誓ってうそ偽りはございませんっ』            
 ところが男は人並みの信仰心すら持ち合わせておりません。親の追善供養も失念している不幸者でして。どうあれこれ以上関わらぬほうがよかろうと判じ『なら赦してやる。確かに守ってくれよ。きっとだぞ』そう念を押して腰を上げ、手ぬぐいを解いてやりました。         
 地に手をついて起き上がった狐は髪と襟を直しながらこのご恩は決して忘れませぬ云々とくだくだしく礼を述べて森の方へと歩きだしました。
 と、数歩行ったところで佐吉が声を張りました。  
『おいっ、ちょっと待て』
 狐はつまづいたように足を止めて振り返ります。
 その、かすり傷ひとつない、初々しい、はっとした小顔を見つめて『おまえは雄か雌か? いや、まあいい。それにしても可愛らしいな。たいした化けっぷりだ』男は安気になったせいか朗らかに語りかけまして、懐を探って土産にいただいた丸餅を取り出すと雲間からもれた月の光にかざして見せながらふわりと放ってやりました。
『おまえもひとり者か? ならさびしかろう。ほれ、とっておけ』
 胸元へ飛んできた白いやつを両手で受け取った狐はしばらく窮屈そうに肩をすぼめておりましたが、やがて深々とお辞儀を返して藪の暗がりと去って行きました。

 その頃佐吉は、小間物屋の十八になるひとり娘お駒に恋着の情を抱き、一途に想いつめておりました。
 お店は例の若旦那の本家で、お駒は妹にあたります。
 裕福な家柄だけあって娘の立ち居振る舞いには躾がゆきとどいている様子がみられましたが、かといって気取りや堅苦しさはなく、出入りの者らと接する際にも物腰が柔らかでくだけた話しぶりに愛嬌があり評判は上々。これに加えてやや目尻の下がった、おっとりとした童顔にして肉感のある体つきが若い衆の気を引いていたともうします。
 佐吉はここに薬を置いておりましたから半年に一度は顔を合わせ、世間話程度に言葉を交わすこともございました。けれどもいつもそれっきりで想いはつのるばかり。
 どれだけ恋しく慕ってもしがない売薬と分限者の娘とでは釣り合わぬ。とはいえ他人のまま生涯を送るのは耐え難い。ことに年の瀬のわびしさは身にしみる。お駒の面影を胸に朗らかな春夏を憎み、わびしい秋を愛でて凍てつく冬を迎え、そうしてまた年を越すごとに仕事やら金やら飯やら万事が切迫してくるようで脳天から爪先までがぐりぐりねじくれて息苦しい。
 寝つけぬ闇を幾夜もやり過ごし、ある晩想い煩って行商仲間に打ち明けました。けれどもこれがまずいことに酒の席でして。
『やあ、そうとう神経にきてるようだな。妄念の穴倉に頭突っ込んで抜けなくなっちまってんだろ。まあ、いうなれば、てめえでこしらえた幽霊に憑りつかれたようなもんだ。このままでは危ねぇぞ。だいたい男のくせにウジウジしてるからいけねぇや。かまわねぇからやっちまいな。おまえさんは色男で風采は恵まれてんだから、それを武器に口説き倒せばやっこさんだって落ちるだろ』
 佐吉は酔った愚物の焚きつけに深くうなづくと、このままではほんとうに焦がれ死ぬかもしれない、確かに黙っていたんじゃやりきれぬ、一夜の交わりを心の拠りどころとして生きてゆこう、こう決心するに至りました。

 翌年、文月の宵の口。佐吉は提灯を持たずに小間物屋へと向かいました。
 気付け薬にと乾燥させたうなぎの肝をすり固めた丸薬を飲み下して長屋を出たのが入相の鐘から半刻を経た頃。
 人通りの途絶えた神社脇の小路をたどり、隠しておいた竹のはしごを道沿いの藪から引きずり出して、またすたすた。
 お駒の住まいはお店のすぐ西隣りにございまして、高さ一間(約180cm)の板塀が敷地をぐるりと囲っております。
 南塀の外に至った佐吉は辺りに人影がないのを確かめ、汗をふいた手ぬぐいをパンッとはたいてほっかむり。脱いだ草鞋を懐に収めてはしごを立てかけました。
 さあこれを越えたら後には引けぬと覚悟を決め、一段めに黒足袋の右をのせたとたん、足首に太縄をかけられたがごとき痛み。前後左右からぎゅうぎゅう締め付けられる。けれども丸薬が効いているせいか気が張っておりますから、臆病風が足にきたか、なんのこれしきともみほぐしているうちに痛みが引いて参りました。
 気をとりなおして再び足をかけます。軽々とはしごを上って塀の上端へ。そこから腕をのばして内の際に生えている楓の枝をとり、幹を伝い下ってひらりと中腰で。
 庭は三十坪ほどで太い枝を横へ張った黒松が二本と低木が十数株。
 薬箱がある奥の間に通されたこともございましたから、おおよその間取りは承知しておりました。お駒の寝床は庭に面した四畳半で境には低い縁が備わっております。
 楓の根本に小さくなって青葉の裏から透かし見れば、目当ての室の障子が宵闇に明るく浮かび上がって早くおいでと誘っているよう。
 佐吉はさらに腰を落とし、東の石灯篭を経て庭の右側から回り込むように近づきました。地を覆った苔が足音を消してくれるから歩もはかどります。
 戸袋の前まで参りますと猫にでもなったつもりで縁の下にぴたり。尻をついて息をととのえました。
 上では話し声どころか物音ひとついたしません。女の様子を気にしながら機会をうかがいますが、とにかく蚊がひどい。首筋に、手の甲に、ひっきりなしにたかります。追っても追ってもきりがない。
 根がつきて風通しのよい灯篭の裏にでも場所を変えようかと尻を上げたところ、すすすっと障子がすべる音。みしり、みしり、縁の板が鳴ったかと思ったらガタガタと戸袋から雨戸を引き出す気配。  
 縁の端から身を乗り出し、首をのばして仰ぎ見れば、白地の寝間着に愛くるしい横顔。眠そうではありますがお駒に相違ありません。 
 この時を待っていた。ぐずぐずしてはいられない。
 すかさず使用人風の優し気な声色を装って呼びかけました。   
『もし、お嬢さん』 
 虚を突かれたのか、戸から手を離したお駒は『やっ、誰だい?』頓狂な声を出して辺りをきょろきょろ。
 草鞋を足元に置いた佐吉はほっかむりを脱いで驚かさぬようゆっくりと腰をのばしながら縁の脇に立ち『どうも、夜分にすみません。佐吉です。売薬の。いつもお世話になっております』と手慣れの偽微笑でかしこまりました。
 お駒は頬をこわばらせたまま『佐吉さん? ああ、あの……』
 どうやら判ったようです。ところが襟を素早く引き合わせ『こんな時分に行商人風情がなんの用です? 人を呼びますよ』冷たくあしらって奥へと逃れかかる。
 男は『ああっ』と腕をのばし『お待ちをっ。実はよんどころない相談事があって参上したのです』と引き止める。   
 相談事という言葉に引っかかったらしいお駒は障子の桟にかけた右手を下ろして敷居の上で振り返りました。表情がいくぶん和らいだようですが、それでも不審気な眼はそのままに首を傾げて『はて? なんでございましょう?』
 男はここぞとばかりに用意していた台詞を口にしました。
『それもこれもお嬢さんのお優しいお人柄を見込んでのこと。どうか人助けと思ってお力添えをいただきたく』
 これで気がゆるんだのか、目をしばたきながら縁側まで出て参りました。
『人助けとはなんのことです? 手短にお願いしますよ』
 佐吉は言葉をつくして口説きにかかりました。お嬢さんは遠江国一の美貌だの、浜松城の某姫より美しいだの、男どもは口をそろえて褒めちぎるだの……。
 女はしばらく穏やかな面持ちで聴き惚れていたようでしたが、世辞に飽きたのか、照れたのか、とぎれたところへ『それで、ご相談というのは?』と挟み込みました。
 男はいよいよ肝を据え、ひどく思いつめた調子で訴えました。
『そんな器量良しのお嬢さんですから手前も夢に見ない日はございません。枕を共にできたらどれほどわびしい心の慰めになるかと。一夜だけで結構です。願いを叶えていただけませんでしょうか』 
 ところが、話し終わらぬうちに女は面食らったように眉を上げ、おびえ顔を横へ振って後ずさります。
『そのようなことは相談とはもうしませんし、とうていお請けできません。お引き取りください』
 男は泣きつかんばかりに『そこをなんとか』と助けを求める病人さながら取りすがりますが、女は気色ばんで『お引き取りをっ』とぴしゃり。髪の乱れも厭わぬ風にかぶりを振り、素足を後ろへすべらせてかかとで敷居を探るよう。 
 このつれない返事と仕草と、なによりもあからさまな厭悪の眼差しが佐吉の態度を一転させました。
 出し抜けに縁の上へ飛び乗るや肩をいからせて息がかかるほどにぐっと詰め寄り、障子に血路を阻まれて後のない女の口を片手でふさいで『嫌とは言わせねぇっ』
 続けざまに懐で握った匕首(あいくち 短刀)の白い柄をちょいと上へずらして胸元の合わせ目からちらり。
『なめてもらっては困るな。あんたとならこの場で心中したってかまわねぇんだぜ。こっちはそれだけの覚悟で来てんだ』
 せいいっぱい凄んで言い放ちました。しかしそんな気はございません。田舎芝居から拝借した脅し文句を並べ立てただけのこと。匕首も質流れのなまくらで。
 けれどもお駒はひどくたじろいで両眼をみはり、引きつった顔を後ろへと反らせつつ荒い吐息の間に間に男の手の下でこもった声を震わせます。
『どうか……乱暴なことだけは……一度だけ、今宵限りなら……そう誓ってくださるんなら……』
 これを受けて佐吉は、       
『ああ、約束しよう。おとなしくしていれば手荒なまねはしない。だが騒ぎ立てたら承知しねぇ』
 そうしてうなづく口元から手を離しました。
 なんとか想いは遂げられそうですが心は晴れません。たっての願いをつっぱねられていたく傷ついておりましたから、いっそ手荒に扱ってやろうとやけになり、ふてぶてしい目くばせで寝床へとうながします。
 袖で目元を押さえながらよろめくように明るい間へと戻ったお駒は、色を失った顔でうなだれて畳の上にぺしゃん。ほつれた髷(まげ)を直す気力もない様で行燈をずるりと引き寄せました。
 佐吉は障子を閉めて女の右隣へ。衣の裾を後ろへ払い、あぐらをかいて無遠慮に咳払いをひとつ。
 こうなったからには愛想などいらぬ。春画のごとき絡みを思う存分に試してやろう。
 ついさっきまで冷遇に憤っていたというのに悔しさもどこへやら、夢にまで見た女体が温みを伝えるほどそばにあるというだけで息が弾みます。
 びんつけ油の香りに酔いしれながら佐吉は左腕をしおれた肩へとまわして強引に抱き寄せました。
 ううっと低くうめくそのはだけかかった襟元を右手で押し下げつつ汗でぐっしょり濡れた柔らかいところへ指先を潜り込ませます。
 すると、うつむいていた女が弾かれたように蒼ざめた顔を上げました。灯を映した黒目を横へと流し、押し殺した声で『なにか……物音が』そうもうしまして唐紙の奥を気にする素振り。
 男がはっとしてそちらへ顔を向けた刹那、女はぐにゃりと身をよじってゆるんだ腕をすり抜けると倒れ込むようにして行燈を抱え、一息に吹き消しました。
『おい、なにをする?』 
 目が利かなくなった佐吉はうろたえて耳を引き締めます。
 お駒は幼子を叱るように『静かにっ』そうして『お父っつあんが起きたかも。ちょっと見て参りますんで、ひとまずお庭にお隠れを。すぐそこに松の植え替えのため庭師に掘らせた穴がございます』息も継がずにそうもうしながら畳をするするいざり、唐紙がすべる音をきりに気配を消してしまいました。
 男は引き止める暇もございません。しまった、と悔いたがもう遅い。
 奥で物音、女は逃げる――残された方は芯から怖気づいて腰を浮かせにかかる。
 こうしてはおられぬとばかりになかば手探りで障子を開け閉めして室を出るや縁の下の草鞋をとって庭のくぼみを探ります。
 穴は真正面の一間半(約270cm)先にございました。深さ幅ともに三尺(約91cm)ほど。ここに背を丸めて縮こまります。
 室の真ん前で心もとないうえに暗く湿気って土臭い。ひざを抱えていると胸が激しくわなないてじっとしていることさえも苦しい。  
 してやられた。お駒は二度と戻るまい。今ごろは家の者に助けを求めていることだろう。塀の外へ逃げるべきか、とどまるべきか? いや、あの女に指示された場所などすぐにでも捨てたほうが身のためだが、そうはいってもどこへ逃れたらよいものか。楓に登って塀を越えようにも店の者が外の小路へ先回りしているかもしれぬ……。
 草鞋に滲み入る湿気に悩まされながら切羽詰まって思考を乱しておりますと、頭上から女の細い声。
『佐吉さま、佐吉さま』
 お駒と思って振り仰げばどうも様子が違う。目をこらすと昨年放免した狐です。わずかながら光を放っているようで不安気に見下ろす娘の顔が暗がりにぼうっと浮いて見えます。
 驚いた佐吉がこんなところへ何用かと問えば、『ここはいけません。あちらへお移りなさい。ご案内いたします』ともうします。
『さあ、さあ、早くっ』そう急き立てられ、差し下ろされた白い手を頼って穴を出ました。身をかがめ、狐について庭の西角へ。
 ふたりがつんのめりながら大松の陰に身を隠した直後、屋敷の裏手に怒号があがりました。
 男の声は徐々に数を増し、使用人らしき者がひとり、またひとりと庭に駆け込んで参りました。数名の者らが提灯やら竹槍やらを手にわめき散らします。
『盗人はどこだっ』『逃がすんじゃねぇぞ』『ぶちのめしてくれるっ』  
 闇を破って湧き上がる雄たけびに応じるかのように行燈が灯りました。障子に映った人影が濃くなったと同時に真ん中から左へ威勢よく割れて、そこには髪をおどろに乱したお駒の立ち姿。手にした包丁の先で庭の穴を示し、猛り狂った尖り声を放ちます。
『あれ、あそこに怪しい者がっ』
 男どもはすぐさま飛んで行って穴をとり囲むと竹槍の先を光の届かぬ底へザックザックと突き立てました。
 これを目の当たりにした佐吉はもう生きた心地がしません。まばたきすら忘れ、苔に腰を落として太い幹にすがっているのがやっとです。
 湿ってふやけた木槌で打ちつけるがごとく鼓動が高鳴り、喉が痛んで舌の根に湧いたつばを呑み下すのも容易じゃない。
 そんな男の様子を見かねたのか、背後で小さくなっていた狐が男のそでをくくっと引きました。
『外へ出ましょう。どうぞ、こちらへ』

 きわどく難を逃れたふたりは、どこをどう通り抜けてきたのか表の暗い小路に転がり出ていました。
 それからは一目散。息せき切って狐と走りだしました。どちらともなく、後になり、先になり、温みのこもった埃臭い路地を駆けに駆け、角を折れるごとに後ろを見返りつつ砂利道をたどります。屋敷から遠ざかろうと、南の神社をめざしてひたすらに――。けれどもひざの震えが治まらず、草鞋の裏に砂利が食い込むから地を蹴る覚えもあいまいでよろめいたり、つまづいたり――あと半町(約50m)のところでとうとう力つきて低い土塀に背をあずけました。
 路上に両脚を投げ出した男は汗に濡れた肩を上下させてあえぐばかりで声もでません。
 思いを遂げたら潔く村を離れるつもりでいたのだが、こんなことになろうとは……。
 生の拠り所となるはずだった一夜が、数年来の夢あこがれが、あっけなく破れ去ったことよりも、ほれた女に命をとられかけた痛苦がことさら魂をいたぶる。竹槍を突き立てる音が耳の奥に生々しく響き、免れようとかぶりを振れば忌まわしい言葉がギリリと歯噛みを誘う。
『行商人風情がなんの用です』『あそこに怪しい者がっ』
 太ももやらひざ頭やらを手当たりしだいに叩いて、引っ掻いて、殴りつけてはうめき、打ちひしがれて仰いだ空に月は無し。 
 土塀の反対側は粗雑な柴垣でして、その向こうは孟宗竹の林が社を隠すようにこんもりと。奥に控える森との見境もなく、しんと静まりかえって人家の明かりもございません。
 そういえば、あの宵もこんな薄曇りだったか……。
 闇に目を慣らしているうち狐と出会った晩が甦って参りました。
 我に返った佐吉はあぐらを組んで襟を正すと左隣へ身を折って『おかげで命拾いをした。礼をいう。このとおりだ』そうして小娘の真摯な横顔を見つめながら『約束を違えずに守ってくれたのだなぁ』と感慨深げに。
 しゃがんでいた狐っ娘は抱えたひざの上でちょこんとうなづいて応えます。
 そのいじらしい仕草に打たれ、男のしょげて乱れた心は落ち着きを取り戻しはじめました。
 身を狐の方へ傾け、目を細めて『そういえば、はしごを上る折に足が痛んだが、あれもおまえの仕業だったのか?』
 男は危険を察した狐が引き止めてくれたものと思い、ねぎらいの言葉を用意してそうたずねたのですが、当の狐はこれにはうなづきませんで。柔らかそうな頬がこわばったかと思うと口元をきゅっと引き締め、鋭い横眼でぎろりと睨み返してきました。  
 狐とも娘とも見えぬ妖しい眼光に射られた佐吉は言葉を失くしてたじろぐばかり。ばつの悪さにいたたまれず、目線をあらぬ方へとちらちら逸らします。そうしてずいぶん間をおいた後、大げさに顔をしかめて忌々しそうにつぶやきました。
『ああ、いやだ、いやだ。女はおっかねぇ』 
 すると狐は憤激の色をいっそうあらわにしてひと息に。    
『無礼なっ、わたしも女ですのよっ』
 人の口から出たとは思われぬ、凝った夜気を引き裂く鋭い怒声に気がとんだ男は、崩れかかった柴垣の破れ目を見すえたまま呼吸を忘れました。
 うなじを冷たい手でつかまれたようにはっとして左へ目をやったときにはもはや狐の姿はなく、赤子の泣き声にも似た咆哮だけが神社の森へと遠ざかってゆきます。 
 あれは何者か? いま、無礼な、と言わなかったか? 狐と称していたが、それどころではあるまい。常にきれいな娘のなりで、狐の姿など拝んだことがない――。
 肝を冷やして起ち上がろうとしたところ、くらりとよろめいて体の異変に気づきました。股座が妙にすうすうします。前をかき割り、ふんどしを横へずらしてみればあるはずのものがございません。竿も玉もすっかり消えて茂った毛の只中に小便の穴がぽつん。
 狂わんばかりに震えあがった佐吉は涙をぼとぼと落として再びへたり込みました。もはやこれまでと懐の匕首に手をかけますが、これが皮と肉を切り裂いてくれそうもないなまくらときた。
 いつまでも道端で泣いているわけには参りません。病んだ老犬のごとき定まらぬ足取りで神社を迂回する通りへと踏みだしました。けれどもお店の男どもがそっちの辻へ先回りしているかもしれぬ、方向を違えたほうがよさそうだ、こう考えまして北の隣村へと続く山すその野道へ。おぞ毛を立てて草深い小川沿いを亡霊のように伝い歩きます。
 蜘蛛の巣をまとい、ススキに脛を切られてもおかまいなしに進み続けてようよう村はずれのどん詰まり。土手を越えたあっち側は北の村となる処。
 いつの間にやら雲が散ってお月様が顔をのぞかせたらしく、小さなかわいらしいお地蔵様が土手の草に埋もれかかってひょっこりと。
 その眠っているようなそうでもないような、どこか懐かし気な御顔を拝んだとたん、佐吉は膝を折って泣き崩れました。前にのめってお地蔵様の御前にひれ伏すと額を砂利に打ちつけて『お父っつあん、おっ母さん、すまねぇ。おいらぁ、みっともねぇまねをしちまった。すまねぇなぁ』嗚咽まじりに詫び言を並べます。
 そうこうしているうちに東の空が白んで参りました。
 人の道を踏み外し、もはや男でもなくなった佐吉はいよいよ堕ちきった身を捨てる覚悟。
 村を出るなりその足で北へ北へと上って天竜川の吊り橋を渡り、山腹に現れた門扉を倒れかかるように叩きました。
 そこで髪を落とした後は一心不乱に経を唱え、春夏を恨まず秋冬に人を偲ばず、ひたすら修行に励んだともうします」

 住職、ここまで語ると、誰と目を合わせるでもなくひとりうなづいて湯飲み茶碗に口をつけた。ちょっとすすって盆にもどして、うつむき加減で黙り込む。
 年寄り連中は口を半開きにして分かったような分らぬような顔で天井をあおいだり、横を向いたり。
 それにしても――なんだこのオチは。これで終わりか? 解釈は無しか? これでは法話とは言えぬ。噺家がご機嫌うかがいにやる艶笑小咄の類だ。しかも後味が悪すぎて笑いようがない。
 佐吉とやらの愚劣っぷりには大いにあきれた。高望みもさることながら看板娘の愛想笑いを真に受けてほれかかるなんざ、どうかしている。おめでたい野郎もいたものだ。器量良しでお日様みたいに微笑んでいようが、言葉使いが上品だろうが、そこは商人の娘。腹の中は分かったものではない。あれ? 男も商人の端くれだったか。なら狐狸の化かし合いだ。珍しくもない。
 それはさておき、女に入れ込むのもほどほどにといった戒めは耳が痛むところだが、化け狐だの鬼神だのの色恋に至ってはとうてい受け入れられぬ。馬鹿馬鹿しいうえに仔細がすぎる。ありもしないことを見てきたかのように語りやがる。どうせイチモツは嫉妬に狂った年増にでも食いちぎられたのだろう。語り継がれるうちにいじくられ、ひねくられて、つまらぬ尾ひれがついたとみえる。寺をあずかる僧侶が噴飯ものの与太噺を垂れ流すとはけしからん。真面目に聴いて損こいた。  
 真偽はどうであれ、ひとまず聴き取った。けれども――なんと伝えたらよいものか。源三爺さんは姐さんの件で痛い思いをしているだけにそのまま語れば嫌味にも聞こえる。歳をくっているくせに頭があどけないものだから機嫌を損ねかねない。八つ当たりでもされたら事だ。
 寺を後にしてからというもの、田んぼ脇の泥道に重い足を運びながら思案にくれている。
  
 二町(約220m)ほど歩いてぬかるみを逃れたはいいが、辻を折れて峠を上りかかったところで腹が減ってきた。
 とうに昼飯時を過ぎている。西の里までまだ二里(約8km)はある。ここから道中で最も勾配がきつい難所だというのに脚腰に力が入らぬのはつらい。
 上るにつれ足元がごつごつしてきた。うっかりしていると地面から半身を出した石に下駄歯をとられて転びそうになる。
 顔を上げれば、紅葉の盛りにはまだまだ早い。楓や山桜の葉には黄色がかったのもあるが、ほとんどが褪せた青味を残している。しばらくすると貧弱な杉の木立が左右から押し迫ってきて細かい葉々が寄ってたかって高い空を隠そうとする。落ちてくる日差しが細くてたよりないものだから足の運びに精が出ない。
 鼻にとどくのは松と杉だ。正面から乾いた風が来るごとに匂う。舌の根に微かな苦みを覚えるようなぴりっとした香りが息を深くさせる。新芽が青臭い時期との違いを嗅ぎ分けるのも秋山歩きの楽しみではあるが、今はかまどの薪を思い出させるから空きっ腹に堪える。
 上りも終盤となったころ。日陰に垂れ下がったアケビのつるに目を奪われていたら、右の土手を覆った羊歯(シダ)の下から小さな奴が勢いよく飛び出してきた。
 イタチだ。足元を恐るべき速さで左へと突っ切ったからびっくり。おわっとよろめいて、とっさに左足を道端へ踏みかけた。そこが道だと思ったからそうしたのだが、実は路肩からはみ出した濡れ落ち葉のひさしだ。あっさり踏み抜いて赤土の崖をずるずる。一間ほど背で滑って下の獣径(けものみち)に尻をついた。   
 脱げた下駄はふたつとも崖を這うツタが捕らえていた。衣の背とふんどしの尻に泥がこってり付いている。怪我がなくて幸いだったが、思わぬ滑落に気力を削がれてしょんぼり。枯れ葉で泥をぬぐい、崖を後ろにして杉の倒木に腰を下ろす。
 鬱蒼とした藪かと疑ったがそうでもない。上の街道よりは暗いが、赤松の林で木はまばら。道の脇にすすきがあるばかりでそれも腰の丈だから竹林よりは見通しがきく。
 足が重くなった。下駄歯の間に土が詰まっている。手折った小枝でこそぎ落す。きれいになったところで、さて、と腰を上げ、首を巡らせて街道へ戻る術を探っていると、林の奥で奇異な声がする。あいやぁ、ほれさ、ほいさ、と拍子をとっている。ガキか女のようだ。右手へちょっと行った小高いところに太い松があって、そっちの方から聞こえてくる。
 なに者だろうかと目をこらしていると、幹の陰から十五六の娘が朗らかに手を振り足を振り踊り出てきた。
 茶ばんだ寸足らずの着物に草鞋履き。浅黒い丸顔で目は細長くこめかみの方へと切れている。そいつが、どえらい笑顔で、よっ、それっ、ほいさっと発する声も歯切れよく、てのひらを見せたり裏返したりしながら枯れ松葉を踏んで道なりに下りてくる。ひとつに束ねた黒髪の尻尾を左右に踊らせ、不規則な足取りで確かに近づいてくる。もう十五間(約27m)ほどにまで迫った。        
 山中でくるくる舞うとは……あれは、まともな人じゃない。狂女か? 妖怪変化などは信じちゃいなかったが、聞くと見るのとでは大違い。場所柄からして魑魅魍魎の類を疑いたくなる。どっちにしても、気をぬいていると大変なことになりそうだ。怖くはない、しっかりしろと己を励まし、拳をにぎりしめて肝を据えようと試みるが、思いとは裏腹に息が荒れて冷や汗が首を伝う。  
 奥歯を噛みしめ、全身の筋を突っ張って、たのむから横道に逸れてくれ、こっちに来ないでくれ、と願っているうちにちらっと目が合ってしまった。見つからぬようにと身をかがめていたのだが……。
 逃げるには遅すぎる。裏は崖、正面と左は目がとどくところまでずうっと松林で、下駄履きに空腹ゆえ胆力も欠き遁走は困難。何事もなく通り過ぎてくれるのを祈るしかない。  
 ところが、祈りもむなしく、よいさっ、ほいさっとすいすい寄ってきてすぐ目の前に立ち止まりやがった。
 娘はなにを思ったか、右にくるりと一回転して猛然と笑いかけてきた。
「おほほほっ」
 自分は鳥肌がすごいことになっている。背筋も足もすくんでぴくりとも動けない。腐って湿気って苔だらけの木に尻をつけてひたすらおびえている。奴の思惑が読めないから恐ろしくてかなわない。
 両のまぶたを全開にして歯を鳴らしていたら、さっきとは逆に素早く回ってこちらを見下ろして、
「ぬはははっ」
 俺は息が止まりそうだ。
 発作的に裏返った声でわめきたてた。
「このぉっ、ちっくしょう。ううっ、なんだ、てめぇはっ」
 それでも奴は動きを止めない。身体を左右にひねり、手をひらひら翻してこんな口をきいた。
「あたしゃ、この先にある炭焼小屋の番人の妹だよ。あははっ。あんたは、どこの、どなた?」
 どうも妖怪の類ではないらしい。ということは、タガが外れた陽気な馬鹿か? 会話ができそうだから応えてみる。
「お、俺は西の村の大工だ。そこの崖から落ちたんで、休んでたところだ」
「そうかい。あはははっ」
「笑うなっ。炭焼きがなんで踊り狂ってやがんだっ」
「にぎりめしをとどけに来たのさ。でも、兄ちゃん、一足違いで下りちまったようで」
 身体をくねらせてとぼけた返答をする。
「いや……だから……なんで踊ってんだって訊いてんだ。気色悪りぃぞ。止めねぇかっ」
「あたしも弱ってんだよぅ。どうにも止まらなくなっちまって……」
「てめぇ、頭がおかしいのか?」
「まあ、聴いておくれよぅ」   
「聴いてらぁ。へらへらしてねぇで、さっさとしゃべれ」
 娘はあい変らずのふざけた動きで語り出した。
「それでねぇ、小屋に行ったら兄ちゃんがいなかったもんで、ひとりでお昼をいただいたんよ。ふふっ。壁にちっこい茸が吊るしてあったんで、それをおかずにしてさ。そしたら、なんだかゆかいな心地になって、その気もないのに手足が勝手に動き出して、ほほほっ。……あぁ、恥ずかしいったらありゃしない」
「そりゃ……あれだ……笑い茸だ。それ食って変になっちまったと?」
「うん、うん。あははっ。それにしても、さっきからなにがおかしくて笑ってんだか。あぁ、情けない……」
 始終にこにこしていやがるから毒気にあたったことの切実さが伝わってこない。
「ったく、おどかしやがって」
 素性と事情が分かってほっとしたはいいが、気を張っていたせいで疲れがどっと出て空きっ腹に響いた。栗でもアケビでも、なんでもいいから食いたいものだが……。
「なあ、あんた、にぎりめしは残ってねぇのか?」
 娘はケロリとして言う。
「全部食っちまった。へへっ」
「くそぉっ」
「腹減ってんのかい?」
「ああ」
「そんなら、これやるよ」
 そう言って腰に結わえていた草履入れほどの麻袋をほいっと差し出した。
 受け取って中をのぞくと、しめじに似た一寸(約3cm)ばかりの茸がどっさり。
「まさか、笑い茸じゃあるめぇな?」と訊けば、そうだとぬかす。
「ふふふっ……でも美味いよ」  
 半生のやつをひとつだけつまみ出してみる。淡い褐色で閉じ気味のかさが細かくひび割れている。表面は乾いているが指先で押すと弾力がある。鼻先に近づけてクンクンやってみた。ほとんど臭わない。
「ほんとに食えるのかよ?」
「食ってみな。あたしゃ、ちょいと食いすぎたんだ。五つまでなら平気らしいよ。ふふふっ」
「あんた、いくつ食った?」
「六つか、七つか……腹が空いてたからつい……」
「ふうん」
 娘の醜態に苦りきってはいたが飢えには勝てず、前歯でかさをかじってみた。シイタケに比べればかなり薄味だが塩がふってあるせいか口あたりは悪くない。
 残りの部分を放り込む。石突きの筋が歯の間に挟まる。柔らかいゴボウの尻尾を噛んでいるようでもある。しかし今は贅沢を言っている場合ではない。空腹が次のに手を出させる。
 ひとつ、ふたつとつまんでいるうちに身の上話になった。訊けば東村の者で、寺の境内に建つ庫裡の一部を兄と間借りしているという。親はないらしい。
「普段はなにをやってんだ?」
「炭の仕分けや配達さ」  
「そいつぁ、重くて、てぇへんだろ」
「まあね。お寺の石段が長いからきついね。でも慣れたさ」
「にしても、女の身で炭の配達たぁ感心感心」
 出会ったときよりも動作がゆったりしている。突っ立って身をよじる程度だ。
 話題が尽きたところで、娘がなにか思い出したような顔をした。
「そういやぁ、すげの櫛を見なかったかい? 御札みたいな角ばった細歯のやつ。どこかに落としちまってね……おっかさんの形見なんだけどさ」
「いや、見ねぇなぁ。どの辺で失くしたね?」
「それが分からないから参ってんだよ」
「炭焼き小屋じゃねぇのか?」
「小屋じゃないよ。本当に知らないのかい?」
「知らねえなぁ」
 一瞬、奴の黒目が大きくなって笑みが消えた気がした。
 俺は気味が悪かったから話題を転じた。
「ところで、名はなんという?」
「かな」
「へえ、おかなさんか。可愛らしい良い名だ」
「ふふっ。あんたは?」
「小五郎」
「滑稽噺に出てきそうな間抜けな名だねぇ。あははっ」
「うるせぇ」
 いけね、話に気をとられてついつい食いすぎた。今しがた喉を通ったのが――八つめだ。気づけば可笑しくもないのにケラケラ笑っている。ソラ笑いだから阿呆らしいことこのうえない。
 ふと夏の香りを嗅いだ。山ぶどう、アケビ、山ももとは違う。もっと上品で、濃密な……。炎天下の往来で、熟しきる一歩手前の桃を満載した荷車とすれ違った際に匂うような、思わず振り返ってひとつおくれと声をかけたくなるような、涼やかに酸っぱく、まとわりつくように甘い……。
 うっとりして胸いっぱいに吸い込んで天を仰げば、松や杉や楓の葉々の、濃いの薄いの黄味がかったの、細い、広い、ギザギザした奴らを絶妙な按配で重ねて、さっと散らして、中空へ吊るしとどめた、その遠く、陽に照り映えた雲片が金色の腹を閃かせて流れ去る。
 左の方でドサッと音がした。枯れ松葉が積もったところ。娘が仰向けに倒れている。踊り疲れたらしい。帯がゆるんで前がはだけている。豊かな片乳と肉付のいい太ももがむき出しだ。笑顔ともあえぎ顔ともつかぬ大の字の姿態が住職の話に出てきた狐っ娘の印象と重なる――。     

 どうにかこうにか、日没には間にあった。  
 寒椿の蕾がほころびかけた生垣の外をぐるりと巡り、南の切れめから長屋の通路に入る。石を載せた板ぶき屋根の上は夕映えのはしりだ。じきにお日様が色めき立って無数の羊雲を焼きつくすだろう。
 左手前の軒下に竹を組んだ縁台がある。どてらを羽織ったチビが煙管(キセル)をくわえてぼんやりしている。
「ありゃ、源三さん。ああ苦しい、お助けを。あっはっはっ」 
 爺さん、年寄りくさいゆったりとした動きで頭を上げ、こっちに笑顔を向けた。
「おお、小五郎。遅かったじゃないか。待ちくたびれぞ。どんな話だったね? 忘れんうちに聴かせてくれ」
 煙管を煙草盆のヘリでコンッとやって空いた方で手招きをする。  
 俺は、よっ、はっ、ほいさっと拍子をとりつつ歩み寄り、爺さんの前でくりんと回って、両袖を左右にすぱっと広げて、
「いや、こっちはそれどころじゃねぇんで。わっはっはっ」
 歩きづめのうえに踊りづめ、さらに笑いづめでぶっ倒れそうだ。奴と向き合うかたちで手足をひょいひょい振り続ける。
 むこうはにわかにあきれ顔。  
「おまえ、なにやってんだ? 祭りでもあるめぇし」
「それが……その……わはっ、わはっ」
「落ち着きのねぇ野郎だなぁ。いやにご機嫌じゃないか。顔を赤くして……あっ、まさか、寺に行かずに呑んだくれてたんじゃあるめぇなっ」
 形相がきゅっと険しくなった。
 俺は、ほいさっ、よいさっ、と舞いつつも、へどもどして返す。
「違う、違う。実は茸を食いすぎまして。はははっ」    
「マツタケを肴にやってたのか」
「いや、笑い茸を……」
「笑いたけりゃ後にせい。夜中にひとりで腹抱えてろ。……ったく、説法すっぽかして酒びたりたぁふてぇ野郎だ」
 終いまで聞かずに見当違いの叱咤を食らわせてきて、「このバチ当たりがっ」と吠える。まるで聞き分けがない。俺がこんな様だから早口でがなりたてたくなるのも分らぬではないが。 
「いや、ですから、呑んでません。勘違いですって。話せば分かる」
「やかましいわっ。どう見たって酔っ払いじゃないか。言い訳はたくさんだ」
 もうだめだ。話しにならぬ。ここはごまかすなりしてさっさとずらかり、櫃(ひつ)の底に残っているはずの冷や飯を腹に入れよう。ただ、この、捨て置き難い苦しみだけはなんとかせねば。
「そんなことより、てえへんなことになっちまって。聴いておくんなさい」
「おっ、なんだっ」
「さっきから股がかゆいのかゆくねぇのって、もう、気が違いそうで。塗り薬があったら分けてもらいてぇんですが」
「股がかゆい? おまえは、どこでなにをしていたんだ?」
 眉根を寄せ、夕方逃げ出して翌朝に帰ってきた飼い犬を問いただすように訊く。実際、さかりのついた犬みたいなことをやっていたから恥ずかしすぎて悩ましい。
「面目ねぇ話ですが、どうも狐っ娘に毛ジラミうつされちまったみてぇで……。たはっ、たはっ」
「狐だとぉ? てめぇ、大丈夫か?」
 大丈夫ではないだろう。自分で言うのもナンだが、正気かどうかも疑わしい。気ばかりあせって言葉にならない。
「いやぁ、あのぅ……野山にいる獣じゃなくって、法話に出てきた町娘の……あれ? 炭焼きの――おかな、だっけか? こんがらがって誰が誰だか分かりゃしねぇ。うひゃひゃっ……て、笑ってる場合じゃねぇんだが」  
「なにをぶつぶつほざいてやがんだっ」  
 爺さん、いきり立って縁台脇の桶に突っ込んであった柄杓をつかみ、
「しっかりしねぇか。馬鹿っ」  
 俺の額をカツンッと打ちやがった。底の角が当たったから骨に響いてどいてぇ。ひさしと柱がひん曲がって見えるほどにくらっときた。
 衝撃のせいかどうかは知らぬが、ふっと胸が騒いだ。俺が抱いたのは炭焼きの妹だ。なんで法話の狐っ娘と混同したのだろう? 妙といえば――これまで狐が人を化かすなんて話は聞き流してきたが、おかなは、なにか臭う。滑落したところへ待っていたかのように現れやがった。後の態度もおかしいし、そもそも警戒心の強いイタチが人前を横切ることからして珍しい。笑い茸の影響だけでは説明がつかないことがいろいろある。  
「あのぅ、ちとおたずねしますが……」  
 老いぼれを落ち着かせるためにしおらしく首をすくめ、口ぶりだけは神妙にして問いかけた。そうしたら、思いが通じたのか、柄杓を横っちょに置いて「なんだ?」と乗ってきた。
「東村へ抜ける峠のあたりに炭焼き小屋なんかありましたっけ?」
 爺さんはちょっとばかし遠い目をして声を落とし、「炭焼きのぉ、小屋かぁ……うん、まあ、あるにはあるが」とはっきりしない。
「へえ、あるんすか。どこに?」と問えば、目をしょぼつかせて含みのある物言い。
「んと……あれだ……道から外れた赤松林のずうっと奥の方。今は使われてないがな」
「使われてない?」  
「おう。ひとりで小屋を守っていた若者がおったが、そいつが亡くなったでなぁ」
「えっ」
「ウチに来る炭屋の親父が言うには、だが――その男に親はなくて、妹とふたりで暮らしておったそうな。ところが、一昨年の夏頃にひと悶着あって、住まいの方で妹ともども焼け死んだ」
 おかなは番人の妹と言っていた。で、にぎりめしをとどけに行ったとか、まるで兄が連日小屋で作業してるかのような口ぶりだった。――どうなってんだ?
「妹ともども焼け死んだって……んな馬鹿な」
「馬鹿とはなんだっ。うそだと思うんなら炭屋に訊いてみろ」
 それが本当なら――さっきまで一緒にいたおかなはこの世のものではない。
 両ひざから力が抜けて倒れそうになった。とっさに、それっ、よいしょっと拍子をとって踏みとどまり、惰性でくりんと回って、
「わははははっ」
 豪快に笑い飛ばすことで凄まじい恐怖を抑え込んだ。
 爺さんは俺の苦労を知らぬから柄杓を振りまわして怒鳴りやがる。
「こらっ、人の不幸を笑うやつがあるかっ」
 そんなつもりはないのだが、説明するのも難儀だ。どうせ信じてはくれまい。
「すんません。ぶったまげて、つい」
 しかし、あいつが幽霊だったとは。そんなものが真昼間に出ようとは。まだ目の奥にとぼけた笑顔がこびりついているし、この両腕と股間が柔らかな肉を覚えているだけに信じ難い。けれど源三爺さんは真顔も真顔。
 こうなったら事の真相を探らないわけにはゆかない。気が急いてしかたがないからかなり無理して手足の動きを鎮め、一歩寄って問いかけた。
「ひと悶着って、なにがあったんで?」
「こんな気が滅入るようなもんを聴きたいのか? めんどくせぇなぁ」
 こっちのあせりをよそにもったいぶりやがる。   
「そうおっしゃらずに」
 爺さんは鼻の横をかいたり、あごをいじったりしながら語った。
「なんだっけかな……あれだ、そのぅ……なんでも兄には密かに想いを寄せる女があってな……ま、片恋だわ。そいつに夜這をしかけたが冷たくされてな、気に病んで酒びたりになった。んで、兄とただならぬ関係だった妹が悋気(嫉妬)をこじらせたとかでイチモツに刃を立てやがった。兄は一命をとりとめたが、周りの者らが妹をきつく責め立てたらしくて、ある夜やけを起こして火を放った――という話だが……どこまでが本当だか。どっちにしても哀れなことよ」
 寺で聴いたような話だ。それにしても――好いた女にふられて気がふさぐのは分かるが、兄妹がただならぬ関係とか、妹が兄のちんちんに斬りかかるとかは尋常ではない。なんでそんなことに? あっ、笑い茸。おかなは小屋に吊るされていたと言っていた。ってことは、兄は常用していたはず。あるいは妹も。それで狂ったようになって……。しかし、なんで今頃になって化けて出たのか……。
 冬の野池に頭から飛び込んだみたいな鳥肌が甦ってきた。ぞっとするどころではない。股をかきむしって叫びたい。けれど、口からもれるのは乾いた笑い声。爺さんに訴えてもこの様子じゃ埒が明かぬし――早いとこ帰って飯食って、股に焼酎ぶっかけて寝ちまおう。
 爺さんはあい変らず不機嫌で。      
「その小屋がどうしたというんだ?」     
「なぁに、こっちの話でして。へっへっ」
「なんだそりゃ。分らん奴だなぁ。だいたい、おまえはどこで呑んでたんだ?」
「呑んでませんって。源三さんがおっしゃったお寺にちゃんと行って参りました。七縁寺。石段が百もあって骨が折れた」
「七縁寺にそんな石段は無いぞ。あれは川沿いの平地だから。そう教えただろうに。……さては、寺を間違えやがったな」
「むう……」
 思えば、寺の名を確かめることなく門をくぐって入り、出てきてしまった。
 爺さんはいら立ちをぶつけてくる。
「だから、どこへ行っていたんだと訊いておる」
 俺は不安に苛まれてしどろもどろ。
「えっと、あっしが行ったのは……東村の……」  
「東村へは行ったんだな? 他の村じゃないんだな?」
「へい。間違いござんせん。で、村に入って、街道からあぜ道へ折れて、ずうっと行って、山腹にある小さな寺に……」
 すると、爺さん、こちらをにらみ上げるようにして、またもや信じ難いことを。
「なにぬかしてやがる。山腹って……東村で、山の中にあって、長い石段があるっつったら八興寺しかないが、今は廃寺になっとるぞ」
「えぇっ」
「いつ頃だったか火事で焼け落ちて、住職と小僧と住み込みの者が亡くなったそうだ」
「うそこけっ」
「うそなもんか。てめぇ、誰にむかって口きいてんだっ。寝ぼけるのもたいがいにしろっ」
「でも、あっしは確かに……」
「疑うんなら東村の者に訊いてみろ。焼けて四十九日を過ぎた頃からあそこにゃ誰も寄りつかん。気味が悪いつってな。今じゃ放ったらかしだ」
「するってえと……」
――あの住職らは死霊の類。
「ぎゃはははっ」
「笑うなっ。馬鹿っ」
 また柄杓で殴られた。いてぇ。さらにど肝を抜かれて心の臓が危うい。卒倒しないのが不思議なくらい。腰が抜けるどころか、首まで抜けて天に昇ってゆきそうだ。
 そういえば、おかなは寺の庫裡に身を寄せていると言っていたっけ。長い石段がきついとも……。さらには、形見の櫛を失くしたとか……。法話の町娘と重なるわけだ。
 思いもよらぬかたちで兄妹と山寺がつながった。
 そういうわけらしいのだが――それがどうしたというのだ? 
 自業自得とはいえ、痛ましい。不憫に思う。住職らもとんだ災難だった。
 源三爺さんも耳にしていない込み入った経緯があるかも知れぬ。炭焼き男とおかなに血縁はなく、庫裡を間借りするために兄妹と偽っていたのではないか? などと疑いたくもなる。が、どれもこれも俺には関係のない出来事だ。こっちは奴らの生前に起ったごたごたに一切係わっていない。たまたま寺を間違えて踏み入っただけだ。それだけのことなのに、このような難に遭うのは合点がゆかぬ。     
 間違えて踏み入った? いや、いや、今になって思えばだが、朝から妙だった。七縁寺の場所は爺さんから聞かされていたはずなのに、疑うことなくあの石段を上っていた。まるで導かれるように……。
 供養して欲しいのか? そういうことなのか? それならそう言え。線香の一本でも手向けてやらぁ。だいたい俗眼の俺なんかを呼び込んでどうなる? 高僧や修験者にすがって成仏したらよいではないか。
 こっちは、わけの分らぬうちに後味の悪い話を長々と聴かされて崖から落とされ、ヘラヘラ顔でさんざんおどかされたうえに笑い茸を食わされ、終いには毛ジラミまでうつされて迷惑千万。死霊どもがなにをしたいのかさっぱり要領を得ない。   
 板壁を紅く染めていた残照が衰えてきた。もうすぐ日が暮れてしまう。一日中恐ろしい目に遭った弱りきった心で長い夜をしのげるだろうか。枕元に怪しいものが出そうで気が気ではない。
 夜が怖いばかりか、股もかゆいからたまらない。竿の付け根に藪蚊の群れがたかっているよう。これ以上は辛抱できかねる。
 爺さんの面前ではあるが、衣の前をかき割ってふんどしの横から手を突っ込んだ。
 すかさず、「このバカヤロッ」と柄杓が飛んでくる。時を同じくして、寺の鐘の音がボォォン、陰気に重々しく響き渡った。近所に寺は無いのだが……。
 俺は、もう、正気で朝をむかえる自信がない。
 それにしても――あたりが線香臭いのはどういうわけだ? 夕餉(ゆうげ)時なのに長屋の連中の姿が見られない。留守中に不幸でもあったか? 
 爺さんは爺さんで昨日とはうって変わって異様に元気だ。不気味に腫れあがっていた額のコブはすっかり消えて跡形もない。それどころか、黒襟に黄色い縦縞の着物姿で商家の娘っ子みたいに髪を結綿に結っている。
 股をぼりぼりかきながら首をひねっていたら、爺さん、慣れた手つきで鬢(びん)のほつれをすっと直し、別の手でひざをぴしゃんと打った。
 続け様に甲高い声を張って、
「あっ、大事なことを訊きそびれるところでした」
 跳ねるように起ち上がった。
 唐突なでかい声にびくついて「なんです?」と訊けば、片眉をつり上げて底光りする黒目でこっちの目の奥をのぞき込むように顔を寄せ、町娘のような声色と口調でこうすごんできた。
「峠を越えたところですげの櫛を見かけませんでした? 角ばった細歯の、お札みたいなやつ。おっかさんの形見なんですけどねぇ。ご存じないとおっしゃるの? 佐吉さんのように男をお止めになるおつもりかしら? あなた、この期におよんで知らぬ存ぜぬは通りませんよ」

 

 おしまい。  

足音。 他二編。

執筆の狙い

作者 五月公英
60.40.78.27

三篇とも<怪談>のつもりなのですが……。

ダメ出し、アドバイス等、よろしくお願いします。

コメント

カリファ
49.104.8.25

拝読しました

五月さんお疲れ様です

夏、暑いですな
今年は異常に暑い
んで、台風凄い

何やら地の文章に新しい試み

悪くないと思いました。

ただ、統一は出来てない。
ん?統一しない方が良いのかもしれないけど?

例えば

夏風邪とかき氷

怪談と扇風機

みたいな話で



男女兼用扇風機

腕脚専用かき氷

みたいなのを探してるんだとしたら

それはそれでかっこいい気もする

あっ、なんだかデジャブ……

暑いから。って訳じゃないけど
独りになって考えることが増えるとさ
小説って面白っ!

ありがとうございます
久しぶりに五月さんの読めて嬉しいのでした!

五月公英
61.112.183.142

カリファ様。

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
最近来てなかったので、もう、誰が誰だかさっぱりです。

統一感どころか、ようだ、ように、ような が連発したりと、あいかわらずガタガタですみません。

夏風邪、扇風機ですな
怪談は異常に腕脚専用かき氷
んで、男女兼用台風凄い


こちらこそ、ありがとうございました。

カルナック
126.2.152.153

なんというか、文章がおしいよね。
小説なのに、雑誌のライター記事みたいに感じました。特に二本め。軽い。(誤解を避けるために書きますが、流行系雑誌などでは、文章やキャプションは軽いほうが読みやすいので良しとされます)
文末が単調にならないようにと考えて体言止めをあちらこちらに挟んでいるのだろうけど。
「た。」止め文章が続くのを良しとしない理由は、リズムや調子じゃないでしょ。
説明と描写をバランスよく配置すれば、文末のことなんぞそれほど気にしなくても自然と整う。
説明に終始してはいけない。
描写はやりすぎると読者の負担になる。
これを心がければいいだけ。

内容については、良い悪いなどと意見するものではないですね。作者さんが書きたいことを書けばいい。

改稿作の二本めのはわたくしもここで読んだ記憶があります。
内容が大きく変わっているのですか? それとも文章に磨きをかけているのですか。
後者なら、自分の旧作の文章磨きに時間をかけるよりも、新しいものをどんどん書くほうが建設的ではないのかという意見を言います。

あなたではないけれど、自分の旧作を名を変えて何度も投稿し続けている作者さんが今もここにいますけど、目的はなんなのか。単なる参加意識なんだろうか。

あなたの作品をここで何作か読んだけれど、センスあるよね。世の中を斜めに見てる感じもナイーブで作家向きだし。
だから余計、改稿繰り返すよりも、出来不出来関係なくたくさん書いたら? 短編、中編織り交ぜてね。
例えば月に一本、新作を書き続けたら一年後には文章力も構成力も格段に上がっていると思うよ。長編も書けるようになっているだろうし。
もちろん、それはあなたが職業作家を目指しているならという前提だけど。
そうじゃないなら、上の意見はスルーでどうぞ。

五月公英
60.44.14.177

カルナック様。

ご忠告、キモにめいじておきます。

一つめと二つめの作品については、もうしわけありません。
ゴミですね。

三つめについてですが、初投稿時、内容に触れた感想が少なかったのでよっぽど解り難かったのだろうと。
で、ところどころ書きかえるなどし、初読でストーリーとオチくらいはつかめるよう直しました。
世界観は、狐っ娘の世界 > 死霊の世界 > 人間界 の三重構造になっています。
これもなんとかお伝えしようと努力したつもりですが……甘かったでしょうか。
自分も飽きてきたので、おっしゃるとおり打ち止めにしたいと思います。
といいつつも、現在『細歯の櫛』の続編を書いています。
ボツにするかどうかは熟考中です。
どうあれ、これをやっつけてから新作に挑みたいと思います。

投稿したらまた叱ってください。

ありがとうございました。

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